説明

カーボンナノチューブ分散体

種々のメディア中におけるカーボンナノチューブの効果的な分散、およびインキまたはコーティングの様な用途での使用方法、および組成物、並びに電気または電子物品が開示される。分散剤は式P−(U−Y)sを有する分散剤、式中Pは金属含有または金属非含有フタロシアニンの残基であり、Yは500から5000g/molの分子量を有する相容化部位であり、UはYとPを共有結合する結合部位であり、sは1から4の整数である、が使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の開示は2008年9月9日に出願されたアメリカ合衆国出願番号61/095,352の優先権を請求し、その全体の内容が本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
一般に、カーボンナノチューブは通常、円周にほんのいくつかの原子を有する細長い管状のボディーである。それらは中空であり、直線的なフラーレン構造を持っている。カーボンナノチューブの長さはそれらの分子サイズの直径より潜在的に何百万倍も大きいことができる。
【0003】
カーボンナノチューブはその結果として、丸められてナノ次元の長い管状のファイバーを形成するためのシートである。チューブの中に含まれたシートの数によって、カーボンナノチューブはシングルウォール(SWCNT)(1枚)、ダブルウォール(DWCNT)(2枚)、またはマルチウォール(MWCNT)(3枚以上)と記載される。SWCNTの平均直径は、0.5nmから5nmまでであり、大部分は0.5から2.0nmの範囲内にある。SWCNTはシートの2つの側がチューブを形成するために会う継ぎ目における位置あわせに依存して金属電気特性または半導性電気特性を有することができる。チューブ構造の中にチューブを有するDWCNTsでは、直径は主として1.5から5nmの範囲内にある。MWCNTsはさらにわずかのウォールを有するもの(3から約10枚未満)で直径が主として5から20nmの範囲内にあるものと、10から30枚未満のシートを有し100nm以上の直径を有する真のマルチウォールに区分される。具体的なCNTを製造するために使用される手法に応じて、長さは1ミクロン未満から数十ミクロン、さらには数ミリまで及ぶことができる。
【0004】
1991年(ネイチャー354(1991)56−58)の飯島によるカーボンナノチューブの最初のレポート以来、CNTsはそれらの特異的性質により最も研究された材料の1つである。丸められたシートは高い弾性、大きな引張り強度、良好な電気および熱伝導率、良好な熱安定性、および耐薬品性を提供する。例えば、SWCNTsは銅または金より熱と電気をよく通し、鉄鋼の100倍の引張り強度を有するが、重さは6分の1だけであると評価された。異常に小さなサイズが作られることができる。例えば、ヒト毛髪の幅の約1/50,000である炭素ナノチューブが生産されている。
【0005】
これらの特性の結果、CNTsは個別または組み合わせでそれらの電気的性質、機械的性質またはそれらの超小さい管状構造を利用するさまざまな用途によく適合している。例えば研究者は、電気伝導性カーボンブラックによって絶縁性プラスチックに提供されているような導電性と同じレベルの導電性を与えることができ、多くの場合には非常に小さな充填量で与えることができ、さらに改良された機械的性質を与えることが示されてきた。電気伝導特性は透明導電性電極類中での潜在的用途が特に興味深く、特にSWCNTsではそうである。したがって、電磁遮蔽からレーダー吸収までプラスチックとコーティングを導電性にする用途が可能である。それらのナノサイズに結びつけられたCNTsの熱伝導特性は、次世代マイクロエレクトロニクス装置での温度管理においてそれらを興味深い候補にした。機械的な補強の領域では、多くの研究者が、超強力で軽量の合成物を形成するためのCNTsの添加よるマトリックスの改良を示した。また、CNTsの高表面積と電荷保持能力は、それらをバッテリーやコンデンサーなどのエネルギー貯蔵装置の理想的な候補にする。CNTsは、超微細なチップとして原子間力顕微鏡(AFM)にそれらを使用することによって他のナノ材料を調べることを助けるために使用された。
【0006】
炭素ナノチューブを生産するための4つの一般的な方法がある。
1) レーザー蒸発テクニック、
2) 電気アークテクニック、
3) ガス相テクニック、および
4) 化学蒸着法。
レーザー蒸発と電気アークテクニックでは、CNTsは、金属触媒の存在下または非存在下で、グラファイトをそれぞれレーザビームまたは電気アークのどちらかを使用して蒸発させることによって生産される。CNTタイプの制御された成長を許容する触媒系の発展は継続的な興味の焦点である。ガス相テクニックでは、通常、CNTsの連続した流れを生成するために、圧力と熱の下で触媒粒子のビーズを横切って炭素源が運ばれる。周知のガス相プロセスは、リチャード・スモリーによって開発されたHiPcoプロセスである。これは炭素源として一酸化炭素を利用して、大量のSWCNTsを生産するために適することが示されている。
【0007】
CNTsを材料と装置中に取り組んで、作用を発揮されることにおける中心的な困難は、それらの顕著な特性の原因となる管状のシートが、それらを溶媒にほとんど溶解不能にするということである。したがって、CNTsの効率的な分散に向けて、かなりの研究努力が費やされている。ナノチューブを可溶性にする方法は2つの広いカテゴリーに分類されることができる:
(1) 溶媒との相互作用を改良する基とのナノチューブシリンダの共有結合による変成、および
(2) 非共有結合する分散剤によるナノチューブの処理。
おそらく、最も簡単で、もっとも多能な共有結合による変成は、ナノチューブの酸化とふっ素化である。酸化またはフルオログループとの反応の後、ナノチューブは、さまざまな薬剤を使用することでさらに誘導される。さらに、ジアゾニウム、環付加、カルベン、ラジカル、カルボアニオン化学などの標準的な小さな分子による反応は、ナノチューブの変成に向けて適切であると判明した。共有結合による変成はそれらの当初のナノチューブと比較にならない溶媒への溶解性と凝集挙動の減少を与える一方、化学的官能化はそれらの特異的性質の原因となる芳香環システムへの欠陥の導入をもたらす。溶解性に影響を与えるために化学的にナノチューブを変成する必要性を回避するために、界面活性剤、ポリ芳香族類、生体ポリマー、合成ポリマー、カプセル化がCNTsを分散するために研究された。例えば、カーボンナノチューブは有機溶媒と水中でポリマーラッピングによって可溶化されたが、このアプローチの不都合な点は、現在唯一高純度の材料が大量生産できるHiPcoプロセスによって生産された小さな直径のシングルウォールカーボンナノチューブをラッピングするのにおいて、ポリマーが非常に効率が悪いということである。これはポリマーに必要とされる高歪みコンホーメーションのためである。
【0008】
分散剤によるアプローチには、いくつかのCNTsに特異的な特性の損失がない。提案された膨大な数の分散剤は、単なるカプセル化剤/湿潤剤であり、そのため、機械的な用途で必要である界面接着を提供しない。いくつかの最も効果的な分散剤システムは、π−π相互作用を取り入れるものであり、たとえば導電性ポリマー、高芳香族ポリマー、またはポリ芳香族などであった。共役/芳香族ポリマーのケースでは、困難は、そのようなシステムを作るのに使用される化学反応が、金属カップリングステップを含む多段階合成を含み、したがって分散剤が高価であるということである。また、分散剤はCNTの1つのタイプだけにおいて有用であるか、または分散剤は1またはいくつかの溶剤系だけで有効であり、したがって、多くの場合、一般的適用性を欠いている。例えば、ドデシル硫酸ナトリウムは、水性溶液中でSWCNTsを分散するのに広く使用されているが、ドデシル硫酸ナトリウムのイオン特性は有効であるために限られたpH領域を必要とし、分散は水性環境中に制限される。また、ポリ(4−ビニルピリジン)などのポリマー分散剤は水ではなく、アルコール系溶剤でCNTsを分散するが、溶剤についての制限がある(Chemistry of Materials 2004,16,3940−3910)。したがって、SWCNTs、DWCNTs、およびMWCNTsを広範囲のマトリックス中で分散できる分散剤プラットフォーム技術の開発は重要である。
【0009】
カーボンナノチューブの文献としてはCNTsを分散するために試されるフタロシアニン類についてのいくつかの参考文献がある。
【0010】
例えば、X.Wangら(J−Mater.Chem.,2002,12,pp.636−1639)は、クロロホルム溶液からのテトラ−tert−ブチルフタロシアニンの非共有結合性の吸着によりカーボンナノチューブを官能基化させることを報告する。しかし得られた合成物の安定性を記述しない。また溶媒または他のマトリックスで分散される性能についても記述していない。
【0011】
Chemistry of Materials 2004,16,3940−3910は、ポリマー分散剤もまた溶剤の制限を有することを示し、ポリ(4−ビニルピリジン)がアルコール系溶剤でCNTsを分散できるが、水中ではできないことを示している。
【0012】
Y.Wangら(Materials Science and Engineering B 117,2005,296−301)は、マルチウォールカーボンナノチューブと銅フタロシアニンの複合体を形成し、次いで長いアリル鎖の両方への共有結合付加を開示する。著者は有機溶媒中での複合体の「高められた溶解性」を報告する。そして、UV−ビススペクトルは2つの「複合体」成分の間の強い電子相互作用を示している。しかしながら、MWCNTsと銅フタロシアニンが別々にポリマーマトリックス(ポリビニルブチラール)に組み込まれたとき、UV−ビススペクトルは、2つ間の顕著な電子相互作用の不在と、不良な分散性を示した。また、共有的にカーボンナノチューブに付加した化学基は、先に説明したように、望ましくないことに留意されるべきである。
【0013】
Maら(Journal of Cluster Science,2006,17, 599−608)は、シングルウォールカーボンナノチューブ上への銅と、銅を含まない2,9,16,23−テトラ−tert−ブチル−29H,31H−フタロシアニンの吸着を開示する。ナノチューブの限られた官能基付与が報告されるが、それらの分散性に関しては何も開示されていない。そのうえ、研究で利用された3種の溶媒(ジメチルホルムアミド、クロロホルム、および1,2−ジクロロベンゼン)は、SWCNTを幾分溶解することが知られている(Chem. Comm193−194、2001)。したがって、これらの実験は、フタロシアニンの使用が、SWCNTsを分散することは実際には開示していない。
