説明

カードコネクタ

【課題】構造が簡単であるにも拘らず、カード飛出し防止機能を従来のもの以上に向上させ、且つ製造が容易であるカード飛出し防止機構を備えるカードコネクタを提供する。
【解決手段】カバー部材と、該カバー部材とともにICカードが装着されるカード収容空間を形成するベース部材であって、その底壁から上方に突出する小突起を有するベース部材と、装着されたICカードを取り外すためのカード排出機構を構成し、前記ベース部材上を前後方向に移動可能なイジェクト部材であって、装着されるICカードに設けられた切欠凹部に係合可能な爪部及びカード排出動作終了時に前記小突起を収容する細長い切欠溝を有し、前記カード排出動作終了時に回転可能に形成されているイジェクト部材とを備え、前記小突起と前記切欠溝には、前記イジェクト部材が回転するとき当接する傾斜面がそれぞれに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードコネクタに収容されているICカードがカード排出機構(以下、「イジェクト機構」という。)により排出されるとき、カードコネクタからICカードが飛び出すことを防止するカード飛出し防止機構を備えたカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、デジタルカメラなどの電子機器においては、CPUあるいはメモリ用のICが内蔵された種々のICカードを装着させることで機能拡張を行うようにしている。このようなICカードを電子機器に着脱自在に装着するために使用されるカードコネクタは、該ICカードのカードコネクタに対する着脱を容易にすべくイジェクト機構を備えている。近年、ICカードが小型化、薄型化することに伴い、イジェクト機構によるICカードのカードコネクタからの排出時、ICカードが勢い余ってカードコネクタから飛び出してしまう恐れが生じた。
【0003】
そこで、カードコネクタは、このようなICカードのカードコネクタからの飛び出しを防止するために、特許文献1に示されるようなカード飛出し防止機構を備えるようにさらに工夫されている。特許文献1に開示されるカード飛出し防止機構は、プッシュ・プッシュタイプのイジェクト機構を構成するイジェクト部材に爪部が形成されている。また、イジェクト部材の爪部をカード収容空間側(カードコネクタ内側)に向けて付勢する板バネが、カードコネクタを構成するカバー部材から切り起こされている。さらに、イジェクト部材は、カードコネクタを構成するベース部材に、摺動自在且つ回動自在に取り付けられている。
【0004】
このように構成されているカード飛出し機構は、以下のように動作する。ICカードがカードコネクタに装着されると、ICカードの側辺部に設けられている凹部に、イジェクト部材の爪部が係合される。このことにより、ICカードの装着時におけるカードコネクタからの不用意な抜けが防止される。ICカード排出時、ICカードを押し込むことでカード排出機構を駆動し、それによりカード排出動作が実行される。ICカードの排出動作終了時、ICカードは、ICカードの凹部にイジェクト部材の爪部が係合しているので、カードコネクタ内にその一部が依然として残った状態で一旦停止する。すなわち、ICカードは、カードコネクタからいっきに飛び出すことがない。この状態から、ICカードのカードコネクタから押し出されている部分を把持してICカードをカードコネクタから引き出す。この時、イジェクト部材が回動可能状態にあり、ICカードの凹部とイジェクト部材の爪部との係合が解除される。この時、イジェクト部材が板バネでカード収容空間側に付勢されていることで、凹部と爪部の係合解除に若干の抵抗があり、したがって、使用者にICカードの引き出しを意識させる。このようにして、ICカードは、カードコネクタから確実取り出され得る。
【0005】
【特許文献1】特開2005−301983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のカードコネクタにおいては、イジェクタと部材は、カードコネクタを構成するカバー部材から切り起こされた板バネによりカード収容空間側に向けて常に付勢されている。したがって、ICカードをカードコネクタに装着する時にも、板バネのイジェクト部材への押圧力(付勢力)は、ICカードの凹部とイジェクト部材の爪部を係合させるために若干の力を必要とする。さらに、該板バネの押圧力は、イジェクト部材とともにICカードを押し込むとき、イジェクト部材の摺動に対するブレーキ力として作用し、ICカード装着操作に影響を与える。
【0007】
また、設計上、イジェクト部材の摺動時、板バネの押圧力がゼロとなるように構成すればよいが、カードコネクタ製造時精密さを要求され、時間及びコストがかかる。これを避けるために、組み立てられたとき、板バネがイジェクト部材をカード収容空間側に押圧することを許容するように、該板バネはカバー部材から切り起こされる。この場合、カバー部材をベース部材に組み込むとき、カバー部材に形成されている板バネがイジェクト部材に当たらないように、工夫する必要があり、この場合も、製造時間及びコストがかかることになる。
