説明

カバー部材及びステッカ

【課題】意匠性を有するカバー部材において、その意匠性をさらに向上させることができるカバー部材及びステッカを提供する。
【解決手段】カバー部材は、裏面22がエンジンに対向するように配置されるカバー本体21と、カバー本体21の表面23に形成された意匠凹部25を覆うように形成されたステッカ本体31及びステッカ本体31の裏面33側に設けられ且つステッカ本体31をカバー本体21に接着させるための接着層37を有するステッカ30と、意匠凹部25内を外部に連通させる連通路38と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンなどの車載装置を保護するためのカバー部材、及び該カバー部材に貼付けられるステッカに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンルーム内には、エンジンなどの車載装置が設置されている。こうした車載装置には、該装置で発生した騒音を吸音したり、装置を保護したりするためのカバー部材が設けられている。例えば、特許文献1には、車載装置の一例としてのエンジンを保護するカバー部材が開示されている。
【0003】
カバー部材は、ユーザが車両のボンネットを開放してエンジンルーム内を覗いた場合に、当該ユーザに視認できる位置に配置されている。そのため、ユーザが視認できる表面に種々のデザインを施した意匠性を有するカバー部材が、車両に搭載されるようになっている。こうしたカバー部材に施されるデザインは、一般的に、カバー部材の表面から浮き上がらせるように凸状に形成されている。また、近年では、凸状をなす部分に着色を施すことにより、意匠性の向上を図ったカバー部材も知られている。なお、カバー部材に施されるデザインとしては、例えば、車両の製造元を表現するロゴ、搭載する技術名称を表すための文字などが挙げられる。
【0004】
ところで、カバー部材自体の形状は同一であるものの、表面に施すデザインが異なる場合には、カバー部材自体を別途製造する必要がある。この場合、カバー部材の製造に用いる型枠を多数用意する必要が生じ、カバー部材の製造コストが高くなってしまう。
【0005】
そこで、近年では、製造コストの高コスト化を抑制しつつ、表面に施すデザインの異なる複数種類のカバー部材を製造する方法が考えられている。すなわち、この方法では、表面に第1のデザインを模した凹部(以下、「意匠凹部」ともいう。)が形成されたカバー部材が、製造される。そして、第1のデザインとは異なる第2のデザインを表面に施したカバー部材を製造する場合には、図8(a)に示すように、カバー部材100の表面に、第2のデザインを施したステッカ110が貼付けられる。この際、ステッカ110は、カバー部材100の表面に形成された意匠凹部101を覆い隠すように、カバー部材100に貼付けられる。その結果、複数の型枠を準備する必要がないため、表面に施されたデザインの異なる複数種類のカバー部材が、製造コストの高コスト化を抑制しつつ製造されるようになる。
【0006】
なお、上記ステッカ110は、PET(ポリエチレンテレフタラート)で構成されるステッカ本体111と、該ステッカ本体111の裏面側に設けられる接着層112とを備えている。この接着層112は、ステッカ本体111の裏面全体に形成されるものであって、例えば、両面テープで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−230312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ステッカ110を貼付けたカバー部材100を高温雰囲気内に設置して耐熱評価を行った場合には、以下に示す問題が発生した。すなわち、耐熱評価を開始してからある程度の時間が経過した時点で、図8(b)に示すように、ステッカ110において凹部101に対向する部分が、凹部101側に凹んでしまった。
【0009】
上記耐熱評価でステッカ本体111に凹みが発生するということは、当該カバー部材100を搭載した車両でもステッカ本体111に凹みが生じ得ることを意味している。もし仮に、ステッカ110が凹むという現象が、ユーザの所有する車両で発生したとすると、カバー部材100の意匠性が低下し、ひいてはユーザに不快感を与えてしまうおそれがある。
【0010】