【0014】
米国特許出願2007/0137701(WO2004/060988A3)は、ソルスパースRTM 5000(登録商標)の形のフタロシアニン色素の、キシレン中でカーボンナノチューブを分散するための使用を開示する。しかしながら、開示された表1に提示されたデータは、達成された分散度が非常に不良で、分散が安定していないことを示す(表1、XF001)。実際、二次的な相乗作用ポリマーが加えられたときのみ分散が起こる(表1、分散剤XF003−XF017)。
【0015】
Hattonら(Langmuir,2007,23,6424−6430)は、表面酸化マルチウォールカーボンナノチューブ(o−MWCNTs)とテトラスルホネート銅フタロシアニン(TS−CuPc)の相互作用を研究した。彼らは、TS−CuPcの水溶液中のo−MWCNTsの分散物はナノチューブの凝集に対して安定していて、均一フィルム上へのスピンキャスティングによりスポンジ状のナノ構造を示すことがわかった。フィルムはフタロシアニン分子自身が広がった凝集体内に集まって変成されたo−MWCNT「足場」で構成された。ドデシル硫酸ナトリウムのイオン特性は有効性のために限られたpH領域を必要とする。そして、分散効果は水性環境中に制限される。「足場」が任意の溶媒または他の有機溶媒中に分散する能力があるという示唆は全くない。さらに、X.Wangの場合では、使用されたナノチューブは化学変成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願2007/0137701
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Chemistry of Materials 2004,16,3940−3910
【非特許文献2】X.Wangら(J−Mater.Chem.,2002,12,pp.636−1639
【非特許文献3】Y.Wangら(Materials Science and Engineering B 117,2005,296−301)
【非特許文献4】Maら(Journal of Cluster Science,2006,17, 599−608)
【非特許文献5】Hattonら(Langmuir,2007,23,6424−6430)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
すなわち、文献においては、有機溶剤または他のメディア中で安定したナノチューブ分散体を生産できる分散剤、好ましくはカーボンナノチューブとの非共有結合性相互作用よるもの、を生成するための系統的なプロトコルは存在していない。そのような安定した分散体は、前記のナノチューブのユニークな性質の開発を可能にすることにおいて、すばらしい有用性を有するものであるだろう。したがって、SWCNTs、DWCNTs、およびMWCNTsが広範囲のマトリックス中で分散される分散剤プラットフォーム技術の開発は、技術的に顕著な重要性を有し、また商業的にも重要である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は(a) カーボンナノチューブの可溶化方法、(b) 分散剤で処理されたカーボンナノチューブを使用して形成された組成物、および(c)分散剤で処理されたカーボンナノチューブを使用して形成された組成物を含む物品に関する。以下でさらに詳細に本発明の様々な実施態様について説明する。
【0020】
1つの態様(a)では、本発明はカーボンナノチューブのための分散添加剤であって、 構造P−(U−Y)s、ここでPは金属含有または金属非含有フタロシアニンの残基であり、Yは500から5000g/molの間の分子量を有する相容化部位であり、UはYとPを共有結合する結合部位であり、sは1から4の整数である、を有するものに関する。
もう一つの態様(b)では、本発明はカーボンナノチューブと該分散添加剤を組み合わせた組成物に関する。異なる態様(c)では、本発明の組成物がマトリックス中に含まれている。マトリックスは、有機ポリマー、無機ポリマー、金属、セラミック、金属酸化物、カーバイド、エネルギー硬化可能な組成物、ナノ複合材、およびそれの組み合わせであることができるが、これらに制限されるものではない。またマトリックスは、電気伝導特性を有する流体、複合体、またはマスターバッチであることができる。非揮発性マトリックスは、硬化して固体を形成することができる。
【0021】
官能化された金属含有または金属非含有フタロシアニン類の操作で、さまざまな溶媒およびマトリックス中にCNTsを分散することが可能になる。本発明の分散剤とCNTとの相互作用は、共有結合ではなくむしろ非共有結合であると信じられている。したがって、CNTの基本的な電子構造とその主要な属性は影響を受けない。
【0022】
本発明によれば、カーボンナノチューブは、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)(1枚)、ダブルウォールカーボンナノチューブ(DWCNT)(2枚)、またはマルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)(3枚以上)であることができる。MWCNTsは、文献において定義されるように、わずかのウォールを有するもの(3から10枚)、またはより伝統的なマルチウォール(10枚以上)として記述されることができる。さらに、CNTsはバンブーカーボンナノチューブ、フィブリル、ナノ繊維、気相成長炭素繊維(VGCF)、またはシリンダー状カーボンストラクチャとして記述されることができる。さらに、カーボンナノチューブは、炭素に加えて他の元素、限定されるものではないが、たとえば窒素、ホウ素、酸素、硫黄、およびそれの混合物を含むか、またはこれらにより構成されていてもよい。カーボンナノチューブは窒化炭素ナノチューブまたは炭素窒化ほう素ナノチューブとして記述されていてもよい。
【0023】
本発明で利用されるカーボンナノチューブは、本発明の分散剤の添加の前に、ベア、初期物、非精製物、精製物、または変成された物でもよく、また所定の溶媒またはマトリックスに溶解性を持っていても、持っていなくてもよい。用語「ベア」、および/または、「初期物」、および/または、「非精製物」は、それらの化学的合成以後、処理をされていないか、またはほとんど処理をされていないCNTsを記述する。これらのタイプのCNTsは、主として合成プロセスから直接利用可能な材料をいうが、これに限定される物ではない。「精製物」CNTsの用語は、主としてCNTsに改良された特性を付与するために化学的に、および/または熱的に、および/または物理的に処理されたCNTsとして定義される。そのような処理の例としては、触媒またはアモルファス炭素を取り除くための酸処理、アモルファス炭素の除去、および/または、炭素欠陥部位の数を減少させるための熱アニーリングを含むが、これらに限定されない。さらに、CNTsはCNTの分散および処理を補助するためにCNT凝集物を破壊するためにメディア粉砕されることができる。カーボンナノチューブを精製する様々な方法とアプローチは文献中に記載されており、本発明では任意のテクニックで調製された材料を利用することができる。「変成」されたCNTとの用語は、溶媒またはマトリックス中における分散性またはそれらとの混和性を補助するために任意の方法で処理されたすべてのタイプのCNTを広く包含する。そのような方法は、可溶化基および/または更なる化学反応のための反応部位を提供するための有機基によるCNTへの官能基付与、および様々な分散剤(界面活性剤、ポリマーなど)によるCNTの処理を含むが、これらに限定されない。CNTsを変成する様々な方法が文献に見い出すことができる。そしてそのようなテクニックで調製された材料は本発明において利用されることができる。しかしながら、(U−Y)がカルボキシドデシルであるときには、CNTはカルボキシドデシルにより官能化されない。
【0024】
本発明で利用されるカーボンナノチューブ(CNTs)は、(a)レーザー蒸発テクニック、(b)電気アークテクニック、(c)ガス相テクニック、および(d)化学蒸着の任意の方法により製造することができるが、これらの方法に限定されるものではない。レーザー蒸発と電気アークテクニックでは、それぞれレーザビームまたは電気アークのどちらかを使用しながら、金属触媒の存在下または非存在下において、グラファイトを蒸発させることによって、CNTsが生産される。ガス相テクニックでは、通常、CNTsの連続した流れを起こすために、圧力と熱の下で触媒粒子のビーズを横切って炭素源が運ばれる。化学蒸着法では、通常、適切な条件の下で(熱、圧力など)触媒の存在下または非存在下において前駆体化合物を分解させ、カーボンナノチューブを形成することを含む。
【0025】
ナノチューブの分散
用語「分散」と「可溶化」は本明細書に互換性を持って使用される。分散または可溶化の用語が、本明細書において溶剤または他の液体システムに関係する文脈で使用される場合には、分散剤で処理されたCNTが遠心分離処理の後に溶液または分散体内に残る能力と定義される。例えば、検討されるCNTの所定量が、所定の溶媒またはマトリックス中の本発明の分散剤の既知量または増加した量で流体に加えられて、所定の期間にわたって超音波処理にかけられる。超音波処理の後に、流体は遠心分離管内に置かれて、同じ速度と時間で遠心分離される。その後安定した分散体の外観が光学的に(肉眼および光学的に拡大されて)確かめられる。銅フタロシアニンベースの分散剤に関しては、CNTの表面に吸着される本発明の分散剤の能力は、上澄みにおける銅フタロシアニン分散剤からの青色の喪失と、カーボンナノチューブを分散するのに必要な分散剤の量以下の黒い沈殿物の存在により確認されることができる。
【0026】
分散または可溶化レベルでの、またはそれ以上での分散剤濃度で、遠心分離の後に得られる上澄みの色は暗い黒である。CNTを分散するのに必要な分散剤の量は、カーボンナノチューブソースとタイプに直接関連する。具体的なCNTによっては、臨界的な分散または可溶化レベル以上の場合でさえいくらかの黒い沈殿物があることがあり、これはアモルファス炭素不純物質または非常にからみ合ったCNT凝集物であることがある。そのような残留堆積物の量は直接炭素ナノチューブソースとタイプに直接関連する。遠心分離の後に、得られた上澄みCNT分散物は、少なくとも1週間更なる沈殿または凝集に対して安定であり、何カ月の間でさえ安定した状態を保つことができた。CNTsはろ別されることができるが、この分離はそれらの分散物または溶解物ではなく、より大きなサイズの物に関する。
【0027】
