説明

カード用コネクタ装置

【課題】カードの挿入操作の他に別の手操作を要することなくカードを抜け止めすることができるカード用コネクタ装置の提供。
【解決手段】挿入完了状態にあるカード10の後端部10c付近で変位してカード10の抜け止めを行なう抜け止め部材8を備え、この抜け止め部材8は、カード10の挿抜を可能にするロック解除位置と、カード10のロックが可能なロック位置との間で変位可能であると共に、常時ロック位置に付勢され、カード10の挿入によってロック位置からロック解除位置へ変位する部材から成っている。また、カード挿入部4を覆う金属製のカバー部材2を備え、上述の抜け止め部材8は、カバー部材2の一部を折り曲げて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の装着位置に装着されたカードの抜け止めを行なう抜け止め部材を備えたカード用コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として、例えば特許文献1に記載の技術がある。この従来技術は、所定の装着位置に装着されたカードの後端部付近で手操作によって回動あるいは摺動するカードストッパを備えている。すなわち、所定の装着位置までカードが挿入された後、カードストッパを回動あるいは摺動させることにより、カードが抜け止めされるようになっている。
【特許文献1】特開平9−50496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来技術は、カードを所定の装着位置まで挿入した後に、さらにカードストッパを回動あるいは摺動させる手操作を必要とすることから、カードの抜け止め操作が煩雑になり、使い勝手が悪かった。
【0004】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、カードの挿入操作の他に別の手操作を要することなくカードを抜け止めすることができるカード用コネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、挿入完了状態にあるカードの排出側端部を形成する後端部付近で変位して上記カードの抜け止めを行なう抜け止め部材を備え、この抜け止め部材は、上記カードの挿抜を可能にするロック解除位置と、上記カードのロックが可能なロック位置との間で変位可能であると共に、常時上記ロック位置に付勢され、上記カードの挿入によって上記ロック位置から上記ロック解除位置へ変位する部材から成ることを特徴としている。
【0006】
このように構成した本発明は、カードが挿入されていない状態では、抜け止め部材はロック位置に付勢されている。この状態からカードを挿入すると、このカードの挿入によって抜け止め部材がロック位置からロック解除位置に変位し、カードを押し込むことができる。カードが所定の装着位置に装着されると、抜け止め部材がロック位置に付勢される。したがって、ロック位置に付勢される抜け止め部材によって所定の装着位置に装着されたカードを抜け止めすることができる。すなわち、カードの挿入操作の他には別の手操作を要することなくカードを抜け止めすることができる。
【0007】
また本発明は、上記発明において、上記抜け止め部材は、上記カードの挿入側端部を形成する前端部と当接して、この抜け止め部材を付勢力に抗して上記ロック解除位置へ変位させる案内部を有することを特徴としている。このように構成した本発明は、カード挿入時には、カードの前端部がロック位置にある抜け止め部材の案内部に当接し、この抜け止め部材はロック解除位置へ変位し、カードの挿入が可能になる。すなわち、案内部を介してカードを円滑に挿入させることができる。
【0008】
また本発明は、上記発明において、カード挿入部を覆う金属製のカバー部材を備え、上記抜け止め部材が、上記カバー部材の一部を折り曲げて形成されていることを特徴としている。このように構成した本発明は、カバー部材の製作時に同時に抜け止め部材を製作でき、この抜け止め部材の製作が容易であると共に、部品数の増加を抑えることができる。
【0009】
また本発明は、上記発明において、上記抜け止め部材は、上下方向に弾性変形可能な部材から成ることを特徴としている。このように構成した本発明は、抜け止め部材が上方向に位置するときをロック位置、下方向に変位したときの位置をロック解除位置とすることができると共に、左右方向の変位を生じないようにすることができるので、装置の幅寸法の増加を抑えることができる。
【0010】
また本発明は、上記発明において、カード挿入部が形成されるハウジングに、上記抜け止め部材が下方に変位した際に、この抜け止め部材との当接を避ける逃げ部を形成したことを特徴としている。このように構成した本発明は、抜け止め部材の上下方向の変位量を装置の厚さ寸法内に納めることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、常時ロック位置に付勢され、カードの挿入によってロック位置からロック解除位置へ変位する部材から成る抜け止め部材を備えた構成にしてあることから、カードの挿入操作の他には別の手操作を要することなくカードを抜け止めすることができ、従来に比べて操作が簡単で、使い勝手を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下,本発明に係るカード用コネクタ装置を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明のカード用コネクタ装置に係る一実施形態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は背面図、(d)図は左側面図、(e)図は右側面図、図2は図1に示す状態からカバー部材を除いた状態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は背面図、(d)図は左側面図、(e)図は右側面図である。
