説明

カムリンク機構及び該カムリンク機構を備えた画像形成装置

【課題】カムリンク機構において、高負荷であってもカムやその支軸に作用する力を小さくすること。
【解決手段】所定の支点42を中心として回転駆動されるカム40によってレバー31を所定の支点34を中心として搖動させるカムリンク機構。レバー31の支点34とカム40の支点42とを結ぶ線C上を、駆動中におけるカム40及びレバー31の接触点が通過し、かつ、駆動中にレバー31からカム40に作用する荷重が、レバー31の支点34と接触点とを結ぶ作用線Dに対して略垂直方向に作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カムリンク機構、特に、所定の支点を中心として回転駆動されるカムによってレバーを所定の支点を中心として搖動させるカムリンク機構及び該カムリンク機構を備えた複写機やプリンタなどの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、複写機やプリンタなどの画像形成装置にあっては、トナー定着装置に加熱ローラ11に対する加圧ローラ12の圧接力を可変させるのにカムリンク機構を採用している。通常は、特許文献1に記載のように、偏芯カムを用いていた。特許文献2には、サーマルプリンタではあるが、回転駆動されるカムによってレバーを搖動させるカムリンク機構であって、レバーの搖動支点とカムの回転支点とを結ぶ線上を、駆動中におけるカムとレバーの接触点が通過するように構成したものが記載されている。
【0003】
ところが、特許文献2に記載のカムリンク機構は、カムの支軸に作用する負荷がギアの噛み合いを着脱するといった比較的軽い場合を想定しており、トナー定着装置の圧接離間動作を行うといった高負荷が作用する箇所には適さない。あえて適用しようとすると、カムの支軸の破損を防止するために、金属化したり、該支軸にベアリングを用いるなど高コスト化を招いてしまう。つまり、現状では、高負荷に対して駆動中にカムの支軸に作用する力を低減でき、望ましくはスペース的にも小さなカムリンク機構が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−181512号公報
【特許文献2】特開平10−44570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高負荷であってもカムやその支軸に作用する力が小さいカムリンク機構及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明の第1の形態であるカムリンク機構は、
所定の支点を中心として回転駆動されるカムによってレバーを所定の支点を中心として搖動させるカムリンク機構において、
前記レバーの支点と前記カムの支点とを結ぶ線上を、駆動中における前記カム及び前記レバーの接触点が通過し、かつ、駆動中に前記レバーから前記カムに作用する荷重が、前記レバーの支点と前記接触点とを結ぶ作用線に対して略垂直方向に作用すること、
を特徴とする。
【0007】
本発明の第2の形態である画像形成装置は、前記第1の形態であるカムリンク機構をトナー定着装置の接離機構に用いたこと、を特徴とする。本発明の第3の形態である画像形成装置は、前記第1の形態であるカムリンク機構を中間転写ベルトの接離機構に用いたこと、を特徴とする。
【0008】
前記カムリンク機構においては、前記レバーの支点と前記カムの支点とを結ぶ線上を、駆動中における前記カム及び前記レバーの接触点が通過し、かつ、駆動中に前記レバーから前記カムに作用する荷重が、前記レバーの支点と前記接触点とを結ぶ作用線に対して略垂直方向に作用するため、カムの支点に作用する力が軽減され、カムの支軸に強度の高い高価な材料を使用する必要がなくなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高負荷であってもカムやその支軸に作用する力が小さく、安価な材料で製作することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施例であるカムリンク機構の高圧接時を示す正面図である。
【図2】前記カムリンク機構の軽圧接時を示す正面図である。
【図3】前記カムリンク機構の動作概念図である。
【図4】前記カムリンク機構の動作説明図である。
【図5】前記カムリンク機構の動作説明図である。
【図6】前記カムリンク機構の動作を概念的に示す説明図で、(A)は本発明例を示し、(B)は比較例を示す。
【図7】第2実施例であるカムリンク機構を示す正面図であり、(A)は圧接時を示し、(B)は離間時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るカムリンク機構の実施例について、添付図面を参照して説明する。なお、各図において同じ部材には共通する符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
(第1実施例、図1〜図6参照)
