カメラ及びこれに用いる撮像素子ユニット
【課題】撮像素子の前面側に配設する防塵部材の固定力の向上に寄与する固定手段を提案し確実な防塵機能を確保しつつ構成の簡略化を実現し製造上の簡易化をも実現し得るカメラ及び撮像素子ユニットを提供する。
【解決手段】画像信号を得る撮像素子27と、撮像素子の光電変換面上に被写体像を入射せしめる撮影レンズ12aと、撮影レンズから撮像素子に入射する有効光束を透過可能な透明部を有し透明部が撮像素子の前面側に所定の間隔を持って対向配設された防塵部材21と、防塵部材の周縁部に配設され防塵部材に振動を与える加振用部材22と、撮像素子と防塵部材との両者が対向して形成される部位に略密閉された空間部を構成すべく撮像素子及び防塵部材の周縁側で空間部を封止するように構成された封止構造部(23)と、撮像素子から得られた画像信号を記録形態の信号に変換する画像信号処理回路16aとを備え、防塵部材を封止構造部に接着固定する。
【解決手段】画像信号を得る撮像素子27と、撮像素子の光電変換面上に被写体像を入射せしめる撮影レンズ12aと、撮影レンズから撮像素子に入射する有効光束を透過可能な透明部を有し透明部が撮像素子の前面側に所定の間隔を持って対向配設された防塵部材21と、防塵部材の周縁部に配設され防塵部材に振動を与える加振用部材22と、撮像素子と防塵部材との両者が対向して形成される部位に略密閉された空間部を構成すべく撮像素子及び防塵部材の周縁側で空間部を封止するように構成された封止構造部(23)と、撮像素子から得られた画像信号を記録形態の信号に変換する画像信号処理回路16aとを備え、防塵部材を封止構造部に接着固定する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自己の光電変換面上に照射された光に対応した画像信号を得る撮像素子を有する撮像素子ユニットを備えたカメラに関し、より詳細には撮像素子の防塵構造を備えたカメラ及びこれに用いる撮像ユニットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、撮影光学系(撮影レンズともいう)を透過した被写体からの光束(以下、被写体光束という)に基づいて形成される被写体像を所定の位置に配置した固体撮像素子等、例えば電荷結合素子(CCD;Charge Coupled Device。以下、単に撮像素子という)等の光電変換面上に結像させ、当該撮像素子等の光電変換作用を利用して所望の被写体像を表わす電気的な画像信号等を生成し、この画像信号等に基づく信号を、例えば液晶表示装置(LCD;Liquid Crystal Display)等の所定の表示装置等へと出力して画像等を表示させたり、撮像素子等によって生成した画像信号等を所定の形態の画像データとして所定の記録媒体の所定の記録領域に記録し、さらにこの記録媒体に記録された画像データを読み出して、その画像データに対して表示装置を用いて表示するのに最適な画像信号となるように変換処理した後、処理済の画像信号に基づいて、これに対応する画像を表示させ得るように構成した、いわゆるデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等のデジタルカメラ等(以下、デジタルカメラ又は単にカメラという)が、一般的に実用化され広く普及している。
【0003】また、一般的なデジタルカメラにおいては、撮影動作に先立って撮影対象となる所望の被写体を観察し、当該被写体を含む撮影範囲を設定する等の目的で、光学的ファインダー装置を備えているのが一般である。
【0004】この光学ファインダー装置としては、撮影光学系の光軸上に配設した反射部材等を用いて撮影光学系を透過した被写体光束の進行方向を折り曲げて観察用の被写体像を所定の位置に結像させる一方、撮影動作時には、撮影光学系の光軸上から反射部材を退避させることにより、被写体光束を撮像素子の受光面、即ち光電変換面へと導き、当該光電変換面上に撮影用の被写体像を形成させるように構成したいわゆる一眼レフレックス方式のファインダー装置等が一般的に利用されている。
【0005】そして、近年においては、一眼レフレックス方式のファインダー装置を具備すると共に、カメラ本体に対して撮影光学系を着脱自在となるように構成し、使用者が所望するときに所望の撮影光学系を任意に着脱し交換することで、単一のカメラ本体において複数種類の撮影光学系を選択的に使用し得るように構成したいわゆるレンズ交換可能な形態のデジタルカメラが一般に実用化されつつある。
【0006】このようなレンズ交換可能な形態のデジタルカメラにおいては、当該撮影光学系をカメラ本体から取り外した際に、カメラ本体の内部に空気中に浮遊する塵埃等が侵入する可能性がある。また、カメラ本体内部には、例えばシャッター・絞り機構等、機械的に動作する各種の機構が配設されていることから、これら各種の機構等からは、その動作中に塵埃等が発生する場合もある。
【0007】一方、撮影光学系をカメラ本体から取り外した際には、当該撮影光学系の後方に配置される撮像素子の受光面(光電変換面とも言う)がカメラ内部の外気に露呈されることになることから、塵埃等が帯電作用等の要因によって撮像素子の光電変換面に付着することがある。
【0008】そこで、従来の一眼レフレックス方式のデジタルカメラ等においては、帯電作用等に起因して撮像素子の受光面上に塵埃等が付着するのを抑制するための技術が、例えば特開2000−29132号公報等によって提案されている。
【0009】上記特開2000−29132号公報に開示されている手段は、レンズ交換可能な形態の一眼レフレックス方式のデジタルカメラにおいて、カメラ内部に設けられる撮像素子の受光面を覆うカバー部材の表面に透明電極を設け、この電極に対して直流電圧若しくは数kHz〜20kHz程度の周波数の交流電圧を印加することによって、帯電作用によって撮像素子の受光面上に塵埃等が付着するのを抑制するようにしたものである。
【0010】当該公報に開示されている手段によれば、撮像素子に生起する電荷を中和することによって静電気等に起因して撮像素子の受光面に塵埃等が付着するのを抑制することができるというものである。
【0011】他方、従来のデジタルカメラにおける撮像素子としては、いわゆるパッケイジに封じられた形態の撮像素子(例えばパッケイジCCDという)が広く用いられているが、このような形態の撮像素子とは別に、近年においては、いわゆるベアチップCCDと呼ばれる裸の状態のCCDチップを市場に供給することが提案されている。
【0012】このようなベアチップCCDにおいては、その光電変換面上に塵埃等が付着する可能性が多くなることから、ベアチップCCDとこれを載置する基板との間に圧電素子を設け、この圧電素子に対して所定の電圧を印加することによって当該ベアチップCCD自体を振動させ、これにより光電変換面上に付着した塵埃等を振り落とすようにする手段についての提案が、例えば特開平9−130654号公報等によって開示されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上述の特開2000−29132号公報に開示されている手段では、帯電した撮像素子の電荷を中和させることで塵等が付着するのを抑制するようにしていることから、例えば静電気に因らずに撮像素子の光電変換面上に単に付着したり堆積した状態の塵埃等を除去する手段としては、最適なものではないと考えられる。
【0014】また、上述の特開平9−130654号公報に開示されている手段では、ベアチップCCDを念頭に入れて考案されている手段であるために、従来のデジタルカメラにおいて一般的に利用されているパッケイジCCDのような形態の撮像素子に対して適用するためには、最適な手段であるとは言えない。
【0015】つまり、一般的な形態のパッケイジCCD等に対して上述の特開平9−130654号公報に開示されている手段を適用した場合には、例えば撮像素子自体又はそのパッケイジに対して振動を加えることになるので、この加振作用によって撮像素子及びその近傍に配設される各種の機構に対して、例えば機構的な劣化や狂い等の悪影響が波及する虞がある。
【0016】一方、本出願人は、先に特願2000−401291号において、撮像素子の光電変換面の側を封止乃至保護する防塵部材を備えることで、当該撮像素子の光電変換面に塵埃等が付着するのを抑制すると共に、防塵部材の外面側に付着する塵埃等に対しては、所定の加振用部材によって防塵部材に所定の振幅の振動を与えることによって、これを除去する手段を提案している。
【0017】この手段によれば、小型でかつ簡単な機構によって撮像素子の光電変換面に塵埃等が付着するのを抑制すると共に、防塵部材の外面側に付着する塵埃等を容易に除去し得るレンズ交換可能な形態のデジタルカメラを構成することができるというものである。
【0018】本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、撮像素子の光電変換面上に塵埃等が付着するのを防止する防塵構造を備えたカメラ及びこれに使用する撮像素子ユニットにおいて、撮像素子の前面側に配設する防塵部材等の固定力の向上に寄与することのできる固定手段を提案し、確実な防塵機能を確保しながら、構成の簡略化を実現し、製造上の簡易化をも実現し得るカメラ及びこれに使用する撮像素子ユニットを提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、第1の発明によるカメラは、自己の光電変換面上に照射された光に対応した画像信号を得る撮像素子と、上記撮像素子の光電変換面上に被写体像を入射せしめる撮影レンズと、上記撮影レンズから上記撮像素子に入射する有効光束を透過可能な透明部を有し、この透明部が上記撮像素子の前面側に所定の間隔を持って対向配設された防塵部材と、上記防塵部材の周縁部に配設され当該防塵部材に振動を与えるための加振用部材と、上記撮像素子と上記防塵部材との両者が対向して形成される部位に、略密閉された空間部を構成すべく上記撮像素子及び上記防塵部材の周縁側で上記空間部を封止するように構成された封止構造部と、上記撮像素子の光電変換面上に結像された像に対応するものとして当該撮像素子から得られた画像信号を記録に適合する形態の信号に変換するための画像信号処理回路とを備えてなり、上記防塵部材を上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする。
【0020】また、第2の発明は、上記第1の発明によるカメラにおいて、上記防塵部材を、その周縁部の全周において上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする。
【0021】そして、第3の発明は、上記第1の発明によるカメラにおいて、上記防塵部材を、その周縁部の複数箇所において上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする。
【0022】第4の発明は、上記第1の発明によるカメラにおいて、上記加振用部材は、圧電素子であることを特徴とする。
【0023】第5の発明は、上記第1の発明によるカメラにおいて、上記撮影レンズを装着するための撮影レンズ装着部をさらに有し、上記撮影レンズは、上記撮影レンズ装着部において着脱自在であることを特徴とする。
【0024】第6の発明は、上記第1の発明乃至第5の発明のうちのいずれか一つによるカメラにおいて、上記防塵部材の表面には、薄膜形成部位と薄膜非形成部位とが形成され、上記薄膜非形成部位に上記封止構造部を接着固定したことを特徴とする。
【0025】第7の発明は、上記第6の発明によるカメラにおいて、上記薄膜は、赤外線カット膜・紫外線カット膜・反射防止膜又は帯電防止膜のいずれかであることを特徴とする。
【0026】第8の発明による撮像素子ユニットは、自己の光電変換面上に照射された光に対応した画像信号を得る撮像素子と、上記撮像素子の前面側に所定の間隔を持って対向配設された光学部材と、上記光学部材の周縁部に配設され当該光学部材に振動を与えるための加振用部材と、上記撮像素子と上記光学部材との両者が対向して形成される部位に、略密閉された空間部を構成すべく上記撮像素子及び上記光学部材の周縁側で上記空間部を封止するように構成された封止構造部とを備えてなり、上記光学部材を上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする。
【0027】第9の発明は、上記第8の発明による撮像素子ユニットにおいて、上記光学部材を、その周縁部の全周において上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする。
【0028】第10の発明は、上記第8の発明による撮像素子ユニットにおいて、上記光学部材を、その周縁部の複数箇所において上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする。
【0029】第11の発明は、上記第8の発明による撮像素子ユニットにおいて、上記加振用部材は、圧電素子であることを特徴とする。
【0030】第12の発明は、上記第8の発明乃至第11の発明のうちのいずれか一つによる撮像素子ユニットにおいて、上記光学部材の表面には、薄膜形成部位と薄膜非形成部位とが形成され、上記薄膜非形成部位に上記封止構造部を接着固定したことを特徴とする。
【0031】第13の発明は、上記第12の発明による撮像素子ユニットにおいて、上記薄膜は、赤外線カット膜・紫外線カット膜・反射防止膜又は帯電防止膜のいずれかであることを特徴とする。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。まず、本発明の第1の実施形態のカメラについて、その概略的な構成を以下に説明する。
【0033】図1・図2は、本発明の第1の実施形態のカメラの概略的な構成を示す図であって、図1は、本カメラの一部を切断して、その内部構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、本カメラの主に電気的な構成を概略的に示すブロック構成図である。
【0034】本実施形態のカメラ1は、それぞれが別体に構成されるカメラ本体部11及びレンズ鏡筒12とからなり、両者(11・12)は、互いに着脱自在に構成されてなるものである。
【0035】レンズ鏡筒12は、複数の撮影レンズやその駆動機構等からなる撮影光学系(撮影レンズ)12aを内部に保持して構成されている。この撮影光学系12aは、被写体からの光束を透過させることで当該被写光束により形成される被写体の像を所定の位置(後述する撮像素子27の光電変換面上)に結像せしめるように例えば複数の光学レンズ等によって構成されるものである。そして、このレンズ鏡筒12は、カメラ本体部11の前面に向けて突出するように配設されている。
