説明

カーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装材取付け構造

【課題】この発明は、カーテンエアバッグ装置のカーテン状部材展開時に内装材にかかる負荷を軽減しつつ、カーテン状部材を適切に展開させることを可能にするカーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装材取付け構造を提供することを目的とする。
【解決手段】ピラートリム8を車体に取付けるとともに、カーテン状部材21の展開時に、ピラートリム8を車体から離間可能とする係合部30aを備え、ピラートリム8の下縁は、第1開口部1の上縁近傍部位に対して近接しており、係合部30aは、ピラートリム8側に設けられるトリム係合部材31と、車体のインナパネル41と係合する車体係合部材32とからなり、トリム係合部材31と車体係合部材32とは、カーテン状部材21の展開時に互いの係合が外れるように係合し、ピラートリム8は、上記係合が外れた時、その下縁に向かって移動しながら車体から離間するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装材取付け構造に関し、特に、収納状態にあるカーテン状部材と車体側部の開口の上縁近傍部位とを車室内側から覆う内装材と、カーテン状部材の展開時に、内装材を車体から離間可能とする係合部とを備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
車体側部開口(ウインド部)の上縁近傍にカーテン状部材を収納しておき、車両衝突検出時や衝突予知時等の所定条件成立時に上記カーテン状部材にガスを供給することにより、これを膨張展開させて上記開口を瞬時に覆うようにしたカーテンエアバッグ装置は一般に知られている。
【0003】
ここで、カーテン状部材は、一般的に、係合部材を介して車体に取付けられた内装材としてのトリム部材により車室内側から覆われている。所定条件成立時には、カーテン状部材が膨張する際の押圧力によって係合部材の係合が外れるようになっており、該係合が外れると、トリム部材は車体から離間し、カーテン状部材の展開を許容するようになっている。
【0004】
ところで、近年では、トリム部材を複数の係合部材を介して車体パネルに取付けるように構成し、両係合部材同士の係合を外すことによってカーテン状部材の展開を許容するようにしたものが提案されている(特許文献1、2参照)。
【0005】
このような構造をなすものとしては、例えば図10に示すようなものがあり、図10では、カーテンエアバッグ装置120のカーテン状部材121やドアウインドガラス119(開口部100)の上縁近傍部位を車室側から覆う内装材としてのトリム部材108が2つの係合部材151、152からなる係合部150を介して車体パネル140に取付けられている。
【0006】
具体的には、トリム部材108に第1係合部材151が取付けられる一方、車体パネル140には、円筒状の第2係合部材152が取付けられており、第1、第2の両係合部材151、152が係合することで、トリム部材108が車体に取付けられている。なお、図中において、矢印(IN)は車両内方、矢印(OUT)は車両外方を示す。
【0007】
ここで、図10に示す従来構造では、第1係合部材151の長手方向が車幅方向を略指向するような状態で第2係合部材152の挿通孔152aに挿通されており、途中に形成された係合爪151aが第2係合部材152の嵌合孔152bに嵌合することで係合部材151、152が係合状態にある。
【0008】
そして、係合爪151aは、第1係合部材151の幅方向に進退可能とされており、カーテン状部材121の展開時、その膨張に伴ってトリム部材108が押圧されると、第1係合部151が車幅方向内側に引っ張られることにより、係合爪151aが第2係合部材152の嵌合孔152bの縁部に押圧されて内側に退避し、その結果上記係合が外れるようになっている。この時、第1係合部材151は、第2係合部材152の挿通孔151aに沿って摺動可能な状態となる。
【0009】
そして、カーテン状部材121がさらに膨張すると、第2係合部材152は車幅方向内側に移動し、トリム部材108の下縁とドアウインドガラス119の上縁近傍部位との間に隙間を形成する。カーテン状部材121は、この隙間から図中二点鎖線で示すように下方の車室内に展開することになる。
【特許文献1】特開2002−316607号公報
