説明

カプリングアセンブリ

【課題】材料の取り扱い中、材料の排出中、システム間のプロセス移送の間で無菌性の維持を保証すること
【解決手段】
第1バルブ部分と第2バルブ部分とがシールされた状態で互いに係合すると共に、協働することができ、これらバルブ部分の間を材料が移動できるような相補的な形状となっている2つのバルブ部分を備え、各バルブ部分は、ハウジング(16、18)、バルブシート(28、28´)、およびバルブ閉鎖部材(20、20´)が前記バルブシートから変位し、バルブが開放される第1位置と前記バルブ閉鎖部材がバルブシートと協働し、バルブが閉じられる第2位置との間で移動自在なバルブ閉鎖部材を備えるバルブアセンブリであって、本バルブアセンブリは、第1コンフィギュレーション、第2コンフィギュレーションおよび第3コンフィギュレーションを有し、前記第1コンフィギュレーションでは、前記第1バルブ部分と前記第2バルブ部分とは互いに係合し、前記バルブ閉鎖部分が閉じ、前記バルブ閉鎖部材は離間して配置され、前記ハウジングと共に前記ハウジングとの間でチャンバを構成し、前記チャンバは周辺環境からシールでき、前記チャンバ(29)は殺菌媒体が通過できる入口(44、44´)および出口(45、46´)を有し、前記第2コンフィギュレーションでは、前記バルブ閉鎖部材は互いに係合し、前記第1位置から前記第2位置へ移動でき、前記第3コンフィギュレーションでは、前記2つのバルブ部分は互いに係合が外れるようになっているバルブアセンブリ(10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブに関し、より詳細には、粉体および/または流体の流れを制御し、充填し、排出し、および/または調節するためのバルブに関するが、これらバルブだけに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
多くの構造物では、スプリットバタフライバルブのようなバルブを利用でき、これらバルブは、製品が環境および製品の近くで作業する作業者に触れることを防止するのに、製品を閉じ込めなければならないプロセスで広く使用されている。スプリットバルブは、主に固体状態の粉体および粒子材料等の取り扱いおよび収納移送をするよう設計されている。
【0003】
スプリットバルブ構造によりバルブを2つの半分割体(一般にαハーフおよびβハーフ、もしくはアクティブハーフおよびパッシブハーフと称される)に分割できる。このバルブ構造は、分割したときに2つの半分割体が内容物をシールされた側と閉じ込められた側とに維持するように構成されている。
【0004】
スプリットバタフライバルブと同じように、固体、およびより一般的には液体の収納移送のために、スプリットボールバルブも使用できる。これらバルブは、歴史的には主に無菌稼働のために、医薬およびバイオテクノロジー業界で使用されてきた。
【0005】
無菌機器構造では、システム全体を殺菌しなければならず、一旦殺菌された場合、処理サイクル全体で、例えば材料の取り扱い中、材料の排出中、システム間のプロセス移送の間で無菌性の維持を保証することが重要である。
【0006】
スプリットバルブは多数の公知の方法によって殺菌でき、これら方法として、オートクレーブ処理、開状態のバルブを通してスチームを通過させる処理、または製品が内部表面または製品接触部品に接触する前に、バルブに他のガス、例えば蒸気状の過酸化水素を通過させる方法がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
不幸なことに、これら公知の従来のバルブのうちの1つが分割されると、無菌性が失われるか、またはバルブが2つの分割体に分割された時、バルブおよびバルブシート(弁座)の重要な表面のうちの一部が無菌状態でない外部の周辺雰囲気に露出されると、無菌性が脅かされる。スプリットバルブはその後、再びドッキングされたり、材料の移送のために開放された場合、システム全体が無菌性を失い、この結果、製品が汚染されることがある。
【0008】
医薬品、化学品またはバイオ材料を製造する際に、かかる化合物および材料を安全かつ衛生的に取り扱うには、効果的閉込めが不可欠である。製造プロセスの各ステージにおいて、作業者を最適に保護し、製品の無欠性を維持するには、取り扱いを制御し、かつ管理しなければならない。
【0009】
新規の多くの医薬原体(APIs)の高まる効能により、取り扱い中の材料が健康に対して危険であることが多い。医薬品及びバイオマニュファクチャリング製品は、製品が汚染されないようにする厳格な管理のもとで製造されることが多い。これら製品は、人が消費するものであることが多く、業界は米国におけるFDA(米国食品医薬品局)および英国におけるMHRA(薬品および健康管理製品規制局)のような機関によって厳格に規制されている。更にAPIsは、十分な量では作業者の健康にとって危険であり得る。従って、作業者と潜在的に危険な材料との直接接触を防止する必要がある。