【0036】なお、このレンズ鏡筒12については、従来のカメラ等において一般的に利用されているものと同様のものが適用される。したがって、その詳細な構成についての説明は省略する。
【0037】カメラ本体部11は、内部に各種の構成部材等を備えて構成され、かつ撮影光学系12aを保持するレンズ鏡筒12を着脱自在となるように配設するための連結部材である撮影光学系装着部(撮影レンズ装着部ともいう)11aをその前面に備えて構成されてなるいわゆる一眼レフレックス方式のカメラである。
【0038】つまり、カメラ本体部11の前面側の略中央部には、被写体光束を当該カメラ本体部11の内部へと導き得る所定の口径を有する露光用開口が形成されており、この露光用開口の周縁部に撮影光学系装着部11aが形成されている。
【0039】カメラ本体部11の外面側には、その前面に上述の撮影光学系装着部11aが配設されているほか、上面部や背面部等の所定の位置にカメラ本体部11を動作させるための各種の操作部材、例えば撮影動作を開始せしめるための指示信号等を発生させるためのレリーズボタン17等が配設されている。これらの操作部材については、本発明とは直接関連しない部分であるので、図面の煩雑化を避けるために、レリーズボタン17以外の操作部材については、その図示及び説明を省略する。
【0040】カメラ本体部11の内部には、図1に示すように、各種の構成部材、例えば、撮影光学系12aによって形成される所望の被写体像を撮像素子27(図2参照)の光電変換面上とは異なる所定の位置に形成させるべく設けられ、いわゆる観察光学系を構成するファインダー装置13と、撮像素子27の光電変換面への被写体光束の照射時間等を制御するシャッタ機構等を備えたシャッター部14と、このシャッター部14を含み撮影光学系12aを透過した被写体光束に基づいて形成される被写体像に対応した画像信号を得る撮像素子27及びこの撮像素子27の光電変換面の前面側の所定の位置に配設され当該光電変換面への塵埃等の付着を予防する防塵部材であって光学部材等からなる防塵フイルター21(詳細については後述する)等からなるアッセンブリである撮像素子ユニット(以下、撮像ユニットと略記する)15と、撮像素子27により取得した画像信号に対して各種の信号処理を施す画像信号処理回路16a(図2参照)等の電気回路を構成する各種の電気部材が実装される主回路基板16を始めとした複数の回路基板(図1では主回路基板16のみを図示している)と、等が、それぞれ所定の位置に配設されている。
【0041】ファインダー装置13は、撮影光学系12aを透過した被写体光束の光軸を折り曲げて観察光学系の側へと導き得るように構成される反射鏡13bと、この反射鏡13bから出射する光束を受けて正立正像を形成するペンタプリズム13aと、このペンタプリズム13aにより形成される像を拡大して観察するのに最適な形態の像を結像させる接眼レンズ13c等によって構成されている。
【0042】反射鏡13bは、撮影光学系12aの光軸から退避する位置と当該光軸上の所定の位置との間で移動自在に構成され、通常状態においては、撮影光学系12aの光軸上において当該光軸に対して所定の角度、例えば角度45度を有して配置されている。これにより、撮影光学系12aを透過した被写体光束は、当該カメラ1が通常状態にあるときには、反射鏡13bによってその光軸が折り曲げられて、当該反射鏡13bの上方に配置されるペンタプリズム13aの側へと反射されるようになっている。
【0043】一方、本カメラ1が撮影動作の実行中において、その実際の露光動作中には、当該反射鏡13bは、撮影光学系12aの光軸から退避する所定の位置に移動するようになっている。これによって、被写体光束は、撮像素子27の側へと導かれ、その光電変換面を照射するようになっている。
【0044】シャッター部14は、例えばフォーカルプレーン方式のシャッター機構や、このシャッター機構の動作を制御する駆動回路等、従来のカメラ等において一般的に利用されているものと同様のものが適用される。したがって、その詳細な構成についての説明は省略する。
【0045】また、本カメラ1の内部には、上述したように複数の回路基板が配設され、各種の電気回路を構成している。本カメラ1の電気的な構成は、図2に示すように、例えば本カメラ1の全体を統括的に制御する制御回路であるCPU41と、撮像素子27によって取得した画像信号に基づいて記録に適合する形態の信号に変換する信号処理等、各種の信号処理を施す画像信号処理回路16aと、この画像信号処理回路16aによって処理済みの画像信号や画像データ及びこれに付随する各種の情報等を一時的に記録するワークメモリ16bと、この画像信号処理回路16aによって生成された所定の形態の記録用の画像データを所定の領域に記録する記録媒体43と、この記録媒体43と本カメラ1の電気回路とを電気的に接続すべく構成される記録媒体インターフェイス42と、画像を表示するための液晶表示装置(LCD)等からなる表示部46と、この表示部46と本カメラ1との間を電気的に接続し、画像信号処理回路16aによって処理済の画像信号を受けて表示部46を用いて表示するのに最適な表示用の画像信号を生成する表示回路47と、乾電池等の二次電池等からなる電池45と、この電池45又は所定の接続ケイブル等(図示せず)により供給される外部電源(AC)からの電力を受けて、本カメラ1を動作させるのに適するように制御し、各電気回路へと配電する電源回路44と、撮像ユニット15に含まれる防塵フイルター21を駆動させるための電気回路であって発振器等からなる防塵フイルター駆動部48等からなる。
【0046】次に、本実施形態のカメラ1における撮像ユニット15の詳細について、以下に説明する。図3・図4・図5・図6は、本実施形態のカメラ1における撮像ユニット15の一部を取り出して示す図であって、図3は、当該撮像ユニットを分解して示す要部分解斜視図である。図4は、当該撮像ユニットの構成部材のうちの防塵フイルター受け部材を示す正面図である。図5は、当該撮像ユニットの構成部材のうちの防塵フイルター受け部材と防塵フイルター(防塵部材)とを示す分解斜視図である。そして、図6は、図5の防塵フイルター受け部材と防塵フイルターとを接着剤によって接合させた状態を示し、図4のE−E線に沿う位置に相当する要部断面図である。
【0047】なお、本実施形態のカメラ1の撮像ユニット15は、上述したようにシャッター部14等を含む複数の部材によって構成されるユニットであるが、図3においては、その主要部を図示するに留め、シャッター部14の図示は省略している。また、各構成部材の位置関係を示すために、図3においては、当該撮像ユニット15の近傍に設けられ、撮像素子27が実装されると共に、画像信号処理回路16a及びワークメモリ16b等からなる撮像系の電気回路が実装される主回路基板16を合わせて図示している。この主回路基板16、それ自体の詳細については、従来のカメラ等において一般的に利用されているものが適用されるものとして、その説明は省略する。
【0048】撮像ユニット15は、CCD等からなり撮影光学系12aを透過し自己の光電変換面上に照射された光に対応した画像信号を得る撮像素子27と、この撮像素子27を固定支持する薄板状の部材からなる撮像素子固定板28と、撮像素子27の光電変換面の側に配設され、撮影光学系12aを透過して照射される被写体光束から高周波成分を取り除くべく形成される光学素子である光学的ローパスフイルター(Low Pass Filter;以下、光学LPFという)25と、この光学LPF25と撮像素子27との間の周縁部に配置され、略枠形状の弾性部材等によって形成されるローパスフイルター受け部材26と、撮像素子27を収納し固定保持すると共に光学LPF25をその周縁部位乃至その近傍部位に密着して支持しかつ所定の部位を後述する防塵フイルター受け部材23Aに密に接触するように配設される撮像素子収納ケース部材24(以下、CCDケース24という)と、このCCDケース24の前面側に配置され防塵フイルター21(防塵部材)をその周縁部位乃至その近傍部位に密着して支持する防塵フイルター受け部材23Aと、この防塵フイルター受け部材23Aによって支持されて撮像素子27の光電変換面の側であって光学LPF25の前面側において当該光学LPF25との間に所定の間隔を持つ所定の位置に対向配置される防塵部材である防塵フイルター21と、この防塵フイルター21の周縁部に配設され当該防塵フイルター21に対して所定の振動を与えるための加振用部材であり例えば電気機械変換素子等からなる圧電素子22等によって構成されている。
【0049】撮像素子27は、撮影光学系12aを透過した被写体光束を自己の光電変換面に受けて光電変換処理を行なうことによって、当該光電変換面に形成される被写体像に対応した画像信号を取得するものであって、例えば電荷結合素子(CCD;Charge Coupled Device)等が適用されている。
【0050】この撮像素子27は、撮像素子固定板28を介して主回路基板16上の所定の位置に実装されている。この主回路基板16には、上述したように画像信号処理回路16a及びワークメモリ16b等が共に実装されており、撮像素子27からの出力信号、即ち光電変換処理により得られた画像信号が画像信号処理回路16a等へと電送されるようになっている。
【0051】この画像信号処理回路16aにおいてなされる信号処理としては、例えば撮影光学系装着部11aに装着されたレンズ鏡筒12の内部に保持される撮影光学系12aによって撮像素子27の光電変換面上に結像された像に対応するものとして当該撮像素子27から得られた画像信号を記録に適合する形態の信号に変換する処理等、各種の信号処理である。このような信号処理は、電子的な画像信号を取り扱うように構成される一般的なデジタルカメラ等において通常になされる処理と同様である。したがって、当該カメラ1において実行される各種の信号処理についての詳細な説明は省略する。
【0052】撮像素子27の前面側には、ローパスフイルター受け部材26を挟んで光学LPF25が配設されている。そして、これを覆うようにCCDケース24が配設されている。
【0053】つまり、CCDケース24には、略中央部分に矩形状からなる開口24cが設けられており、この開口24cには、その後方側から光学LPF25及び撮像素子27が配設されるようになっている。この開口24cの後方側の内周縁部には、断面が略L字形状からなる段部24aが形成されている。
【0054】上述したように、光学LPF25と撮像素子27との間には、弾性部材等からなるローパスフイルター受け部材26が配設されている。このローパスフイルター受け部材26は、撮像素子27の前面側の周縁部においてその光電変換面の有効範囲、つまり当該撮像素子27に入射する有効光束を避ける位置に配設され、かつ光学LPF25の背面側の周縁部近傍に当接するようになっている。そして、光学LPF25と撮像素子27との間を略気密性が保持されるようにしている。これにより、光学LPF25には、ローパスフイルター受け部材26による光軸方向への弾性力が働くことになる。
【0055】そこで、光学LPF25の前面側の周縁部を、CCDケース24の段部24aに対して略気密的に接触させるように配置することで、当該光学LPF25をその光軸方向に変位させようとするローパスフイルター受け部材26による弾性力に抗して当該光学LPF25の光軸方向における位置を規制するようにしている。
【0056】換言すれば、CCDケース24の開口24cの内部に背面側より挿入された光学LPF25は、段部24aによって光軸方向における位置規制がなされている。これにより、当該光学LPF25は、CCDケース24の内部から前面側へ向けて外部に抜け出ないようになっている。
【0057】このようにして、CCDケース24の開口24cの内部に背面側から光学LPF25が挿入された後、光学LPF25の背面側には、撮像素子27が配設されるようになっている。この場合において、光学LPF25と撮像素子27との間には、周縁部においてローパスフイルター受け部材26が挟持されるようになっている。
【0058】また、撮像素子27は、上述したように撮像素子固定板28を挟んで主回路基板16に実装されている。そして、撮像素子固定板28は、CCDケース24の背面側からネジ孔24eに対してネジ28bによってスペーサ28aを介して固定されている。また、撮像素子固定板28には、主回路基板16がスペーサ16cを介してネジ16dによって固定されている。
【0059】CCDケース24の前面側には、防塵フイルター受け部材23AがCCDケース24のネジ孔24bに対してネジ23bによって固定されている。この場合において、CCDケース24の周縁側であって前面側の所定の位置には、周溝24dが略環状に形成されている。その一方で、防塵フイルター受け部材23Aの周縁側であって背面側の所定の位置には、CCDケース24の周溝24dに対応させた環状凸部(図示せず。なお図17の符号23d参照)が全周にわたって略環状に形成されている。したがって、環状凸部と周溝24dとが嵌合することによりCCDケース24と防塵フイルター受け部材23Aとは、環状の領域、即ち周溝24dと環状凸部とが形成される領域において相互に略気密的に嵌合するようになっている。
【0060】防塵フイルター21は、全体として円形乃至多角形の板状をなし、少なくとも自己の中心から放射方向に所定の広がりを持つ領域が、透明部をなしており、この透明部が光学LPF25の前面側に所定の間隔を持って対向配置されているものである。なお、透明部は、撮影光学系12a(撮影レンズ)から撮像素子27の光電変換面へと入射する有効光束を透過可能となるように形成されている。
【0061】また、防塵フイルター21の一方の面(本実施形態では背面側)の周縁部には、当該防塵フイルター21に対して振動を与えるための所定の加振用部材であり電気機械変換素子等によって形成される圧電素子22が一体となるように、例えば接着剤による貼着等の手段により配設されている。この圧電素子22は、外部から所定の駆動電圧を印加することによって防塵フイルター21に所定の振動を発生させることができるように構成されている。
【0062】そして、防塵フイルター21は、防塵フイルター受け部材23A(後述する封止構造部を構成する一部材)に対して接着剤31によって気密的に接合させ固定保持されている。この場合において、防塵フイルター21は、その一方の面の周縁部の全周において接着剤31によって防塵フイルター受け部材23Aに接着固定されている。
【0063】防塵フイルター受け部材23Aの略中央部近傍には、円形状又は多角形状からなる開口23Afが穿設されている。この開口23Afは、撮影光学系12aを透過した被写体光束を通過させて、当該光束が後方に配置される撮像素子27の光電変換面を照射するのに充分な大きさとなるように設定されている。