【0014】
これらの図1,2に示すように、本実施形態は、基台を構成するハウジング1を備え、このハウジング1には、挿入口3と、後述のカード10が装着されるカード挿入部4とが形成されている。また、後述のカード10の下面に形成され、信号の送受信に活用される複数の外部接触部のそれぞれが導通可能な複数の外部接続端子5が設けられている。このハウジング1の上側部分には、図1に示すように、ハウジング1のカード挿入部4を覆う金属製のカバー部材2を設けてある。
【0015】
ハウジング1内の一方の側部には、後述のカード10の挿入に伴って、このカード10の挿入側端部を形成する前端部10aの切欠き部10bと係合し、カード10と共にハウジング1の奥側に向って摺動するスライド部材6と、このスライド部材6を挿入口3の方向に付勢するばね部材7とを配置してある。これらのスライド部材6とばね部材7とによってカード排出機構が構成されている。
【0016】
[本実施形態の要部構成]
本実施形態は、挿入完了状態、すなわちカード挿入部4の所定の装着位置に装着された後述のカード10の排出側端部を形成する後端部10c付近で変位して、カード10の抜け止めを行なう図1に示す抜け止め部材8を備えている。この抜け止め部材8は、特に、カード10の挿抜を可能にするロック解除位置と、カード10のロックが可能なロック位置との間で変位可能であると共に、常時ロック位置に付勢され、カード10の挿入によってロック位置からロック解除位置へ変位する部材から成っている。
【0017】
例えば、抜け止め部材8は、上述した金属製のカバー部材2の一部を折り曲げて形成され、上下方向に弾性変形可能になっている。この抜け止め部材8は、図1の(d)、(e)図に示すように、カード10の前端部10aと当接して、この抜け止め部材8を自身の保有する弾性力、すなわち付勢力に抗してロック位置へ変位させる案内部8aと、カード挿入部4の所定の装着位置に装着された後述のカード10の後端部10cが係止される係止部8bとを備えている。
【0018】
また、図2等に示すように、ハウジング1には、抜け止め部材8が下方に変位した際に、この抜け止め部材8との当接を避ける逃げ部9を形成してある。
【0019】
[本実施形態へのカードの挿入]
図3は本実施形態の挿入口にカードが挿入されたときの状態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は背面図、(d)図は左側面図、(e)図は右側面図、図4は図3に示す状態からカバー部材を除いた状態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は背面図、(d)図は左側面図、(e)図は右側面図である。
【0020】
図5は本実施形態のカード挿入部の所定の装着位置にカードが装着されたときの状態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は背面図、(d)図は左側面図、(e)図は右側面図、図6は図5に示す状態からカバー部材を除いた状態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は背面図、(d)図は左側面図、(e)図は右側面図である。
【0021】
カード10が挿入されていない状態にあっては、抜け止め部材8は、図1に示すように、自身の保有する付勢力によって上方に位置している。すなわち、ロック位置に保持されている。また、スライド部材6は、図2に示すように、ばね部材7の付勢力によって挿入口3側に位置している。
【0022】
この状態からカード10が挿入されようとすると、カード10の前端部10aが抜け止め部材8の案内部8aに当接し、図3の(d)、(e)図の矢印11で示すように、抜け止め部材8が下方に変位し、ロック解除位置に至ってカード10の挿入が可能となる。さらにカード10が押し込まれると、図4に示すように、カード10の前端部10aの切欠き部10bがスライド部材6に係合する。
【0023】
なお、上述のように抜け止め部材8がロック解除位置まで下方に変位する間、この抜け止め部材8はハウジング1の逃げ部9によって形成される空間内を変位するので、抜け止め部材8がハウジング1に当接する事態を生じることがない。
【0024】
引き続いてカード10が押し込まれると、その押し込み力によってスライド部材6が、ばね部材7の付勢力に抗してハウジング1の奥側に向かって摺動し、カード10が所定の装着位置に装着される。このとき、図5の(d)、(e)図の矢印12で示すように、抜け止め部材8が上方に変位する。すなわち、抜け止め部材8がロック解除位置からロック位置に変位する。これにより、カード10の後端部10cが抜け止め部材8の係止部8bに係止され、カード10がロックされる。つまりカード10が抜け止めされる。
【0025】
このようにカード10が、抜け止め部材8の係止部8bによって抜け止めされ、ハウジング1のカード挿入部4の所定の装着位置に装着された状態では、カード10の下面に形成される外部接触部のそれぞれと、ハウジング1の外部接続端子5のそれぞれとが導通し、カード10に対する信号の送受信が可能となる。
【0026】
[本実施形態からのカードの排出]