【0008】
本発明の目的は、このような問題点に鑑み、構造が簡単であるにも拘らず、カード飛出し防止機能を従来のもの以上に向上させ、且つ製造が容易であるカード飛出し防止機構を備えるカードコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のカードコネクタは、カバー部材と、該カバー部材とともにICカードが装着されるカード収容空間を形成するベース部材であって、その底壁から上方に突出する小突起を有するベース部材と、装着されたICカードを取り外すためのカード排出機構を構成し、前記ベース部材上を前後方向に移動可能なイジェクト部材であって、装着されるICカードに設けられた切欠凹部に係合可能な爪部及びカード排出動作終了時に前記小突起を収容する細長い切欠溝を有し、前記カード排出動作終了時に回転可能に形成されているイジェクト部材とを備え、前記小突起と前記切欠溝それぞれに、前記イジェクト部材が回転するとき当接する傾斜面が形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、前記小突起及び前記切欠溝それぞれに形成される前記傾斜面は、水平面に対して30度から60度の範囲内にある角度をなしていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、イジェクト動作完了時に、イジェクト部材の切欠溝内にベース部材の小突起が収容されることで、ICカードの切欠凹部からイジェクト部材の爪部を離脱させるべくイジェクト部材を回転させる動作に抵抗を与える。それにより、イジェクト機構によるICカード排出動作で与えられる慣性でICカードの切欠凹部からイジェクト部材の爪部が容易に離脱することを妨げる。すなわち、ICカードのカードコネクタからの飛び出し防止を従来のものと比べてより一層確実なものとする。
【0012】
また、構造が簡単であり製造工程も少なくて済むので、組立が容易であり、製造時間を短縮し、製造コストを低下させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るカードコネクタの好ましい実施態様について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明に係るカードコネクタを示し、(a)は、カバー部材が取り除かれた状態のカードコネクタの上面図であり、(b)は、カバー部材の上面図である。図2は、ICカードが装着された状態におけるカードコネクタの上面図である。図3は、ICカードのイジェクト動作開始時におけるカードコネクタを示し、(a)は、カバー部材が取り除かれた状態のカードコネクタの上面図であり、(b)は、図3(a)のI−I線に沿う概略部分拡大断面図である。図4は、ICカードのイジェクト動作完了時におけるカードコネクタを示し、(a)は、カバー部材が取り除かれた状態のカードコネクタの上面図であり、(b)は、図4(a)のII−II線に沿う概略部分拡大断面図である。図5は、図4(a)に示されるイジェクト動作完了時におけるカードコネクタを裏面から見た概略図である。図6は、ICカード引き抜き時におけるカードコネクタを示し、(a)は、カバー部材が取り除かれた状態のカードコネクタの上面図であり、(b)は、図6(a)のIII−III線に沿う概略部分拡大断面図である。図7は、図4(b)の状態におけるイジェクト部材の回動ブレーキ機構を模式的に示す部分拡大断面図である。
【0015】
なお、本明細書において、用語「前」及び「後」は、図2において、それぞれ、左側及び右側をいい、用語「左」及び「右」は、図2において、それぞれ、上側及び下側をいい、「上」及び「下」は、図2において、それぞれ、表側及び裏側をいう。
【0016】
図1及び2に示されるように、カードコネクタ10は、概ね、ベース部材20、カバー部材30、複数のコンタクト48、イジェクト機構50、及びカード飛出し防止機構70を備えている。
【0017】
ベース部材20は、電気的に絶縁性の合成樹脂から形成されており、左側壁21、右側壁22、前方壁23、及び底壁25を含み、上方及び後方は、開放されている。ベース部材20の上方は、後述するカバー部材30と重ね合わせることにより塞がれるが、後方は、開放されたままであり、ICカード100が挿入されるカード挿入口24を形成する。すなわち、ベース部材20は、カバー部材30と重ね合わされることで、ICカード100を収容するカード収容空間を形成する。ベース部材20の右側壁22の後方部は、段部22aを介してカード収容空間側に突出するように幅広に形成されている。
【0018】
