説明

カバー開閉機構及び画像処理装置

【課題】カバーの片閉まりを防止することができ、一対のロック機構のいずれかに寄せて配置された検出手段でカバーの開閉を適切に検出可能なカバー開閉機構の提供。
【解決手段】画像形成装置の備えるフロントカバーが開位置から閉位置へと移動する際、第一ロック機構31側では、第一係止爪25が第一被係止部32に当接して、第一被係止部32を乗り越え、第一被係止部32に係止してロック状態になる。一方、第二ロック機構33側では、第二係止爪26が、第二被係止部34に当接するか否かを問わず、第一被係止部32に連動して変位し、第二被係止部34を乗り越え、第二被係止部34に係止してロック状態になる。そのため、第一ロック機構31側では、相対的に押し込み抵抗が大きくなるのに対し、第二ロック機構33側では、押し込み抵抗が小さくなり、第一ロック機構31側だけがロック状態となるような事態に至りにくいものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体に形成された開口部を閉塞したり開放したりすることが可能なカバー開閉機構と、そのようなカバー開閉機構を備えた画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装置の筐体に開口部が形成されるとともに、その開口部を閉塞したり開放したりすることが可能なカバー開閉機構を備えた画像処理装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−022868号公報
【特許文献2】特開2000−039827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなカバー開閉機構を備える画像処理装置において、カバーの剛性が比較的低くてカバーに大きな歪みが生じ得る場合には、左右一対のロック手段の一方だけがロック状態となって、カバーの片閉まりが発生するおそれがあった。
【0005】
また、カバーが閉位置にあるか否かに応じてオン/オフが切り替わるセンサを、一対あるロック手段の一方に寄せて配置してある場合、上記のような片閉まりが発生してセンサ近傍のロック手段だけがロック状態になっても、センサのオン/オフが切り替わる。この場合、もう一方のロック手段がロック状態になっていなくても、カバーが閉位置へ移動したとの誤判定がなされ、装置の内部機構を作動させてしまうおそれがある。
【0006】
そのため、例えば、画像形成装置の場合であれば、カバーが片閉まりのまま用紙が搬送されることで、適正な用紙搬送が行われなくなり、その結果、適正な画像形成が実行できない状態となることがあった。また、片閉まりとなったカバーの隙間から装置内部へ異物が侵入し、装置の動作に障害をきたすなどのトラブルを招くおそれもあった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、カバーの片閉まりを防止ないし抑制でき、一対のロック機構のいずれかに寄せて配置された検出手段であってもカバーの開閉を適切に検出可能なカバー開閉機構と、そのようなカバー開閉機構を備えた画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
請求項1に記載のカバー開閉機構は、開口部が形成された筐体と、回動軸を中心に回動することにより、前記開口部を閉塞する閉位置と前記開口部を開放する開位置との間を移動可能に構成されたカバーと、前記カバーの第一部分及び前記筐体側のうち、いずれか一方に設けられた第一係止爪と、他方に設けられた第一被係止部とによって構成され、前記カバーを前記閉位置へ移動させた際には、前記第一係止爪及び前記第一被係止部が互いを拘束するロック状態になって前記カバーが前記開位置へ移動するのを阻止する状態となる第一ロック機構と、前記カバーの第二部分及び前記筐体側のうち、いずれか一方に設けられた第二係止爪と、他方に設けられた第二被係止部とによって構成され、前記カバーを前記閉位置へ移動させた際には、前記第二係止爪及び前記第二被係止部が互いを拘束するロック状態になって前記カバーが前記開位置へ移動するのを阻止する状態となる第二ロック機構と、前記第二ロック機構よりも前記第一ロック機構に近い位置において、前記カバーが前記閉位置へ移動したか否かを検出する検出手段とを備え、前記第一係止爪と前記第一被係止部は、前記カバーが前記閉位置に向けて移動するときに、相対的に第一方向へと移動して互いに当接するとともに、当接に伴って前記第一方向とは交差する第二方向へ前記第一係止爪が移動しつつ前記第一被係止部を乗り越えて、当該乗り越えたところで前記第一係止爪と前記第一被係止部が互いに係止することにより、前記ロック状態となる構造になっており、前記第二係止爪と前記第二被係止部は、前記カバーが前記閉位置に向けて移動するときに、前記第一係止爪が前記第二方向へ移動するのに連動して前記第二係止爪も前記第二方向へと移動することで、前記第二係止爪が前記第二被係止部には当接しない位置まで移動し、その状態のまま前記第二係止爪と前記第二被係止部が相対的に第一方向へと移動して、さらに前記第二係止爪が前記第一係止爪に連動して移動することで、前記第二係止爪と前記第二被係止部が互いに係止することにより、前記ロック状態となる構造になっていることを特徴とする。
【0009】
このように構成されたカバー開閉機構によれば、第一係止爪と第一被係止部は、カバーが閉位置に向けて移動するときに、互いに当接することで、互いを乗り越えてロック状態に至る。一方、第二係止爪と第二被係止部は、第二係止爪が第一係止爪に連動して移動することで、互いに接触することなくロック状態に至る。
【0010】
そのため、第一ロック機構と第二ロック機構とでは、第二ロック機構の方が第一ロック機構よりもロック状態となりやすく、第一ロック機構がロック状態となっているにもかかわらず、第二ロック機構がロック状態になっていない、という状況に陥りにくくなる。
【0011】
したがって、検出手段が、第二ロック機構よりも第一ロック機構に近い位置において、カバーが閉位置へ移動したか否かを検出しているにもかかわらず、第一ロック機構だけがロック状態となったことが原因で、カバーが閉位置へ移動したとの誤判定を行ってしまうことがない。
【0012】
請求項2に記載のカバー開閉機構は、請求項1に記載のカバー開閉機構において、前記第一係止爪及び前記第二係止爪は、単一の部品上に形成されることにより、前記第一係止爪に連動して前記第二係止爪が移動する構造とされていることを特徴とする。
【0013】
このように構成されたカバー開閉機構によれば、第一係止爪と第二係止爪が、単一の部品上に形成されている。したがって、各係止爪が別部品上に形成されてそれらの別部品間に動力伝達手段が介在させてあるような構造に比べ、少ない部品点数で、第一係止爪と第二係止爪を確実に連動させることができる。
【0014】
