説明

カルボン酸誘導体、その製造法および該化合物の使用

本発明の対象は、不飽和ジカルボン酸無水物(A)を、カルボン酸無水物と比較して反応性の少なくとも1個の基および200〜50000ダルトンの平均分子量を有する疎水性反応成分(B)と反応させることによって得ることができるカルボン酸誘導体である。本発明により提案されるカルボン酸誘導体は、硬化したセメント建築材料の表面でのブルーミングの阻止または抑制のためのおよび/または相応するセメント系の疎水化のための剤として卓越して好適である。更に、セメント製品は、本発明により提案される添加剤によって明らかによりいっそう少ない水を吸収し、それによって、鉄筋のフロスト被害および急速な錆び付きは、明らかに減少される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸誘導体、その製造方法およびセメント建築材料(例えばコンクリートまたはモルタル)のための添加剤としての該化合物の使用に関し、この添加剤は、殊に該材料の疎水化および/または硬化したセメント建築材料の表面上でのブルーミングの抑制のために使用される。
【0002】
セメントを基礎とする建材材料での公知の問題は、いわゆるブルーミング(風解)が生じることであり、その際一次的なブルーミングと二次的なブルーミングとは区別される。最初に挙げたものは、既に硬化の際に、例えばコンクリートで生じ、その際この新鮮なコンクリートの毛管は、セメントの水溶性物質、実質的に水酸化カルシウム、の水溶液でもって充填されている。硬化の際には、この水酸化カルシウムは、コンクリート表面で、空気の二酸化酸素と反応し、難溶性の炭酸カルシウムを形成する。炭酸カルシウムの沈殿により、この水酸化カルシウム濃度は、この毛管口で毛管内側と比較してよりいっそう少ない。従って、絶えず新規の水酸化カルシウムが分散により、コンクリートのより深部の層から、毛管口に到達し、かつ再度CO2と反応して炭酸カルシウムを生じる。この相応するプロセスは、この毛管口が炭酸カルシウムにより閉塞される場合に停止する。このコンクリート表面上に縮合水被膜が存在する場合に特に強力にこのような一次的なブルーミングが生じ、それというのもこの水酸化カルシウムは全体的なコンクリート表面を覆って分布することができ、かつ、これらはニ酸化炭素との反応の後に非水溶性の炭酸カルシウムで被覆されるからである。
【0003】
更に、完全に硬化したコンクリートの屋外暴露の際にも斑点形成が生じる可能性があり、これは一般に二次的なブルーミングと呼称されている。この二次的なブルーミングは、通常、1〜2年間かかり、この場合には、炭酸カルシウムからの水溶性の炭酸水素カルシウムの緩徐な形成が原因と見なされている。
【0004】
このような、ブルーミングを有する建築要素の目視的な外観は、特に着色したコンクリート製品の際に、極めて強く損なわれていているので、この風解を種々の処置により減少させるかまたは抑制する試みが欠失していたことはない。
【0005】
技術水準に相応して、このために、2つの基本的な方法が提案されたが、これはしかしながら全てが満足のいく結果を生じていない。一方で、硬化したセメント製品またはコンクリート製品の表面は、特殊な被覆が備えられ、その際特に種々の様々なシリケートコーティングおよびアクリレートコーティングが推奨された。しかしながら、この方法の欠点は、この事後のコーティングが比較的手間がかかりかつ不経済であるという事実である。
【0006】
この理由から、建築材料の硬化前に、ブルーミングの発生を妨げるかまたは抑制する、適した添加剤を建材材料に添加することが試みられた。
【0007】
即ち、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3229564号明細書の記載からは、着色されたコンクリートブロックの製造の際に、付加的に白亜を、例えば水性の白亜スラリーの形で使用することは、公知である。この表面での炭酸カルシウムの形成傾向(Bildungsgefaelle)は、凝固プロセスの開始時に既に過剰の炭酸カルシウムが提供されることにより遅延される。
【0008】
最後に、欧州特許出願公開第92242号明細書A1の記載によれば、ブルーミングの抑制のためにコンクリートに界面活性ポリマーを添加することが提案されている。この界面活性ポリマーは、コンクリートの硬化の際にその界面活性を非可逆的に付与し、かつこの際水不溶性生成物へと変換される。
【0009】
実際には、この種の疎水化剤は硬化していない建材材料に対しては成果を収めることができず、それというのもこの薬剤は、相違する天候条件下では確実な作用を有しないからである。
【0010】
更に、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19905488号明細書A1には、水溶性ポリマーおよび微粒状の鉱物質担持材料を含有する、ポリエーテルカルボキシレートを基礎とする粉末状ポリマー組成物が開示されている。
