説明

カーテンエアバッグ

【課題】第2折り部内に配したインナー部材によって、第3折り部を膨張展開させるためのスペースを確保し、第3折り部をより理想的な形で膨張展開させる。
【解決手段】第2折り部12内にインナー部材15の主要部を配し、インナー部材15を太めの膨張体に膨張させる。膨張ガスの供給により最初にインナー部材15を膨張させ、インナー部材15の膨張によって第1折り部11と第3折り部13とを押圧して、ルーフライニング4の下端部を押し上げてセンターピラーガーニッシュ2aとの間に開口を形成する。このとき、第3折り部13の移動位置は、センターピラーガーニッシュ2aの上部から外れた車内側に位置させる。続いて、第2折り部12の膨張展開により開口を更に広げ、第1折り部11の膨張展開により第3折り部13をサイドウィンドガラスに沿った方向に押し出す。これにより、第3折り部13をより理想的な形で膨張展開させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、車両側面の窓部に沿って膨張展開するカーテンエアバッグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年においては、車両に対する側突事故やロールオーバ等の事故において、乗員の頭部を保護する目的で、車室内において車両の側面に沿って膨張展開するカーテンエアバッグを設けた車両が、数多く使用されている。車両に対する側突事故やロールオーバ等の事故の発生が検知されると、あるいはこれらの事故の発生が予測されると、インフレータから噴射された膨張ガスがカーテンエアバッグ内に流入して、カーテンエアバッグを膨張展開させる。
【0003】
カーテンエアバッグは、天井内の張り材(ルーフライニング)と車体パネルとの間の空間に折り畳まれた状態で、ルーフサイドレール内に収納されている。カーテンエアバッグの膨張展開に伴って、ルーフサイドレール内に収納されたカーテンエアバッグを車内側でカバーしているルーフライニングの下端部側を車内側上方に押し開き、押し開かれた開口を通ってカーテンエアバッグは、車室内で窓部に沿いながら下方に向ってカーテン状に膨張展開する。膨張展開したカーテンエアバッグによって、乗員の頭部を保護することができる。
【0004】
カーテンエアバッグの構成としては、車室内において窓部に沿った形で下方に向ってカーテン状に膨張展開する第3折り部に連通した上部に、袋状の膨状体を有した構成になっている。袋状の膨状体は、一般的に第1折り部と第2折り部とに折り畳まれており、折り畳んだ第1折り部と第2折り部との間に折り畳んだ第3折り部が配されている。このように、第1折り部から第3折り部を折り畳んだカーテンエアバッグは、ルーフサイドレール内に収納されている。このような構成を有するカーテンエアバッグとしては、本出願人は既に特許文献1に記載したエアバッグ(カーテンエアバッグ)装置及びエアバッグの折畳方法を提案している。
【0005】
特許文献1に記載されたカーテンエアバッグは、第1折り部と第2折り部とを第3折り部に被せた、所謂パラソル折りにて構成されている。そして、このパラソル折りの状態にカーテンエアバッグを形成するため、第1折り部と第2折り部とにより構成される袋状の膨状体内に、第1折り部又は第2折り部の内面に沿って挿入したインナーバッグが配設されている。
【0006】
カーテンエアバッグの折畳み方法としては、最初に、インナーバッグを通して空気を供給することにより、膨状体を膨張状態に形成している。次に、インナーバッグを介して膨状体内の空気を抜き取りながら、膨状体を膨状体の上部に配した第3折り部に向かって押圧上昇させる。これにより、膨状体は扁平状に折畳まれて行きながら、膨状体を第3折り部に対してパラソル状に安定した状態で被せることができる。そして、第1折り部と第2折り部とをパラソル折りにした状態で第3折り部に被せたカーテンエアバッグを安定して構成することができる。
【0007】
折り畳み状態のカーテンエアバッグを形成するときに用いたインナーバッグは、インフレータからの膨張ガスを、インナーバッグが配されている一方の第1折り部又は第2折り部内に、他方の第2折り部又は第1折り部に対して先行して供給することができる供給路としての機能を有している。
【0008】
そして、カーテンエアバッグが膨張展開を行う初期の段階において、例えば、インナーバッグが第1折り部側に偏在して配置された構成のときには、車内側に配された第1折り部側が車外側に配された第2折り部側に対して先行して膨張展開する構成になる。
【0009】