【0010】
かかる直接接触を防止するために、処理機器のまわりに閉じ込め密閉体を取り付けるための厳格な条件が設けられている。しかしながら、かかる密閉体の構造は、機器の取り扱いに対する障害を最小にしなければならない。スプリットバルブアセンブリを使用するとき、このことは作業者がかかる閉じ込められた環境で取り扱いを行うことを困難にし得る。
【0011】
更に、各処理作業の終了時に、クロス汚染の危険性を最小にするために別の処理作業を行う前に、処理ゾーンを密閉する構造体の内側表面を作業者が完全にクリーニングしなければならない。従って、医薬製造業界は作業者への露出レベルを許容可能なレベルにするために、良好な閉じ込め性能を必要としている。
【0012】
敏感な、または危険な(例えば有毒な)性質の固体(例えば粉体)または液体製品を取り扱うために、多数の異なるタイプの閉じ込めアセンブリを利用できる。かかる従来の閉じ込めアセンブリの1つとして、製品および/または取り扱い機器を操作できる処理ゾーンに、グローブをつけてアクセスするバリアアイソレータがある。バリアアイソレータは二重の保護を行うことができる。すなわち製品と作業者との間の物理的なバリアを維持するためのグローブポートを使用すること、および処理ゾーンから空気中浮遊粒子を除き、フィルタによりこれら粒子を捕捉するよう空気流を発生するための、抽出ファンシステムを使用している。このようにバリアアイソレータは、一般にナノグラムのレベルまでの高い閉じ込めを達成できる。しかしながら、取り扱う材料の無欠性と、作業者の健康の双方のために、無菌およびシールされた環境を維持する、閉じ込めと無菌性を組み合わせるようになっているアイソレータは極めて高価である。
【0013】
従って、本発明の目的は、従来技術に関連した問題の1つ以上を克服または解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、第1バルブ部分と第2バルブ部分とがシールされた状態で互いに係合すると共に、協働することができ、これらバルブ部分の間を材料が移動できるような相補的な形状となっている2つのバルブ部分を備え、各バルブ部分は、ハウジング、バルブシート、およびバルブ閉鎖部材が前記バルブシートから変位し、バルブが開放される第1位置と前記バルブ閉鎖部材がバルブシートと協働し、バルブが閉じられる第2位置との間で移動自在なバルブ閉鎖部材を備えるスプリットバルブアセンブリであって、本スプリットバルブアセンブリは、第1コンフィギュレーション、第2コンフィギュレーションおよび第3コンフィギュレーションを有し、前記第1コンフィギュレーションでは、前記第1バルブ部分と前記第2バルブ部分とは互いに係合し、前記バルブ閉鎖部分が閉じ、前記バルブ閉鎖部材は離間して配置され、前記ハウジングと共に前記ハウジングとの間でチャンバを構成し、前記チャンバは周辺環境からシールでき、前記チャンバは殺菌媒体が通過できる入口および出口を有し、前記第2コンフィギュレーションでは、前記バルブ閉鎖部材は互いに係合し、前記第1位置から前記第2位置へ移動でき、前記第3コンフィギュレーションでは、前記2つのバルブ部分は互いに係合が外れるようになっているスプリットバルブアセンブリが提供される。
【0015】
第3コンフィギュレーションでは、2つのバルブ部分は、ドッキングされず、前記第1コンフィギュレーションでは、2つのバルブ部分は、部分的にドッキングされ、前記第2コンフィギュレーションでは、2つのバルブ部分は、完全にドッキングされる。
【0016】
製品または材料の接触表面上の無菌状態を保証するよう、バルブを何回分割開放し、再ドッキングしたか、すなわち係合させ、係合を外したかにかかわらず、各ドッキングの完了前に(すなわち前記第1コンフィギュレーションにあるとき)実施される現場での殺菌工程を使用することにより、本発明のバルブは完全に殺菌された状態で作動することが可能である。
【0017】
本発明により、雰囲気に露出された表面と殺菌されていない表面との間に周辺環境からアイソレートできるチャンバを形成することができるようにするドッキング中に、バルブは、中間ステージ、すなわち第1コンフィギュレーションを保持しうる能力を有することができる。これら表面は、バルブアセンブリの内部無菌部品に、およびバルブが完全にドッキングされ、汚染を防止するように開放されたときに通過することのある材料に暴露可能状態になる前に殺菌しなければならない。
【0018】
本発明は、数回の製品または材料の移送のプロセス全体にわたって無菌状態を維持できるようにすると共に、移送すべき材料または本発明のバルブ部分を取り付けることができる内部プロセス機器の無菌状態を脅かすことなく、数回のドッキングおよびアンドッキング(係合および係合の外れ)を可能にしている。殺菌ステップの前後または係合/係合を外すサイクルの間の任意のシーケンスにおいて、流体ガスまたは流体を使ってチャンバをクリーニングし、無菌アイソレーターまたは無菌の外部環境を必要とすることなく、無菌で、かつクラスAの条件下にバルブを置くことができる。
