説明

カラー画像データ生成装置及びこれを備えた外観検査装置

【課題】搬送される撮像対象物を3ライン方式のカメラにより複数方向から撮像してカラー画像データを生成するカラー画像データ生成装置を提供する。
【解決手段】各ラインセンサ111,112,113の並設間隔をP、搬送面に沿って搬送される撮像対象物Wを上方向から撮像したときの分解能をa、撮像対象物Wを側面方向から撮像したときの分解能をbとすると、搬送面内における側面方向Lと搬送方向Kとの間の角度θがP=s×a及びP=t×bの関係を満たす角度であり且つθ=sin−1(s/t)となる角度に側面方向Lが設定される。RGBの各成分の画像データの内、上方向についてはn番目,n+s番目及びn+2s番目の画像データに含まれる上面画像、側面方向についてはm番目,m+t番目及びm+2t番目の画像データに含まれる側面画像がそれぞれ合成されてカラー画像データが生成される(s,t,n,mは1以上の整数)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RGBの各成分の内のいずれか1つの成分にそれぞれ対応した画像データを生成する3つのラインセンサにより、所定方向に搬送される撮像対象物を少なくとも異なる2方向から撮像し、各撮像方向について、それぞれカラー画像データを生成するカラー画像データ生成装置及びこれを備えた外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の外観検査においては、例えば、検査対象物をカメラにより撮像して得られる画像データを基に、クラック,キズ,欠け,汚れなどの欠陥を検出するといったことが行われている。そして、近年では、従来の白黒画像に代えてカラー画像が用いられることも多くなっている。
【0003】
カラー画像を取得するためのラインセンサカメラには、主に、3CCD方式と3ライン方式とがあり、3CCD方式のカメラは図10に示すような構造を備え、3ライン方式のカメラは図11に示すような構造を備える。
【0004】
前記3CCD方式のカメラ100は、図10に示すように、撮像対象物Wからの光を受光するレンズ101と、レンズ101によって受光された光をRGBの各成分に分光するプリズム102と、分光されたR成分の光を受光してR成分の画像データを生成するR成分用CCD103と、分光されたG成分の光を受光してG成分の画像データを生成するG成分用CCD104と、分光されたB成分の光を受光してB成分の画像データを生成するB成分用CCD105とから構成され、カラー画像データは、生成された各成分の画像データが合成されることによって得られる。
【0005】
一方、前記3ライン方式のカメラ110は、図11に示すように、一定間隔を隔てて互いに平行に並設され、所定方向に搬送される撮像対象物Wを撮像して、RGBの各成分の内のいずれか1つの成分にそれぞれ対応した画像データを生成する3つのラインセンサ111,112,113と、ラインセンサ111,112,113と撮像対象物Wとの間に設けられるレンズ114とから構成される。各ラインセンサ111,112,113は、それぞれ異なる位置(ラインセンサ111は位置111a、ラインセンサ112は位置112a、ラインセンサ113は位置113a)からの光を受光するようになっており、同じ位置における各成分の画像データが合成されることでカラー画像データが得られる。
【0006】
尚、欠陥の検出に当たっては、より高精度な検出を行うべく、カラー画像データをそのまま用いるのではなく、このカラー画像データをHSI変換して得られる、色相,彩度及び輝度からなるHSIデータを基に欠陥を検出する場合もある。
【0007】
また、前記3CCD方式のカメラ100については、例えば、特開2000−214103号公報に記載され、前記3ライン方式のカメラ110については、例えば、特開2010−21417号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−214103号公報
【特許文献2】特開2010−21417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、外観検査の際には、より製品の全体を検査するためや、コストを抑えるために、撮像対象物Wを1台のカメラで1方向からだけ撮像するのではなく、反射鏡などの光学系を組み合わせ、例えば、所定方向に搬送される撮像対象物Wの上面若しくは下面、及び搬送方向斜め前方若しくは斜め後方などの複数方向から撮像対象物Wを1台のカメラで同時に撮像することがよく行われている。
【0010】
