説明

カバー部材及びその取付構造。

【課題】軟質の樹脂材料をもって成形しても十分な取付剛性を確保し得るカバー部材及びその取付構造を提供する。
【解決手段】取付基部11の上端部に設けられた複数の係合部14をフロントフェンダー4の内側端縁に折曲形成した係合片7bに係合させることによって車体に取り付けられるカバー部材10において、その取付基部11の下端部に、車外側に下方へ傾斜状に延出して車体取付状態においてその先端側がフロントピラー2のフロントフェンダー4と重合するフェンダー重合部8の外面に弾接することによって、当該取付基部11に上方への弾性力fを付与するサポートリップ13を設けることとし、この弾性力fをもって取付基部11を上方へと付勢するように構成したことで、組み付け作業性の向上や取付後の剛性確保に供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントフェンダーとフロントウインドウガラスとの間の隙間を閉塞するカバー部材及びその取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サイドボディアウターパネルのフロントピラーの傾斜角を小さく設定することにより、フロントフードとの間で連続感をもたせて外観を向上させた車両が製造されている。一方で、フロントウインドウガラスは、運転者の視認性の観点からすると、所定の視野を確保する必要があるため、傾斜角を小さくし過ぎることは望ましくない。そこで、前記フロントピラーの傾斜角が小さく設定された自動車では、フロントウインドウガラスの傾きとフロントピラーの傾きとを相異させた設計がなされている。かかる構成とした場合に、フロントウインドウガラス下端側の側縁と、フロントピラー下端側に重合して接続されるフロントフェンダーのピラー重合部の内側端縁と、の間に、フロントウインドウガラスの厚さ幅方向の隙間が生じてしまうことから、当該隙間を、例えば以下の特許文献1に記載されたような所定の樹脂材料により成形されたカバー部材によって覆い隠すことで、外観の向上や風切り音の抑制等が図られている。
【0003】
この文献に記載されたカバー部材の取付構造は、当該カバー部材の下端部に突設した係合突部を、フロントピラーの前記フェンダー重合部に貫通形成した係合孔に係合させると共に、当該カバー部材の外側部に設けた上方に開口する係合部を、フロントフェンダー上端側に重合するフロントフェンダーのピラー重合部の内側縁に折曲形成した下方へ延出する係合片に、下方から係合させることによって当該カバー部材を車体に取り付けるようになっている。すなわち、かかる構造とすることにより、両面テープ等の固定手段を別途用いることなくカバー部材の取付を可能とし、当該カバー部材の取付作業性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−56982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記カバー部材は、車体組立の最終段階、つまりフロントウインドウガラスやフロントフェンダーなど、車体の外装部品の取付がほぼ完了した後に取り付けられるものであって、しかも、これらの外装部品は、少なからず組付誤差を有することになるため、カバー部材の取付にあたって、当該カバー部材には柔軟性が必要不可欠となる。
【0006】
そこで、この柔軟性を確保するべくカバー部材を軟質の樹脂材料で成形した場合、前記従来のカバー部材の取付構造では、カバー部材をフロントピラーやフロントフェンダーに単に係合させることのみによって車体への取付を行っていることから、当該カバー部材の取付剛性を十分に確保できないという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる技術的課題に着目して案出されたものであり、軟質の樹脂材料をもって成形しても十分な取付剛性を確保し得るカバー部材及びその取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、フロントウインドウガラス下端側の側辺部と、該側辺部の上方に位置し、フロントピラー下端側を覆うフロントフェンダーの内側端部と、の間に配置され、前記フロントウインドウガラス下端側の側辺部と前記フロントフェンダーの内側端部との間に形成された隙間を閉塞するカバー部材であって、前記フロントフェンダーの前記フロントピラー下端側と重合するピラー重合部の内側端部に取り付けられる取付基部と、前記取付基部から前記フロントウインドウガラスに向かってに延出し、車体取付状態においてその先端が前記フロントウインドウガラスの外面に当接するカバーリップと、前記取付基部から前記カバーリップと反対側に下方へ傾斜状に延出し、車体取付状態においてその先端側が前記フロントピラーの前記フロントフェンダーと重合するフェンダー重合部の外面に弾接して、前記取付基部に上方への押圧力を付与するサポートリップと、を備えたことを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、サポートリップによって付与される押圧力により、取付基部がフロントフェンダーに常時押し付けられた状態となり、当該取付基部の取付剛性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明では、サポートリップの弾接位置が取付基部に対し車体幅方向へオフセットするようになっているため、取付基部の周りに、カバーリップをフロントウインドウガラス側へと押し付けるように作用するモーメントが生じ、このモーメントによって、フロントウインドウガラスに対するカバーリップの密着性を向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載のカバー部材において、前記サポートリップの前記フェンダー重合部に弾接する部位よりも基端側に、該サポートリップと反対側に下方へ傾斜状に延出して、車体取付状態においてその先端側が前記フェンダー重合部の外面に弾接する補助リップを設けたことを特徴としている。
【0012】
この発明によれば、補助リップがカバー部材の車外側(フロントフェンダーに近接する側)への移動に抗することとなり、カバー部材の車外側への移動を規制することが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は2に記載のカバー部材の取付構造であって、前記フェンダー重合部の外面に凸部を設け、該凸部の内側面に前記サポートリップの先端側が弾接するように構成したことを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、凸部によってカバー部材の車外側への移動を規制することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、サポートリップの押圧力によって取付基部の取付剛性を向上させることができるため、当該カバー部材を軟質の樹脂材料で成形しても所定の取付剛性を確保することができる。換言すれば、より軟質の樹脂材料をもってカバー部材を成形することが可能となり、当該カバー部材の取付作業性の向上に供される。
【0016】
また、サポートリップの押圧力がフロントウインドウガラスに対するカバーリップの密着性の向上に供されることから、車体の組付誤差等を柔軟に吸収し、車体の良好な外観を確保することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、補助リップによってカバー部材の車外側への移動を規制できることから、当該カバー部材の取付作業性のさらなる向上が図れる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、凸部によってカバー部材の車外側への移動を規制できることから、当該カバー部材の取付作業性のさらなる向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るカバー部材の取付位置の説明に供する車体の要部拡大斜視図。
【図2】図1の要部拡大図。
【図3】本発明に係るカバー部材の第1実施形態を示し、当該実施形態に係るカバー部材単体の内側を現す斜視図。
【図4】同実施形態に係る図2のA−A線断面図。
【図5】同実施形態に係る図2のB−B線断面図。
【図6】同実施形態に係る図2のC−C線断面図。
【図7】同実施形態に係る図2のD−D線断面図。
【図8】同実施形態に係るカバー部材の組み付け手順の説明に供する図2のB−B線断面に相当する断面図。
【図9】本発明に係るカバー部材の第2実施形態を示し、当該実施形態の特徴説明に供する図2のB−B線断面に相当する断面図。
【図10】本発明に係るカバー部材の取付構造の実施形態を示し、当該実施形態の特徴説明に供する図2のB−B線断面に相当する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るカバー部材及びその取付構造の各実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、車体のフロントフェンダー周りは、左右対称に構成されていることから、以下の各実施形態では、便宜上、一方の車体左側のフロントフェンダー周りのカバー部材及びその取付構造について説明する。
