説明

カーボンナノチューブ膜の成膜方法

【課題】下層の触媒金属を微粒にかつ高密度に形成して低欠陥で高密度のカーボンナノチューブ膜を形成することができるカーボンナノチューブ膜の成膜方法を提供すること。
【解決手段】表面に金属触媒層が形成された被処理基板を準備し(工程1)、金属触媒層に酸素プラズマ処理を施し(工程2)、酸素プラズマ処理後の金属触媒層に水素含有プラズマ処理を施して、金属触媒層の表面を活性化し(工程3)、その後、金属触媒層の上にプラズマCVDによりカーボンナノチューブ膜を成膜する(工程5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒金属を用いてCVDによりカーボンナノチューブ膜を成膜するカーボンナノチューブの成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、優れた電気特性を有することから、半導体デバイスの配線等の用途への適用が検討されている。カーボンナノチューブ膜の成膜方法としては、Ni、Fe、Co等の遷移金属の微粒子から構成された触媒層を基板上に形成し、その基板に対し炭化水素ガスと水素ガスとを用いたプラズマCVDにより基板にカーボンナノチューブを成膜する方法が提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、上記特許文献1には、触媒金属を微粒子化した場合に、微粒子表面が酸化して触媒活性が低下することを防止する手法として、触媒金属の表面にラジカル種を照射して触媒表面を活性化させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−252970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カーボンナノチューブ膜をビア配線として使うためには、カーボンナノチューブの欠陥を低減し、単位面積当たりの密度を高くする必要がある。カーボンナノチューブの密度は触媒金属の形状等に依存するため、カーボンナノチューブを低欠陥でかつ高密度のものとするために触媒金属を極めて微粒にかつ高密度に形成する必要があるが、上記特許文献1のように単に触媒金属を活性化しただけでは、触媒金属が十分に微粒かつ高密度にならず、所望の低欠陥かつ高密度のカーボンナノチューブ膜を得ることが困難である。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、下層の触媒金属を微粒にかつ高密度に形成して低欠陥で高密度のカーボンナノチューブ膜を形成することができるカーボンナノチューブ膜の成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者、表面に金属触媒層が形成された被処理基板を準備する工程と、前記金属触媒層に酸素プラズマ処理を施す工程と、前記酸素プラズマ処理後の前記金属触媒層に水素含有プラズマ処理を施して、前記金属触媒層の表面を活性化する工程と、前記活性化が施された後の被処理基板の前記金属触媒層の上にプラズマCVDによりカーボンナノチューブ膜を成膜する工程と
を有することを特徴とするカーボンナノチューブ膜の成膜方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表面に金属触媒層が形成された被処理基板に対し、酸素プラズマ処理を行い、引き続き水素含有プラズマを用いた活性化処理を行った後に、プラズマCVDによりカーボンナノチューブ膜を成膜するので、酸素プラズマ処理により金属触媒層の表面を清浄化して金属触媒層の表面に加熱によるマイグレーションが起こりやすくし、金属触媒層204を構成している金属に適度の凝集が生じて微粒子化を進行しやすくするとともに、その後の水素プラズマによる活性化処理により、金属触媒層204の表面を活性化させて金属触媒層204を構成する金属を微粒子化し、かつ高密度化するので、その後のカーボンナノチューブ膜の成膜において、微粒子化および高密度化した触媒金属層204の上に微粒子状でかつ高密度のカーボンナノチューブ膜を成長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の成膜方法を実施するために用いられる成膜装置の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の成膜方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態に用いられる成膜表面に金属触媒を有するウエハの構造を示す模式図である。
【図4】グリッド電極に電圧を印加しない場合と印加した場合のチャンバ内の空間ポテンシャルを示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に用いられる装置の変形例を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に用いられる装置の他の変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の実施例に用いたウエハの構造を示す模式図である。
【図8】本発明の実施例の処理条件を示す図である。