インナーバッグを第1折り部側に偏在させることによって、カーテンエアバッグが膨張展開を開始すると、第1折り部が先行して膨張を開始し、第1折り部の膨張展開によって第3折り部を車外側に向けて移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−37136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載したエアバッグは、カーテンエアバッグの膨張展開時には、第1折り部側にインナーバッグを偏在させた構成であるので、インフレータからの膨張ガスは、先行して第1折り部内に流入することができ、第1折り部を速やかに膨張展開させることができる。そして、第1折り部の膨張展開によって、カーテンエアバッグの収納をカバーしていたルーフライニングを押圧して開口を開かせることができる。
【0012】
第1折り部の膨張展開よりも遅れて第2折り部が膨張展開を開始することによって、カーテンエアバッグの収納をカバーしていたルーフライニングを更に押し広げることができ、第3折り部が膨張展開を行うスペースを確保することができる。
【0013】
尚、インナーバッグを第2折り部側に偏在させた構成のときは、インフレータからの膨張ガスは、先行して第2折り部内に流入することができ、第2折り部を速やかに膨張展開させることができる。そして、第2折り部の膨張展開によって、第1折り部及び第3折り部を車内側に押圧することになり、カーテンエアバッグの収納をカバーしていたルーフライニングを押圧して開口を開かせることができる。
【0014】
そして、この場合には、第2折り部の膨張展開よりも遅れて第1折り部が膨張展開を開始することによって、カーテンエアバッグの収納をカバーしていたルーフライニングを更に押し広げることができ、第3折り部が膨張展開を行うスペースを確保することができる。
【0015】
インナーバッグを第1折り部側に偏在させた構成のときも、インナーバッグを第2折り部側に偏在させた構成のときも、第1折り部の膨張展開と第2折り部の膨張展開との間には、時間的に多少のずれが生じることになるが、第1折り部と第2折り部とが共に膨張展開することによって、第3折り部が膨張展開するときの挙動方向の方向付けが行われる。
【0016】
第1折り部と第2折り部とは連通した構成である。そのため、第1折り部が膨張展開を開始すると、第1折り部と第2折り部とを連通している連通開口の開口面積が増大することになる。その結果、例えば、最初に第1折り部が膨張展開する場合であっても、第1折り部がどの容積状態にまで膨張展開したタイミングで、第2折り部と第3折り部とを押圧することができるのか、また、続けてどのタイミングで第2折り部が膨張展開を開始して第3折り部を押圧することができるのかなど、これらのタイミングを理想的な形で設定しておくことは難しかった。
【0017】
確かに、最初に第1折り部が膨張展開することで、第2折り部と第3折り部とを押圧し
て移動させる方向を理想的な方向とは完全に一致させることはできないが、ある程度までは理想的な方向に設定することはできる。そして、第3折り部の膨張展開する方向も、ある程度までは理想的な方向に設定することはできる。しかし、第3折り部が膨張展開を開始してから移動する方向を、更により理想的な方向となるように設定するためには、更なる改良を加えることが求められることになる。
【0018】
本願発明は、特許文献1に記載したカーテンエアバッグに対して更なる改良を加えたものであり、インナー部材を利用することによって、第3折り部をより理想的な形で膨張展開させることができ、しかも、第3折り部を膨張展開させるためのスペースを充分に確保することができるカーテンエアバッグの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願発明の課題は、請求項1〜6に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本願発明は、折り畳まれて車両のルーフサイド部に収納され、インフレータからの膨張ガスの導入により車両側方の窓部に沿って膨張展開するカーテンエアバッグであって、
膨張ガスが導入されるガス導入部と、前記カーテンエアバッグ内に配され、前記ガス導入部から導入される膨張ガスの流れを調整するインナー部材と、車内側に位置して膨張展開する第1折り部と、車外側に位置して膨張展開する第2折り部と、前記第1折り部と前記第2折り部との間に位置して、前記第1折り部と前記第2折り部とのうちで少なくとも一方の折り部に連通し、車室内において前記窓部に沿いながら下方に向ってカーテン状に膨張展開する第3折り部とを有し、
前記インナー部材は、所望の形状に膨張する膨張体として構成され、前記第1折り部の部位よりも前記第2折り部の部位により多く内在した状態に配され、前記インナー部材の膨張により、前記第1折り部及び前記第3折り部を車内側に押圧し、前記第1折り部と前記第3折り部とを順次膨張展開させることを最も主要な特徴としている。
【0020】
また、本願発明のカーテンエアバッグでは、前記インナー部材が、センターピラーガーニッシュの上縁部上方に位置して配されていることを主要な特徴としている。
