説明

カセット

【課題】底面を簡便に密閉および開放できるカセット構造を提供する。
【解決手段】基板40を収納するカセット100であって、内部に基板40が配置されるカセット本体部10と、カセット本体部10の側面に形成されたカセット開口部12と、カセット本体部10の底面15に形成された底面開口部14と、底面開口部14を塞ぐ底板20とを備え、底板20とカセット本体部10とは互いに分離可能であり、カセット本体部10は、底面開口部14の下方に凹部32を有する置台30の上に配置され、凹部32は、カセット本体部10が置台30の上に配置された際に底板20を収納可能であり、且つ、凹部32の一部には、底板台34が形成されている、カセット100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を収納するカセットに関し、特に、フラットパネルディスプレイ(例えば、液晶パネル)の製造方法に用いる薄型の基板(例えば、ガラス基板)を収納するカセットに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の構成部品である液晶パネルは、一対のガラス基板を所定のギャップを確保した状態で対向させた構造を有している。液晶パネルの大型化・量産化に伴って、液晶パネル用のガラス基板は年々大型化している。このような次世代の大型液晶ガラス基板を搬送する基板搬送システムでは、液晶ガラス基板を多段収納する収納カセットが用いられる(例えば、特許文献1〜3など)。
【0003】
ガラス基板を収納した収納カセットは、クリーンルーム内の製造工程において液晶パネル製造装置の載置部から別の製造装置の載置部へガラス基板を搬送したり保管したりするのに用いられる。また、収納カセットは、液晶パネル製造装置の載置部とカセット保管庫の保管部との間でガラス基板を搬送・保管したりすることにも用いられる。
【0004】
クリーンルーム内の雰囲気は十分な空気清浄度が確保されているが、収納カセットの搬送・保管時に作業者や床面などから飛散したゴミなどの異物が基板表面に付着したり、基板処理時の有機ガスなどのミストがクリーンルーム内を浮遊して基板表面に付着することがある。そして、異物やミストが付着したまま、基板をプロセス処理すると液晶パネルの品質が低下するおそれがある。そのため、ガラス基板は、収納カセットの中で遮蔽された状態にして、異物などが付着しないよう搬送・保管を行うようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−115997号公報
【0006】
【特許文献2】特開2005−142480号公報
【0007】
【特許文献3】特開2005−145628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年のガラス基板の大型化に伴って、棚片の張り出し形式の収納カセットでは、ガラス基板を支持する棚片の面積が小さいために、大型のガラス基板を収納する場合には、その重量によってガラス基板に歪みが発生する場合がある。したがって、そのような形式の収納カセットでは、大型のガラス基板に使用することができない。
【0009】
そこで、最近では、大型のガラス基板を収納・搬送する場合、そのような歪みを抑制する上で、収納カセットの内壁に前後並列してワイヤーを多段的に配置したワイヤーカセットが用いられることがある。
【0010】
しかしながら、ワイヤーカセットを用いてガラス基板を収納・搬送する場合、ワイヤーカセットの下面には、ローラーコンベアを挿入するための開口部があり、それゆえに、密閉性が確保されていない。ガラス基板を収容したワイヤーカセットを常にクリーンルームに置いておく場合には、ワイヤーカセットの下面が密閉していない点の問題は少ないが、ガラス基板を搬送する点でいえば、常時、クリーンルーム中だけでワイヤーカセットを用いることができない場合もある。そのような状況の中、ワイヤーカセットの底面の開口を簡単に密閉できる構造は技術的に大きな価値を提供することができる。
【0011】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、底面を簡便に密閉及び開放できるカセット構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るカセットは、基板を収納するカセットであり、内部に基板が配置されるカセット本体部と、前記カセット本体部の側面に形成され、前記基板が出し入れされるカセット開口部と、前記カセット本体部の底面に形成された底面開口部と、前記カセット本体部の底面に配置されて、前記底面開口部を塞ぐ底板とを備え、前記底板と前記カセット本体部とは互いに分離可能であり、前記カセット本体部は、前記底面開口部の下方に位置する置台の上に配置され、前記置台は、前記底面開口部の下方に凹部を有しており、前記凹部は、前記カセット本体部が置台の上に配置された際に前記底板を収納可能であり、且つ、前記凹部の一部には、前記底板を支える底板台が形成されている。