【0011】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19808314号明細書A1には、アルミン酸塩セメント含有結合剤懸濁液のためのフラックス剤としてのグラフトポリマーの使用が開示されている。
【0012】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19707970号明細書A1には、ポリカルボン酸官能性ポリオルガノシロキサンおよびなめし革を処理するための該化合物の使用が開示されている。
【0013】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第4326772号明細書A1には、粗製油性エマルジョンのための脱乳化剤として使用するためのオレフィン系不飽和カルボン酸とポリエーテロールとからの反応生成物が開示されている。
【0014】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第4116111号明細書A1には、流動能を有する固体分散液、殊にオフセット印刷のための着色剤調製物の製造に適している窒素含有の界面活性剤が開示されている。
【0015】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3136213号明細書A1には、アルケニルコハク酸と酸化エチレン−酸化プロピレン−ブロックポリマーとからのビスエステルおよび油性/水性エマルジョンのための脱乳化剤として、耐蝕剤としておよび着色剤のための分散剤としての該化合物の使用が開示されている。
【0016】
ドイツ連邦共和国特許第69530032号明細書T2には、ポリアルキレングリコール誘導体を使用して水中油型エマルジョンを脱乳化するための方法が開示されている。
【0017】
英国特許第768790号明細書には、オルガノシロキサンおよび滑剤、耐蝕剤および乳化剤としての該化合物の使用が開示されている。
【0018】
欧州特許出願公開第0281838号明細書A2には、ポリオキシプロピレンジアミンのスルホスクシンアミド酸および乳化剤としての該化合物の使用が開示されている。
【0019】
欧州特許第0291073号明細書B1には、ポリオキシアルキレン誘導体と無水マレイン酸とからなるコポリマー、該コポリマーの加水分解生成物または該加水分解生成物の塩を含むセメント添加剤が開示されている。
【0020】
Pol. Bull.,1994、第32巻、第173〜179頁には、環状無水物と末端ヒドロキシプロピル基またはアミノアルキル基を有するポリジメチルシロキサンとを反応させることによって得られるポリジメチルシロキサンが開示されている。
【0021】
Chinese Journal of Synthetic Chemistry,2005,第13巻,No.2,第190〜192頁には、変性されたTween−20の合成および乳化が開示されている。
【0022】
従って、本発明は、公知技術水準の前述した欠点を示さず、セメント建築材料の風解を有効にかつ確実に抑制する、硬化したセメント建築材料の表面上でのブルーミングの抑制のためのおよび/または前記材料の疎水化のための剤を提供するという課題に基づく。この課題は、本発明によれば、請求項1記載のカルボン酸誘導体の使用、殊に請求項13記載のカルボン酸誘導体によって解決された。請求項13記載のカルボン酸誘導体の製造法は、請求項22に定義されている。更に、本発明の好ましい実施態様は、従属請求項中に記載されている。
【0023】
この場合には、意外にも、このカルボン酸誘導体が、セメント建築材料のブルーミングの抑制および/またはセメント建築材料の疎水化のための剤として卓越して好適であることが判明した。更に、このセメント状生成物は、本発明による添加剤により明らかに少ない水を吸収し、これにより、鉄筋のフロスト被害および急速な錆び付きは明らかに減少させることができる。
【0024】
本発明によるカルボン酸誘導体は、不飽和ジカルボン酸無水物(A)を疎水性反応性成分(B)と反応させることによって得ることができ、この場合この疎水性反応性成分(B)は、カルボン酸無水物と比較して反応性の少なくとも1個の基および200〜50000ダルトンの平均分子量を有する。
【0025】
不飽和ジカルボン酸無水物としては、特に無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水ジメチルマレイン酸、無水メチルコハク酸ならびに無水2,2−ジメチルコハク酸が使用される。
【0026】
疎水性反応性成分(B)としては、(B)(i)、(B)(ii)、(B)(iii)、(B)(iv)、(B)(v)および(B)(vi)の群から選択される6つの化合物種がこれに該当する。
【0027】
反応性成分(B)(i)は、一般式(I)
【化1】