そして、この場合には、通常、3CCD方式のカメラ100が有効である。これは、撮像対象物Wの同じ位置からの光をプリズム102により分光して各CCD103,104,105に受光させており、各CCD103,104,105間で撮像対象物Wの撮像位置にずれがないため、複数方向から撮像対象物Wを撮像しても、撮像位置が同じ各成分の画像データを容易に合成して、各撮像方向におけるカラー画像データを生成することができるからである。
【0011】
しかしながら、前記3CCD方式のカメラ100には、コストが高い、高価な専用のレンズ101が必要で、ない場合には精度の低下を招く、サイズが大きいといった問題がある。
【0012】
その一方、3ライン方式のカメラ110は、コストが低い、高価な専用のレンズ114が不要である、コンパクトであるといった利点を有するものの、1台のカメラで複数方向から撮像対象物Wを撮像しようすると、各ラインセンサ111,112,113間で撮像対象物Wの撮像位置がずれているため、また、ある方向から撮像対象物Wを撮像したときの分解能と、別の方向から撮像対象物Wを撮像したときの分解能とが異なるため、すべての撮像方向について、撮像位置が同じ各成分の画像データを取得することが難しく、したがって、各撮像方向におけるカラー画像データを生成することが難しい。
【0013】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、所定方向に搬送される撮像対象物を3ライン方式のカメラにより複数方向から撮像し、各撮像方向におけるカラー画像データを生成することができるカラー画像データ生成装置及びこれを備えた外観検査装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明は、
予め設定された搬送面に沿って所定方向に搬送される撮像対象物を、該搬送面と直交する第1の方向と、前記撮像対象物の側方たる第2の方向との少なくとも2方向から撮像して、前記各撮像方向について、それぞれカラー画像データを生成する装置であって、
一定間隔を隔てて互いに平行に並設され、RGBの各成分の内のいずれか1つの成分にそれぞれ対応する3つのラインセンサであって、前記撮像対象物を一定時間間隔で撮像して、対応する成分の画像データをそれぞれ生成する第1,第2及び第3ラインセンサと、前記第1の方向及び第2の方向から得られる前記撮像対象物の像を前記各ラインセンサの走査方向に横並びにそれぞれ導く光学手段と、前記各ラインセンサによって生成された各成分の画像データを基に、前記各撮像方向について、カラー画像データをそれぞれ生成するカラー画像データ生成部とを備え、
前記光学手段は、前記撮像対象物の搬送によって前記第1の方向及び第2の方向から得られる前記撮像対象物の像が前記各ラインセンサの走査方向とほぼ直交する方向に移動するように該撮像対象物の像を該各ラインセンサに導き、前記各ラインセンサは、前記ほぼ直交する方向に移動する前記撮像対象物の像を前記第1,第2及び第3ラインセンサの順に受光するように配置されたカラー画像データ生成装置において、
前記光学手段における第2方向は、前記各ラインセンサの並設間隔をPと、前記第1の方向から前記撮像対象物を撮像したときの分解能をaと、前記第2の方向から前記撮像対象物を撮像したときの分解能をbとすると、前記第2の方向を前記搬送面に投影して得られる投影線と搬送方向との間の前記搬送面内における角度θがP=s×a及びP=t×bの関係を満たす角度であり且つθ=sin−1(s/t)となる角度に設定され、
前記カラー画像データ生成部は、前記第1の方向については、前記各ラインセンサによって生成されるRGBの各成分の画像データの内、前記第1ラインセンサによって生成されるn番目の画像データと、前記第2ラインセンサによって生成されるn+s番目の画像データと、前記第3ラインセンサによって生成されるn+2s番目の画像データとに含まれる該第1の方向に対応した画像データをそれぞれ合成してカラー画像データを生成し、前記第2の方向については、前記各ラインセンサによって生成されるRGBの各成分の画像データの内、前記第1ラインセンサによって生成されるm番目の画像データと、前記第2ラインセンサによって生成されるm+t番目の画像データと、前記第3ラインセンサによって生成されるm+2t番目の画像データとに含まれる該第2の方向に対応した画像データをそれぞれ合成してカラー画像データを生成するように構成されていることを特徴とするカラー画像データ生成装置に係る(但し、前記s,t,n及びmは1以上の整数である。)。
【0015】
この発明によれば、光学手段における第2方向が、各ラインセンサの並設間隔をPと、第1の方向から撮像対象物を撮像したときの分解能をaと、第2の方向から撮像対象物を撮像したときの分解能をbとすると、第2の方向を搬送面に投影して得られる投影線と搬送方向との間の搬送面内における角度θがP=s×a及びP=t×bの関係を満たす角度であり且つθ=sin−1(s/t)となる角度に設定される。