【0021】
図1〜図8は、本発明に係るカバー部材の第1実施形態を示しており、このカバー部材10が取り付けられる車体は、図1に示すように、前記従来技術と同様、フロントウインドウガラス1に対しフロントピラー2の傾斜角が小さくなるように設定すると共に、フロントフード3に隣接するフロントフェンダー4をフロントピラー2の下端側まで延設することで、フロントピラー2、フロントフェンダー4及びフロントフード3に連続感をもたせたデザインとなっている。この際、フロントピラー2の下端側においては、図2に示すように、該フロントピラー2の下端側と連続するフロントフェンダー4の上端側が、このフロントピラー2の下端側を覆うかたちで該フロントピラー2の下端側と重合するように構成されている。具体的には、フロントピラー2の下端側が段差状に凹み形成され、この段差凹部にフロントフェンダー4の上端側が被覆するように両者2,4が重合した構成となっていて、これにより、フロントピラー2の露出部の外面とフロントフェンダー4の外面とは面一となっている。
【0022】
かかる構成から、フロントウインドウガラス1の下端側におけるコーナ部1b近傍の側辺部1aと、該側辺部1aの上方に位置し、フロントフェンダー4のピラー重合部7(フロントピラー2と重合する部位)の内側端部7aと、の間には、フロントウインドウガラス1の厚さ幅方向においてフロントピラー2の下端側に向かって漸次拡大するほぼ三角形状の隙間Sが形成されることから、当該隙間Sが、本発明に係るカバー部材10によって閉塞されている。
【0023】
このカバー部材10は、いわゆる熱可塑性エラストマ(TPE)をもって、図2、図3に示すように、前記隙間Sに対応して長手方向の一端側が他端側と比べて幅広となるように成形されたものであって、フロントピラー2側に位置する他端がフロントウインドウガラス1周縁部に配置されたウインドウモール5の下端側を覆うように接続される一方、フロントフード3側に位置する一端がフロントウインドウガラス1の下端縁に沿って配置されたカウルカバー6に接続されていて、フロントウインドウガラス1の下端側コーナ部1bの近傍における当該フロントウインドウガラス1の取付部を覆い隠している。そして、長手方向の他端側が後記の複数の係合部14を介してフロントフェンダー4に取付固定されると共に、一端側が後記の係止突起17を介してカウルカバー6に取付固定されている。
【0024】
以下、前記カバー部材10の構成について具体的に説明すれば、当該カバー部材10は、図2、図3及び図5に示すように、フロントフェンダー4に取付固定されるフェンダー取付部11aとカウルカバー6に取付固定されるカウル取付部11bとによって構成される取付基部11と、この取付基部11の内側端縁から下方へと延設されて、車体取付状態においてその先端がフロントウインドウガラス1の外面に当接するカバーリップ12と、前記フェンダー取付部11aの下端部からカバーリップ12と反対側に下方へ傾斜状に延設されて、車体取付状態においてその先端側がフロントピラー2のフェンダー重合部8(フロントフェンダー4と重合する部位)の外面に弾接するサポートリップ13と、から主として構成されている。
【0025】
前記フェンダー取付部11aの上端部には、ピラー重合部7の内側端部7aを下方に折曲してなる係合片7bにそれぞれ係合するように構成された3つの係合部14が長手方向に所定間隔をもって配置されている。これらの各係合部14は、フェンダー取付部11aの上端部に、前記係合片7bに沿って該係合片7bに密着するように設けられたシールリップ14aと、このシールリップ14aの外側部に一体に設けられて、横断面ほぼL字形状に形成された係合爪14bと、によって上方へと開口するような横断面ほぼコ字形状をなし、車体取付状態において係合片7bに対して下方から係合するように構成されている。換言すれば、これらの各係合部14の内部には、上方へ開口する係合溝14cが構成されていて、該各係合溝14c内に係合片7bが入り込むことによって、該係合片7bに前記各係合部14が係合するようになっている。
【0026】