【特許文献2】特開2008−105583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図10に示す従来構造では、トリム部材108が移動する方向とカーテン状部材121が展開する方向とが異なるために、カーテン状部材121の展開時にはトリム部材108に曲げ応力が生じ、これに大きな負荷がかかるという問題があった。特に、トリム部材108が樹脂製の場合、低温時には熱変形しにくくなることによりこれが破断する虞がある。
【0011】
この発明は、カーテンエアバッグ装置のカーテン状部材展開時に内装材にかかる負荷を軽減しつつ、カーテン状部材を適切に展開させることを可能にする車両の内装材取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明のカーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装材取付け構造は、車両側部に開口が形成され、該開口の上縁近傍に支持されるカーテン状部材を有し、該カーテン状部材の収納状態から、車両の所定条件成立時にインフレータからガスを供給して上記カーテン状部材に形成した膨張部を膨張させることで、上記開口を覆うように展開するカーテンエアバッグ装置と、上記収納状態にあるカーテン状部材と上記開口の上縁近傍部位とを車室内側から覆う内装材と、上記内装材を車体に取付けるとともに、上記カーテン状部材の展開時に、上記内装材を車体から離間可能とする係合部とを備えた車両の内装材取付け構造であって、上記内装材の下縁は、上記開口の上縁近傍部位に対して近接しており、上記係合部は、上記内装材側に設けられる内装係合部材と、車体と係合する車体係合部材とからなり、上記内装係合部材と上記車体係合部材とは、上記カーテン状部材の展開時に互いの係合が外れるように係合し、上記内装材は、上記係合が外れた時、その下縁に向かって移動しながら車体から離間するように構成されるものである。
【0013】
この構成によれば、カーテン状部材の展開時において、内装材をその下縁に向かって移動させるようにしたことで、内装材の移動方向とカーテン状部材の展開方向とを略同じ方向とすることができる。このため、カーテン状部材の展開時、内装材における曲げ応力の発生を抑制し、その負荷を軽減することができる。
そして、カーテン状部材を係合部の下方に配置することで、内装材が下方に移動した時には、カーテン状部材をドアウインドガラスに沿って適切に展開させることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記車体係合部材が、上記開口の上縁近傍部位に係合される車体側係合部と、上記内装係合部材に係合される内装側係合部とからなり、該内装側係合部には、上記内装材の下縁側を略指向して開口する凹部が形成されており、該凹部に上記内装係合部材が嵌合して係合するように構成されるものである。
【0015】
この構成によれば、車体係合部材の凹部が内装材の下縁を略指向するように形成されているため、係合部の係合が外れた時、凹部に沿って内装係合部材を下方に案内することができ、その結果内装材を確実に下方に移動させることができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記車体係合部材が、上記開口の上縁近傍部位に係合される車体側係合部と、上記内装係合部材に係合される内装側係合部とからなり、該内装側係合部には、上下方向を略指向して穿設された挿通孔が形成されており、該挿通孔に上記内装係合部材が挿通された状態で係合するように構成されるものである。
【0017】
この構成によれば、車体係合部材の挿通孔が上下方向を略指向するように穿設されているため、係合部の係合が外れた時、挿通孔に沿って内装係合部材を下方に案内することができ、その結果内装材を確実に下方に移動させることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記係合部の上記車体係合部材と上記内装材とが長尺状の連結部材によって連結されているものである。
【0019】
この構成によれば、内装係合部材が連結部材により車体係合部材に連結されることで、カーテン状部材の展開時に内装材が乗員の上部に落下することを防止できる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、上記係合部が、上記内装材を車体に取付ける複数の係合部のうち、最も車両上方に位置するものであるものである。
【0021】
この構成によれば、乗員に向かって内装材が落下することをより効果的に防止できる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、上記内装係合部材が、上記内装材の一部を構成しているものである。