【0016】
これは、前記角度θが、各ラインセンサの並設間隔PがP=s×a及びP=t×bの関係を満たす角度であれば、各ラインセンサの並設間隔Pが、第1の方向から撮像対象物を撮像したときの分解能の整数倍、且つ第2の方向から撮像対象物を撮像したときの分解能の整数倍となるため、各ラインセンサ間で撮像対象物の撮像位置がずれていても、1台のカメラで複数方向から撮像対象物を撮像したときに、すべての撮像方向について、それぞれ撮像位置が同じ各成分の画像データを取得することができ、また、第1の方向については、第1ラインセンサにより生成された画像データと、第1ラインセンサよりs個分だけ遅れて第2ラインセンサにより生成される画像データと、第1ラインセンサより2s個分だけ(第2ラインセンサによりs個分だけ)遅れて第3ラインセンサにより生成される画像データとをそれぞれ対応させ、第2の方向については、第1ラインセンサにより生成された画像データと、第1ラインセンサよりt個分だけ遅れて第2ラインセンサにより生成される画像データと、第1ラインセンサより2t個分だけ(第2ラインセンサによりt個分だけ)遅れて第3ラインセンサにより生成される画像データとをそれぞれ対応させることができるからである。尚、θ=sin−1(s/t)は、sinθ=(b/a)=((P/t)/(P/s))から導くことができる。
【0017】
したがって、カラー画像データ生成部により、第1の方向については、各ラインセンサによって生成されるRGBの各成分の画像データの内、第1ラインセンサによって生成されるn番目の画像データと、第2ラインセンサによって生成されるn+s番目の画像データと、第3ラインセンサによって生成されるn+2s番目の画像データとに含まれる第1の方向に対応した画像データをそれぞれ合成してカラー画像データを生成し、第2の方向については、各ラインセンサによって生成されるRGBの各成分の画像データの内、第1ラインセンサによって生成されるm番目の画像データと、第2ラインセンサによって生成されるm+t番目の画像データと、第3ラインセンサによって生成されるm+2t番目の画像データとに含まれる第2の方向に対応した画像データをそれぞれ合成してカラー画像データを生成すれば、各撮像方向について、それぞれ撮像位置が同じ各成分の画像データを合成してカラー画像データを生成することができる。
【0018】
このように、本発明に係るカラー画像データ生成装置によれば、3ライン方式のカメラを用いた場合であっても、1台のカメラで複数方向から撮像対象物を撮像して、各撮像方向におけるカラー画像データを生成することができる。したがって、3ライン方式のカメラを用いることができ、当該カラー画像データ生成装置の製造コストを低減したり、コンパクト化を図ることができる。
【0019】
尚、前記光学手段における第2方向は、前記角度θが40°以上50°以下(より好ましくは約45°)となるように設定されていることが好ましく、この角度であれば、例えば、第2の方向として、搬送方向斜め前方の2方向が選択され、これらの方向から撮像対象物を撮像する場合に、搬送される撮像対象物を効率的に且つ広範囲に渡って撮像することができる。
【0020】
また、本発明は、
前記撮像対象物の外観を検査する外観検査装置であって、
前記撮像対象物を予め設定された搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送機構によって搬送される撮像対象物を撮像してカラー画像データを生成する前記カラー画像データ生成装置と、
前記カラー画像データ生成装置によって生成されたカラー画像データを基に前記撮像対象物の外観の良否判定を行う画像処理部とを備えていることを特徴とする外観検査装置に係る。
【0021】
この発明によれば、上述のように、1台のカメラで複数方向から撮像対象物を撮像して、各撮像方向におけるカラー画像データを生成することができるので、当該外観検査装置の製造コストを低減したり、コンパクト化を図ることができる。また、画像処理部の前工程でカラー画像データを生成しているので、画像処理部でカラー画像データを生成した後、外観の良否判定を行う場合に比べ、当該画像処理部にかかる負荷を軽減することができ、これにより、処理時間を短縮することができる。また、カラー画像データの生成を、FPGAなどの論理回路で行うようにすれば、ソフトウェアでカラー画像データを生成するよりも短時間で生成することができ、処理時間を更に短縮することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明に係るカラー画像データ生成装置及び外観検査装置によれば、所定方向に搬送される撮像対象物を3ライン方式のカメラにより複数方向から撮像し、各撮像方向におけるカラー画像データを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る外観検査装置の概略構成を示した模式図である。
