説明

カップ状容器の成形装置および成形方法並びにカップ状容器

【課題】本発明は、通気路の通気抵抗を可及的に小さくして、微圧空気を迅速に送り込むことを可能とし、シート絞り成形時の圧力制御をより精密に行うことができるカップ状容器の成形装置を提供する。
【解決手段】加熱により軟化した樹脂シート11をプラグ30によって金型20のキャビティ20A内に押し込んで絞ると共に、金型20に設けられた微圧空気供給路50からキャビティ20A内に微圧空気pを供給し樹脂シート11とキャビティ20A内周との間の空間に微小な正圧を発生させて樹脂シート11をプラグ30の周囲に抱きつかせ、絞られた樹脂シート11を金型20内周面に密着させてカップ形状に成形するカップ状容器の成形装置において、金型20に設けられた微圧空気供給路50をスリット形状とし、スリット幅は所定幅に制限しスリット長さを長くすることにより流路断面積を確保して吸気効率を高める構成としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性の樹脂シートからカップ形状の容器を成形するカップ状容器の成形装置及び成形方法並びにカップ状容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種のカップ状容器の成形方法として、加熱して軟化させた樹脂シートの中央をプラグによって金型のキャビティ内に押込んで絞り込み、その後真空引き等によって金型のキャビティ内周に密接させてカップ形状に成形するプラグアシスト成形法が知られているが、プラグでそのまま絞っただけでは金型内への樹脂シートの引き込み量が少なく、樹脂の利用効率が悪い。
そこで、本出願人は、既に、樹脂シートを絞り込む際に金型に設けられた微圧空気供給路からキャビティ内に微圧空気を供給し、樹脂シートとキャビティ内周との間の空間に微小な正圧を発生させて樹脂シートをプラグの周囲に抱きつかせる方法を提案している(たとえば、特許文献1,2参照)。これにより、樹脂の利用効率を高めるとともに、より深い容器およびより均一な肉厚の容器の実現を図ってきた。
【0003】
しかし、この微圧空気供給路として、従来はφ0.5mm程度の微小な円筒形状の通気孔が利用されてきたので、通気効率が悪く、レギュレータで微圧空気の供給圧を所定圧に設定しても、キャビティ内の圧力が制御圧に達するまでに時間がかかり、微圧空気の効果が充分に得られていないということが分かってきた。供給する微圧空気の圧力は0.05Mpa程度ときわめて低く、吸気効率の大幅に高める必要がある。
【0004】
そこで、通気孔の孔径を大きく且つ数を多くすることが考えられるが、そうすると、通気孔入口に樹脂が入り込みやすくなり、成形後の容器表面に残る樹脂の棒状突起が大きくなって製品外観を悪くするという問題が生じる。
また、加熱により樹脂シートから微量の低分子量物が発生し、生産中に通気孔に堆積し流路を徐々に詰まらせるので、頻繁に通気孔をを清掃する必要があり、また、小径で多数の孔内部の堆積物を除去する作業は多大な労力を要し、時間がかかるという問題があった。
【特許文献1】特公平5−54809号公報
【特許文献2】特開2005−138474
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、微圧空気供給路の通気効率を高めて微圧空気による樹脂利用効率を高める効果をより高め得るカップ状容器の成形装置及び成形方法並びにカップ状容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本請求項1に係る発明は、カップ形状の容器を成形するためのキャビティを備えた金型と、金型のキャビティ開口部を覆うように配置された加熱により軟化した状態の樹脂シートを金型のキャビティ内に押し込んで絞るプラグと、を備え、プラグにより樹脂シートを絞る際に金型に設けられた微圧空気供給路からキャビティ内に微圧空気を供給し樹脂シートとキャビティ内周との間の空間に微小な正圧を発生させて樹脂シートをプラグ外周に抱きつかせ、前記プラグによって絞られた樹脂シートを金型のキャビティ内周面に密着させてカップ形状に成形するカップ状容器の成形装置において、
