説明

カルボン酸置換イデベノン誘導体を含有する皮膚用剤ならびにその調製方法及び使用

本発明は、新規のカルボン酸置換イデベノン誘導体と、このようなカルボン酸置換イデベノン誘導体を含有する皮膚治療用組成物と、このようなカルボン酸置換イデベノン誘導体の局所塗布によって皮膚の変化を治療する方法と、その合成法とに関する。本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体は、治療皮膚、特に皮膚耐性に関して予想外に効果がある。本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体は、局所組成物に含まれる場合、皮膚の変化を治療するのに有用な酸化防止剤効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年10月6日に出願された米国特許仮出願第61/103,043号の優先権の利益を主張し、その全体は参照により本願明細書に引用されるものとする。
【0002】
本発明は、有効量のカルボン酸置換イデベノン誘導体を含有する局所皮膚科学的組成物に関する。特に、本発明は、皮膚の変化を導く皮膚の不利な酸化過程からの有効保護を与え、さらに組成物自体の保護を与える組成物(例えば、カルボン酸置換イデベノン誘導体を含有する化粧品組成物の成分を含む)に関する。さらに、本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体は、大きな皮膚耐性(言わば非刺激性)を示し、肺胞呼吸及び細胞呼吸を補助し、ミトコンドリア膜の安定化に寄与し、皮膚細胞の再生及び活力を促進する。
【背景技術】
【0003】
皮膚は、環境要因及び生化学過程を含むさまざまな原因による損傷に晒される。酸化過程は、皮膚の健康及び外観を維持するのに必要なタンパク質、脂質及び他の細胞成分に損傷を与え、皮膚の老化(例えば年齢による染み)、色素過剰、UV損傷、しわ、不整な皮膚組織(例えば蜂巣炎)などの皮膚の変化をもたらす。皮膚の酸化損傷とその詳細な原因は、Miyachi、Y、「Skin diseases associated with oxidative injury」、Fuchs J、Packer L(編)、OXIDATIVE STRESS IN DERMATOLOGY、Marcel Dekker、New York、p.323−331(1993)に記載されている。
【0004】
一般に、太陽放射のUV域の皮膚に対する有害作用は知られている。290nm(UVC範囲)未満の波長の光線が、地球大気圏のオゾン層に吸収され、290〜320nm(UVB範囲)の光線が、紅斑、単なる日焼け、おおむね重度の熱傷を引き起こす。308nm周辺の狭い範囲は、日光の紅斑活性の最大値となる。UVB放射に対する保護に関して、3−ベンジリデンカンファー、4−アミノ安息香酸、桂皮酸、サリチル酸、ベンゾフェノン、さらには2−フェニルベンゾイミダゾールの誘導体などの多数の化合物が知られている。また、約320〜約400nm(UVA範囲)の範囲では、そのラットが皮膚の光過敏症の反応を引き起こすことがあることから、有効なフィルター物質を有することが重要である。UVA放射が、結合組織の弾力線維及び膠原線維の損傷をもたらし、皮膚が早老化することと、多数の光毒性反応及び光アレルギー反応の原因とみなされることがわかっている。UVB放射による有害作用は、UVA放射によって増幅されることがある。また、UVA及びUVB放射によって、皮膚における親油性抗酸化剤、例えばα−トコフェロールの消費が引き起こされることがわかっている(Thieleら、J.Invest.Dermatol.100、p.756以下のページ(1998))。
【0005】
さらに、UV放射は電離放射である。このため、UV照射時にイオン種が産生され、これが、生化学過程において酸化的に干渉することが可能となってしまうリスクがある。
【0006】
このため、UVA範囲の光線の保護には、ジベンゾイルメタンの特定の誘導体が使用されているが、その光安定性(Int.J.Cosm.Science 10、53(1988))は十分に得られない。しかし、UV放射は光化学反応も引き起こすことがあり、これにより、光化学反応生成物は皮膚のメカニズムに干渉する。
【0007】
このような光化学反応生成物のほとんどが、フリーラジカル化合物、例えばヒドロキシルラジカルである。また、未定義のフリーラジカル光分解生成物が、皮膚自体で産生され、高反応性のために副反応が制御されなくなることがある。しかし、一重項酸素、非フリーラジカル励起状態の酸素分子が、UV照射、短寿命のエポキシドをはじめとする多くのもので発生しうる。例えば、一重項酸素は、通常存在している三重項酸素(フリーラジカル基底状態)に対して反応性が高いことを特徴とする。しかし、励起した反応性(フリーラジカル)三重項状態の酸素分子も存在する。さらに、ヒドロペルオキシドやアルデヒドなどの脂質過酸化生成物が生成され、これによって初めてフリーラジカル連鎖反応を引き起こすことが可能となり、概して必然的に細胞毒性の原因となる(Michiels及びRamacle、Toxicology、66、p.225以下のページ(1990))。脂質過酸化反応は、脂質を分解する酸化過程であり、フリーラジカルが細胞膜内の脂質から電子を奪い、酸化ストレス及び細胞損傷をもたらす。
【0008】
光過敏症には、光線皮膚症(光線過敏症皮疹)の疾患が含まれる。多様性光過敏症の他の名称は、PLD、PLE、マジョルカざ瘡であり、このほかの複数の名称が、文献(例えば、A.Voelckelら、Zentralblatt Hautund Geschlechtskrankheiten(1989)、156、p.2)に記載されている。
【0009】
また、紅斑性皮膚症候群が、特定の皮膚の不整にみられる随伴症状として発症する。例えば、ざ瘡の臨床像にみられる典型的な皮疹は通常、おおむね赤くなる。
【0010】
このような反応を防ぐために、このほかに抗酸化剤及び/又はフリーラジカル吸収剤/捕捉剤を化粧製剤又は皮膚用製剤に加えてもよい。抗酸化剤とは、フリーラジカルを捕捉し、酸化過程を抑えるか、不飽和化合物を含有する脂肪の自己酸化を防ぐ物質である。化粧品及び薬理学の分野で使用される抗酸化剤は、例えばα−トコフェロール、特に、α−酢酸トコフェロール、セサモール、コール酸誘導体、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン及びイデベノンの形態である。抗酸化剤は、主に不飽和化合物を含有する組成物の腐敗に対する防御物質として使用される。しかし、ヒト及び動物の皮膚には、望ましくない酸化過程も発生しうることが知られている。このような過程は、皮膚の老化に大きく関与する。このため、酸化変性の生化学過程によってもたらされた損傷を治療したり、予防したりするために、抗酸化剤及び/又はフリーラジカル吸収剤を化粧製剤にさらに追加してもよい。ビタミンE(米国特許第4,144,325号及び米国特許第4,248,861号)、日焼け止め製剤の既知の抗酸化作用がある物質を使用することが提案されているが、ここに得られた作用は、依然として期待されたものには遠く及ばない。例えば、トコフェロール(ビタミンE抗酸化剤)は、変性して酸化促進生成物を生成する。
【0011】
イデベノン(6−(10−ヒドロキシデシル)−2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン)は、すでに皮膚の変化を治療するのに使用されている。例えば、米国特許第6,756,045号明細書は、皮膚の変化を治療する局所組成物としてのイデベノンの使用に関して記載している。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、化学式1の化合物に関する。
【0013】
【化1】