【0023】
この構成によれば、部品点数の削減とともに、組付性の向上を図ることができる。
【0024】
この発明の一実施態様においては、上記内装係合部材が、車幅方向において上記カーテン状部材から離間した位置に設けられているものである。
【0025】
この構成によれば、内装係合部材の下部が、カーテン状部材の膨張に伴って上方に押圧されることを防止でき、カーテン状部材の膨張によって係合部の係合外れが阻害されることを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、カーテン状部材の展開時において、内装材をその下縁に向かって移動させるようにしたことで、内装材の移動方向とカーテン状部材の展開方向とを略同じ方向とすることができる。このため、カーテン状部材の展開時、内装材における曲げ応力の発生を抑制し、その負荷を軽減することができる。
そして、カーテン状部材を係合部の下方に配置することで、内装材が下方に移動した時には、カーテン状部材をドアウインドガラスに沿って適切に展開させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図5に示す第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るカーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装構造を車室内側から見た側面図である。図中において矢印(F)は車両前方、矢印(R)は車両後方を示す。
【0028】
車両Vは、例えば、ワゴンやミニバン等であり、車室には、図中一点鎖線で示すように前後3列の座席S1〜S3が配設されている。ここで、車両Vにおいて、図1に示す部位1は運転席S1の横のドアDに形成された第1開口部、部位2は後部の前列席S2の横に形成された第2開口部、部位3は後部の後列席S3の横に形成された第3開口部である。
【0029】
また、図中に示す部位4は車両Vの車体前端側に配置されたAピラー(フロントピラー)、部位5は、ドアDの後側のBピラー(前部センタピラー)、部位6は第2開口部2と第3開口部3との間に設けられたCピラー(後部センタピラー)、部位7は第3開口部3の後側のDピラー(クォータピラー)である。
【0030】
ここで、上述した各ピラー4〜7においては、それぞれの車室内側を覆うべくピラートリム8〜11が取付けられている。このピラートリム8〜11は、一般的に樹脂製とされ、例えば、ポリプロピレン等、熱変形可能な合成樹脂で構成されている。
【0031】
本実施形態では、車両Vの3つの開口部1〜3が前後に並設された部分を1つの側部開口部と捉えている。すなわち、この側部開口部は、車体のルーフ側縁部によって構成される第1辺(上辺)と、Aピラー4で構成される第2辺(前辺)と、Dピラー7で構成される第3辺(後辺)と、ドアD及び車体のベルトラインによって構成される第4辺とによって略四角形状に、より具体的には第1辺が第4辺よりも短い略台形状になっている。
【0032】
また、車両Vには、上記側部開口部に対応してこれを覆うことができるようにカーテンエアバッグ装置20が備えられている。カーテンエアバッグ装置20は、主に、ガスが供給されて図中二点鎖線で示すように膨張、展開するカーテン状部材(カーテン本体)21と、カーテン状部材21にガスを供給するガス供給装置としてのインフレータ22とを備えている。
【0033】
カーテン状部材21は蛇腹状またはロール状に畳まれており、側部開口部の第1辺から第2辺上部及び第3辺上部に跨るように設けられたケーシング23に支持されるような状態で収納されている。ここで、本実施形態では、収納状態にあるカーテン状部材21、ケーシング23の前端部が第1辺、即ちAピラー4まで延びており、カーテン状部材21、ケーシング23の前端部、及び第1開口部1の上縁近傍部位の前端部がピラートリム8によって車室内側から覆われている。
【0034】
インフレータ22は、Cピラー6の上方周辺に配設されており、カーテン状部材21にパイプ24によって繋がっている。このインフレータ22は、車両Vの衝突が予知されたときや、該車両Vの衝突が検出されたとき等、車両Vにおいて所定条件が成立した時に作動してガスを発生して供給するものであり、当該車両Vにはそれらの状態を検知するためのセンサと、該センサの出力を受けてそれら状態の発生を判定し、インフレータ22を作動させるコントローラとが設けられている。
【0035】