請求項3に記載のカバー開閉機構は、請求項1又は請求項2に記載のカバー開閉機構において、前記第一ロック機構及び前記第二ロック機構は、それぞれがロック状態となった際、前記第一係止爪と前記第一被係止部との間、及び前記第二係止爪と前記第二被係止部との間に、前記第一方向について、遊びとなる隙間が形成される構造になっており、しかも、前記隙間は、前記第一方向の寸法が、前記第二ロック機構において前記第一ロック機構よりも大きくされていることを特徴とする。
【0015】
このように構成されたカバー開閉機構によれば、上記のような隙間が、第二ロック機構において第一ロック機構よりも大きくされている。そのため、第二係止爪と第二被係止部との間には十分に大きな遊びがあり、第二係止爪が第一係止爪に連動して移動した際に、第二係止爪と第二被係止部を、きわめてスムーズに互いに係止させることができる。
【0016】
請求項4に記載のカバー開閉機構は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のカバー開閉機構において、前記カバーは、外力を受けると歪みが生じ得る構造で、前記歪みが生じていない状態においては、前記回動軸から離れた位置且つ互いに離れた位置にある第三部分及び第四部分が同時に前記閉位置へ到達する形態になっているものの、前記歪みが生じている状態においては、前記第三部分及び前記第四部分のうち、いずれか一方が前記閉位置へ到達しても他方は前記閉位置へ到達しない形態に変形する構造になっており、しかも、前記カバーの前記第三部分及び前記筐体側それぞれに設けられた一対の手段によって構成され、前記カバーを前記閉位置へ移動させた際には、前記一対の手段が互いを拘束するロック状態になって前記カバーが前記開位置へ移動するのを阻止する状態となる第三ロック機構と、前記カバーの前記第四部分及び前記筐体側それぞれに設けられた一対の手段によって構成され、前記カバーを前記閉位置へ移動させた際には、前記一対の手段が互いを拘束するロック状態になって前記カバーが前記開位置へ移動するのを阻止する状態となる第四ロック機構とを備え、前記検出手段は、前記第四ロック機構よりも前記第三ロック機構に近い位置において、前記カバーが前記閉位置へ移動したか否かを検出しており、前記カバーは、前記第四ロック機構がロック状態とならない状態のまま前記第三ロック機構がロック状態となる方向へ前記カバーを変形させる外力が加えられた際に、弾性変形する構造になっていて、その弾性変形に伴って生じる弾性復帰力で、前記第四ロック機構がロック状態になっていないにもかかわらず、前記第三ロック機構がロック状態になるのを防止していることを特徴とする。
【0017】
このように構成されたカバー開閉機構において、カバーは、外力を受けると歪みが生じ得る構造になっているため、第三部分が閉位置に到達したにもかかわらず、第四部分が閉位置に到達しない状態になることがある。ただし、このような状態になった場合、カバーの弾性変形に伴って生じる弾性復帰力で、第四ロック機構がロック状態になっていないにもかかわらず、第三ロック機構がロック状態になるのを防止する。
【0018】
そのため、第三ロック機構がロック状態になった場合には、第四ロック機構もロック状態になっていることになる。したがって、検出手段が、第四ロック機構よりも第三ロック機構に近い位置において、カバーが閉位置へ移動したか否かを検出しているにもかかわらず、第三ロック機構だけがロック状態となったことが原因で、カバーが閉位置へ移動したとの誤判定を行ってしまうことがない。
【0019】
請求項5に記載のカバー開閉機構は、請求項4に記載のカバー開閉機構において、前記第四ロック機構は、ロック状態とする際に、前記第三ロック機構よりも大きな外力を加える必要がある構造になっていることを特徴とする。
【0020】
このように構成されたカバー開閉機構によれば、第三ロック機構及び第四ロック機構それぞれが備える一対の手段が互いに接触した後、第三ロック機構及び第四ロック機構に対して同程度の力を加えても、第四ロック機構よりも第三ロック機構の方がロック状態となる位置へと移動しやすくなる。
【0021】
そのため、第三ロック機構及び第四ロック機構双方がロック状態になるほど大きな力が加わらない状況では、第四ロック機構がロック状態とならない状態のまま第三ロック機構がロック状態となる方向へカバーが弾性変形することになる。したがって、カバーの弾性変形に伴って生じる弾性復帰力で、第三ロック機構がロック状態になるのを防止することができる。
【0022】
請求項6に記載のカバー開閉機構は、請求項5に記載のカバー開閉機構において、前記第三ロック機構は、前記一対の手段として、前記カバーの前記第三部分及び前記筐体側のうち、いずれか一方に設けられた第三係止爪と、他方に設けられた第三被係止部とを有し、前記第三係止爪及び前記第三被係止部は、前記カバーが前記閉位置に向けて移動するときに、相対的に第三方向へと移動して当接するとともに、当接に伴って前記第三方向とは交差する第四方向へも相対的に移動しつつ互いを乗り越えて、当該乗り越えたところで互いに係止した状態となる構造になっており、前記第四ロック機構は、前記一対の手段として、前記カバーの前記第四部分及び前記筐体側のうち、いずれか一方に設けられた第四係止爪と、他方に設けられた第四被係止部とを有し、前記第四係止爪及び前記第四被係止部は、前記カバーが前記閉位置に向けて移動するときに、相対的に第五方向へと移動して当接するとともに、当接に伴って前記第五方向とは交差する第六方向へも相対的に移動しつつ互いを乗り越えて、当該乗り越えたところで互いに係止した状態となる構造になっており、しかも、前記第四係止爪及び前記第四被係止部が互いを乗り越える際には、前記第三係止爪及び前記第三被係止部が互いを乗り越える場合よりも大きな外力を加える必要がある構造になっていることを特徴とする。
【0023】
このように構成されたカバー開閉機構によれば、第四係止爪及び第四被係止部が互いを乗り越える際には、第三係止爪及び第三被係止部が互いを乗り越える場合よりも大きな外力を加える必要がある。そのため、第三ロック機構及び第四ロック機構に対して同程度の力を加えた場合には、第四ロック機構よりも第三ロック機構の方がロック状態となる位置へと移動しやすくなる。
【0024】
したがって、第三ロック機構及び第四ロック機構双方がロック状態になるほど大きな力が加わらない状況では、第四ロック機構がロック状態とならない状態のまま第三ロック機構がロック状態となる方向へカバーが弾性変形することになる。よって、このような形態にカバーが弾性変形すれば、カバーの弾性変形に伴って生じる弾性復帰力で、第三ロック機構がロック状態になるのを防止することができる。
【0025】
請求項7に記載のカバー開閉機構は、請求項6に記載のカバー開閉機構において、前記第四係止爪及び前記第四被係止部が前記第六方向へ移動するときの移動量は、前記第三係止爪及び前記第三被係止部が前記第四方向へ移動するときの移動量よりも大きい構造になっていることを特徴とする。
【0026】
このように構成されたカバー開閉機構によれば、第四係止爪及び第四被係止部は、互いを乗り越える際に、第三係止爪及び第三被係止部が第四方向へ移動するときの移動量に比べ、第六方向へ大きく移動する。そのため、互いを乗り越える際の移動量が大きくなる分だけ、互いを乗り越える際に大きな外力を加える必要があり、第三ロック機構及び第四ロック機構に対して同程度の力を加えた場合には、第四ロック機構よりも第三ロック機構の方がロック状態となる位置へと移動しやすくなる。