また、ベース部材20の底壁25には、複数のコンタクト40各々を固定するために、複数の溝部27が、前後方向に互いに平行に形成されている。ベース部材20の底壁25の、右側壁22より前方には、その右側壁22に平行に、第1のガイド孔41が形成されている。第1のガイド孔41は、図5に明瞭に示されるように、後述するイジェクト部材51の第1のピン61を収容し、イジェクト部材の前後方向の移動を案内する。第1のガイド孔41は、第1のピン61の外径より若干大きい幅を有する長円に形成される。
【0019】
ベース部材20の底壁25には、さらに、後述するイジェクト部材51の切欠溝58内に出入りする小突起26が形成されている(図7参照)。該小突起26は、後述するカード飛出し防止機構70を構成する。また、ベース部材20の底壁25の小突起26の前方には、右側壁22に平行に、第2のガイド孔43が形成されている。第2のガイド孔43は、図5に明瞭に示されるように、後述するイジェクト部材51の第2のピン63を収容し、イジェクト部材の前後方向の移動を案内し、イジェクト部材の回動を可能とする。第2のガイド孔43は、第2のピン63の外径より若干大きい幅を有する長円部分43aと該長円部分の幅よりも大きい幅を有する長円部分43bとに形成される。第2のピン63が幅広の長円部分43bにあるとき、第2のピン63は、図5に示されるように、該図5において下方に移動可能となっており、それにより、イジェクト部材51は、回転可能となる。なお、図1(a)において、28は、ICカード100が装着されたことを認識するカード認識スイッチである。
【0020】
カバー部材30は、金属製であり、カードコネクタ10の剛性を維持する。カバー部材30は、天板31、左側壁32、右側壁33、及び前方壁34を含み、下方及び後方は開放されている。カバー部材30は、該カバー部材30がベース部材20と重ね合わされたとき、板金カバー30の左側壁32、右側壁33、及び前方壁34は、ベース部材20の左側壁21、右側壁22、前方壁23を覆うように設計される。なお、35は、窓すなわち開口であり、36は、イジェクト機構50のカムレバー54を保持するカムレバー押さえ、37、38は、挿入されたICカード100を押圧、支持する板バネである。
【0021】
複数のコンタクト48は、従来と同様に、ベース部材20に設けられた複数の溝部27それぞれに、各コンタクト48の固定部が圧入されることで、ベース部材20に互に平行に固定される。
【0022】
イジェクト機構50は、ICカード100の保持または解放を制御する機構であり、本実施態様におけるイジェクト機構では、従来から良く知られているプッシュ・プッシュ方式の機構を採用している。イジェクト機構50は、イジェクト部材51、ハートカム52、案内溝53、カムレバー54、及びコイルバネ55を含んでいる。
【0023】
イジェクト部材51は、ベース部材20の右側壁22に沿って、前方壁23と右側壁23の段部22aとの間で、カードコネクタ10の前後方向(カード挿入方向及びカード排出方向)に摺動可能に設けられている。イジェクト部材51は、挿入されるICカード100の先端部101に当接するカード当接部56、ICカード100の傾斜肩部102に対応する傾斜部59、及びICカード100に形成されている略方形状の切欠凹部103に係合する爪部57を含んでいる。カード当接部56は、イジェクト部材51の先端部でカード収容空間に向けて突出形成され、上述したようにICカード挿入時に該カード100の先端部に当接し、ICカードのさらなる挿入に伴い、イジェクト部材を前方に移動させるのに役立つ。爪部57は、イジェクト部材51の後端部でカード収容空間に向けて突出形成されており、後述するカード飛び出し防止機構を構成する。
【0024】
イジェクト部材51の上面には、ハートカム52、該ハートカム52を取り囲むように形成された案内溝53が形成されている。案内溝53内には、カムレバー54の前端に形成される脚部が嵌合し、該案内溝53に沿って移動する。
【0025】
イジェクト部材51の下面前方には、コイルバネ55が収容され得るドーム状溝(不図示)が形成されている。該ドーム状溝は、前方及び下方が開放されており、後方及び上方は、壁で塞がれている。コイルバネ55は、一端がベース部材20の前方壁23に支持され、他端は、イジェクト部材51のドーム状溝の後方壁に固定されている。イジェクト部材51の下面後方には、後方及びか方に向けて開放される切欠溝58が設けられている。該切欠溝58は、後述するカード飛出し防止機構70を構成する。
【0026】
さらに、イジェクト部材51のカード当接面56の近傍下面側には、第1のピン61が形成され(図5参照)、ベース部材20の第1のガイド孔41に収容される。また、イジェクト部材51の下面であって切欠溝58の前方には、第2のピン63が形成され(図5参照)、ベース部材20の第2のガイド孔43に収容される。これら構成を備えることで、イジェクト部材51は、前後方向に円滑に移動することができる。さらに、イジェクト部材51は、コイルバネ55が十分に伸びきったとき、すなわち、イジェクト動作終了時、上記第1のピン61を回転中心として回動可能に設計されている(図4(a)及び図5(a)参照)。