【0064】また、この開口23Afの周縁部には、前面側に突出する壁部23Aeが略環状に形成されており、この壁部23Aeの先端側には、さらに前面側に向けて突出するように受け部23Acが形成されている(図4〜図6参照)。
【0065】また、当該防塵フイルター受け部材23Aの前面側の外周縁部近傍には、所定の位置に複数(本実施形態では三箇所)の突状部23Aaが前面側に向けて突出するように形成されている。この突状部23Aaは、当該防塵フイルター受け部材23Aに防塵フイルター21を接着配置するときの位置決めを行なう位置規制部材の役目をするものである。
【0066】この防塵フイルター受け部材23Aに対しては、その前面側に圧電素子22を介して防塵フイルター21が接着剤31によって貼着されることになる(図6参照)。
【0067】この場合において、接着剤31は、防塵フイルター受け部材23Aの壁部23Aeの先端側の全域にわたって、つまり環状の領域の全周に塗布されている。この状態で、防塵フイルター受け部材23Aの前面側から防塵フイルター21を貼り付けることになるが、このとき防塵フイルター21の外周縁部を突状部23Aaに沿わせて光軸方向に移動させるようにすれば、当該防塵フイルター21は、防塵フイルター受け部材23Aの所定の位置に配置されるようになっている。
【0068】そして、図6に示すように防塵フイルター21(実際には圧電素子22)の所定の位置(後述する振動時の節となる部位)に受け部23Acが当接するようになっている。
【0069】したがって、これにより防塵フイルター受け部材23Aは、防塵フイルター21の周縁部近傍の環状の領域、即ち壁部23Aeの先端部において接着剤31によって当該防塵フイルター21と気密的に接合し固定保持されている。
【0070】ところで、上述したように防塵フイルター受け部材23AとCCDケース24とは、周溝24dと環状凸部とが相互に略気密的に嵌合していると共に、防塵フイルター受け部材23Aと防塵フイルター21とは、接着剤31の接着力により圧電素子22を介して気密的に接合している。
【0071】また、CCDケース24に配設される光学LPF25は、光学LPF25の前面側の周縁部とCCDケース24の段部24aとの間で略気密的となるように配設されている。
【0072】さらに、光学LPF25の背面側には、撮像素子27がローパスフイルター受け部材26を介して配設されており、光学LPF25と撮像素子27との間においても、略気密性が保持されるようになっている。
【0073】したがって、このような構成によって、光学LPF25と防塵フイルター21とが対向する間の空間には、所定の空隙部が形成されており、同時に光学LPF25の周縁側には、CCDケース24と防塵フイルター受け部材23Aと防塵フイルター21とによって所定の空間部が形成されている。この空間部は、光学LPF25の外側に張り出すようにして形成される封止された空間となっている。
【0074】この場合において、当該空間部は、上述の空隙部よりも広い空間となるように設定されている。そして、空隙部と空間部とからなる空間は、上述した如くCCDケース24と防塵フイルター受け部材23Aと防塵フイルター21と光学LPF25とによって略気密的に封止される封止空間を形成している。
【0075】このように、本実施形態のカメラにおける撮像ユニット15では、光学LPF25及び防塵フイルター21の周縁に形成され空隙部を含む略密閉された封止空間を形成する封止構造部が構成されている。そして、この封止構造部は、光学LPF25の周縁乃至その近傍から外側の位置に設けられるようになっている。
【0076】さらに、本実施形態においては、防塵フイルター21をその周縁部位乃至その近傍部位に密着して支持する防塵フイルター受け部材23Aと、光学LPF25をその周縁部位乃至その近傍部位に密着して支持すると共に、自己の所定部位で防塵フイルター受け部材23Aと密に接触するように配設されるCCDケース24等によって、封止構造部が構成されている。
【0077】上述のように構成された本実施形態のカメラ1においては、撮像素子27の前面側の所定の位置に防塵フイルター21を対向配置し、撮像素子27の光電変換面と防塵フイルター21との周縁に形成される封止空間を封止するように構成したので、撮像素子27の光電変換面に塵埃等が付着するのを予防している。
【0078】そして、この場合においては、防塵フイルター21の前面側の露出面に付着する塵埃等については、当該防塵フイルター21の周縁部に一体となるように配設される圧電素子22に周期電圧を印加して防塵フイルター21に対して所定の振動を与えることで、除去することができるようになっている。
【0079】図7は、本カメラ1における撮像ユニット15のうち防塵フイルター21及びこれに一体に設けられる圧電素子22のみを取り出して示す正面図である。また、図8・図9は、図7の圧電素子22に対して駆動電圧を印加した際の防塵フイルター21及び圧電素子22の状態変化を示し、図8は図7のA−A線に沿う断面図、図9は図7のB−B線に沿う断面図である。
【0080】ここで、例えば圧電素子22に負(マイナス;−)電圧を印加した場合には、防塵フイルター21は、図8・図9において実線で示すように変形する一方、圧電素子22に正(プラス;+)電圧を印加した場合には、防塵フイルター21は、同図において点線で示すように変形することになる。
【0081】この場合において、図7〜図9の符号21aで示すような振動の節の位置では、実質的に振幅は零になることから、この節21aに対応する部位に防塵フイルター受け部材23Aの受け部23Acを当接させるように設定する。これにより、振動を阻害することなく防塵フイルター21を効率的に支持し得ることになる。
【0082】そして、この状態において、所定のときに防塵フイルター駆動部48(図2参照)を制御して、圧電素子22に対して周期的な電圧を印加することで防塵フイルター21は振動し、当該防塵フイルター21の表面に付着した塵埃等は除去される。
【0083】なお、このときの共振周波数は、防塵フイルター21の形状やサイズ・板厚・材質等により決まるものである。上述の図7〜図9に示す例では、1次の振動を発生させた場合を示しているが、これに限らず、高次の振動を発生させるようにしてもよい。
【0084】図10〜図12に示す別の例示では、図7〜図9に示す例と同様の構成の防塵フイルターに対して2次振動を発生させた場合のようすを示している。
【0085】この場合において、図10は、図7と同様に本カメラ1における撮像ユニット15のうち防塵フイルター21及びこれに一体に設けられる圧電素子22のみを取り出して示す正面図である。また、図11・図12は、図10の圧電素子22に対して印加した際の防塵フイルター21及び圧電素子22の状態変化を示し、図11は図10のA−A線に沿う断面図、図12は図10のB−B線に沿う断面図である。
【0086】ここで、例えば圧電素子22に負(マイナス;−)電圧を印加した場合には、防塵フイルター21は、図11・図12において実線で示すように変形する一方、圧電素子22に正(プラス;+)電圧を印加した場合には、防塵フイルター21は、同図において点線で示すように変形することになる。
【0087】この場合においては、図10〜図12に示す符号21a・21bのようにこの振動では二対の節が存在することになるが、節21aに対応する部位に防塵フイルター受け部材23Aの受け部23Acを当接させるように設定することで、上述の図7〜図9に示す例と同様に、振動を阻害することなく防塵フイルター21を効率的に支持し得ることになる。
【0088】そして、この状態において、所定のときに防塵フイルター駆動部48を制御して、圧電素子22に対して周期的な電圧を印加することで防塵フイルター21は振動し、当該防塵フイルター21の表面に付着した塵埃等は除去される。
【0089】なお、図7〜図9に示すように1次の振動を発生させた場合には、当該撮像ユニット15における封止空間は、防塵フイルター21の振幅によって図7・図8の符号Cで示す分の容積変化が生じることになる。一方、図10〜図12に示すように2次の振動を発生させた場合には、防塵フイルター21の振幅によって生じる封止空間の容積変化は、図10・図11の符号D1で示す領域から符号D2で示す領域(D2×2)を差し引いた分(D1−(D2×2))となる。
【0090】封止空間に対する容積変化が少ないほど、封止空間の内部における内圧の変化は小さいことから、封止空間の容積変化は少ないほど効率的な振動を得ることができることがわかる。したがって、電気機械変換の効率の点では、発生させる振動は、高次となるように設定するのが望ましい。
【0091】以上説明したように上記第1の実施形態によれば、光学LPF25と防塵フイルター21(防塵部材)との両者が対向して形成される空隙部を含む略密閉された封止空間を構成すべく光学LPF25及び防塵フイルター21の周縁側で空間部を封止するようにした封止構造部を、光学LPF25の周縁乃至その近傍から外側に設けるように構成したので、空間部の一定の容積を確保するについて、光学LPF25と防塵フイルター21(防塵部材)との間隔を短く設定することができる。
【0092】一般に、光学LPF25と防塵フイルター21(防塵部材)との間隔を短く設定すると、空隙部の容積が少なくなることから圧電素子22(加振用部材)によって防塵フイルター21に振動を与える際に封止空間の内圧が高くなってしまうことは周知である。しかし、封止空間の内圧が高い場合には、圧電素子22による防塵フイルター21の振動を阻害してしまう傾向がある。
【0093】一方、封止空間の容積を確保するために光学LPF25と防塵フイルター21(防塵部材)との間隔を長くなるように設定した場合には、撮像ユニット15の光軸方向における寸法も大きくなってしまうことになり、カメラ1の光軸方向における小型化を阻害する要因になる。
【0094】そこで、本実施形態においては、光学LPF25の周縁乃至その近傍から外側に空間部を設けることで、封止空間の充分な容積を確保して、圧電素子22による防塵フイルター21の振動を阻害することなく、撮像ユニット15の光軸方向における寸法の長大化を抑えることができる。したがって、カメラ1の光軸方向における小型化に寄与することが容易にできる。
【0095】さらに、本実施形態によれば、防塵フイルター21を固定保持し当該防塵フイルター21と防塵フイルター受け部材23Aとを気密的に接合する手段として接着剤31を利用するようにしたことから、容易に構成の簡略化を実現することができ、よって部材点数の削減化に寄与し得ると共に、製造工程の簡略化及び製造コストの低減化に寄与することができる。
【0096】なお、上述の第1の実施形態のカメラ1においては、防塵フイルター受け部材23AとCCDケース24とを別体に形成し、両者を相互に略気密的に嵌合させるように構成しているが、このような形態に限ることはなく、例えば防塵フイルター受け部材23AとCCDケース24とを一体となるように形成した単一の部材によって構成する等の形態としても、上述の第1の実施形態と全く同様の効果を得ることができる。
【0097】また、上述の第1の実施形態においては、防塵フイルター21と防塵フイルター受け部材23Aとは、接着剤31を用いて接着固定するようにしている。この場合において、防塵フイルター21は、その一方の面の周縁部の全周において接着剤31によって防塵フイルター受け部材23A(封止構造部)に接着固定するようにしている。
【0098】このように接着剤31を用いて防塵フイルター21を防塵フイルター受け部材23Aに接着固定するのに際して、当該防塵フイルター21の周縁部の全周において固定すれば、確実に接着固定することができ、よって良好な封止状態を確保することができる。
【0099】その一方で、防塵フイルター21は、圧電素子21によって振動を与えられるようになっており、その振動作用によって、防塵フイルタ21自身の外表面に付着した塵埃等を振り落とすように構成されている。
【0100】この場合において、防塵フイルター受け部材23Aに対して防塵フイルター21が確実に接着固定されている状態において、圧電素子22の作用によって防塵フイルター21を振動させようとすると、その振動が減衰してしまう傾向がある。
【0101】そこで、防塵フイルター受け部材23Aと防塵フイルター21との接着力を確保しながら、振動が減衰してしまうのを低減するための手段としては、次の本発明の第2の実施形態に示すように、防塵フイルター21と防塵フイルター受け部材23Aとの接着剤31による接着部位を、防塵フイルター21の周縁部において所定の複数箇所に留める手段が考えられる。
【0102】図13・図14・図15は、本発明の第2の実施形態のカメラにおける撮像ユニットの一部を取り出して示す図であって、図13は、当該撮像ユニットの構成部材のうちの防塵フイルター受け部材を示す正面図である。図14は、当該撮像ユニットの構成部材のうちの防塵フイルター受け部材と防塵フイルター(防塵部材)とを示す分解斜視図である。そして、図15は、図14の防塵フイルター受け部材と防塵フイルターとを接着剤によって接合させた状態を示し、図13のE1−E1線に沿う位置に相当する要部断面図である。
【0103】本実施形態の構成は、上述の第1の実施形態と基本的には同様であって、防塵フイルター21を防塵フイルター受け部材23Aに接着固定する接着剤31の塗布部位が異なるのみである。したがって、上述の第1の実施形態とは異なる部位についてのみ図示し、同様の構成部位については、同じ符号を附してその説明を省略すると共に、カメラの全体構成の図示及び説明についても省略する(図1〜図12参照)。
【0104】本実施形態においては、防塵フイルター21(防塵部材)を、その周縁部の複数箇所において封止構造部の一部を構成する防塵フイルター受け部材23Aに接着固定するように構成されている。
【0105】即ち、図13・図14に示すように接着剤31は、防塵フイルター受け部材23Aの受け部23Ac近傍における所定の三箇所に塗布される。この状態で、防塵フイルター21を防塵フイルター受け部材23Aの前面側の受け部23Acに貼り付ける。これにより、防塵フイルター21は、その周縁部の複数箇所において圧電素子22を介して防塵フイルター受け部材23Aに接着固定されることになる。
【0106】その他の構成は、上述の第1・第2の実施形態と略同様である。以上のような構成とすることによって、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、防塵フイルター21と防塵フイルター受け部材23Acとが確実に接着固定されるのと同時に、接着部位を複数箇所に限定したので、防塵フイルター21の周縁部の全周において接着した場合に比べて、防塵フイルター21の振動が減衰するのを低減させることができる。したがって、防塵フイルター21の確実な振動作用を確保することができる。