【図9】本発明の実施例におけるグリッド電極の各開口径におけるグリッド電極電圧と得られたカーボンナノチューブ膜のG/D比との関係を示すグラフである。
【図10】グリッド開口径2mmの2枚のグリッド電極を用いて成膜したカーボンナノチューブ膜を示す走査型顕微鏡(SEM)写真である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の成膜方法を実施するために用いられる成膜装置の一例を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の成膜方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
<第1の実施形態>
まず、第1の実施形態について説明する。
(第1の実施形態の方法を実施するための成膜装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の成膜方法を実施するために用いられる成膜装置の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す成膜装置100は、RLSA(Radial Line Slot
Antenna)マイクロ波プラズマ方式のプラズマ処理装置として構成されている。
【0012】
この成膜装置100は、略円筒状のチャンバ1と、チャンバ1内に設けられ、被処理基板である半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)Wを載置するサセプタ(載置台)2と、チャンバ1内に形成されたプラズマ中の荷電粒子を制御する荷電粒子制御機構3と、チャンバ1内にマイクロ波を導入するマイクロ波導入機構4と、チャンバ1内にガスを導くガス供給機構5と、チャンバ1内を排気する排気機構6と、成膜装置100の各構成部を制御する制御部7とを有している。
【0013】
チャンバ1の底壁1aの略中央部には円形の開口部10が形成されており、底壁1aにはこの開口部10と連通し、下方に向けて突出する排気室11が設けられている。チャンバ1の側壁には、ウエハWを搬入出するための搬入出口17と、この搬入出口17を開閉するゲートバルブ18とが設けられている。
【0014】
サセプタ2はAlN等のセラミックスからなり、排気室11の底部中央から上方に延びる円筒状のAlN等のセラミックスからなる支持部材12により支持されている。サセプタ2の外縁部にはウエハWをガイドするためのガイドリング13が設けられている。また、サセプタ2の内部には、ウエハWを昇降するための昇降ピン(図示せず)がサセプタ2の上面に対して突没可能に設けられている。さらに、サセプタ2の内部には抵抗加熱型のヒータ14が埋め込まれており、このヒータ14はヒータ電源15から給電されることによりサセプタ2を介してその上のウエハWを加熱する。また、サセプタ2には、熱電対(図示せず)が挿入されており、ウエハWの加熱温度を200〜650℃の範囲で制御可能となっている。さらに、サセプタ2内のヒータ14の上方には、ウエハWと同程度の大きさの電極16が埋設されており、この電極16は接地されている。
【0015】
マイクロ波導入機構4は、チャンバ1の上部の開口部に臨むように設けられ、多数のマイクロ波透過孔21aが形成された平面アンテナ21と、マイクロを発生させるマイクロ波発生部22と、マイクロ波発生部22を平面アンテナ21に導くマイクロ波伝送機構23とを有している。平面アンテナ21の下方には誘電体からなるマイクロ波透過板24がチャンバ1の上部にリング状に設けられたアッパープレート32に支持されるように設けられ、平面アンテナ21の上にはシールド部材25が設けられている。さらに、シールド部材25と平面アンテナ21との間には、誘電体からなる遅波材26が設けられている。
【0016】
マイクロ波伝送機構23は、マイクロ波発生部22からマイクロ波を導く水平方向に伸びる導波管27と、平面アンテナ21の中心から上方に伸びる内導体29およびその外側の外導体30からなる同軸導波管28と、導波管27と同軸導波管28との間に設けられたモード変換機構31とを有している。
【0017】
ガス供給機構5は、チャンバ1内のサセプタ2の上方位置に上下を仕切るように水平に設けられたシャワープレート41と、シャワープレート41の上方位置に、チャンバ1の内壁に沿ってリング状に設けられたシャワーリング42とを有している。
【0018】
シャワープレート41は、格子状に形成されたガス通流部材51と、このガス通流部材51の内部に格子状に設けられたガス流路52と、ガス流路52から下方に延びる多数のガス吐出孔53とを有しており、格子状のガス通流部材51の間は貫通孔54となっている。このシャワープレート41のガス流路52にはチャンバ1の外壁に達するガス供給路55が延びており、このガス供給路55にはガス供給配管56が接続されている。このガス供給配管56は分岐管56a、56b、56cの3つに分岐しており、これら分岐管56a、56b、56cには、それぞれ還元ガスとしてのHガスを供給するHガス供給源57、原料ガスとしてのエチレン(C)ガスを供給するCガス供給源58、パージガスとしてのNガスを供給するNガス供給源59が接続されている。なお、分岐管56a、56b、56cには、図示してはいないが、流量制御用のマスフローコントローラおよびその前後のバルブが設けられている。
【0019】