【図2】図1における矢示A−A方向の断面図である。
【図3】図1における矢示B方向の平面図である。
【図4】撮像光学系によって検査対象物の像が導かれる各ラインセンサ上の位置と、搬送による検査対象物の像の移動方向とを模式的に示した説明図である。
【図5】検査対象物の上面及び搬送方向斜め前方の2側面を撮像するときの、当該検査対象物と各ラインセンサとの間の位置関係をそれぞれ模式的に示した説明図である。
【図6】検査対象物の上面を撮像するときの分解能と、検査対象物の搬送方向斜め前方の2側面を撮像するときの分解能と、検査対象物の搬送方向斜め前方の2側面を撮像するときの撮像方向と搬送方向との間の角度との関係を模式的に示した説明図である。
【図7】検査対象物の上面についてカラー画像データを生成する際に、各成分の画像データの組み合わせを説明するための説明図である。
【図8】検査対象物の搬送方向斜め前方の2側面についてカラー画像データを生成する際に、各成分の画像データの組み合わせを説明するための説明図である。
【図9】本実施形態のカラー画像データ生成部によって生成される検査対象物全体のカラー画像データを示した説明図である。
【図10】3CCD方式のカメラを示した模式図である。
【図11】3ライン方式のカメラを示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施形態について、添付図面に基づき説明する。
【0025】
図1乃至図3に示すように、本例の外観検査装置1は、例えば、樹脂ペレット、電子部品類、錠剤やカプセル等の医薬品、キャンディ等の小さな菓子類といった検査対象物(撮像対象物)Wを予め設定された水平な搬送面に沿って所定方向に搬送する搬送装置10と、搬送装置10によって搬送される検査対象物Wを撮像してそのカラー画像データを生成するカラー画像データ生成装置20と、カラー画像データ生成装置20によって生成されたカラー画像データを、色相,彩度及び輝度からなるHSIデータに変換するHSIデータ変換部35と、HSIデータ変換部35によって変換されたHSIデータを基に検査対象物Wの外観の良否判定を行う画像処理部36とを備えて構成される。
【0026】
前記搬送装置10は、検査対象物Wの下面を吸着して搬送する第1吸着搬送部11と、検査対象物Wの上面を吸着して搬送する第2吸着搬送部(図示せず)とから構成されており、第1吸着搬送部11が第2吸着搬送部よりも搬送方向上流側に配置される。
【0027】
前記第1吸着搬送部11は、上面にスリット12aが形成されるとともに、スリット12aの近傍に案内面12bが形成された吸引ボックス12と、スリット12aの幅方向に間隔を隔てて設けられ、案内面12bにより案内される搬送ベルト13と、吸引ボックス12内の空気を吸引してスリット12aから外気を吸引し、搬送ベルト13に検査対象物Wを吸着させる吸引ポンプ(図示せず)と、検査対象物Wの搬送方向に所定間隔を隔てて設けられ、搬送ベルト13が掛け渡される駆動プーリ(図示せず)及び従動プーリ(図示せず)と、駆動プーリを駆動する駆動モータ(図示せず)とを備える。
【0028】
そして、この第1吸着搬送部11は、駆動プーリが駆動されて搬送ベルト13が回動することにより、搬送方向上流側で搬送ベルト13上に適宜供給される検査対象物Wを搬送方向下流側に向けて搬送する。尚、この第1吸着搬送部11では、各案内面12bに案内される各搬送ベルト13によって形成される面が水平な搬送面となっている。
【0029】
前記第2吸着搬送部は、第1吸着搬送部11と同様の構成を備え、第1吸着搬送部11とは上下反転した状態に設けられており、第1吸着搬送部11よって搬送方向下流端まで搬送された検査対象物Wを吸着してこれらを吊り下げ状態で搬送する。
【0030】
前記カラー画像データ生成装置20は、第1吸着搬送部11によって搬送される検査対象物Wの上面を前記搬送面に垂直な上方向から撮像するとともに、当該検査対象物Wの側面方向から当該検査対象物Wの搬送方向斜め前方の2側面を撮像してカラー画像データを生成する第1生成部21と、第2吸着搬送部によって搬送される検査対象物Wの下面を前記搬送面に垂直な下方向から撮像するとともに、当該検査対象物Wの側面方向から当該検査対象物Wの搬送方向斜め後方の2側面を撮像してカラー画像データを生成する第2生成部(図示せず)とから構成されており、それぞれ所定の検査領域を通過する際に検査対象物Wを撮像して画像データを生成する。