ある好適な実施形態では、前記凹部において、前記底板台の下方には、前記カセット本体部を昇降する昇降アームが挿入される空間が設けられている。
ある好適な実施形態において、前記カセット本体部の内部には、複数のワイヤーが配列されており、前記基板は、ガラス基板であり、前記ガラス基板は、前記ワイヤーによって支持され、前記底面開口部には、前記ガラス基板を移動させるローラーコンベアが挿入される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るカセットによれば、カセット本体部の底面に形成された底面開口部と、底面開口部を塞ぐ底板とを備え、カセット本体部が配置される置台の凹部は底板を収納可能であり、凹部の一部には底板台が形成されている。それゆえ、カセット本体部を置台の上に載せることによって、カセット本体部の底面開口部を簡便に密閉および開放できるカセット構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るワイヤーカセット100の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るワイヤーカセット100の側面構成を示す断面図である。
【図3】ワイヤーカセット100の底面構成を示す図である。
【図4】底面周縁部位15aと底板20の周辺を拡大した図である。
【図5】ワイヤーカセット100の搬送ステップを説明するための平面図である。
【図6】ワイヤーカセット100を運ぶ搬送ビークル70の模式図である。
【図7】ワイヤーカセット100から基板40を搬出するステップを説明するための工程断面図である。
【図8】ワイヤーカセット100から基板40を搬出するステップを説明するための工程断面図である。
【図9】比較例のワイヤーカセット1100の断面図である。
【図10】比較例のワイヤーカセット1200の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0016】
まず、図1から図4を参照しながら、本発明の実施形態に係るワイヤーカセット100について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態のワイヤーカセット100の全体構成を模式的に示す斜視図である。本実施形態のワイヤーカセット100は、ワイヤーによって基板40を支持することによって、基板40を収納することができる収納カセットである。なお、図1においては、ワイヤーは図示していない。また、矢印50は重力方向(鉛直方向)を表している。
【0018】
本実施形態の基板40は、例えば、液晶パネル用のガラス基板である。このガラス基板40は、液晶パネルの寸法に切り出す前のマザーガラスであってもよいし、切り出した後の液晶パネルのサイズのガラスであってもよい。さらに、ガラス基板40は、薄膜トランジスタ(TFT)が作製されるアレイ基板(またはその作製途中のもの)であってもよいし、カラーフィルタ(CF)が形成されるCF基板(またはその作製途中のもの)であってもよい。
【0019】
また、基板40は、ガラス基板の他、ウェハのような他の薄板であっても構わない。加えて、液晶パネル用の基板40に限らず、PDP、有機ELパネル、その他フラットパネルディスプレイを製作する上での薄型の基板(ガラスに限らず、シート状のものでワイヤーカセットに保管され得るもの)であってもよい。
【0020】
本実施形態のワイヤーカセット100は、カセット本体部10と、カセット本体部10の側面に形成されたカセット開口部12と、カセット本体部10の底面に形成された底面開口部14と、底面開口部14を塞ぐ底板20とから構成されている。カセット本体部10の内部には、基板40を配置することができる。また、カセット開口部12からは、基板40を出し入れすることができる。なお、カセット開口部12には、その開口を塞ぐパネル(不図示)を配置することができる。
【0021】
底板20は、カセット本体部10の底面15に配置される。また、底板20は、カセット本体部10とは分離可能な状態である。具体的には、底板20とカセット本体部10とは、接着や溶接などの手段によって一体化されておらず、底板20の底に置台または地面が存在している場合、あるいは、底板20の底が、カセット本体部10の搬送用のアームなどによって支えられている場合に、カセット本体部10の底面15に底板20が位置付けられる。
【0022】
図2は、本実施形態のワイヤーカセット100の側面構成を模式的に示す断面図である。図2に示した例では、カセット本体部10の内部には、基板40を支持するワイヤー60が配列されている。具体的には、一枚の基板40を複数本のワイヤー60で支持し、その複数本のワイヤー60が多段に配列されている。ワイヤー60が多段に配列されていることによって、カセット本体部10の内部にガラス基板40を多段に収納することができる。
【0023】