シャワーリング42は、その内部にリング状のガス流路と、このガス流路に接続されその内側に開口する多数のガス吐出孔と(いずれも図示せず)を有しており、ガス流路にはガス供給配管61が接続されている。このガス供給配管61は分岐管61a、61b、61cの3つに分岐しており、これら分岐管61a、61b、61cには、それぞれプラズマ生成ガスとしてのArガスを供給するArガス供給源62、酸化ガスとしてのOガスを供給するOガス供給源63、パージガスとしてのNガスを供給するNガス供給源64が接続されている。なお、分岐管61a、61b、61cには、図示してはいないが、流量制御用のマスフローコントローラおよびその前後のバルブが設けられている。
【0020】
荷電粒子制御機構3は、シャワープレート41の直下に、サセプタ2上のウエハWを覆うように設けられ、多数の開口を有する網状をなし、遮蔽部材としても機能するグリッド電極71と、グリッド電極71を支持する支持部材72と、支持部材72を介してグリッド電極71に直流電圧を印加する可変直流電源73と、可変直流電源73にパルス信号を与えるパルス発生器74とを有する。グリッド電極71の外周はチャンバ1の内壁近傍まで達しており、グリッド電極71とチャンバ1の内壁との間には、これらの間の隙間を埋めるように絶縁体からなる絶縁リング75が設けられている。この絶縁リング75によりグリッド電極71とチャンバ1との隙間からプラズマが漏れることを確実に防止することができる。ただし、グリッド電極71とチャンバ1の内壁との間の隙間があってもプラズマの漏洩を十分に防止できる場合には、絶縁リング75は設けなくてもよい。
【0021】
このようにグリッド電極71が遮蔽部材として機能してウエハW表面にダメージを与えるおそれのある電子やイオン等の荷電粒子の透過を妨げて、ウエハWへの荷電粒子の到達を抑制する。さらにグリッド電極71に可変直流電源73から直流電圧を印加することにより、グリッド電極71で電子やイオン等の荷電粒子を反発または吸引してこれらの直進を妨げ、ウエハWへの荷電粒子の到達をより一層効果的に抑制する。例えば、グリッド電極71に負の直流電圧を印加することにより、主に電子および負イオンを反発させてウエハWへの電子の到達を抑制することができる。この場合に、パルス発生器74から所定のパルスを与えることにより、グリッド電極71への電圧印加をパルス状にすることができる。もちろん、パルスを発生させずに通常の直流電圧を印加するようにすることもできる。なお、グリッド電極71に印加する電圧をパルス発生器74によりパルス状とすることにより、絶縁体基板においても基板表面を帯電させずに処理できるという効果がある。
【0022】
排気機構6は、上記排気室11と、排気室11の側面に設けられた排気配管81と、排気配管81に接続された真空ポンプおよび圧力制御バルブ等を有する排気装置82とを有する。
【0023】
制御部7は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えた演算部91と、ユーザーインターフェース92と、記憶部93とを有している。演算部91には成膜装置100の各構成部が電気的に接続されて制御される構成となっている。ユーザーインターフェース92は、演算部91に接続されており、オペレータが成膜装置100の各構成部を管理するためにコマンドの入力操作などを行うキーボードや、成膜装置100の各構成部の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなっている。記憶部93も演算部91に接続されており、この記憶部93には、成膜装置100で実行される各種処理を演算部91の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件等に応じて成膜装置100の各構成部に所定の処理を実行させるための制御プログラムすなわち処理レシピや、各種データベース等が格納されている。処理レシピは記憶部93の中の記憶媒体(図示せず)に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスク等の固定的に設けられているものであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0024】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース92からの指示等にて所定の処理レシピを記憶部93から呼び出して演算部91に実行させることで、制御部7の制御下で、成膜装置100での所望の処理が行われる。
【0025】
(第1の実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の成膜方法)
次に、このように構成される成膜装置100により行われるカーボンナノチューブ膜の成膜方法について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の成膜方法を説明するためのフローチャートである。
【0026】
まず、成膜表面に金属触媒を有するウエハWを準備し、ゲートバルブ18を開放して、このウエハWをチャンバ1内に搬入する(工程1)。この際のウエハWとしては、例えば、図3に示すように、Si基板201上に絶縁膜としてSiO膜202を形成し、その上に下地層203を介して金属触媒層204を形成したものを用いる。