【0031】
前記第1生成部21は、図11に示すような、RGBの各成分についての画像データを生成する3ライン方式のカメラ110と、上方向及び側面方向から得られる検査対象物Wの像を各ラインセンサ111,112,113の走査方向に横並びに導く撮像光学系22と、カメラ110によって生成された各成分の画像データを記憶するR成分データ記憶部30,G成分データ記憶部31及びB成分データ記憶部32と、各データ記憶部30,31,32に格納された各成分の画像データを基に、カラー画像データを生成するカラー画像データ生成部33と、カラー画像データ生成部33によって生成されたカラー画像データを記憶するカラー画像データ記憶部34とを備える。
【0032】
前記カメラ110は、第1吸着搬送部11によって搬送される検査対象物Wの上方に配置されており、前記搬送面と平行に且つ検査対象物Wの搬送方向に一定間隔を隔てて互いに平行に並設されるとともに、走査方向(長手方向)が搬送方向と直交するように配置され、搬送される検査対象物Wを撮像して、RGBの各成分の内のいずれか1つの成分にそれぞれ対応した画像データを生成する3つのラインセンサ111,112,113(R成分の画像データを生成する第1ラインセンサ111、G成分の画像データを生成する第2ラインセンサ112、B成分の画像データを生成する第3ラインセンサ113)と、各ラインセンサ111,112,113の前方に設けられるレンズ114とを備え、各ラインセンサ111,112,113により一定時間間隔(所定のスキャンレート)で検査対象物Wを撮像する。
【0033】
尚、各ラインセンサ111,112,113は、ラインセンサ111が符号111aの位置、ラインセンサ112が符号112aの位置、ラインセンサ113が符号113aの位置を撮像するようになっており、それぞれ撮像位置が異なっている。また、ある撮像位置の画像データは、第1ラインセンサ111により生成されるR成分の画像データ、第2ラインセンサ112により生成されるG成分の画像データ、第3ラインセンサ113により生成されるB成分の画像データの順で得られるようになっている。
【0034】
前記撮像光学系22は、第1吸着搬送部11の上方に配置された複数の反射鏡23,24,25,26から構成されており、反射鏡23,24は、検査対象物Wの上面像を各ラインセンサ111,112,113に導き、反射鏡25,26は、検査対象物Wの搬送方向斜め前方の2側面像を各ラインセンサ111,112,113に導く。
【0035】
具体的には、図4に示すように、前記反射鏡23,24は、検査対象物Wの搬送によって検査対象物Wの上面像W1が各ラインセンサ111,112,113の走査方向と直交する方向に移動するように当該上面像W1を各ラインセンサ111,112,113の中央部に導き、前記反射鏡25,26は、検査対象物Wの搬送によって検査対象物Wの搬送方向斜め前方の2側面像W2が各ラインセンサ111,112,113の走査方向とほぼ直交する方向に移動するように当該2側面像W2を各ラインセンサ111,112,113の両端部に導く。
【0036】
そして、このように、これらの反射鏡23,24,25,26によって像が導かれることで、各ラインセンサ111,112,113により前記上方向及び側面方向から検査対象物Wの上面及び搬送方向斜め前方の2側面が撮像される。
【0037】
ここで、前記反射鏡25,26は、図5及び図6に示すように、各ラインセンサ111,112,113の並設間隔をPと、上方向から検査対象物Wの上面を撮像するときの分解能をaと、側面方向から検査対象物Wの搬送方向斜め前方の2側面を撮像するときの分解能をbとすると、前記側面方向を前記搬送面に投影して得られる投影線Lと搬送方向Kとの間の前記搬送面内における角度θがP=s×a及びP=t×b(但し、s,tは1以上の整数)の関係を満たす角度であり且つθ=sin−1(s/t)となる角度に前記側面方向が設定されるように配置される。尚、θ=sin−1(s/t)は、前記分解能a,bと角度θとの関係から、即ち、sinθ=(b/a)=((P/t)/(P/s))から求められる。因みに、本例では、s=3、t=4として、前記角度θを48.6°としている。
【0038】
このような角度θとしているのは、各ラインセンサ111,112,113の並設間隔PがP=s×a及びP=t×bの関係を満たす場合には、各ラインセンサ111,112,113の並設間隔Pが、上方向から検査対象物Wを撮像したときの分解能の整数倍、且つ側面方向から検査対象物Wを撮像したときの分解能の整数倍となるため、各ラインセンサ111,112,113間で検査対象物Wの撮像位置がずれていても、1台のカメラ110で上方向及び側面方向から検査対象物Wを撮像したときに、すべての撮像方向について、それぞれ撮像位置が同じ各成分の画像データを取得することができるからである。