【0027】
したがって、第三ロック機構及び第四ロック機構双方がロック状態になるほど大きな力が加わらない状況では、第四ロック機構がロック状態とならない状態のまま第三ロック機構がロック状態となる方向へカバーが弾性変形することになる。よって、このような形態にカバーが弾性変形すれば、カバーの弾性変形に伴って生じる弾性復帰力で、第三ロック機構がロック状態になるのを防止することができる。
【0028】
請求項8に記載のカバー開閉機構は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のカバー開閉機構において、前記第三ロック機構は、前記一対の手段として、前記カバーの前記第三部分及び前記筐体側のうち、いずれか一方に設けられた第三係止爪と、他方に設けられた第三被係止部とを有し、前記第三係止爪及び前記第三被係止部は、前記カバーが前記閉位置に向けて移動するときに、相対的に第三方向へと移動して当接し、当接に伴って前記第三方向とは交差する第四方向へも相対的に移動しつつ互いを乗り越えて、当該乗り越えたところで互いに係止した状態となる構造になっており、前記第四ロック機構は、前記一対の手段として、前記カバーの前記第四部分及び前記筐体側のうち、いずれか一方に設けられた第四係止爪と、他方に設けられた第四被係止部とを有し、前記第四係止爪及び前記第四被係止部は、前記カバーが前記閉位置に向けて移動するときに、相対的に第五方向へと移動して当接し、当接に伴って前記第五方向とは交差する第六方向へも相対的に移動しつつ互いを乗り越えて、当該乗り越えたところで互いに係止した状態となる構造になっており、前記第三係止爪及び前記第三被係止部は、互いに係止した状態となる前に互いに乗り越える必要がある互いのピーク部分が平行に形成されており、前記第四ロック機構がロック状態とならない状態のまま前記第三ロック機構がロック状態となる方向へと移動した際に、前記ピーク部分が平行な位置関係から交差する位置関係に変化すると、互いに乗り越え不能な状態になることを利用して、前記第四ロック機構がロック状態になっていないにもかかわらず、前記第三ロック機構がロック状態になるのを防止していることを特徴とする。
【0029】
このように構成されたカバー開閉機構によれば、第四ロック機構がロック状態とならない状態のまま第三ロック機構がロック状態となる方向へと移動した際、ピーク部分は平行な位置関係から交差する位置関係に変化することで、互いに乗り越え不能な状態になる。したがって、第三係止爪と第三被係止部が互いに係止するのを、簡単且つ確実に防止し、第三ロック機構がロック状態になるのを防止することができる。
【0030】
請求項9に記載のカバー開閉機構によれば、第三係止爪及び第三被係止部が互いの接触面上で接触する状態となった際には、第三係止爪及び第三被係止部の第三方向への移動を促す力が作用する。また、第四係止爪及び第四被係止部が互いの接触面上で接触する状態となった際には、第四係止爪及び第四被係止部の第五方向への移動を促す力が作用する。
【0031】
その際、第四係止爪及び第四被係止部の第五方向への移動を促す力は、第三係止爪及び第三被係止部の第三方向への移動を促す力よりも大となる。したがって、第四係止爪及び第四被係止部は、互いのピーク部分を乗り越えれば、後は、第三係止爪及び第三被係止部に比べ、互いに係止した状態となりやすい。よって、第四係止爪及び第四被係止部が係止した状態となりにくいものに比べ、カバーを閉位置へ移動させやすくすることができる。
【0032】
請求項10に記載の画像処理装置は、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載のカバー開閉機構を備えている。
このように構成された画像処理装置によれば、本発明のカバー開閉機構を備えているので、本発明のカバー開閉機構について述べた通りの作用、効果を奏する。したがって、カバーが片閉まりとなっているにもかかわらず、その検出に失敗して画像処理装置を作動させてしまう、といったトラブルを未然に防ぐことができる。
【0033】
なお、本発明でいう画像処理装置について、より具体的な構造を例示すれば、例えば、原稿から画像を読み取る読取手段を筐体内に備えた画像読取装置、媒体に対して画像を形成する画像形成手段を筐体内に備えた画像形成装置、及びこれら読取手段及び画像形成手段の双方を筐体内に備えた複合型の画像処理装置などを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】画像形成装置の内部構造の概略を示す縦断面図。
【図2】開位置にあるフロントカバーとその周辺を斜め上前方から見た部分斜視図。
【図3】オープンボタンの斜視図。
【図4】(a)は開位置にあるフロントカバーのみを斜め上後方から見た斜視図、(b)は図4(a)に示すA部の拡大図、(c)はオープンボタンの右端側にある支軸付近の断面図、(d)は図4(a)に示すB部の拡大図、(e)はオープンボタンの左端側にある支軸付近の断面図。
【図5】(a)は第一ロック機構の係止爪と被係止部が当接した状態を左側面側から見た縦断面図、(b)は第一ロック機構が図5(a)の状態になったときの第二ロック機構の係止爪と被係止部の状態を左側面側から見た縦断面図、(c)は第一ロック機構の係止爪が回動しつつ被係止部を乗り越える状態を左側面側から見た縦断面図、(d)は第一ロック機構が図5(c)の状態になったときの第二ロック機構の係止爪と被係止部の状態を左側面側から見た縦断面図、(e)は第一ロック機構の係止爪が被係止部に係止した状態を左側面側から見た縦断面図、(f)は第一ロック機構が図5(e)の状態になったときの第二ロック機構の係止爪と被係止部の状態を左側面側から見た縦断面図。
【図6】第三ロック機構の構造を示す図であり、(a)はフロントカバーが閉位置からいくらか開位置側へ移動した状態を示す左側面図、(b)はフロントカバーが閉位置にある状態を示す左側面図。
【図7】第四ロック機構の構造を示す図であり、(a)はフロントカバーが閉位置からいくらか開位置側へ移動した状態を示す右側面図、(b)はフロントカバーが閉位置にある状態を示す右側面図。
【図8】(a)は第三ロック機構の係止爪と被係止部が当接した状態を示す左側面図、(b)は第三ロック機構の係止爪と被係止部が係合した状態を示す左側面図、(c)は第四ロック機構の係止爪と被係止部が当接した状態を示す右側面図、(d)は第四ロック機構の係止爪と被係止部が係合した状態を示す右側面図。
【図9】フロントカバーの左端部分を押圧したときに生じる歪みを示す説明図。
【図10】第三ロック機構の係止爪と被係止部を示す図であり、(a)は係止爪と被係止部が正常に係合した状態を示す平面図、(b)は係止爪と被係止部が正常に係合した状態を示す左側面図、(c)は係止爪と被係止部が係合不能な状態を示す平面図、(d)は係止爪と被係止部が係合不能な状態を示す左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。なお、以下の説明においては、装置各部の相対的な位置関係を簡潔に説明するため、図中に併記した上下左右前後の各方向を利用して説明を行う。