更に、本願発明のカーテンエアバッグでは、前記インナー部材が、前記カーテンエアバッグの長手方向を中心にした放射方向に膨張する膨張体として構成されていることを主要な特徴としている。
【0021】
更にまた、本願発明のカーテンエアバッグでは、前記インナー部材が、長尺に構成され、長尺の前記インナー部材を折り畳んだ状態で第2折り部内に配設されてなることを主要な特徴としている。
【0022】
また、本願発明のカーテンエアバッグでは、前記第3折り部が、ロール状に折り畳まれた折り部であることを主要な特徴としている。
更に、本願発明のカーテンエアバッグでは、前記第3折り部が、蛇腹状に折り畳まれた折り部であることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本願発明に係わるカーテンエアバッグでは、インナー部材の構成として、所望の形状に膨張する膨張体として構成されている。そして、インナー部材は、第1折り部の部位よりも第2折り部の部位により多く内在させた配置構成になっている。そして、カーテンエアバッグに供給されるインフレータからの膨張ガスが、カーテンエアバッグに供給されると、インナー部材が最初に膨張を開始することになる。
【0024】
所望の形状に膨張する膨張体として構成されたインナー部材は、カーテンエアバッグの
長手方向を中心にした放射方向に膨張する構成にしておくことも、インナー部材を長尺に構成しておき、長尺のインナー部材を蛇腹状やロール状に折り畳んだ状態で第2折り部内に配設した構成にしておくこともできる。
【0025】
インナー部材がカーテンエアバッグの長手方向を中心にした放射方向に膨張する構成としたときには、第2折り部の部位により多く内在させたインナー部材の膨張によって、第1折り部及び第3折り部は車内側に押圧され、ルーフサイド部を押圧開口させることになる。即ち、カーテンエアバッグを収納していたルーフサイド部のルーフライニングを、その下端部側を車内側の上方に押し開いてカーテンエアバッグが膨張展開するための開口を形成することができる。
【0026】
また、インナー部材を長尺に構成したときには、インナー部材に膨張ガスが供給されると、蛇腹状やロール状に折り畳まれた状態が直線状の形状に戻ろうとする。このとき、折り畳まれたインナー部材の部位が直線状の形状に戻ろうとするときに発生する復元力を、第1折り部及び第3折り部を車内側に押圧する押圧力として作用させることができる。そして、第1折り部及び第3折り部を移動させることでルーフサイド部を押圧開口させることができる。
【0027】
インナー部材に流入した膨張ガスの一部は、第2折り部内にも流入して第2折り部を膨張展開させることにもなるが、第1折り部及び第3折り部を最初に車内側に押圧する押圧力及び押圧方向は、最初にインナー部材が所望の形状に膨張することにより与えることができる。これにより、第1折り部及び第3折り部を車内側に押圧する押圧方向の方向性は、インナー部材の膨張により与えられることになる。
【0028】
このように、第1折り部及び第3折り部を車内側に押圧する押圧方向の方向性は、インナー部材が所望の形状に膨張したときのインナー部材の形状により予め設定しておくことができる。しかも、第1折り部及び第3折り部を車内側に押圧して、ルーフサイド部を押圧開口させるときに必要とする膨張したインナー部材の大きさや長さ形状等は、特許文献1に記載したカーテンエアバッグのように、例えば、ルーフサイド部を押圧開口させるときに必要とする膨張展開した第1折り部の大きさや長さ形状を決めるときの条件よりも、より簡単に、しかもより理想的な形で設定することができる。
【0029】
即ち、例えば、インナー部材が膨張したときにルーフサイド部を押圧開口させる上で必要な所望の形状になるまでの時間は、インナー部材を膨張させるのに要する時間の方が、第1折り部又は第2折り部を膨張展開させるのに要する時間よりも短くてすむ。そのため、第1折り部及び第3折り部を車内側に押圧するときのインナー部材の大きさや長さ形状を予め設定することは、容易に行うことができる。そして、より理想的な形で第1折り部及び第3折り部を車内側に押圧することができる。
【0030】
このように、第1折り部及び第3折り部を最初に車内側に押圧する押圧力及び押圧方向は、最初にインナー部材が所望の形状に膨張することにより与えることができる。そのため、第2折り部の膨張展開によって第1折り部及び第3折り部が更に押圧されても、インナー部材が所望の形状に膨張することによって、第1折り部及び第3折り部に対して最初に与えた押圧方向は、殆ど修正されることはない。
【0031】