なお、こうした問題は、エンジン用のカバー部材に限らず、エンジンルーム内に設置されるエンジン以外の他の車載装置用のカバー部材であっても同様に発生し得る。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。その目的は、意匠性を有するカバー部材において、その意匠性をさらに向上させることができるカバー部材及びステッカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、カバー部材にかかる請求項1に記載の発明は、車両のエンジンルーム内に設置された車載装置に用いられるカバー部材であって、裏面が前記車載装置に対向するように配置されるカバー本体と、前記カバー本体の表面に形成された凹部を覆うように形成されたステッカ本体、及び該ステッカ本体の裏面側に設けられ且つ前記ステッカ本体を前記カバー本体に接着させるための接着層を有するステッカと、前記凹部内を外部に連通させる連通路と、を備えることを要旨とする。
【0012】
凹部を覆うようにカバー本体に取り付けられるステッカに凹みが生じるということは、凹部内が外部よりも低圧になることが原因であると考えられる。そこで、本発明のカバー部材には、凹部内を外部に連通させるための連通路が設けられている。そのため、カバー本体の表面に凹部を覆うようにステッカが設けられたとしても、凹部内は連通路を介して外部と連通しているため、凹部内が外部よりも低圧となることが抑制される。すなわち、カバー本体に設けられたステッカの一部に凹みが発生することが抑制される。したがって、ステッカがカバー本体に設けられることにより、意匠性を有するカバー部材の意匠性を、さらに向上させることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカバー部材において、前記連通路は、前記凹部内と前記カバー本体の表面側に位置する空間とが連通するように構成されていることを要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、凹部内は、カバー部材を挟んで車載装置の反対側の空間と連通するようになる。この場合、凹部の底面に、該凹部内と外部とを連通させるための孔を、連通路として設けなくてもよい。そのため、カバー部材の製造工程において、カバー本体に孔を設けるための工程を設けなくてもよい。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のカバー部材において、前記接着層は、前記ステッカ本体の裏面の一部分に設けられており、前記連通路は、前記カバー本体の表面と前記ステッカ本体の裏面との間に形成された空間を含むことを要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、接着層の形状を工夫することにより、連通路を形成することができる。つまり、カバー本体に形成される凹部の形状に関係なく、凹部内を、連通路を介して外部と連通させることができる。そのため、カバー本体に設けられたステッカの一部に凹みが発生することを抑制することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のカバー部材において、前記接着層は、前記ステッカ本体の裏面において該ステッカ本体の周縁の一部に設けられていることを要旨とする。
【0018】
上記構成によれば、接着層と凹部内の気体との接触面積を狭くすることができる。接着層を構成する材料が凹部内の気体を吸収していたと仮定した場合、接着層と凹部内の気体との接触面積が狭くなる分、凹部内における圧力低下を抑制することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載のカバー部材において、前記車載装置は、エンジンであることを要旨とする。
車両のエンジンは発熱源でもある。こうしたエンジンの近傍に配置されるカバー部材は高温となりやすい。もし仮に凹部を囲む部材(例えば、接着層)を構成する材料が凹部内との気体と化学反応を起こすとすると、カバー部材が高温になるほど、化学反応が促進され、凹部内が減圧されやすくなる。しかし、本発明では、凹部内は連通路を介して外部と連通している。したがって、こうした環境下であっても、凹部内を外部と連通路を介して連通させることにより、ステッカの凹みの発生を抑制することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載のカバー部材において、前記ステッカの前記ステッカ本体の裏面には、金属膜が成膜され、前記ステッカ本体の裏面側には、前記金属膜の腐食を抑制するための腐食抑制層が設けられており、前記接着層は、前記腐食抑制層においてカバー本体と対向する面に設けられていることを要旨とする。
【0021】