この例では、基板40を4段収納しているが、基板40の収納の枚数は、ワイヤー60の段数に対応し、その段数は適宜好適なものを設定することができる。また、ワイヤー60は、カセット本体部10の内部の対向する壁面(内壁)の間に張られており、その張力で基板40を支持している。
【0024】
図3は、ワイヤーカセット100を底面側から見た模式図である。ワイヤーカセット100のカセット本体部10の底面に形成された底面開口部14は、図3に示すように底板20によって塞がれ得る。また、底板20は、昇降アーム35によって支えられる。なお、底面開口部14には、底板20が外された時には、基板40を出し入れするローラーコンベア(不図示)を挿入することができる。ローラーコンベアは、ワイヤー60の間から基板40に接触して、そして、基板40をカセット開口部12から払い出す機能を有している。
【0025】
再び図2を参照する。本実施形態のカセット本体部10は、置台30の上に配置される。具体的には、カセット本体部の底面15のうち底面開口部14を除く部位(底面周縁部位)15aが置台30の上面30aに接触する。置台30は、カセット本体部10の底面開口部14の下方に凹部32を有している。
【0026】
本実施形態では、凹部32の開口幅W1が底板20の幅W2よりも大きくなるように、凹部32は構成されている。したがって、底板20(図2中の「20A」)を介してカセット本体部10を支えていた昇降アーム35(図2中の「35A」)が、矢印51のように下方に移動すると、昇降アーム35の上に乗っていた底板20もあわせて下方に移動する。すなわち、底板20は、凹部32の開口内を下降していく。
【0027】
置台30の凹部32の一部には、下降してくる底板20を支える底板台34が形成されている。この例の底板台34は、凹部32の壁面から延びた板状部材である。また、図2に示した例の底板台34aは、凹部32の壁面から水平方向に延び、底板20の端部を支持する板状部材である。本実施形態の構成においては、底板台34a同士の間隔W3よりも、底板20の幅W2の方が大きくされている。それゆえ、昇降アーム35によって底板20を下降させるだけで、底板台34(34a)にて底板20(図2中の20B)を支持することができる。すなわち、昇降アーム35を底板台34の上面よりも下方に移動させると(図中の「昇降アーム35B」参照)、底板20(20B)は、底板台34にて受けとめられ、その結果、底板20は凹部32内に収納される。
【0028】
本実施形態では、底板20の端部を支える底板台34aの間に、底板20の中央部を支持する底板台34bも配置している。昇降アーム35が底板20から離れた時に、底板20が大きく撓む場合には、底板20の中央部を支える底板台34bによって、底板20の撓みを抑制することができる。
【0029】
本実施形態の昇降アーム35は、凹部32内を昇降する時は、底板台34aの間隔W3内の領域で移動する。図2に示した構成では、壁面から延びた底板台34aに加えて、底板台34bも設けられているので、昇降アーム35は、底板台34aと底板台34bの間の領域を昇降移動する。
【0030】
また、カセット本体部10の底面15の幅W4は、凹部32の開口幅W1よりも大きくされている。したがって、カセット本体部10の底面15を置台30の上に載せたときは、カセット本体部10の底面15は、置台30の上面30aによって支えられるので、カセット本体部10自体が凹部32の開口に入ることがない。
【0031】
さらに、カセット本体部10の底面開口部14の開口幅W5よりも、底板20の幅W2は大きくされている。したがって、カセット本体部10の底面15に底板20を接触させることにより(図2中の「20A」参照)、カセット本体部10の底面開口部14を底板20によって簡便に塞ぐことができる。
【0032】
加えて、カセット本体部10の底面開口部14の開口幅W5よりも、凹部32の開口幅W1を大きくする構成を採用することができる。このような構成にした場合、ワイヤーカセット100のカセット本体部10の設計に変更を行わずに(あるいは、大幅な変更を行わずに)、ワイヤーカセット100を使用することができる。すなわち、置台30の凹部32内において、基板40を出し入れするローラーコンベア(不図示)を底面開口部14から挿入する際に、凹部32の壁面によって、底面開口部14の開放領域が遮られることがない。したがって、本実施形態の構成によれば、置台30の凹部32内でも、既存のローラーコンベアの動作を同様に実行することが可能となる。
【0033】
図4は、カセット本体部10の底面周縁部位15aと底板20の周辺を拡大した断面図である。底面周縁部位15aは、カセット本体部10の底面15のうちの底面開口部14を除く部位であり、底面15の周縁領域に位置している。図4に示すように、昇降アーム35によってカセット本体部10が置台30の上面30aに配置された瞬間は、底面周縁部位15aは、底板20に接した状態にて、置台30の上面30aに接する。
【0034】