【0027】
カムレバー54は、前後端に脚部を有する略逆U字形をなしており、前端に形成された脚部は、案内溝53に移動自在に嵌合し、後端に形成された脚部は、ベース部材20の右側壁22の段部22a後方で、該右側壁22に回動自在に支持されている。該カムレバー54は、組み立てられたとき、カバー部材30の天板31に形成されたカムレバー押さえ36により抜け落ちを防止されている。
【0028】
コイルバネ55は、常時、イジェクト部材51をカード挿入口24に向けて付勢している。それにより、イジェクト部材51は、ICカードが装着されていないときは、バース部材20の段部22aに押し付けられた状態を維持する。
【0029】
次に、本発明に係るカード飛出し防止機構70の構造について説明する。該カード飛出し防止機構70は、イジェクト機構50を構成するイジェクト部材51を含んでいる。すなわち、カード飛出し防止機構70は、回動可能に形成されているイジェクト部材51、該イジェクト部材51後方部に設けられている爪部57、同じくイジェクト部材51の下面後方に設けられている切欠溝58を含んでいる。カード飛出し防止機構70は、イジェクト部材の切欠溝58に対応してベース部材20に設けられている小突起26をさらに含んでいる。
【0030】
カード飛出し防止機構70は、イジェクト部材51の爪部57とICカード100の切欠凹部103に係合することで、ICカード100のカードコネクタ10からの抜けおよびICカード100の排出時における該ICカードの飛び出しを防止する。また、イジェクト動作完了時に、イジェクト部材51の切欠溝58内にベース部材20の小突起26が存在することで、ICカード100の切欠凹部103からイジェクト部材51の爪部26を離脱させるべくイジェクト部材51を回転させる動作に抵抗を与える。それにより、イジェクト機構50によるICカード排出動作で与えられる慣性でICカード100の切欠凹部103からイジェクト部材51の爪部57が容易に離脱することを妨げる。すなわち、ICカード100のカードコネクタ10からの飛び出し防止をより一層確実なものとする。
【0031】
イジェクト部材51の爪部57は、上述したように、イジェクト部材51の後端部でカード収容空間に向けて突出形成されている。イジェクト部材51の爪部57は、ICカード100の切欠凹部103へ係合し、あるいは、該切欠凹部103から離脱する。イジェクト部材51の爪部57は、ICカード100の切欠凹部103へ係合し、あるいは切欠凹部103から離脱することを可能とするため、前後方向に傾斜面を有する、すなわち、上から見て概略三角形状をなしていることが好ましい。
【0032】
ベース部材20に設けられている小突起26は、図7に詳細に示されるように、上から見て概略細長い長円状をなしており、底壁25から上方に突出している。小突起26の相対向する側壁26A、26Bの上方先端部は、傾斜面26a、26bが形成されている。すなわち、小突起の相対向する2つの側面26A、26Bの上方先端部は、上方に行くに従い漸次狭まるように形成される。
【0033】
上記小突起26に対応してイジェクト部材51に設けられている切欠溝58は、図7に詳細に示されるように、イジェクト部材51の下面後方に設けられ、後方及び下方に向けて開放されている細長い溝であり、相対向する側面58A、58Bを備えている。側面58A、58Bは、イジェクト部材51の下面に向かって広がる傾斜面58a、58bが形成されている。
【0034】
切欠溝58の幅、すなわち相対向する側面58A、58Bの間隔は、小突起26の幅、すなわち相対向する側面26A、26Bの間隔より若干大きい。また、切欠溝58の相対向する側面58A、58Bそれぞれの傾斜面58a、58bのイジェクト部材51の下面からの高さは、小突起26の相対向する側面26A、26Bのベース部材2の底壁25上面からの高さに等しいかそれよりも若干低く設定され得る。この場合、ICカード100をカードコネクタ10から引き出す際に、カバー部材30の板バネ37、38によりICカード100が厚さ方向に対して若干斜めになる。そのため、イジェクト部材51の上方向への力が発生し、それにより、切欠溝58の傾斜面58a、58bが対応する小突起26の傾斜面26a、26b上に乗り上げることが可能となる。さらに、切欠溝58の傾斜面58a、58bそれぞれとベース部材20に形成されている小突起26の傾斜面26a、26aそれぞれは、水平面に対して略同じ角度を有し、該角度は、30°〜60°の間にあることが好ましい。該角度が30°以下であると、傾斜面同士(58aと26a)の干渉が弱くなり、イジェクト部材51が容易に回動し、ICカード100が飛び出す恐れがある。また、角度が60°以上になると、傾斜面同士(58aと26a)の干渉が強くなり、ICカード100を引き抜くときイジェクタ部材51またはベース部材20が破損する恐れがある。