ポリマーまたは他の非流体マトリックスに関係する文脈では、分散または溶解物はホストマトリックスにおける、CNTsの均一分布と定義され、どんな微粒子も肉眼で目に見えない。そのようなナノ複合材のフィルムまたはファイバーを形成する標準的な方法は、ソルベントキャスト法または溶融押出法である。
【0028】
ナノチューブのための分散剤
式P(U−Y)s、ここでPは金属含有または金属非含有フタロシアニンの残基であり、Yは500から5000g/molの間の分子量を有する相容化部位であり、UはYとPを共有結合する結合部位であり、sは1から4の整数である、のカーボナノチューブ分散剤。
【0029】
フタロシアニンの金属は、銅、アルミニウム、亜鉛、およびフタロシアニン錯体を作り出すことが知られている他の元素であることができるが、これらに制限されるものではない。金属含有または金属非含有フタロシアニンは、500から5000g/molの間の分子量の相容化部位に加えて追加の官能性基を含んでもよい。そのような官能基性は、たとえばハロゲン、短鎖アルキル基、アルコール、アミン、エステルであることができるが、これらに制限されるものではない。Uの結合部位は、たとえば −C−、−O−、−S−、−NH−、−COO−、−CONH−、−NHSO−、−CO−、−N−、C−Cアルキルおよびそれの組み合わせであることができるが、これらに制限されるものではない。
Yの相容化部位は500から5000g/molの間の分子量の、任意の構造のものであることができる。
【0030】
Yの相容化部位は、繰り返しのモノマーまたはコポリマー単位であることができ、したがってポリマーであるとして定義することもできるが、必ずしもポリマーでなければならないわけではない。Y部位として使用できる代表的な部位は、ポリアルキレン、ポリアルキレンオキシド、ポリエーテルアミン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタン、および相溶性をホストマトリックスに提供する他のシステムであることができるが、これらに制限されるものではない。
【0031】
Y相容化部位を提供するのに適当な市販の材料の部分的なリストは以下の通りである。ポリエーテルアミン、たとえばJeffamine(登録商標) M−600、M−1000、M−2005、M−2070、D−230、D−400、D−2000、D−4000、HK−511、ED−600、ED−900、ED−2003、EDR−148、EDR−176、T−403、T−3000、T−5000、およびXTJ−436のような、Huntsman Chemical から販売されるJeffamine(登録商標)シリーズのようなもの;ポリアミン、たとえばJeffamine(登録商標) SD−231、SD−401、SD−2001、およびST−404のようなJeffamine(登録商標)シリーズ、およびビーエーエスエフ製品のJ、PolyTHF(登録商標)またはKerocom(登録商標)PIBA;また、Yの相容化部位は一層の相互作用がホストマトリックスとの間で起こる追加の反応性官能基部位を含んでもよい。
そのような分子の例としては、JEFFAMINE(登録商標) EDR−148、EDR−176、T−403、T−3000、およびT−5000があげられるが、これらに制限されるものではない。
【0032】
Yの相容化部位は、直鎖または分岐鎖であってもよいか、またはそれらの組み合わせであることができる。また、当該技術分野で知られているように、それはπ−π、双極子−双極子、またはドナー−受容体相互作用を通してさらにカーボンナノチューブと相互作用できる基を含んでもよい。数「s」は、1から4であることができ、望ましくは2以下である。
【0033】
本発明に使用される分散剤は、任意の公知の方法によって調製されることができる。本明細書に記載された分散剤を調製するための方法の例としては、米国特許No.4,946,508;4,946,509;5,024,698;5,062,894に記載された方法と、以下の実施例に示される方法があげられる。以下は本発明にかかる分散剤の1つの例である:
【0034】
【化1】

【0035】
式中、Yは以下の式のポリアルキレンオキシドまたはポリアルキレン:
【0036】
【化2】

【0037】
式中、nは約4から約400であり、a、b、c、およびdは整数であり、合計が1から4であり、QはH、CHまたはそれらの組み合わせであり、Q’はC−Cアルキル部位である。
【0038】
本発明のP(U−Y)s分散剤のカーボンナノチューブとの重量/重量比率は、カーボンナノチューブのタイプ、ソース、およびカーボンナノチューブ処理レベル、Yの分子量および整数sの値に依存する。MWCNTsに関しては、一般に上記の比率は0.01から2の間、望ましくは0.05から1の間である。DWCNTsに関しては、一般に上記の比率は0.1から40の間、望ましくは0.2から20の間である。SWCNTsに関しては、一般に上記の比率は0.5から100の間、望ましくは1から60の間である。
【0039】
ナノチューブ分散プロセス
本発明の分散剤を使用して溶媒中にカーボンナノチューブの分散体を形成するのに適した方法は超音波処理である。例えば、検討されるCNTの所定量が、本発明の分散剤を含む所定の溶剤に加えられ、一定期間にわたって超音波処理にかけられる。典型的には超音波発生装置は、ブランソン(Branson)によるバス超音波発生装置であることができ、またはHielscher Inc.または Misonix,Inc.のホーン型のデザインの超音波処理装置である。本発明の分散剤を使用して溶媒中にカーボンナノチューブの分散体を形成するのに適した他の方法はメディア粉砕である。例えば、検討されるCNTの所定量が本発明の分散剤を含む所定の溶剤に加えられ、一定期間にわたってメディア粉砕される。メディア粉砕の例としては、ボールミル、サーキュレーションミル(必要に応じて遠心流れを伴う)、内部的に振動される高エネルギーメディアミル(オハイオ州アクロンのUnion Processからの、SDM−シリーズアトライタ、またはNetzsch Fine Particle Technology,Exton, PAからのPRKバッチアトライタなど)、連続アトライタ、水平または垂直ディスクミル、バスケットミルおよびパールミルズ(Perl Mills、Buhler AG、Uzwil、スイス)があげられる。本発明の分散剤を使用して溶媒中にカーボンナノチューブの分散体を形成するのに適した他の方法は、高剪断混合である。適切な刃を取り付けたDispermat、ホモジナイザー、またはロートスタットのような装置が分散体の製造のために使用できる。
【0040】
本発明の分散剤を使用して高分子ホスト中に直接CNTsの分散体を調製するために適した方法は溶融混合である。システムに応じて、少量の溶媒が溶融混合の際に存在してもよいし存在しなくてもよい。Brabender GmbH社およびXaloy Inc.によって生産された装置が適切である。
【0041】
溶媒または固体マトリックス中にカーボンナノチューブ分散体を調製する任意の他の公知の方法も本発明の更なる方法である。上記の方法を利用して満足できる分散体を得るのに必要な時間は、カーボンナノチューブ添加量とタイプ、マトリックス、設備のタイプなどのパラメータに依存して変化し、数秒から数時間にも及ぶことがある。
【0042】
ナノチューブ分散媒体
分散体または可溶化溶媒は、有機または水性であることができ、例えば、水、クロロホルム、クロロベンゼン、水、酢酸、アセトン、アセトニトリル、アニリン、ベンゼン、ベンゾニトリル、ベンジルアルコール、ブロモベンゼン、ブロモホルム、1−ブタノール、2−ブタノール、二硫化炭素、四塩化炭素、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、デカリン、ジブロムエタン、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールエーテル、ジエチルエーテル、ジグライム、ジメトキシメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、エタノール、エチルアミン;エチルベンゼン、エチレングリコールエーテル、エチレングリコール、エチレングリコール酢酸塩、プロピレングリコール、プロピレングリコール酢酸塩、酸化エチレン、ホルムアルデヒド、蟻酸、グリセリン、ヘプタン、ヘキサン、ヨードベンゼン、メシチレン、メタノール、メトキシベンゼン、メチルアミン、臭化メチレン、メチレンクロリド、メチルピリジン、モルホリン、ナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロメタン、オクタン、ペンタン、ペンチルアルコール、フェノール、1−プロパノール、2−プロパノール、テルピネオール、テキサノール、カルビトール、カルビトール酢酸塩;ブチルカルビトール酢酸塩、二塩基エステル、プロピレンカルボネート、ピリジン、ピロール、ピロリジン、キノリン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラリン、テトラメチルエチレンジアミン、チオフェン、トルエン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トリエチルアミン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、1,3,5−トリメチルベンゼン、m−キシレン、o−キシレン、p−キシレン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、N−メチル−2−ピロリドン、メチルエチルケトン、ジオキサン、またはジメチルスルホキシドがあげられる。本発明のある実施態様では、溶媒は1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、クロロホルム、メチレンクロリド、1,2−ジクロロエタンまたはクロロベンゼンなどの有機ハロゲン化物溶媒である。
【0043】
ナノチューブの単離と再分散
分散剤で処理されたCNT固体は、分散液/溶液から当業者に周知の多くの標準的な手順または本発明の実施態様の1つにより溶媒を取り除くことによって得られることができる。そのような標準的な手順としては、蒸発乾固、たとえば真空蒸発または熱による蒸発、キャスティング、沈殿、または濾過などがあげられる。分散剤で処理されたCNTsを沈殿させるために、官能化された金属含有または金属非含有フタロシアニンの相溶化部位の極性と反対の極性を持っている液体が使用されることができる。固体成分はカーボンナノチューブの均一なネットワークのため色がしばしば黒い。固体成分は、微粉化され粉末にされてもよい。