また、前記フェンダー取付部11aの下端部には、図2〜図4に示すように、フロントウインドウガラス1の側辺部1aに把持するように構成された2つのガラス接続部15が長手方向に所定間隔をもって配置されている。これらの各ガラス接続部15は、フェンダー取付部11aの下端側において車内側へ延出することによってフロントウインドウガラス1と重合するように設けられて、その先端にカバーリップ12が延設されるガラス重合部15aと、このガラス重合部15aの下側部に一体に設けられて、横断面ほぼL字形状に形成された爪部15bと、によって車内側へと開口するような横断面ほぼコ字形状に構成され、車体取付時においてフロントウインドウガラス1の側辺部1aに対して側方から嵌合することにより、該側辺部1aにカバー部材10を接続するようになっている。ここで、かかる構造を採用することにより、カバー部材10を、前記側辺部1aに重合させた状態でフロントウインドウガラス1に接続させることを可能とし、これによって、カバー部材10に前記側辺部1aを被覆する手段を別途設けたりせずとも、フロントウインドウガラス1の取付部を効果的に覆い隠すことができるようになっている。
【0027】
さらに、前記フェンダー取付部11aの長手方向の所定位置(図2においてC−C線で切断した位置)には、図2、図3及び図6に示すように、車外側へ突出し、車体取付状態においてフェンダー重合部8に固定されたフード開閉用ヒンジ3aに近接対向するストッパー16が設けられている。すなわち、このストッパー16は、カバー部材10の車外側への移動を規制するもので、当該カバー部材10が車外側へ所定量以上移動した際に、フード開閉用ヒンジ3aと当接することによって、当該カバー部材10のそれ以上の車外側への移動が規制されるようになっている。ここで、このストッパー16の外側部には、該ストッパー16の外側部とフェンダー取付部11aの外側部とを繋ぐように構成された一対のリブ16aが立設されることで、当該ストッパー16の剛性の向上が図られ、これによって、当該ストッパー16の規制力が確保されている。
【0028】
前記カウル取付部11bの長手方向の所定位置(図2においてD−D線で切断した位置)には、図2、図3及び図7に示すように、車外側へ突出し、車体取付状態においてカウルカバー6に立設された縦辺部6aに有する係止孔6bに係止固定される係止突起17が設けられている。この係止突起17は、ほぼ茸状を呈し、係止孔3bの内径より小さく設定された基端側の小径部17aが係止孔3bに挿通して、該係止孔3bの内径よりも大きく設定された先端側の大径部17bが係止孔3bの孔縁に係止することにより、カウル取付部11bをカウルカバー6に取付固定するようになっている。
【0029】
前記カバーリップ12は、図2、図3及び図5に示すように、取付基部11の、車体取付状態にてカウルカバー6と重合しない長手方向の領域に亘って、その下端部の内側端縁に長手方向へ沿って連続して設けられ、該取付基部11と一体成形されている。そして、このカバーリップ12は、取付基部11の下端部の内側端縁からフロントウインドウガラス1の外面に向かって下方へ傾斜状に延設され、車体取付状態においてその先端がフロントウインドウガラス1の外面に常時当接するように構成されている。これによって、フロントウインドウガラス1の取付部を隙間なく覆うことが可能となり、外観の向上に供されている。
【0030】
前記サポートリップ13は、フェンダー取付部11aの長手方向の所定領域(図2においてB−B線で切断した位置近傍の領域)における当該フェンダー取付部11aの下端部に一体成形されてなり、自由状態にてフェンダー取付部11aの下端部からカバーリップ12と反対側、つまり車外側に、下方へ傾斜状に延設されることで、車体取付状態においてその先端側がフェンダー重合部8の外面に弾接するように構成されている。そして、かかる構成により、当該サポートリップ13がフェンダー重合部8の外面に弾接することにより生ずる弾性力をもって、フェンダー取付部11aに上方への押圧力が付与され、これによって、係合片7bに対する前記各係合部14の係合力がバックアップされるようになっている。
【0031】
なお、本実施形態では、前記サポートリップ13を、自由状態において若干湾曲するように形成し、かかる湾曲状に形成することによって、捲れ込み難く、また、より撓み易くなるようにしているが、当該サポートリップ13は、必ずしも湾曲状に形成されていることに限定されるものではなく、単に真っ直ぐ延びる形状としてもよい。
【0032】
さらに、本実施形態では、所定幅に設定したサポートリップ13を1つだけ設ける構成としているが、当該サポートリップ13の数量については、カバー部材10の長さや材質等の仕様に応じて自由に変更することができる。
【0033】
また、前記サポートリップ13の基端部には、該サポートリップ13の基端部とフェンダー取付部11aの外側部とを繋ぐように構成された2つ(一対)のリブ18が立設されていて、該両リブ18によって、サポートリップ13の剛性の補強(調整)が行われている。これによって、当該サポートリップ13において所定の剛性が確保されるようになっている。
【0034】