【0027】
金属触媒層204を構成する金属としては、Ni、Co、Fe等の遷移金属、または遷移金属の少なくとも1種を含む合金を挙げることができる。この金属触媒層204を形成する手法としては、スパッタリング、蒸着法、CVD等の薄膜形成技術やめっき等、この分野で一般的に用いられる成膜技術を用いることができる。金属触媒層204の厚さは、0.1〜2.0nmであることが好ましい。
【0028】
下地層203は、金属触媒の凝集による粗大化を防止する膜として機能するものであり、例えばAl、Si、Ta、Ti、TiN、TiC、Al、MgO等を挙げることができる。この下地層203も同様に、この分野で一般的に用いられる成膜技術を用いることができる。下地層203の厚さは、10〜100nmであることが好ましい。
【0029】
このような構造の半導体ウエハWをチャンバ1内に搬入し、サセプタ2上に載置した後、金属触媒層204に対して酸素プラズマ処理を施す(工程2)。この工程2では、シャワーリング42からチャンバ1内にArガスおよびOガスを導入するとともに、マイクロ波発生部22で発生したマイクロ波をマイクロ波伝送機構23を介して所定のモードで平面アンテナ21に導き、平面アンテナ21のマイクロ波透過孔21aおよびマイクロ波透過板24を透過させてチャンバ1内に均一に供給し、そのマイクロ波により、ArガスおよびOガスをプラズマ化し、そのマイクロ波プラズマによりウエハW表面の金属触媒層204の表面に酸素プラズマ処理を施す。
【0030】
この処理は、金属触媒層204の表面に付着している有機物などを除去して清浄な表面とする処理であり、これにより金属触媒層204の表面に加熱によるマイグレーションが起こりやすくなり、金属触媒層204を構成している金属に適度の凝集が生じて微粒子化を進行しやすくすることができる。
【0031】
この酸素プラズマ処理の際の好ましい条件は、以下の通りである。
ウエハ温度:300〜600℃
チャンバ内圧力:67〜533Pa
ガス流量:50〜200mL/min(sccm)
Arガス流量:300〜600mL/min(sccm)
マイクロ波パワー:250〜2000W
処理時間:5〜10分
【0032】
工程2の酸素プラズマ処理の際には、グリッド電極71が遮蔽部材として機能し、プラズマ中の電子やイオンがウエハWの表面の金属触媒層204に到達することが抑制され、金属触媒層204に電子やイオンによるダメージを与えることなく主にラジカルを作用させることができるので、金属触媒層204の金属を適度に凝集させる効果をより有効に発揮することができる。そして、グリッド電極71に電圧を印加することにより、電子やイオン等の荷電粒子の直進を妨げて、ウエハWへの荷電粒子の到達を一層効果的に抑制することができ、金属触媒層204の金属を適度に凝集させる効果をさらに高めることができる。この場合に、グリッド電極71の開口の径は2mmφ以下が好ましく、開口率は40〜85%が好ましい。また、グリッド電極71に印加する電圧は、−300〜300Vが好ましくいが、電子の到達を効果的に抑制する観点からは負電圧がよく、−300〜0Vが好ましい。
【0033】
グリッド電極71に電圧を印加した場合の効果について図4を参照して説明する。図4はチャンバ1内の空間ポテンシャルを示す図であり、(a)はグリッド電極に電圧を印加しない場合、(b)はグリッド電極71に−100V印加した場合を示す。これらの図から明らかなようにグリッド電極に電圧を印加しない場合には、シャワープレート41からウエハWまでの間に電位差はなく電子やイオンのような荷電粒子には電気的作用は生じないが、グリッド電極を設けてそこに−100Vを印加した場合には、グリッド電極71は、接地されているシャワープレート41およびウエハW(サセプタ2)に対して負のポテンシャルを有しているため、電子や負イオン等の負に帯電した荷電粒子がウエハWに到達し難くなる。
【0034】
なお、この酸素プラズマ処理を行う際のガスとしてはOガスの他、HO、O、NO等を用いることができる。
【0035】
以上のような工程2の酸素プラズマ処理に引き続いて活性化処理を行う(工程3)。この活性化処理においては、工程2の終了後、マイクロ波を停止するとともにOガスを停止し、Arガスを流したまま、同様にマイクロ波発生部22、マイクロ波伝送機構23、平面アンテナ21、マイクロ波透過板24を介してマイクロ波をチャンバ1内に均一に供給し、そのマイクロ波により、Arガスをプラズマ化し、プラズマが着火されたタイミングでシャワープレート41を介してHガスをチャンバ1内に導入し、ArプラズマによりHガスをプラズマ化する。そして、このように形成されたマイクロ波プラズマにより、金属触媒層204の表面に活性化処理を施す。
【0036】
この活性化処理は、工程2の酸素プラズマ処理により酸化した金属触媒層204の表面を還元して金属触媒の活性化を行う処理であり、このように水素プラズマにより処理を行うことにより、金属触媒層204の表面を活性化させて金属触媒層204を構成する金属を微粒子化し、かつ高密度化することができる。
【0037】
この活性化処理の際の好ましい条件は、以下の通りである。
ウエハ温度:300〜600℃
チャンバ内圧力:67〜533Pa
ガス流量:100〜1200mL/min(sccm)