前記金型に設けられた微圧空気供給路をスリット形状とし、スリット幅は所定幅に制限しスリット長さを長くすることにより流路断面積を確保して吸気効率を高める構成としたことを特徴とする。
請求項2に係る発明は、金型は複数の型構成部材に分割され、スリット形状の微圧空気供給路を型構成部材の間に設け、金型を分解することにより微圧空気供給路を開放可能としたことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、微圧空気供給路は、樹脂シートを真空引きして金型のキャビティ内周面に密着させる際の排気通路となることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、成形後の容器の厚みが0.2〜2.0mmで、微圧空気供給路のスリット幅が0.01〜0.5mmであることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、微圧空気の圧力が0.01〜0.1Mpaで、微圧空気供給路の流路断面積が底部投影面積の0.1〜5%となるように微圧空気供給路のスリット形状を設定した特徴とする。
【0007】
請求項6に係る発明は、加熱により軟化した樹脂シートをプラグによって金型のキャビティ内に押し込んで絞り、絞られた樹脂シートを金型キャビティ内周面に密着させてカップ形状に成形する方法で、プラグによって樹脂シートを絞る際に金型に設けられた微圧空気供給路からキャビティ内に微圧空気を供給し樹脂シートとキャビティ内周との間の空間に微小な正圧を発生させて樹脂シートをプラグの周囲に抱きつかせるカップ状容器の成形方法において、
前記金型に設けられた微圧空気供給路をスリット形状とし、スリット幅は所定幅に制限しスリット長さを長くすることにより流路断面積を確保して吸気効率を高めることを特徴とする。
【0008】
請求項7に係る発明は、加熱により軟化した樹脂シートをプラグによって金型のキャビティ内に押し込んで絞ると共に、金型に設けられた微圧空気供給路からキャビティ内に微圧空気を供給し樹脂シートとキャビティ内周との間の空間に微小な正圧を発生させて樹脂シートをプラグの周囲に抱きつかせ、絞られた樹脂シートを金型キャビティ内周面に密着させてカップ形状に成形されるカップ状容器であって、
前記微圧空気供給路をスリット形状とし、容器外周面に現れる微圧供給路の痕をスリット形状に対応する線状突起としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、微圧空気供給路を従来のスポット的な円筒状の通気孔ではなく、線状に延びるスリット形状とし、スリット幅は所定幅に制限してスリット長さを長くすることにより流路断面積を大きくとるようにしたので、成形時の微圧空気供給路の痕を大きくすることなく、流路断面積を大幅に増大させることができ、通気効率を大幅に高くすることができる。したがって、絞り込み時の樹脂シートの引き込み量を増大させることができ、樹脂効率が高まり、より深い容器およびより均一な容器を成形することができる。
また、熱可塑性材料から発生する低分子料物の堆積による流路の詰まり現象発生を遅らせて、定期的に必要な金型清掃間隔の大幅な延長が可能となる。
さらに、従来、容器表面に発生していた棒状の樹脂突起を、高さのごく小さな線状突起にすることができ、製品の外観が向上する。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、金型を分解することにより微圧空気供給路が開放可能としたので、微圧空気供給路の清掃は、従来のように小径で多数の通気孔内部の堆積物を除去するのではなく、金型を構成する型構成部材を分解し、その表面を清掃すればよいので、作業の簡易化、短時間化につながる。
請求項3に係る発明によれば、微圧空気供給路を真空引きする際の排気通路とすれば、吸気効率だけでなく排気効率も高まることになり、製品の形状精度向上および成形サイクルの短時間化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
図2(A)は、本発明のカップ状容器の成形装置の全体構成を示している。