本実施形態の構成の例示的な寸法を示すと次の通りである。ここでは、液晶パネル用のガラス基板40の寸法が3m×3m程度の場合を想定したときものを例として示しているが、各寸法は条件にあわせて適宜改変可能である。カセット本体部10の全幅W6は、3500mmである。基板40の幅W7は、3000mmである。カセット本体部10の内面と基板40の側面との間の間隔(マージン)L1は、100mmである。また、底面周縁部位15aの寸法L2は280mmである。カセット本体部10の外面を基準にして底板20の側面までの距離L3は230mmである。また、底板20の厚さT1は、例えば、2mm〜3mm程度である。カセット本体部10の底面15および底面周縁部位15aの厚さT2は、80mmである。
【0035】
なお、図2に示した凹部32の開口幅W1は、3140mmである。底板20の幅W2は、3040mmである。また、底板台34aの間隔W3は、2800mである。加えて、凹部32の開口深さH1は、600mmである。また、置台30の上面30aから底板台34の上面までの深さH2は100mmである。そして、底板台34の上面から凹部32の底面までの深さH3は500mmである。
【0036】
また、本実施形態のカセット本体部10は、箱形形状を有している。例えば、カセット本体部10の辺の部分をフレーム構造で作製して、カセット本体部10の面の部分をパネル構造で作製することができる。その場合、フレーム構造の部分は、金属(例えば、アルミ、鉄、ステンレスなど)から構成され、パネル構造の部分は、樹脂板、金属板(例えば、アルミ板)などから構成され得る。
【0037】
なお、図3に示した底面構成の例では、昇降アーム35がカセット本体部10を支えて持つ構成となっている。つまり、底板20は昇降アーム35とカセット本体部10との間に挟まれる構成となっている。したがって、この構成においては、強度は、昇降アーム35とカセット本体部10とによって考えればよく、昇降アーム35は、カセット本体部10との関係で保持位置を決定し、この例での底板20の強度は特段考慮する必要はない。より詳細に述べると、底板20は、カセット本体部10と昇降アーム35(又は置台30)との間に挟まれる圧縮力に耐えることができる強度があれば十分である。また、その圧縮力に耐えることができる強度を持った底板20であれば、カセット本体部10の底面における底板20の配置は、図3に示したものに限定されるものではなく、適宜好適なものを採用すればよい。一方で、底板20とカセット本体部10との引っ掛かり部位(図2中の「W2−W5」)の強度、および、底板20の強度が十分大きければ、それらの強度によってもカセット本体部10を支えることも可能である。その場合には、昇降アーム35は、底板20を挟んでカセット本体部10の辺から辺までわたるように支える場合の他、例えば底板20の中央付近を支えてカセット本体部10を持ち上げることが可能な場合もある。
【0038】
また、 図1及び図2に示した構成例では、カセット本体部10の骨格はフレーム構造を有しており、そして、カセット本体部10の側面(左面・右面)11Aおよび上面11Bはパネル構造(例えば、金属板)によって覆われている。この例では、カセット開口部12は、カセット本体部10の前面に形成されているが、前面に加えて後面に形成してもよい。カセット本体部10の前面と後面との両方にカセット開口部12を形成した場合には、前後の両方から基板40を出し入れすることが可能となる。
【0039】
なお、必ずしも、カセット開口部12以外のカセット本体部10の側面のすべてにパネルを設けなくてもよい。例えば、カセット本体部10の側面にパネルがない形態において、底板20が設けられている構成であっても、カセット本体部10を載せたカセット搬送車が走行したときのエア(ダスト)の巻き上がりを抑制する効果が得られる。
【0040】
カセット本体部10の側面に形成されたカセット開口部12には、その開口を塞ぐための閉塞板を設けることができる。なお、カセット開口部12を塞ぐことができる構成であれば、閉塞板は、種々の構成をとることができる。加えて、上述したように、閉塞板を設けない構成でも、本実施形態の底板20を設けたことによる効果を得ることができる。
【0041】
次に、図5及び図6を参照しながら、本実施形態のワイヤーカセット100の搬送ステップについて説明する。図4は、ワイヤーカセット100の搬送ステップを説明するための平面図である。図5は、ワイヤーカセット100を運ぶ搬送ビークル70の模式図である。
【0042】
まず、図5に示すように、ワイヤーカセット100は、搬送ビークル70の荷台に載せられて、工場内の所定位置に移動して配置される。搬送ビークル70には車輪72が設けられており、任意位置に移動可能である。また、搬送ビークル70には、図6に示すように、ワイヤーカセット100を移動させるためのアーム35が搭載されている。このアーム35は、ワイヤーカセット100(又はカセット本体部10)を乗せたまま、矢印52に示すように上下方向に移動可能であり、昇降アームとして機能する。また、アーム35は、ワイヤーカセット100を乗せたまま、矢印54に示すように水平方向にも移動可能である。