〔式中、Xは、OH、NH2、SH、NHR1であり、
1は、H、CH3、C35であり、
mは、1〜50、特に10〜30であり、ならびに
nは、1〜6である〕で示されるポリジメチルシロキサンからなる。
【0028】
反応性成分(B)(ii)としては、一般式(IIa)
【化2】

で示されるポリプロピレングリコールおよび/または一般式(IIb)
【化3】

で示されるグリセリン−エーテルを基礎とするポリプロピレングリコールおよび/または一般式(IIc)
【化4】

で示されるペンタエリトリット−エーテルを基礎とするポリプロピレングリコールを挙げることができ、上記式中、a、b、cおよびdは、互いに独立に1〜150を表わす。
【0029】
反応性成分(B)(iii)は、Jeffamine(登録商標)T−403、T−5000ならびにXTJ−509として商業的に入手できる、式(IIIa)
【化5】

で示されるポリオキシアルキレンアミンまたは
Jeffamine(登録商標)D−230、D−400、D−2000ならびにD−4000として市場で入手できる、式(IIIb)
【化6】

で示されるポリオキシアルキレンジアミン、または
Jeffamine(登録商標)T−403、T−5000ならびにXTJ−509として商業的に入手できる、式(IIIc)
【化7】

で示されるポリオキシアルキレントリアミンを表わす。
【0030】
一般式(IIIa)または(IIIb)中で、R2は、H、CH3を表わし、R3は、H、CH3、C25を表わし、ならびにx、yおよびzは、互いに独立に1〜100を表わす。
【0031】
反応性成分(B)(iv)としては、一般式(IV)
【化8】