この成形装置10は、カップ形状の容器1を成形するためのキャビティ20Aを備えた金型20と、金型20のキャビティ開口部を覆うように配置された加熱により軟化した状態の樹脂シート11を金型20のキャビティ20A内に押し込んで絞り込むプラグ30と、プラグ30によりシート11を絞る際に金型20に設けられた微圧空気供給路50からキャビティ20A内に微圧空気pを供給し樹脂シート11とキャビティ20A内周との間の空間に微小な正圧を発生させて樹脂シート11を膨らませプラグ30外周に抱きつかせる微圧空気供給装置40とを備え、プラグ30によって絞られた樹脂シート11を、真空成形,圧空成形又は真空圧空成形によって金型20のキャビティ内周面に密着させてカップ形状に成形するようになっている。
上記金型20にはキャビティ20Aの開口部を取り囲むように配置される断熱性と滑り性とを具備する案内リング60が設けられ、さらに金型20と対向する位置には、プラグ30と同心的に配置され金型20に対して接離可能の上型70が設けられている。
【0012】
樹脂シート11は、あらかじめ樹脂材を成形温度以上に予備加熱され軟化した状態で、端部が固定具12で固定された状態で金型20との対向位置まで搬送される。
樹脂シート11の樹脂材料としては種々の材料が適用可能であり、単層でも積層構造を有するシートでもよい。特に内容物が酸素に敏感な場合には、ガスバリア性を有する中間層を挟んで熱可塑性樹脂から成る内層,外層を積層した積層構造のシートが好適である。
本発明においては、熱可塑性樹脂材料であれば任意のものを使用することができ、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等を単独又は2種以上の組み合わせで用いることができる。
これらの中でも、オレフィン系樹脂が本発明の成形法に有利であり、オレフィン系樹脂としては、主たる構成単量体がオレフィンからなりしかも結晶性のものであり、低−、中−、及び高−密度ポリエチレン、エチレン−α・オレフィン共重合体、アイソタクティックポリプロピン、プロピレン−エチレンブロック或いはランダム共重合体、を使用することができる。
オレフィン系樹脂は単独で使用することができるが、内容物保存性の点で酸素バリア性樹脂と組み合わせで用いることが好ましい。バリア性樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が使用される。
また、上記中間層に加えて、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のように炭素−炭素二重結合を有する樹脂や還元性鉄粉のような酸素吸収剤を含有する樹脂層からなる第二の中間層を設けてもよい。
【0013】
成形される容器1は、図2(C)に示すように、テーパ形状あるいは円筒形状の側壁部2と、側壁部2の下端を閉塞する底壁部3と、を有し、側壁部2の上端部には適宜外方に延びるフランジ部4が設けられている。図示例では容器1は深絞り容器で、高さHと口径Dの比である絞り比(H/D)が1以上である。
底壁部3は、中央部の断面円弧形状に窪んだ凹曲面部31と、凹曲面部31の周辺の環状座面部32とを備えた構成となっている。
【0014】
金型20は、図1に示すように、複数の型構成部材によって分割構成されるもので、スリット形状の微圧空気供給路50が型構成部材の間に設けられ、金型20を分解することにより微圧空気供給路50が開放可能となっている。
この実施例では、金型20は、側壁部2外周を成形する円筒形状の円筒型21と、底壁3の凹曲面部31を成形する中央のコア型22と、このコア型22外周に組み付けられる環状座面部32を成形する第1リング型23と、この第1リング型23の外周に嵌合される第2リング型24と、を備えている。
【0015】
円筒型21の内周面21aと下端面21bとの角部には下方に向けて徐々に大径となる方向に傾斜する下端内径側傾斜面21cが設けられている。
コア型22は、円柱形状のコア本体部22aと、コア本体部22aの上端に半径方向に膨らむ膨出部22bとから構成されている。膨出部22bは、コア本体部22aの上端部から上方に向けて徐々に大径となるように傾斜する膨出部下傾斜面22b2と、底壁3の凹曲面部31に対応する凸曲面22b1とを備えている。
【0016】