【0014】
式中、Rは、C2〜22直鎖状又は分岐鎖状の糖酸であり、糖酸の2つ以上のヒドロキシ基が、C1〜22カルボン酸にそれぞれ独立して置換される。
【0015】
また、本発明は、対応するジ−、トリ−又はポリ−カルボン酸官能基化糖酸をイデベノンに結合させることによって、一般式Iの化合物を調製する方法に関する。例えば、イデベノンジパルミトイルグリセラートを調製する方法は、アクリル酸ベンジルをジヒドロキシル化反応させ、2,3−ジヒドロキシプロパン酸ベンジルを生成するステップと、2,3−ジヒドロキシプロパン酸ベンジルを塩化パルミトイルと反応させて、3−(ベンジルオキシ)−3−オキソプロパン−1,2ジイルジパルミテートを生成するステップと、3−(ベンジルオキシ)−3−オキソプロパン−1,2ジイルジパルミテートを酢酸エチルと反応させて、2,3−ビス(パルミトイルオキシ)プロパン酸を生成するステップと、2,3−ビス(パルミトイルオキシ)プロパン酸をイデベノンと反応させて、イデベノンジパルミトイルグリセラートを生成するステップとを含む。
【0016】
また、本発明は一般式Iの化合物と少なくとも1つの添加剤とを含む組成物に関する。
【0017】
さらに、本発明は、皮膚の変化を治療する方法に関し、治療有効量の一般式Iの化合物を含む組成物を必要とする被検者に局所投与することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体は、抗酸化剤であり、酸化変性過程によって引き起こされる皮膚損傷や望ましくない皮膚の変化を治療したり、予防したりするという大きな便益をもたらす。発明者らは、本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体を用いて調製される組成物が、非誘導体化イデベノン又はモノカルボン酸に置換された非誘導体化イデベノンを用いて調製された比較可能な組成物より大きな改善をもたらすことを予想外に発見した。特に、非誘導体化イデベノンも、モノカルボン酸に置換された非誘導体化イデベノンも、本発明の化合物でみられるようなイデベノンに結合した糖酸を含んでいない。むしろ、本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体は、皮膚の変化を治療するのに予想外にもさらに大きな効果をもたらし、皮膚耐性がかなり増大することを示している。その結果、このような化合物は皮膚治療用組成物に大きな進歩と改善をもたらす。
【0019】
例えば、本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体は、セラミド、コレステロール及び必須脂肪酸で構成される皮膚の角質層脂質二重層にわたって、化合物をさらに可溶性にするカルボン酸(特にジ−、トリ−又はポリ−脂肪酸)の存在によって皮膚透過性を増大させることから、活性成分(イデベノン)の送達が増進される。また、本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体は、細胞透過性を増大させることから、活性成分の送達が増進される。これは、細胞膜が脂肪可溶性の脂質で構成されるために起こる。さらに、本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体によって調製された組成物は、化合物が経時とともに皮膚内で加水分解するように持続放出治療を提供することができる。
【0020】
本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体による上記の進歩はいずれも(言い換えると、低皮膚刺激性、低炎症性、高皮膚透過性、高細胞透過性及び持続放出治療)、皮膚の快適性を改善し、本発明の皮膚治療用組成物は、非誘導体化イデベノン又はモノカルボン酸に置換される非誘導体化イデベノンによって調製された比較可能な組成物を使用して効果的に実現可能なものよりも多くの皮膚質、皮膚の状態、身体の部位に使用することができる。さらに、本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体は、非誘導体化イデベノン又はモノカルボン酸に置換された非誘導体化イデベノンに比して、低アレルギー性であり、皮膚損傷(例えば褐色色素沈着)を治療するのにもたらされる効果を高めることがわかった。
【0021】
本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体は、皮膚の変化の治療のために、局所組成物に調製して使用してもよい。本発明の組成物は、グリコサミノグリカン及びその塩などの他の成分や添加剤、特に分子量が1〜1,000,000のヒアルロン酸及びその塩又はインター−α−トリプシン阻害剤などのヒアルロニダーゼ阻害剤を含んでもよい。本発明の組成物は、さまざまな皮膚の変化(例えば紅斑症)、炎症、アレルギー反応症候群又は自己免疫反応性症候群(例えば皮膚疾患)、光過敏症の皮膚の変化(例えば光線皮膚症)、色素過剰(例えば年齢によるしみ)及び太陽放射のUV域による皮膚の損傷を治療したり、予防したりするのに使用することができる。
【0022】
本発明は化学式2の化合物を含む。
【0023】
【化2】

【0024】
式中、Rは、C2〜22直鎖状又は分岐鎖状の糖酸であり、糖酸の2つ以上のヒドロキシ基が、C1〜22カルボン酸にそれぞれ独立して置換される。糖酸の2、3、4又は5つのヒドロキシ基が、C1〜22カルボン酸にそれぞれ独立して置換されるのが好ましい。また、本発明の好ましい化合物は、長鎖状のカルボン酸に置換されたヒドロキシ基を少なく含んでもよく、短鎖状のカルボン酸に置換されたヒドロキシ基を多く含んでもよい。
【0025】
本発明で使用する好適なカルボン酸は、モノカルボン酸又はポリカルボン酸を含む。カルボン酸は、直鎖状の飽和カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸及びステアリン酸)又は短鎖状の不飽和モノカルボン酸(例えばアクリル酸)であってよい。
【0026】
本発明のカルボン酸は、脂肪酸(例えば、共役脂肪酸、ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸などの中鎖又は長鎖状の飽和モノカルボン酸又は不飽和モノカルボン酸)であるのが好ましい。また、本発明に使用するカルボン酸は、アミノ酸、ケト酸(例えば、ピルビン酸、アセト酢酸)、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、サリチル酸)、ジカルボン酸(例えば、アルダル酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸など)、トリカルボン酸、(例えば、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、プロパン−1,2,3−トリカルボン酸(例えば、トリカルバリル酸、カルバリル酸))、αヒドロキシカルボン酸(例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、オキシ酪酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸)ならびにヒアルロン酸を含む。
【0027】
「糖酸」は、直鎖状又は分岐鎖状、飽和又は不飽和、置換又は非置換C2〜22(好ましくはC2〜10、さらに好ましくはC2〜5)アルキル基であって、2つ以上のカルボキシル基によって置換されるアルキル基として定義され、2つ以上のカルボキシル基のヒドロキシ官能基が、C1〜22(好ましくはC14〜20、さらに好ましくはC15〜18)カルボン酸にそれぞれ独立して置換される。「分岐鎖状」は、アルキル直鎖に結合するメチル、エチル又はプロピルなどの1又は複数の低級アルキル基を示す。糖酸の2、3、4又は5つのヒドロキシ基が、C1〜22カルボン酸にそれぞれ独立して置換されるのが好ましい。
【0028】
発明者らは、本発明の化合物が、低皮膚刺激性、低炎症性、高皮膚透過性、高細胞透過性及び持続放出治療の便益をさらにもたらすことから、皮膚の変化を治療するのに予想外の効果があることを発見した。
【0029】
好ましい実施形態では、式Iの化合物は、3−オキソ−3−(9−(2,4,5−トリメチル−3,6−ジオキソシクロヘキサ−1,4−ジエニル)モニルオキシ)プロパン−1,2−ジイルジパルミテート(イデベノンジパルミトイルグリセラート)であり、RはC糖酸であり、2つのヒドロキシ基が、C16カルボン酸にそれぞれ独立して置換される。イデベノンジパルミトイルグリセラートの構造は、以下に示す。
【0030】
【化3】

【0031】
別の実施形態では、本発明は、カルボン酸置換イデベノン誘導体(例えば、イデベノンジパルミトイルグリセラート又は式Iの別の化合物)と、少なくとも1つの添加剤とを含有する局所組成物を含む。組成物は、クリーム、ローション、溶液、美容液、無水製剤、エマルジョン、マイクロエマルジョン、マルチプルエマルジョン、ゲル、ソリッドスティック、軟膏剤及びエアゾールから選択される形態で提供されてもよい。少なくとも1つの添加剤は、界面活性剤、化粧助剤、顔料、UVAフィルター、UVBフィルター、噴射剤、増粘剤、乳化剤、溶媒、水、抗酸化剤、香料、染料、脱臭剤、抗菌性材料、背過脂肪剤、錯化剤及び金属イオン封鎖剤、パール光沢剤、植物抽出物、ビタミンならびにその組み合わせから選択してもよい。
【0032】
別の実施形態では、本発明は一般式Iのカルボン酸置換イデベノン誘導体を生成する方法に関する。一般に、本発明の化合物は、フィッシャーエステル化として当該技術分野で周知の反応を含む合成法によって生成され、これにより、以下に一般的に示すように、カルボン酸はアルコールと反応し、エステルを生成する。
【0033】
【化4】

【0034】
例えば、一般式Iの化合物(式中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状のC2〜22糖酸であり、糖酸の2つ以上のヒドロキシ基が、C1〜22カルボン酸にそれぞれ独立して置換される)は、ジ−、トリ−又はポリ−カルボン酸官能基化糖酸をイデベノンに結合させることによって生成してもよい。
【0035】
一実施形態では、本発明の化合物は、以下の反応スキームによって合成してもよい。
【0036】
【化5】