【0036】
[画像形成装置の構造]
画像形成装置1は、図1に示すように、筐体3の前面下部に、引き出し型の給紙カセット5を備え、筐体3の前面で、給紙カセット5の上部にはフロントカバー7が設けられている。また、筐体3の上面には、画像形成済みの被記録媒体が排出される排紙トレイ9が形成されている。
【0037】
また、この画像形成装置1は、電子写真方式で画像を形成可能なタンデム型の画像形成機構を備える装置で、供給ユニット11、ベルトユニット12、プロセスカートリッジ13、スキャナユニット14、定着装置15、排出部16、及びドロワー17などを備えている。
【0038】
これらのうち、供給ユニット11は、給紙カセット5に収納されたシート状の被記録媒体(例えば記録用紙。)を、搬送経路(図1中に二点鎖線で図示した経路。)の下流側へと送り出す装置である。
【0039】
ベルトユニット12は、供給ユニット11から送り出された被記録媒体を、プロセスカートリッジ13との間に挟み込んだ状態で、前方から後方へと搬送する装置である。
プロセスカートリッジ13は、ベルトユニット12の上方に4組が等間隔で直列に配列されている。各プロセスカートリッジ13は、感光体と、その感光体上に形成される静電潜像を現像するための現像機構を備えている。
【0040】
スキャナユニット14は、各プロセスカートリッジ13が備える感光体に対してレーザー光を照射することにより、感光体上に静電潜像を形成する装置である。スキャナユニット14によって感光体上に描かれる静電潜像は、プロセスカートリッジ13が備える現像機構によって現像されてトナー像となり、そのトナー像が、ベルトユニット12上の被記録媒体に転写されることになる。
【0041】
定着装置15は、トナー像が転写された被記録媒体をローラ間に挟み込んで加熱及び加圧を行うことにより、トナー像を被記録媒体に定着させる装置である。この定着装置15を通過した被記録媒体は、排出部16から排紙トレイ9へと排出されることになる。
【0042】
ドロワー17は、フロントカバー7を開放した際に、装置前方へと引き出すことが可能な構造になっている。このドロワー17には、プロセスカートリッジ13が搭載され、これにより、ドロワー17を引き出してプロセスカートリッジ13を交換できる仕組みになっている。
【0043】
[第一ロック機構及び第二ロック機構の構造]
次に、フロントカバー7を閉位置へ移動させた際にロック状態になるロック機構について説明する。
【0044】
この画像形成装置1において、フロントカバー7は、図2に示すように、下端側を回動中心として上端側が前方へ倒れるように回動する。より詳しくは、筐体3の前面下部には、筐体3前面にある開口部22の上端縁あるいは下端縁と平行な軸線A1を中心に回動可能なアーム21が設けられ、このアーム21の先端にフロントカバー7が固定されている。
【0045】
そして、フロントカバー7が、アーム21とともに回動することで、図1に示した閉位置と図2に示した開位置との間を回動可能になっている。このようにフロントカバー7を開位置へ回動させると、開口部22からドロワー17を引き出すことができる。なお、上記開口部22の端縁と回動軸とは、完全に平行である場合に限らず、例えば、デザイン上、多少傾いた位置関係であってもよく、ほぼ平行なものも包含し得る。
【0046】
また、フロントカバー7の上端にはオープンボタン23が設けられている。このオープンボタン23は、フロントカバー7を開く際に利用者によって押下される部分である。このオープンボタン23には、図3に示すように、第一係止爪25、第二係止爪26、支軸27,28などが一体成形されている。
【0047】
支軸27,28は、図4(a)〜同図(e)に示すように、フロントカバー7側に設けられた軸受29,30に挿し込まれ、これにより、オープンボタン23はフロントカバー7に対して回動可能に取り付けられる。また、オープンボタン23は、図示しないばねからの押圧力で一方向に向かって回動させられた状態にあり、利用者によってオープンボタン23が押下されると、ばねの押圧力に抗して前記一方向とは反対方向へ回動する構造になっている。
【0048】
支軸27,28の外周には、軸方向に延びる深い溝27A,28Aと、周方向に延びる浅い溝27B,28Bが刻設され、軸受29,30の内周との接触面積が低減されている。このような形態の支軸27,28により、軸受29,30との接触面積を小さくすると、接触面間の摩擦抵抗が小さくなってオープンボタン23がよりスムーズに回動するようになり、また、接触面間で音鳴き(好ましくない異音)が発生するのを防止ないし抑制することができる。
【0049】
さらに、この画像形成装置1には、図5(a)〜同図(f)に示すように、第一係止爪25とともに第一ロック機構31を構成する第一被係止部32と、第二係止爪26とともに第二ロック機構33を構成する第二被係止部34が設けられている。
【0050】
これら第一被係止部32及び第二被係止部34は、図2に示すように、筐体3側において、開口部22の上端付近となる位置に設けられ、フロントカバー7を閉位置へと回動させた際には、第一係止爪25と第一被係止部32が互いに係止するとともに、第二係止爪26と第二被係止部34が互いに係止する。
【0051】
より詳しく説明すると、フロントカバー7が開位置から閉位置へと移動する際、第一ロック機構31側では、図5(a)に示すように、閉位置に至る直前に、第一係止爪25が第一被係止部32に当接する。
【0052】
一方、このとき、第二ロック機構33側では、第二係止爪26も第二被係止部34に接近するが、図5(b)に示すように、第二係止爪26と第二被係止部34との間には、設計上、僅かな隙間が生じるようになっている。
【0053】
そのため、フロントカバー7その他の歪みや公差に起因して、第二係止爪26と第二被係止部34が当接する状態に至ることはあるものの、仮に当接しても、第一ロック機構31側に比べると、第二ロック機構33側では、当接箇所間の接触圧は小さくなる。
【0054】
そして、さらにフロントカバー7が閉位置へと移動すると、第一ロック機構31側では、図5(c)に示すように、第一被係止部32側から第一係止爪25側に向かって力が作用し、その力でオープンボタン23が回動する。その結果、オープンボタン23とともに回動する第一係止爪25は、第一被係止部32を乗り越えることになる。
【0055】
一方、このとき、第二ロック機構33側では、オープンボタン23が回動するのに伴い、第二係止爪26もオープンボタン23とともに回動するため、図5(d)に示すように、第二係止爪26は、第二被係止部34を乗り越えることになる。
【0056】
つまり、第一ロック機構31側では、第一係止爪25に力が加わることで第一係止爪25が回動しているが、第二ロック機構33側では、第二係止爪26に力が加わらなくても、オープンボタン23とともに第二係止爪26が回動する仕組みになっている。