第1リング型23は円筒形状で、環状の上端面23aが容器底壁部3の環状座面部32に対応し、上端面23aと内径側円筒面23bおよび外径側円筒面23cとの角部が、それぞれ内径側傾斜面23dと外径側傾斜面23eによって面取りされている。この第1リング型23の内径側傾斜面23dが、コア型22の膨出部下傾斜面22b2と嵌合し、第1リング型23の外径側傾斜面23eが円筒型21の下端内径側傾斜面21cと嵌合している。
第2リング型24も円筒形状で、上端面24aが円筒型21の下端面21bと接合され、第2リング型24の内径側円筒面24bと第1リング型23の外径側円筒面23cとの間には環状の隙間が形成されている。第1リング型23と第2リング型24は非接触で、円筒型21に対して位置決めされている。
【0017】
微圧空気供給路50は、円筒型21と第1リング型23との間に形成される複数の円弧状スリット51と、第1リング型23と第2リング型24との間に形成される円形の環状スリット52と、によって構成される。円弧状スリット51は、第1リング型23の外径側傾斜面23eと円筒型21の下端内径側傾斜面21cとの合わせ面間に形成され、環状スリット52は第1リング型23の外径側円筒面23cと第2リング型24の内径側円筒面24bとの間に形成される。円弧状スリット51の一端は、図1(D)に示すように、円筒型21の内周面21aと第1リング型23の上端面23aとの隅角部に開口し、他端は環状スリット52に開口している。
流路断面積は円弧状スリット51によって決定され、この円弧状スリット51のスリット幅gは所定幅に制限し、スリット長さを長くすることにより流路断面積を確保して吸気効率を高める構成となっている。
成形後の容器1の厚みが0.2〜2.0mmとして、円弧状スリット51のスリット幅gは0.05〜0.5mm程度に設定することが好適である。
円弧状スリット51は、第1リング型23の外径側傾斜面23eに、ごく浅い段凹部51aを円周方向に所定間隔を隔てて複数形成した構成で、各段凹部51aは外径側傾斜面23eの上端から下端まで延びている。円筒型21の下端内径側傾斜面21cを嵌合することによって、段凹部51aの部分が円弧状スリット51となる。もちろん、段凹部51aは、第1リング型23の外径側傾斜面23eではなく、円筒型21の下端内径側傾斜面21cに形成してもよいし、両方の面に形成してもよい。
この微圧空気供給路50は、型締め後に真空引きあるいは圧力空気を導入する際の排気通路としても使用される。
【0018】
なお、微圧空気供給路50を、円筒型21,第1リング型23および第2リング型24の間ではなく、コア型22と第1リング型23との間に形成してもよいし、円筒型21,第1リング型23および第2リング型24の間と、コア型22と第1リング型23の間の両方に設けてもよい。
また、この例では、微圧空気供給路50について、金型20のキャビティ内周側を円弧状スリット51とし、キャビティ20Aと反対側を環状スリット52としているが、反対に金型20のキャビティ内周側を環状スリットとし、反対側を円弧状スリットとしてもよい。この場合、製品としての容器1へのスリット痕は環状スリットの線状突起となる。いずれの場合でも、微圧空気の供給効率は流路断面積が最小となる箇所によって規制されるが、金型20のキャビティ内周側に設けるスリットを最小断面積となるようにすると、供給効率を維持しつつ容器1のスリット痕を小さくでき、好適である。
【0019】
プラグ30は上下方向に延びる棒状の部材で、金型20の中心軸と同軸的に相対移動自在に配置されている。
微圧空気供給装置40としては、空気圧ポンプやガスボンベ等の圧力源41と、圧力源41からの圧力を所定圧に制御するレギュレータ42とを備えた構成とし、コントローラ43によってレギュレータ42に制御信号を送信して制御することができる。
案内リング60は、樹脂シート11を絞り込む際に、樹脂シート11が金型20の開口端部に引っ掛からないように、樹脂シート11を開口端部より所定高さ高い位置で支持するように配置される。
上型70は容器のフランジ部4を形成するもので、中央にプラグ30が出没自在の穴71を備え、この穴71周縁にフランジ部4を押圧する環状凸部72を備えている。
【0020】
次に、上記カップ状容器の成形装置を用いてカップ状容器を成形する成形手順について説明する。