即ち、第2折り部が膨張展開することによって、インナー部材の膨張展開による第1折り部及び第3折り部に対する押圧力に、更に第2折り部の膨張展開による押圧力が加わることになる。これにより、センターピラーガーニッシュの上縁部との干渉を防止した位置に、第3折り部を確実に移動させることができ、ルーフライニングの開口を更に押し広げることができる。
【0032】
第2折り部の膨張展開に続いて第1折り部が膨張展開することにより、ルーフライニングの開口が更に押し広げられるとともに、ルーフライニングの開口を通って第3折り部が膨張展開したときに車両側方の窓部に沿った展開方向となるように、第3折り部を押圧することができる。
【0033】
しかも、第2折り部の膨張展開から第1折り部が膨張展開を行って、第3折り部を押圧するまでの時間は、特許文献1のように第1折り部が膨張展開しながら第2折り部が膨張展開する場合に比べて短い時間で行うことができる。そのため、本願発明では、第1折り部の膨張展開による第3折り部の押圧方向は、第3折り部が膨張展開する上でより理想的な方向に設定することができる。
【0034】
これにより、第3折り部は、センターピラーガーニッシュの上縁部との干渉を防止した位置において、理想的な態様で車両側方の窓部に沿って膨張展開を行うことができる。このように、カーテンエアバッグ装置の信頼性を大幅に向上させることができる。
【0035】
本願発明では、インナー部材を、センターピラーガーニッシュの上縁部上方に配した構成にしておくことができる。
このように構成することによって、センターピラーガーニッシュの上縁部上方に配したインナー部材を膨張させることによって、第3折り部を確実にセンターピラーガーニッシュの上縁部との干渉を防止した位置に移動させることができる。
【0036】
本願発明における第3折り部の構成としては、ロール状に折り畳まれた折り部として構成しておくことも、蛇腹状に折り畳まれた折り部として構成しておくこともできる。このように第3折り部を構成しておくことにより、第3折り部を車両側方の窓部に沿って迅速に膨張展開させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】カーテンエアバッグをルーフサイド部に収納した状態を示す概略正面図である。(実施例)
【図2】カーテンエアバッグを展開状態にした正面図である。(実施例1)
【図3】折り畳まれたカーテンエアバッグの縦断面図である。(実施例1)
【図4】折り畳まれたカーテンエアバッグの斜視図である。(実施例1)
【図5】ルーフサイド部内での収納状態を示すカーテンエアバッグの縦断面図である。(実施例1)
【図6】第1折り部及び第2折り部の膨張展開の初期状態を示す要部断面図である。(実施例1)
【図7】第1折り部及び第2折り部の膨張展開状態を示す要部断面図である。(実施例1)
【図8】折り畳まれたカーテンエアバッグの正面図である。(実施例2)
【図9】折り畳まれた他のカーテンエアバッグの正面図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0038】
本願発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明に係わるカーテンエアバッグとしては、以下に説明する実施例の構成に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例1】
【0039】
図1に示すように、カーテンエアバッグ装置30は、折り畳まれたカーテンエアバッグ10と、膨張ガスを発生するインフレータ6と、インフレータ6をカーテンエアバッグ10のガス
導入部16に接続するガス導入管7とを備えた構成になっている。カーテンエアバッグ10は、取付部14を介してルーフサイドレール3に取付けておくことができる。
【0040】
即ち、図5に示すように、カーテンエアバッグ10は、センターピラー2の車室内側を装飾するセンターピラーガーニッシュ2aの上縁部に係合したルーフライニング4とルーフサイドレール3との間に配設されており、ルーフライニング4内においてブラケット9を介してルーフサイドレール3に取付けられている。
【0041】
尚、ここでセンターピラー2とは、後述するカーテンエアバッグ10の前気室18a及び後気室18bの間の部位の側方に位置しており、車両の前後に配される所謂AピラーやCピラーではないセンターに配されたBピラーであって、展開したカーテンエアバッグ10によって覆われるピラーを示している。また、車両の種類によっては、片側に、例えば、4本以上のピラーを備えた構成の車両も存在する。例えば、4本のピラーを備えた車両において、車両の前から3本目のピラーに関して、本願発明では、センターピラーであるBピラーとして取り扱うことができる。
【0042】