【0037】
式中、R及びRは、上に定義されるとおりである。
【0038】
例えば、(a)アクリル酸ベンジルをジヒドロキシル化反応させ、2,3−ジヒドロキシプロパン酸ベンジルを生成するステップと、(b)2,3−ジヒドロキシプロパン酸ベンジルを塩化パルミトイルと反応させて3−(ベンジルオキシ)−3−オキソプロパン−1,2ジイルジパルミテートを生成するステップと、(c)3−(ベンジルオキシ)−3−オキソプロパン−1,2ジイルジパルミテートを酢酸エチルと反応させて、2,3−ビス(パルミトイルオキシ)プロパン酸を生成するステップと、(d)2,3−ビス(パルミトイルオキシ)プロパン酸をイデベノンジと反応させてイデベノンジパルミトイルグリセラートを生成するステップとを含む方法によって、イデベノンジパルミトイルグリセラートを調製してもよい。
【0039】
さらに別の実施形態では、本発明は、皮膚の変化又は(例えば皮膚の老化(例えば、年齢によるしみ、しわ及び小じわ)、色素過剰(例えば年齢によるしみ)、UV損傷、紅斑性、蜂巣炎、炎症症候群、光傷害、光反応など)の悪化を治療したり、予防したりする方法に関し、有効量の本発明(例えばイデベノンジパルミトイルグリセラート)のカルボン酸置換イデベノン誘導体を、必要とする患者に局所投与することを含む。本発明の組成物が、酸化影響によって引き起こされる皮膚の損傷を完全に予防しないとしても減少させ、肺胞呼吸、ミトコンドリア膜の安定化及び抗アポトーシス性を補助することによって、老化した皮膚、ストレスを受けた皮膚又は損傷した皮膚に対して再生作用や活性作用を引き起こすのに使用される。皮膚の変化を治療するこのような方法は、(特に式Iのカルボン酸置換イデベノン誘導体、好ましくはイデベノンジパルミトイルグリセラートを含有する)本発明の組成物を、必要とする患者に局所投与することを含み、カルボン酸置換イデベノン誘導体は、治療有効量で存在している。このような組成物は、組成物の全重量に対して治療有効量が0.0001〜30重量%、好ましくは0.05〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜2.0重量%のカルボン酸置換イデベノン誘導体を含んでもよい。皮膚の変化は、皮膚の老化、色素過剰、UV損傷によって引き起こされた皮膚の変化及び紅斑症候群を含む皮膚の変化から選択してもよい。
【0040】
式Iの化合物は、局所化粧品組成物又は局所皮膚科学的組成物に使用してもよく、酸化防止剤及びフリーラジカル吸収剤/捕捉剤として作用する。このような化合物は、脂質、DNA及びタンパク質の損傷を良好に予防し、皮膚の老化及びしわ形成も良好に予防する。式Iのカルボン酸置換イデベノン誘導体の代表例には、イデベノンジパルミトイルグリセラート、イデベノンジミリストイルグリセラート、イデベノンジオレイルグリセラート、イデベノンジリノレイルグリセラート、イデベノンジエイコサペンタエニルグリセラート、イデベノンジエルシルグリセラート及びこのほかの2つのカルボン酸置換を有するイデベノン糖酸誘導体ならびにイデベノントリミリストイルトリヒドロキシプロパノエート、イデベノントリオレイルトリヒドロキシプロパノエート、イデベノントリリノレイルトリヒドロキシプロパノエート、イデベノントリエイコサペンタエニルトリヒドロキシプロパノエート及びイデベノントリエルシルトリヒドロキシプロパノエート及びこのほかの3つのカルボン酸置換を含むイデベノン糖酸誘導体などが含まれるが、これに制限されない。
【0041】
本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体を含有する組成物は、光反応に対して皮膚を保護し、炎症反応を予防したり、治療したりする。ジ−、トリ−又はポリ−脂肪酸を含有するものなどのカルボン酸置換イデベノン誘導体化合物の局所塗布によって、非誘導体化イデベノンやモノカルボン酸に置換された非誘導体化イデベノンを含有する同じような組成物(実施例を参照)より皮膚刺激性又は炎症をかなり抑えることになることは、予見することができなかった。これは、予想外の結果であった。また、本発明の組成物は、ビタミンC及びビタミンEなどの他のスキンケア活性成分より優れた安定性を示す。かなり増大した皮膚耐性を示すことから、本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体には、非誘導体化イデベノンやモノカルボン酸に置換された非誘導体化イデベノンを含有する同じような組成物より予想外かつ大幅に皮膚の変化を治療するのに効果がある。
【0042】
本発明の組成物は少なくとも1つの添加剤を含んでもよい。好適な添加剤は、界面活性剤、化粧補助剤、顔料、UVAフィルター、UVBフィルター、噴射剤、増粘剤、乳化剤、溶媒(例えばアルコール溶媒)、水、抗酸化剤、香料、染料、脱臭剤、抗菌性材料、背過脂肪剤、錯化剤及び金属イオン封鎖剤、パール光沢剤、植物抽出物、ビタミン、活性成分及び/又はその誘導体ならびにその組み合わせを含むが、これに限定されない。
【0043】
式Iのカルボン酸置換イデベノン誘導体を使用すれば、酸化促進分解生成物は発生しない。抗酸化物としてカルボン酸置換イデベノン誘導体を使用することと、酸化ストレスや炎症反応によって引き起こされた皮膚の老化を治療し、及び/又は、予防するためにカルボン酸置換イデベノン誘導体を使用することは、本発明の範囲内にある。化粧品組成物又は皮膚科学的組成物を安定化させるために抗酸化剤としてカルボン酸置換イデベノン誘導体を使用することは、添加剤として、ビタミンA及び/又はその誘導体、(例えば、全−E−レチノン酸、9−Z−レチノン酸、13−Z−レチノン酸、レチナール、レチニルエステル)、ビタミンB及び/又はその誘導体、ビタミンC及び/又はその誘導体ならびにビタミンE及び/又はその誘導体(例えばα−酢酸トコフェロール)を単独又は組み合わせて含み、この使用は、同じように本発明の範囲内である。本発明の安定化作用は、香気及び着色に関わり、特に組成物の活性成分含有量に関わる。
【0044】
また、肺胞呼吸、ミトコンドリア膜の安定化、さらには皮膚細胞の抗アポトーシス作用を補助する薬剤としてのカルボン酸置換イデベノン誘導体を使用することと、その老化した皮膚、ストレスを受けた皮膚又は損傷した皮膚の再生及び再活性化のためにカルボン酸置換イデベノン誘導体を使用することは、本発明の範囲内にある。
【0045】
本発明の化粧品組成物又は皮膚科学的組成物は、従来の方法で調製し、皮膚を治療し、ケアし、洗浄するのに使用し、美容のメイクアップ製品として使用してもよい。投与に関して、本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体は、本発明の化粧品組成物又は皮膚科学的組成物に含めて、化粧品における従来の方法で皮膚に局所塗布してもよい。
【0046】
本発明の化粧品組成物及び皮膚科学的組成物はさまざまな形態で存在してもよい。このため、例えば、溶液、美容液、無水製剤、油中水滴(W/O)型又は水中油滴(O/W)型のエマルジョン又はマイクロエマルジョン、例えば水中油中水(W/O/W)型のマルチプルエマルジョン、ゲル、ソリッドスティック、軟膏剤又はエアゾールなどがある。また、カプセル形態で、例えばコラーゲンマトリクス及び他の従来の封入材料中に、例えばセルロース封入として、ゼラチン、ワックスマトリクス中に、あるいは、リポソーム封入して、カルボン酸置換イデベノン誘導体を投与することも有利である。
【0047】
皮膚を洗浄するために水性系又は界面活性剤組成物にカルボン酸置換イデベノン誘導体を添加することが、本発明の範囲内で可能であり、有利である。
【0048】
また、酸化ストレスから皮膚の保護するためにカルボン酸置換イデベノン誘導体を使用することは、特に洗浄剤でのカルボン酸置換イデベノン誘導体を使用することは、本発明の有利な実施形態とみなされる。
【0049】
本発明の化粧品組成物及び皮膚科学的組成物は、このような組成物に従来から使用されているように、例えば、防腐剤、殺菌剤、芳香剤、泡立ちを防ぐ物質、染料、着色効果がある顔料、増粘剤、界面活性剤物質、乳化剤、柔軟剤、保湿剤及び/又は水分保持物質、油脂、油、ワックス又はアルコール、ポリオール、ポリマー、泡安定剤、電解質、有機溶媒又はシリコーン誘導体などの化粧品製剤及び皮膚科学的製剤の他の従来成分などの、化粧補助剤を含んでもよい。
【0050】
特に、本発明によれば、カルボン酸置換イデベノン誘導体を他の抗酸化剤及び/又はフリーラジカル吸収剤と混合してもよい。本発明によれば、化粧品組成物及び/又は皮膚科学的組成物に好適であり、従来のものである抗酸化剤はいずれも、好ましい抗酸化剤として使用してもよい。