【0057】
そのため、第一ロック機構31側では、相対的に押し込み抵抗が大きくなるのに対し、第二ロック機構33側では、押し込み抵抗が小さくなる。
そして、フロントカバー7が閉位置に達すると、第一ロック機構31側では、図5(e)に示すように、第一係止爪25が第一被係止部32に係止してロック状態になる。このとき、第二ロック機構33側でも、図5(f)に示すように、第二係止爪26が第二被係止部34に係止してロック状態になる。
【0058】
ただし、これらロック状態となった場合、第二係止爪26と第二被係止部34との間に生じる前後方向の隙間は、設計上、第一係止爪25と第一被係止部32との間に生じる前後方向の隙間よりも大きくなるようにされている。このような設計としておくことにより、第二ロック機構33については、第一ロック機構31よりもロック状態に至るときの抵抗が少ない構造にすることができる。
【0059】
これにより、「第一ロック機構31側がロック状態に至ったにもかかわらず、第二ロック機構33側がロック状態に至っていない片閉まりの状態」が発生するのを抑制することができる。
【0060】
なお、フロントカバー7を閉位置から開位置へと移動させる際には、利用者はオープンボタン23を押下する。その結果、第一係止爪25及び第二係止爪26は、双方ともオープンボタン23とともに回動し、第一ロック機構31及び第二ロック機構33の双方でロック状態が解除されるので、そのままフロントカバー7の上端を前方へと引っ張れば、フロントカバー7を開位置へと移動させることができる。
【0061】
[第三ロック機構及び第四ロック機構の構造]
図6(a)に示すように、画像形成装置1の前面左端側には、第三ロック機構40が設けられている。この第三ロック機構40は、フロントカバー7に設けられた第三係止爪41と、筐体3の左側に設けられた第三被係止部43によって構成され、第三被係止部43は、圧縮ばね45の弾性力で上方へ向かって押圧された状態になっている。
【0062】
フロントカバー7が閉位置へと移動した際には、図6(b)に示すように、第三係止爪41と第三被係止部43は、互いを拘束するロック状態になって、フロントカバー7が開位置へ移動するのを阻止する状態となる。
【0063】
また、この第三ロック機構40の近傍には、リミットスイッチ47が配設されている。このリミットスイッチ47は、フロントカバー7が開位置から閉位置へと移動した際には、フロントカバー7に突設された突起49がリミットスイッチ47のレバー47Aに当接することで、オンからオフに切り替わる。
【0064】
また、フロントカバー7が閉位置から開位置へと移動した際には、レバー47Aから突起49が離間することで、オフからオンに切り替わる。したがって、リミットスイッチ47がオン/オフいずれの状態にあるのかに基づいて、フロントカバー7が閉位置にあるのか否かを検出することができる。
【0065】
一方、図7(a)に示すように、画像形成装置1の前面右端側には、第四ロック機構50が設けられている。この第四ロック機構50は、第三ロック機構40とほぼ同様な構造になっている。
【0066】
すなわち、第四ロック機構50は、フロントカバー7に設けられた第四係止爪51と、筐体3の右側に設けられた第四被係止部53によって構成され、第四被係止部53は、圧縮ばね55の弾性力で上方へ向かって押圧された状態になっている。
【0067】
フロントカバー7が閉位置へと移動した際には、図7(b)に示すように、第四係止爪51と第四被係止部53は、互いを拘束するロック状態になって、フロントカバー7が開位置へ移動するのを阻止する状態となる。
【0068】
ただし、第三ロック機構40の第三係止爪41と第四ロック機構50の第四係止爪51は、いくらか異なる形状になっており、この形状の違いにより、第四ロック機構50は、ロック状態とする際に、第三ロック機構40よりも大きな外力を加える必要がある構造になっている。
【0069】
より詳細に説明すると、フロントカバー7が開位置側から閉位置へ向かって移動する際、第三ロック機構40の第三係止爪41は、図8(a)に示すように、進行方向D1(当接する時点では略水平な方向)へと移動し、まず当接開始点41Aにおいて第三被係止部43と当接する。
【0070】
そして、第三係止爪41がさらに進行方向D1へ移動すると、第三係止爪41と第三被係止部43は、互いに当接する状態を維持したまま摺動し、その結果、第三被係止部43上にある第三係止爪41側との当接箇所が、当接開始点41Aから第一案内面41Bに沿ってピーク点41Cへと変位する。
【0071】
その後、第三係止爪41がさらに進行方向D1へ移動すると、第三係止爪41と第三被係止部43は、さらに互いに当接する状態を維持したまま摺動し、その結果、第三被係止部43上にある第三係止爪41側との当接箇所がピーク点41Cを乗り越えて、ピーク点41Cから第二案内面41Dに沿って係止完了点41Eへと変位する。そして、最終的に、第三係止爪41と第三被係止部43との当接箇所が係止完了点41Eに到達したところで、第三係止爪41と第三被係止部43はロック状態になる(図8(b)参照。)。
【0072】
このような第三係止爪41において、第一案内面41Bの傾きは、第三係止爪41の進行方向D1(第三被係止部43と当接する時点では略水平方向)となす角度θ1が、比較的小さい角度となる傾きとされている。
【0073】
そのため、第三係止爪41を進行方向D1へ移動させようとする力を、第一案内面41Bに平行な分力と第一案内面41Bに垂直な分力に分けると、大部分が第一案内面41Bに平行な分力となり、この分力は第三係止爪41を第一案内面41Bに沿って摺動させる力となる。
【0074】
一方、フロントカバー7が開位置側から閉位置へ向かって移動する際、第四ロック機構50の第四係止爪51は、図8(c)に示すように、進行方向D1(当接する時点では略水平な方向)へと移動し、まず当接開始点51Aにおいて第四被係止部53と当接する。
【0075】
そして、第四係止爪51がさらに進行方向D1へ移動すると、第四係止爪51と第四被係止部53は、互いに当接する状態を維持したまま摺動し、その結果、第四被係止部53上にある第四係止爪51側との当接箇所が、当接開始点51Aから第一案内面51Bに沿ってピーク点51Cへと変位する。
【0076】
その後、第四係止爪51がさらに進行方向D1へ移動すると、第四係止爪51と第四被係止部53は、互いに当接する状態を維持したまま摺動し、その結果、第四被係止部53上にある第四係止爪51側との当接箇所がピーク点51Cを乗り越えて、ピーク点51Cから第二案内面51Dに沿って係止完了点51Eへと変位する。そして、最終的に、第四係止爪51と第四被係止部53との当接箇所が係止完了点51Eに到達したところで、第四係止爪51と第四被係止部53はロック状態になる(図8(d)参照。)。
【0077】
このような第四係止爪51において、第一案内面51Bの傾きは、第四係止爪51の進行方向D1(第四被係止部53と当接する時点では略水平方向)となす角度θ2が、上述の角度θ1よりも大きくなる傾きとされている。
【0078】