図5,6に示すように、カード10がカード挿入部4の所定の装着位置に装着されている状態から、カード10を排出するには、抜け止め部材8の例えば案内部8a付近を単に押し下げればよい。これによって、抜け止め部材8はロック位置からロック解除位置へ変位し、カード10は図6に示すばね部材7の付勢力によって、スライド部材6と共にハウジング1の挿入口3方向に向って排出され、上述した図3,4に示す状態となる。この状態において、カード10の抜き取りが可能となる。
【0027】
カード10が抜き取られると、抜け止め部材8は自身の保有する付勢力によって上方に変位する。すなわち、ロック解除位置からロック位置へ変位し、上述した図1,2に示す状態となる。
【0028】
[本実施形態の効果]
このように構成した本実施形態によれば、カード10の挿入操作の他には別の手操作を要することなく抜け止め部材8によってカード10を抜け止めできるので簡単であり、使い勝手が良い。
【0029】
また、抜け止め部材8の案内部8aを介してカード10をハウジング1のカード挿入部4へ円滑に挿入させることができる。
【0030】
また、カバー部材2の製作時には同時に抜け止め部材を製作でき、この抜け止め部材8の製作が容易であると共に、部品数の増加を抑えることができる。
【0031】
また、抜け止め部材8は、上下方向に弾性変形可能な部材からなり、左右方向の変位を生じないので、装置の幅寸法の増加が抑えられ、この点で装置の小型化を実現できる。
【0032】
さらに、ハウジング1に逃げ部9を形成したことにより、抜け止め部材8の上下方向の変位量を装置の厚さ寸法内に納めることが可能となり、これにより装置の薄型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のカード用コネクタ装置に係る一実施形態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は背面図、(d)図は左側面図、(e)図は右側面図である。
【図2】図1に示す状態からカバー部材を除いた状態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は背面図、(d)図は左側面図、(e)図は右側面図である。
【図3】本実施形態の挿入口にカードが挿入されたときの状態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は背面図、(d)図は左側面図、(e)図は右側面図である。
【図4】図3に示す状態からカバー部材を除いた状態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は背面図、(d)図は左側面図、(e)図は右側面図である。
【図5】本実施形態のカード挿入部の所定の装着位置にカードが装着されたときの状態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は背面図、(d)図は左側面図、(e)図は右側面図である。
【図6】図5に示す状態からカバー部材を除いた状態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は背面図、(d)図は左側面図、(e)図は右側面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 ハウジング
2 カバー部材
3 挿入口
4 カード挿入部
5 外部接続端子
6 スライド部材
7 ばね部材
8 抜け止め部材
8a 案内部
8b 係止部
9 逃げ部
10 カード
10a 前端部
10b 切欠き部
10c 後端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入完了状態にあるカードの排出側端部を形成する後端部付近で変位して上記カードの抜け止めを行なう抜け止め部材を備え、
この抜け止め部材は、上記カードの挿抜を可能にするロック解除位置と、上記カードのロックが可能なロック位置との間で変位可能であると共に、常時上記ロック位置に付勢され、上記カードの挿入によって上記ロック位置から上記ロック解除位置へ変位する部材から成ることを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項2】
上記請求項1記載の発明において、
上記抜け止め部材は、上記カードの挿入側端部を形成する前端部と当接して、この抜け止め部材を付勢力に抗して上記ロック解除位置へ変位させる案内部を有することを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項3】
上記請求項1記載の発明において、
カード挿入部を覆う金属製のカバー部材を備え、上記抜け止め部材が、上記カバー部材の一部を折り曲げて形成されていることを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項4】
上記請求項1〜3のいずれか1記載の発明において、
上記抜け止め部材は、上下方向に弾性変形可能な部材から成ることを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項5】
上記請求項4記載の発明において、
カード挿入部が形成されるハウジングに、上記抜け止め部材が下方に変位した際に、この抜け止め部材との当接を避ける逃げ部を形成したことを特徴とするカード用コネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−172747(P2006−172747A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359913(P2004−359913)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】