加熱により軟化した樹脂シート11をプラグ30によって金型20のキャビティ20A内に押し込んで絞り込むと共に、金型20に設けられたスリット形状の微圧空気供給路50からキャビティ20A内に微圧空気pを供給し樹脂シート11とキャビティ20A内周との間の空間に微小な正圧を発生させ、樹脂シート11を膨らませてプラグ30の周囲に抱きつかせ樹脂シート11の引き込み量を増大させる(図2(A)参照)。
次いで、微圧空気供給路50から真空引きし、絞られた樹脂シート11を金型キャビティ20A内周面に密着させてカップ形状に成形する(図2(B)参照)。
【0021】
微圧空気供給路50はスリット形状となっており、従来のスポット的な通気孔に比べて流路断面積が大幅に増大し、微圧空気が効率的に供給される。したがって、絞り込み時の樹脂シート11の引き込み量が増大し、樹脂効率を高まり、より深い容器およびより均一な容器を成形することができる。
たとえば、φ0.5mmの通気孔を8箇所に設けた従来の微圧空気供給路では、総流路断面積は1.57mm程度であるが、本実施例によると、たとえば、円弧状スリット51のスリット幅gを0.2mm、スリット形成位置の内径を53.8mmとすると、28.53mm程度と大幅に増加する。
微圧空気pの圧力は、0.02〜0.1Mpa程度に設定されており、流路断面積は底部内径から計算される平面投影面積の1〜3%程度に設定することが好適である。
実際に、微圧空気供給路として、φ0.5mmの丸穴形状の通気孔を8箇所に設けた従来の金型と、スリット形状とした本発明の金型20を用い、同じ厚みの樹脂シート11から同じ高さで同一径に成形された容器の肉厚を比較したところ、従来は、0.2〜0.3mm程度の肉厚であったのに対し、本発明では、0.35〜0.45mm程度の肉厚が得られた。また、容器重量は、従来の金型で製造された容器に比べて、30%程度増大した。
微圧空気供給路50の流路断面積は大きいほど通気効率が高まると考えられるが、 実際に成形したところ、底部投影面積の5%に相当する面積より大きくしても容器の厚みの増大が認められなかった。
また、成形された容器1の外周面、この例では容器側壁部2と底壁部3の角部に、図2(D)に示すように、円弧状スリット51に対応する線状突起5が形成される。線状突起の高さは0.1〜0.2mm程度とごく小さく、製品の外観が向上する。
【0022】
上記微圧空気供給路50には、樹脂シート11を構成する熱可塑性材料から発生する低分子量物が堆積するが、流路断面積が大きく通気効率がいいので堆積しにくく、さらに堆積しても、従来のスポット的な通気孔に比較して詰まり現象発生を大幅に遅らせることができ、定期的に必要な金型清掃間隔を大幅に延長することができる。
微圧空気供給路50の清掃作業については、金型20を分解し、円筒型21,第1リング型23,第2リング型24の表面を清掃すればよく、簡単な作業で短時間に行うことができる。
【0023】
さらに、微圧空気供給路50は、真空引きする際の排気通路となっているので、微圧空気を供給する際の吸気効率だけでなく排気効率も高く、製品の形状精度向上および成形サイクルの短時間化を図ることができる。
【0024】
図3は、本発明のカップ状容器の成形装置に用いられる金型の他の構成例を示している。
以下の説明では、主として上記実施例と異なる点についてのみ説明するものとし、同一の構成部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
この金型120は、図3(F)に示すような底壁部103が段付き凹部を有する形状のカップ形の容器101を成型するものである。この容器101は、上記実施例とは底壁部103の形状のみが異なり、側壁部2の構造は同一である。
すなわち、容器101の底壁部103は、段付き凹部131と、この段付き凹部131の周囲を取り囲む平坦な環状座面部132と、を備えた構成で、段付き凹部131は、環状座面部132から一段窪ませた環状段凹部131aと、環状段凹部131aからさらに一段窪ませた円形の中央段凹部131bとを備えた構造となっている。
【0025】
金型120は、図3(A)乃至(C)に示すように、側壁部21を成形する円筒型21と、底壁部103の中央段凹部131bを成形する中央のコア型122と、コア型122に嵌合されるリング型123とを備えた構成となっている。
コア型122の上端面122aは中央段凹部131bに対応する形状となっている。