【0044】
固体の分散剤で処理されたCNT材料は、たとえばより簡単な出荷、取り扱い性、貯蔵性、より長い貯蔵安定性などの点で、CNTsの分散液/溶液に比較して利点がある。
【0045】
また、固体の分散剤で処理されたCNT材料は、CNTのホストマトリックスへの組み込みを支援するために使用されてもよい。ホストマトリックスは、ポリマー、セラミック、金属、金属酸化物、およびそれの組み合わせであることができる。本明細書に記載されるように、固体の分散剤で処理されたCNTの材料を含むホストマトリックス(ポリマーまたは非ポリマー)は、本発明の1つの実施態様である。
【0046】
上記のようにして得られた分散剤で処理された固体のCNTsは、分散剤で処理された固体のCNTsを、再分散または再溶解溶媒と混合することによって再分散または再溶解することができる。再分散または再溶解に関連して使用される「混合」という用語は、分散剤で処理された固体のCNTsと、再分散または再溶解溶媒とを互いに接触させることを意味する。再溶解のための「混合」は、単に激しい振動、高剪断混合を含んでもよいか、または約30秒から約3時間の超音波処理を含んでもよい。
【0047】
再分散または再可溶化溶媒は、分散または溶解溶媒と同じであってもよいか、または異なった溶媒であってもよい。従って、再分散溶媒は、有機または水性であることができ、例えば、水、クロロホルム、クロロベンゼン、水、酢酸、アセトン、アセトニトリル、アニリン、ベンゼン、ベンゾニトリル、ベンジルアルコール、ブロモベンゼン、ブロモホルム、1−ブタノール、2−ブタノール、二硫化炭素、四塩化炭素、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、デカリン、ジブロモメタン、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールエーテル、ジエチルエーテル、ジグライム、ジメトキシメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、エタノール、エチルアミン;エチルベンゼン、エチレングリコールエーテル、エチレングリコール、酸化エチレン、ホルムアルデヒド、蟻酸、グリセリン、ヘプタン、ヘキサン、ヨードベンゼン、メシチレン、メタノール、メトキシベンゼン、メチルアミン、臭化メチレン、メチレンクロリド、メチルピリジン、モルホリン、ナフタリン、ニトロベンゼン、ニトロメタン、オクタン、ペンタン、ペンチルアルコール、フェノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ピリジン、ピロール、ピロリジン、キノリン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラリン、テトラメチルエチレンジアミン、チオフェン、トルエン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トリエチルアミン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、1,3,5−トリメチルベンゼン、m−キシレン、o−キシレン、p−キシレン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、N−メチル−2−ピロリドン、メチルエチルケトン、ジオキサン、またはジメチルスルホキシドがあげられる。本発明のある実施態様では、再分散溶媒は1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、クロロホルム、メチレンクロリド、1,2−ジクロロエタンのような有機ハロゲン化物溶媒であり、さらなる実施態様においては再分散溶媒はクロロベンゼンである。固体の分散剤で処理されたCNT材料と再分散溶媒を組み合わせた、再分散された固体分散剤で処理されたCNTの材料の分散体は、本発明の1つの実施態様である。
【0048】
ホストポリマーマトリックス
本明細書で使用される「ホストポリマーマトリックス」の用語は、内部に処理されたCNTが分散されているポリマーマトリックスを意味する。ホストポリマーマトリックスは、有機ポリマーマトリックス、無機ポリマーマトリックス、またはそれの組み合わせであってもよい。
【0049】
ホストポリマーマトリックスの例としては、ナイロン、ポリエチレン、エポキシ樹脂、ポリイソプレン、SBSゴム、ポリジシクロペンタジエン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリ(フェニレンオキシド)、シリコーン類、ポリケトン、アラミド、セルロース、ポリイミド、レーヨン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(ビニリデンフルオリド)、炭素繊維、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリイソブチレート、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリビニルピロリドン、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリ(アリーレンエチニレン)、ポリ(フェニレンエチニレン)、ポリチオフェン、熱可塑性のポリエステル樹脂(たとえばポリエチレンテレフタレート)、熱硬化性樹脂(例えば熱硬化性ポリエステル樹脂またはエポキシ樹脂)、ポリアニリン、ポリピロール、またはPARMAX(登録商標)などのポリフェニレン、たとえば、他の共役ポリマー(例えば、導電性ポリマー)、またはそれの組み合わせがあげられる。
【0050】
ホストポリマーマトリックスの更なる例としては、熱可塑性樹脂、たとえばエチレンビニルアルコール;ポリテトラフルオロエチレン、フルオロエチレンプロピレン、ペルフルオロアルコキシアルカン、塩化三フッ化エチレン、エチレン塩化三フッ化エチレン、またはエチレンテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂;アイオノマ、ポリアクリレート、ポリブタジエン、ポリブチレン、ポリエチレン、ポリエチレンクロリネート、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、硫化ポリフェニレン、ポリフタルアミド、ポリスルホン、またはポリウレタンがあげられる。ある実施態様では、ホストポリマーとしては熱硬化性樹脂が含まれる。たとえば、アリル樹脂、メラミンホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒドプラスチック、ポリエステル、ポリイミド、エポキシ、ポリウレタン、またはそれの組み合わせなどがあげられる。
【0051】
無機ホストポリマーの例としては、シリコーン類、ポリシラン、ポリカルボシラン、ポリジャーマン(polygermane)、ポリスタナン(polystannane)、ポリホスファゼン、またはそれの組み合わせがあげられる。
【0052】
本明細書に使用される「ホスト非ポリマーマトリックス」は、内部に分散剤で処理されたCNTが分散されている非−ポリマーマトリックスを意味する。ホスト非−ポリマーマトリックスの例としては、セラミックマトリックス(炭化けい素系、炭化ほう素、または窒化ホウ素など)、金属マトリックス(アルミニウム、チタニウム、鉄、または銅など)、金属酸化物マトリックス(シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニアなど)、またはそれの組み合わせがあげられる。
【0053】
本明細書に使用される「エネルギー硬化可能なホストマトリックス」という用語は、放射線または熱エネルギー源からのエネルギーへの暴露により固体に硬化可能であることを特徴とするビヒクルを意味する。放射線硬化可能なビヒクルは、典型的には一個以上の低分子量の一官能性または多官能性モノマーを含む。これらの成分は硬化の際にモノマーと反応することができる。エネルギー硬化可能なビヒクルは、それが放射線または熱エネルギー源からのエネルギーへの暴露により固体に硬化可能であることを特徴とする。ビヒクルは、電子ビーム源からの高いエネルギー電子への暴露などのような、エネルギーへの暴露で固体に硬化されてもよい。あるいはまた、ビヒクルの硬化は本明細書の以下に詳細に説明されるような、エネルギー活性化重合開始システム(例えば、紫外線による)によって開始されてもよい。この文脈においては、重合開始システムはエネルギー硬化可能なビヒクルの任意要素であると考えられてもよい。ビヒクルは、開環重合性組成物、フリーラジカル付加重合性組成物、または開環重合とフリーラジカル重合の組み合わせであってもよい。どちらの組成物でも、少なくとも液体ビヒクル中の反応性モノマーの重合および/または架橋により、ビヒクルは硬化される。環境汚染を抑えて、配合の完全性を維持するために、ビヒクルは周囲環境での印刷条件の下で低揮発性を有する成分で通常配合される。
【0054】
ビヒクルが開環重合性組成物であるときに、それはエネルギー開始の際に通常エステル、またはエーテル結合によって結合されたポリマーを形成する。
【0055】
本発明の実施態様は、一個以上のモノ官能性または多官能性のエポキシドを含むカチオン型重合可能システムである。ビヒクルは少なくとも1つの脂環式エポキシドを通常含んでいる。そのような脂環式エポキシドの例としては、エポキシドと、たとえばグリコール類、ポリオール、またはビニルエーテルなどヒドロキシル成分との付加体であり、たとえば3,4−エポキシクロヘキシルメチル3,4エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート;リモネンモノエポキシド;リモネンジエポキシド;ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル;1−ビニル−3,4エポキシシクロヘキサン;エポキシ化ジシクロペンチルアルコール;または、それらの混合物があげられる。このタイプの好ましい脂環式エポキシドは、3,4−エポキシクロヘキシルメチル3,4エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;1,3−ビス(2−(7−オキサビシクロ(4.1.0)ヘプタ−3−イル)エチル)−l,l,3,3−テトラメチルジシロキサンである。脂環式エポキシドに加えて、一個以上の非脂環式エポキシド、たとえばジ−またはトリ−グリシジルエーテル、アルコキシル化ビスフェノールA、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン;ネオペンチルグリコール、またはトリメチロールプロパンが存在してもよい。