ステッカの裏面側には、連通路などを介して水分(液体又は水蒸気)が入る。そのため、もし仮にステッカ本体の裏面側に成膜された金属膜が露出していたとすると、金属膜は、連通路や凹部内に入った水分によって腐食される。すると、金属膜の少なくとも一部は腐食によって変色し、ステッカを含むカバー部材の意匠性が低下してしまう。そこで、本発明では、ステッカには、金属膜の腐食を抑制するための腐食抑制層が設けられている。そのため、ステッカ本体に設けられた金属膜の腐食に起因した変色の発生を抑制でき、ひいてはカバー部材に設けられたステッカの意匠性の低下を抑制することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のカバー部材において、前記カバー本体において前記ステッカの取り付け位置には、位置決め用の凹部が形成され、該位置決め用の凹部の底面に、前記凹部が形成されていることを要旨とする。
【0023】
上記構成によれば、ステッカの側壁と、位置決め用の凹部の側壁との間には、ステッカの公差を許容する程度の隙間が介在している。そして、この隙間は、外部から連通路内に水などの液体が入ることを抑制する。したがって、ステッカ本体の裏面側に水などの液体が入りにくい分、ステッカ本体に設けられた金属膜の腐食を抑制することができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項2〜請求項4、請求項6及び請求項7のうち何れか一項に記載のカバー部材において、前記凹部は、第1の図柄を模した形状に形成されており、前記ステッカは、その表面側から第2の図柄を視認可能に形成されていることを要旨とする。
【0025】
上記構成によれば、カバー本体を、ステッカを取り付けないカバー部材としても利用することができる。
一方、ステッカにかかる請求項9に記載の発明は、車両のエンジンルーム内に設置された車載装置に設けられたカバー部材の表面に、該表面に形成された凹部を覆うように貼付けられるステッカであって、板状をなすステッカ本体と、前記ステッカ本体の裏面側に設けられ且つ該ステッカ本体を前記カバー部材に接着させるための接着層と、を備え、前記接着層は、前記ステッカ本体の周縁の一部に設けられていることを要旨とする。
【0026】
上記構成によれば、カバー部材の表面に形成された凹部を覆うようにステッカが貼付けられる。すると、カバー部材の表面とステッカ本体の裏面との間には、凹部内を外部と連通させるための空間が形成される。すなわち、カバー部材の表面にステッカが貼付けられても、凹部内は外部と連通しているため、凹部内が外部よりも低圧となることが抑制される。すなわち、カバー本体に設けられたステッカの一部に凹みが発生することが抑制される。したがって、凹みの発生しにくいステッカがカバー本体に設けられることにより、意匠性を有するカバー部材の意匠性を、さらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のカバー部材の一実施形態を説明する模式図。
【図2】カバー部材の要部を示す平面図。
【図3】ステッカが貼られたカバー部材の要部を説明する平面図。
【図4】図3の4−4線矢視断面図。
【図5】図3の5−5線矢視断面図。
【図6】別の実施形態のステッカを説明する平面図。
【図7】(a)は別の実施形態のカバー本体の要部を説明する平面図、(b)は図7(a)に示すカバー本体にステッカを貼付けた様子を模式的に示す断面図。
【図8】(a)(b)は従来のカバー部材を模式的に説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図5に従って説明する。
車両のエンジンルーム内には、図1に示すように、車載装置の一例としてのエンジン10が設置されている。このエンジン10の上方には、該エンジン10で発生した騒音の吸音及びエンジン10の保護を目的としてカバー部材20(「エンジンカバー」ともいう。)が設けられている。
【0029】
このカバー部材20は、合成樹脂で構成されるカバー本体21を備えている。このカバー本体21は、裏面22がエンジン10に対向するように配置されている。そして、カバー本体21の表面23は、図示しないボンネットを開放した場合にユーザから視認されるようになっている。
【0030】
こうしたカバー本体21の表面23には、図2に示すように、平面視略矩形状をなす位置決め用の凹部24が形成されている。この位置決め用の凹部24の底面24aにおける中央には、第1の図柄を模した形状の意匠凹部25が形成されている。本実施形態では、意匠凹部25は、アルファベットの「BBBB」を模した形状となっている。こうした意匠凹部25が、凹部に相当する。
【0031】
また、位置決め用の凹部24の底面24aには、図3に示すように、意匠凹部25を覆うようにステッカ30が貼付けられる。そのため、カバー本体21にステッカ30が貼付けられた場合には、意匠凹部25を外部から視認することはできない。また、位置決め用の凹部24の底面24aに貼付けられたステッカ30の周壁と位置決め用の凹部24の側壁との間には、ステッカ30の寸法公差を許容できる程度の隙間が介在している。