【0107】なお、本実施形態では、接着部位を三箇所としているが、これに限ることはなく複数箇所であれば同様の効果を得ることができる。しかし、必要最小限の接着力を確保することを考慮すると、接着部位は、少なくとも三箇所またはそれ以上とすることが望ましい。
【0108】ところで、上述の第1・第2の実施形態においては、防塵フイルター受け部材23Aの受け部23Acが圧電素子22の所定の位置に当接するように構成した例を挙げている。
【0109】しかしながら、圧電素子22の作用によって防塵フイルター21に対して振動を与えるに際しては、当該防塵フイルター21の形状やサイズ・板厚・材質等によって振動の共振周波数が異なるものになることは、上述した通りである。
【0110】また、防塵フイルター受け部材23Aの受け部23Acは、防塵フイルター21の振動の節となる部位に当接するように設定するのが望ましい点についても上述の如しである。
【0111】そこで、防塵フイルター21の振動の節のとなる部位が、圧電素子22の設けられる部位ではなく、当該防塵フイルター21の表面上の所定の位置となる場合を考えてみる。
【0112】図16・図17は、本発明の第3の実施形態のカメラにおける撮像ユニットの一部を取り出して示す図であって、図16は、当該撮像ユニットの構成部材のうちの防塵フイルター受け部材に防塵フイルターが接着された状態を示す斜視図である。また、図17は、図16のQ−Q線に沿う断面図である。
【0113】本実施形態の構成も、上述の第1・第2の実施形態と基本的には同様であって、防塵フイルター21を防塵フイルター受け部材23Aに接着固定する場合において、両者の当接位置が異なるのみである。したがって、上述の第1・第2の実施形態とは異なる部位についてのみ図示し、同様の構成部位については、同じ符号を附してその説明を省略する。これと共に、カメラの全体構成の図示及び説明についても省略する(図1〜図12参照)。
【0114】本実施形態においては、防塵フイルター受け部材23Aの受け部23Acが防塵フイルター21の表面上に直接当接するように配置されている。これに応じて、圧電素子22は、当該受け部23Acを避けるようにして防塵フイルター21の周縁部の表面に貼着されている。
【0115】ところで、防塵フイルター21には、撮影光学系12aを透過した被写体光束が入射するようになっており、当該光束は、その後、撮像素子27の光電変換面へと到り、ここに被写体像を形成するようになっている。つまり、防塵フイルター21は、被写体像を形成するのに寄与する光束の光路上に配設されている。
【0116】このことを考慮して、当該防塵フイルター21の表面には、例えば反射又は帯電等を防止するための薄膜(反射防止膜・帯電防止膜)や、赤外線又は紫外線等を吸収し透過するのを防止するための薄膜(赤外線カット膜・紫外線カット膜)等の各種の薄膜を形成するいわゆるコーティング処理が施されるのが一般である。
【0117】この場合において、防塵フイルター21に施すコーティング処理としては、各種の薄膜のうちのいずれかの機能を有する薄膜を単体で形成する処理、各種の薄膜のうちの複数種類の薄膜を積層させることで多機能化した薄膜を形成する処理、各種の薄膜のうち多機能化された形態の薄膜を形成する処理等、各種の処理形態が考えられる。
【0118】ここで、反射防止膜(ARコートともいう)は、ガラスやプラスチック等の光学部材等の表面に屈折率の異なる薄膜、例えば酸化シリコン(SiO2)・酸化チタン(TiO2)・酸化亜鉛(ZnO2)等を1/4波長厚(0.1〜0.3μm)で積層した多層膜を蒸着することにより、表面の反射率を低く抑え、透過率を向上させるというものである。通常のガラスの表面反射率は4%程度であるが、その表面に反射防止膜を施すことによりその反射率を1%以下に抑えることができるというものである。
【0119】また、帯電防止膜としては、光学系に用いる透明導電膜が適用される。この透明導電膜とは、大きな導電性と可視域での高い透光性とを合わせ持つ薄膜であって、主に可視光平均透過率が約80%以上でかつ抵抗率が約1X10−3Ω・cm以下のものをさすことが多い。この透明導電膜としては、金(Au)・銀(Ag)・白金(Pt)等の金属薄膜からなる金属透明導電膜と、酸化インジューム(In2O3・酸化スズ(SnO2)・酸化亜鉛(ZnO)等の酸化物半導体透明導電膜とがある。前者は、透光性や膜強度に難点があることから、光学分野では、主に後者の酸化物半導体透明導電膜が用いられる。
【0120】赤外線カット膜(IRカット膜ともいう)は、赤外域の光(波長670〜680nmより以上の波長)を反射させ、その他の波長領域の光を透過させ得る薄膜である。
【0121】紫外線カット膜(UVカット膜ともいう)は、紫外域の光(波長390〜410nm以下の波長)を反射させ、その他の波長領域の光を透過させる得る薄膜である。
【0122】防塵フイルター21の表面上にこれらのコーティング処理がなされている場合において、その表面上に圧電素子21や受け部23Acを接着すると、その接着力を充分に確保し得ないという場合があり得る。また、コーティング処理により形成される薄膜自体が剥離する可能性もあり、当該薄膜上に圧電素子21や受け部23Acを接着した状態で当該薄膜が剥離するようなことになると、圧電素子21や防塵フイルター受け部材23Aもまた脱落してしまうことになってしまう。
【0123】そこで、本実施形態においては、防塵フイルター21の表面上において、圧電素子21及び受け部23Acを接着すべき部位に対しては、コーティング処理を施さず薄膜を形成しない薄膜非形成部位21nc(図16において斜線で示す部位)を設けるようにしている。このうち図16・図17において、符号21ncaで示す部位は圧電素子22が貼着されるべき部位を示している。また同図において、符号21ncbで示す部位は防塵フイルター受け部材23Aの受け部23Acが接着されるべき部位を示している。
【0124】そして、防塵フイルター21の表面上の薄膜非形成部位21nc以外の部位、つまり当該防塵フイルター21において撮影レンズ12aから撮像素子27へと入射する有効光束が透過可能な透明部が薄膜形成部位21cとなっている。
【0125】このように形成した防塵フイルター21に対して防塵フイルター受け部材23Aを接着固定する場合には、その受け部23Acが防塵フイルター21の薄膜非形成部21ncbに当接するように配置し、その状態で接着剤31を用いて両者を接着固定する。その他の構成は、上述の第1・第2の実施形態と略同様である。
【0126】このように防塵フイルター21を形成することによって、防塵フイルター受け部材23Aが防塵フイルター21の表面上に直接当接し接着される形態の場合にも、上述の第1・第2の実施形態と同様の効果を得ることができると共に、両者を確実に接着固定することができる。
【0127】なお、この場合において、防塵フイルター21と防塵フイルター受け部材23Aとは、上述の第1の実施形態と同様に防塵フイルター21を、その周縁部の全周において防塵フイルター受け部材23Aに接着固定するようにしてもよいし、上述の第2の実施形態と同様に防塵フイルター21を、その周縁部の複数箇所において防塵フイルター受け部材23Aに接着固定するようにしてもよい。
【0128】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、撮像素子の光電変換面上に塵埃等が付着するのを防止する防塵構造を備えたカメラ及びこれに使用する撮像素子ユニットにおいて、撮像素子の前面側に配設する防塵部材等の固定力の向上に寄与することのできる固定手段を提案し、確実な防塵機能を確保しながら、構成の簡略化を実現し、製造上の簡易化をも実現し得るカメラ及びこれに使用する撮像素子ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態のカメラの一部を切断して、その内部構成を概略的に示す斜視図。
【図2】図1のカメラの主に電気的な構成を概略的に示すブロック構成図。
【図3】図1のカメラにおける撮像ユニットの一部を取り出して示す図であって、当該撮像ユニットを分解して示す要部分解斜視図。
【図4】図1のカメラにおける撮像ユニットの一部を取り出して示す図であって、当該撮像ユニットのうちの防塵フイルター受け部材を示す正面図。
【図5】図1のカメラにおける撮像ユニットのうちの防塵フイルター受け部材と防塵フイルターとを示す分解斜視図。
【図6】図4のE−E線に沿う位置に相当する断面図。
【図7】図1のカメラにおける撮像ユニットのうち防塵フイルター及びこれに一体に設けられる圧電素子のみを取り出して示す正面図。
【図8】図7の圧電素子に対して印加した際の防塵フイルター及び圧電素子の状態変化を示し、図7のA−A線に沿う断面図。
【図9】図7の圧電素子に対して印加した際の防塵フイルター及び圧電素子の状態変化を示し、図7のB−B線に沿う断面図。
【図10】図1のカメラにおける撮像ユニットのうち防塵フイルター及びこれに一体に設けられる圧電素子のみを取り出して示す正面図。
【図11】図10の圧電素子に対して印加した際の防塵フイルター及び圧電素子の状態変化の別の例を示し、図10のA−A線に沿う断面図。
【図12】図10の圧電素子に対して印加した際の防塵フイルター及び圧電素子の状態変化の別の例を示し、図10のB−B線に沿う断面図。
【図13】本発明の第2の実施形態のカメラにおける撮像ユニットの一部を取り出して示す図であって、当該撮像ユニットのうちの防塵フイルター受け部材を示す正面図。
【図14】図13のカメラにおける撮像ユニットのうちの防塵フイルター受け部材と防塵フイルターとを示す分解斜視図。
【図15】図13のE1−E1線に沿う位置に相当する断面図。
【図16】本発明の第3の実施形態のカメラにおける撮像ユニットの一部を取り出して示す図であって、当該撮像ユニットのうちの防塵フイルター受け部材に防塵フイルターが接着された状態を示す斜視図。
【図17】図16のQ−Q線に沿う断面図。
【符号の説明】
1……カメラ
11……カメラ本体部
11a……撮影光学系装着部(撮影レンズ装着部)
12……レンズ鏡筒
12a……撮影光学系(撮影レンズ)
13……ファインダー装置
13a……ペンタプリズム
13b……反射鏡
13c……接眼レンズ
14……シャッター部
15……撮像ユニット(撮像素子ユニット)
16……主回路基板
16a……画像信号処理回路
16b……ワークメモリ
17……レリーズボタン
21……防塵フイルター(防塵部材;光学部材)
21c……薄膜形成部位
21nc(21nca・21ncb)……薄膜非形成部位
22……圧電素子(加振用部材;電気機械変換素子)
22a……第2導電部材
22b……第1導電部材
23A……防塵フイルター受け部材(封止構造部)
24……CCDケース(撮像素子収納ケース部材;封止構造部)
23d……環状凸部
24d……周溝
25……光学的ローパスフイルター(光学LPF;光学素子)
26……ローパスフイルター受け部材
27……撮像素子(CCD)
28……撮像素子固定板
31……接着剤
48……防塵フイルター駆動部
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自己の光電変換面上に照射された光に対応した画像信号を得る撮像素子を有する撮像素子ユニットを備えたカメラに関し、より詳細には撮像素子の防塵構造を備えたカメラ及びこれに用いる撮像ユニットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、撮影光学系(撮影レンズともいう)を透過した被写体からの光束(以下、被写体光束という)に基づいて形成される被写体像を所定の位置に配置した固体撮像素子等、例えば電荷結合素子(CCD;Charge Coupled Device。以下、単に撮像素子という)等の光電変換面上に結像させ、当該撮像素子等の光電変換作用を利用して所望の被写体像を表わす電気的な画像信号等を生成し、この画像信号等に基づく信号を、例えば液晶表示装置(LCD;Liquid Crystal Display)等の所定の表示装置等へと出力して画像等を表示させたり、撮像素子等によって生成した画像信号等を所定の形態の画像データとして所定の記録媒体の所定の記録領域に記録し、さらにこの記録媒体に記録された画像データを読み出して、その画像データに対して表示装置を用いて表示するのに最適な画像信号となるように変換処理した後、処理済の画像信号に基づいて、これに対応する画像を表示させ得るように構成した、いわゆるデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等のデジタルカメラ等(以下、デジタルカメラ又は単にカメラという)が、一般的に実用化され広く普及している。
【0003】また、一般的なデジタルカメラにおいては、撮影動作に先立って撮影対象となる所望の被写体を観察し、当該被写体を含む撮影範囲を設定する等の目的で、光学的ファインダー装置を備えているのが一般である。
【0004】この光学ファインダー装置としては、撮影光学系の光軸上に配設した反射部材等を用いて撮影光学系を透過した被写体光束の進行方向を折り曲げて観察用の被写体像を所定の位置に結像させる一方、撮影動作時には、撮影光学系の光軸上から反射部材を退避させることにより、被写体光束を撮像素子の受光面、即ち光電変換面へと導き、当該光電変換面上に撮影用の被写体像を形成させるように構成したいわゆる一眼レフレックス方式のファインダー装置等が一般的に利用されている。
【0005】そして、近年においては、一眼レフレックス方式のファインダー装置を具備すると共に、カメラ本体に対して撮影光学系を着脱自在となるように構成し、使用者が所望するときに所望の撮影光学系を任意に着脱し交換することで、単一のカメラ本体において複数種類の撮影光学系を選択的に使用し得るように構成したいわゆるレンズ交換可能な形態のデジタルカメラが一般に実用化されつつある。
【0006】このようなレンズ交換可能な形態のデジタルカメラにおいては、当該撮影光学系をカメラ本体から取り外した際に、カメラ本体の内部に空気中に浮遊する塵埃等が侵入する可能性がある。また、カメラ本体内部には、例えばシャッター・絞り機構等、機械的に動作する各種の機構が配設されていることから、これら各種の機構等からは、その動作中に塵埃等が発生する場合もある。
【0007】一方、撮影光学系をカメラ本体から取り外した際には、当該撮影光学系の後方に配置される撮像素子の受光面(光電変換面とも言う)がカメラ内部の外気に露呈されることになることから、塵埃等が帯電作用等の要因によって撮像素子の光電変換面に付着することがある。
【0008】そこで、従来の一眼レフレックス方式のデジタルカメラ等においては、帯電作用等に起因して撮像素子の受光面上に塵埃等が付着するのを抑制するための技術が、例えば特開2000−29132号公報等によって提案されている。