【0039】
また、上方向については、第1ラインセンサ111により生成された画像データと、第1ラインセンサ111よりs個分だけ遅れて第2ラインセンサ112により生成される画像データと、第1ラインセンサ111より2s個分だけ(第2ラインセンサ112によりs個分だけ)遅れて第3ラインセンサ113により生成される画像データとをそれぞれ対応させ、側面方向については、第1ラインセンサ111により生成された画像データと、第1ラインセンサ111よりt個分だけ遅れて第2ラインセンサ112により生成される画像データと、第1ラインセンサ111より2t個分だけ(第2ラインセンサ112によりt個分だけ)遅れて第3ラインセンサ113により生成される画像データとをそれぞれ対応させることができるからである。
【0040】
尚、図5は、検査対象物Wの上面及び搬送方向斜め前方の2側面を撮像するときの、当該検査対象物Wと各ラインセンサ111,112,113との間の位置関係をそれぞれ模式的に示した説明図であり、図6は、検査対象物Wの上面を撮像するときの分解能aと、検査対象物Wの搬送方向斜め前方の2側面を撮像するときの分解能bと、側面方向を搬送面に投影して得られる投影線Lと搬送方向Kとの間の搬送面内における角度θとの関係を模式的に示した説明図である。また、前記分解能a,bは、搬送方向における検査対象物Wの搬送速度と、ラインセンサ111,112,113のスキャンレートとから求めることができ、1回走査する際に各ラインセンサ111,112,113の走査方向と(ほぼ)直交する方向に検査対象物Wの上面像W1や側面像W2の移動する量が当該分解能a,bとなる。側面像W2については、みかけの速度が遅いため、分解能bは分解能aより高くなる。
【0041】
前記R成分データ記憶部30には、第1ラインセンサ111によって生成されたR成分の画像データが格納され、前記G成分データ記憶部31には、第2ラインセンサ112によって生成されたG成分の画像データが格納され、前記B成分データ記憶部32には、第3ラインセンサ113によって生成されたB成分の画像データが格納される。
【0042】
前記カラー画像データ生成部33は、各データ記憶部30,31,32に格納された各成分の画像データを基にカラー画像データを生成するが、その際、検査対象物Wの上面については、図7に示すように、各データ記憶部30,31,32に格納された各成分の画像データの内、R成分データ記憶部30に格納されたn番目のR成分の画像データと、G成分データ記憶部31に格納されたn+s番目(本例ではn+3番目)のG成分の画像データと、B成分データ記憶部32に格納されたn+2s番目(本例ではn+6番目)のB成分の画像データとに含まれる検査対象物Wの上面に対応した画像データをそれぞれ合成してカラー画像データを生成し、検査対象物Wの搬送方向斜め前方の2側面については、図8に示すように、各データ記憶部30,31,32に格納された各成分の画像データの内、R成分データ記憶部30に格納されたm番目のR成分の画像データと、G成分データ記憶部31に格納されたm+t番目(本例ではm+4番目)のG成分の画像データと、B成分データ記憶部32に格納されたm+2t番目(本例ではm+8番目)のB成分の画像データとに含まれる検査対象物Wの2側面に対応した画像データをそれぞれ合成してカラー画像データを生成する。但し、n,mは1以上の整数である。尚、図7や図8では、例えば、A,A及びAに係る画像データやB,B及びBに係る画像データがそれぞれ対応関係にあるようになっている。
【0043】
そして、検査対象物W全体のカラー画像データが生成されると、図9に示すような画像データが得られる。この図9に示す画像データでは、検査対象物Wの上面に係る画像W1が中央部に、検査対象物Wの搬送方向斜め前方の2側面に係る画像W2が前記画像W1の両側に配置されている。
【0044】
検査対象物Wの上面及び搬送方向斜め前方の2側面について、その全体のカラー画像データがカラー画像データ生成部33により生成されると、生成された画像データは前記カラー画像データ記憶部34に格納される。
【0045】
前記第2生成部は、第1生成部21と同様の構成を備え、第1生成部21とはカメラ110及び撮像光学系22(反射鏡23,24,25,26)が反対位置に設けられており、検査対象物Wの下面及び搬送方向斜め後方の2側面を撮像してカラー画像データを生成し、生成したカラー画像データを前記カラー画像データ記憶部34に格納する。