【0032】
次に、ステッカ30について、図4及び図5を参照して説明する。
ステッカ30は、図4及び図5に示すように、板状をなす略長方形状のステッカ本体31を備えている。このステッカ本体31は合成樹脂性であり、合成樹脂としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタラート)が挙げられる。PETで構成されたステッカ本体31は透明である。こうしたステッカ本体31の表面32(図4及び図5では上面)には、第2の図柄(本実施形態では、アルファベットの「AAAA」を模した図柄)が形成されている。ステッカ本体31の裏面33(図4及び図5では下面)には金属膜34が成膜されている。この金属膜34としては、例えば、アルミニウムを含む膜が挙げられる。本実施形態では、ステッカ本体31は透明な板材であるため、ステッカ30の表面側からは、ステッカ本体31の裏面33に設けられた金属膜34を視認可能である。
【0033】
また、ステッカ本体31の裏面側には、金属膜34の腐食を抑制するための合成樹脂製の腐食抑制層35が設けられている。この腐食抑制層35を構成する合成樹脂としては、例えば、PETが挙げられる。こうした腐食抑制層35と金属膜34との間には、金属膜34に腐食抑制層35を接合させるための接合層36が設けられている。この接合層36は、例えば、両面テープで構成される。
【0034】
また、腐食抑制層35の裏面側には、ステッカ本体31をカバー本体21に接着させるための接着層37が設けられている。接着層37は、腐食抑制層35においてカバー本体21の意匠凹部25に対向しない位置に配置されている。本実施形態において、接着層37は、ステッカ30の短手方向(図4では左右方向)における両縁に、ステッカ30の長手方向(図4では紙面に直交する方向)に沿って延びるように形成されている。すなわち、接着層37は、ステッカ本体31の裏面33側において、ステッカ本体31の周縁の一部に設けられている。なお、接着層37の厚み寸法は、意匠凹部25の深さ寸法よりも十分に小さい。
【0035】
そのため、意匠凹部25内は、位置決め用の凹部24の底面24a、腐食抑制層35の裏面35a及び接着層37の側面37aによって囲まれた連通路38を介して、エンジンルーム内においてカバー部材20よりも上方の空間、即ちカバー部材20の表面側の空間と連通している。つまり、カバー本体21の表面23とステッカ本体31の裏面33との間に形成された空間により、連通路38が構成される。こうした連通路38を設けた結果、意匠凹部25内の圧力は、エンジンルーム内の圧力、即ち大気圧と同程度の圧力で維持される。
【0036】
次に、エンジン10の駆動時でのカバー部材20の作用について説明する。
エンジン10が駆動し始めると、該エンジン10は発熱源となる。こうしたエンジン10で発生した熱は、エンジン10の近傍に配置されるカバー部材20にも伝達される。その結果、カバー部材20を構成するカバー本体21やステッカ30の温度が上昇し始める。すると、カバー本体21の意匠凹部25内の圧力は減圧傾向となる。推測では、意匠凹部25内の空気(気体)の一部がステッカ30を構成する接着層37に吸収されるためと考えられる。より具体的には、接着層37を構成する材料が意匠凹部25内の空気の一部と化学反応を起こしている可能性がある。この場合、意匠凹部25内の気体の温度や接着層37の温度が高いほど、化学反応は起こりやすくなる。
【0037】
しかし、本実施形態では、意匠凹部25内は、連通路38を介して外部(大気)と連通している。そのため、意匠凹部25内の空気の一部が接着層37などに吸収されたとしても、図5の破線矢印に示すように、意匠凹部25内には連通路38を介して空気が流入し、意匠凹部25内の圧力は外部の圧力と同程度で維持される。その結果、ステッカ30において意匠凹部25に対応する部分は、意匠凹部25側に凹まない。すなわち、意匠凹部25内の圧力とステッカ30の表面側の空間の圧力との差圧に基づくステッカ30の凹みの発生が抑制される。
【0038】
また、車両の洗車時などにおいては、カバー部材20に洗浄水を直接放水し、該カバー部材20も洗浄されることがある。こうした場合には、連通路38を介して意匠凹部25内に洗浄水が入るおそれがある。こうした洗浄水を意匠凹部25外に排出する構成をカバー部材20は有していないため、意匠凹部25内には洗浄水が長期間保持される。ここで、もし仮にステッカ30の金属膜34を保護するための腐食抑制層35を設けなかったとすると、金属膜34を構成する金属が意匠凹部25内の洗浄水によって腐食される。すると、金属膜34の少なくとも一部が腐食によって変色し、ステッカ30の意匠性が低下する。しかし、本実施形態のステッカ30には、金属膜34を保護するための腐食抑制層35が設けられている。そのため、金属膜34を構成する金属の腐食が抑制される。そのため、金属膜34の腐食に起因した変色が抑制される分、カバー部材20に貼付けられたステッカ30の意匠性の低下が抑制される。