【0009】上記特開2000−29132号公報に開示されている手段は、レンズ交換可能な形態の一眼レフレックス方式のデジタルカメラにおいて、カメラ内部に設けられる撮像素子の受光面を覆うカバー部材の表面に透明電極を設け、この電極に対して直流電圧若しくは数kHz〜20kHz程度の周波数の交流電圧を印加することによって、帯電作用によって撮像素子の受光面上に塵埃等が付着するのを抑制するようにしたものである。
【0010】当該公報に開示されている手段によれば、撮像素子に生起する電荷を中和することによって静電気等に起因して撮像素子の受光面に塵埃等が付着するのを抑制することができるというものである。
【0011】他方、従来のデジタルカメラにおける撮像素子としては、いわゆるパッケイジに封じられた形態の撮像素子(例えばパッケイジCCDという)が広く用いられているが、このような形態の撮像素子とは別に、近年においては、いわゆるベアチップCCDと呼ばれる裸の状態のCCDチップを市場に供給することが提案されている。
【0012】このようなベアチップCCDにおいては、その光電変換面上に塵埃等が付着する可能性が多くなることから、ベアチップCCDとこれを載置する基板との間に圧電素子を設け、この圧電素子に対して所定の電圧を印加することによって当該ベアチップCCD自体を振動させ、これにより光電変換面上に付着した塵埃等を振り落とすようにする手段についての提案が、例えば特開平9−130654号公報等によって開示されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上述の特開2000−29132号公報に開示されている手段では、帯電した撮像素子の電荷を中和させることで塵等が付着するのを抑制するようにしていることから、例えば静電気に因らずに撮像素子の光電変換面上に単に付着したり堆積した状態の塵埃等を除去する手段としては、最適なものではないと考えられる。
【0014】また、上述の特開平9−130654号公報に開示されている手段では、ベアチップCCDを念頭に入れて考案されている手段であるために、従来のデジタルカメラにおいて一般的に利用されているパッケイジCCDのような形態の撮像素子に対して適用するためには、最適な手段であるとは言えない。
【0015】つまり、一般的な形態のパッケイジCCD等に対して上述の特開平9−130654号公報に開示されている手段を適用した場合には、例えば撮像素子自体又はそのパッケイジに対して振動を加えることになるので、この加振作用によって撮像素子及びその近傍に配設される各種の機構に対して、例えば機構的な劣化や狂い等の悪影響が波及する虞がある。
【0016】一方、本出願人は、先に特願2000−401291号において、撮像素子の光電変換面の側を封止乃至保護する防塵部材を備えることで、当該撮像素子の光電変換面に塵埃等が付着するのを抑制すると共に、防塵部材の外面側に付着する塵埃等に対しては、所定の加振用部材によって防塵部材に所定の振幅の振動を与えることによって、これを除去する手段を提案している。
【0017】この手段によれば、小型でかつ簡単な機構によって撮像素子の光電変換面に塵埃等が付着するのを抑制すると共に、防塵部材の外面側に付着する塵埃等を容易に除去し得るレンズ交換可能な形態のデジタルカメラを構成することができるというものである。
【0018】本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、撮像素子の光電変換面上に塵埃等が付着するのを防止する防塵構造を備えたカメラ及びこれに使用する撮像素子ユニットにおいて、撮像素子の前面側に配設する防塵部材等の固定力の向上に寄与することのできる固定手段を提案し、確実な防塵機能を確保しながら、構成の簡略化を実現し、製造上の簡易化をも実現し得るカメラ及びこれに使用する撮像素子ユニットを提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、第1の発明によるカメラは、自己の光電変換面上に照射された光に対応した画像信号を得る撮像素子と、上記撮像素子の光電変換面上に被写体像を入射せしめる撮影レンズと、上記撮影レンズから上記撮像素子に入射する有効光束を透過可能な透明部を有し、この透明部が上記撮像素子の前面側に所定の間隔を持って対向配設された防塵部材と、上記防塵部材の周縁部に配設され当該防塵部材に振動を与えるための加振用部材と、上記撮像素子と上記防塵部材との両者が対向して形成される部位に、略密閉された空間部を構成すべく上記撮像素子及び上記防塵部材の周縁側で上記空間部を封止するように構成された封止構造部と、上記撮像素子の光電変換面上に結像された像に対応するものとして当該撮像素子から得られた画像信号を記録に適合する形態の信号に変換するための画像信号処理回路とを備えてなり、上記防塵部材を上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする。
【0020】また、第2の発明は、上記第1の発明によるカメラにおいて、上記防塵部材を、その周縁部の全周において上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする。
【0021】そして、第3の発明は、上記第1の発明によるカメラにおいて、上記防塵部材を、その周縁部の複数箇所において上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする。
【0022】第4の発明は、上記第1の発明によるカメラにおいて、上記加振用部材は、圧電素子であることを特徴とする。
【0023】第5の発明は、上記第1の発明によるカメラにおいて、上記撮影レンズを装着するための撮影レンズ装着部をさらに有し、上記撮影レンズは、上記撮影レンズ装着部において着脱自在であることを特徴とする。
【0024】第6の発明は、上記第1の発明乃至第5の発明のうちのいずれか一つによるカメラにおいて、上記防塵部材の表面には、薄膜形成部位と薄膜非形成部位とが形成され、上記薄膜非形成部位に上記封止構造部を接着固定したことを特徴とする。
【0025】第7の発明は、上記第6の発明によるカメラにおいて、上記薄膜は、赤外線カット膜・紫外線カット膜・反射防止膜又は帯電防止膜のいずれかであることを特徴とする。
【0026】第8の発明による撮像素子ユニットは、自己の光電変換面上に照射された光に対応した画像信号を得る撮像素子と、上記撮像素子の前面側に所定の間隔を持って対向配設された光学部材と、上記光学部材の周縁部に配設され当該光学部材に振動を与えるための加振用部材と、上記撮像素子と上記光学部材との両者が対向して形成される部位に、略密閉された空間部を構成すべく上記撮像素子及び上記光学部材の周縁側で上記空間部を封止するように構成された封止構造部とを備えてなり、上記光学部材を上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする。
【0027】第9の発明は、上記第8の発明による撮像素子ユニットにおいて、上記光学部材を、その周縁部の全周において上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする。
【0028】第10の発明は、上記第8の発明による撮像素子ユニットにおいて、上記光学部材を、その周縁部の複数箇所において上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする。
【0029】第11の発明は、上記第8の発明による撮像素子ユニットにおいて、上記加振用部材は、圧電素子であることを特徴とする。
【0030】第12の発明は、上記第8の発明乃至第11の発明のうちのいずれか一つによる撮像素子ユニットにおいて、上記光学部材の表面には、薄膜形成部位と薄膜非形成部位とが形成され、上記薄膜非形成部位に上記封止構造部を接着固定したことを特徴とする。
【0031】第13の発明は、上記第12の発明による撮像素子ユニットにおいて、上記薄膜は、赤外線カット膜・紫外線カット膜・反射防止膜又は帯電防止膜のいずれかであることを特徴とする。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。まず、本発明の第1の実施形態のカメラについて、その概略的な構成を以下に説明する。
【0033】図1・図2は、本発明の第1の実施形態のカメラの概略的な構成を示す図であって、図1は、本カメラの一部を切断して、その内部構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、本カメラの主に電気的な構成を概略的に示すブロック構成図である。
【0034】本実施形態のカメラ1は、それぞれが別体に構成されるカメラ本体部11及びレンズ鏡筒12とからなり、両者(11・12)は、互いに着脱自在に構成されてなるものである。
【0035】レンズ鏡筒12は、複数の撮影レンズやその駆動機構等からなる撮影光学系(撮影レンズ)12aを内部に保持して構成されている。この撮影光学系12aは、被写体からの光束を透過させることで当該被写光束により形成される被写体の像を所定の位置(後述する撮像素子27の光電変換面上)に結像せしめるように例えば複数の光学レンズ等によって構成されるものである。そして、このレンズ鏡筒12は、カメラ本体部11の前面に向けて突出するように配設されている。
【0036】なお、このレンズ鏡筒12については、従来のカメラ等において一般的に利用されているものと同様のものが適用される。したがって、その詳細な構成についての説明は省略する。
【0037】カメラ本体部11は、内部に各種の構成部材等を備えて構成され、かつ撮影光学系12aを保持するレンズ鏡筒12を着脱自在となるように配設するための連結部材である撮影光学系装着部(撮影レンズ装着部ともいう)11aをその前面に備えて構成されてなるいわゆる一眼レフレックス方式のカメラである。
【0038】つまり、カメラ本体部11の前面側の略中央部には、被写体光束を当該カメラ本体部11の内部へと導き得る所定の口径を有する露光用開口が形成されており、この露光用開口の周縁部に撮影光学系装着部11aが形成されている。
【0039】カメラ本体部11の外面側には、その前面に上述の撮影光学系装着部11aが配設されているほか、上面部や背面部等の所定の位置にカメラ本体部11を動作させるための各種の操作部材、例えば撮影動作を開始せしめるための指示信号等を発生させるためのレリーズボタン17等が配設されている。これらの操作部材については、本発明とは直接関連しない部分であるので、図面の煩雑化を避けるために、レリーズボタン17以外の操作部材については、その図示及び説明を省略する。
【0040】カメラ本体部11の内部には、図1に示すように、各種の構成部材、例えば、撮影光学系12aによって形成される所望の被写体像を撮像素子27(図2参照)の光電変換面上とは異なる所定の位置に形成させるべく設けられ、いわゆる観察光学系を構成するファインダー装置13と、撮像素子27の光電変換面への被写体光束の照射時間等を制御するシャッタ機構等を備えたシャッター部14と、このシャッター部14を含み撮影光学系12aを透過した被写体光束に基づいて形成される被写体像に対応した画像信号を得る撮像素子27及びこの撮像素子27の光電変換面の前面側の所定の位置に配設され当該光電変換面への塵埃等の付着を予防する防塵部材であって光学部材等からなる防塵フイルター21(詳細については後述する)等からなるアッセンブリである撮像素子ユニット(以下、撮像ユニットと略記する)15と、撮像素子27により取得した画像信号に対して各種の信号処理を施す画像信号処理回路16a(図2参照)等の電気回路を構成する各種の電気部材が実装される主回路基板16を始めとした複数の回路基板(図1では主回路基板16のみを図示している)と、等が、それぞれ所定の位置に配設されている。
【0041】ファインダー装置13は、撮影光学系12aを透過した被写体光束の光軸を折り曲げて観察光学系の側へと導き得るように構成される反射鏡13bと、この反射鏡13bから出射する光束を受けて正立正像を形成するペンタプリズム13aと、このペンタプリズム13aにより形成される像を拡大して観察するのに最適な形態の像を結像させる接眼レンズ13c等によって構成されている。
【0042】反射鏡13bは、撮影光学系12aの光軸から退避する位置と当該光軸上の所定の位置との間で移動自在に構成され、通常状態においては、撮影光学系12aの光軸上において当該光軸に対して所定の角度、例えば角度45度を有して配置されている。これにより、撮影光学系12aを透過した被写体光束は、当該カメラ1が通常状態にあるときには、反射鏡13bによってその光軸が折り曲げられて、当該反射鏡13bの上方に配置されるペンタプリズム13aの側へと反射されるようになっている。
【0043】一方、本カメラ1が撮影動作の実行中において、その実際の露光動作中には、当該反射鏡13bは、撮影光学系12aの光軸から退避する所定の位置に移動するようになっている。これによって、被写体光束は、撮像素子27の側へと導かれ、その光電変換面を照射するようになっている。
【0044】シャッター部14は、例えばフォーカルプレーン方式のシャッター機構や、このシャッター機構の動作を制御する駆動回路等、従来のカメラ等において一般的に利用されているものと同様のものが適用される。したがって、その詳細な構成についての説明は省略する。
【0045】また、本カメラ1の内部には、上述したように複数の回路基板が配設され、各種の電気回路を構成している。本カメラ1の電気的な構成は、図2に示すように、例えば本カメラ1の全体を統括的に制御する制御回路であるCPU41と、撮像素子27によって取得した画像信号に基づいて記録に適合する形態の信号に変換する信号処理等、各種の信号処理を施す画像信号処理回路16aと、この画像信号処理回路16aによって処理済みの画像信号や画像データ及びこれに付随する各種の情報等を一時的に記録するワークメモリ16bと、この画像信号処理回路16aによって生成された所定の形態の記録用の画像データを所定の領域に記録する記録媒体43と、この記録媒体43と本カメラ1の電気回路とを電気的に接続すべく構成される記録媒体インターフェイス42と、画像を表示するための液晶表示装置(LCD)等からなる表示部46と、この表示部46と本カメラ1との間を電気的に接続し、画像信号処理回路16aによって処理済の画像信号を受けて表示部46を用いて表示するのに最適な表示用の画像信号を生成する表示回路47と、乾電池等の二次電池等からなる電池45と、この電池45又は所定の接続ケイブル等(図示せず)により供給される外部電源(AC)からの電力を受けて、本カメラ1を動作させるのに適するように制御し、各電気回路へと配電する電源回路44と、撮像ユニット15に含まれる防塵フイルター21を駆動させるための電気回路であって発振器等からなる防塵フイルター駆動部48等からなる。