【0046】
前記HSIデータ変換部35は、前記カラー画像データ記憶部34に格納されたカラー画像データ(合計6方向から撮像して得られるカラー画像データ)をHSIデータにそれぞれ変換し、前記画像処理部36は、このHSIデータを解析して良否を判定する。そして、良品と判定された場合には、良品回収部(図示せず)に回収され、不良品と判定された場合には、不良品回収部(図示せず)に回収される。
【0047】
以上のように構成された本例の外観検査装置1によれば、上述のように、各ラインセンサ111,112,113の並設間隔をPと、検査対象物Wの上面を撮像するときの分解能をaと、検査対象物Wの搬送方向斜め前方の2側面を撮像するときの分解能をbとすると、2側面の撮像方向を搬送面に投影して得られる投影線Lと搬送方向Kとの間の搬送面内における角度θがP=s×a及びP=t×bの関係を満たす角度であり且つθ=sin−1(s/t)となるように反射鏡25,26の第2方向が設定されている。
【0048】
したがって、各ラインセンサ111,112,113間で検査対象物Wの撮像位置がずれていても、1台のカメラ110で複数方向から検査対象物Wを撮像したときに、すべての撮像方向について、撮像位置が同じ各成分の画像データを取得することができるし、第1ラインセンサ111のn番目の画像データと、第2ラインセンサ112のn+s番目の画像データと、第3ラインセンサ113のn+2s番目の画像データとを合成したり、第1ラインセンサ111のm番目の画像データと、第2ラインセンサ112のm+t番目の画像データと、第3ラインセンサ113のm+2t番目の画像データとを合成することでカラー画像データを生成することができる。
【0049】
このため、本例の外観検査装置1によれば、3ライン方式のカメラ110を用いた場合であっても、1台のカメラで複数方向から検査対象物Wを撮像して、各撮像方向におけるカラー画像データを生成することができる。これにより、3ライン方式のカメラ110を用いて外観検査を実施することができ、当該外観検査装置1の製造コストを低減したり、コンパクト化を図ることができる。
【0050】
また、画像処理部36の前工程であるカラー画像データ生成部33でカラー画像データを生成するとともに、HSIデータ変換部35でカラー画像データをHSIデータに変換しているので、画像処理部36でカラー画像データを生成したり、HSIデータに変換した後、外観の良否判定を行う場合に比べ、当該画像処理部36にかかる負荷を軽減することができ、これにより、処理時間を短縮することができる。また、カラー画像データの生成やHSIデータへの変換を、FPGAなどの論理回路で行うようにすれば、ソフトウェアでカラー画像データを生成したり、HSIデータに変換するよりも短時間で生成したり、変換することができ、処理時間を更に短縮することが可能である。
【0051】
また、前記s=3、t=4として、前記角度θを48.6°とし、当該角度θを40°以上50°以下としているので、搬送方向斜め前方の2方向から検査対象物Wを撮像する場合に、搬送される検査対象物Wを効率的に且つ広範囲に渡って撮像することができる。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の採り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではない。
【0053】
上例では、前記カラー画像データ生成部33が、検査対象物Wの上面については、n番目のR成分の画像データと、n+s番目のG成分の画像データと、n+2s番目のB成分の画像データとに含まれる検査対象物Wの上面に対応した画像データをそれぞれ合成してカラー画像データを生成し、検査対象物Wの2側面については、m番目のR成分の画像データと、m+t番目のG成分の画像データと、m+2t番目のB成分の画像データとに含まれる検査対象物Wの2側面に対応した画像データをそれぞれ合成してカラー画像データを生成するように構成されていたが、例えば、カメラ110から、検査対象物Wの上面についても、検査対象物Wの2側面についても、n番目のR成分の画像データと、n+s番目のG成分の画像データと、n+2s番目のB成分の画像データとに含まれる検査対象物Wの上面及び2側面に対応した画像データがそれぞれ合成されたカラー画像データが出力されるような場合、検査対象物Wの2側面については、出力された合成後のカラー画像データから、m番目のR成分の画像データと、m+t番目のG成分の画像データと、m+2t番目のB成分の画像データとに対応する画像データをそれぞれ抽出してこれらを再合成し、カラー画像データを生成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0054】