Arガス流量:300〜600mL/min(sccm)
マイクロ波パワー:250〜2000W
処理時間:5〜10分
なお、この活性化処理の際の温度は、酸素プラズマ処理と異なっていてもよいが、同じ温度で行うほうがスループットを高めることができ好ましい。
【0038】
工程3の活性化処理の際にも、グリッド電極71が遮蔽部材として機能し、プラズマ中の電子やイオンがウエハWの表面の金属触媒層204に到達することが抑制され、金属触媒層204に電子やイオンによるダメージを与えることなく主にラジカルを作用させることができるので、金属触媒層204の表面を活性化させて金属触媒層204を構成する金属を微粒子化し、かつ高密度化する効果をより有効に発揮することができる。そして、グリッド電極71に電圧を印加することにより、電子やイオン等の荷電粒子の直進を妨げて、ウエハWへの荷電粒子の到達を一層効果的に抑制することができ、金属触媒層204の表面を活性化させて金属触媒層204を構成する金属を微粒子化し、かつ高密度化する効果をさらに高めることができる。この場合に、グリッド電極71の開口の径は2mmφ以下が好ましく、開口率は40〜85%が好ましい。また、グリッド電極71に印加する電圧は、−300〜300Vが好ましくいが、電子の到達を効果的に抑制する観点からは負電圧がよく、−300〜0Vが好ましい。
【0039】
なお、この活性化処理を行う際のガスとしてはHガスの代わりに、NHガス等の所定のH含有ガスを用いることができる。
【0040】
工程3の活性化処理の後、マイクロ波およびHガスを停止して、ArガスおよびNガスを流し、チャンバ1内をパージする(工程4)。このとき、排気装置82によってチャンバ1内を急速に排気する。
【0041】
パージは、例えば、チャンバ内圧力:67〜533Pa、Nガス流量:
50〜300mL/min(sccm)、Arガス流量:300〜600mL/min(sccm)、温度:300〜600℃の条件で、好ましくは1〜2分行う。
【0042】
工程4のパージを行った後、カーボンナノチューブ膜の成膜を行う(工程5)。このカーボンナノチューブ膜の成膜においては、工程4のパージの後、Nガスを停止し、Arガスを所定流量で流したまま、マイクロ波発生部22、マイクロ波伝送機構23、平面アンテナ21、マイクロ波透過板24を介してマイクロ波をチャンバ1内に均一に供給し、そのマイクロ波により、Arガスをプラズマ化し、プラズマが着火されたタイミングでシャワープレート41を介してCガスおよびHガスをチャンバ1内に導入し、ArプラズマによりCガスおよびHガスをプラズマ化する。そして、グリッド電極71に所定の電圧を印加しつつ、このように形成されたマイクロ波プラズマにより、金属触媒層204の上にカーボナノチューブ膜を成膜する。
【0043】
このカーボンナノチューブ膜の成膜においては、活性化された金属触媒層204の表面にウエハWの面に垂直な方向に配向したカーボンナノチューブ膜を成長させることができる。この場合に、カーボンナノチューブ膜は、金属触媒層204の性状を保ったまま成長する。したがって、工程3の活性化処理により活性化されて微粒化および高密度化された金属触媒層204の上に、微粒でかつ高密度のカーボンナノチューブを形成することができる。また、グリッド電極71が遮蔽部材として機能し、プラズマ中の電子やイオンがウエハWの表面の金属触媒層204に到達することが抑制され、金属触媒層204に電子やイオンによるダメージを与えることなく主にラジカルを作用させることができるので、電子やイオン等による結晶の欠陥や不純物の導入を抑制することができ、不純物が少なく結晶性の良好なカーボンナノチューブ膜を形成することができる。そして、グリッド電極71に電圧を印加することにより、電子やイオン等の荷電粒子の直進を妨げて、ウエハWへの荷電粒子の到達を一層効果的に抑制することができ、一層不純物が少なく結晶性の良好なカーボンナノチューブ膜を形成することができる。
【0044】
このカーボンナノチューブ膜の成膜処理の際の好ましい条件は、以下の通りである。
ウエハ温度:300〜600℃
チャンバ内圧力:67〜533Pa
ガス流量:5〜150mL/min(sccm)
ガス流量:100〜1200mL/min(sccm)
Arガス流量:300〜600mL/min(sccm)
マイクロ波パワー:250〜2000W
処理時間:1〜60分
なお、この活性化処理の際の温度は、酸素プラズマ処理および活性化処理と異なっていてもよいが、同じ温度で行うほうがスループットを高めることができ好ましい。
【0045】
また、このカーボンナノチューブ成膜処理においても、グリッド電極71のグリッドの径は2mmφ以下が好ましく、開口率は40〜85%が好ましい。また、グリッド電極71に印加する電圧は、−300〜300Vが好ましくいが、電子の到達を効果的に抑制する観点からは負電圧がよく、−300〜0Vが好ましい。
【0046】
なお、カーボンナノチューブ膜の成膜処理においては、エチレン(C)ガスに限らず、メタン(CH)ガス、エタン(C)ガス、プロパン(C)ガス、プロピレン(C)ガス等、他の炭化水素ガスを用いることができる。また、還元ガスとしては、Hガスに限らず、アンモニア(NH)等、他のガスを用いることができる。
【0047】
このようなカーボンナノチューブ膜の成膜の後、マイクロ波およびガスの供給を停止し、チャンバ1内の圧力を調整してゲートバルブ18を開放してウエハWを搬出する(工程6)。