【0043】
ワイヤーカセット100は、アーム35の動作によって、図5に示すように搬送ビークル70から置台30の上に移される(矢印91参照)。置台30には、図2にも示したように、凹部32が形成されており、そして、凹部32の一部には底板台34が設けられている。図2に示した置台30の構成は、図5中の底板抜き取り領域80において設置されており、この領域80に底板台34が設けられている。
【0044】
底板抜き取り領域80においては、図2にて説明した動作によって、ワイヤーカセット100の底板20の抜き取りが行われる。すなわち、昇降アーム35は、底板20の上にカセット本体部10を乗せた状態で、底板抜き取り領域80における置台30の上に移動し、次いで、昇降アーム35は矢印51のように凹部32の中に下降していく。すると、カセット本体部10は置台30の上面30aの上に乗ったまま、底板20は昇降アーム35とともに下降していく。その後、底板20は、底板台34の上に載置される。続いて、底板20を乗せていない昇降アーム35は、図2中の深さ範囲H3の領域内において、矢印54のように水平方向に移動し、再び、搬送ビークル70の方に収納される。
【0045】
底板20が取り外されて、底面開口部14が開放状態になったワイヤーカセット100は、矢印92に示すように、領域80から領域82へと移動する。この例では、置台30の上面に、ワイヤーカセット100を水平方向に移動可能なローラーコンベアが設けられている。領域82は、ワイヤーカセット100から基板40の払い出しを実行するための作業領域である。この領域82には、基板40を払い出すためのローラーコンベアを備えた昇降ポートが配置されている。
【0046】
また、ワイヤーカセット100を領域82から領域80に移動させて、先ほど説明した逆の動作を実行すると、ワイヤーカセット100の底面開口部14を底板20で覆うことができる。続いて、ワイヤーカセット100を昇降アーム35に乗せて、搬送ビークル70に移動させることも可能である。
【0047】
次に、図7及び図8を参照しながら、本実施形態のワイヤーカセット100から基板40を搬出するステップについて説明する。
【0048】
まず、図5に示した領域80においてワイヤーカセット100から底板20を取り外し、次いで、領域82に移動させる。この状態で、図7に示すように、底面開口部14に基板搬出用のローラーコンベア61を挿入する。図5に示した構成例では、カセット本体部10を固定し、ローラーコンベア61を上方させて底面開口部14内に挿入させている。一方で、カセット本体部10を下方に移動させることができる構成の場合には、カセット本体部10を下降させて、底面開口部14内にローラーコンベア61を挿入することもできる。
【0049】
次に、図8に示すように、ローラーコンベア61を更に上昇させて、ワイヤー60の間に通して、ローラーコンベア61と基板40とを接触させ、次いで、ローラーコンベア61によって基板40を持ち上げる。続いて、基板40とワイヤー60とを離した状態で、ローラーコンベア61のローラ部を回転させて、基板40を水平方向に移動させる。それにより、基板40は、カセット開口部12から払い出され、ワイヤーカセット100の外に位置する搬送装置64の上に移動する。その後は、基板40は必要な工程に供されたり、必要な場所に保管されたりする。
【0050】
一番下の段の基板40の払い出しが終了すると、次に、その上の基板40の払い出しが実行される。具体的には、ローラーコンベア61を更に上昇させて、ワイヤー60の間に通し、そのローラーコンベア61のローラ部を回転させて、基板40(下から2番目の基板40)をカセット開口部12から払い出しする。この工程を順次繰り返して、全ての段の基板40の払い出しを完了する。
【0051】
本実施形態のワイヤーカセット100によれば、カセット本体部10の底面に形成された底面開口部14と、底面開口部14を塞ぐ底板20とを備え、カセット本体部10が配置される置台30の凹部32は底板20を収納可能であり、凹部32の一部には底板台34が形成されている。したがって、ワイヤーカセット100のカセット本体部10を置台の上に載せることによって、カセット本体部10の底面開口部14を簡便に密閉および開放できるワイヤーカセット構造を実現することができる。
【0052】
ここで、本実施形態のワイヤーカセット100と、他のワイヤーカセット(比較例)とを比較して検討してみる。
【0053】
図9は、摺動部125を備えたスライド式構造の底面カバー120を備えたワイヤーカセット1100(比較例)を示している。なお、図9に示したワイヤーカセット1100では、基板40が出し入れされるカセット開口部112を前面カバー115で覆っている。
【0054】