【0039】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)カバー部材20には、カバー本体21の意匠凹部25内を外部に連通させるための連通路38が設けられている。そのため、意匠凹部25内が外部よりも低圧となることを抑制できる。つまり、カバー本体21の表面23に貼付けられたステッカ30の一部に凹みが発生することを抑制できる。したがって、意匠性を有するカバー本体21にステッカ30を貼付けることにより、カバー部材20の意匠性を、さらに向上させることができる。
【0040】
(2)意匠凹部25内は、カバー部材20を挟んでエンジン10の反対側の空間と連通している。この場合、意匠凹部25の底面に、該意匠凹部25内と外部とを連通させるための孔を連通路として設けなくてもよい。そのため、カバー部材20の製造工程において、カバー本体21に孔を設けるための工程を設けなくてもよい。
【0041】
(3)また、意匠凹部25の底面に、該意匠凹部25内と外部とを連通させるための孔を設けないため、ステッカ30を貼付けていないカバー本体21を、カバー部材として利用することができる。すなわち、一種類のカバー本体21にステッカ30を貼付けるか否かによって、二種類以上のカバー部材を用意することができる。
【0042】
(4)連通路38は、ステッカ30の接着層37の形状を工夫することにより形成される。つまり、カバー本体21に形成される意匠凹部25の形状に関係なく、意匠凹部25内を、連通路38を介して外部と連通させることができる。
【0043】
(5)車両のエンジン10は発熱源でもある。こうしたエンジン10の近傍に配置されるカバー部材20は高温となりやすく、該カバー本体21に形成された意匠凹部25内が減圧されやすい。こうした環境下であっても、意匠凹部25内を外部と連通路38を介して連通させることにより、ステッカ30の一部に凹みが発生することを抑制できる。
【0044】
(6)本実施形態のステッカ30は、金属膜34の腐食を抑制するための腐食抑制層35を備えている。そのため、意匠凹部25内に入った水分に基づく金属膜34の腐食を抑制することができる。したがって、金属膜34の腐食に伴う変色を抑制でき、ステッカ30を含むカバー部材20の意匠性の低下を抑制することができる。
【0045】
(7)本実施形態では、ステッカ30は、位置決め用の凹部24の底面24aに貼付けられる。この際、ステッカ30の周壁と、位置決め用の凹部24の側壁との間には、ステッカ30の寸法公差を許容する程度の隙間が介在している。こうした隙間は狭くなっており、該隙間を介して外部から連通路38内に水分が入ることが抑制される。したがって、意匠凹部25内に水分が入りにくい分、ステッカ30の金属膜34の腐食に起因した変色の発生を抑制することができる。
【0046】
なお、実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・実施形態において、カバー本体21には位置決め用の凹部24を設けなくてもよい。この場合、位置決め用の凹部24を設ける場合と比較して、連通路38を介して意匠凹部25内に外部から水分が入りやすくなる。しかし、ステッカ30の裏面側には、金属膜34の腐食を抑制するための腐食抑制層35が設けられているため、ステッカ30の金属膜34の腐食を抑制することができる。
【0047】
・実施形態において、ステッカ30のステッカ本体31は、非透明な板材であってもよい。この場合、ステッカ本体31の裏面側には、金属膜34を設けなくてもよい。また、ステッカ本体31が水分によって腐食することがないのであれば、腐食抑制層35も設けなくてもよい。
【0048】
・実施形態において、ステッカ30のステッカ本体31の表面側には、ステッカ本体31全体を着色するための処理を施してもよい。この場合、ステッカ本体31の裏面側には、金属膜34及び腐食抑制層35を設けなくてもよい。
【0049】
・実施形態において、接着層37を、ステッカ30の長手方向における両縁のうち何れか一方にも設けてもよい。
・実施形態において、接着層37を、図6に示すように、ステッカ30の周縁に沿って、一定間隔に配置してもよい。
【0050】
・実施形態において、意匠凹部25内を外部と連通させるための連通路が形成されるのであれば、ステッカ30の裏面において意匠凹部25と対向する部分の一部に、接着層37を設けてもよい。
【0051】