【0056】
エポキシ希釈剤は同様にビスフェノールAのジグリシジルエーテル;アルファオレフィンエポキシド、ノボラックエポキシド、エポキシ化亜麻仁油、大豆油;エポキシ化ポリブタジエン;1,2−エポキシデカン;カプロラクトントリオール;グリシジルエーテル; アルキルグリシジルエーテル;エポキシ化シラン;グリシドキシメトキシシラン、グリシドキシエトキシシラン;2−エチルヘキシルグリシジルエーテルであることができる。そのようなエポキシ組成物は、典型的には活性放射線で活性化可能なカチオン型開始システムを含んでいる。好ましいエポキシ希釈剤は2−エチルヘキシルグリシジルエーテルである。
【0057】
エネルギー硬化可能なビヒクルがフリーラジカル付加重合性組成物であるときに、ビヒクルは、端末エチレン性不飽和を有する化合物を含む。典型的には、ビヒクルはエチレン性不飽和のモノ官能性または多官能性モノマーを含むフリーラジカル付加重合可能なシステムである。モノマーは、吸収されたエネルギーで発生するフリーラジカルによって重合が開始されたときにポリマーを形成する、低分子量のエチレン性不飽和化合物である。いくつかの配合物では、さらに重合されることができるオリゴマー性またはポリマー成分も存在していてもよい。そのような場合、さらに重合可能な物質が、モノマービヒクル内に可溶化され、または分散される。
【0058】
典型的には、モノマー化合物には、1つ、2つまたはそれ以上の末端エチレン性不飽和基がある。そのようなモノマー化合物の代表例は以下の通りである:N−ビニルピロリジノン;ジプロピレングリコールジアクリレート;トリプロピレングリコールジアクリレート;ブタンジオールジアクリレート;ヘキサンジオールジアクリレート;トリメチロールプロパン トリアクリレート;エトキシル化 トリメチロールプロパン トリアクリレート;グリセリン−プロポキシ トリアクリレート;ペンタエリトリトール トリアクリレート;ジプロピレングリコ−ルジメタクリレート;トリプロピレングリコールジメタクリレート;ブタンジオールジメタクリレート;ヘキサンジオールジメタクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート;ビスフェノールAのジ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルエーテル);ビスフェノールAのジ−(2−メタクリロキシエチルエーテル);ビスフェノールAのジ(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルエーテル);ビスフェノールAのジ(2−アクリロキシエチルエーテル);および同種のものがあげられる。
【0059】
所望の粘度と架橋特性を達成するために、モノマー組成物は典型的には一つの末端エチレン性基を含むモノマーと共に、多官能性アクリルモノマーを含む。
【0060】
本発明の組成物がオリゴマー性またはポリマー材料を含むとき、前記材料には、エチレン性不飽和モノマーと反応できるエチレン性不飽和が含まれる。そのようなオリゴマーの代表例はアクリル化エポキシ樹脂;アクリル化ポリウレタン;アクリル化ポリエステル;および同様のものである。
【0061】
本発明の組成物は、プリフォームドポリマー、たとえばC−Cアルキルアクリレートまたはメタクリレート、またはアクリル酸またはメタクリル酸のアクリルポリマーまたはコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのビニルポリマーまたはコポリマー、セルロースポリマーおよびコポリマー、または同様の物を含んでもよい。
【0062】
組成物が特にEB硬化用に配合されない場合には、UVのような活性放射線または熱放射により活性化可能な重合開始システムを含む。そのような光開始剤システムは、活性放射線によって活性化されたときに直接カチオンまたはフリーラジカルを提供する一個以上の化合物を含む。
【0063】
UVカチオン重合開始剤システムは、本明細書に記載されたエポキシ組成物などのシステムにおける開環重合を起こすのに通常使用される。そのようなカチオン重合開始剤システムとしては、活性放射線への暴露の際にルイス酸またはブレンステッド酸を遊離するすべての物質が含まれる。エネルギー硬化可能な組成物で特に有用なカチオン型光開始剤システムとしては、アリールスルホニウム塩、特にはトリアリールスルホニウム燐酸塩、トリアリールスルホニウムアンチモン酸塩、トリフェニルスルホニウム六ふっ化りん酸塩などのトリアリールスルホニウム塩、およびジアリールスルホニウム塩;ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、ピスドデシルジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、および同様のものなどのアリールヨードニウム塩類があげられる。そのようなカチオン型光開始剤は、適当な硬化をするために単独または組み合わせで使用されてもよい。
【0064】
熱カチオン型重合開始剤システムでは、ブロックされた酸が典型的に使用される。なぜならブロックが解除されるまで、エポキシの開環重合が開始されないからである。熱放射が酸のブロックを解除し、強酸性物質を発生させ、それがエポキシ開環重合を開始する。「ブロックされた」酸類のいくつかの例は、Nacure TLC 1412(King Industries)、FC−122およびFC−520(3M、St. Paul, Minn.から利用可能)、およびCP−66(Ciba、White Plains, N.Y.から利用可能)である。
【0065】
フリーラジカル重合開始剤システムも使用されることができ、重合を開始するフリーラジカルを発生するために光開始剤の照射を通常必要とする。これらのさまざまな光開始剤が本発明のエネルギー硬化可能なインクで使用されることができる。いくつかについて説明するが、例えば、B.M.Monroe およびG.C.Weed、Photoinitiators for Free−Radical−Initiated Photo−Imaging Systems,Chem.Rev.93,pp.435−48(1993)が、本明細書中に参考として援用される。光開始剤の例としては、チオキサントン、エチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、アルファアミノアセトフェノン、およびミヒラーケトンを含んでいる。
【0066】
ナノ複合材は、それ自身が、分散剤処理されたCNTの添加の際に、多官能性ナノ複合材を形成するホストマトリックスとして使用することができる。ナノ複合材ホストの例としては:連続繊維(例えば炭素ファイバー、カーボンナノチューブファイバー、カーボンブラック、カーボンロッド、カーボンナノチューブナノ複合材ファイバー、ケブラー(KEVLAR(登録商標))ファイバー、ザイロン(ZYLON(登録商標))ファイバー、スペクトラ(SPECTRA(登録商標))ファイバー、ナイロン繊維、ベクトラン(VECTRAN(登録商標))ファイバー、ダイニーマ(Dyneema)ファイバー、グラスファイバー、またはそれの組み合わせ)、不連続繊維(例えば炭素ファイバー、カーボンナノチューブファイバー、カーボンナノチューブナノ複合材ファイバー、ケブラーファイバー、ザイロンファイバー、スペクトラファイバー、ナイロン繊維、またはそれの組み合わせ);ナノ微粒子(例えば金属粒子、ポリマー粒子、セラミック粒子、ナノクレイ、ダイヤモンド粒子、またはそれの組み合わせなど)、およびマイクロ粒子(例えば金属粒子、ポリマー粒子、セラミック粒子、クレイ、ダイヤモンド粒子、またはそれの組み合わせなど)があげられる。更なる実施態様では、連続繊維、不連続繊維、ナノ微粒子、マイクロ粒子、マクロ粒子、またはそれの組み合わせは、第一のフィラーであり、剥離しているナノ材料は二次フィラーである。
【0067】
二個以上のホストマトリックスがナノ複合材中に存在していてもよい。二個以上ホストマトリックスを使用することによって、分散剤で処理されたCNTsをナノコンポジット材料のマトリックスに加えた単一のホストマトリックスナノ複合材の機械的、熱的、化学的、または電気的特性は最適化される。
【0068】
多くの現存する材料はマトリックスに炭素ファイバーなどの連続繊維を使用する。これらのファイバーはカーボンナノチューブよりはるかに大きい。分散剤で処理されたCNTsの連続繊維で強化されたマトリックスへの添加は、改良された耐衝撃性、低減された熱ストレス、低減されたマイクロクラック、低減された熱膨張率、または向上された横方向または厚さ方向での熱伝導性のような改良された特性を有する多機能ナノコンポジット材料を与える。多機能ナノ複合材構造の結果として得られる利点としては、たとえば改良された耐久性、改良された形態安定性、極低温燃料タンクまたは圧力容器での漏出の防止、改良された厚み方向または面内方向での熱伝導率、改良されたアースまたは電磁波障害(EMI)シールド、向上したフライホイールエネルギー貯蔵、またはオーダーメードのラジオ周波数署名(ステルス)(tailored radio frequency signature(Stealth))があげられる。改良された熱伝導率は、赤外線(IR)署名(infrared (IR) signature)を低減することができる場合がある。本明細書に提供されるナノ複合材は、難燃性材料、改良された光学的性質を有する材料、エックス線シールド用材料、殺菌用途のための材料、化学的または環境に対する抵抗性材料、およびセンシングのための材料としても有用である。
【0069】
分散剤で処理されたCNTsの最終用途
本発明の分散剤で処理されたCNT分散体は、インクおよびコーティングの製造に利用されることができる。そのような組成物は、当該技術分野で知られているように、樹脂、着色剤、湿潤剤、フィラーなどの物質を含み、所望の最終用途の特性を獲得するのに使用される。導電層を形成する組成物を基板に適用する方法としては、コーティング、スプレー、印刷、およびペイントがあげられる。この組成物に適切な印刷技術としては、凸版印刷、スクリーン、ロータリースクリーン、グラビア、リソグラフィ、インクジェット、凹版印刷、およびフレキソ印刷があげられる。組成物は各種タイプのセルロース基体(すなわち、紙、段ボール)、およびポリエステル、ポリプロピレンなどのプラスチックに適用されることができる。
【0070】