【0035】
なお、小突起26及び切欠溝58は、上記したとおりの構造に限られるものではなく、例えば、傾斜面のみでそれぞれの相対向する側面は形成されていなくてもよい。また、小突起26は、細長い長円状としているが、円柱状または円錐状であってもよい。
【0036】
カード飛出し防止機構70を構成する構成部品は、上述の通り、従来のカードコネクタが備える構成部品を利用しており、したがって、従来の構成部品を製造するとき同時に形成することができ、製造工程が増大することもなく、また、構造が簡単であるから組立も容易であり、全体として従来のカードコネクタよりも製造時間が減少し、製造コストも低下する。
【0037】
以上説明したような構成を備えるカードコネクタ10から、該カードコネクタ10に装着されているICカード100を取り外す動作について、図3ないし6を参照して以下に詳細に述べる。
【0038】
図3(a)には、カードコネクタ10にICカード100が装着されている状態が示されている。図3(a)に示される状態においては、ICカード100の先端部101は、前方壁23の近傍に位置しており、カード認識スイッチ28はオン状態になっている。ICカード100の外部接点としての複数のパッド(不図示)は、対応するコンタクト40それぞれに電気的に接続されている。また、イジェクト機構50を構成するイジェクト部材51は、カード当接部56にICカード100の先端部101が当接することで、ICカード100の挿入動作に従い、そのコイルスプリング55の付勢力に抗して前方に押し込まれ、前方壁23近傍に到達している。同じくイジェクト機構50を構成するカムレバー54の前端に設けられた脚部は、ハードカム52の凹部に係合しており、それにより、イジェクト部材51は、この位置を保持される。さらに、カード飛出し防止機構70を構成するイジェクト部材51の爪部57は、ICカード100の切欠凹部103に係合している。したがって、ICカード100は図3(a)に示される位置を保持される。また、カード飛出し防止機構70を構成するベース部材20に設けられた小突起26は、図3(a)、(b)に示されるように、イジェクト部材51に設けられた細長い切欠溝58内から抜け出ており、該切欠溝58内に位置していない。
【0039】
次に、図3(a)の状態において、ICカード100を前方にいっぱいに押し込む。それにより、イジェクト部材51も前方に移動する。したがって、カムレバー54の前端に設けられている脚部は、案内溝53に案内されてハートカム52の凹部との係合が解除される。直後に、ICカード100への押し込みを解除すると、イジェクト部材51は、コイルバネ55の付勢力により、図4(a)に示される当初位置に向かって移動する。最終的にイジェクト部材51は、当初位置であるイジェクト部材51の後端がベース部材20の右側壁22の段部22aに当接する位置にまで戻され、イジェクト動作を完了する。この時、イジェクト部材51は、上述したように、第1のピン61を回転中心とする回動自在の状態にある(さらに、図5参照)。
【0040】
同時に、ICカード100もイジェクト部材51のカード当接部56を介して図4(a)に示される中間位置(ICカード100の長さの後方約半分がカード挿入口24から後方に突出する位置)まで戻される。しかしながら、ICカード100の切欠凹部103にイジェクト部材51の爪部57が係合しているため、ICカード100は、ブレーキがかけられこの中間位置で一端停止する。したがって、ICカード100は、慣性力によりカード挿入口24から飛び出すことはない。仮に、ICカード100に与えられる慣性力が大きくても、後述するブレーキ力がさらに作用することにより、ICカード100は、確実にこの位置でいっぱし一旦停止する。
【0041】
図4(a)の状態において、イジェクト部材51が当初位置に戻ることで、図4(b)に示されるように、小突起26は、イジェクト部材51の細長い切欠溝58内に位置している。
【0042】
図4(a)に示されるような停止した状態にあるICカード100を、例えば、ICカード100の後端部を指先で摘んで後、該ICカード100をカードコネクタ10から引き出す。この時、イジェクト部材51の爪部57の前方が傾斜面として形成されているので、ICカード100の後方への引っ張り力が、イジェクト部材51をコイルバネ55の他端を回転中心として時計回りに回転させる力として作用する。それにより、図6(a)に示されるように、イジェクト部材51の爪部57は、ICカード100の切欠凹部103から離脱することが可能となる。
【0043】