以下、本実施形態に係るカバー部材10の組付手順について、図5及び図8に基づいて説明する。なお、当該カバー部材10の組付は、従来技術と同様に、フロントフェンダー4やカウルカバー6等の外装部品の組付が完了した車体に対して行う。
【0035】
すなわち、前記カバー部材10を車体に組み付けるには、まず最初に、図8に示すように、所定の力Fをもってサポートリップ13をフェンダー重合部8の外面に押し付けることにより、前記各係合爪14bの上端(先端)がピラー重合部7の係合片7bの先端よりも低い状態となるまで当該カバー部材10を押し下げ、前記各係合爪14bの先端内側縁(前記各係合部14の開口縁)をピラー重合部7の係合片7bの先端に引っかける。
【0036】
続いて、この状態から、前記各係合爪14bと係合片7bとの接点を中心に、カバー部材10を図中の時計方向へ回転させるように、サポートリップ13をさらに車外側へと押し出すことにより、図5に示すように、係合片7bの先端を前記各係合部14の係合溝14a内へと入り込ませる。これにより、前記各係合部14が係合片7bにそれぞれ係合すると共に、カバーリップ12の先端がフロントウインドウガラス1の外面に当接することとなり、当該カバー部材10のフロントフェンダー4への取付が完了する。
【0037】
ここで、前記カバー部材10をフロントフェンダー4に取り付ける際、当該カバー部材10には、サポートリップ13の弾性変形に伴う反力(弾性力)fが発生していて、この弾性力fによって取付基部11が常に図5中の破線矢印の方向へと付勢されることから、当該取付基部11の下端側を車外側へと押し出して前記各係合部14を係合片7bに係合させるにあたって、当該各係合部14が係合片7bを乗り越えてフロントフェンダー4の内側へと入り込むのを抑制することができる。
【0038】
これにより、カバー部材10の車体への組み付け作業性が向上し、当該組み付け作業の失敗を抑制できる結果、車両組立時間の短縮化が図れ、車両の製造コストの低廉化に供される。さらには、当該組み付け作業の失敗を抑制できることにより、その組み付け作業の失敗に伴うカバー部材10の損傷を抑制することが可能となり、当該カバー部材10の歩留まりの向上にも供される。
【0039】
また、この際、サポートリップ13が車外側へと指向するように構成されていることで、かかる構成において前記各係合部14が係合片7bを乗り越えるには、サポートリップ13につき湾曲状の大きな弾性変形を伴うことになる、つまりサポートリップ13を必要以上に大きく弾性変形させる必要があるが、普通に組み付け作業を行う場合には、このような弾性変形は生じ難いことから、当該カバー部材10の組み付け時において、前記各係合部14が係合片7bを乗り越えてしまうといった前記不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【0040】
また、前記フェンダー取付部11aにはストッパー16が設けてあるため、前記組み付け時にカバー部材10をフロントフェンダー4側へ強く押し込んだ場合でも、ストッパー16がフード開閉用ヒンジ3aに当接することによって当該カバー部材10の移動が規制されることになるため、このカバー部材10のフロントフェンダー4への組み付け作業性のさらなる向上に供される。
【0041】
そして、前記カバー部材10のフロントフェンダー4への取付が完了した後、カウル取付部11bの係止突起17をカウルカバー6の係止孔6bに押し込むことによって、当該係止突起17の基端縁を係止孔6bの孔縁に係止させる。これにより、当該カバー部材10のカウルカバー6への取付が完了すると共に、当該カバー部材10の車体への取付が完了する。
【0042】
ここで、前記カバー部材10のカウルカバー6への組み付け時においても、サポートリップ13による弾性力fが取付基部11に常時作用していることで、当該カバー部材10の取付剛性が向上し、その取付状態をより強固に維持することが可能となる。これによって、前記カバー部材10のカウルカバー6への組み付け作業時に、当該カバー部材10に外力F’が作用した場合でも、取付基部11には前記外力F’に対する反力f’が作用することによって前記外力F’を打ち消すことができ、当該カバー部材10のフロントフェンダー4からの脱落を抑制することができる。換言すれば、前記サポートリップ13の弾性力fに基づくカバー部材10の取付剛性の向上により、当該カバー部材10のカウルカバー6への組み付け性の向上にも供される。
【0043】