図2に示すように、ガス導入管7は、カーテンエアバッグ10の中間部の上方側において内包されたインナー部材15のガス導入部16に接続している。即ち、インナー部材15は、車両に取り付けたカーテンエアバッグ10内において、センターピラーガーニッシュ2aの上端縁の上方に位置する部位に配されている。インナー部材15内に流入した膨張ガスは、インナー部材15を介してカーテンエアバッグ10の中間部から車両の前後方向に分配されることになる。
【0043】
車両1に対する側面衝突事故やロールオーバ等の事故の発生が検知されると、あるいはこれらの事故の発生が予測されると、カーテンエアバッグ装置30のインフレータ6から噴射された膨張ガスがカーテンエアバッグ10内に流入して、カーテンエアバッグ10が膨張展開する。
【0044】
カーテンエアバッグ10の膨張展開に伴って、図6に示すように、センターピラーガーニッシュ2aの上端部に係合していたルーフライニング4の下端部側を、係合を解除させて車室内側の上方に押し開くことができる。そして、押し開かれた開口を通ってカーテンエアバッグ10は、センターピラーガーニッシュ2aに干渉することなく下方へ向ってカーテン状に膨張展開する。このように、膨張展開したカーテンエアバッグ10によって、前席側のサイドウィンドガラス5a(図1参照)と後席側のサイドウィンドガラス5b(図1参照)とを覆い、乗員の頭部を保護することができる。
【0045】
カーテンエアバッグ10を展開状態にしたときの正面図を示している図2に示すように、カーテンエアバッグ10は、例えば315デニールのナイロン66糸を用いた目付200g/m2の二枚のメイン基布パネルを重ね合わせ、重ね合わせたメイン基布パネルの外周を縫着部19により接合して構成することができる。あるいは、一枚のメイン基布パネルを折り合わせて、折り合わせたメイン基布パネルの外周を縫着部19により接合して構成することもできる。
【0046】
尚、カーテンエアバッグ10の形態、材質や構造及びインフレータ6の形態や構造などは従来と格別に変わるところはない。従って、本発明では、説明した実施形態に限定されるものではない。
【0047】
そして、折塊に折り畳まれたカーテンエアバッグ10の縦断面図を示している図3、斜視図を示している図4に示すように、カーテンエアバッグ10は、ロール状に折り畳まれた第3折り部13に連続して、第3折り部13の中央上部から左右に第2折り部12と第1折り部11
とが順次折り畳まれた形状に構成されている。第3折り部13は、第1折り部11と第2折り部12との間に位置することになる。
【0048】
即ち、第1折り部11と第2折り部12とによって、所謂ロールオーバ折りが構成されている。そして、図7に示すように、第1折り部11と第2折り部12とがそれぞれ膨張展開すると第3折り部13に連通した袋状の膨状体として形成されることになる。
【0049】
尚、図3では、第3折り部13としてロール状に折り畳んだ折り畳み形状を示しているが、第3折り部13の構成として蛇腹状にジグザグに折り畳んだ折り畳み形状に構成しておくこともできる。
【0050】
図5に示すように、第1折り部11を車内側に位置させ、第2折り部12を車外側に位置させた状態で、カーテンエアバッグ10をルーフサイドレール3に取付けることができる。
【0051】
カーテンエアバッグ10内で膨張ガスの流れを調整するインナー部材15は、カーテンエアバッグ10の長手方向を中心として放射方向に膨張する膨張体として構成されている。即ち、車両1の左右方向に膨張して所定の容積を占めることができる膨張体として構成されている。そして、インナー部材15は、第1折り部11の部位よりも第2折り部12の部位により多く内在した配置構成に構成されている。
尚、インナー部材15としては、カーテンエアバッグ10のメイン基布パネルと同じ材質の基布パネルを用いて構成することができる。
【0052】
図3、図4に示す構成例では、車両1の前方側から第3折り部13の折り形状を見ると、膨張展開したときの下端部から時計回り方向で右巻きに巻回されて形成されている。そして、第2折り部12は第3折り部13に連続して構成され、第3折り部13の中央上方から右側を包み込んで覆い被せるように折り畳まれている。第1折り部11は第2折り部12に連続して構成され、第3折り部13の中央上方から左側を包み込んで覆い被せるように折り畳まれている。
【0053】
尚、車両1の前方側から第3折り部13の折り形状を見たときに、膨張展開したときの下端部から反時計回り方向で左巻きに巻回させた形状に第3折り部13を形成しておくことができる。この場合には、第3折り部13に連続して構成される第2折り部12は、第3折り部13の中央上方から左側を包み込んで覆い被せるように折り畳まれることになり、第2折り部12に連続して構成される第1折り部11は、第3折り部13の中央上方から右側を包み込んで覆い被せるように折り畳まれることになる。
【0054】