〔式中、wは、2〜12を表わし、ならびにrおよびsは、互いに独立に1〜150を表わし、R2は、上記の意味を有する〕で示されるアルキレンジアミンを基礎とするポリアルキレングリコールが使用される。
【0032】
この場合、アルキレンジアミンとしては、有利に1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,10−ジアミノデカンならびに1,12−ジアミノドデカンが使用される。
【0033】
反応性成分(B)(v)は、少なくとも1つのヒドロキシ脂肪酸から形成されているトリグリセリドからなる。好ましい脂肪酸としては、リシノール酸、セレブロン酸、ネモチン酸(Nemotinsaeure)または12−ヒドロキシステアリン酸が使用される。場合によっては、ヒドロキシ脂肪酸は、酸化エチレン誘導体1〜100モルでエーテル化されていてよい。
【0034】
最後に、反応性成分(B)(vi)は、ジグリシジル成分、トリグリシジル成分またはテトラグリシジル成分(C)(i)を、C8〜C28−脂肪酸、C8〜C28−アルコールまたはC8〜C28−第二級アミンからなる場合によっては不飽和の反応性成分(C)(ii)と反応させることによって製造されたエポキシ誘導体であることができる。
【0035】
特に有利には、シクロヘキサン−ジメタノール−ジグリシジルエーテル、グリセリン−トリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール−ジグリシジルエーテル、ペンタエリトリット−テトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオール−ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール−ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール−ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル、4,4′−メチレンビス−(N,N−ジグリシジルアニリン)、テトラフェニロールエタン−グリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、ジエチレングリコール−ジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルからなる群またはこれらの混合物から選択されたグリシジル化合物(C)(i)が使用される。
【0036】
反応性成分(C)(ii)は、C8〜C28−脂肪酸、C8〜C28−アルコールまたはC8〜C28−第二級アミンからなり、この場合この反応性成分は、飽和または不飽和の基を有することができる。
【0037】
脂肪酸の群からは、トール油脂肪酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ヒマワリ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸(C8〜C18)、ヤシ油脂肪酸(C12〜C18)、ダイズ油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ドデカン酸、オレイン酸、リノール酸、パーム核油脂肪酸、パーム油脂肪酸、リノレン酸および/またはアラキドン酸が有利であると見なすことができる。C8〜C28−アルコールとは、特に1−エイコサノール、1−オクタデカノール、1−ヘキサデカノール、1−テトラデカノール、1−ドデカノール、1−デカノールならびに1−オクタノールが言及される。8〜28個のC原子を有する第二級アミンとは、殊に2−エチルヘキシルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ビス−(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチルオクタデシルアミンならびにジデシルアミンの群からのアルキルアミンが使用される。
【0038】
反応性成分(B)(vi)またはその製造は、公知技術水準に相応して公知である(例えば、ドイツ連邦共和国特許出願第10 2005 022852号参照)。
【0039】
不飽和ジカルボン酸無水物(A)および疎水性反応性成分(B)に関連してモル比は、幅広い範囲内で変動可能であるが、しかし、不飽和ジカルボン酸無水物(A)と反応性成分(B)とのモル比は、成分(B)の反応性基1モル当り(A)0.1〜1.0モルであることは、特に好ましいことが判明した。
【0040】
本発明によるカルボン酸誘導体の製造は、比較的問題にはならない。好ましい実施態様によれば、不飽和ジカルボン酸無水物(A)と反応性成分(B)とは、溶剤なしに20〜150℃の温度範囲内で触媒の存在で反応される。この場合、触媒としては、有利に有機酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えば酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウムが使用される。
【0041】