以上のことから、本実施形態に係るカバー部材10によれば、前記上方への押圧力、つまり前記各係合部14の係合性を高める方向に付勢力fを付与する前記サポートリップ13を設けたことで、当該カバー部材10を熱可塑性エラストマのような軟質の樹脂材料により形成した場合でも、当該カバー部材10の組み付け作業性を向上させることができる。これによって、車両組立時間の短縮化や、前記組み付け作業の失敗に伴うカバー部材10の品質や歩留まりの低下の抑制に供される。
【0044】
さらに、前記サポートリップ13を設けたことで、該サポートリップ13により付与される付勢力fによってカバー部材10の取付剛性が向上することとなるため、当該カバー部材10を熱可塑性エラストマのような軟質の樹脂材料により形成した場合でも、当該カバー部材10の組み付け時はもとより、車体に取り付けた後も、その取付状態を良好に維持することができる。これにより、車体取付後におけるカバー部材10のガタつきや位置ずれ等の発生が抑制され、この結果、フロントフェンダー4の内側端縁とフロントウインドウガラス1の外面との間に隙間が生じてしまうおそれがなくなり、車体の外観を良好に維持することに供される。
【0045】
また、前記サポートリップ13は、取付基部11に対して十分に長く下方へ延出するように構成され、これによって、十分な弾性変形代が確保されていることから、ピラー重合部7とフェンダー重合部8との間の寸法等、車体の外装部品に組み付け誤差が生じている場合であっても、当該サポートリップ13の弾性変形によって前記組み付け誤差を吸収することができる。この結果、車体の組付誤差の影響を受けることなく、前記弾性力fに基づく組み付け作業性や取付剛性の向上といった前述の作用効果が得られる。
【0046】
また、本実施形態に係るカバー部材10の場合、前記サポートリップ13の弾接位置を、フロントフェンダー4との係合位置から車体幅方向外側にオフセットさせているため、サポートリップ13の弾性力fのチューニング幅を広く確保することが可能となる。これにより、当該カバー部材10の前記組み付け作業性のさらなる向上に供される
さらには、かかるオフセット構造により、前記各係合部14周りには、当該サポートリップ13の弾性力fに基づき図5中の時計回転方向のモーメントMを生じることとなり、このモーメントMは、カバーリップ12をフロントウインドウガラス1側へと押し付けるように作用することとなる。この結果、フロントウインドウガラス1に対するカバーリップ12の密着性を向上させることができ、これによって、車体の組付誤差等を柔軟に吸収し、車体の良好な外観を確保することに供される。
【0047】
図9は、本発明に係るカバー部材の第2実施形態を示しており、当該第2実施形態に係るカバー部材20では、前記第1実施形態に係るカバー部材10の構成を基本とし、サポートリップ13の形状を変更したものである。なお、本実施形態に係るカバー部材20も、基本的な構成は前記カバー部材10と同様であることから、該カバー部材10と異なる構成についてのみ説明するものとして、前記カバー部材10と同じ構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0048】
すなわち、本実施形態に係るカバー部材20では、前記サポートリップ13のフェンダー重合部8に弾接する部位よりも基端側に、該サポートリップ13と反対側(車内側)に下方へ傾斜状に延出し、車体取付状態においてその先端部がフェンダー重合部8の外面に弾接するように設定された補助リップ21が当該サポートリップ13と一体に成形されている。
【0049】
この補助リップ21は、サポートリップ13よりも十分短い長さに設定され、該サポートリップ13よりも強い弾性力f2を発揮するように構成されている。そして、この補助リップ21は、自由状態においてサポートリップ13と反対側に指向するように構成されており、車体取付時においても、当該指向状態を維持したまま、つまり車内側へと指向した状態でフェンダー重合部8の外面に弾接するようになっている。
【0050】
この実施形態に係るカバー部材20によれば、カバー部材20を車体に取り付ける際には、前記カバー部材10と同様、当該カバー部材20を下方へ押し下げることによって前記各係合部14を係合片7bに係合させることになるが、このとき、取付基部11にはサポートリップ13による前記弾性力fのほかに補助リップ21による前記弾性力f2が作用することとなり、この補助リップ21の踏ん張るように作用する弾性力f2によって取付基部11の車外側への移動をより一層抑制することが可能となる。これにより、カバー部材20を熱可塑性エラストマのような軟質の樹脂材料によって形成した場合でも、前記各係合部14が係合片7bを乗り越えてしまうことによる前記不具合のさらなる抑制に供されると共に、当該カバー部材20の取付後においてもその取付状態の良好な保持性が得られる。
【0051】