【0048】
本実施形態によれば、以上のように金属触媒層204を表面に有するウエハWに対し、酸素プラズマ処理を行い、引き続き水素プラズマを用いた活性化処理を行った後に、プラズマCVDによりカーボンナノチューブ膜を成膜するので、酸素プラズマ処理により金属触媒層204の表面を清浄化して金属触媒層204の表面に加熱によるマイグレーションが起こりやすくし、金属触媒層204を構成している金属に適度の凝集が生じて微粒子化を進行しやすくするとともに、その後の水素プラズマによる活性化処理により、金属触媒層204の表面を活性化させて金属触媒層204を構成する金属を微粒子化し、かつ高密度化するので、その後のカーボンナノチューブ膜の成膜において、微粒子化および高密度化した触媒金属層204の上に、基板面に対して垂直に配向し、かつ高密度のカーボンナノチューブ膜を成長させることができる。
【0049】
また、シャワープレート41とウエハWとの間に遮蔽部材として機能するグリッド電極を設けているので、プラズマ中の電子やイオンがウエハWの表面の金属触媒層204に到達することが抑制され、金属触媒層204に電子やイオンによるダメージを与えることなく主にラジカルを作用させて、電子やイオン等による結晶の欠陥や不純物の導入を抑制することができ、不純物が少なく結晶性の良好なカーボンナノチューブ膜を形成することができ、さらに、グリッド電極71に電圧を印加することにより、そのような効果を一層高めることができる。
【0050】
さらに、本実施形態ではマイクロ波プラズマにより処理を行うため、本質的に高密度で低電子温度のラジカルを主体としたプラズマ処理を行うことができ、上記効果を有効に発揮することができる。特に、本実施形態では、マイクロ波を平面アンテナ21の多数のマイクロ波放射孔21aから放射させてマイクロ波プラズマを形成するRLSAマイクロ波プラズマ方式のプラズマ処理装置を用いているので、マイクロ波プラズマの中でも特に高密度で、かつ低電子温度プラズマを生成することができる。
【0051】
(第1の実施形態の他の装置例)
次に、第1の実施形態の他の装置例について説明する。
図1の装置では、荷電粒子制御機構3に1枚のグリッド電極71を設けた例を示したが、図5に示すように、2枚のグリッド電極71a,71bを上下に重ねるように設けてもよい。これにより、これらを遮蔽部材として用いることによって、電子、イオン等の荷電粒子を遮蔽する効果をより高くすることができる。グリッド電極71a,71bとチャンバ1の内壁との間には、図1の装置と同様、絶縁リング75が設けられている。ただし、図1の装置と同様、絶縁リング75は必須ではない。これらグリッド電極71a,71bにそれぞれ直流電源73a,73b、パルス発生器74a,74bを接続することにより、これらの少なくとも一方に適宜の電圧を印加して、電子、イオン等の荷電粒子がウエハWに到達することをより効果的に防止することができる。このため、カーボンナノチューブ膜の成膜において、1枚のグリッド電極を設ける場合よりも、さらに一層不純物が少なく結晶性の良好なカーボンナノチューブ膜を形成することができる。また、酸素プラズマ処理および活性化処理においても、このように2枚のグリッドを設けることにより、金属触媒層204の金属を適度に凝集させる効果、および金属触媒層204の表面を活性化させて金属触媒層204を構成する金属を微粒子化し、かつ高密度化する効果をさらに一層高めることができる。
【0052】
この場合に、グリッド電極71の開口の径は2mmφ以下が好ましく、開口率は40〜85%が好ましい。グリッドまた、グリッド電極71に印加する電圧は、−300〜300Vが好ましい。
【0053】
さらに、図6に示すように、サセプタ2に可変直流電源95およびパルス発生器96を接続するようにしてもよい。これによっても、電子、イオン等の荷電粒子がウエハW表面に到達することを抑制することができる。例えば、サセプタ2に負の直流電圧を印加することにより、ウエハWが負の電圧を持つようになり、電子および負イオンが反発してウエハWの表面に到達し難くなる。
【0054】
(実施例)
次に、具体的な実施例について説明する。
ここでは、図7に示す、Si基板301上に形成されたSiO膜302の上にTiN下地層303を70nmの厚さで形成し、さらにその上にNi触媒層304を2nmで形成したブランケットウエハを用いてカーボンナノチューブ膜を成膜した。その際に、まずウエハを図1の装置のチャンバ1内に搬入した後、図8に示す条件で、酸素プラズマ処理、活性化処理を順次行った後、チャンバ1内をパージし、その後、カーボンナノチューブ膜を成膜した。その際に、グリッド電極として開口径が5mm(開口率61.4%)、2mm(開口率80.7%)、1mm(開口率40.1%)の3種類のものを用い、カーボンナノチューブ膜を成膜する際のグリッド電極71への電圧を−100〜+100Vまで変化させた。また、2枚のグリッド電極(開口径2mm(開口率80.7%))を有する図5の装置におけるカーボンナノチューブの成膜も行った。カーボンナノチューブ膜の成膜の際に、上のグリッド電極に電圧を印加せず、下のグリッド電極への電圧を−100〜+50Vまで変化させた試験も行った。
【0055】