【0019】
本アセンブリの各バルブ部分は、材料を収納するための容器、材料を運搬するための運搬手段、例えばホースおよび/または当業者に公知のその他のプロセス機器に取り付けることができる。バルブ部分を取り付けるための手段は、当業者に公知の任意の手段、例えばネジ、干渉嵌め、バヨネット取付装置などを含むことができる。別の実施例では、バルブ部分に容器または運搬手段を一体的に形成できる。
【0020】
第1コンフィギュレーションから第2コンフィギュレーションへの移行が一旦完了すると、チャンバの入口および出口を閉じることができる。このようにすることにより、バルブアセンブリを通って移送される材料が殺菌媒体によって汚染されないことを、本バルブアセンブリは保証できる。
【0021】
前記バルブ閉鎖部材が閉じられるときに、シールが形成されることを保証するよう、前記バルブシートと前記バルブ閉鎖部材とは、好ましくは相補的な形状となっている。
【0022】
前記バルブアセンブリは、スプリットバタフライバルブ、スプリットボールバルブまたは当業者に公知のクイックリリースカップリングである。前記バルブアセンブリは、スプリットバタフライバルブであることが好ましい。
【0023】
前記バルブ部分のうちの1つのハウジング内に、前記チャンバの前記入口および/または出口を形成することができる。前記バルブ部分のうちの1つのハウジング内に、前記チャンバの前記入口および出口の双方を形成することが好ましい。
【0024】
前記バルブ部分は、嵌合ペアを形成し、一方のバルブ部分は、雄型バルブ部分であり、他方のバルブ部分は、雌型バルブ部分であることが好ましい。バルブ部分の一方または双方のハウジング内に、前記入口および/または出口を形成することができ、雌バルブ部分内に前記チャンバのための前記入口および出口を形成することがより好ましい。
【0025】
一実施例では、前記チャンバは、円形横断面を有する。前記入口および/または出口は、前記第1および第2バルブ部分によって形成される、前記チャンバの円周に対して接線方向に配置することが好ましい。これによって、チャンバのまわりの殺菌媒体の運動によって誘導される渦の形成により、殺菌媒体によるより大きな殺菌効果が促進される。
【0026】
このバルブアセンブリは、殺菌媒体が通過できる複数の入口および出口を含むことができる。入口の数は出口の数に直接対応することが好ましく、バルブアセンブリは、2つの入口と2つの出口を含むことがより好ましい。これら2つの入口と出口は、1つの入口と1つの出口を含むペアとなるように配置することが好ましい。チャンバが円形横断面を有する場合、入口はチャンバの円周のまわりに径方向に互いに対向して配置することが好ましく、出口もチャンバの円周まわりに径方向に互いに対向して配置することが好ましい。この目的は、殺菌媒体がチャンバを通過する際に、渦巻の形成を促進し、クリーニング/殺菌効果を高めることである。
【0027】
閉鎖部材から突出し、バルブハウジング内の対応するリセス内に位置する対向するスピンドルにより、バルブハウジング内にバルブ閉鎖部材を枢動自在に取り付けることができる。このバルブハウジングにはバルブシート(弁座)を設けることができ、バルブ閉鎖部材はバルブシートに係合し、バルブを閉じたり、係合を外し、バルブを開放したりするよう枢動できる。スピンドルはバルブ閉鎖部材を一体に形成することが望ましく、スピンドルとバルブ閉鎖部材とは、一体の材料から機械加工することが好都合である。
【0028】
バルブシートはシール部材から成ることが好ましく、シール部材は当接部分およびこの当接部分とバルブハウジングとの間に位置する弾性変形可能な部分、例えばOリングからなることが好ましい。
【0029】
別の実施例では、バルブ閉鎖部材にはシールを受けるためのリセスを設けることができ、使用時にシールがバルブハウジングの固形部分に係合するようになっている。
【0030】
シールがバルブ閉鎖部材内のリセス内に位置する場合、バルブ閉鎖部材は、このバルブ閉鎖部材およびその上に位置するシールをカバーするエラストマー材料を更に含むことができる。
【0031】
一実施例では、前記バルブ閉鎖部材は、前記バルブシートとの係合により更に変位することが通常防止されている位置を超えて枢動自在であり、前記バルブは、更にその通常の閉鎖位置を超えた位置へ前記バルブ閉鎖部材を押圧するためのバイアス手段を備え、よって前記バルブシールがない場合、前記バルブ閉鎖部材はバルブシートと係合するようになっている。
【0032】
バルブシールはバルブハウジング上、またはバルブ閉鎖部材上のいずれかに位置することができる。
【0033】