そして、車両1の前方側から第3折り部13の折り形状を見たときに、時計回り方向の右巻きに巻回されたカーテンエアバッグ10は、右ハンドルの車両1において助手席側に配されるカーテンエアバッグ10となり、反時計回り方向の左巻きに巻回されたカーテンエアバッグ10は、運転席側のカーテンエアバッグ10として配設しておくことができる。
【0055】
即ち、図3において、第1折り部11は、矢印のIN側である車室側に配され、第2折り部12は、矢印のOUT側である車外側に配されている。また、図2の矢印F方向は、車両の前進方向を示して折り、矢印U方向は、車両の上方向を示している。そして、インナー部材15としては、第2折り部12内に配されている部位の面積が、第1折り部11内に配されている部位の面積よりも広い面積となるように構成されている。
【0056】
図2、図3に示されるように、インフレータで発生した膨張ガスは、ガス導入管7を介してインナー部材15のガス導入部16に導かれる。ガス導入部16に導かれた膨張ガスは、インナー部材15を膨張させるとともに、インナー部材15内に流入した膨張ガスの一部を第2
折り部12内に流入させることができる。
尚、第1折り部11内にもインナー部材15の一部が配されている場合には、インナー部材15の膨張途中において、膨張ガスの一部を第1折り部11内にも流入させることができる。
【0057】
図5、図6に示すように、インナー部材15が膨張を行うと、第1折り部11及び第3折り部13は膨張したインナー部材15に押圧されて、ルーフサイドレール3から離間する矢印方向に押圧される。第1折り部11及び第3折り部13からの押圧によって、ルーフライニング4の下端部とセンターピラーガーニッシュ2aとの係合状態が解除される。そして、ルーフライニング4の下端部を上方に押し開いて、センターピラーガーニッシュ2aとの間に開口を形成する。
【0058】
このとき、第3折り部13は、センターピラーガーニッシュ2aにおける上縁部の上方から離れた室内側に移動した位置にある。引き続いて、第2折り部12が膨張展開して、第1折り部11及び第3折り部13を更にルーフサイドレール3から離間する方向に押圧する。そして、ルーフライニング4の下端部を更に上方に押し開いて、センターピラーガーニッシュ2aとの間に開口を広げることになる。
【0059】
これにより、第3折り部13はセンターピラーガーニッシュ2aの上縁部の上方から離れた室内側の位置に位置することになる。第1折り部11が第2折り部12の膨張展開に続いて膨張展開を開始すると、センターピラーガーニッシュ2aの上縁部の上方から離れた室内側に位置する第3折り部13をサイドウィンドガラス5a、5b(図1参照)に沿った下方向に押圧することになる。
【0060】
このようにして、第3折り部13は、サイドウィンドガラス5a、5b(図1参照)に沿った下方向に膨張展開を行うことができる。このとき、第1折り部11で第3折り部13を押圧する方向は、第3折り部13をより理想的な展開方向で膨張展開させることができる方向となる。このとき、図7に示すように、膨張展開した第1折り部11と第2折り部12とは一つになって、第3折り部13の上方に配された袋状の膨状体になっている。
【0061】
上述したように、本願発明では最初にインナー部材15が膨状体になって膨張することで、第1折り部11と第3折り部13とを所望の方向に押圧することができ、ルーフライニング4の下端部を上方に押し開くことができる。即ち、インナー部材15の膨張によって、第1折り部11と第3折り部13とを移動させる方向性を与えることができる。
【0062】
そして、第2折り部12が膨張することで、ルーフライニング4の下端部に形成した開口を更に広げることができる。しかも、広がった開口から第3折り部13が膨張展開する方向を第1折り部11の膨張展開により与えることができるので、第3折り部13は理想的な形で膨張展開を行うことができる。
【0063】
また、片側に、例えば、4本のピラーを備えた車両においては、車両の前から3本目のピラーに関して、このピラーをセンターピラーとして取り扱うことができる。そして、車両の前から2本目と3本目のピラーにおけるそれぞれの車室内側を装飾するピラーガーニッシュの上縁部上方にインナー部材15が配されるように構成しておくことができる。
【0064】
例えば、車両の前から2本目と3本目のピラーの中間部に、ガス導入部16を配設し、ガス導入部16からカーテンエアバッグ10の長手方向に延設したインナー部材15を配設した配置構成にしておくことができる。その上で、カーテンエアバッグ10の長手方向に延設したインナー部材15が、車両の前から2本目と3本目の各ピラーガーニッシュの上縁部上方に配されるように構成しておくことができる。
【0065】
このように構成することによって、インナー部材15に膨張ガスが供給されると、車両の前から2本目と3本目の各ピラーガーニッシュの上縁部上方において、ルーフライニング4の下端部側を車室内側の上方に押し開くことができる。