一方、リング型123は、コア型122の円筒面122bが嵌合する内径側円筒面123fを有し、リング型123の上面は、最も外側に位置する第1環状段部123aと、この第1環状段部123aの内側に位置し第1環状段部123aより一段高い第2環状段部123bと、この第2環状段部123bよりさらに一段高い第3環状段部123cとを有する段付き形状で、第1環状段部123aと第2環状段部123bの境界部には上方に向かって徐々に小径となるように傾斜する第1傾斜面123dが、第2環状段部123bと第3環状段部123cとの境界部には上方に向かって徐々に小径となるように傾斜する第2傾斜面123eが設けられている。
【0026】
このリング型123の第1環状段部123aに円筒型21の下端面21bが接合し、第1傾斜面123dに円筒型21の下端内径側傾斜面21cが嵌合するようになっている。
微圧空気供給路150は、互いに嵌合するコア型122の円筒面122bとリング型123の内径側円筒面123fとの間に形成されるもので、キャビティ20Aに開口する複数の円弧状通気スリット151と、キャビティ20Aと反対側に位置し円弧状通気スリット151と連通する円形の環状スリット152と、を備えた構成となっている。
この例では、リング型123の内径側円筒面123fは、上半部123f1に対して下半部123f2が大径の段付き構成で、円弧状スリット151は、内径側円筒面123fの上半部123f1内周に形成された複数のごく浅い段凹部151aによって構成されている。段凹部151aの段差は0.2mm程度であり、コア型122の円筒面との間に、複数の円弧状スリット151が形成される。もちろん、段凹部151aをコア型122の円筒面122b側に形成してもよい。一方、環状スリット152は、内径側円筒面123fの下半部123f2内周とコア型122の円筒面122bとの間の環状隙間によって構成されている。
この例でも上記実施例の金型と同様に、円弧状スリット151のスリット幅gは0.2mmとすると、スリット形成位置の内径が38.0mmと小さいので、流路断面積は21.60mmと小さくなるが、従来のスポット状の通気孔に比べてはるかに大きく、上記実施例の金型と同様、微圧空気の供給効率が高く、樹脂効率をより高めることができる。
以上、断面形状が円形のカップ状容器を例にとって説明したが、この発明は、オーバル型や角型など、他の形状の容器の成形にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は本発明のカップ状容器の成形装置に用いられる金型構造を示すもので、同図(A)は組み立てた状態の断面図、同図(B)は底面図、同図(C)は概略分解斜視図、同図(D)は(A)のD方向矢視図である。
【図2】図2(A)は図1の金型を用いたカップ状容器の成形装置の全体構成を示す概略構成図、同図(B)は同図(A)の真空引き工程の概略構成図、同図(C)は容器の概略断面図、同図(D)は容器に形成される線状突起を模式的に示す図である。
【図3】図3は本発明のカップ状容器の成形装置に用いられる金型の他の構成例を示すもので、同図(A)は組み立てた状態の断面図、同図(B)は底面図、同図(C)は概略分解斜視図、同図(D)は(A)のD方向矢視図、同図(E)はリング型の断面図、同図(F)は本実施例の金型で成形される容器の概略断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 容器
2 側壁部
3 底壁部
31 凹曲面部
32 環状座面部
4 フランジ部
5 線状突起
10 成形装置
11 樹脂シート
20 金型
20A キャビティ
21 円筒型
21a 内周面
21b 下端面
21c 下端内径側傾斜面
22 コア型
22a コア本体部
22b 膨出部
22b1 凸曲面
22b2 膨出部下傾斜面
23 第1リング型
23a 上端面
23b 内径側円筒面
23c 外径側円筒面
23d 内径側傾斜面
23e 外径側傾斜面
24 第2リング型 24
24a 上端面
24b 内径側円筒面
30 プラグ
40 微圧空気供給装置
41 圧力源
42 レギュレータ
43 コントローラ
50 微圧空気供給路
51 円弧状スリット
51a 段凹部
52 環状スリット