本実施形態では、車両Vにおいて、上記所定条件が成立した時には、インフレータ22に点火信号が入力され、該インフレータ22から供給された高圧ガスによりカーテン状部材21の膨張部が膨張する。そして、このカーテン状部材21は、ケーシング23に収納された状態からルーフトリム12(図1中一点鎖線で示す)及びピラートリム8〜11を押し開いて、側部開口部(開口部1〜3)の略全体を覆うように展開する。このため、車両Vの乗員C(図1参照)の頭部を拘束して保護するとともに、乗員Cの車外への飛び出しを防止できる。
【0036】
ところで、Aピラー4のピラートリム8について、本実施形態では、その最も上方に位置する部位が、図2に示すような2つの係合部材(トリム係合部材31、車体係合部材32)により構成される係合部30aを介して車体側に取付けられるとともに、下方の部位が、図3に示すような1つのクリップ部材33により構成される係合部30b、30cを介して車体に取付けられている。なお、図2、図3は、それぞれ図1におけるA−A線矢視断面図、B−B線矢視断面図である。
【0037】
ピラートリム8の裏面側、即ち車幅方向外側には、図4に示すように車幅方向外側に突出する複数の取付け座8a〜8cが形成されている。そして、この内最も上方に位置する取付け座8aには、図2に示すように上方を略指向するように突出する係合凸部31aが形成された断面U字状のトリム係合部材31が取付けられる一方、下方の2つの取付け座8b、8cには、図3に示すようなクリップ部材33が取付けられている。なお、図4は、Aピラーに対応するピラートリムの裏面側を示す斜視図である。
【0038】
ピラートリム8の取付け座8aには、図2、図4に示すように、正面視で略T字状をなす嵌合溝8dが所定長さだけ形成される一方、これに対応してトリム係合部材31には、正面視で略T字状に形成された嵌合凸部31bが形成されており、トリム係合部材31は、嵌合凸部31bが嵌合溝8dに嵌め込まれることで、ピラートリム8の上方位置に取付けられている。
【0039】
また、トリム係合部材31とともに係合部30aを構成する車体係合部材32は、トリム係合部材31と対向する側に、ピラートリム8の下縁側を略指向して開口する凹部32bが形成された断面U字状のトリム側係合部32aを有している。係合部30aでは、この凹部32bにトリム係合部材31の係合凸部31aが係合することでトリム係合部材31と車体係合部材32とが係合している。
【0040】
ここで、トリム係合部材31の係合凸部31aには、その一部に嵌合凸部31cが形成されるとともに、車体係合部材32の凹部32bには嵌合凹部32cが形成され、両者の嵌合によりトリム係合部材31と車体係合部材32との係合状態が保持されている。なお、係合部30aを構成するトリム係合部材31及び車体係合部材32は、例えばナイロンやポリアセテート等、ピラートリム8よりも硬質な素材で構成されている。
【0041】
また、車体係合部材32には、長尺状の紐部材13の一端側が取付けられており、この紐部材13を介してピラートリム8の取付け座8aに連結されている。
【0042】
そして、車体係合部材32には、トリム係合部材31と対向する側と反対側、即ち車幅方向外側に車体側係合部としての車体側係合凸部32dが形成されており、これがAピラー4(車体側)のインナパネル41に嵌め込まれることで、車体係合部材32が第1開口部1の上縁近傍部位にて車体と係合している。
【0043】
ピラートリム8では、係合部30aを構成するトリム係合部材31と車体係合部材32との係合により、最も上方に位置する取付け座8aの部位がインナパネル41に固定されるとともに、係合部30b、30cを構成するクリップ部材33により、下方の2つの取付け座8b、8cの部位がインナパネル41に固定されている。
【0044】
ここで、Aピラー4は、主にインナパネル41、アウタパネル42の他、これらインナパネル41とアウタパネル42との間に配設されるレインフォースメント43により構成され、各パネル41〜43は、その上下端に形成されたフランジ部で互いに接合されている。
【0045】
そして、上側の接合部には、フロントウインドガラス14の端部が配置される一方、下側の接合部には、ラバー製のモール15が取付けられ、図2、図3に示すように、第1開口部1の上縁近傍部位に近接するピラートリム8の下縁と、各パネル41〜43の下側の接合部との隙間を覆っている。
【0046】
なお、図2、図3ではドアDの閉状態を示しており、アウタパネル42の下方に位置する部材16は、ウェザーストリップ、部材17は、ドアサッシュ、部材18は、ラバー製のシール部材、部材19は、ドアウインドガラスを示している。
【0047】