ところで、図6(b)に示されるように、イジェクト部材51の細長い切欠溝58内にあるベース部材20の小突起26は、イジェクト部材51の回転により、細長い切欠溝58に当接し、イジェクト部材51の回転に干渉する。より詳細には、イジェクト部材51の時計回りの回転により、小突起26の側面26Aに切欠溝58の側面58Aが当接し、さらに、側面26Aの傾斜面26a上に側面58Aの傾斜面58aが乗り上げることで、イジェクト部材51の回転にブレーキをかける。それにより、イジェクト部材51の爪部57がICカード100の切欠凹部103から簡単に離脱することを妨げる。
【0044】
このように、カード飛出し防止機構70が構成されていることで、ICカード100がイジェクト機構50により与えられる慣性力で簡単にカードコネクタ10から飛び出すことを防止する。さらに、カードコネクタ10からICカード100を使用者に意識して引き抜かせることで、ICカード100を確実にカードコネクタから取り出すことを可能とする。
【0045】
図6(a)に示される状態から、ICカード100が完全にカードコネクタから取り出されたとき、イジェクト部材51は、小突起26上に乗り上げた状態を維持している。したがって、次に、ICカード100を装着するとき、カード挿入口24から挿入されるICカード100は、該ICカード100の先端部101がイジェクト部材51のカード当接部56に当接するまで、容易に挿入することができる。そして、ICカード100の先端部101がカード当接部56に当接し、該カード当接部56が押されることで、イジェクト部材51は、第1のピン61を回転中心として反時計回りに回転する。それにより、イジェクト部材51の爪部57は、挿入されたICカード100の切欠凹部103に係合する。続いて、ICカード100をイジェクト部材51とともにコイルバネ55の付勢力に抗してカード収容空間内に押し込み、図3(a)に示される状態に持っていくことで、ICカード100の装着が完了する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係るカードコネクタを示し、(a)は、カバー部材が取り除かれた状態のカードコネクタの上面図であり、(b)は、カバー部材の上面図である。
【図2】ICカードが装着された状態におけるカードコネクタの上面図である。
【図3】ICカードのイジェクト動作開始時におけるカードコネクタを示し、(a)は、カバー部材が取り除かれた状態のカードコネクタの上面図であり、(b)は、図3(a)のI−I線に沿う概略部分拡大断面図である。
【図4】ICカードのイジェクト動作完了時におけるカードコネクタを示し、(a)は、カバー部材が取り除かれた状態のカードコネクタの上面図であり、(b)は、図4(a)のII−II線に沿う概略部分拡大断面図である。
【図5】図4(a)に示されるイジェクト動作完了時におけるカードコネクタを裏面から見た概略図である。
【図6】ICカード引き抜き時におけるカードコネクタを示し、(a)は、カバー部材が取り除かれた状態のカードコネクタの上面図であり、(b)は、図6(a)のIII−III線に沿う概略部分拡大断面図である。
【図7】図4(b)の状態におけるイジェクト部材の回動ブレーキ機構を模式的に示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0047】
10 カードコネクタ
20 ベース部材
26 小突起
26a、26b 傾斜面
30 カバー部材
48 コンタクト
50 イジェクト機構
51 イジェクト部材
57 爪部
58 切欠溝
58a、58b 傾斜面
70 カード飛出し防止機構
100 ICカード
103 切欠凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバー部材と、
該カバー部材とともにICカードが装着されるカード収容空間を形成するベース部材であって、その底壁から上方に突出する小突起を有するベース部材と、
装着されたICカードを取り外すためのカード排出機構を構成し、前記ベース部材上を前後方向に移動可能なイジェクト部材であって、装着されるICカードに設けられた切欠凹部に係合可能な爪部及びカード排出動作終了時に前記小突起を収容する細長い切欠溝を有し、前記カード排出動作終了時に回転可能に形成されているイジェクト部材と、
を備え、
前記小突起と前記切欠溝それぞれに、前記イジェクト部材が回転するとき当接する傾斜面が形成されていることを特徴とするカードコネクタ。
【請求項2】
前記小突起及び前記切欠溝それぞれに形成される前記傾斜面は、水平面に対して30度から60度の範囲内にある角度をなしていることを特徴とするカードコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−280728(P2007−280728A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104522(P2006−104522)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】