【0066】
また、片側に、例えば、4本のピラーを備えた車両においては、車両の前から2本目のピラーガーニッシュの上縁部上方と3本目のピラーガーニッシュの上縁部上方とに、それぞれインナー部材15を配した構成にしておくこともできる。そして、各インナー部材15には、それぞれインフレータを接続した構成にしておくこともできる。
【0067】
インナー部材15におけるカーテンエアバッグ10の長手方向の長さ寸法としては、同方向におけるカーテンエアバッグ10の長さ寸法に近い長さ寸法まで長く構成しておくこともできる。また、カーテンエアバッグ10の長手方向において長い長さ寸法を有するインナー部材15を用いるときには、インナー部材15の外表面に複数の開口孔を形成しておくこともできる。複数の開口孔を形成しておくことにより、第2折り部12が膨張展開を開始するタイミングを早めることができる。
【実施例2】
【0068】
実施例1では、第3折り部13に連通した袋状の膨状体を所謂ロールオーバ折りによって、第1折り部11と第2折り部12とが形成された構成について、その説明を行った。実施例2では、この袋状の膨状体を所謂パラソル折りによって、第1折り部21と第2折り部22とが形成された構成になっている。インナー部材24は、実施例1と同様に、パラソル折りの第1折り部21の部位よりも第2折り部22の部位により多く内在させた配置構成になっている。
尚、インナー部材24としては、カーテンエアバッグ20のメイン基布パネルと同じ材質の基布パネルを用いて構成することができる。
【0069】
袋状の膨状体をロールオーバ折りとして構成するのか、パラソル折りとして構成するのかにおいて、実施例1と実施例2とは異なった構成になっているが、他の構成に関しては、実施例1と実施例2とでは同様の構成を備えている。そのため、実施例1における構成と同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることでその部材の説明を省略する。実施例2について、図8、図9を用いてその説明を行う。
【0070】
図8、図9において、インナー部材24、25は、紙面の表裏方向に沿って延設された構成になっており、紙面の表裏方向における両端部に開口を有する形状に構成されている。図8に示すように、第3折り部23は、パラソル折りした第1折り部21と第2折り部22とによって、上方から包み込んで覆い被せるように折り畳まれている。第1折り部21と第2折り部22とが共に膨張展開すると、第3折り部23に接続した袋状の膨状体として形成されることになる。
【0071】
図8に示すように、インナー部材24は、第2折り部22の部位により多く内在した配置構成になっている。インフレータからの膨張ガスが、ガス導入管7を介してガス導入部28からインナー部材24内に供給されると、供給された膨張ガスの一部を第2折り部22内に供給すると共に、インナー部材24は膨張体となって第2折り部22内で膨張する。
【0072】
インナー部材24が膨張することによって、図6、図7で示すように、第1折り部21(尚、図では第1折り部11を示している。)及び第3折り部23(尚、図では第3折り部13を示している。)を押圧して、センターピラーガーニッシュ2aの上縁部の上方から離れた室内側に移動させ、ルーフライニング4の下端部を開口させる。そして、図8におけるインナー部材24の膨張に続いて第2折り部22が膨張展開して、ルーフライニング4の下端部の開口を更に押し広げることになる。
【0073】
その後、第1折り部21の膨張展開により、第3折り部23を所望の膨張展開方向に押圧することができる。そして、所望の膨張展開方向に押圧された第3折り部23は、理想的な形で膨張展開を行うことができる。
【0074】
図9に示したインナー部材25は、実施例2における変形例を示している。図8に示したインナー部材24は、膨張ガスが供給されると膨張体となって太く膨張する構成になっている。図9に示すインナー部材25は、インナー部材24のように太く膨張した膨張体となる代わりに、図8のインナー部材24よりも長尺に構成されている。そして、長尺に構成されたインナー部材25は、第2折り部22内に配され、その先端部側は、途中から第3折り部23側に折り返された構成になっている。
【0075】
そして、このままの状態でも、また、インナー部材25の先端を更に第3折り部側に折り曲げれば、蛇腹状に折り曲げた構成になる。また、インナー部材25の先端を今度は第2折り部側に折り曲げれば、ロール状に折り曲げた構成にすることができる。
【0076】