基体に適用された後に、本発明の液体組成物は、公知の多くのテクニックと方法を使用して乾燥できる。印刷技術を使用することで調製されたものについて、溶剤を除去しおよび層を硬化/アニールするために、プレスはIR乾燥機、強制熱風送風機、アニーリングローラー、またはマイクロウエーブユニットを備えることができる。あるいはまた、印刷されたものは、プレスで部分的に乾燥した後、乾燥オーブン内に置くか、または別の乾燥システムを通して送ることができ、さらに硬化/アニールすることができる。
【0071】
改良された特性を付与するために、本発明の分散剤で処理されたCNTはホストマトリックスに組み入れられることができる。利用されたCNTのタイプと添加量に応じて、電気伝導特性、熱伝導率、弾性率、引裂強さ、破断強さ、堅さ、硬度、およびそれらの組み合わせなどが改良される。
【0072】
本明細書に詳しく説明される本発明の分散剤で処理されたCNTsを含む製品は、本発明の実施態様である。分散体、再分散固体、または固体、またはそれらの組み合わせとして、製品または製品の部品の製造中の任意の時点で、分散剤で処理されたCNTsを製品に加えることができる。そのような製品の例としては、エポキシ、エンジニアリングプラスチック複合材料、フィルタ、アクチュエータ、接着剤複合材料、エラストマ複合材料、温度管理のための材料(界面物質、宇宙船ラジエータ、航空電子工学的エンクロージャ、およびプリント回路板の熱プレーン、熱伝導のための材料、たとえばコーティングなど)、航空機、船のインフラストラクチャ、および自動車構造物、宇宙船およびセンサーのための改良された寸法安定性構造物;空、海、および陸上の乗り物保護のためのパネルなどのバラスト用途、甲冑、保護ベスト、およびヘルメット、パラシュートにおける使用のための引き裂き抵抗性材料、再使用型宇宙輸送機極低温燃料タンク、およびライニングされていない圧力容器;燃料配管、電子製品、光電子製品、または微小電子機械製品またはサブシステムの包装、迅速なプロトタイピングの材料、燃料タンク、医用素材、複合繊維、エネルギー備蓄のための改良されたフライホイール、スポーツ、および消費財、Oリング、ガスケット、またはシールがあげられる。
【0073】
バッテリー、コンデンサー、またはスーパーコンデンサーなどの光起電装置またはエネルギー蓄積装置において、分散剤で処理されたCNTの材料は利用されることができる。また、米国特許7,265,174と7,060,241で開示されるように、透明導電膜において本発明の材料は利用されることができる。
【0074】
以下の例はさらに本発明の様々な態様を示すために提供され、本発明の範囲を限定することは意図されない。特に記載していない限り、すべての温度が摂氏である。そしてすべての部と割合は重量に基づく。
【0075】
実施例1
分散剤Aは、数平均分子量約2000の、1級アミン末端のポリ(酸化エチレン/酸化プロピレン)(6/29)コポリマー(Huntsman社からのジェファミンM−2005として利用可能)の692部と、炭酸ナトリウム66部との混合物に、銅フタロシアニン塩化スルホニル(任意の慣用法によって作られてもよい)の210部を含むプレスケーキを加え、混合することにより調製された。最終的な反応混合物は、水を取り除くために真空下で80−90℃に加熱され、分散剤Aを生成した。
【0076】
20mLの沈降管(scintavial)に10.0mgのNanoBlack II(MWCNTs、Columbian ChemicalCorp.)および15mLの酢酸エチル中の4.0mgの分散剤Aを投入した。混合物は、1時間静置され、酢酸エチル中の分散剤Aを溶解し、深い青色の溶液と、管の底部に沈むNanoBlack IIの黒い粒子を得た。次に沈降管はブランソン(Branson)2510超音波発生装置の浴中に置かれて、最大の力で90分間、超音波処理された。90分後、超音波処理浴の水を水道水に取り替え、2回目の90分の超音波処理を行った。得られた暗い黒い溶液はK Prima−15R遠心分離機(Composite Rotor Inc.)で30分間、10,000RPMで遠心分離された。分散液は黒色のままであり、遠心分離管の底部に少量の沈殿があった。酢酸エチル中の分散CNTsの存在は、上澄みの乾燥試料の走査電子顕微鏡観察によって確認された。最初のMWCNT粉について得られたイメージと比べて、MWCNTsの脂ぎっている外観により、NanoBlack IIの表面に吸着された分散剤Aの存在は明白である。デカントされたCNT分散液は、1週間より長い間安定であった。
【0077】
実施例2
20mLの沈降管に10.0mgのNanoBlack II(MWCNTs)および15mLの酢酸エチル中の2.5mgの分散剤Aを投入した。混合物は、1時間静置され、酢酸エチル中の分散剤Aを溶解し、深い青色の溶液と、管の底部に沈むNanoBlack IIの黒い粒子を得た。次に沈降管はブランソン2510超音波発生装置の浴中に置かれて、最大の力で90分間、超音波処理された。90分後、超音波処理浴の水を水道水に取り替え、2回目の90分の超音波処理を行った。1時間の静置の後、沈殿管内の溶液は底部の黒色の沈殿以外は透明な溶液であった。超音波処理と遠心分離後の沈殿管内における分散剤Aからの深い青色の喪失は、NanoBlack IIの表面への分散剤Aの強い吸着と、酢酸エチル中にNanoBlack IIを分散させるに必要な量より少ないことに一致する。
【0078】
実施例3− 比較例
20mLの沈降管に10.0mgのNanoBlack II(MWCNTs)および15mLの酢酸エチルを投入した。沈降管はブランソン2510超音波発生装置の浴中に置かれて、最大の力で90分間、超音波処理された。90分後、超音波処理浴の水を水道水に取り替え、2回目の90分の超音波処理を行った。2回目の超音波処理の後、管の底部に黒い粒子が存在し、CNT分散の兆候は見られなかった。
【0079】
実施例4
20mLの沈降管に4.3mgのElicarb MWCNTs(Tomas Swan & Co.)および15mLの酢酸エチル中の2.1mgの分散剤Aを投入した。混合物は、1時間静置され、酢酸エチル中の分散剤Aを溶解し、深い青色の溶液と、管の底部に沈むElicarb MWCNTsの黒い粒子を得た。次に沈降管はブランソン2510超音波発生装置の浴中に置かれて、最大の力で90分間、超音波処理された。90分後、超音波処理浴の水を水道水に取り替え、2回目の90分の超音波処理を行った。得られた暗い黒い溶液はK Prima−15R遠心分離機(Composite Rotor Inc.)で30分間、10,000RPMで遠心分離された。分散液は黒色のままであり、遠心分離管の底部に少量の沈殿があった。酢酸エチル中の分散CNTsの存在は、上澄みの乾燥試料の走査電子顕微鏡観察によって確認された。最初のMWCNT粉について得られたイメージと比べて、MWCNTsの脂ぎっている外観により、Elicarb MWCNTsの表面に吸着された分散剤Aの存在は明白である。デカントされたCNT分散液は、1週間より長い間安定であった。
【0080】
実施例5
20mLの沈降管に4.3mgのElicarb MWCNTs(Tomas Swan & Co.)および15mLの酢酸エチル中の1.2mgの分散剤Aを投入した。混合物は、1時間静置され、酢酸エチル中の分散剤Aを溶解し、深い青色の溶液と、管の底部に沈むElicarb MWCNTsの黒い粒子を得た。次に沈降管はブランソン2510超音波発生装置の浴中に置かれて、最大の力で90分間、超音波処理された。90分後、超音波処理浴の水を水道水に取り替え、2回目の90分の超音波処理を行った。1時間の静置の後、沈殿管内の溶液は底部の黒色の沈殿以外は透明な溶液であった。超音波処理と遠心分離後の沈殿管内における分散剤Aからの深い青色の喪失は、Elicarb MWCNTsの表面への分散剤Aの強い吸着と、酢酸エチル中にElicarb MWCNTsを分散させるに必要な量より少ないことに一致する。
【0081】
実施例6− 比較例
20mLの沈降管に4.3mgのElicarb MWCNTs(Tomas Swan & Co.)および15mLの酢酸エチルを投入した。沈降管はブランソン2510超音波発生装置の浴中に置かれて、最大の力で90分間、超音波処理された。90分後、超音波処理浴の水を水道水に取り替え、2回目の90分の超音波処理を行った。2回目の超音波処理の後、管の底部に黒い粒子が存在し、CNT分散の兆候は見られなかった。
【0082】
実施例7
20mLの沈降管に20.0mgのNanocyl 2100 DWCNTsおよび15mLの酢酸エチル中の20.0mgの分散剤Aを投入した。混合物は、1時間静置され、酢酸エチル中の分散剤Aを溶解し、深い青色の溶液と、管の底部に沈むNanocyl 2100 DWCNTsの黒い粒子を得た。次に沈降管はブランソン2510超音波発生装置の浴中に置かれて、最大の力で90分間、超音波処理された。90分後、超音波処理浴の水を水道水に取り替え、2回目の90分の超音波処理を行った。得られた暗い黒い溶液はK Prima−15R遠心分離機(Composite Rotor Inc.)で30分間、10,000RPMで遠心分離された。分散液は黒色のままであり、遠心分離管の底部に少量の沈殿があった。デカントされたDWCNT分散液は、1週間より長い間安定であった。
【0083】
実施例8
20mLの沈降管に20mgのNanocyl 2100 DWCNTsおよび15mLの酢酸エチル中の11mgの分散剤Aを投入した。混合物は、1時間静置され、酢酸エチル中の分散剤Aを溶解し、深い青色の溶液と、管の底部に沈むNanocyl 2100 DWCNTsの黒い粒子を得た。次に沈降管はブランソン2510超音波発生装置の浴中に置かれて、最大の力で90分間、超音波処理された。90分後、超音波処理浴の水を水道水に取り替え、2回目の90分の超音波処理を行った。1時間の静置の後、沈殿管内の溶液は底部の黒色の沈殿以外は透明な溶液であった。超音波処理と遠心分離後の沈殿管内における分散剤Aからの深い青色の喪失は、Nanocyl 2100 DWCNTsの表面への分散剤Aの強い吸着と、酢酸エチル中にNanocyl 2100 DWCNTsを分散させるに必要な量より少ないことに一致する。
【0084】
実施例9− 比較例
20mLの沈降管に20mgのNanocyl 2100 DWCNTsおよび15mLの酢酸エチルを投入した。沈降管はブランソン2510超音波発生装置の浴中に置かれて、最大の力で90分間、超音波処理された。90分後、超音波処理浴の水を水道水に取り替え、2回目の90分の超音波処理を行った。2回目の超音波処理の後、管の底部に黒い粒子が存在し、DWCNT分散の兆候は見られなかった。
【0085】
実施例10
分散剤Bは分散剤Aと同様の方法で作成された。ただし、ポリ(酸化エチレン/酸化プロピレン)コポリマーは31:10の酸化エチレン:酸化プロピレン比率を有し、数平均分子量は約2,000であった(Huntsman社からジェファミンM−2070として利用可能)。