ところで、本実施形態では、カーテンエアバッグ装置20のカーテン状部材21が、図2に示すように、係合部30aの直ぐ下方の、第1開口部1の上縁近傍に位置しており、ピラートリム8によって車室内側が覆われた状態となっている。
【0048】
このため、カーテン状部材21の展開時には、カーテン状部材21の膨張に伴いピラートリム8の下縁は下方に押圧され、その押圧力によってトリム係合部材31の嵌合凸部31cと車体係合部材32の嵌合凹部32cとの嵌合が外れるようになっている。
【0049】
この時、係合部30aにおけるトリム係合部材31と車体係合部材32との係合が外れ、車体係合部材32の凹部32bがピラートリム8aの下縁を略指向していることにより、トリム係合部材31及びピラートリム8は、図5に示すようにその下縁に向かって一体的に移動しながら、車体から離間する。ここで、ピラートリム8の下縁と第1開口部1の上縁近傍部位との間には隙間が形成される。
【0050】
そして、トリム係合部材31及びピラートリム8は、紐部材13によって落下することなく車体係合部材32に支持されるとともに、カーテン状部材21は、図示のように上記隙間を通って下方の車室内に展開し、ドアウインドガラス19に沿うようにして上記側部開口部を覆う。
【0051】
このように、本実施形態では、カーテン状部材21の展開時において、ピラートリム8をその下縁に向かって移動させるようにしたことで、ピラートリム8の移動方向とカーテン状部材21の展開方向とを略同じ方向とすることができる。このため、カーテン状部材21の展開時、ピラートリム8内における曲げ応力の発生を抑制し、その負荷を軽減することができる。
【0052】
そして、カーテン状部材21を係合部30aの下方に配置することで、ピラートリム8が下方に移動した時には、カーテン状部材21をドアウインドガラス19に沿って適切に展開させることができ、その展開性を向上させることができる。
【0053】
ここで、カーテンエアバッグ装置20では、車両レイアウトの都合等により、インフレータ22が、図1に示すようにカーテン状部材21の後端部近傍に配設され、Aピラー4から大きく後方に離間してしまうことがある。
【0054】
このような構成の場合、ガス供給開始直後には、先ずカーテン状部材21の後端側から膨張が始まり、そこから前方へ向かって膨張部分が広がっていくことから、Aピラー4に対応するカーテン状部材21の部分では、その下部が、既に膨張が始まっている後方の部分により下方に引っ張られるような状態となる。従って、ピラートリム8を下方に向かって移動可能にする効果は、図1のようにインフレータ22がAピラートリム4から後方に大きく離間している場合により顕著となる。
【0055】
また、近年、特にワゴンやミニバン等の車種においては、カーテン状部材21によって側部開口部の略全体を覆うことが強く望まれており、それ故に、本実施形態のようにカーテン状部材21がAピラー4まで延びる程大型化されている。しかしながら、この場合、カーテン状部材21の大型化に伴い膨張部も大型化することになるため、車体とピラートリム8等との隙間が小さいと、カーテン状部材21の展開性が悪化するという問題があった。
【0056】
本実施形態では、カーテン状部材21の展開時、ピラートリム8を下方に移動させることにより、ピラートリム8の下縁と車体との隙間を大きく確保することが可能になり、カーテン状部材21の大型化に関わらずカーテン状部材21の展開性を確保することができる。
【0057】
また、係合部30aにおいては、車体係合部材32の凹部32bがピラートリム8の下縁を略指向するように形成されているため、係合部30aの係合が外れた時、凹部32bに沿ってトリム係合部材31を下方に案内することができ、その結果ピラートリム8を確実に下方に移動させることができる。
【0058】
また、トリム係合部材31が紐部材13により車体係合部材32に連結されることで、カーテン状部材21の展開時にピラートリム8が乗員Cの上部に落下することを防止できる。特に、ピラートリム8の上部下方には前席S1の乗員Cが位置するため、複数の係合部30a〜30cのうち、最も上方に位置する係合部30aに紐部材13を備えることで、前席S1の乗員Cに向かってピラートリム8が落下することをより効果的に防止できる。
【0059】
(第2実施形態)
なお、上述した第1実施形態では、ピラートリム8とは別部材となるトリム係合部材31を備えてこれを車体係合部材32と係合させるようにしたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、図6に示すピラートリム8′のように、その取付け座8a′から車幅方向外側上方に突出するトリム係合部8e′を一体的に形成し、これを車体係合部材32に係合させるようにしてもよい。