抗酸化剤は、レスベラトール、アミノ酸(例えば、グリシン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン)及びその誘導体、イミダゾール(例えばウロカニン酸)及びその誘導体、D,L−カルノシン、D−カルノシン、L−カルノシン及びその誘導体などのペプチド(例えばアンセリン)、カロチノイド、カロチン(例えば、α−カロチン、β−カロチン、リコペン)及びその誘導体、クロロゲン酸及びその誘導体、リポ酸及びその誘導体(例えばジヒドロリポ酸)、アウロチオグルコース、プロピルチオウラシル、他のチオール(例えば、チオレドキシン、グルタチオン、システイン、シスチン、シスタミン及びそのグリコシル、N−アセチル、メチル、エチル、プロピル、アミル、ブチル及びラウリル、パルミトイル、オレイル、γ−リノレイル、コレステリル及びグリセリルエステル)及びその塩、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジステアリル、チオジプロピオン酸及びその誘導体(エステル、エーテル、ペプチド、リピド、ヌクレオチド、ヌクレオシド及び塩)ならびにスルホキシミン化合物(例えば、ブチオニンスルホキシミン、ホモシステインスルホキシミン、ブチオニンスルホン、ペンタチオニンスルホキシミン、ヘキサチオニンスルホキシミン、ヘプタチオニンスルホキシミン)をきわめて低い許容量(例えばpモル〜μモル/kg)で、さらに(金属)キレート化剤(例えば、α−ヒドロキシ脂肪酸、パルミチン酸、フィチン酸、ラクトフェリン)、α−ヒドロキシ酸(例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸)、フミン酸、コール酸、胆汁抽出物、ビリルビン、ビリヴェルディン、EDTA、EGTA及びその誘導体、不飽和脂肪酸及びその誘導体(例えば、γ−リノレン酸、リノール酸、オレイン酸)、葉酸及びその誘導体、ユビキノン及びユビキノール及びその誘導体、ビタミンC及び誘導体(例えば、パルミチン酸アスコルビン、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、酢酸アスコルビン)、トコフェロール及び誘導体(例えばビタミンEアセテート)、ビタミンA及び誘導体(例えばビタミンAパルミテート)、ベンゾイン樹脂の安息香酸コニフェリル、ルチン酸及びその誘導体、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ノルジヒドログアヤシン酸、ノルジヒドログアヤレト酸、トリヒドロキシブチロフェノン、尿酸及びその誘導体、マンノース及びその誘導体、セサモール、セサモリン、亜鉛及びその誘導体(例えば、ZnO、ZnSO)、セレン及びその誘導体(例えばセレンメチオニン)スチルベン及びその誘導体(例えば、スチルベンオキシド、トランス−スチルベンオキシド、レスベラトール)ならびにこのような活性成分の発明の好適な誘導体(塩、エステル、エーテル、糖、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ペプチド及び脂質)から成る群から有利に選択される。
【0051】
組成物中の上記の抗酸化剤(1又は複数の化合物)の量は、組成物の全重量に対して、0.0001〜30重量%、好ましくは0.05〜20重量%、さらに好ましくは1〜10重量%であってよい。
【0052】
ビタミンE、レスベラトール及び/又はその誘導体が、追加の抗酸化剤である場合、組成物の全重量に対して、0.0001〜20重量%の範囲からその特定の濃度を選択することが有利である。
【0053】
ビタミンA、ビタミンA誘導体もしくはカロチン又はその誘導体が、追加の抗酸化剤である場合、組成物の全重量に対して、0.0001〜10重量%の範囲からその特定の濃度を選択するのが有利である。
【0054】
本発明によるエマルジョンは、有利であり、このような型の製剤に従来から使用されるように、上記の油脂、油、ワックス及び他の脂肪様のものと、水と、乳化剤を含む。
【0055】
脂質相は、次の物質群:鉱物油、ミネラルワックス;カプリン酸もしくはカプリル酸などの油に加えて例えばヒマシ油などの天然油;脂肪、ワックスならびに他の天然脂肪様のもの及び合成脂肪様のものと、好ましくは低C数のアルコール、例えばイソプロパノール、プロピレングリコール又はグリセリンを有する脂肪酸のエステルや、低C数のアルカン酸又は脂肪酸を有する脂肪族アルコールのエステル;アルキルベンゾエート;ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイルとその混合物から有利に選択してもよい。
【0056】
本発明の範囲内のエマルジョン、オイルゲル、水分散液又は油分散液の油相は、鎖長が3〜30C原子の飽和及び/又は不飽和、分岐鎖状又は非分岐鎖状のアルカンカルボン酸と鎖長が3〜30C原子の飽和及び/又は不飽和、分岐鎖状又は非分岐鎖状のアルコールのエステル群と、芳香族カルボン酸と鎖長が3〜30C原子の飽和及び/又は不飽和、分岐鎖状又は非分岐鎖状のアルコールのエステル群から有利に選択される。そこで、このようなエステル油は、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソプロピル、n−ブチルステアレート、n−ヘキシルラウレート、n−デシロレート、ステアリン酸イソオクチル、ステアリン酸イソノニル、イソノナン酸イソノニル、2−エチルヘキシルパルミテート、2−エチルヘキシルラウレート、2−ヘキシルデシルステアレート、2−オクチルドデシルパルミテート、オレイン酸オレイル、エルカ酸オレイル、オレイン酸エルシル、エルカ酸エルシルならびにこのようなエステルの合成混合物、半合成混合物及び天然混合物、例えばホホバオイルから有利に選択してもよい。
【0057】
また、油相は、分岐鎖状又は非分岐鎖状の炭化水素及びワックス、シリコーンオイル、ジアルキルエーテルの群と、飽和もしくは飽和又は分岐鎖状又は非分岐鎖状のアルコール及び脂肪酸トリグルセリド、言わば、鎖長が8〜24C、特に12〜18C原子の飽和及び/又は不飽和、分岐鎖状又は非分岐鎖状のトリグリセリンエステルの群から有利に選択してもよい。例えば、脂肪酸トリグルセリドは、合成油、半合成油及び天然油、例えば、オリーブ油、ヒマワリ油、ダイズ油、ラッカセイ油、ナタネ油、ヘントウ油、パーム油、ヤシ油、パーム核油などの群から有利に選択してもよい。
【0058】
また、本発明の範囲内では、このような油成分及びワックス成分のあらゆる混合物を有利に使用することができる。油相の単一の脂質成分として、ワックス、例えばパルミチン酸セチルを使用することが任意に有利となることがある。
【0059】
油相は、2−エチルヘキシルイソステアレート、オクチルドデカノール、イソノナン酸イソトリデシル、イソエイコサン、2−エチルヘキシルココエート、C12〜15アルキルベンゾエート、カプリル−カプリン酸トリグリセリド、ジカプリリルエーテルの群から有利に選択される。
【0060】
12〜15アルキルベンゾエートと2−エチルヘキシルイソステアレートの混合物、C12〜15アルキルベンゾエートとイソノナン酸イソトリデシルの混合物ならびにC12〜15アルキルベンゾエート、2−エチルヘキシルイソステアレート及びイソノナン酸イソトリデシルの混合物が、特に有利である。
【0061】
炭化水素の油相は、本発明の範囲内では、パラフィン油、スクアラン及びスクワレンを有利に使用することができる。
【0062】
油相は、また、環状又は直鎖状のシリコンオイル類を有利に含んでもよく、このような油を完全に含んでもよいが、シリコ−ンオイル又はシリコーンオイル類以外に、他の油相成分を添加して使用するのが好ましい。
【0063】
シクロメチコン(オクタメチルシクロテトラシロキサン)は、本発明に従って使用されるシリコーン油として有利に用いられる。しかし、他のシリコーン油、例えばヘキサメチルシクロトリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリ(メチルフェニルシロキサン)も本発明の範囲内で有利に使用してもよい。
【0064】
また、シクロメチコンとイソノナン酸イソトリデシルの混合物、シクロメチコンと2−エチルヘキシルイソステアレートの混合物が特に有利である。
【0065】
本発明の組成物の水相は、低C数のアルコール、ジオール又はポリオール及びそのエーテル、好ましくは、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチル又はモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチル、モノエチル又はモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテル又は類似生成物と、さらに低C数のアルコール、例えばエタノール、イソプロパノール、1,2−プロパンジオール、グリセリンと、特に、二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、ポリサッカリド又はその誘導体、例えば、ヒアルロン酸、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの群から有利に選択できる1又は複数の増粘剤と、ポリアクリレートの群から特に有利に、いずれの場合も単独又は組み合わせて、任意に含んでもよい。
【0066】
上記の溶媒の混合物が、特に使用される。アルコール溶媒に関しては、水は追加成分であってよい。
【0067】
本発明によるゲルは、増粘剤の存在下で、低C数のアルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、1,2−プロパンジオール、グリセリン及び水又は上記の油を従来のように含み、増粘剤としては、油−アルコールゲルに関しては、二酸化ケイ素又はケイ酸アルミニウムが好ましく、水−アルコールゲル又はアルコールゲルには、ポリアクリレートが好ましい。
【0068】
従来から知られており、揮発性が高い液化促進剤、例えば、炭化水素(プロパン、ブタン、イソブタン)は、単独で使用するか、互いに混合して使用してもよく、噴射剤として本発明によるエアゾール容器から噴射される組成物に好適である。また、圧縮空気を有利に使用することができる。
【0069】
また、本発明による組成物は、紫外線放射の全体の範囲から皮膚を保護する化粧品組成物を提供するために、UVB範囲のUV放射を吸収する物質を有利に含んでもよく、フィルター物質の総量は、組成物の全重量に対して、例えば0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1.0〜6.0重量%である。また、本発明による組成物は、皮膚の日焼け防止剤として作用してもよい。
【0070】