第1実施例であるカムリンク機構は、複写機やプリンタなどのトナー画像を形成するための電子写真法による画像形成装置のトナー定着ユニットに適用したものである。トナー定着装置は、図1及び図2に示すように、加熱ローラ11に加圧ローラ12を圧接させ、トナー画像が転写されて矢印A方向から搬送されてくる用紙をローラ11,12のニップ部を通過させ、トナーを加熱定着する。加圧ローラ12は加熱ローラ11に対して比較的強い圧力で圧接する状態(図1参照)と、比較的弱い圧力で圧接する状態(図2参照)とに制御される。普通紙が搬送される場合は図1に示す高圧接状態とし、封筒などの厚紙が搬送される場合には図2に示す軽圧接状態とする。カムリンク機構30は加圧ローラ12の圧接を高/軽に切り換えるために設置されている。なお、ジャム紙を除去するときなども、加圧ローラ12が軽圧接状態に切り換えられる。
【0013】
加熱ローラ11は定位置で時計回り方向に回転駆動可能に設置されている。加圧ローラ12は、支持フレーム20に支軸21を介して回転自在に設置され、加熱ローラ11の回転に従動して回転する。支持フレーム20は軸部材22を支点として搖動自在に図示しないメインフレームに取り付けられている。支持フレーム20は該フレーム20とレバー31との間に掛け渡した引張りコイルばね35によって時計回り方向に付勢されており、これにて加圧ローラ12が加熱ローラ11に圧接する。通常は、図1に示すように、引張りコイルばね35のばね力によって高圧接している。
【0014】
カムリンク機構30は、前記レバー31と小径のカム40とで構成されている。レバー31は、前記ばね35の一端が止着されている端部32と、カム40と係合する内周面33aを有する従動片33とからなり、図示しないメインフレームに固定した支軸34に搖動自在に装着されている。カム40は、カムギア41の支軸42から偏芯した位置に固定され、前記レバー31の内周面33aに係合している。カムギア41は駆動ギア43と歯合し、支軸42を支点として回転可能である。
【0015】
カム40が図1に示すように内周面33aの下部に接触しているとき、レバー31は支軸34を支点として時計回り方向に付勢され、引張りコイルばね35がレバー31と支持フレーム20との間で引張られ、加圧ローラ12が加熱ローラ11に高圧接状態で圧接する。カム40がカムギア41とともに時計回り方向に回転し、図2に示すように内周面33aの上部に移動すると、レバー31は支軸34を支点として反時計回り方向に搖動し、引張りコイルばね35のばね力が解除され、加圧ローラ12は加熱ローラ11に対して軽圧接状態に切り換わる。図2の状態から、カム40がカムギア41とともに反時計回り方向に回転すると、レバー31は支軸34を支点として時計回り方向に搖動し、図1の状態に復帰する。即ち、ローラ11,12は高圧接状態に切り換わる。
【0016】
図3は、以上のごとく、カム40によってレバー31が搖動する際の動作を概念的に示している。実線が高圧接時を示し、点線が軽圧接時を示している。軽圧接状態から高圧接状態に切り換わる際、カム40は点線位置から実線位置にレバー31の内周面33aに接触しつつ移動する。引張りコイルばね35はかなり高いテンションで張り渡されており、高圧接状態に切り換わる際、カム40には大きな負荷が作用することになる。しかし、本実施例では、以下に説明するように、カム40に作用する負荷が軽減され、カム40自体及び/又はカムギア41の支軸の強度をそれほど大きくする必要がなくなる。
【0017】
つまり、駆動中におけるカム40とレバー31の内周面33aとの接触点は、図4に点線Bで示す軌跡をたどる。レバー31の支点(支軸34)とカム40の支点(支軸42)とを結ぶ線C上を、駆動中におけるカム40及びレバー31の接触点が通過する。この駆動中にレバー31からカム40に作用する荷重(反力)は、図5に示すように、レバー31の支点(支軸34)と前記接触点とを結ぶ作用線Dに対して略垂直方向に作用する。
【0018】
ここで、レバー31を搖動させるための駆動力と反力について説明する。図6(A)に示すように、レバー31を支軸34を支点として反時計回り方向に回転させると、ばね力Fが発生する。瞬間的な力の釣合いを考えると、レバー31がコイルばね35のばね力によって反時計回り方向に回転させられようとするモーメント力Mは、カム40がレバー31を時計回り方向に回転させようとする抗モーメント力M’と同等である。
【0019】
レバー31の支軸34とばね力の作用点との距離をL、支軸34と反力の作用点(カム40とレバー31の接触点)との距離をL’、ばね力をF、反力をF’としたとき、モーメント力Mと抗モーメント力M’は等しく(M=M’)、M=F×L、M’=F’×L’である。
【0020】
前記モーメント力Mを定数とすると、レバー反力F’と距離L’は反比例の関係にある。つまり、距離L’を最大限大きくすれば、レバー反力F’(カム40に作用する力)は最小限に小さくなる。ここで、距離L’は支軸34と作用点(カム40とレバー31の接触点)とを結ぶ作用線Dに他ならない。作用線Dは反力の法線のことであり、距離L’を最大限大きくすることは、図6(A)に示すように、レバー反力F’(荷重)が作用線Dに対して略垂直方向であればよい。カム40に作用する荷重(レバー反力F’)が作用線Dに対して略垂直方向に作用することで、荷重(レバー反力F’)が小さくなり、高負荷であってもカム40の支軸42に作用する力が小さくて済む。
【0021】
これに対して、図6(B)に示すように、カム40に作用する荷重が支軸42と作用点とを結ぶ線に対して略垂直方向ではない場合、作用線Dは短くなり反力F’が大きくなってしまう。即ち、カム40に作用する荷重が大きくなり、その分だけカム40自体あるいは支軸42の強度を高める必要がある。