【0060】
本実施形態では、車体係合部材32とトリム係合部8e′とにより係合部30a′が形成されており、第1実施形態の嵌合凸部31cに相当するトリム係合部8e′の嵌合凸部8f′を車体係合部材32の嵌合凹部32cに嵌合させることで、ピラートリム8′と車体係合部材32との係合状態を保持している。
【0061】
このように、本実施形態では、ピラートリム8′にてトリム係合部8e′を一体的に形成することで、トリム係合部材がピラートリム8′の一部を構成している。これにより、部品点数の削減とともに、組付性の向上を図ることができる。
【0062】
なお、その他の作用効果は、ピラートリム8′に一端側が取付けられた紐部材13も含め、上述した第1実施形態と同様である。
【0063】
(第3実施形態)
また、係合部30aの配置について、図7に示すように、これを車幅方向においてカーテン状部材21′から離間した位置に配設するようにしてもよい。図7では、カーテン状部材21′が、取付け座8aの下面の直ぐ下方に配置されており、係合部30aよりも車幅方向内側に位置している。
【0064】
この場合、トリム係合部材31の下部が、カーテン状部材21′の膨張に伴って上方に押圧されることを防止でき、カーテン状部材21′の膨張によって係合部30aの係合外れが阻害されることを確実に防止できる。
【0065】
なお、その他の作用効果は、上述した第1、第2実施形態と同様である。
【0066】
(第4実施形態)
また、上述した各実施形態では、車体係合部材32の凹部32bが略真下を指向するように形成されているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、図8に示すトリム側係合部32a′の凹部32b′のように、開口を下方かつ車幅方向内側を指向するように形成してもよい。要するに、本発明では、車体係合部材の凹部の向きが少なくとも下向きの方向成分を有していればよく、図7に示す実施形態でも、係合部30a″における係合が外れた時には、ピラートリム8をその下縁へ向けて移動させることができる。
【0067】
ここで、本実施形態では、凹部32b′の形状に対応して、トリム係合部材31には、上方かつ車幅方向外側を指向する係合凸部31a′が形成されており、嵌合凸部31c′が車体係合部材32′の凹部32b′の嵌合凹部32c′に嵌合することで、トリム係合部材31′と車体係合部材32′との係合状態が保持されている。
【0068】
なお、その他の作用効果は、上述した第1、第2実施形態と同様であり、例えば、本実施形態に係るトリム係合部材31′においても、嵌合凸部31bに相当する嵌合凸部31b′が嵌合溝8dに嵌め込まれ、車体係合部材32′においては、車外側に車体側係合凸部32dに相当する車体側係合凸部32d′が形成され、これがインナパネル41に係合している。
【0069】
(第5実施形態)
また、上述した各実施形態では、ピラートリム8、8′側の係合凸部31a、31a′やトリム係合部8e′を、車体側の係合凹部32b、32b′に係合させることで係合部30a、30a′、30a″を構成するようにしたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0070】
例えば、図9(a)に示すように、上下方向を略指向するように延びる係合軸体81aを備えたトリム係合部材81と、上下方向を略指向するように挿通孔82bが穿設された車体係合部材82とにより係合部80aを構成してもよい。
【0071】
本実施形態では、トリム係合部材81の係合軸体81aの長手方向が略上下方向を指向するように、T字状の嵌合凸部81bがピラートリム58の取付け座58aの嵌合溝58dに嵌合されるとともに、係合軸体81aが車体係合部材82のトリム側係合部82aに穿設された挿通孔82bに挿通されている。そして、係合軸体81aの嵌合爪81cが車体係合部材82の嵌合孔82cに嵌合することでトリム係合部材81と車体係合部材82とが係合状態にある。
【0072】
ここで、嵌合爪81cは、係合軸体81aの幅方向に進退可能とされており、カーテン状部材21の膨張に伴ってピラートリム58が押圧されると、トリム係合部材81が車幅方向内側に引っ張れられることにより、嵌合爪81cが車体係合部材82の挿通孔82cの縁部に押圧されて内側に退避し、その結果上記係合が外れるようになっている。この時、トリム係合部材81は、車体係合部材82の挿通孔82bに沿って摺動可能な状態となる。
【0073】