本発明による組成物は、UVBフィルター物質を含む場合、脂溶性又は水溶性であってよい。本発明によれば、有利な脂溶性のUVBフィルターには、例えば、鉱物油、ミネラルワックス;カプリン酸又はカプリル酸のトリグリセリドなどの油に加えて例えばヒマシ油などの天然油;脂肪、ワックスならびに他の天然脂肪様のもの及び合成脂肪様のものと、好ましくは低C数のアルコール、例えばイソプロパノール、プロピレングリコール又はグリセリンを含む脂肪酸のエステルや、低C数のアルカン酸又は脂肪酸を有する脂肪族アルコールのエステル;アルキルベンゾエート;ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイルとその混合物;3−ベンジリデンカンファー誘導体、好ましくは、3−(4−メトキシベンジリデン)カンファー、3−ベンジリデンカンファーと、4−アミノ安息香酸誘導体、好ましくは、(2−エチルヘキシル)4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、4−(ジメチルアミノ)安息香酸アミル;ケイ皮酸のエステル、好ましくは、(2−エチルヘキシル)4−メトキシケイ皮酸、4−メトキシケイ皮酸イソペンチル;サリチル酸のエステル、好ましくは、(2−エチルヘキシル)サリチレート、(4−イソプロピル−ベンジル)サリチレート、サリチル酸ホモメチル、ベンゾフェノンの誘導体、好ましくは、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン;ベンジリデンマロン酸のエステル、好ましくは、ジ(2−エチルヘキシル)4−メトキシベンジリデンマロネート、−2,4,6−トリアニリノ(p−カルボ−2’−エチル−1’−ヘキシルオキシ)−1,3,5−トリアジンがある。
【0071】
本発明によれば、有利な水溶性のUVBフィルターには、例えば、ナトリウム、カリウムなどの2−フェニルベンジミダゾール−5−スルホン酸の塩又はそのトリエタノール−アンモニウム塩及びスルホン酸自体;ベンゾフェノンのスルホン酸誘導体、好ましくは、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸及びその塩;3−ベンジリデンカンファーのスルホン酸誘導体、例えば、4−(2−オキソ−3−ボルニリデン−メチル)ベンゼンスルホン酸、2−メチル−5−(2−オキソ−3−ボルニリデン−メチル)スルホン酸及びその塩ならびに1,4−ジ(2−オキソ−10−スルホ−3−ボルニリデン−メチル)ベンゼン及びその塩(対応する10−スルファト化合物、例えば、対応するナトリウム塩、カリウム塩又はトリエタノール−アンモニウム塩)、ベンゼン−1,4−ジ(2−オキソ−1−ボルニリデン−メチル)−10−スルホン酸とも表されるものがある。
【0072】
上に挙げるUVBフィルターは、本発明の活性成分と組み合わせて使用してもよいが、限定すべきではない。
【0073】
また、本発明の範囲内には、抗酸化剤として、カルボン酸置換イデベノン誘導体を少なくとも1つのUVBフィルターと組み合わせて使用することや、化粧品組成剤又は皮膚科学的組成物の抗酸化剤として、カルボン酸置換イデベノン誘導体を少なくとも1つのUVBフィルターと組み合わせて使用することがある。
【0074】
また、カルボン酸置換イデベノン誘導体をUVAフィルターと組み合わせることが有利になることがあり、これまで、化粧品組成物に従来から存在している。このような物質は、ジベンゾイルメタンの誘導体、特に、1−(4’−tert−ブチルフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオン及び1−フェニル−3−(4’−イソプロピル−フェニル)プロパン−1,3−ジオンであるのが好ましい。また、このような組み合わせやこのような組み合わせを含む組成物が、本発明の目的である。UVBとの組み合わせに使用される量を使用してもよい。
【0075】
また、本発明の範囲内には、抗酸化剤として、カルボン酸置換イデベノン誘導体を少なくとも1つのUVAフィルターと組み合わせて使用することや、化粧品組成剤又は皮膚科学的組成物の抗酸化剤として、本発明の活性成分の組み合わせを少なくとも1つのUVAフィルターと組み合わせて使用することがある。
【0076】
また、本発明の範囲内には、抗酸化剤として、カルボン酸置換イデベノン誘導体を少なくとも1つのUVAフィルター及び少なくとも1つのUVBフィルターと組み合わせて使用することや、化粧品組成剤又は皮膚科学的組成物の抗酸化剤として、カルボン酸置換イデベノン誘導体を少なくとも1つのUVAフィルター及び少なくとも1つのUVBフィルターと組み合わせて使用することがある。
【0077】
また、有効量のカルボン酸置換イデベノン誘導体を含有する化粧品組成物及び皮膚科学的組成物は、無機顔料を含んでもよく、無機顔料は、UV光線から皮膚を保護するために、化粧品に従来から使用されている。このような無機顔料は、チタン、亜鉛、ジルコニウム、シリコン、マンガン、セリウムの酸化物及びその混合物ならびに酸化物が活性剤である修飾体である。このような無機顔料は、二酸化チタン系顔料が特に好ましい。
【0078】
UVAフィルターと顔料のこのような組み合わせと、この組み合わせを含む組成物は、本発明の範囲内である。上記の組み合わせに示す量を使用してもよい。
【0079】
皮膚洗浄剤又はシャンプー剤である化粧品組成物には、水媒体及び補助剤中に、少なくとも1つのアニオン、非イオンもしくは両性界面活性剤物質又はその物質の混合物、カルボン酸置換イデベノン誘導体を含むのが好ましく、このため、従来から使用されている。界面活性剤物質又はこのような物質の混合物は、シャンプー剤中に1〜50重量%で存在してもよい。
【0080】
また、このような化粧品組成物又は皮膚科学的組成物は、補助剤を含むエアゾールであってよく、補助剤はこのために従来から使用されている。
【0081】
本発明の水性化粧用洗浄剤又は水性洗浄が意図される低含水量もしくは無水量の水性洗浄剤の濃縮物には、アニオン、非イオン及び/又は両性界面活性剤物質、例えば、従来の石鹸、例えば、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルエーテルスルフェート、アルカン及びアルキルベンゼンスルホネート、スルホアセテート、スルホベタインサルコシネート、アミドスルホベタインスルホサクシネート、スルホコハク酸半エステル、アルキルエーテルカルボキシレート、タンパク質脂肪酸凝縮物、アルキルベタイン及びアミドベタイン脂肪酸アルカノールアミドポリグリコールエーテル誘導体の脂肪酸塩を含んでもよい。
【0082】
皮膚用の化粧用洗浄剤組成物である化粧品組成物は、液体で存在してもよく、固体で存在してもよい。カルボン酸置換イデベノン誘導体に加えて、このような化粧品組成物は、少なくとも1つのアニオン、非イオンもしくは両性界面活性剤物質又はその混合物、必要であれば1又は複数の電解質及び補助剤を含むのが好ましく、界面活性剤物質、電解質及び補助剤は、従来そのために使用されている。界面活性剤物質は、組成物の全重量に対して、洗浄剤組成物に0.001〜99.999重量%で存在してよい。
【0083】
シャンプー剤である化粧品組成物は、有効量のカルボン酸置換イデベノン誘導体に加えて、アニオン、非イオンもしくは両性界面活性剤物質又はその混合物、任意に本発明の電解質及び補助剤を含むのが好ましく、界面活性剤物質、電解質及び補助剤は、従来そのために使用されている。界面活性剤物質は、シャンプー剤中に0.001〜99.999重量%で存在してもよい。
【0084】
本発明による組成物は、上記の界面活性剤以外に、水と、任意に、化粧品の従来の添加剤、例えば、香水、増粘剤、染料、脱臭薬、抗菌材料、背過脂肪剤、錯化剤及び金属イオン封鎖剤、パール光沢剤、植物抽出物、ビタミン及び/又はその誘導体、活性成分などを含む。
【0085】
また、本発明は酸化過程又は光酸化過程から皮膚や髪を保護する美容過程を含み、有効濃度カルボン酸置換イデベノン誘導体を含有する化粧剤を適量で皮膚又は髪に塗布することを特徴とする。
【0086】
また、本発明は、酸化又は光酸化から化粧品組成物又は皮膚科学的組成物を保護する過程を含み、このような組成物、例えば、髪を治療して保護する組成物は、特に、ヘアスプレー、シャンプー剤、さらに、例えば、マニキュア液、口紅、下地、洗浄剤及びシャワー剤の組成物などの化粧製品、皮膚又は他の化粧品組成物を治療したり、ケアしたりするクリームであり、その成分は、保存時の酸化又は光酸化のために、安定性の問題をもたらす可能性があり、化粧品組成物は、有効量のカルボン酸置換イデベノン誘導体を含有することを特徴とする。
【0087】
組成物の全重量に対して、カルボン酸置換イデベノン誘導体の量は、0.0001〜30重量%、好ましくは0.05〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜2.0重量%であってよい。
【0088】
また、本発明の範囲内には、本発明の化粧品剤を製造する過程があり、本発明の活性成分の組み合わせが、当業者に知られている方法で化粧品製剤又は皮膚科学的製剤に利用されることを特徴とする。
【0089】
本願明細書のいずれかに記載するこのような実施例及び他の実施例の使用は、説明目的にすぎず、本発明又はあらゆる例示された形態の範囲及び意味を決して制限するものではない。また、本発明は、本願明細書に記載するあらゆる特定の好適な実施形態にも限定されない。当業者には、本願明細書を読めば、本発明の改変及び変形が明らかとなり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに創製することができる。これにより、本発明は、特許請求の範囲によって得られる均等物の全範囲とともに、本願特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。
【実施例1】
【0090】
イデベノンジパルミトイルグリセラートの合成
本実施例は、3−オキソ−3−(9−(2,4,5−トリメチル−3,6−ジオキソシクロヘキサ−1,4−ジエニル)モニルオキシ)プロパン−1,2−ジイルジパルミテート(化合物5、イデベノンジパルミトイルグリセラート)の合成法を提供し、この化合物は、本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体の代表例である。
【0091】
【化6】