【0046】次に、本実施形態のカメラ1における撮像ユニット15の詳細について、以下に説明する。図3・図4・図5・図6は、本実施形態のカメラ1における撮像ユニット15の一部を取り出して示す図であって、図3は、当該撮像ユニットを分解して示す要部分解斜視図である。図4は、当該撮像ユニットの構成部材のうちの防塵フイルター受け部材を示す正面図である。図5は、当該撮像ユニットの構成部材のうちの防塵フイルター受け部材と防塵フイルター(防塵部材)とを示す分解斜視図である。そして、図6は、図5の防塵フイルター受け部材と防塵フイルターとを接着剤によって接合させた状態を示し、図4のE−E線に沿う位置に相当する要部断面図である。
【0047】なお、本実施形態のカメラ1の撮像ユニット15は、上述したようにシャッター部14等を含む複数の部材によって構成されるユニットであるが、図3においては、その主要部を図示するに留め、シャッター部14の図示は省略している。また、各構成部材の位置関係を示すために、図3においては、当該撮像ユニット15の近傍に設けられ、撮像素子27が実装されると共に、画像信号処理回路16a及びワークメモリ16b等からなる撮像系の電気回路が実装される主回路基板16を合わせて図示している。この主回路基板16、それ自体の詳細については、従来のカメラ等において一般的に利用されているものが適用されるものとして、その説明は省略する。
【0048】撮像ユニット15は、CCD等からなり撮影光学系12aを透過し自己の光電変換面上に照射された光に対応した画像信号を得る撮像素子27と、この撮像素子27を固定支持する薄板状の部材からなる撮像素子固定板28と、撮像素子27の光電変換面の側に配設され、撮影光学系12aを透過して照射される被写体光束から高周波成分を取り除くべく形成される光学素子である光学的ローパスフイルター(Low Pass Filter;以下、光学LPFという)25と、この光学LPF25と撮像素子27との間の周縁部に配置され、略枠形状の弾性部材等によって形成されるローパスフイルター受け部材26と、撮像素子27を収納し固定保持すると共に光学LPF25をその周縁部位乃至その近傍部位に密着して支持しかつ所定の部位を後述する防塵フイルター受け部材23Aに密に接触するように配設される撮像素子収納ケース部材24(以下、CCDケース24という)と、このCCDケース24の前面側に配置され防塵フイルター21(防塵部材)をその周縁部位乃至その近傍部位に密着して支持する防塵フイルター受け部材23Aと、この防塵フイルター受け部材23Aによって支持されて撮像素子27の光電変換面の側であって光学LPF25の前面側において当該光学LPF25との間に所定の間隔を持つ所定の位置に対向配置される防塵部材である防塵フイルター21と、この防塵フイルター21の周縁部に配設され当該防塵フイルター21に対して所定の振動を与えるための加振用部材であり例えば電気機械変換素子等からなる圧電素子22等によって構成されている。
【0049】撮像素子27は、撮影光学系12aを透過した被写体光束を自己の光電変換面に受けて光電変換処理を行なうことによって、当該光電変換面に形成される被写体像に対応した画像信号を取得するものであって、例えば電荷結合素子(CCD;Charge Coupled Device)等が適用されている。
【0050】この撮像素子27は、撮像素子固定板28を介して主回路基板16上の所定の位置に実装されている。この主回路基板16には、上述したように画像信号処理回路16a及びワークメモリ16b等が共に実装されており、撮像素子27からの出力信号、即ち光電変換処理により得られた画像信号が画像信号処理回路16a等へと電送されるようになっている。
【0051】この画像信号処理回路16aにおいてなされる信号処理としては、例えば撮影光学系装着部11aに装着されたレンズ鏡筒12の内部に保持される撮影光学系12aによって撮像素子27の光電変換面上に結像された像に対応するものとして当該撮像素子27から得られた画像信号を記録に適合する形態の信号に変換する処理等、各種の信号処理である。このような信号処理は、電子的な画像信号を取り扱うように構成される一般的なデジタルカメラ等において通常になされる処理と同様である。したがって、当該カメラ1において実行される各種の信号処理についての詳細な説明は省略する。
【0052】撮像素子27の前面側には、ローパスフイルター受け部材26を挟んで光学LPF25が配設されている。そして、これを覆うようにCCDケース24が配設されている。
【0053】つまり、CCDケース24には、略中央部分に矩形状からなる開口24cが設けられており、この開口24cには、その後方側から光学LPF25及び撮像素子27が配設されるようになっている。この開口24cの後方側の内周縁部には、断面が略L字形状からなる段部24aが形成されている。
【0054】上述したように、光学LPF25と撮像素子27との間には、弾性部材等からなるローパスフイルター受け部材26が配設されている。このローパスフイルター受け部材26は、撮像素子27の前面側の周縁部においてその光電変換面の有効範囲、つまり当該撮像素子27に入射する有効光束を避ける位置に配設され、かつ光学LPF25の背面側の周縁部近傍に当接するようになっている。そして、光学LPF25と撮像素子27との間を略気密性が保持されるようにしている。これにより、光学LPF25には、ローパスフイルター受け部材26による光軸方向への弾性力が働くことになる。
【0055】そこで、光学LPF25の前面側の周縁部を、CCDケース24の段部24aに対して略気密的に接触させるように配置することで、当該光学LPF25をその光軸方向に変位させようとするローパスフイルター受け部材26による弾性力に抗して当該光学LPF25の光軸方向における位置を規制するようにしている。
【0056】換言すれば、CCDケース24の開口24cの内部に背面側より挿入された光学LPF25は、段部24aによって光軸方向における位置規制がなされている。これにより、当該光学LPF25は、CCDケース24の内部から前面側へ向けて外部に抜け出ないようになっている。
【0057】このようにして、CCDケース24の開口24cの内部に背面側から光学LPF25が挿入された後、光学LPF25の背面側には、撮像素子27が配設されるようになっている。この場合において、光学LPF25と撮像素子27との間には、周縁部においてローパスフイルター受け部材26が挟持されるようになっている。
【0058】また、撮像素子27は、上述したように撮像素子固定板28を挟んで主回路基板16に実装されている。そして、撮像素子固定板28は、CCDケース24の背面側からネジ孔24eに対してネジ28bによってスペーサ28aを介して固定されている。また、撮像素子固定板28には、主回路基板16がスペーサ16cを介してネジ16dによって固定されている。
【0059】CCDケース24の前面側には、防塵フイルター受け部材23AがCCDケース24のネジ孔24bに対してネジ23bによって固定されている。この場合において、CCDケース24の周縁側であって前面側の所定の位置には、周溝24dが略環状に形成されている。その一方で、防塵フイルター受け部材23Aの周縁側であって背面側の所定の位置には、CCDケース24の周溝24dに対応させた環状凸部(図示せず。なお図17の符号23d参照)が全周にわたって略環状に形成されている。したがって、環状凸部と周溝24dとが嵌合することによりCCDケース24と防塵フイルター受け部材23Aとは、環状の領域、即ち周溝24dと環状凸部とが形成される領域において相互に略気密的に嵌合するようになっている。
【0060】防塵フイルター21は、全体として円形乃至多角形の板状をなし、少なくとも自己の中心から放射方向に所定の広がりを持つ領域が、透明部をなしており、この透明部が光学LPF25の前面側に所定の間隔を持って対向配置されているものである。なお、透明部は、撮影光学系12a(撮影レンズ)から撮像素子27の光電変換面へと入射する有効光束を透過可能となるように形成されている。
【0061】また、防塵フイルター21の一方の面(本実施形態では背面側)の周縁部には、当該防塵フイルター21に対して振動を与えるための所定の加振用部材であり電気機械変換素子等によって形成される圧電素子22が一体となるように、例えば接着剤による貼着等の手段により配設されている。この圧電素子22は、外部から所定の駆動電圧を印加することによって防塵フイルター21に所定の振動を発生させることができるように構成されている。
【0062】そして、防塵フイルター21は、防塵フイルター受け部材23A(後述する封止構造部を構成する一部材)に対して接着剤31によって気密的に接合させ固定保持されている。この場合において、防塵フイルター21は、その一方の面の周縁部の全周において接着剤31によって防塵フイルター受け部材23Aに接着固定されている。
【0063】防塵フイルター受け部材23Aの略中央部近傍には、円形状又は多角形状からなる開口23Afが穿設されている。この開口23Afは、撮影光学系12aを透過した被写体光束を通過させて、当該光束が後方に配置される撮像素子27の光電変換面を照射するのに充分な大きさとなるように設定されている。
【0064】また、この開口23Afの周縁部には、前面側に突出する壁部23Aeが略環状に形成されており、この壁部23Aeの先端側には、さらに前面側に向けて突出するように受け部23Acが形成されている(図4〜図6参照)。
【0065】また、当該防塵フイルター受け部材23Aの前面側の外周縁部近傍には、所定の位置に複数(本実施形態では三箇所)の突状部23Aaが前面側に向けて突出するように形成されている。この突状部23Aaは、当該防塵フイルター受け部材23Aに防塵フイルター21を接着配置するときの位置決めを行なう位置規制部材の役目をするものである。
【0066】この防塵フイルター受け部材23Aに対しては、その前面側に圧電素子22を介して防塵フイルター21が接着剤31によって貼着されることになる(図6参照)。
【0067】この場合において、接着剤31は、防塵フイルター受け部材23Aの壁部23Aeの先端側の全域にわたって、つまり環状の領域の全周に塗布されている。この状態で、防塵フイルター受け部材23Aの前面側から防塵フイルター21を貼り付けることになるが、このとき防塵フイルター21の外周縁部を突状部23Aaに沿わせて光軸方向に移動させるようにすれば、当該防塵フイルター21は、防塵フイルター受け部材23Aの所定の位置に配置されるようになっている。
【0068】そして、図6に示すように防塵フイルター21(実際には圧電素子22)の所定の位置(後述する振動時の節となる部位)に受け部23Acが当接するようになっている。
【0069】したがって、これにより防塵フイルター受け部材23Aは、防塵フイルター21の周縁部近傍の環状の領域、即ち壁部23Aeの先端部において接着剤31によって当該防塵フイルター21と気密的に接合し固定保持されている。
【0070】ところで、上述したように防塵フイルター受け部材23AとCCDケース24とは、周溝24dと環状凸部とが相互に略気密的に嵌合していると共に、防塵フイルター受け部材23Aと防塵フイルター21とは、接着剤31の接着力により圧電素子22を介して気密的に接合している。
【0071】また、CCDケース24に配設される光学LPF25は、光学LPF25の前面側の周縁部とCCDケース24の段部24aとの間で略気密的となるように配設されている。
【0072】さらに、光学LPF25の背面側には、撮像素子27がローパスフイルター受け部材26を介して配設されており、光学LPF25と撮像素子27との間においても、略気密性が保持されるようになっている。
【0073】したがって、このような構成によって、光学LPF25と防塵フイルター21とが対向する間の空間には、所定の空隙部が形成されており、同時に光学LPF25の周縁側には、CCDケース24と防塵フイルター受け部材23Aと防塵フイルター21とによって所定の空間部が形成されている。この空間部は、光学LPF25の外側に張り出すようにして形成される封止された空間となっている。
【0074】この場合において、当該空間部は、上述の空隙部よりも広い空間となるように設定されている。そして、空隙部と空間部とからなる空間は、上述した如くCCDケース24と防塵フイルター受け部材23Aと防塵フイルター21と光学LPF25とによって略気密的に封止される封止空間を形成している。
【0075】このように、本実施形態のカメラにおける撮像ユニット15では、光学LPF25及び防塵フイルター21の周縁に形成され空隙部を含む略密閉された封止空間を形成する封止構造部が構成されている。そして、この封止構造部は、光学LPF25の周縁乃至その近傍から外側の位置に設けられるようになっている。
【0076】さらに、本実施形態においては、防塵フイルター21をその周縁部位乃至その近傍部位に密着して支持する防塵フイルター受け部材23Aと、光学LPF25をその周縁部位乃至その近傍部位に密着して支持すると共に、自己の所定部位で防塵フイルター受け部材23Aと密に接触するように配設されるCCDケース24等によって、封止構造部が構成されている。
【0077】上述のように構成された本実施形態のカメラ1においては、撮像素子27の前面側の所定の位置に防塵フイルター21を対向配置し、撮像素子27の光電変換面と防塵フイルター21との周縁に形成される封止空間を封止するように構成したので、撮像素子27の光電変換面に塵埃等が付着するのを予防している。
【0078】そして、この場合においては、防塵フイルター21の前面側の露出面に付着する塵埃等については、当該防塵フイルター21の周縁部に一体となるように配設される圧電素子22に周期電圧を印加して防塵フイルター21に対して所定の振動を与えることで、除去することができるようになっている。
【0079】図7は、本カメラ1における撮像ユニット15のうち防塵フイルター21及びこれに一体に設けられる圧電素子22のみを取り出して示す正面図である。また、図8・図9は、図7の圧電素子22に対して駆動電圧を印加した際の防塵フイルター21及び圧電素子22の状態変化を示し、図8は図7のA−A線に沿う断面図、図9は図7のB−B線に沿う断面図である。
【0080】ここで、例えば圧電素子22に負(マイナス;−)電圧を印加した場合には、防塵フイルター21は、図8・図9において実線で示すように変形する一方、圧電素子22に正(プラス;+)電圧を印加した場合には、防塵フイルター21は、同図において点線で示すように変形することになる。