60 案内リング
70 上型
101 プラスチック容器
103 底壁部
131 段付き凹部
131a 環状段凹部、131b 中央段凹部
132 環状座面部
120 金型
122 コア型
122a 上端面
122b 円筒面
123 リング型
123a 第1環状段部
123b 第2環状段部
123c 第3環状段部
123d 第1傾斜面
123e 第2傾斜面
123f 内径側円筒面
123f1 上半部
123f2 下半部
150 微圧空気供給路
151 円弧状スリット
151a 段凹部
152 環状スリット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ形状の容器を成形するためのキャビティを備えた金型と、該金型のキャビティ開口部を覆うように配置された加熱により軟化した状態の樹脂シートを金型のキャビティ内に押し込んで絞るプラグと、を備え、該プラグにより樹脂シートを絞る際に金型に設けられた微圧空気供給路からキャビティ内に微圧空気を供給し樹脂シートとキャビティ内周との間の空間に微小な正圧を発生させて樹脂シートをプラグ外周に抱きつかせ、前記プラグによって絞られた樹脂シートを金型のキャビティ内周面に密着させてカップ形状に成形するカップ状容器の成形装置において、
前記金型に設けられた微圧空気供給路をスリット形状とし、スリット幅は所定幅に制限しスリット長さを長くすることにより流路断面積を確保して吸気効率を高める構成としたことを特徴とするカップ状容器の成形装置。
【請求項2】
金型は複数の型構成部材に分割され、スリット形状の微圧空気供給路を型構成部材の間に設け、金型を分解することにより微圧空気供給路を開放可能としたことを特徴とする請求項1に記載のカップ状容器の成形装置。
【請求項3】
微圧空気供給路は、樹脂シートを真空引きして金型のキャビティ内周面に密着させる際の排気通路となることを特徴とする請求項1又は2に記載のカップ状容器の成形装置。
【請求項4】
成形後の容器の厚みが0.2〜2.0mmで、微圧空気供給路のスリット幅が0.01〜0.5mmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載のカップ状容器の成形装置。
【請求項5】
微圧空気の圧力が0.01〜0.1Mpaで、微圧空気供給路の流路断面積が底部投影面積の0.1〜5%となるように微圧空気供給路のスリット形状を設定した特徴とする請求項4に記載のカップ状容器の成形装置。
【請求項6】
加熱により軟化した樹脂シートをプラグによって金型のキャビティ内に押し込んで絞り、絞られた樹脂シートを金型キャビティ内周面に密着させてカップ形状に成形する成形方法で、プラグによって樹脂シートを絞る際に金型に設けられた微圧空気供給路からキャビティ内に微圧空気を供給し樹脂シートとキャビティ内周との間の空間に微小な正圧を発生させて樹脂シートをプラグの周囲に抱きつかせるカップ状容器の成形方法において、
前記金型に設けられた微圧空気供給路をスリット形状とし、スリット幅は所定幅に制限しスリット長さを長くすることにより流路断面積を確保して吸気効率を高めることを特徴とするカップ状容器の成形方法。
【請求項7】
加熱により軟化した樹脂シートをプラグによって金型のキャビティ内に押し込んで絞ると共に、金型に設けられた微圧空気供給路からキャビティ内に微圧空気を供給し樹脂シートとキャビティ内周との間の空間に微小な正圧を発生させて樹脂シートをプラグの周囲に抱きつかせ、絞られた樹脂シートを金型キャビティ内周面に密着させてカップ形状に成形されるカップ状容器であって、
前記微圧空気供給路をスリット形状とし、容器外周面に現れる微圧供給路の痕をスリット形状に対応する線状突起としたことを特徴とするカップ状容器。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−111888(P2007−111888A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302905(P2005−302905)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(304050369)株式会社浅野研究所 (44)
【Fターム(参考)】