本発明により使用されるカルボン酸誘導体は、卓越して、セメント建築材料の材料疎水化のためおよび/または硬化したセメント建築材料の表面でのブルーミングの抑制のために適している。この場合、カルボン酸誘導体は、硬化していないセメント建築材料に、セメント含分に対して0.001〜5質量%の量で添加される。主要結合剤としてセメントを含有しかつ副成分として場合によってはなお石灰、石膏または硬石膏を含有する全てのコンクリート系およびモルタル系は、本発明に相応するセメント建築材料と見なすことができる。
【0042】
この場合、本発明により使用されるカルボン酸誘導体は、調合されたセメント建築材料に直接に添加される。しかし、本発明の範囲内で、本発明により使用される添加剤を、混合水(Anmachwasser)または残留水に、外部乳化剤(例えばエトキシル化した化合物、例えば脂肪酸エトキシレート、エトキシル化ヒマシ油またはエトキシル化脂肪アミン)を用いて乳化された形で添加することも可能である。
【0043】
本発明により提案されるカルボン酸誘導体は、硬化したセメント建築材料の表面でのブルーミングの阻止または抑制のためのおよび/または相応するセメント系の疎水化のための剤として卓越して好適である。
【0044】
更に、セメント状生成物は、硬化した状態で本発明により提案された添加剤によって明らかによりいっそう少ない水を吸収し、それによって、鉄筋のフロスト被害および急速な錆び付きは、明らかに減少される。
【0045】
次の実施例は、本発明を詳細に説明する。
【0046】
実施例
例1
ポリプロピレングリコール2000 100g(0.0050モル)(Aldrich社)を室温で反応容器中に装入し、無水マレイン酸11.03g(0.1125モル)(Aldrich社)を添加し、引続き酢酸ナトリウム0.16g(0.002モル)(Aldrich社)を添加する。この反応室を窒素で洗浄し、この反応混合物を80℃に加熱する。この温度で5時間維持し、引続き冷却する。淡いオレンジ色の若干粘稠な液体が得られる。
【0047】
例1A
例1からの反応生成物100gを水300g中に乳化し、10%のNaOH溶液で中和する。
明色の若干粘稠な25%の水溶液が得られる。
【0048】
例2
アミノアルキルポリジメチルシロキサン175g(0.203モル)(商品名:Tegomer A-Si 2122, Tego社)を室温で反応容器中に装入し、無水マレイン酸43.1g(0.44モル)(Aldrich社)を添加し、引続き酢酸ナトリウム0.67g(0.008モル)(Aldrich社)を添加する。この反応室を窒素で洗浄し、この反応混合物を80℃に加熱する。この温度で5時間維持し、引続き冷却する。明褐色のほぼ粘稠な液体が得られる。
【0049】
実施例2A
例2からの反応生成物100gを水400g中に乳化し、10%のNaOH溶液で中和する。
明褐色の若干粘稠な20%の水溶液が得られる。
【0050】
例3
ヒドロキシポリエステル320g(0.517モル)(商品名:Sovermol 818, Cognis社)を室温で反応容器中に装入し、無水コハク酸142.48g(1.453モル)(Aldrich社)を添加し、引続き酢酸ナトリウム1.7g(0.021モル)(Aldrich社)を添加する。この反応室を窒素で洗浄し、この反応混合物を80℃に加熱する。この温度で5時間維持し、引続き冷却する。褐色の粘稠な液体が得られる。
【0051】
例3A
例3からの反応生成物100gを水400g中に乳化し、10%のNaOH溶液で中和する。
明褐色の若干粘稠な20%の水溶液が得られる。
【0052】
例4
ヒマシ油315g(0.309モル)(Hanf & Nelles社)を室温で反応容器中に装入し、無水マレイン酸98.12g(1.001モル)(Aldrich社)を添加し、引続き酢酸ナトリウム1.01g(0.012モル)(Aldrich社)を添加する。この反応室を窒素で洗浄し、この反応混合物を80℃に加熱する。この温度で5時間維持し、引続き冷却する。褐色の粘稠な液体が得られる。
【0053】
例5
エトキシル化されたヒマシ油280g(0.156モル)(商品名:Tegotens R20, Tego社)を室温で反応容器中に装入し、無水マレイン酸42.01g(0.428モル)(Aldrich社)を添加し、引続き酢酸ナトリウム0.51g(0.006モル)(Aldrich社)を添加する。この反応室を窒素で洗浄し、この反応混合物を80℃に加熱する。この温度で5時間維持し、引続き冷却する。オレンジ色の粘稠な液体が得られる。
【0054】
例5A
例5からの反応生成物100gを水400g中に乳化し、10%のNaOH溶液で中和する。
明るいオレンジ色の若干粘稠な20%の水溶液が得られる。
【0055】
例6
トール油脂肪酸(Hanf & Nelles社)143.45g(0.547モル)を室温で反応容器中に装入し、ビスフェノールAジグリシジルエーテル96.3g(0.264モル)(商品名:Araldit GY 240;Huntsman社)を添加し、引続きテトラブチルアンモニウムブロミド0.25g(0.78モル)(Aldrich社)を添加した。この反応室を窒素で洗浄し、この反応混合物を150℃に加熱した。この温度を酸価2未満が達成されるまで8時間維持する。引続き、室温に冷却し、無水コハク酸57.49g(0.574モル)(Aldrich社)ならびに酢酸ナトリウム0.87g(0.010モル)(Aldrich社)を添加する。この反応室を再び窒素で洗浄し、この反応混合物を80℃に加熱する。この温度で5時間維持し、引続き冷却する。暗赤色の極めて粘稠な液体が得られる。