インフレータからの膨張ガスがガス導入管7を介してガス導入部28からインナー部材25内に供給されると、先端部を折り返したインナー部材25の基端部側が膨張する。そして、引き続いてインナー部材25の先端部側にも膨張ガスが導入され、インナー部材25の先端部側は、折り返し部26を中心として直線状の形状に変形しようとする。このとき、インナー部材25の先端部側は、折り返し部26を中心としてインナー部材25を直線状の形状に変形させる方向に回動して直線状の形状に復元することになる。
【0077】
このとき、折り返し部26を中心としたインナー部材25の先端側に生じる回動力を、第1折り部21及び第3折り部23をセンターピラーガーニッシュ2aの上縁部の上方から離れた室内側に移動させる押圧力として作用させることができる。そして、第1折り部21及び第3折り部23を移動させることにより、ルーフライニング4の下端部を開口させることができる。
【0078】
そして、インナー部材25が直線状に膨張展開するのに続いて、第2折り部22が膨張展開することで、ルーフライニング4の下端部の開口を更に押し広げることになる。その後、第1折り部21の膨張展開により、第3折り部23を所望の膨張展開方向に押圧することができる。そして、所望の膨張展開方向に押圧された第3折り部23は、理想的な形で膨張展開を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本願発明の技術思想を他のエアバッグの構成においても適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1・・・車両、
2a・・・センターピラーガーニッシュ、
4・・・ルーフライニング、
6・・・インフレータ、
7・・・ガス導入管、
10・・・カーテンエアバッグ、
11・・・第1折り部、
12・・・第2折り部、
13・・・第3折り部、
15・・・インナー部材、
16・・・ガス導入部、
20・・・カーテンエアバッグ、
21・・・第1折り部、
22・・・第2折り部、
23・・・第3折り部、
24、25・・・インナー部材、
26・・・折り返し部
30・・・カーテンエアバッグ装置、
F・・・前方、
U・・・上方、
IN・・・車室内側、
OUT・・・車外側。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれて車両のルーフサイド部に収納され、インフレータからの膨張ガスの導入により車両側方の窓部に沿って膨張展開するカーテンエアバッグであって、
膨張ガスが導入されるガス導入部と、前記カーテンエアバッグ内に配され、前記ガス導入部から導入される膨張ガスの流れを調整するインナー部材と、車内側に位置して膨張展開する第1折り部と、車外側に位置して膨張展開する第2折り部と、前記第1折り部と前記第2折り部との間に位置して、前記第1折り部と前記第2折り部とのうちで少なくとも一方の折り部に連通し、車室内において前記窓部に沿いながら下方に向ってカーテン状に膨張展開する第3折り部とを有し、
前記インナー部材は、所望の形状に膨張する膨張体として構成され、前記第1折り部の部位よりも前記第2折り部の部位により多く内在した状態に配され、
前記インナー部材の膨張により、前記第1折り部及び前記第3折り部を車内側に押圧し、前記第1折り部と前記第3折り部とを順次膨張展開させることを特徴とするカーテンエアバッグ。
【請求項2】
前記インナー部材が、センターピラーガーニッシュの上縁部上方に位置して配されていることを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ。
【請求項3】
前記インナー部材が、前記カーテンエアバッグの長手方向を中心にした放射方向に膨張する膨張体として構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカーテンエアバッグ。
【請求項4】
前記インナー部材が、長尺に構成され、長尺の前記インナー部材を折り畳んだ状態で第2折り部内に配設されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のカーテンエアバッグ。
【請求項5】
前記第3折り部が、ロール状に折り畳まれた折り部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカーテンエアバッグ。
【請求項6】
前記第3折り部が、蛇腹状に折り畳まれた折り部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカーテンエアバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−49393(P2013−49393A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189597(P2011−189597)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】