【0092】
イデベノンジパルミトイルグリセラート合成に用いる出発原料が、アクリル酸ベンジル(化合物1)であり、粗ジオール油(化合物2)を生成するためにさまざまな化学反応を実施してもよい。次に、このジオールを、さまざまな試薬(TEA、4−DMAP及びCHCl)の存在下で塩化パルミトイルとアシル化反応させ、トリ−エステル、化合物3を生成する。次に、この生成物を、さまざまな試薬(H及びPd−C(10%))の存在下で酢酸エチル(AcOEt)と反応させ、酸、化合物4を生成する。次に、化合物4を溶媒(SOCl/CHCl)と混合し、さまざまな試薬(TEA、4−DMAP及びCHCl)の存在下でイデベノンと反応させ、最終生成物、化合物5(イデベノンジパルミトイルグリセラート)を生成する。
【0093】
化合物2を生成するアクリル酸ベンジル(化合物1)のジヒドロキシル化は、さまざまな方法で実施してもよい。一方法では、t−ブタノールと水(1:1)の混合物中で、アクリル酸ベンジル(1.0mmol)をオスミウム酸カリウム二水和物0.4mol%、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム3当量及び炭酸カリウム3当量と反応させる(Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1996、35、448−451)。室温で約21時間反応物を撹拌する。反応を促進するオスミウム酸塩触媒をさらに多く添加する必要があることがある。水後処理後に、粗ジオール(化合物2)は、ほぼ定量的収率で得られる。
【0094】
アクリル酸ベンジルのジヒドロキシル化の別の方法は、非揮発性オスミウム酸カリウム二水和物を使用することである(J.Org.Chem.1998、6094)。室温で水:アセトン:アセトニトリル(1:1:1)溶媒混合物中で、アクリル酸ベンジル(1.0mmol)をオスミウム酸カリウム二水和物0.5mol%、N−メチルモルホリンN−オキシド(NMO)1.3当量と反応させた。反応は12時間で終了した。水後処理後に、粗ジオール(化合物2)は、油としてほぼ定量的収率で得られた。プロトンNMRは、粗ジオールが約95%の純度であったことを示した。この粗油は、一晩室温で静置後に暗褐色になった。粗ジオールに少量の残留オスミウム酸塩が存在し、変色の原因となったと考えられる。後処理条件は、あらゆる実施前の不純物を除去するために、二亜硫酸塩による洗浄及び/又はプラグ濾過を含むように変更してもよい。暗色化を防ぐことができない場合、粗ジオール(化合物2)をトリエステル(化合物3)に直接取り、化合物4の酸性段階で精製してもよい。
【0095】
粗油をカラムクロマトグラフィーで精製して、ジオール(化合物2)を特定した。この化合物は、エレクトロスプレーLC/MSによってイオン化しなかった。プロトンNMRは、所望の生成物(化合物2)が調製されたことを確認した。
【実施例2】
【0096】
本発明の組成物を含有する化合物
本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体を含有する組成物には増感剤(例えばパラベン)がないのが好ましい。次に記載するように、さまざまな成分を用いて本発明による好適な組成物を調製してもよい。本実施例の各組成物に言及する「CA−Subイデベノン誘導体」は、イデベノンジパルミトイルグリセラートなどの本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体を示す。
【0097】
本発明の洗顔料は、水、ラウロイルオートアミノ酸ナトリウム、C12〜16オレフィンスルホン酸ナトリウム、酸化コカミドプロピルアミン、乳酸ナトリウム、PEG−6カプリル/カプリングリセリド、ショ糖ポリソイエート、PEG−6ラウラミド、乳酸、CI77891、グリセリン、パルミチン酸グリコール、セテアリルアルコール、セテアレス−33、CA−Subイデベノン誘導体、サリチル酸、カプリル/カプリントリグリセリド、ココ−グルコシド、ココナッツアルコール、キュウリ果実抽出物、PEG−120ジオレイン酸メチルグルコース、ヒドロキシエチルセルロース、水酸化アルミニウム、ステアリン酸、キサンタンガム、クエン酸、ジナトリウムEDTA及びフェノキシエタノールを含む。
【0098】
本発明の目元美容液は、水、乳酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンイソプロピル、PPG−3ミリスチン酸ベンジルエーテル、藻類抽出物、CI77891、グリセリン、パルミトイルトリペプチド−3、グリセリン、乳酸、デセン/ブテンコポリマー、カフェイン、CA−Subイデベノン誘導体、レチノール、アイリッシュモス、フェニルトリメチコン、シクロペンタシロキサン、リン脂質、ジメチコノール、キサンタンガム、グルコース、水酸化アルミニウム、ケイ酸、アルギン酸、CI77489、シリカ、ポリアクリル酸ナトリウム、PVM/MAコポリマー、オリーブ油脂肪酸セテアリル、オリーブ油脂肪酸ソルビタン、C20〜22アルキルホスフェート、C20〜22アルコール、ポリソルベート20、アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマー、イソヘキサデカン、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、トリエタノールアミン、ジナトリウムEDTA及びフェノキシエタノールを含む。
【0099】
本発明の顔用保湿クリームは、水、乳酸ナトリウム、カプリル/カプリントリグリセリド、ビス−ヒドロキシエトキシプロピルジメチコン、グリセリン、ラウロイルサルコシンイソプロピル、乳酸、セテアリルグルコシド、グリシン大豆タンパク質、オキシドレダクターゼ、CA−Subイデベノン誘導体、レチノール、ヒアルロン酸ナトリウム、ナトリウムPCA、尿素、トレハロース、アイリッシュモス、グルコース、イソヘキサデカン、ポリクオタニウム−51、ポリアクリル酸ナトリウム、PVM/MAコポリマー、キサンタンガム、オリーブ油脂肪酸セテアリル、オリーブ油脂肪酸ソルビタン、ステアリン酸グリセリル、PEG−100ステアレート、ポリソルベート20、アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマー、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ステアレス−100、CI77891、水添グリセリド油、ジナトリウムEDTA及びフェノキシエタノールを含む。
【0100】
本発明のトリートメントピールは、乳酸、水、SDアルコール40−B、乳酸アンモニウム、サリチル酸、CA−Subイデベノン誘導体及びヒドロキシエチルセルロースを含む。
【0101】
本発明の別の組成物(例えばクリーム)は、水、グリセリン、リシノール酸セチル、イソヘキサデカン、セレシン、ステアリン酸グリセリル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、セリシン、ジメチコン、PEG−60水添ヒマシ油、ステアレス−2、ナトリウムPCA、PEG−100ステアレート、CI77891、CA−Subイデベノン誘導体、コレステロール、セラミドIII、リノール酸、リノレン酸、トコフェロール、キビ抽出物、グリコサミノグリカン、BHT、プロピレングリコール、アクリル酸スチレンコポリマー、コーンスターチ加水分解物、水酸化アンモニウム、PEG−30ジポリヒドロキシステアレート、セチルヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ジナトリウムEDTA及びフェノキシエタノールを含む。
【0102】
本発明の別の組成物(例えばクリーム)は、水、乳酸ナトリウム、グリセリン、ショ糖ココエート、乳酸、イソヘキサデカン、ラウロイルサルコシンイソプロピル、ステアリン酸グリセリル、PEG−100ステアレート、ステアリン酸ソルビタン、ステアレス−2、CI77891、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、PEG−60水添ヒマシ油、ブチレングリコール、ジヒドロキシ安息香酸メチル、CA−Subイデベノン誘導体、レチノール、トコフェロール、カンゾウ根抽出物、クワ葉抽出物、ユチャ葉抽出物、ブドウ果実抽出物、リン酸アスコルビルマグネシウム、BHT、ビサボロール、アラントイングリチルレチン酸、ジメチコン、ポリソルベート20、PEG−30ジポリヒドロキシステアレート、キサンタンガム、セチルヒドロキシエチルセルロース、ジナトリウムEDTA、プロピレングリコール、アクリル酸スチレンコポリマー、コーンスターチ加水分解物、水酸化アンモニウム及びフェノキシエタノールを含む。
【0103】
本発明の日光保護剤は、酸化亜鉛、オクチノキサート、オキシベンゾン、オクチサレート、水、炭酸ジカプリリル、PEG−20ステアレート、CA−Subイデベノン誘導体、ペンチレングリコール、ステアリン酸グリセリル、ラウレス−23、シリカ、ビス−ヒドロキシエトキシプロピルジメチコン、セテアリルアルコール、ココ−グルコシド、シアーバター抽出物、リン脂質、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、ブチレングリコール、カプリル/カプリントリグリセリド、テトライソパルミチン酸アスコルビル、トコフェロール、カルボマ、ナトリウムDNA、セチルヒドロキシエチルセルロース、セチルリン酸カリウム、水添パーム油脂肪酸グリセリド、ジメトキシジフェニルシラン/トリエトキシカプリリルシランクロスポリマー、キサンタンガム、ジナトリウムEDTA、ジアゾリジニル尿素及びブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルを含む。
【0104】
本発明の環境保護剤は、水、グリセリン、ジプロピレングリコール、ステアリン酸グリセリル、PEG−100ステアレート、ステアリルアルコール、ステアレス−20、CA−Subイデベノン誘導体、スーパーオキシドジスムターゼ、セチルヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、ジナトリウムEDTA及びフェノキシエタノールを含む。
【0105】
本発明の別の組成物(例えばボディクリーム)は、CA−Subイデベノン誘導体、レスベラトール、キサンチン(例えばカフェイン)、AHA(乳酸)、コラーゲン合成刺激剤(例えば、ビタミンC及びその誘導体)を含む。
【実施例3】
【0106】
イデベノンジパルミトイルグリセラートのマクシミゼーションテスト
マクシミゼーションテストを用い、イデベノンジパルミトイルグリセラート(ビヒクル+1%イデベノンジパルミトイルグリセラート)を含有する局所顔用クリームの接触刺激性を評価するために、試験を実施した。テストは連続パッチテストであった。48時間の誘導時間で5回、上腕外側、掌側前腕又は掌側後腕の同じ部位に閉鎖包帯下で試験物質を塗布し、10〜14日後に未感作の皮膚部位に1回抗原投与した。検査試料は、クリームAと符号化し、換言すると何も混入しない状態で供給して試験した。担当者の監督下で、周囲条件下の近づき難い場所に全試験物質を格納した。
【0107】
被験者はいずれも、18歳超の成人健常者であった。被検者のなかには、内科的疾患又は皮膚疾患にかかっている者はおらず、日光又は局所製剤及び/又は化粧品に対して過敏症の者もいなかった。除外基準には、日光過敏症及び光過敏性皮膚疾患の既往歴と、化粧品、トイレタリー又は他の皮膚科学的製品に対するアレルギー又は過敏症の既往歴と、再発性皮膚疾患、例えば、乾癬、アトピー性湿疹の既往歴と、妊娠又は授乳期の母親と、試験を妨げる可能性のある上腕、掌側前腕又は掌側後腕の瘢痕、母斑又は他の斑点と、再発性のじんま疹又は皮疹の既往歴と、免疫応答の遅延を妨げうる全身投薬又は局所投薬、例えば副腎皮質ホルモンの投与を受けている被検者と、試験製品又は試験製品の成分に対するアレルギーの既往歴と、試験への参加が適当でない妥当な理由として、ほかに担当者によって考えられる状態がある。
【0108】
パッチを各被検者の上腕外側、掌側前腕又は後部に貼付した。試験全体を2つの異なる段階、誘導段階及び抗原投与段階で構成した。
【0109】
誘導段階
約0.05mlのSLS水溶液(0.25%)を直径15mmのWebril綿布下の指定部位に貼付し、パッチを24時間閉鎖テープで皮膚に固定した。24時間後にSLSパッチを取り除き、試験物質0.05mlを同じ部位に貼付し、その部位を閉塞テープ(誘発パッチ)で再度覆った。誘導パッチを48時間留置(又は72時間、週末にかけて留置)し、その後、誘導パッチを取り除き、その部位で刺激試験を再実施した。刺激症状がみられない場合、水性SLSパッチ0.25%を24時間同じ部位に再び貼付した後、同じ場所に試験物質を含む新しい誘導パッチを再貼付した。この順番は、言い換えると、24時間のSLS前処理後に48時間試験物質を塗布し、合計5回の誘導曝露を続けた。上で示すように誘導段階のいずれの時点でも刺激症が発症した場合、24時間のSLS前処理パッチを省略した。試験物質を塗布しない24時間の休息期間後、同じ部位に再び塗布した。本試験のこの段階の目的は、角質層バリアへの浸透性を高めるために、少なくとも最小限の刺激を維持することである。
【0110】
抗原投与段階
最後の誘導パッチを貼付けてから10日間の休息期間後に、被検者を上腕外側、掌側前腕又は後部の新しい皮膚部位に試験物質を1回塗布して抗原投与し、感作症を発症したかどうかを判断した。抗原投与前に、SLSで前処理を実施した。直径15mmのWebril綿下の新しい皮膚部位に約0.05mlの水溶液5.0%を貼り付け、閉塞テープで覆った。SLSパッチを1時間留置した。次に、SLSパッチを除去し、同じ部位に試験物質を塗布した。次に、抗原投与パッチを閉塞テープで覆い、48時間留置した。その後、パッチを除去し、15〜30分後にその部位を評点し、24時間後に再評点した。
【0111】
評点基準
0=未感作
1=軽度の感作(言わば紅斑及び水腫が少しみられる)
2=中等度の感作(水疱形成の有無に関わらず、パッチの境界を超えて紅斑が浸潤し、隆起し、拡大する)
3=重度の感作(水疱反応が大きい)
【0112】
この結果に基づいて、試験物質に対して陽性反応の被検者の数を表に示した。試験物質のアレルギー誘発性を分類するために、表Iに示す試験システムを使用した。
【0113】
【表1】