【0056】
例6A
例6からの反応生成物100gを水400g中に乳化し、10%のNaOH溶液で中和する。
明るい赤色の若干粘稠な20%の水溶液が得られる。
【0057】
例7
ヒドロキシアルキルポリジメチルシロキサン280g(0.112モル)(商品名:Tegomer A-Si 2311, Tego社)を室温で反応容器中に装入し、無水マレイン酸23.78g(0.243モル)(Aldrich社)を添加し、引続き酢酸ナトリウム0.25g(0.003モル)(Aldrich社)を添加する。この反応室を窒素で洗浄し、この反応混合物を80℃に加熱する。この温度で5時間維持し、引続き冷却する。明褐色のほぼ粘稠な液体が得られる。
【0058】
例7A
例7からの反応生成物100gを水400g中に乳化し、10%のKOH溶液で中和する。
乳白色がかった褐色の若干粘稠な20%の水溶液が得られる。
【0059】
例8
ポリオキシプロピレンアミン300g(0.150モル)(商品名:Jeffamine D-2000, Huntsman社)を室温で反応容器中に装入し、無水コハク酸32.42g(0.324モル)(Aldrich社)を添加し、引続き酢酸ナトリウム0.33g(0.004モル)(Aldrich社)を添加する。この反応室を窒素で洗浄し、この反応混合物を80℃に加熱する。この温度で5時間維持し、引続き冷却する。褐色の粘稠な液体が得られる。
【0060】
例8A
例8からの反応生成物100gを水400g中に乳化し、10%のNaOH溶液で中和する。
明褐色の若干粘稠な20%の水溶液が得られる。
【0061】
例9
エチレンジアミン−テトラキス(ポリエチレングリコール−b−ポリプロピレングリコール)−テトロール360g(0.05モル)(Aldrich社)を室温で反応容器中に装入し、無水イタコン酸24.66g(0.22モル)(Aldrich社)を添加し、引続き酢酸ナトリウム0.25g(0.003モル)(Aldrich社)を添加する。この反応室を窒素で洗浄し、この反応混合物を80℃に加熱する。この温度で5時間維持し、引続き冷却する。明褐色の粘稠な液体が得られる。
【0062】
例9A
例9からの反応生成物100gを水400g中に乳化し、10%のNaOH溶液で中和する。
明褐色の若干粘稠な20%の水溶液が得られる。
【0063】
製造された生成物の試験
この試験体を次の方法により製造し、この試験体のブルーミング挙動について試験した:規定に応じて、強制ミキサー中で、次の処方により混合物(11kg)を製造し、その際まず全ての凝集物を10秒間乾式混合する。引続き、所定の水を添加し、2分間混合し、次に残分の水を添加する(混合時間2分間)。前記添加剤をこの残分の水に添加する:
380kg/m3 セメント(Bernburg CEM I 42,5 R; 380kg/m3
1104kg/m3 砂0/2
296kg/m3 砂利(Kies)2/5
296kg/m3 砂利(Kies)5/8
137kg/m3
w/z:0.36。
【0064】
この添加剤を混合物中のセメントに対して異なる計量供給量で使用し、この残分の水またはコンクリート混合物に添加する。この添加剤の計量供給量の記載は、常に、固形物「添加剤」対固形物「セメント」に関する。この添加剤の水含有量は、この混合水の量から取られた。試験体の製造のために、それぞれ正確に新しいコンクリート混合物1300gを円形の型枠内に供給し、30kgの載置質量で振動テーブル上で90秒間圧縮する。引続き、新しい試験体を取り外し(entschalten)、2日間空調室(20℃、65%の相対湿度)内で硬化のために貯蔵する。次に、この試験体の明度(Helligkeit)を色光分光計(Farbphotospektrometer、Color-Guide sphere spin, Byk Gardner)を用いて測定し(L1)、その際この試験体に9つの測定点を有するステンシルを配置し、これによって事後に第2の測定の際に同じ点で測定する。この9つの点から、L1の中間値が生じる。引続き、この石材を約2秒間蒸留水中に浸漬し、かつ湿式でプラスチック袋中に気密に包装する。この袋を空調室中で10日間貯蔵する。引続き、この石を取り出し、2日間乾燥のために空調室中で貯蔵する。この試験体の明度を2回、ステンシルおよび測色分光計を用いて測定する(L2)。各混合物を6個の試験体に作り上げる(かつここから平均値が形成される)。この試験体表面の色彩的な変化(ΔL)(白色度の増加)は、次式からもたらされる;ΔL=L2−L1。
【0065】
試験体の明度化(ΔL)と共にブルーミングにより、この表面の均質性をも評価し、ならびにこの試験体の水吸収率も測定した。EN ISO 15148に依拠した水吸収率(WA)の測定:
乾燥されかつ硬化された試験体を秤量し(W1)、下側が点状の支えで載置されかつ容器底面と接触しないように水浴中に置く。水レベルはこの下側の最高位置の約5mm上方。15分後に、この水浴から試験体を取り出し、2回秤量する(W2)。この試験体を予め、湿った、絞られたスポンジでもって水分を拭き取った。この水吸収率は、次式から示される:WA=W2−W1。
【0066】
【表1】