そのため、第四係止爪51を進行方向D1へ移動させようとする力を、第一案内面51Bに平行な分力と第一案内面51Bに垂直な分力に分けると、第三係止爪41との比較において、第一案内面51Bに平行な分力は小さくなる。
【0079】
したがって、第四係止爪51を第一案内面51Bに沿って摺動させる力は弱くなることになる。しかも、第三係止爪41との比較において、第一案内面51Bに垂直な分力は大きくなり、第四係止爪51が第一案内面51Bに強く押し付けられる分、摺動抵抗は増大することになる。
【0080】
したがって、第三係止爪41,51それぞれが第三被係止部43,53に当接した後は、第三係止爪41の方が第四係止爪51よりも弱い力で、閉位置側へと押し込み可能となる。よって、第四ロック機構50をロック状態とする際には、第三ロック機構40よりも大きな外力を加える必要が生じることになる。
【0081】
ところで、第四係止爪51において、当接開始点51Aからピーク点51Cまでの距離は、第三係止爪41における当接開始点41Aからピーク点41Cまでの距離よりも短くなっている。そのため、上述の通り、第四ロック機構50をロック状態とする際には、最初は第三ロック機構40よりも大きな力を加える必要があるものの、第四係止爪51をそれほど奥まで押し込まなくても、第四被係止部53との当接点はピーク点51Cを乗り越えて第二案内面51Dに到達する。
【0082】
しかも、第四係止爪51において、第二案内面51Dの傾きは、第四被係止部53側から上方へ向かって押圧された際、その押圧力が第四係止爪51を閉位置側へと引き込む力として作用するような傾きになっている。したがって、第四係止爪51を閉位置側へ押し込んだ際、第四被係止部53との当接点がピーク点51Cを乗り越えれば、後は大きな力を加えなくてもフロントカバー7が閉位置側へと引っ張られることになる。
【0083】
この点、第三係止爪41の方は、当接開始点41Aからピーク点41Cまでの距離が、第四係止爪51における当接開始点51Aからピーク点51Cまでの距離よりも長い。そのため、第三係止爪41を相応に奥まで押し込まないと、第三被係止部43との当接点はピーク点41Cを乗り越えることができず、その場合、第三ロック機構40はロック状態になることがない。
【0084】
また、第三被係止部43との当接点がピーク点41Cを乗り越えた後は、第三係止爪41が僅かに押し込まれるだけで、第三被係止部43との当接点は係止完了点41Eに到達してしまう。そのため、第三係止爪41には、第四係止爪51ほど閉位置側へ引き込もうとする力が作用しない。
【0085】
つまり、第三係止爪41は、最初は第四係止爪51よりも押し込みやすいものの、その後は第四係止爪51ほど引き込まれない構造になっており、第四係止爪51は、最初は第三係止爪41より押し込みにくいものの、その後は第三係止爪41よりも閉位置側へ引き込まれやすい構造になっている。
【0086】
これに加え、フロントカバー7は、左右方向の曲げ剛性が比較的低い構造になっている。そのため、第三係止爪41が押し込みやすく、第四係止爪51が押し込みにくい状態になっていると、例えば、フロントカバー7の左端側を押圧してフロントカバー7を閉位置へ移動させようとした場合に、フロントカバー7に歪みが生じ、図9に破線で例示したような形態に湾曲する。
【0087】
このような歪みが生じた場合、フロントカバー7の弾性変形に伴ってフロントカバー7には弾性復帰力が生じ、この弾性復帰力は、第三係止爪41を閉位置側から引き戻そうとする方向に作用する。そのため、このような弾性復帰力を利用して、第三ロック機構40側での片閉まりを防止することができる。
【0088】
また、第三係止爪41及び第三被係止部43は、図10(a)及び同図(b)に示すように、第三係止爪41が適正な進行方向D1へ真っ直ぐに移動すると、互いのピーク部分41P,43Pが平行な位置関係になるため、互いにピーク部分41P,43Pを乗り越えてから、第三係止爪41及び第三被係止部43が係合する。
【0089】
これに対し、第三係止爪41及び第三被係止部43は、図10(c)及び同図(d)に示すように、適正な進行方向D1に対して傾いた方向D2に向かって移動すると、互いのピーク部分41P,43Pが平行な位置関係にない状態となる。そのため、互いにピーク部分41P,43Pを乗り越えることができなくなり、第三係止爪41と第三被係止部43は互いに係合する位置に到達不能となる。そのため、このような形態の第三係止爪41も、第三ロック機構40側での片閉まり防止に寄与することとなる。
【0090】
なお、以上説明した第一ロック機構31、第二ロック機構33、第三ロック機構40,及び第四ロック機構50を比較すると、第三ロック機構40が最もロック状態に至りにくく、第三ロック機構40がロック状態に至る条件が整えば、それに追従して第四ロック機構50もロック状態に至る。また、第三ロック機構40がロック状態に至る条件が整えば、第一ロック機構31もロック状態に至ることになり、それに追従して第二ロック機構33もロック状態に至る。
【0091】
[効果]
以上説明した通り、上記画像形成装置1によれば、フロントカバー7に歪みが生じた場合、フロントカバー7の上部左端側(本発明でいう第三部分の一例に相当。)が閉位置付近に到達したにもかかわらず、フロントカバー7の上部右端側(本発明でいう第四部分の一例に相当。)が閉位置に到達しない状態になることがある。しかし、このような状態になった場合でも、フロントカバー7の弾性復帰力で、第三ロック機構40がロック状態になるのを防止する。
【0092】
そのため、このような弾性復帰力が作用すれば、第三ロック機構40だけが単独でロック状態になることはなく、第三ロック機構40がロック状態になった場合には、第四ロック機構50もロック状態になっていることになる。
【0093】
また、第三ロック機構40及び第四ロック機構50がロック状態になる程度までフロントカバー7が閉位置側へ移動した後は、第一ロック機構31と第二ロック機構33もロック状態になるが、第一ロック機構31と第二ロック機構33とでは、第二ロック機構33の方が第一ロック機構31よりもロック状態になりやすくなっている。
【0094】
そのため、「第一ロック機構31がロック状態となっているにもかかわらず、第二ロック機構33がロック状態になっていない」という状況には陥りにくく、フロントカバー7の上部左端側(本発明でいう第一部分の一例に相当。)が閉位置付近に到達したにもかかわらず、フロントカバー7の上部右端側(本発明でいう第二部分の一例に相当。)が閉位置に到達しない状態にはなりにくい。
【0095】
つまり、第一ロック機構31と第二ロック機構33とでは、リミットスイッチ47からより遠い位置にある第二ロック機構33の方が、第一ロック機構31よりもロック状態となりやすく、第三ロック機構40と第四ロック機構50とでは、リミットスイッチ47からより近い位置にある第三ロック機構40の方が第四ロック機構50よりもロック状態となりにくくなっている。
【0096】