【0114】
この試験には、試験対象患者基準を満たした男女の成人健常者が計27例参加した。女性は21人及び男性は6人であった。年齢は21〜65歳であった。被検者全27例が試験を終えた。誘導期には、いずれの被験者にも有害反応や予想外の反応はみられなかった。
【0115】
試験成績
接触アレルギーの症例は、抗原投与パッチを貼り付けてから48時間又は72時間後に27例の被検者いずれにも記録されなかった。成功を収めた化合物は、被検者から反応又は応答を引き起こさない化合物であると考えられる。
【0116】
結論
イデベノンジパルミトイルグリセラートを含有するクリームAには、検出可能な接触刺激性がなく、このため、通常の使用条件下で接触過敏反応を引き起こさないと思われる。
【0117】
さらに、イデベノンジパルミトイルグリセラートは、一般式Iによってもたらされるカルボン酸置換イデベノン誘導体の全種類の代表例であり、そのいずれも(特に、ジ−、トリ−又はポリ−脂肪酸鎖を含むもの)が、例えば分子量が高いことによって、同じような効果と皮膚耐性を示すと思われる。例えば、イデベノンジミリストイルグリセラート、イデベノンジオレイルグリセラート、イデベノンジリノレイルグリセラート、イデベノンジエイコサペンタエニルグリセラート、イデベノンジエルシルグリセラート、イデベノントリミリストイルトリヒドロキシプロパノエート、イデベノントリオレイルトリヒドロキシプロパノエート、イデベノントリリノレイルトリヒドロキシプロパノエート、イデベノントリエイコサペンタエニルトリヒドロキシプロパノエート及びイデベノントリエルシルトリヒドロキシプロパノエートはいずれも、皮膚の変化の治療に効果が高く、低皮膚刺激性、低炎症性、高皮膚透過性、高細胞透過性及び持続放出治療の便益をさらにもたらすと思われる。式Iのあらゆるカルボン酸置換イデベノン誘導体に共通な主な構造特徴は、2つ以上のカルボン酸(特にジ−、トリ−又はポリ−脂肪酸)が存在することであり、このようなカルボン酸は、皮膚の角質層脂質二重層にわたり、化合物をさらに可溶性し、細胞膜の透過性を増大することによって、活性成分の送達を増進し、化合物が皮膚中で加水分解するように持続放出治療を提供する。
【実施例4】
【0118】
イデベノンジパルミトイルグリセラートの臨床評価
二重盲検法による臨床評価を6週間実施し、赤茶色に色素が沈着した皮膚を治療するために、対照ビヒクルをイデベノンジパルミトイルグリセラートと比較した。中等度の色素過剰及び皮膚の発赤を認める40〜70歳の女性を約36例選択し、試験に参加させた。被検者を無作為に3群に割り当てた。第I群には、イデベノン活性成分を含まない製品(ビヒクル)を投与した。第II群には、イデベノン0.5%を添加した同じビヒクル(ヒドロキシデシルユビキノン)を投与した。第III群には、イデベノンジパルミトイルグリセラート0.5%を添加した同じビヒクルを投与した。1日に2回(朝夕)6週間、顔面に製品を塗布するように被検者に指示した。治療前及び6週間使用後に、Canfield VISIA−CR RBX画像を撮影して、分析した。また、被検者の距離と位置を標準化して、製品塗布前後のデジタル写真とUV写真を撮った。
【0119】
Canfield VISIA−CR RBX画像の専門家による評点及び点検に基づいて、第I群、第II群及び第III群では、被検者の27%、58%及び58%に発赤がほとんど示さなかった。また、第I群、第II群及び第III群では、被検者の18%、67%、75%が褐色色素沈着の減少を示した。これにより、イデベノンジパルミトイルグリセラートは、非誘導体化イデベノン又はモノカルボン酸に置換された非誘導体化イデベノンより総じて改善効果を実現した。
【0120】
実施例3及び4で試験したイデベノンジパルミトイルグリセラートは、一般式Iによってもたらされるカルボン酸置換イデベノン誘導体の全範囲の代表例である。実施例3及び4に記載するものと同じ形態(例えばクリーム)又はさまざまな形態(例えばローション又は軟膏)を用いて、式Iの他の化合物を試験した場合には、特に、効果及び皮膚耐性に関しては同じような結果(例えば、皮膚に接触過敏症を発症させない)が期待できると思われる。
【実施例5】
【0121】
比較臨床感作性試験
臨床感作性試験は、(本発明の化合物と比較して)分子量が比較的低い2つのイデベノンエステル、イデベノンリノール酸エステル及びイデベノンリン酸エステルに関して実施し、このようなイデベノンエステルの構造を次に示す。
【0122】
【化7】