【0081】この場合において、図7〜図9の符号21aで示すような振動の節の位置では、実質的に振幅は零になることから、この節21aに対応する部位に防塵フイルター受け部材23Aの受け部23Acを当接させるように設定する。これにより、振動を阻害することなく防塵フイルター21を効率的に支持し得ることになる。
【0082】そして、この状態において、所定のときに防塵フイルター駆動部48(図2参照)を制御して、圧電素子22に対して周期的な電圧を印加することで防塵フイルター21は振動し、当該防塵フイルター21の表面に付着した塵埃等は除去される。
【0083】なお、このときの共振周波数は、防塵フイルター21の形状やサイズ・板厚・材質等により決まるものである。上述の図7〜図9に示す例では、1次の振動を発生させた場合を示しているが、これに限らず、高次の振動を発生させるようにしてもよい。
【0084】図10〜図12に示す別の例示では、図7〜図9に示す例と同様の構成の防塵フイルターに対して2次振動を発生させた場合のようすを示している。
【0085】この場合において、図10は、図7と同様に本カメラ1における撮像ユニット15のうち防塵フイルター21及びこれに一体に設けられる圧電素子22のみを取り出して示す正面図である。また、図11・図12は、図10の圧電素子22に対して印加した際の防塵フイルター21及び圧電素子22の状態変化を示し、図11は図10のA−A線に沿う断面図、図12は図10のB−B線に沿う断面図である。
【0086】ここで、例えば圧電素子22に負(マイナス;−)電圧を印加した場合には、防塵フイルター21は、図11・図12において実線で示すように変形する一方、圧電素子22に正(プラス;+)電圧を印加した場合には、防塵フイルター21は、同図において点線で示すように変形することになる。
【0087】この場合においては、図10〜図12に示す符号21a・21bのようにこの振動では二対の節が存在することになるが、節21aに対応する部位に防塵フイルター受け部材23Aの受け部23Acを当接させるように設定することで、上述の図7〜図9に示す例と同様に、振動を阻害することなく防塵フイルター21を効率的に支持し得ることになる。
【0088】そして、この状態において、所定のときに防塵フイルター駆動部48を制御して、圧電素子22に対して周期的な電圧を印加することで防塵フイルター21は振動し、当該防塵フイルター21の表面に付着した塵埃等は除去される。
【0089】なお、図7〜図9に示すように1次の振動を発生させた場合には、当該撮像ユニット15における封止空間は、防塵フイルター21の振幅によって図7・図8の符号Cで示す分の容積変化が生じることになる。一方、図10〜図12に示すように2次の振動を発生させた場合には、防塵フイルター21の振幅によって生じる封止空間の容積変化は、図10・図11の符号D1で示す領域から符号D2で示す領域(D2×2)を差し引いた分(D1−(D2×2))となる。
【0090】封止空間に対する容積変化が少ないほど、封止空間の内部における内圧の変化は小さいことから、封止空間の容積変化は少ないほど効率的な振動を得ることができることがわかる。したがって、電気機械変換の効率の点では、発生させる振動は、高次となるように設定するのが望ましい。
【0091】以上説明したように上記第1の実施形態によれば、光学LPF25と防塵フイルター21(防塵部材)との両者が対向して形成される空隙部を含む略密閉された封止空間を構成すべく光学LPF25及び防塵フイルター21の周縁側で空間部を封止するようにした封止構造部を、光学LPF25の周縁乃至その近傍から外側に設けるように構成したので、空間部の一定の容積を確保するについて、光学LPF25と防塵フイルター21(防塵部材)との間隔を短く設定することができる。
【0092】一般に、光学LPF25と防塵フイルター21(防塵部材)との間隔を短く設定すると、空隙部の容積が少なくなることから圧電素子22(加振用部材)によって防塵フイルター21に振動を与える際に封止空間の内圧が高くなってしまうことは周知である。しかし、封止空間の内圧が高い場合には、圧電素子22による防塵フイルター21の振動を阻害してしまう傾向がある。
【0093】一方、封止空間の容積を確保するために光学LPF25と防塵フイルター21(防塵部材)との間隔を長くなるように設定した場合には、撮像ユニット15の光軸方向における寸法も大きくなってしまうことになり、カメラ1の光軸方向における小型化を阻害する要因になる。
【0094】そこで、本実施形態においては、光学LPF25の周縁乃至その近傍から外側に空間部を設けることで、封止空間の充分な容積を確保して、圧電素子22による防塵フイルター21の振動を阻害することなく、撮像ユニット15の光軸方向における寸法の長大化を抑えることができる。したがって、カメラ1の光軸方向における小型化に寄与することが容易にできる。
【0095】さらに、本実施形態によれば、防塵フイルター21を固定保持し当該防塵フイルター21と防塵フイルター受け部材23Aとを気密的に接合する手段として接着剤31を利用するようにしたことから、容易に構成の簡略化を実現することができ、よって部材点数の削減化に寄与し得ると共に、製造工程の簡略化及び製造コストの低減化に寄与することができる。
【0096】なお、上述の第1の実施形態のカメラ1においては、防塵フイルター受け部材23AとCCDケース24とを別体に形成し、両者を相互に略気密的に嵌合させるように構成しているが、このような形態に限ることはなく、例えば防塵フイルター受け部材23AとCCDケース24とを一体となるように形成した単一の部材によって構成する等の形態としても、上述の第1の実施形態と全く同様の効果を得ることができる。
【0097】また、上述の第1の実施形態においては、防塵フイルター21と防塵フイルター受け部材23Aとは、接着剤31を用いて接着固定するようにしている。この場合において、防塵フイルター21は、その一方の面の周縁部の全周において接着剤31によって防塵フイルター受け部材23A(封止構造部)に接着固定するようにしている。
【0098】このように接着剤31を用いて防塵フイルター21を防塵フイルター受け部材23Aに接着固定するのに際して、当該防塵フイルター21の周縁部の全周において固定すれば、確実に接着固定することができ、よって良好な封止状態を確保することができる。
【0099】その一方で、防塵フイルター21は、圧電素子21によって振動を与えられるようになっており、その振動作用によって、防塵フイルタ21自身の外表面に付着した塵埃等を振り落とすように構成されている。
【0100】この場合において、防塵フイルター受け部材23Aに対して防塵フイルター21が確実に接着固定されている状態において、圧電素子22の作用によって防塵フイルター21を振動させようとすると、その振動が減衰してしまう傾向がある。
【0101】そこで、防塵フイルター受け部材23Aと防塵フイルター21との接着力を確保しながら、振動が減衰してしまうのを低減するための手段としては、次の本発明の第2の実施形態に示すように、防塵フイルター21と防塵フイルター受け部材23Aとの接着剤31による接着部位を、防塵フイルター21の周縁部において所定の複数箇所に留める手段が考えられる。
【0102】図13・図14・図15は、本発明の第2の実施形態のカメラにおける撮像ユニットの一部を取り出して示す図であって、図13は、当該撮像ユニットの構成部材のうちの防塵フイルター受け部材を示す正面図である。図14は、当該撮像ユニットの構成部材のうちの防塵フイルター受け部材と防塵フイルター(防塵部材)とを示す分解斜視図である。そして、図15は、図14の防塵フイルター受け部材と防塵フイルターとを接着剤によって接合させた状態を示し、図13のE1−E1線に沿う位置に相当する要部断面図である。
【0103】本実施形態の構成は、上述の第1の実施形態と基本的には同様であって、防塵フイルター21を防塵フイルター受け部材23Aに接着固定する接着剤31の塗布部位が異なるのみである。したがって、上述の第1の実施形態とは異なる部位についてのみ図示し、同様の構成部位については、同じ符号を附してその説明を省略すると共に、カメラの全体構成の図示及び説明についても省略する(図1〜図12参照)。
【0104】本実施形態においては、防塵フイルター21(防塵部材)を、その周縁部の複数箇所において封止構造部の一部を構成する防塵フイルター受け部材23Aに接着固定するように構成されている。
【0105】即ち、図13・図14に示すように接着剤31は、防塵フイルター受け部材23Aの受け部23Ac近傍における所定の三箇所に塗布される。この状態で、防塵フイルター21を防塵フイルター受け部材23Aの前面側の受け部23Acに貼り付ける。これにより、防塵フイルター21は、その周縁部の複数箇所において圧電素子22を介して防塵フイルター受け部材23Aに接着固定されることになる。
【0106】その他の構成は、上述の第1・第2の実施形態と略同様である。以上のような構成とすることによって、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、防塵フイルター21と防塵フイルター受け部材23Acとが確実に接着固定されるのと同時に、接着部位を複数箇所に限定したので、防塵フイルター21の周縁部の全周において接着した場合に比べて、防塵フイルター21の振動が減衰するのを低減させることができる。したがって、防塵フイルター21の確実な振動作用を確保することができる。
【0107】なお、本実施形態では、接着部位を三箇所としているが、これに限ることはなく複数箇所であれば同様の効果を得ることができる。しかし、必要最小限の接着力を確保することを考慮すると、接着部位は、少なくとも三箇所またはそれ以上とすることが望ましい。
【0108】ところで、上述の第1・第2の実施形態においては、防塵フイルター受け部材23Aの受け部23Acが圧電素子22の所定の位置に当接するように構成した例を挙げている。
【0109】しかしながら、圧電素子22の作用によって防塵フイルター21に対して振動を与えるに際しては、当該防塵フイルター21の形状やサイズ・板厚・材質等によって振動の共振周波数が異なるものになることは、上述した通りである。
【0110】また、防塵フイルター受け部材23Aの受け部23Acは、防塵フイルター21の振動の節となる部位に当接するように設定するのが望ましい点についても上述の如しである。
【0111】そこで、防塵フイルター21の振動の節のとなる部位が、圧電素子22の設けられる部位ではなく、当該防塵フイルター21の表面上の所定の位置となる場合を考えてみる。
【0112】図16・図17は、本発明の第3の実施形態のカメラにおける撮像ユニットの一部を取り出して示す図であって、図16は、当該撮像ユニットの構成部材のうちの防塵フイルター受け部材に防塵フイルターが接着された状態を示す斜視図である。また、図17は、図16のQ−Q線に沿う断面図である。
【0113】本実施形態の構成も、上述の第1・第2の実施形態と基本的には同様であって、防塵フイルター21を防塵フイルター受け部材23Aに接着固定する場合において、両者の当接位置が異なるのみである。したがって、上述の第1・第2の実施形態とは異なる部位についてのみ図示し、同様の構成部位については、同じ符号を附してその説明を省略する。これと共に、カメラの全体構成の図示及び説明についても省略する(図1〜図12参照)。
【0114】本実施形態においては、防塵フイルター受け部材23Aの受け部23Acが防塵フイルター21の表面上に直接当接するように配置されている。これに応じて、圧電素子22は、当該受け部23Acを避けるようにして防塵フイルター21の周縁部の表面に貼着されている。
【0115】ところで、防塵フイルター21には、撮影光学系12aを透過した被写体光束が入射するようになっており、当該光束は、その後、撮像素子27の光電変換面へと到り、ここに被写体像を形成するようになっている。つまり、防塵フイルター21は、被写体像を形成するのに寄与する光束の光路上に配設されている。
【0116】このことを考慮して、当該防塵フイルター21の表面には、例えば反射又は帯電等を防止するための薄膜(反射防止膜・帯電防止膜)や、赤外線又は紫外線等を吸収し透過するのを防止するための薄膜(赤外線カット膜・紫外線カット膜)等の各種の薄膜を形成するいわゆるコーティング処理が施されるのが一般である。
【0117】この場合において、防塵フイルター21に施すコーティング処理としては、各種の薄膜のうちのいずれかの機能を有する薄膜を単体で形成する処理、各種の薄膜のうちの複数種類の薄膜を積層させることで多機能化した薄膜を形成する処理、各種の薄膜のうち多機能化された形態の薄膜を形成する処理等、各種の処理形態が考えられる。
【0118】ここで、反射防止膜(ARコートともいう)は、ガラスやプラスチック等の光学部材等の表面に屈折率の異なる薄膜、例えば酸化シリコン(SiO2)・酸化チタン(TiO2)・酸化亜鉛(ZnO2)等を1/4波長厚(0.1〜0.3μm)で積層した多層膜を蒸着することにより、表面の反射率を低く抑え、透過率を向上させるというものである。通常のガラスの表面反射率は4%程度であるが、その表面に反射防止膜を施すことによりその反射率を1%以下に抑えることができるというものである。
【0119】また、帯電防止膜としては、光学系に用いる透明導電膜が適用される。この透明導電膜とは、大きな導電性と可視域での高い透光性とを合わせ持つ薄膜であって、主に可視光平均透過率が約80%以上でかつ抵抗率が約1X10−3Ω・cm以下のものをさすことが多い。この透明導電膜としては、金(Au)・銀(Ag)・白金(Pt)等の金属薄膜からなる金属透明導電膜と、酸化インジューム(In2O3・酸化スズ(SnO2)・酸化亜鉛(ZnO)等の酸化物半導体透明導電膜とがある。前者は、透光性や膜強度に難点があることから、光学分野では、主に後者の酸化物半導体透明導電膜が用いられる。
【0120】赤外線カット膜(IRカット膜ともいう)は、赤外域の光(波長670〜680nmより以上の波長)を反射させ、その他の波長領域の光を透過させ得る薄膜である。
【0121】紫外線カット膜(UVカット膜ともいう)は、紫外域の光(波長390〜410nm以下の波長)を反射させ、その他の波長領域の光を透過させる得る薄膜である。
【0122】防塵フイルター21の表面上にこれらのコーティング処理がなされている場合において、その表面上に圧電素子21や受け部23Acを接着すると、その接着力を充分に確保し得ないという場合があり得る。また、コーティング処理により形成される薄膜自体が剥離する可能性もあり、当該薄膜上に圧電素子21や受け部23Acを接着した状態で当該薄膜が剥離するようなことになると、圧電素子21や防塵フイルター受け部材23Aもまた脱落してしまうことになってしまう。