このようにして成膜したカーボンナノチューブ膜の結晶性をラマン分光法により評価した。具体的には、ラマンスペクトルにおいてグラフェン構造に起因するG−band(1585cm−1)と、グラフェンシートの結晶性の乱れを示すD−band(1350cm−1)の強度比(G/D比)から、結晶性を評価した。G/D比が高いほど結晶性が良好である。
【0056】
1枚のグリッド電極の場合には、グリッド径1mm、2mm、5mmの3種類のグリッド電極を用い、電圧を−100〜+100Vの範囲で印加して、上記G/D比を求めた。また、2枚のグリッド電極の場合には、グリッド径2mmのグリッド電極を用い、下のグリッド電極に電圧を印加せず、上のグリッド電極への電圧を−100〜+50Vの範囲で印加して、上記G/D比を求めた。その結果を図9に示す。図9は、横軸にグリッド電極に印加した電圧をとり、縦軸にG/D比をとって、これらの関係をグリッド径毎にまとめたものである。この図に示すように、グリッド電極71の開口径を小さくするに従ってG/D比が向上し、カーボンナノチューブ膜の結晶性が向上することが確認され、開口径が2mm以下が好ましいことがわかった。また、印加する電圧は正電圧よりも負電圧のほうがG/D比が向上することも確認された。1枚のグリッド電極の場合で、最もG/D比が高かったのは、開口径1mmで印加電圧が−100Vのときで、G/D比は0.9であった。また、開口径2mmの2枚のグリッド電極を用いることにより、同じ開口径の1枚のグリッド電極を用いた場合に比較し、G/D比が高くなることが確認された。また、2枚のグリッド電極を用いた場合には、電圧を印加しなくても高いG/D比が得られることが確認された。
【0057】
2枚のグリッド電極を用いて高G/D比が得られたサンプルの断面を走査型顕微鏡(SEM)で撮影した。その写真を図10に示す。この図に示すように、基板面に対して垂直に配向し、かつ高密度のカーボンナノチューブ膜が得られたことが確認された。
【0058】
以上から、金属触媒層を形成したウエハに、Oガスのマイクロ波プラズマによる酸素プラズマ処理、およびHガスのマイクロ波プラズマによる活性化処理を行って、その後に、グリッド電極の開口径および印加電圧を調整してマイクロ波プラズマCVDによりカーボンナノチューブ膜を成膜することにより、結晶性の良好なカーボンナノチューブ膜が得られることが確認された。
【0059】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
(第2の実施形態の方法を実施するための成膜装置の構成)
図11は、本発明の第2の実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の成膜方法を実施するために用いられる成膜装置の一例を示す模式図である。この成膜装置は、酸素プラズマ処理と、水素プラズマによる活性化処理と、カーボンナノチューブ膜の成膜とを別個のチャンバで真空を破ることなくin−situで連続して実施することができるマルチチャンバタイプである。
【0060】
この成膜装置100′は、真空に保持されている酸素プラズマ処理ユニット101、活性化処理ユニット102、成膜ユニット103を備えており、これらのユニット101〜103は、基本的には上記成膜装置100と同様のRLSAマイクロ波プラズマ方式のプラズマ処理装置として構成されており、搬送室105にゲートバルブGを介して接続されている。また、搬送室105にはロードロック室106、107がゲートバルブGを介して接続されている。搬送室105は真空に保持されている。ロードロック室106、107の搬送室105と反対側の側面には、大気雰囲気の搬入出室108が接続されており、搬入出室108のロードロック室106、107の接続部分と反対側にはウエハWを収容可能なキャリアCを取り付ける3つのキャリア取り付けポート109、110、111が設けられている。
【0061】
搬送室105内には、酸素プラズマ処理ユニット101、活性化処理ユニット102、カーボンナノチューブ膜成膜ユニット103、ロードロック室106,107に対して、ウエハWの搬入出を行う搬送装置112が設けられている。この搬送装置112は、搬送室105の略中央に設けられており、回転および伸縮可能な回転・伸縮部113の先端に半導体ウエハWを支持する2つの支持アーム114a,114bを有しており、これら2つの支持アーム114a,114bは互いに反対方向を向くように回転・伸縮部113に取り付けられている。
【0062】
搬入出室108内には、キャリアCに対するウエハWの搬入出およびロードロック室106,107に対するウエハWの搬入出を行う搬送装置116が設けられている。この搬送装置116は、多関節アーム構造を有しており、キャリアCの配列方向に沿ってレール118上を走行可能となっていて、その先端の支持アーム117上にウエハWを載せてその搬送を行う。
【0063】
この成膜装置は、各構成部を制御する制御部120を有しており、これにより酸素プラズマ処理ユニット101の各構成部、活性化処理ユニット102の各構成部、カーボンナノチューブ成膜ユニット103の各構成部、搬送装置112、116、搬送室105の排気系(図示せず)、ゲートバルブGの開閉等の制御を行うようになっている。この制御部120は、第1の実施形態の制御部7と同様に構成される。
【0064】