(イデベノンリノール酸塩エステル)
【0123】
【化8】

(イデベノンリン酸エステル)
【0124】
実施例3に記載する同じ試験プロトコールを、本実施例の比較臨床感作性試験で使用したが、異なる被検者群に替えた。
【0125】
イデベノンリノール酸エステル試験(ビヒクル+1%のイデベノンリノール酸エステル)では、試験対象患者基準を満たした男女の成人健常者25例が試験に参加した。被検者はいずれも本試験を終了した。試験成績:被検者1例が陽性反応、言わば記録可能なレベルの皮膚感作を示した。さらに被検者1例の感作が不成立である。したがって、イデベノンリノール酸エステルを含む組成物には、本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体にみられるように皮膚刺激性を低下させ、炎症を抑えるという他の便益はない。
【0126】
イデベノンリン酸エステル試験(ビヒクル+1%のイデベノンリン酸エステル)では、試験対象患者基準を満たした男女の成人健常者29例が試験に参加した。19〜65歳の女性23例及び男性6例であった。被検者はいずれも本試験を終了した。試験成績:被検者4例が陽性反応、言わば記録可能なレベルの皮膚感作を示した。さらに被検者1例の感作が不成立であることから、イデベノンリン酸エステルを含む組成物には、本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体にみられるように皮膚刺激性を低下させ、炎症を抑えるという他の便益はない。
【0127】
結論
上記の実施例は、本発明のカルボン酸置換イデベノン誘導体は、皮膚耐性が増大させて皮膚の変化を治療するのに、予想外にも大きな効果がある化合物であることを示す。特に、このような実施例とデータは、このようなカルボン酸置換イデベノン誘導体に有利な抗酸化性があり、皮膚耐性が増大するという特に有利な属性があることを示す。
【0128】
本願明細書で引用され、及び/又は、検討される出版物、特許、論文などの参照文献は、その全体を参照によって本願明細書に引用したものとし、各参照文献を参照によって個別に引用したものであるような範囲に及ぶ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空白
【請求項2】
一般式I
【化1】

(式中、Rは、C2〜22直鎖状又は分岐鎖状の糖酸であり、糖酸の2つ以上のヒドロキシ基が、C1〜22カルボン酸にそれぞれ独立して置換される)の化合物。
【請求項3】
1又は複数のカルボン酸は、脂肪酸である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
1又は複数の脂肪酸は、共役脂肪酸である請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
一般式Iの化合物は、イデベノンジパルミトイルグリセラートである請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
一般式I
【化2】

(式中、Rは、C2〜22直鎖状又は分岐鎖状の糖酸であり、糖酸の2つ以上のヒドロキシ基が、C1〜22カルボン酸にそれぞれ独立して置換される)の化合物を調製する方法であって、対応するジ−、トリ−又はポリ−カルボン酸官能基化糖酸をイデベノンに結合させるステップを含む方法。
【請求項7】
1又は複数のカルボン酸は脂肪酸である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
1又は複数の脂肪酸は共役脂肪酸である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
イデベノンジパルミトイルグリセラートを調製する方法であって、
(a)アクリル酸ベンジルをジヒドロキシル化反応させ、2,3−ジヒドロキシプロパン酸ベンジルを生成するステップと、
(b)2,3−ジヒドロキシプロパン酸ベンジルを塩化パルミトイルと反応させて3−(ベンジルオキシ)−3−オキソプロパン−1,2ジイルジパルミテートを生成するステップと、
(c)3−(ベンジルオキシ)−3−オキソプロパン−1、2ジイルジパルミテートを酢酸エチルと反応させて2,3−ビス(パルミトイルオキシ)プロパン酸を生成するステップと、
(d)2,3−ビス(パルミトイルオキシ)プロパン酸をイデベノンと反応させてイデベノンジパルミトイルグリセラートを生成するステップとを含む方法。
【請求項10】
一般式I
【化3】

(式中、Rは、C2〜22直鎖状又は分岐鎖状の糖酸であり、糖酸の2つ以上のヒドロキシ基が、C1〜22カルボン酸にそれぞれ独立して置換される)の化合物と、少なくとも1つの添加剤とを含む組成物。
【請求項11】
一般式Iの化合物は、
【化4】

である請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、クリーム、ローション、溶液、美容液、無水製剤、エマルジョン、マイクロエマルジョン、マルチプルエマルジョン、ゲル、ソリッドスティック、軟膏剤及びエアゾールから選択される形態で提供される請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの添加剤は、界面活性剤、化粧助剤、顔料、UVAフィルター、UVBフィルター、噴射剤、増粘剤、乳化剤、溶剤、水、抗酸化剤、香料、染料、脱臭剤、抗菌性材料、背過脂肪剤、錯化剤及び金属イオン封鎖剤、パール光沢剤、植物抽出物、ビタミンならびにその組み合わせから選択される請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
皮膚の変化を治療する方法であって、治療有効量の一般式I
【化5】

(式中、Rは、C2〜22直鎖状又は分岐鎖状の糖酸であり、糖酸の2つ以上のヒドロキシ基が、C1〜22カルボン酸にそれぞれ独立して置換される)の化合物を含む組成物を必要とする被検者に局所投与することを含む方法。
【請求項15】
式Iの化合物は、イデベノンジパルミトイルグリセラートである請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記治療有効量は、組成物の全重量に対して、0.0001〜30重量%である請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記皮膚の変化は、皮膚の老化である請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記皮膚の変化は、色素過剰である請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記皮膚の変化は、UV損傷によって引き起こされる請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記皮膚の変化は、紅斑症候群を含む請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記皮膚の変化は、蜂巣炎である請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2012−505159(P2012−505159A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530300(P2011−530300)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/059673
【国際公開番号】WO2010/051138
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(511086180)エリザベス アーデン インターナショナル、エスエーアールエル (1)
【氏名又は名称原語表記】Elizabeth Arden International, Sarl
【住所又は居所原語表記】28 chemin de Joinville, P.O. Box 43, 1216 Cointrin, Geneva, Switzerland
【Fターム(参考)】