前記第1および第2バルブ部分のうちの一方または双方のハウジングおよび前記バルブ閉鎖部材によって構成される前記チャンバが、Oリングおよび/または膨張可能なシールによって周辺環境からシールできることを保証するために、バルブ部分の一方または双方のハウジングにOリングおよび/または膨張可能なシールを配置できる。これによってクリーニング中、バルブアセンブリが第1コンフィギュレーションとなり、バルブを通って材料が移送されるときに、殺菌媒体がチャンバを通過し、チャンバと周辺環境との間のクロス汚染の可能性が大幅に低減され、よって移送される材料が汚染されることはなく、作業者の安全性の維持を保証できる。
【0034】
本発明のバルブアセンブリと共に使用するようになっている殺菌媒体は、流体、蒸気および/またはガスを含むことができる。この殺菌媒体は気化した過酸化水素、濾過窒素、濾過空気および/または水であることが好ましい。熱に敏感な材料に対しては、気化した過酸化水素を使用することが好ましいが、一般に熱に敏感でない材料に対しては、125〜135℃の範囲の温度で加圧されたスチームを使用することができる。他の殺菌媒体の代わりに、または他の殺菌媒体と組み合わせて、チャンバからゴミ、粒子、残留物、不純物などを吹き付けによって除去するよう、クリーニング媒体として、加圧され、濾過された空気および/または窒素、もしくはその他のガスを使用することができる。殺菌媒体として空気を使用する場合、潜在的な汚染物を除去するために空気を濾過することが好ましい。
【0035】
チャンバからの廃棄物の流れを処理するために、フィルタ手段および/または触媒に出口を接続できる。気化した過酸化水素を使用するとき、廃棄物の流れを処理するには、出口を触媒に接続することが好ましい。
【0036】
使用中、バルブアセンブリを第1コンフィギュレーションから第2コンフィギュレーションに切り替え、バルブアセンブリを通して材料を移送することが可能となる。一旦材料を移送すると、材料を第1コンフィギュレーションに戻し、2つのバルブ部分の係合を外す前に、周辺環境に露出される表面をクリーニングし、作業者が露出され得る表面に残っている在留材料に露出されるのを防止し、よって作業者の安全性を保証できる。
【0037】
本発明の別の態様によれば、バルブアセンブリを使用することを含む、材料を周辺環境に露出することなく、材料を1つの容器から別の容器に移動させる方法であって、
a)前記バルブアセンブリがその第1コンフィギュレーションに合致するように、前記バルブ部分に係合するステップと、
b)オプションとして前記チャンバをクリーニングするステップと、
c)前記チャンバを殺菌するステップと、
d)前記バルブアセンブリがその第2コンフィギュレーションに合致するように、前記バルブ部分を変位させるステップと、
e)前記バルブを通って材料を移動させることが可能となるように前記バルブを開放するステップとを備える、ある容器から別の容器に材料を移動させる方法が提供される。
【0038】
本方法は、必要な量の材料が一旦移送された場合に、
f)前記バルブアセンブリが第1コンフィギュレーションに合致するように、前記バルブ部分を変位させるステップと、
g)オプションとして前記チャンバをクリーニングするステップと、
h)オプションとして前記チャンバを殺菌するステップと、
i)前記バルブ部分の係合を外すステップとを更に備える。
【0039】
本発明の更に別の態様によれば、第1カップリング部分と第2カップリング部分とがシールされた状態で互いに係合すると共に、協働することができ、これらカップリング部分の間を材料が移動できるような相補的な形状となっている2つのカップリング部分を備え、各カップリング部分は、ハウジング、カップリングシート、およびカップリング閉鎖部材が前記カップリングシートから変位し、カップリングが開放される第1位置と前記カップリング閉鎖部材がカップリングシートと協働し、カップリングが閉じられる第2位置との間で移動自在なカップリング閉鎖部材を備えるカップリングアセンブリであって、本スプリットカップリングアセンブリは、第1コンフィギュレーション、第2コンフィギュレーション、および第3コンフィギュレーションを有し、前記第1コンフィギュレーションでは、前記第1カップリング部分と前記第2カップリング部分とは互いに係合し、前記カップリング閉鎖部分が閉じ、前記カップリング閉鎖部材は離間して配置され、前記ハウジングと共に前記ハウジングとの間でチャンバを構成し、前記チャンバは周辺環境からシールでき、前記チャンバは殺菌媒体が通過できる入口および出口を有し、前記第2コンフィギュレーションでは、前記カップリング閉鎖部材は互いに係合し、前記第1位置から前記第2位置へ移動でき、前記第3コンフィギュレーションでは、前記2つのバルブ部分は互いに係合が外れるようになっているカップリングアセンブリが提供される。
【0040】
以下、単なる例として添付図面を参照しながら、本発明の特定の実施例について説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