1 外観検査装置
10 搬送装置
20 カラー画像データ生成装置
21 第1生成部
22 撮像光学系(光学手段)
23,24,25,26 反射鏡
30 R成分データ記憶部
31 G成分データ記憶部
32 B成分データ記憶部
33 カラー画像データ生成部
35 HSIデータ変換部
36 画像処理部
110 カメラ
111 第1ラインセンサ
112 第2ラインセンサ
113 第3ラインセンサ
W 検査対象物(撮像対象物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された搬送面に沿って所定方向に搬送される撮像対象物を、該搬送面と直交する第1の方向と、前記撮像対象物の側方たる第2の方向との少なくとも2方向から撮像して、前記各撮像方向について、それぞれカラー画像データを生成する装置であって、
一定間隔を隔てて互いに平行に並設され、RGBの各成分の内のいずれか1つの成分にそれぞれ対応する3つのラインセンサであって、前記撮像対象物を一定時間間隔で撮像して、対応する成分の画像データをそれぞれ生成する第1,第2及び第3ラインセンサと、前記第1の方向及び第2の方向から得られる前記撮像対象物の像を前記各ラインセンサの走査方向に横並びにそれぞれ導く光学手段と、前記各ラインセンサによって生成された各成分の画像データを基に、前記各撮像方向について、カラー画像データをそれぞれ生成するカラー画像データ生成部とを備え、
前記光学手段は、前記撮像対象物の搬送によって前記第1の方向及び第2の方向から得られる前記撮像対象物の像が前記各ラインセンサの走査方向とほぼ直交する方向に移動するように該撮像対象物の像を該各ラインセンサに導き、前記各ラインセンサは、前記ほぼ直交する方向に移動する前記撮像対象物の像を前記第1,第2及び第3ラインセンサの順に受光するように配置されたカラー画像データ生成装置において、
前記光学手段における第2方向は、前記各ラインセンサの並設間隔をPと、前記第1の方向から前記撮像対象物を撮像したときの分解能をaと、前記第2の方向から前記撮像対象物を撮像したときの分解能をbとすると、前記第2の方向を前記搬送面に投影して得られる投影線と搬送方向との間の前記搬送面内における角度θがP=s×a及びP=t×bの関係を満たす角度であり且つθ=sin−1(s/t)となる角度に設定され、
前記カラー画像データ生成部は、前記第1の方向については、前記各ラインセンサによって生成されるRGBの各成分の画像データの内、前記第1ラインセンサによって生成されるn番目の画像データと、前記第2ラインセンサによって生成されるn+s番目の画像データと、前記第3ラインセンサによって生成されるn+2s番目の画像データとに含まれる該第1の方向に対応した画像データをそれぞれ合成してカラー画像データを生成し、前記第2の方向については、前記各ラインセンサによって生成されるRGBの各成分の画像データの内、前記第1ラインセンサによって生成されるm番目の画像データと、前記第2ラインセンサによって生成されるm+t番目の画像データと、前記第3ラインセンサによって生成されるm+2t番目の画像データとに含まれる該第2の方向に対応した画像データをそれぞれ合成してカラー画像データを生成するように構成されていることを特徴とするカラー画像データ生成装置。
但し、前記s,t,n及びmは1以上の整数である。
【請求項2】
前記光学手段における第2方向は、前記角度θが40°以上50°以下となるように設定されていることを特徴とする請求項1記載のカラー画像データ生成装置。
【請求項3】
前記撮像対象物の外観を検査する外観検査装置であって、
前記撮像対象物を予め設定された搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送機構によって搬送される撮像対象物を撮像してカラー画像データを生成する、前記請求項1又は2記載のカラー画像データ生成装置と、
前記カラー画像データ生成装置によって生成されたカラー画像データを基に前記撮像対象物の外観の良否判定を行う画像処理部とを備えていることを特徴とする外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−98142(P2012−98142A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245940(P2010−245940)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(305021292)第一実業ビスウィル株式会社 (23)
【Fターム(参考)】