そのため、リミットスイッチ47からより近い位置にある第一ロック機構31及び第三ロック機構40がロック状態になっていれば、よりロック状態になりやすい第二ロック機構33及び第四ロック機構50についてはロック状態になっているものと期待できる。
【0097】
したがって、リミットスイッチ47では、第一ロック機構31及び第三ロック機構40がロック状態になる位置までフロントカバー7が移動したか否かを検出できれば、第二ロック機構33及び第四ロック機構50がロック状態となる位置へフロントカバー7が移動したか否かを検出しなくても済む。
【0098】
よって、第一ロック機構31及び第三ロック機構40がロック状態になる位置までフロントカバー7が移動したか否か、第二ロック機構33及び第四ロック機構50がロック状態となる位置へフロントカバー7が移動したか否かを、それぞれ別の検出手段で検出する場合に比べ、検出手段の構成について簡素化を図ることができる。
【0099】
また、単一のリミットスイッチ47で構成された簡素な検出手段を採用しているにもかかわらず、「第二ロック機構33及び第四ロック機構50がロック状態とならないまま、第一ロック機構31及び第三ロック機構40だけがロック状態になったことが原因で、フロントカバー7が閉位置へ移動したとの誤判定を行ってしまう。」といった事態を招くことがない。
【0100】
[変形例等]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0101】
例えば、上記実施形態では、開口部が形成された筐体を備える画像処理装置の一例として、電子写真方式の画像形成装置を例示したが、この他、原稿から画像を読み取る読取手段を筐体内に備えた画像読取装置や、読取手段及び画像形成手段の双方を筐体内に備えた複合型の画像処理装置などにおいて、本発明の構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0102】
1・・・画像形成装置、3・・・筐体、5・・・給紙カセット、7・・・フロントカバー、9・・・排紙トレイ、11・・・供給ユニット、12・・・ベルトユニット、13・・・プロセスカートリッジ、14・・・スキャナユニット、15・・・定着装置、16・・・排出部、17・・・ドロワー、21・・・アーム、22・・・開口部、23・・・オープンボタン、25・・・第一係止爪、26・・・第二係止爪、27,28・・・支軸、27A,27B・・・溝、29・・・軸受、31・・・第一ロック機構、32・・・第一被係止部、33・・・第二ロック機構、34・・・第二被係止部、40・・・第三ロック機構、41・・・第三係止爪、43・・・第三被係止部、47・・・リミットスイッチ、47A・・・レバー、49・・・突起、50・・・第四ロック機構、51・・・第四係止爪、53・・・第四被係止部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された筐体と、
回動軸を中心に回動することにより、前記開口部を閉塞する閉位置と前記開口部を開放する開位置との間を移動可能に構成されたカバーと、
前記カバーの第一部分及び前記筐体側のうち、いずれか一方に設けられた第一係止爪と、他方に設けられた第一被係止部とによって構成され、前記カバーを前記閉位置へ移動させた際には、前記第一係止爪及び前記第一被係止部が互いを拘束するロック状態になって前記カバーが前記開位置へ移動するのを阻止する状態となる第一ロック機構と、
前記カバーの第二部分及び前記筐体側のうち、いずれか一方に設けられた第二係止爪と、他方に設けられた第二被係止部とによって構成され、前記カバーを前記閉位置へ移動させた際には、前記第二係止爪及び前記第二被係止部が互いを拘束するロック状態になって前記カバーが前記開位置へ移動するのを阻止する状態となる第二ロック機構と、
前記第二ロック機構よりも前記第一ロック機構に近い位置において、前記カバーが前記閉位置へ移動したか否かを検出する検出手段と
を備え、
前記第一係止爪と前記第一被係止部は、前記カバーが前記閉位置に向けて移動するときに、相対的に第一方向へと移動して互いに当接するとともに、当接に伴って前記第一方向とは交差する第二方向へ前記第一係止爪が移動しつつ前記第一被係止部を乗り越えて、当該乗り越えたところで前記第一係止爪と前記第一被係止部が互いに係止することにより、前記ロック状態となる構造になっており、
前記第二係止爪と前記第二被係止部は、前記カバーが前記閉位置に向けて移動するときに、前記第一係止爪が前記第二方向へ移動するのに連動して前記第二係止爪も前記第二方向へと移動することで、前記第二係止爪が前記第二被係止部には当接しない位置まで移動し、その状態のまま前記第二係止爪と前記第二被係止部が相対的に第一方向へと移動して、さらに前記第二係止爪が前記第一係止爪に連動して移動することで、前記第二係止爪と前記第二被係止部が互いに係止することにより、前記ロック状態となる構造になっている
ことを特徴とするカバー開閉機構。
【請求項2】
前記第一係止爪及び前記第二係止爪は、単一の部品上に形成されることにより、前記第一係止爪に連動して前記第二係止爪が移動する構造とされている
ことを特徴とする請求項1に記載のカバー開閉機構。
【請求項3】
前記第一ロック機構及び前記第二ロック機構は、それぞれがロック状態となった際、前記第一係止爪と前記第一被係止部との間、及び前記第二係止爪と前記第二被係止部との間に、前記第一方向について、遊びとなる隙間が形成される構造になっており、
しかも、前記隙間は、前記第一方向の寸法が、前記第二ロック機構において前記第一ロック機構よりも大きくされている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカバー開閉機構。
【請求項4】
前記カバーは、外力を受けると歪みが生じ得る構造で、前記歪みが生じていない状態においては、前記回動軸から離れた位置且つ互いに離れた位置にある第三部分及び第四部分が同時に前記閉位置へ到達する形態になっているものの、前記歪みが生じている状態においては、前記第三部分及び前記第四部分のうち、いずれか一方が前記閉位置へ到達しても他方は前記閉位置へ到達しない形態に変形する構造になっており、
しかも、
前記カバーの前記第三部分及び前記筐体側それぞれに設けられた一対の手段によって構成され、前記カバーを前記閉位置へ移動させた際には、前記一対の手段が互いを拘束するロック状態になって前記カバーが前記開位置へ移動するのを阻止する状態となる第三ロック機構と、
前記カバーの前記第四部分及び前記筐体側それぞれに設けられた一対の手段によって構成され、前記カバーを前記閉位置へ移動させた際には、前記一対の手段が互いを拘束するロック状態になって前記カバーが前記開位置へ移動するのを阻止する状態となる第四ロック機構と
を備え、
前記検出手段は、前記第四ロック機構よりも前記第三ロック機構に近い位置において、前記カバーが前記閉位置へ移動したか否かを検出しており、
前記カバーは、前記第四ロック機構がロック状態とならない状態のまま前記第三ロック機構がロック状態となる方向へ前記カバーを変形させる外力が加えられた際に、弾性変形する構造になっていて、その弾性変形に伴って生じる弾性復帰力で、前記第四ロック機構がロック状態になっていないにもかかわらず、前記第三ロック機構がロック状態になるのを防止している