まず、図1〜4を参照する。バルブアセンブリ10は、2つのバルブ部分、すなわち上部バルブ部分12と下部バルブ部分14とを含み、各バルブ部分は、番号16、18で全体が示されている、ほぼ環状のバルブハウジングと、このハウジング内に枢動可能に取り付けられたバルブ閉鎖部材20、20’とを有する。バルブハウジング18は、環状リセス19を有し、バルブ閉鎖部材20、20’は環状をしたディスク状であり、これら部分にはスピンドル22、22’が設けられている。これらスピンドルにより、バルブ閉鎖部材はハウジング内に枢動自在に取り付けられている。バルブ閉鎖部材20、20’と、スピンドル22、22’とは、単一金属体から機械加工されたものである。
【0042】
(図4において)下部バルブ閉鎖部材18のスピンドル22のうちの1つは、アクチュエータ26の別のスピンドル24によって支持されるようになっており、一方、下部バルブ部分18のハウジングは、他方のスピンドル22’を受けるボアを有する。従って、スピンドル22、22’上で回転できるように環状ディスクがジャーナル軸受けされており、このディスクはスピンドル24の回転によって移動する。スピンドル24の環状ディスクに対し、反対の端部に自動アクチュエータ26が支持されている。別の実施例では、マニュアルアクチュエータを使用することもできる。
【0043】
バルブ閉鎖部材20、20’は、環状シール28、28’状をした環状バルブシートに係合したり、このバルブシートから外れたりすることができ、これらシール28、28’は、バルブハウジング内の相補的な形状をしたリセス30、30’内に座着されている。これらシールは、EPDM製環状当接部分もしくはペルフルオロエラストマーまたは他の任意の適当な材料を使用できる)から構成されており、この当接部分は使用時にバルブ閉鎖部材20、20’に係合する。
【0044】
図1〜3から分かるように、バルブアセンブリは、バルブ部分が外れるのを防止するロッキングリング31により、開放自在に固定可能なバルブ部分16、18を備える。
【0045】
バルブハウジング部分16、18の各々の外側端面32、32’は、平面状であり、使用時に各端面は、例えば当技術分野で周知のように、隣接するパイプ部分または容器に接続され、例えば整合したボアにより、貫通通路が形成される。上部バルブ部分16は、Oリング42を支持する環状リセス34を有し、バルブ部分16と18とが一体にされると、Oリング42は、バルブ部分18のハウジングの内側壁43と協働し、アセンブリが第1構造となっているときに1つのシールを形成する。
【0046】
2つのバルブハウジング部分16、18の当接部は、下部バルブハウジング部分18内に上部バルブ部分16が取り付けられるように、1つの嵌合ペアを形成し、この場合、上部バルブ部分16が雄型となり、下部バルブ部分18が雌型となる。第1の構造(図2参照)では、周辺環境からチャンバがシールされ、バルブを通して移送すべき材料が周辺環境から汚染されず、2つのバルブ部分の間にチャンバ29が構成されるように2つのバルブ部分が係合する。このチャンバは、バルブ閉鎖部材20、20’と、バルブ部分18の内側側壁43とOリング42との間に形成されたシールによって構成される。
【0047】
このように、従来の装置と対照的に、Oリング34と側壁43の間の協働により、バルブ閉鎖部材20、20’とバルブ部分16、18のハウジングとの間にチャンバを構成しながら、外部環境に対してバルブ16、18の2つの部分をシールすることができる。2つのバルブ本体の半分割体の不整合はいくつかの方法で克服でき、好ましい方法は、2つのバルブ本体の半分割体(図示せず)の間に長手方向に捕捉される位置決め器を設けることである。
【0048】
下部バルブ部分18は、2つの接線方向の入口44、44’と、2つの接線方向の出口46、46’(図4参照)を有し、これら入口および出口は、第1コンフィギュレーションにおいて、2つのバルブ部分16と18とを一体にすることにより形成されるチャンバ29と連通する。これら入口と出口はペア44、46および44’、46’となるように配置されており、(矢印48の方向に)流体またはガスがチャンバ29内に移動すると、チャンバ、特にバルブ閉鎖部材20、20’の完全なクリーニング/殺菌も保証する渦が形成されるよう、これら入口および出口は環状リセス9のまわりに位置する。液体、ガスおよび/または蒸気の形態をした殺菌媒体が、一方の入口または双方の入口44、44’を介し、圧力がかけられた状態でチャンバ29内に供給される。この殺菌媒体は出口46、46’を介し、チャンバ29から除去でき、出口は殺菌媒体またはゴミの除去を補助するよう、フィルタおよび/または触媒を介し、真空ポンプ、ファンに接続できる。
【0049】
バルブ閉鎖部材は90°にわたって枢動できるようになっており、完全な開放位置にあるとき、バルブ閉鎖部材20、20’の内側面50、50’のプロフィルはバルブハウジングの貫通ボアのプロフィルに対応し、よって流体または他の材料に対する制限をなくしている。
【0050】