また、前記補助リップ21を設けたことにより、フェンダー重合部8の外面に弾接するリップの接地面積が増大することとなり、カバー部材20の車外側への移動をより効果的に規制することが可能となる。これにより、カバー部材20の組み付け作業性や取付後の位置保持性の向上に供される。
【0052】
図10は、本発明に係るカバー部材の取付構造の実施形態を示しており、当該実施形態に係るカバー部材10の取付構造にあっては、前記第1実施形態に係るフェンダー重合部8の外面に凸部9を設け、この凸部9にサポートリップ13の先端部が弾接するように構成したものである。なお、本実施形態においても、基本的な構成は前記第1実施形態と同様であるため、該第1実施形態と異なる構成についてのみ説明するものとして、前記第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0053】
すなわち、本実施形態に係るカバー部材10の取付構造では、フェンダー重合部8の車外側の端部に上方へ突出する凸部9が設けられていて、カバー部材10の取付時において、サポートリップ13の先端部が前記凸部9の内側面9aに弾接するような構造となっている。
【0054】
かかる構造によれば、前記カバー部材10の車体への組み付け時において、取付基部11には、サポートリップ13の先端部が凸部9の内側面9aに弾接することによる反力(弾性力)f3が作用することとなり、この弾性力f3によって取付基部11の車外側への移動を効果的に抑制することが可能となる。これにより、カバー部材10を熱可塑性エラストマのような軟質の樹脂材料によって形成した場合でも、前記各係合部14が係合片7bを乗り越えてしまうことによる前記不具合の効果的な抑制に供されると共に、当該カバー部材10の取付後においてもその取付状態の良好な保持性が得られる。
【0055】
以上、本発明は、前記各実施形態等の構成に限定されるものでなく、例えば取付基部11の具体的な形状やサポートリップ13の寸法等については、適用する車体の仕様等に応じて自由に変更することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…フロントウインドウガラス
2…フロントピラー
4…フロントフェンダー
7…ピラー重合部
8…フェンダー重合部
10…カバー部材
11…取付基部
12…カバーリップ
13…サポートリップ
f…弾性力(押圧力)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントウインドウガラス下端側の側辺部と、該側辺部の上方に位置し、フロントピラー下端側を覆うフロントフェンダーの内側端部と、の間に配置され、前記フロントウインドウガラス下端側の側辺部と前記フロントフェンダーの内側端部との間に形成された隙間を閉塞するカバー部材であって、
前記フロントフェンダーの前記フロントピラー下端側と重合するピラー重合部の内側端部に取り付けられる取付基部と、
前記取付基部から前記フロントウインドウガラスに向かってに延出し、車体取付状態においてその先端が前記フロントウインドウガラスの外面に当接するカバーリップと、
前記取付基部から前記カバーリップと反対側に下方へ傾斜状に延出し、車体取付状態においてその先端側が前記フロントピラーの前記フロントフェンダーと重合するフェンダー重合部の外面に弾接して、前記取付基部に上方への押圧力を付与するサポートリップと、を備えたことを特徴とするカバー部材。
【請求項2】
前記請求項1に記載のカバー部材において、
前記サポートリップの前記フェンダー重合部に弾接する部位よりも基端側に、該サポートリップと反対側に下方へ傾斜状に延出して、車体取付状態においてその先端側が前記フェンダー重合部の外面に弾接する補助リップを設けたことを特徴とするカバー部材。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載のカバー部材の取付構造であって、
前記フェンダー重合部の外面に凸部を設け、該凸部の内側面に前記サポートリップの先端側が弾接するように構成したことを特徴とするカバー部材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−152870(P2011−152870A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16245(P2010−16245)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000158840)鬼怒川ゴム工業株式会社 (171)
【Fターム(参考)】