また、車体係合部材82には、挿通孔82bと反対側、即ち車幅方向外側に嵌合凸部82dが形成されており、これがAピラー4(車体側)のインナパネル41に嵌め込まれることで、車体係合部材82が車体と係合している。
【0074】
このような構成により、上記所定条件成立時には、カーテン状部材21が膨張する時の押圧力で嵌合爪81cの嵌合、つまりは係合部80aにおける係合を外すことができ、トリム係合部材81及びピラートリム58を該ピラートリム58の下縁に向かって移動させることによって、該下縁をドアウインドガラス19の上縁近傍部位から離間させることができる。
【0075】
本実施形態では、車体係合部材82の挿通孔82bが上下方向を略指向するように穿設されているため、係合部80aの係合が外れた時には、挿通孔82bに沿ってトリム係合部材81を下方に案内することができる。その結果ピラートリム58を確実に下方に移動させることができ、ピラートリム58の移動方向とカーテン状部材21の展開方向とを略同じ方向とすることができる。
【0076】
なお、図9(a)では、係合軸体81aの上端近傍に、幅方向外側に突出するストッパ部81dが形成されており、ピラートリム58が所定量だけ下方に移動すると、ストッパ部81dが車体係合部材82の挿通孔82bの上側縁部に当接して、それ以上のピラートリム58の移動を阻止するようになっている。このため、第1〜第4実施形態と同様、ピラートリム58の落下を防止することができる。
【0077】
但し、これに限らず、ピラートリム58の落下を防止するために、例えば、図9(b)に示すように、ピラートリム58と車体係合部材82とを紐部材93で連結してもよい。
【0078】
なお、その他の作用効果は、上述した第1、第2実施形態と同様である。
【0079】
また、図6〜図9に示す第2〜第5実施形態において、図1〜図5を参照して説明した第1実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0080】
(その他の実施形態)
上述した各実施形態では、ピラートリムにおいて最も上方に位置する係合部のみを2つの係合部材で構成するようにしたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、全ての係合部を2つの係合部材で構成してもよい。
【0081】
また、第5実施形態では、ピラートリム58とトリム係合部材81とを別部材で構成しているが、これらを一体的に形成し、トリム係合部材がピラートリムの一部を構成するようにしてもよい。
【0082】
また、車体係合部材とピラートリムとを連結する部材を紐状の部材で構成したが、長尺なものであれば帯状部材であってもよい。また、車体係合部材またはピラートリムの一部を紐状、帯状に形成し、これを他方に連結するようにしてもよい。
【0083】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の内装材は、ピラートリム8、8′、58に対応し、
以下同様に、
内装係合部材は、トリム係合部材31、31′、81、及びトリム係合部8e′に対応し、
内装側係合部は、トリム側係合部32a、32a′、82aに対応し、
連結部材は、紐部材13、93に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】この発明の第1実施形態に係るカーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装材取付け構造を車室内側から見た側面図。
【図2】図1におけるA−A線矢視断面図。
【図3】図1におけるB−B線矢視断面図。
【図4】Aピラーに対応するピラートリムの裏面側を示す斜視図。
【図5】カーテン状部材展開時の状態を示す断面図。
【図6】この発明の第2実施形態に係るカーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装材取付け構造を示す断面図。
【図7】この発明の第3実施形態に係るカーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装材取付け構造を示す断面図。
【図8】この発明の第4実施形態に係るカーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装材取付け構造を示す断面図。
【図9】この発明の第5実施形態に係るカーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装材取付け構造を示す断面図であり、(a)係合軸体にストッパ部を形成した場合を示す図、(b)紐部材を備えた場合を示す図。