【0123】そこで、本実施形態においては、防塵フイルター21の表面上において、圧電素子21及び受け部23Acを接着すべき部位に対しては、コーティング処理を施さず薄膜を形成しない薄膜非形成部位21nc(図16において斜線で示す部位)を設けるようにしている。このうち図16・図17において、符号21ncaで示す部位は圧電素子22が貼着されるべき部位を示している。また同図において、符号21ncbで示す部位は防塵フイルター受け部材23Aの受け部23Acが接着されるべき部位を示している。
【0124】そして、防塵フイルター21の表面上の薄膜非形成部位21nc以外の部位、つまり当該防塵フイルター21において撮影レンズ12aから撮像素子27へと入射する有効光束が透過可能な透明部が薄膜形成部位21cとなっている。
【0125】このように形成した防塵フイルター21に対して防塵フイルター受け部材23Aを接着固定する場合には、その受け部23Acが防塵フイルター21の薄膜非形成部21ncbに当接するように配置し、その状態で接着剤31を用いて両者を接着固定する。その他の構成は、上述の第1・第2の実施形態と略同様である。
【0126】このように防塵フイルター21を形成することによって、防塵フイルター受け部材23Aが防塵フイルター21の表面上に直接当接し接着される形態の場合にも、上述の第1・第2の実施形態と同様の効果を得ることができると共に、両者を確実に接着固定することができる。
【0127】なお、この場合において、防塵フイルター21と防塵フイルター受け部材23Aとは、上述の第1の実施形態と同様に防塵フイルター21を、その周縁部の全周において防塵フイルター受け部材23Aに接着固定するようにしてもよいし、上述の第2の実施形態と同様に防塵フイルター21を、その周縁部の複数箇所において防塵フイルター受け部材23Aに接着固定するようにしてもよい。
【0128】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、撮像素子の光電変換面上に塵埃等が付着するのを防止する防塵構造を備えたカメラ及びこれに使用する撮像素子ユニットにおいて、撮像素子の前面側に配設する防塵部材等の固定力の向上に寄与することのできる固定手段を提案し、確実な防塵機能を確保しながら、構成の簡略化を実現し、製造上の簡易化をも実現し得るカメラ及びこれに使用する撮像素子ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態のカメラの一部を切断して、その内部構成を概略的に示す斜視図。
【図2】図1のカメラの主に電気的な構成を概略的に示すブロック構成図。
【図3】図1のカメラにおける撮像ユニットの一部を取り出して示す図であって、当該撮像ユニットを分解して示す要部分解斜視図。
【図4】図1のカメラにおける撮像ユニットの一部を取り出して示す図であって、当該撮像ユニットのうちの防塵フイルター受け部材を示す正面図。
【図5】図1のカメラにおける撮像ユニットのうちの防塵フイルター受け部材と防塵フイルターとを示す分解斜視図。
【図6】図4のE−E線に沿う位置に相当する断面図。
【図7】図1のカメラにおける撮像ユニットのうち防塵フイルター及びこれに一体に設けられる圧電素子のみを取り出して示す正面図。
【図8】図7の圧電素子に対して印加した際の防塵フイルター及び圧電素子の状態変化を示し、図7のA−A線に沿う断面図。
【図9】図7の圧電素子に対して印加した際の防塵フイルター及び圧電素子の状態変化を示し、図7のB−B線に沿う断面図。
【図10】図1のカメラにおける撮像ユニットのうち防塵フイルター及びこれに一体に設けられる圧電素子のみを取り出して示す正面図。
【図11】図10の圧電素子に対して印加した際の防塵フイルター及び圧電素子の状態変化の別の例を示し、図10のA−A線に沿う断面図。
【図12】図10の圧電素子に対して印加した際の防塵フイルター及び圧電素子の状態変化の別の例を示し、図10のB−B線に沿う断面図。
【図13】本発明の第2の実施形態のカメラにおける撮像ユニットの一部を取り出して示す図であって、当該撮像ユニットのうちの防塵フイルター受け部材を示す正面図。
【図14】図13のカメラにおける撮像ユニットのうちの防塵フイルター受け部材と防塵フイルターとを示す分解斜視図。
【図15】図13のE1−E1線に沿う位置に相当する断面図。
【図16】本発明の第3の実施形態のカメラにおける撮像ユニットの一部を取り出して示す図であって、当該撮像ユニットのうちの防塵フイルター受け部材に防塵フイルターが接着された状態を示す斜視図。
【図17】図16のQ−Q線に沿う断面図。
【符号の説明】
1……カメラ
11……カメラ本体部
11a……撮影光学系装着部(撮影レンズ装着部)
12……レンズ鏡筒
12a……撮影光学系(撮影レンズ)
13……ファインダー装置
13a……ペンタプリズム
13b……反射鏡
13c……接眼レンズ
14……シャッター部
15……撮像ユニット(撮像素子ユニット)
16……主回路基板
16a……画像信号処理回路
16b……ワークメモリ
17……レリーズボタン
21……防塵フイルター(防塵部材;光学部材)
21c……薄膜形成部位
21nc(21nca・21ncb)……薄膜非形成部位
22……圧電素子(加振用部材;電気機械変換素子)
22a……第2導電部材
22b……第1導電部材
23A……防塵フイルター受け部材(封止構造部)
24……CCDケース(撮像素子収納ケース部材;封止構造部)
23d……環状凸部
24d……周溝
25……光学的ローパスフイルター(光学LPF;光学素子)
26……ローパスフイルター受け部材
27……撮像素子(CCD)
28……撮像素子固定板
31……接着剤
48……防塵フイルター駆動部
【特許請求の範囲】
【請求項1】 自己の光電変換面上に照射された光に対応した画像信号を得る撮像素子と、上記撮像素子の光電変換面上に被写体像を入射せしめる撮影レンズと、上記撮影レンズから上記撮像素子に入射する有効光束を透過可能な透明部を有し、この透明部が上記撮像素子の前面側に所定の間隔を持って対向配設された防塵部材と、上記防塵部材の周縁部に配設され当該防塵部材に振動を与えるための加振用部材と、上記撮像素子と上記防塵部材との両者が対向して形成される部位に、略密閉された空間部を構成すべく上記撮像素子及び上記防塵部材の周縁側で上記空間部を封止するように構成された封止構造部と、上記撮像素子の光電変換面上に結像された像に対応するものとして当該撮像素子から得られた画像信号を記録に適合する形態の信号に変換するための画像信号処理回路と、を備えてなり、上記防塵部材を上記封止構造部に接着固定したことを特徴とするカメラ。
【請求項2】 上記防塵部材を、その周縁部の全周において上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項3】 上記防塵部材を、その周縁部の複数箇所において上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項4】 上記加振用部材は、圧電素子であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項5】 上記撮影レンズを装着するための撮影レンズ装着部をさらに有し、上記撮影レンズは、上記撮影レンズ装着部において着脱自在であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項6】 上記防塵部材の表面には、薄膜形成部位と薄膜非形成部位とが形成され、上記薄膜非形成部位に上記封止構造部を接着固定したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちのいずれか一つに記載のカメラ。
【請求項7】 上記薄膜は、赤外線カット膜・紫外線カット膜・反射防止膜又は帯電防止膜のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載のカメラ。
【請求項8】 自己の光電変換面上に照射された光に対応した画像信号を得る撮像素子と、上記撮像素子の前面側に所定の間隔を持って対向配設された光学部材と、上記光学部材の周縁部に配設され当該光学部材に振動を与えるための加振用部材と、上記撮像素子と上記光学部材との両者が対向して形成される部位に、略密閉された空間部を構成すべく上記撮像素子及び上記光学部材の周縁側で上記空間部を封止するように構成された封止構造部と、を備えてなり、上記光学部材を上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする撮像素子ユニット。
【請求項9】 上記光学部材を、その周縁部の全周において上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする請求項8に記載の撮像素子ユニット。
【請求項10】 上記光学部材を、その周縁部の複数箇所において上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする請求項8に記載の撮像素子ユニット。
【請求項11】 上記加振用部材は、圧電素子であることを特徴とする請求項8に記載の撮像素子ユニット。
【請求項12】 上記光学部材の表面には、薄膜形成部位と薄膜非形成部位とが形成され、上記薄膜非形成部位に上記封止構造部を接着固定したことを特徴とする請求項8乃至請求項11のうちのいずれか一つに記載の撮像素子ユニット。
【請求項13】 上記薄膜は、赤外線カット膜・紫外線カット膜・反射防止膜又は帯電防止膜のいずれかであることを特徴とする請求項12に記載の撮像素子ユニット。
【請求項1】 自己の光電変換面上に照射された光に対応した画像信号を得る撮像素子と、上記撮像素子の光電変換面上に被写体像を入射せしめる撮影レンズと、上記撮影レンズから上記撮像素子に入射する有効光束を透過可能な透明部を有し、この透明部が上記撮像素子の前面側に所定の間隔を持って対向配設された防塵部材と、上記防塵部材の周縁部に配設され当該防塵部材に振動を与えるための加振用部材と、上記撮像素子と上記防塵部材との両者が対向して形成される部位に、略密閉された空間部を構成すべく上記撮像素子及び上記防塵部材の周縁側で上記空間部を封止するように構成された封止構造部と、上記撮像素子の光電変換面上に結像された像に対応するものとして当該撮像素子から得られた画像信号を記録に適合する形態の信号に変換するための画像信号処理回路と、を備えてなり、上記防塵部材を上記封止構造部に接着固定したことを特徴とするカメラ。
【請求項2】 上記防塵部材を、その周縁部の全周において上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項3】 上記防塵部材を、その周縁部の複数箇所において上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項4】 上記加振用部材は、圧電素子であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項5】 上記撮影レンズを装着するための撮影レンズ装着部をさらに有し、上記撮影レンズは、上記撮影レンズ装着部において着脱自在であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項6】 上記防塵部材の表面には、薄膜形成部位と薄膜非形成部位とが形成され、上記薄膜非形成部位に上記封止構造部を接着固定したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちのいずれか一つに記載のカメラ。
【請求項7】 上記薄膜は、赤外線カット膜・紫外線カット膜・反射防止膜又は帯電防止膜のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載のカメラ。
【請求項8】 自己の光電変換面上に照射された光に対応した画像信号を得る撮像素子と、上記撮像素子の前面側に所定の間隔を持って対向配設された光学部材と、上記光学部材の周縁部に配設され当該光学部材に振動を与えるための加振用部材と、上記撮像素子と上記光学部材との両者が対向して形成される部位に、略密閉された空間部を構成すべく上記撮像素子及び上記光学部材の周縁側で上記空間部を封止するように構成された封止構造部と、を備えてなり、上記光学部材を上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする撮像素子ユニット。
【請求項9】 上記光学部材を、その周縁部の全周において上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする請求項8に記載の撮像素子ユニット。
【請求項10】 上記光学部材を、その周縁部の複数箇所において上記封止構造部に接着固定したことを特徴とする請求項8に記載の撮像素子ユニット。
【請求項11】 上記加振用部材は、圧電素子であることを特徴とする請求項8に記載の撮像素子ユニット。
【請求項12】 上記光学部材の表面には、薄膜形成部位と薄膜非形成部位とが形成され、上記薄膜非形成部位に上記封止構造部を接着固定したことを特徴とする請求項8乃至請求項11のうちのいずれか一つに記載の撮像素子ユニット。
【請求項13】 上記薄膜は、赤外線カット膜・紫外線カット膜・反射防止膜又は帯電防止膜のいずれかであることを特徴とする請求項12に記載の撮像素子ユニット。
【図6】
【図8】
【図11】
【図15】
【図1】
【図2】
【図4】
【図9】
【図12】
【図3】
【図5】
【図7】
【図10】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図8】
【図11】
【図15】
【図1】
【図2】
【図4】
【図9】
【図12】
【図3】
【図5】
【図7】
【図10】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2003−338960(P2003−338960A)
【公開日】平成15年11月28日(2003.11.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−145250(P2002−145250)
【出願日】平成14年5月20日(2002.5.20)
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成15年11月28日(2003.11.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成14年5月20日(2002.5.20)
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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