【0067】
この括弧中の値は、ゼロ混合物(Nullmischung)の結果である(添加剤なし)。このパーセント値は、この添加剤がそのつど明度または水吸収を、ゼロ混合物(添加剤なし)と比較してどれだけ減少されたかを示す。
【0068】
この計量供給量は、混合物中のセメントに対する添加剤の固形含分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント建築材料の材料疎水化のための、不飽和ジカルボン酸無水物(A)を、
(B)(i)一般式(I)
【化1】

〔式中、Xは、OH、NH2、SH、NHR1を表わし、R1は、H、CH3、C35を表わし、mは、1〜50を表わし、およびnは、1〜6を表わす〕で示されるポリジメチルシロキサン
または
(B)(ii)一般式(IIa)および/または(IIb)および/または(IIc)
【化2】

〔式中、a、b、cおよびdは、互いに独立に1〜150を表わす〕で示されるポリプロピレングリコール
または
(B)(iii)一般式(IIIa)および/または(IIIb)および/または(IIIc)
【化3】

〔式中、R2は、H、CH3を表わし、R3は、H、CH3、C25を表わし、ならびにx、yおよびzは、互いに独立に1〜100を表わす〕で示されるポリオキシアルキレンアミン
または
(B)(iv)一般式(IV)
【化4】

〔式中、wは、2〜12を表わし、ならびにrおよびsは、互いに独立に1〜150を表わし、R2は、上記の意味を有する〕で示されるアルキレンジアミンを基礎とするポリアルキレングリコール
または
(B)(v)少なくとも1つのヒドロキシ脂肪酸を基礎とするトリグリセリド、この場合このヒドロキシ脂肪酸は、酸化エチレン誘導体1〜100モルでエーテル化されていてよく、
または
(B)(vi)ジグリシジル成分、トリグリシジル成分またはテトラグリシジル成分(C)(i)を、C8〜C28−脂肪酸、C8〜C28−アルコールまたはC8〜C28−第2アミンからなる場合によっては不飽和の反応成分(C)(ii)と反応させることによって製造されたエポキシ誘導体から選択された、カルボン酸無水物と比較して反応性の少なくとも1個の基および200〜50000ダルトンの平均分子量を有する疎水性反応成分(B)と反応させることによって得ることができるカルボン酸誘導体の使用。
【請求項2】
不飽和ジカルボン酸無水物として無水マレイン酸または無水イタコン酸を使用する、請求項1記載の使用。
【請求項3】
反応性成分(B)が500〜10000ダルトンの平均分子量を有する、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
式(I)中のmは、10〜30である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
反応性成分(B)(v)がリシノール酸、セレブロン酸、ネモチン酸または12−ヒドロキシステアリン酸の群から選択されたヒドロキシ脂肪酸を基礎とするトリグリセリド誘導体からなる、請求項1から4までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
ジグリシジル化合物、トリグリシジル化合物またはテトラグリシジル化合物(C)(i)としてシクロヘキサン−ジメタノール−ジグリシジルエーテル、グリセリン−トリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール−ジグリシジルエーテル、ペンタエリトリット−テトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオール−ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール−ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール−ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル、4,4′−メチレンビス−(N,N−ジグリシジルアニリン)、テトラフェニロールエタン−グリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、ジエチレングリコール−ジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルからなる群またはこれらの混合物から選択されたグリシジル化合物を使用する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
反応成分(C)(ii)としてトール油脂肪酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ヒマワリ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸(C8〜C18)、ヤシ油脂肪酸(C12〜C18)、ダイズ油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ドデカン酸、オレイン酸、リノール酸、パーム核油脂肪酸、パーム油脂肪酸、リノレン酸、アラキドン酸の群からの脂肪酸を使用する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
反応性成分(C)(ii)として1−エイコサノール、1−オクタデカノール、1−ヘキサデカノール、1−テトラデカノール、1−ドデカノール、1−デカノール、1−オクタノールの群からのアルカノールを使用する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
反応性成分(C)(ii)として2−エチルヘキシルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ビス−(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミンの群からのアルキルアミンを使用する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
不飽和ジカルボン酸無水物(A)と反応性成分(B)とのモル比が成分(B)の反応性基1モル当たり0.1〜1.0モルである、請求項1から9までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
カルボン酸誘導体を硬化したセメント建築材料の表面上でのブルーミングの抑制のために使用する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
カルボン酸誘導体を、硬化していないセメント建材材料に、セメント含分に対して0.001〜5質量%の量で添加する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
不飽和ジカルボン酸無水物(A)を、
(B)(ii)一般式(IIb)および/または(IIc)
【化5】