【0022】
(第2実施例、図7参照)
第2実施例であるカムリンク機構30は、タンデム方式の画像形成装置の中間転写ベルト50に適用したものである。タンデム方式とは、よく知られているように、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のトナー画像を形成するための四つの感光体ドラムを含む画像形成ユニットを並設し、それらの感光体ドラムに形成された各色のトナー画像を矢印E方向に回転する中間転写ベルト50上に1次転写して合成し、合成画像をさらに中間転写ベルト50から用紙上に2次転写するようにしている。
【0023】
図7(A),(B)には中間転写ベルト50の一部とブラック画像を形成するための感光体ドラム61と1次転写ローラ62とベルト支持ローラ51と2次転写ローラ55を示している。カムリンク機構30は前記第1実施例と基本的には同じ構成を備えており、1次転写ローラ62のベルト50を介しての感光体ドラム61に対する圧接、離間を制御する。圧接力を付与するコイルばねは第1実施例で示した引張りコイルばね35ではなく、圧縮コイルばね36が用いられている。圧縮コイルばね36は、一端がレバー31の端部に係止され、他端が1次転写ローラ62の図示しない軸部に係止され、ローラ62を介して中間転写ベルト50の感光体ドラム61への圧接力を付与する。
【0024】
図7(A)にローラ62の圧接時を示し、図7(B)にローラ62の離間時を示している。カムリンク機構30の構成、動作は前記第1実施例と基本的に同様であり、カム40に作用する荷重が作用線に対して略垂直方向に作用することで、荷重が小さくなり、高負荷であってもカム40やその支軸42に作用する力が小さくて済む作用効果も第1実施例で説明したとおりである。
【0025】
(他の実施例)
なお、本発明に係るカムリンク機構及び画像形成装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できる。
【0026】
例えば、前記実施例では、カム40を円形とし、該カム40と接触するレバー31の内周面33aを円弧と正接線の合成カーブで形成したものを示したが、荷重が作用線Dに対して略直交方向に作用するのであれば、カム40の形状は楕円形であってもよく、レバー31のカム40に対する接触面も種々の形状を採用することができる。また、荷重の方向が作用線Dに対して略直交する方向となるのは、コイルばね35が伸びて高負荷が発生する時点であればよい。負荷が軽い時点にあっては、荷重の方向が必ずしも作用線Dに対して略直交する方向に向いていなくてもよい。
【0027】
また、カム40の支軸42にベアリングなどの転がり部材を使用しない場合は摩擦力が大きくなる。この摩擦力を考慮して荷重が作用線Dに対して略直交方向を向くように、レバー31とカム40の支軸42の材料の組合せを決めてもよい。好ましくは、摩擦負荷が集中する支軸42に耐摩耗性、強度に優れた材料を用いるのがよい。
【0028】
また、一対のカムリンク機構30を加圧ローラ12の両端部に設け、一方のカムリンク機構30に駆動力を伝達し、他方のカムリンク機構30を被駆動とした場合、支軸42のねじれによって駆動側に対して被駆動側は回転の位相が遅れる。そのため、カム40の回転位置検出用のセンサを設ける場合、該センサは被駆動側に設けることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明は、カムリンク機構及び画像形成装置に有用であり、特に、高負荷であってもカムやその支軸に作用する力が小さくて済む点で優れている。
【符号の説明】
【0030】
11…加熱ローラ
12…加圧ローラ
30…カムリンク機構
31…レバー
33a…内周面(カム接触面)
34…支点(レバー支軸)
40…カム
42…支点(カム支軸)
50…中間転写ベルト
61…感光体ドラム
62…1次転写ローラ
D…作用線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の支点を中心として回転駆動されるカムによってレバーを所定の支点を中心として搖動させるカムリンク機構において、
前記レバーの支点と前記カムの支点とを結ぶ線上を、駆動中における前記カム及び前記レバーの接触点が通過し、かつ、駆動中に前記レバーから前記カムに作用する荷重が、前記レバーの支点と前記接触点とを結ぶ作用線に対して略垂直方向に作用すること、
を特徴とするカムリンク機構。
【請求項2】
請求項1に記載のカムリンク機構をトナー定着装置の接離機構に用いたこと、を特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載のカムリンク機構を中間転写ベルトの接離機構に用いたこと、を特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−33162(P2013−33162A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169708(P2011−169708)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】