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のカバー開閉機構。
【請求項5】
前記第四ロック機構は、ロック状態とする際に、前記第三ロック機構よりも大きな外力を加える必要がある構造になっている
ことを特徴とする請求項4に記載のカバー開閉機構。
【請求項6】
前記第三ロック機構は、前記一対の手段として、前記カバーの前記第三部分及び前記筐体側のうち、いずれか一方に設けられた第三係止爪と、他方に設けられた第三被係止部とを有し、前記第三係止爪及び前記第三被係止部は、前記カバーが前記閉位置に向けて移動するときに、相対的に第三方向へと移動して当接するとともに、当接に伴って前記第三方向とは交差する第四方向へも相対的に移動しつつ互いを乗り越えて、当該乗り越えたところで互いに係止した状態となる構造になっており、
前記第四ロック機構は、前記一対の手段として、前記カバーの前記第四部分及び前記筐体側のうち、いずれか一方に設けられた第四係止爪と、他方に設けられた第四被係止部とを有し、前記第四係止爪及び前記第四被係止部は、前記カバーが前記閉位置に向けて移動するときに、相対的に第五方向へと移動して当接するとともに、当接に伴って前記第五方向とは交差する第六方向へも相対的に移動しつつ互いを乗り越えて、当該乗り越えたところで互いに係止した状態となる構造になっており、
しかも、前記第四係止爪及び前記第四被係止部が互いを乗り越える際には、前記第三係止爪及び前記第三被係止部が互いを乗り越える場合よりも大きな外力を加える必要がある構造になっている
ことを特徴とする請求項5に記載のカバー開閉機構。
【請求項7】
前記第四係止爪及び前記第四被係止部が前記第六方向へ移動するときの移動量は、前記第三係止爪及び前記第三被係止部が前記第四方向へ移動するときの移動量よりも大きい構造になっている
ことを特徴とする請求項6に記載のカバー開閉機構。
【請求項8】
前記第三ロック機構は、前記一対の手段として、前記カバーの前記第三部分及び前記筐体側のうち、いずれか一方に設けられた第三係止爪と、他方に設けられた第三被係止部とを有し、前記第三係止爪及び前記第三被係止部は、前記カバーが前記閉位置に向けて移動するときに、相対的に第三方向へと移動して当接し、当接に伴って前記第三方向とは交差する第四方向へも相対的に移動しつつ互いを乗り越えて、当該乗り越えたところで互いに係止した状態となる構造になっており、
前記第四ロック機構は、前記一対の手段として、前記カバーの前記第四部分及び前記筐体側のうち、いずれか一方に設けられた第四係止爪と、他方に設けられた第四被係止部とを有し、前記第四係止爪及び前記第四被係止部は、前記カバーが前記閉位置に向けて移動するときに、相対的に第五方向へと移動して当接し、当接に伴って前記第五方向とは交差する第六方向へも相対的に移動しつつ互いを乗り越えて、当該乗り越えたところで互いに係止した状態となる構造になっており、
前記第三係止爪及び前記第三被係止部は、互いに係止した状態となる前に互いに乗り越える必要がある互いのピーク部分が平行に形成されており、
前記第四ロック機構がロック状態とならない状態のまま前記第三ロック機構がロック状態となる方向へと移動した際に、前記ピーク部分が平行な位置関係から交差する位置関係に変化すると、互いに乗り越え不能な状態になることを利用して、前記第四ロック機構がロック状態になっていないにもかかわらず、前記第三ロック機構がロック状態になるのを防止している
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のカバー開閉機構。
【請求項9】
前記第三ロック機構は、前記一対の手段として、前記カバーの前記第三部分及び前記筐体側のうち、いずれか一方に設けられた第三係止爪と、他方に設けられた第三被係止部とを有し、前記第三係止爪及び前記第三被係止部は、前記カバーが前記閉位置に向けて移動するときに、相対的に第三方向へと移動して当接し、当接に伴って前記第三方向とは交差する第四方向へも相対的に移動しつつ互いを乗り越えて、当該乗り越えたところで互いに係止した状態となる構造になっており、
前記第四ロック機構は、前記一対の手段として、前記カバーの前記第四部分及び前記筐体側のうち、いずれか一方に設けられた第四係止爪と、他方に設けられた第四被係止部とを有し、前記第四係止爪及び前記第四被係止部は、前記カバーが前記閉位置に向けて移動するときに、相対的に第五方向へと移動して当接し、当接に伴って前記第五方向とは交差する第六方向へも相対的に移動しつつ互いを乗り越えて、当該乗り越えたところで互いに係止した状態となる構造になっており、
前記第三係止爪及び前記第三被係止部は、互いに係止した状態となる前に互いに乗り越える必要がある互いのピーク部分が形成されていて、当該ピーク部分を互いに乗り越えてから、さらに互いの接触面上で接触する状態を維持したまま前記第三方向へと移動した後に、前記互いに係止した状態となる構造になっており、
前記第四係止爪及び前記第四被係止部は、互いに係止した状態となる前に互いに乗り越える必要がある互いのピーク部分が形成されていて、当該ピーク部分を互いに乗り越えてから、さらに互いの接触面上で接触する状態を維持したまま前記第五方向へと移動した後に、前記互いに係止した状態となる構造になっており、
しかも、前記第三係止爪及び前記第三被係止部が前記互いの接触面上で接触する状態となった際には、前記第四方向への移動に伴って弾性変形した部分の弾性復帰力の一部が、前記第三係止爪及び前記第三被係止部の前記第三方向への移動を促す力として作用するように、前記第三係止爪及び前記第三被係止部における前記互いの接触面の傾きが設定されており、
前記第四係止爪及び前記第四被係止部が前記互いの接触面上で接触する状態となった際には、前記第六方向への移動に伴って弾性変形した部分の弾性復帰力の一部が、前記第四係止爪及び前記第四被係止部の前記第五方向への移動を促す力として作用するように、前記第四係止爪及び前記第四被係止部における前記互いの接触面の傾きが設定されており、且つ、前記第四係止爪及び前記第四被係止部の前記第五方向への移動を促す力が、前記第三係止爪及び前記第三被係止部の前記第三方向への移動を促す力よりも大となるように、前記互いの接触面の傾きが設定されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のカバー開閉機構。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載のカバー開閉機構を備えた画像処理装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−11578(P2012−11578A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147757(P2010−147757)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】