〔式中、a、b、cおよびdは、互いに独立に1〜150を表わす〕で示されるポリプロピレングリコール
または
(B)(iii)一般式(IIIa)および/または(IIIc)
【化6】

〔式中、R2は、H、CH3を表わし、R3は、H、CH3、C25を表わし、ならびにx、yおよびzは、互いに独立に1〜100を表わす〕で示されるポリオキシアルキレンアミン
または
(B)(v)少なくとも1つのヒドロキシ脂肪酸を基礎とするトリグリセリド、この場合このヒドロキシ脂肪酸は、酸化エチレン誘導体1〜100モルでエーテル化されていてよく、
または
(B)(vi)ジグリシジル成分、トリグリシジル成分またはテトラグリシジル成分(C)(i)を、C8〜C28−脂肪酸、C8〜C28−アルコールまたはC8〜C28−第2アミンからなる場合によっては不飽和の反応成分(C)(ii)と反応させることによって製造されたエポキシ誘導体から選択された、カルボン酸無水物と比較して反応性の少なくとも1個の基および200〜50000ダルトンの平均分子量を有する疎水性反応成分(B)と反応させることによって得ることができるカルボン酸誘導体。
【請求項14】
不飽和ジカルボン酸無水物として無水マレイン酸、無水コハク酸または無水イタコン酸を使用する、請求項13記載のカルボン酸誘導体。
【請求項15】
反応性成分(B)が500〜10000ダルトンの平均分子量を有する、請求項13または14記載のカルボン酸誘導体。
【請求項16】
反応性成分(B)(v)がリシノール酸、セレブロン酸、ネモチン酸または12−ヒドロキシステアリン酸の群から選択されたヒドロキシ脂肪酸を基礎とするトリグリセリド誘導体からなる、請求項13または15記載のカルボン酸誘導体。
【請求項17】
ジグリシジル化合物、トリグリシジル化合物またはテトラグリシジル化合物(C)(i)としてシクロヘキサン−ジメタノール−ジグリシジルエーテル、グリセリン−トリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール−ジグリシジルエーテル、ペンタエリトリット−テトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオール−ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール−ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール−ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル、4,4′−メチレンビス−(N,N−ジグリシジルアニリン)、テトラフェニロールエタン−グリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、ジエチレングリコール−ジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルからなる群またはこれらの混合物から選択されたグリシジル化合物を使用する、請求項13または16記載のカルボン酸誘導体。
【請求項18】
反応成分(C)(ii)としてトール油脂肪酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ヒマワリ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸(C8〜C18)、ヤシ油脂肪酸(C12〜C18)、ダイズ油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ドデカン酸、オレイン酸、リノール酸、パーム核油脂肪酸、パーム油脂肪酸、リノレン酸、アラキドン酸の群からの脂肪酸を使用する、請求項13または17記載のカルボン酸誘導体。
【請求項19】
反応性成分(C)(ii)として1−エイコサノール、1−オクタデカノール、1−ヘキサデカノール、1−テトラデカノール、1−ドデカノール、1−デカノール、1−オクタノールの群からのアルカノールを使用する、請求項13または18記載のカルボン酸誘導体。
【請求項20】
反応性成分(C)(ii)として2−エチルヘキシルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ビス−(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミンの群からのアルキルアミンを使用する、請求項13または19記載のカルボン酸誘導体。
【請求項21】
不飽和ジカルボン酸無水物(A)と反応性成分(B)とのモル比が成分(B)の反応性基1モル当たり0.1〜1.0モルである、請求項13または20記載のカルボン酸誘導体。
【請求項22】
請求項13から21までのいずれか1項に記載のカルボン酸誘導体の製造法において、不飽和ジカルボン酸無水物(A)を反応性成分(B)と、溶剤なしに20〜150℃の温度範囲内で触媒の存在で反応させることを特徴とする、請求項13から21までのいずれか1項に記載のカルボン酸誘導体の製造法。
【請求項23】
触媒として有機酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えば酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウムを使用する、請求項22記載の方法。

【公表番号】特表2009−516009(P2009−516009A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536925(P2008−536925)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【国際出願番号】PCT/DE2006/001885
【国際公開番号】WO2007/048396
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】