不純物または汚染物が除去されるか、または中性化されることを保証するよう、十分な時間、バルブ閉鎖部材20、20’が殺菌媒体に暴露されると、入口44、44’を介して導入された、加圧濾過された空気を使用し、残留殺菌媒体を排出することができる。次に第2構造において、バルブアセンブリを完全に係合し、よってシート28、28’が嵌合し、シールを形成し、バルブ閉鎖部材20、20’が互いに接触し、各バルブ部分をそれぞれ開放するように回転でき、これらバルブ閉鎖部材はシールされた状態で係合し、材料が汚染されることなく、これら部材を材料が通過できるようにする。下部バルブ閉鎖部材20’のうちのスピンドル22、22’が回転する結果、上部バルブ閉鎖部材20’が回転することになる。
【0051】
本発明のバルブは製品接触部分での無菌状態を保証するよう、バルブを何回開放状態に分割し、再ドッキングしたかにかかわらず、各ドッキングの前後で、現場での殺菌ステップにより完全に無菌状態で作動できる。
【0052】
本発明によれば、内部プロセス無菌領域と以前露出した領域との間にバリアが存在できるようにするドッキング中に、バルブが中間ステージ、すなわち第1のコンフィギュレーショを有することができるようにし、以前露出された領域は、殺菌されておらず、バルブが完全にドッキングしたときに内部の無菌部品の一部となることができる前に殺菌する必要がある領域である。これら中間過渡的接触部品は、外部に対する別のバリアを有し、このバリアを越えた部品および表面は殺菌をする必要はない。
【0053】
これらバリアは、シール、ガスケット、Oリングまたはシート、もしくは膨張可能なシールの任意の組み合わせにより形成できる。
【0054】
中間ドッキング位置では、バルブは僅少スペースだけバタフライディスクの2つの半分割体を分離できるようにし、この僅少スペースは、スチーム、クリーニング剤、殺菌流体またはガス、例えば蒸気状の過酸化水素、またはこれらのうちの任意の組み合わせもしくはすべての組合せにより、すべての表面に潅注することができるように十分な広さである。
【0055】
バルブは、入口ポイントも有し、この入口ポイントでは、これら殺菌液、ガスまたは蒸気が入り自由にすべての中間表面上を流れることができ、すべての表面を飽和し、次に出口ポイントを通ってバルブの中間領域から離間できる。出口ポイントでは、殺菌媒体は一旦流体を通過した状態で再循環または排出され得る。
【0056】
殺菌サイクルが一旦完了すると、バルブを完全にドッキングし、第2コンフィギュレーションとなるように係合できる。完全にドッキングされると、無菌状態となっている中間部品は、内部プロセス接触部品の一部となることができる。流れのためにバルブを開放すると、材料は従来技術と対照的に、殺菌された表面を通過することが可能となる。
【0057】
一旦移送が完了すると、バルブ部分を最終的にアンドッキングし、外す前に、後に雰囲気に露出された状態になる領域から製品のうちの残留ゴミを除去するためのCIPサイクルを実行し、作業者を露出しないよう医薬を高度に閉じ込めることができる。次にバルブを閉じ、中間位置、すなわち第1コンフィギュレーションに戻ることができ、このとき、入口44、44’および出口46、46’を介してチャンバに導入されたり、チャンバから除去されるクリーンインプレイス(CIP)ガスまたは流体を使って、表面に残っている残留材料をクリーニングできる。一旦クリーニングされると、バルブをアンドッキングし、2つの半分割部分に分割できる。
【0058】
バルブを2つの半分割部分となるように分割して開放すると、各バルブ部分はバルブ閉鎖部材により周辺雰囲気からシールされているので、容器などの内部にある材料を無菌状態に維持できる。
【0059】
本発明は、これまでの実施例の細部だけに限定されない。例えばバルブアクチュエータを別のアクチュエータ、例えば手動式ハンドルに置換してもよい。
【0060】
本発明の別の実施例では、バタフライバルブ閉鎖部材をボール閉鎖部材をに置換できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係わるバルブアセンブリの2つのバルブ部分の側横断面図である。
【図2】本発明に係わる第1コンフィギュレーションにあるバルブアセンブリの第1実施例の側横断面図である。
【図3】本発明に係わる第2コンフィギュレーションにあるバルブアセンブリの第1実施例の側横断面図である。
【図4】図1〜3の第2バルブ部分を通る横方向横断面の平面図である。
【図5a】外れた状態にある、本発明に係わるバルブアセンブリの2つのバルブ部分の斜視図である。
【図5b】係合した状態にある、本発明に係わるバルブアセンブリの2つのバルブ部分の斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
10 バルブアセンブリ
12 上部バルブ部分
14 下部バルブ部分
16、18 バルブハウジング
19 環状リセス