・実施形態において、ステッカ30の裏面全体に接着層37を設けてもよい。この場合、図7(a)(b)に示すように、カバー本体21に、意匠凹部25と連続する溝部40を設けてもよい。この場合、溝部40が連通路として機能する。
【0052】
・実施形態において、ステッカ30が覆う凹部は、第1の図柄を模した凹部ではなくてもよい。例えば、凹部は、カバー本体21を形成する際にできてしまった凹部であってもよい。この場合、ステッカ30は、カバー本体21の凹部を覆い隠すために、カバー本体21に貼付けられる。こうした凹部を外部と連通させるための連通路は、凹部の底面からカバー本体21の裏面22に貫通する貫通孔であってもよい。そして、カバー本体21に貫通孔を設けた場合、ステッカ30の裏面全体に接着層37を設けてもよい。
【0053】
・実施形態において、接着層37は、両面テープではなく、接着剤によって構成される層であってもよい。
・実施形態において、カバー本体21は、合成樹脂以外の他の任意の材料(例えば、ステンレス)で構成されたものであってもよい。
【0054】
・実施形態において、車載装置は、エンジンルーム内に設置される装置であればエンジン10以外の他の任意の装置(例えば、バッテリ)であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…車載装置の一例としてのエンジン、20…カバー部材、21…カバー本体、22…裏面、23…表面、24…位置決め用の凹部、24a…底面、25…凹部の一例としての意匠凹部、30…ステッカ、31…ステッカ本体、34…金属膜、35…腐食抑制層、37…接着層、38…連通路、40…連通路の一例としての溝部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンルーム内に設置された車載装置に用いられるカバー部材であって、
裏面が前記車載装置に対向するように配置されるカバー本体と、
前記カバー本体の表面に形成された凹部を覆うように形成されたステッカ本体、及び該ステッカ本体の裏面側に設けられ且つ前記ステッカ本体を前記カバー本体に接着させるための接着層を有するステッカと、
前記凹部内を外部に連通させる連通路と、を備えることを特徴とするカバー部材。
【請求項2】
前記連通路は、前記凹部内と前記カバー本体の表面側に位置する空間とが連通するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のカバー部材。
【請求項3】
前記接着層は、前記ステッカ本体の裏面の一部分に設けられており、
前記連通路は、前記カバー本体の表面と前記ステッカ本体の裏面との間に形成された空間を含むことを特徴とする請求項2に記載のカバー部材。
【請求項4】
前記接着層は、前記ステッカ本体の裏面において該ステッカ本体の周縁の一部に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のカバー部材。
【請求項5】
前記車載装置は、エンジンであることを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載のカバー部材。
【請求項6】
前記ステッカの前記ステッカ本体の裏面には、金属膜が成膜され、
前記ステッカ本体の裏面側には、前記金属膜の腐食を抑制するための腐食抑制層が設けられており、
前記接着層は、前記腐食抑制層においてカバー本体と対向する面に設けられていることを特徴とする請求項4に記載のカバー部材。
【請求項7】
前記カバー本体において前記ステッカの取り付け位置には、位置決め用の凹部が形成され、該位置決め用の凹部の底面に、前記凹部が形成されていることを特徴とする請求項6に記載のカバー部材。
【請求項8】
前記凹部は、第1の図柄を模した形状に形成されており、
前記ステッカは、その表面側から第2の図柄を視認可能に形成されていることを特徴とする請求項2〜請求項4、請求項6及び請求項7のうち何れか一項に記載のカバー部材。
【請求項9】
車両のエンジンルーム内に設置された車載装置に設けられたカバー部材の表面に、該表面に形成された凹部を覆うように貼付けられるステッカであって、
板状をなすステッカ本体と、
前記ステッカ本体の裏面側に設けられ且つ該ステッカ本体を前記カバー部材に接着させるための接着層と、を備え、
前記接着層は、前記ステッカ本体の周縁の一部に設けられていることを特徴とするステッカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−197689(P2012−197689A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61092(P2011−61092)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】