【図10】従来のカーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装材取付け構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0085】
1〜3…開口部
8、8′、58…ピラートリム
8e′…トリム係合部
13、93…紐部材
20、20′…カーテンエアバッグ装置
21、21′…カーテン状部材
22…インフレータ
30a〜30c、30a′、30a″、80a…係合部
31、31′、81…トリム係合部材
32、32′、82…車体係合部材
32a、32a′、82a…トリム側係合部
32b、32b′、82b…凹部
32d、32d′、82d…車体側係合凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側部には、開口が形成され、
該開口の上縁近傍に支持されるカーテン状部材を有し、該カーテン状部材の収納状態から、車両の所定条件成立時にインフレータからガスを供給して上記カーテン状部材に形成した膨張部を膨張させることで、上記開口を覆うように展開するカーテンエアバッグ装置と、
上記収納状態にあるカーテン状部材と上記開口の上縁近傍部位とを車室内側から覆う内装材と、
上記内装材を車体に取付けるとともに、上記カーテン状部材の展開時に、上記内装材を車体から離間可能とする係合部とを備えた車両の内装材取付け構造であって、
上記内装材の下縁は、上記開口の上縁近傍部位に対して近接しており、
上記係合部は、上記内装材側に設けられる内装係合部材と、車体と係合する車体係合部材とからなり、
上記内装係合部材と上記車体係合部材とは、上記カーテン状部材の展開時に互いの係合が外れるように係合し、上記内装材は、上記係合が外れた時、その下縁に向かって移動しながら車体から離間するように構成される
カーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装材取付け構造。
【請求項2】
上記車体係合部材は、上記開口の上縁近傍部位に係合される車体側係合部と、
上記内装係合部材に係合される内装側係合部とからなり、
該内装側係合部には、上記内装材の下縁側を略指向して開口する凹部が形成されており、
該凹部に上記内装係合部材が嵌合して係合するように構成される
請求項1記載のカーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装材取付け構造。
【請求項3】
上記車体係合部材は、上記開口の上縁近傍部位に係合される車体側係合部と、
上記内装係合部材に係合される内装側係合部とからなり、
該内装側係合部には、上下方向を略指向して穿設された挿通孔が形成されており、
該挿通孔に上記内装係合部材が挿通された状態で係合するように構成される
請求項1記載のカーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装材取付け構造。
【請求項4】
上記係合部の上記車体係合部材と上記内装材とが長尺状の連結部材によって連結されている
請求項1〜3のいずれか一項に記載のカーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装材取付け構造。
【請求項5】
上記係合部が、上記内装材を車体に取付ける複数の係合部のうち、最も車両上方に位置するものである
請求項4記載のカーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装材取付け構造。
【請求項6】
上記内装係合部材が、上記内装材の一部を構成している
請求項1〜5のいずれか一項に記載のカーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装材取付け構造。
【請求項7】
上記内装係合部材は、車幅方向において上記カーテン状部材から離間した位置に設けられている
請求項1〜5のいずれか一項に記載のカーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装材取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−47135(P2010−47135A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213557(P2008−213557)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】