20、20’ バルブ閉鎖部材
22、22’ スピンドル
24 スピンドル
26 アクチュエータ
28、28’ 環状シール
29 チャンバー
30、30’ 相補的形状のリセス
31 ロッキングリング
32、32’ 外側端面
34 環状リセス
42 Oリング
43 内側側壁
44、44’ 入口
46、46’ 出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1バルブ部分と第2バルブ部分とがシールされた状態で互いに係合すると共に、協働することができ、これらバルブ部分の間を材料が移動できるような相補的な形状となっている2つのバルブ部分を備え、各バルブ部分は、ハウジング、バルブシート、およびバルブ閉鎖部材が前記バルブシートから変位し、バルブが開放される第1位置と前記バルブ閉鎖部材がバルブシートと協働し、バルブが閉じられる第2位置との間で移動自在なバルブ閉鎖部材を備えるスプリットバルブアセンブリであって、本スプリットバルブアセンブリは、第1コンフィギュレーション、第2コンフィギュレーションおよび第3コンフィギュレーションを有し、前記第1コンフィギュレーションでは、前記第1バルブ部分と前記第2バルブ部分とは互いに係合し、前記バルブ閉鎖部分が閉じ、前記バルブ閉鎖部材は離間して配置され、前記ハウジングと共に前記ハウジングとの間でチャンバを構成し、前記チャンバは周辺環境からシールでき、前記チャンバは殺菌媒体が通過できる入口および出口を有し、前記第2コンフィギュレーションでは、前記バルブ閉鎖部材は互いに係合し、前記第1位置から前記第2位置へ移動でき、前記第3コンフィギュレーションでは、前記2つのバルブ部分は互いに係合が外れるようになっているスプリットバルブアセンブリ。
【請求項2】
前記第3コンフィギュレーションでは、2つのバルブ部分がドッキングされず、前記第1コンフィギュレーションでは、2つのバルブ部分が部分的にドッキングされ、前記第2コンフィギュレーションでは、2つのバルブ部分が完全にドッキングされる、請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記バルブアセンブリの各バルブ部分は、材料を収納するための容器または運搬手段に取り付け可能である、請求項1または2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記バルブ部分を取り付けるための前記手段は、ネジまたはバヨネット取り付け体を含む、請求項3に記載のバルブ。
【請求項5】
前記バルブ部分に、容器または運搬手段が一体的に形成されている、請求項2または3に記載のバルブ。
【請求項6】
前記第1コンフィギュレーションから前記第2コンフィギュレーションへの移行が完了すると、前記チャンバの前記入口および出口が閉じられる、前述の請求項のうちのいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項7】
前記バルブ閉鎖部材が閉じられるときに、シールが形成されることを保証するよう、前記バルブシートと前記バルブ閉鎖部材とは、好ましくは相補的な形状となっている、前述の請求項のうちのいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項8】
前記バルブアセンブリは、スプリットバタフライバルブ、スプリットボールバルブまたはクイック解放カップリングである、前述の請求項のうちのいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項9】
前記アセンブリは、スプリットバタフライバルブである、請求項8に記載のバルブ。
【請求項10】
前記バルブ部分のうちの1つのハウジング内に、前記チャンバの前記入口および/または出口が形成されている、前述の請求項のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項11】
前記バルブ部分は、一方は雄型バルブ部分であり、他方は雌型バルブ部分である嵌合ペアを形成している、前述の請求項のうちのいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項12】
円形横断面を有する、前述の請求項のうちのいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項13】
前記入口および/または出口は、前記第1および第2バルブ部分によって形成されている、前記チャンバの円周に対して接線方向に配置されている、請求項12に記載のバルブ。
【請求項14】
前記バルブシートは、シール部材からなる、前述の請求項のうちのいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項15】
前記シール部材は、当接部分と、この当接部分と前記バルブハウジングとの間に位置する弾性変形可能な部分とを備える、請求項14に記載のバルブ。