【0086】
20mLの沈降管(に34.0mgのNanoBlack II(MWCNTs)および15mLのn−プロピルアルコール中の35.0mgの分散剤Bを投入した。混合物は、1時間静置され、n−プロピルアルコール中の分散剤Bを溶解し、深い青色の溶液と、管の底部に沈むNanoBlack IIの黒い粒子を得た。次に沈降管はブランソン2510超音波発生装置の浴中に置かれて、最大の力で90分間、超音波処理された。90分後、超音波処理浴の水を水道水に取り替え、2回目の90分の超音波処理を行った。得られた暗い黒い溶液はK Prima−15R遠心分離機(Composite Rotor Inc.)で30分間、10,000RPMで遠心分離された。分散液は黒色のままであり、遠心分離管の底部に少量の沈殿があった。デカントされたCNT分散液は、1週間より長い間安定であった。
【0087】
実施例11
20mLの沈降管に34.0mgのNanoBlack II(MWCNTs)および15mLのn−プロピルアルコール中の18mgの分散剤Bを投入した。混合物は、1時間静置され、n−プロピルアルコール中の分散剤Bを溶解し、深い青色の溶液と、管の底部に沈むNanoBlack IIの黒い粒子を得た。次に沈降管はブランソン2510超音波発生装置の浴中に置かれて、最大の力で90分間、超音波処理された。90分後、超音波処理浴の水を水道水に取り替え、2回目の90分の超音波処理を行った。1時間の静置の後、沈殿管内の溶液は底部の黒色の沈殿以外は透明な溶液であった。超音波処理と遠心分離後の沈殿管内における分散剤Bからの深い青色の喪失は、NanoBlack IIの表面への分散剤Bの強い吸着と、n−プロピルアルコールにNanoBlack IIを分散させるに必要な量より少ないことに一致する。
【0088】
実施例12− 比較例
20mLの沈降管に10.0mgのNanoBlack II(MWCNTs)および15mLのn−プロピルアルコールを投入した。沈降管はブランソン2510超音波発生装置の浴中に置かれて、最大の力で90分間、超音波処理された。90分後、超音波処理浴の水を水道水に取り替え、2回目の90分の超音波処理を行った。2回目の超音波処理の後、管の底部に黒い粒子が存在し、CNT分散の兆候は見られなかった。
【0089】
実施例13
ソルスパース(Solsperse) 5000(Noveon Inc.)は、銅フタロシアニン誘導体の四級塩である。SWCNTsが水中で分散しないことを確かめるために、以下の実験が行われた。ここで使用されたSWCNTはElicarb SWCNTs(Tomas Swan & Co.)であり、水性相で1.56重量%のSWCNTとして提供された。
【0090】
4オンスのガラス瓶に0.31gのElicarb SWCNTsペースト(4.8mgのSWCNTs)および100mLの脱イオン水を加えた。第2の4オンスのガラス瓶に、0.31gのElicarb SWCNTsペースト(4.8mgのSWCNTs)、200mgの分散剤B、および100mLの脱イオン水を加えた。第3の4オンスのガラス瓶に、0.31gのElicarb SWCNTsペースト(4.8mgのSWCNTs)、200mgのソルスパース 5000、および100mLの脱イオン水を加えた。1時間静置した後、それぞれの瓶を、100%の強度で、18mmの超音波プローブを使用して、Hielscher UIP1000hd超音波処理装置を使用して16分間、超音波処理した。超音波処理の後、15gのそれぞれの3種の溶液は20mLの沈降管に移され、DYNAC 遠心分離機(Becton Dickinson Inc.)で30分間、遠心分離された。超音波処理後、分散剤を含まない管は黒色の沈殿のみが存在した。分散剤Bを含む管では深い黒色を呈し、沈殿はなかった。ソルスパース 5000を含む管ではほのかな青い色を呈し、黒い沈殿物があった。これらの結果は、ソルスパース5000が、分散剤:SWCNTの比率が42:1でさえ、水中にSWCNTsを分散できないことを示す。
【0091】
実施例14
分散剤Cは分散剤AおよびBを製造するために使用された手順と同様にして製造された。ただしアミン末端ポリイソブチレン(KEROCOM P1BA−3、分子量約1500g/mol、BASF社製)が使用された。 ソルスパース 5000はそれ自身ではSWCNTsをナフサ(炭化水素溶剤)中で分散しないことを確かめるために、以下の実験が行われた。ここで使用されたSWCNTはElicarb SWCNTs(Tomas Swan & Co.)であり、2.54重量%のSWCNTアルコールペーストとして提供された。
4オンスのガラス瓶に0.39gのElicarb SWCNTsペースト(9.8mgのSWCNTs)および100mLのナフサを加えた。第2の4オンスのガラス瓶に、0.39gのElicarb SWCNTsペースト(9.8mgのSWCNTs)、100mgの分散剤C、および100mLのナフサを加えた。第3の4オンスのガラス瓶に、0.91gのElicarb SWCNTsペースト(9.8mgのSWCNTs)、100mgのソルスパース 5000、および100mLのナフサを加えた。1時間静置した後、それぞれの瓶を、100%の強度で、18mmの超音波プローブを使用して、Hielscher UIP1000hd超音波処理装置を使用して16分間、超音波処理された。超音波処理の後、15gのそれぞれの3種の溶液は20mLの沈降管に移され、DYNAC 遠心分離機(Becton Dickinson Inc.)で30分間、遠心分離した。超音波処理後、分散剤を含まない管は黒色の沈殿のみが存在した。分散剤Cを含む管では深い黒色を呈し、沈殿はなかった。ソルスパース 5000を含む管ではほのかな青い色を呈し、黒い沈殿物があった。これらの結果は、ソルスパース5000が、分散剤:SWCNTの比率が10:1でさえ、ナフサ中にSWCNTsを分散できないことを示す。
【0092】
実施例15
4オンスのガラス瓶に20mgのElicarb MWCNT粉末および100mLの脱イオン水を加えた。第2の4オンスのガラス瓶に、20mgのElicarb MWCNT粉末、20mgの分散剤B、および100mLの脱イオン水を加えた。第3の4オンスのガラス瓶に、20mgのElicarb MWCNT粉末、200mgのソルスパース 5000、および100mLの脱イオン水を加えた。1時間静置した後、それぞれの瓶を、100%の強度で、18mmの超音波プローブを使用して、Hielscher UIP1000hd超音波処理装置を使用して16分間、超音波処理した。超音波処理の後、15gのそれぞれの3種の溶液は20mLの沈降管に移され、DYNAC 遠心分離機(Becton Dickinson Inc.)で30分間、遠心分離した。超音波処理後、分散剤を含まない管は黒色の沈殿のみが存在した。分散剤Bを含む管では深い黒色を呈し、沈殿はなかった。ソルスパース 5000を含む管ではほのかな青い色を呈し、黒い沈殿物があった。これらの結果は、ソルスパース5000が、分散剤:MWCNTの比率が1:1でさえ、水中にMWCNTsを分散できないことを示す。
【0093】
実施例16
4オンスのガラス瓶に20mgのElicarb MWCNT粉末および100mLのイソプロピルアルコールを加えた。第2の4オンスのガラス瓶に、20mgのElicarb MWCNT粉末、20mgの分散剤A、および100mLのイソプロピルアルコールを加えた。第3の4オンスのガラス瓶に、20mgのElicarb MWCNT粉末、20mgのソルスパース 5000、および100mLのイソプロピルアルコールを加えた。1時間静置した後、それぞれの瓶を、100%の強度で、18mmの超音波プローブを使用して、Hielscher UIP1000hd超音波処理装置を使用して16分間、超音波処理した。超音波処理の後、15gのそれぞれの3種の溶液は20mLの沈降管に移され、DYNAC 遠心分離機(Becton Dickinson Inc.)で30分間、遠心分離された。超音波処理後、分散剤を含まない管は黒色の沈殿のみが存在した。分散剤Aを含む管では深い黒色を呈し、沈殿はなかった。ソルスパース 5000を含む管ではほのかな青い色を呈し、黒い沈殿物があった。これらの結果は、ソルスパース5000が、分散剤:MWCNTの比率が1:1でさえ、イソプロピルアルコール中にMWCNTsを分散できないことを示す。
【0094】
実施例17
本発明の分散剤システムの、CNTsのエネルギーの硬化可能なシステムへの適用性を示すために以下の実験が行われた。4オンスの瓶に、0.30gのArkema C100 MWCNTs、0.15gの分散剤 B、および70.1gのSR344(Sartomer Inc.、ポリエチレングリコール(400g/mol分子量)ジアクリレート)が投入された。1時間静置した後に、100%の強度で、18mmの超音波プローブを使用して、Hielscher UIP1000hd超音波処理装置を使用して6分間、溶液は超音波処理された。超音波処理の後、得られた分散液、DYNAC 遠心分離機(Becton Dickinson Inc.)で30分間、遠心分離された。得られた上澄みは深い黒色で、瓶の底部に少量の黒い残渣があった。
【0095】
電子線硬化可能な組成物が以下の通り調製された。
28.0gの遠心分離された分散剤B/Arkema C100/SR344分散液が、28.0gのCN132(Sartomer Inc.、低粘度ジアクリレートオリゴマー)に加えられて、1分間、混合された。300Q ハンドプルーファーを使用し、組成物の層がST505(デュポン フィルムズ、熱安定化されたPET)に適用された。そして、Advanced Electron Beams Inc.Application Development Unitを使用して電子ビームで硬化した。電子ビームパラメータは以下の通りであった。IkVの電圧;0.1mAのビームエネルギー;30.0kGyのエネルギー投与量;75FPMの速度。処理の後に、組成物は強靱な接着性フィルムをST505上に形成した。
【0096】
紫外線硬化可能な組成物が以下の通り調製された。
28.0gの遠心分離された分散剤B/Arkema C100/SR344分散液が、28.0gのCN132(Sartomer Inc.、低粘度ジアクリレートオリゴマー)および4.0gのIrgacure 819DW(CIBA Inc.、水中のビス−アシルホスフィンの分散液、45(w/w%))に加えられて、1分間、混合された。300Q ハンドプルーファーを使用し、組成物の層がST505(デュポン フィルムズ、熱安定化されたPET)に適用された。そして、フュージョン(Fusion)UVシステムを使用し、100FPMで、紫外線照射された。処理の後に、組成物は強靱な接着性フィルムをST505上に形成した。