カセット本体部110の底面開口部114には、スライド構造(摺動部)125が設けられている。そして、底面開口部114を塞ぐ底面カバー120は、スライド構造125で摺動しながら水平動作(矢印154)を行う。この場合、基板40が収納されているカセット本体部110の内部の近傍において、そのスライド構造125がダスト発生源となる。したがって、これではクリーンルームでの使用に適さない。
【0055】
また、図10は、底面カバー121が扉開閉構造127を有する形態のワイヤーカセット1200を示している。図10に示した扉開閉構造127を持ったワイヤーカセット1200の場合、底面カバー121の開閉において回動スペース(156)を確保しておく必要があり、それゆえに、多くの占有面積が必要なカセットとなってしまう。したがって、この構成では、占有面積の小さい開閉構造を有するワイヤーカセットにはならない。
【0056】
以上のように、本実施形態のワイヤーカセット100と比較して、ワイヤーカセット1100及び1200は何れも欠点があり、構造上、その欠点を解決するのが困難である。一方、本実施形態のワイヤーカセット100は、そのような欠点を回避することができる。また、比較例のワイヤーカセット1100及び1200では、底面カバー(120、121)を開閉する上で独自の機構(125、127)を取り付けなければならないのに対し、本実施形態のワイヤーカセット100では、そのような独自の機構を取り付けなくても、カセット本体部10の昇降動作によって、カセット本体部10の底面開口部14の開閉を簡便に実行することができる。その点においても、本実施形態の構成は技術的に大きな価値を有する。
【0057】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、底板20に発生するたわみが大きい場合には、底板20の表面の少なくとも一部に(例えば、底板20の周縁領域以外の部分に)、補強材(例えば、L字アングル)を設けることも可能である。また、カセット本体部10と底板20とが接触する箇所(特に、底面周縁部位15aの底面と底板20の周縁部との接触箇所)に、摩擦度が高い材料(例えば、樹脂)を用いた場合には、ワイヤーカセット100の搬送の加速や振動に対して底板20がずれることを抑制する効果を得ることもできる。さらに、本実施形態では、複数のワイヤーによって基板40を収納可能なワイヤーカセットの構成例について説明したが、底板20によって底面開口部14を簡便に密閉・開放できる本実施形態の技術はワイヤーカセットに限らず、ワイヤー以外の手段で基板40を収納する基板収納カセットに適用可能なものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、底面を簡便に密閉および開放できるカセット構造を提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 カセット本体部
12 カセット開口部
14 底面開口部
15 底面
15a 底面周縁部位
20 底板
30 置台
30a 上面
32 凹部
34 底板台
35 昇降アーム
40 基板(ガラス基板)
60 ワイヤー
61 ローラーコンベア
64 搬送装置
70 搬送ビークル
72 車輪
100 ワイヤーカセット
1100,1200 ワイヤーカセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納するカセットであって、
内部に基板が配置されるカセット本体部と、
前記カセット本体部の側面に形成され、前記基板が出し入れされるカセット開口部と、
前記カセット本体部の底面に形成された底面開口部と、
前記カセット本体部の底面に配置されて、前記底面開口部を塞ぐ底板と
を備え、
前記底板と前記カセット本体部とは互いに分離可能であり、
前記カセット本体部は、前記底面開口部の下方に位置する置台の上に配置され、
前記置台は、前記底面開口部の下方に凹部を有しており、
前記凹部は、前記カセット本体部が置台の上に配置された際に前記底板を収納可能であり、且つ、
前記凹部の一部には、前記底板を支える底板台が形成されている、カセット。
【請求項2】
前記凹部において、前記底板台の下方には、前記カセット本体部を昇降する昇降アームが挿入される空間が設けられている、請求項1に記載のカセット。
【請求項3】
前記カセット本体部の内部には、複数のワイヤーが配列されており、
前記基板は、ガラス基板であり、
前記ガラス基板は、前記ワイヤーによって支持され、
前記底面開口部には、前記ガラス基板を移動させるローラーコンベアが挿入される、請求項1または2に記載のカセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−182965(P2010−182965A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26607(P2009−26607)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】