【請求項16】
前記バルブ閉鎖部材は、前記バルブシールとの係合により更に変位することが通常防止されている位置を超えて枢動自在であり、前記バルブは、更にその通常の閉鎖位置を超えた位置へ前記バルブ閉鎖部材を押圧するためのバイアス手段を備え、よって前記バルブシールがない場合、前記バルブ閉鎖部材はバルブシートと係合するようになっている、前述の請求項のうちのいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項17】
前記第1および第2バルブ部分のうちの一方または双方のハウジングおよび前記バルブ閉鎖部材によって構成される前記チャンバは、Oリングおよび/または膨張可能なシールによって周辺環境からシールできる、前述の請求項のうちのいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項18】
前記殺菌媒体は流体、蒸気および/またはガスを含む、前述の請求項のうちのいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項19】
前記殺菌媒体は、気化した過酸化水素、濾過窒素、濾過空気および/または水である、請求項18に記載のバルブ。
【請求項20】
前記出口はフィルタ手段および/または触媒に接続され、前記チャンバからの廃棄物の流れを処理するようになっている、前述の請求項のうちのいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項21】
j)前記バルブアセンブリがその第1コンフィギュレーションに合致するように、前記バルブ部分に係合するステップと、
k)オプションとして前記チャンバをクリーニングするステップと、
l)前記チャンバを殺菌するステップと、
m)前記バルブアセンブリがその第2コンフィギュレーションに合致するように、前記バルブ部分を変位させるステップと、
n)前記バルブを通って材料を移動させることが可能となるように前記バルブを開放するステップとを備える、
前述のごとくバルブアセンブリを使用することを含み、材料を周辺環境に露出することなく、ある容器から別の容器に材料を移動させる方法。
【請求項22】
必要な量の材料が一旦移送された場合に、
o)前記アセンブリが第1コンフィギュレーションに合致するように、前記バルブ部分を変位させるステップと、
p)オプションとして前記チャンバをクリーニングするステップと、
q)オプションとして前記チャンバを殺菌するステップと、
r)前記バルブ部分の係合を外すステップ
とを更に備える、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
第1カップリング部分と第2カップリング部分とがシールされた状態で互いに係合すると共に、協働することができ、これらカップリング部分の間を材料が移動できるような相補的な形状となっている2つのカップリング部分を備え、各カップリング部分は、ハウジング、カップリングシート、およびカップリング閉鎖部材が前記カップリングシートから変位し、カップリングが開放される第1位置と前記カップリング閉鎖部材がカップリングシートと協働し、カップリングが閉じられる第2位置との間で移動自在なカップリング閉鎖部材を備えるカップリングアセンブリであって、本スプリットカップリングアセンブリは、第1コンフィギュレーション、第2コンフィギュレーション、および第3コンフィギュレーションを有し、前記第1コンフィギュレーションでは、前記第1カップリング部分と前記第2カップリング部分とは互いに係合し、前記カップリング閉鎖部分が閉じ、前記カップリング閉鎖部材は離間して配置され、前記ハウジングと共に前記ハウジングとの間でチャンバを構成し、前記チャンバは周辺環境からシールでき、前記チャンバは殺菌媒体が通過できる入口および出口を有し、前記第2コンフィギュレーションでは、前記カップリング閉鎖部材は互いに係合し、前記第1位置から前記第2位置へ移動でき、前記第3コンフィギュレーションでは、前記2つのバルブ部分は互いに係合が外れるようになっているカップリングアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2009−530561(P2009−530561A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500828(P2009−500828)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052479
【国際公開番号】WO2007/107500
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(508282926)パウダー システムズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】