【0097】
実施例18
20mLの沈降管に20.0mgのNanocyl DWCNTsおよび15mLのヘプタン中の43.0mgの分散剤Cを投入した。混合物は、1時間静置され、ヘプタン中の分散剤Cを溶解し、深い青色の溶液と、管の底部に沈むNanocyl DWCNTsの黒い粒子を得た。次に沈降管はブランソン2510超音波発生装置の浴中に置かれて、最大の力で90分間、超音波処理された。90分後、超音波処理浴の水を水道水に取り替え、2回目の90分の超音波処理を行った。得られた暗い黒い溶液はK Prima−15R遠心分離機(Composite Rotor Inc.)で30分間、10,000RPMで遠心分離された。分散液は黒色のままであり、遠心分離管の底部に少量の沈殿があった。デカントされたDWCNT分散液は、1週間より長い間安定であった。
【0098】
実施例19
20mLの沈降管に10.0mgのNanocyl DWCNTsおよび15mLのヘプタン中の10mgの分散剤Cを投入した。混合物は、1時間静置され、ヘプタン中の分散剤Cを溶解し、深い青色の溶液と、管の底部に沈むNanocyl DWCNTsの黒い粒子を得た。次に沈降管はブランソン2510超音波発生装置の浴中に置かれて、最大の力で90分間、超音波処理された。90分後、超音波処理浴の水を水道水に取り替え、2回目の90分の超音波処理を行った。1時間の静置の後、沈殿管内の溶液は底部の黒色の沈殿以外は透明な溶液であった。超音波処理と遠心分離後の沈殿管内における分散剤Cからの深い青色の喪失は、Nanocyl DWCNTsの表面への分散剤Cの強い吸着と、ヘプタンにNanocyl DWCNTsを分散させるに必要な量より少ないことに一致する。
【0099】
実施例20−比較例
20mLの沈降管に10.0mgのNanocyl DWCNTsおよび15mLのヘプタンを投入した。沈降管はブランソン2510超音波発生装置の浴中に置かれて、最大の力で90分間、超音波処理された。90分後、超音波処理浴の水を水道水に取り替え、2回目の90分の超音波処理を行った。2回目の超音波処理の後、管の底部に黒い粒子が存在し、CNT分散の兆候は見られなかった。
【0100】
実施例21
溶融混合においてポリマー中へのCNTの混入を支援する本発明の分散剤の能力を示すために、以下の実験が行われた。これらの実験に使用される樹脂は、イーストマンケミカル社からの部分的に二量化しているロジンである、Poly−Paleであった。
【0101】
実験(1)では、99.5gのPoly−Paleは約95℃(200度F)に予熱されたBrabender Model SA06No.GT844 SBに加えられた。樹脂は約15分間、溶融されるまで混ぜられて、次に、0.5gのNanocyl7000MWCNT粉末が、溶融ポリマーに加えられ、MWCNT分散体を伸ばすように、1時間混ぜられた。1時間後、ヒーター、およびミキサーがオフにされて、Nanocyl7000含有Poly−Pale溶融体は、室温に冷却され、得られた5.0gのMWCNT/Poly−Paleのナノ複合材の黒い固体は、ガラス瓶中で10mLのイソプロピルアルコール中に溶解された。得られた溶液はガラスビンの側面をコーティングした、肉眼で認識できる大きいCNT凝集物を含んでいた。2週間後、ガラスビンには沈殿物の層があった。
【0102】
実験(2)では、製造条件、および時間はほとんど同じであったが、99.0gのPoly−Paleだけが使用され、0.5gの分散剤Aが溶融ポリマーに加えられ、同時に0.5gのNanocyl7000も加えられた。得られた5.0gのMWCNT/分散剤A/PolyPaleナノ複合材はガラス瓶中で10mLのイソプロピルアルコールに溶解された。得られた溶液は濃い黒色であり、大きいCNT凝集体の兆候がほとんどなかった。2週間後にガラス瓶には、沈殿はほとんど全くなかった。
上に概説された製造条件は、最適化されてはいなかったが、溶融体中でCNT/ポリマーナノ複合材料の生成を支援するための、本発明の分散剤システムの明らかな適用可能性を示した。
【0103】
実施例22
本発明の分散剤を利用して、CNT分散体を調製するための、高速せん断混合の適用可能性を示すために以下の実験が行われた。
4オンスの瓶に、50mgのNanocyl7000MWCNTs、100mgの分散剤B、および100mLの脱イオン水が加えられた。1時間の静置の後、圧搾空気駆動のSilverson L2 Model3877ミキサーで、3時間、高速せん断混合された。得られた黒色溶液はDYNAC遠心分離機(Becton Dickinson Inc.)で30分間、遠心分離された。遠心分離後に、上澄みは深い黒色であり、黒い沈殿物が存在していたが、10倍の倍率の光学顕微鏡観察では粒子は観察されなかった。
【0104】
詳細に本発明とその利点について説明したが、様々な変更、置換、および他の異様が使用できるのことを理解することが望ましい。さらに本願の範囲は明細書に記載された特定のプロセス、機械、製造方法、物質の組成、手段、方法および工程に制限されることを意図しない。当業者が本発明の開示から容易に理解するように、プロセス、機械、製造方法、物質の組成、手段、方法および工程は、本明細書に記載された実施態様と実質的に同じ機能を発揮するかまたは同様の結果を与える、現在知られているもの、および今後開発されるものの両者が、本願発明において有用に利用される

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ、および
式P−(U−Y)sを有する分散剤、式中Pは金属含有または金属非含有フタロシアニンの残基であり、Yは500から5000g/molの分子量を有する相容化部位であり、UはYとPを共有結合する結合部位であり、sは1から4の整数である、
の組み合わせを含む組成物。
【請求項2】
カーボンナノチューブは、シングルウォール(SWCNT)、ダブルウォール(DWCNT)、またはマルチウォール(DWCNT)のナノチューブまたはそれらの混合物である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
カーボンナノチューブは、バンブーカーボンナノチューブ、カーボンフィブリル、カーボンナノ繊維、気相成長カーボン繊維、またはシリンダー状カーボンナノチューブである、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
Pの金属は、銅、アルミニウム、または亜鉛である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
Yはポリアルキレン、ポリアルキレンオキシド、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド、ポリエーテルアミン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、 ポリウレタンまたはそれらの組み合わせである、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
Yはポリアルキレンオキシド部位を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
Yはポリアルキレン部位を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
結合部位Uが、−C−、−○−、−S−、−N−、−NH−、−COO−、−CONH、−NHSO−、−CO−、アルキレンまたはそれらの組み合わせから選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
カーボンナノチューブと分散剤の組み合わせが固体である、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
さらにホストマトリックスと組み合わされる、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
さらにホストマトリックスと組み合わされる、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
ホストマトリックスが、ポリマー、金属、金属酸化物、セラミック、溶媒、プレポリマ−、放射線硬化可能なシステムまたはそれの組み合わせから成るグループから選択される、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
ホストマトリックスが、熱可塑性ポリマー、硬化ポリマー、硬化可能なプレポリマー、およびそれらの混合物から成るグループから選択される、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
ホストマトリックスが、縮合、フリーラジカル、イオン、または活性放射線による硬化可能な硬化可能なポリマーである、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
ホストマトリックスが導電性ポリマーを含む、請求項11記載の組成物。
【請求項16】
ホストマトリックスがエネルギーの硬化可能な組成物を含む、請求項11記載の組成物。
【請求項17】
請求項1の組み合わせをホストマトリックス中に分散することを含む方法。
【請求項18】
超音波処理、高速せん断混合、メディア混合または溶融混合で分散が行われる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
分散がプロペラ設備で行われる、請求項17記載の方法。
【請求項20】
請求項9の組み合わせをホストマトリックス中に分散することを含む方法。
【請求項21】
請求項1の組み合わせを含むか、またはこれにより構成される物品。
【請求項22】
電気貯蔵デバイスまたはエネルギー貯蔵デバイスである、請求項21記載の物品。
【請求項23】
流体である、請求項21記載の物品。
【請求項24】
流体がインキまたはコーティングである、請求項21記載の物品。

【公表番号】特表2012−502144(P2012−502144A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526292(P2011−526292)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/056293
【国際公開番号】WO2010/051102
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(596024024)サン・ケミカル・コーポレーション (39)
【Fターム(参考)】