(第2の実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の成膜方法)
次に、以上のように構成された成膜装置を用いた本実施形態のカーボンナノチューブ膜の成膜方法について説明する。
図12は、本発明の第2の実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の成膜方法を説明するためのフローチャートである。
【0065】
まず、図3と同様の成膜表面に金属触媒を有するウエハWを準備し、成膜装置100′内に搬入する(工程11)。具体的には、キャリアCから搬入出室108の搬送装置116によりウエハWを取り出してロードロック室106,107のいずれかに搬送する。
【0066】
次に、そのロードロック室を真空排気した後、搬送室105の搬送装置112により、そのウエハWを取り出し、酸素プラズマ処理ユニット101に搬送してウエハWの金属触媒層に対して酸素プラズマ処理を施す(工程12)。この際の酸素プラズマ処理は、第1の実施形態の工程2と同様に行われる。
【0067】
その後、酸素プラズマ処理を施した後のウエハWを搬送装置112により酸素プラズマ処理ユニット101から取り出して、活性化処理ユニット102に搬送し、そこでウエハWの金属触媒層に対して水素プラズマによる活性化処理を施す(工程13)。この際の活性化処理は、第1の実施形態の工程3と同様に行われ る。
【0068】
その後、活性化処理を施した後のウエハWを搬送装置112により活性化処理ユニット102から取り出して、成膜ユニット103に搬送し、そこでカーボンナノチューブ膜の成膜処理を実施する(工程14)。この際の成膜処理は、第1の実施形態の工程5と同様に行われる。
【0069】
その後、カーボンナノチューブ膜が成膜された後のウエハを搬送装置112により成膜ユニット103から取り出し、ロードロック室106、107のいずれかに搬送し、そのロードロック室を大気圧に戻した後、搬送装置116により、いずれかのキャリアCに搬出する(工程15)。
【0070】
第1の実施形態では、1つのチャンバ内で酸素プラズマ処理、活性化処理、カーボンナノチューブの成膜処理を連続して効率的に行うことのできる装置を用いたが、これら3つの処理の条件が異なる場合等には必ずしも効率が良いとは限らず、また装置のガス供給系を各処理で分けたい場合や、これら3つの処理で若干装置構成が異なる装置を用いたい場合(例えば、グリッド電極の有無等)もある。本実施形態では、そのような場合に好適である。
【0071】
なお、図10の装置では、各処理を別個のユニット(チャンバ)で行った例を示したが、例えば、酸素プラズマ処理と活性化処理を1つのユニット(チャンバ)で行い、カーボンナノチューブ膜の成膜を他のユニット(チャンバ)で行う等、少なくとも1つの処理を別個のユニット(チャンバ)で行えばよい。
【0072】
<本発明の他の適用>
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態においては、酸素プラズマ処理、活性化処理、カーボンナノチューブ成膜処理をRLSAマイクロ波プラズマ方式のプラズマ処理装置で行った例を示したが、これに限らず、他のマイクロ波プラズマ方式を用いてもよいし、マイクロ波プラズマに限らず、誘導結合プラズマや容量結合プラズマを用いてもよい。ただし、マイクロ波プラズマはラジカルを主体とする低電子温度プラズマであるのでマイクロ波プラズマが好ましい。また、ウエハの構造も表面に金属触媒層が形成されていれば図2のものに限るものではなく、被処理基板も半導体ウエハに限るものではない。
【符号の説明】
【0073】
1;チャンバ
2;サセプタ
3;荷電粒子制御機構
4;マイクロ波導入機構
5;ガス供給機構
6;排気機構
7;制御部
71,71a,71b;グリッド電極
73,73a,73b;可変直流電源
100,100′;成膜装置
101;酸化プラズマ処理ユニット
102;活性化処理ユニット
103;成膜ユニット
W;半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に金属触媒層が形成された被処理基板を準備する工程と、
前記金属触媒層に酸素プラズマ処理を施す工程と、
前記酸素プラズマ処理後の前記金属触媒層に水素含有プラズマ処理を施して、前記金属触媒層の表面を活性化する工程と、
前記活性化が施された後の被処理基板の前記金属触媒層の上にプラズマCVDによりカーボンナノチューブ膜を成膜する工程と
を有することを特徴とするカーボンナノチューブ膜の成膜方法。
【請求項2】
前記酸素プラズマ処理、前記活性化処理、前記カーボンナノチューブ膜の成膜の際に、前記被処理基板を300〜600℃に加熱することを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ膜の成膜方法。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ膜を成膜する際に、前記被処理基板の直上に前記被処理基板を遮蔽するように、多数の開口を有する遮蔽部材を設け、生成したプラズマを前記遮蔽部材を介して前記被処理基板に到達させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカーボンナノチューブ膜の成膜方法。
【請求項4】
前記酸素プラズマ処理を行う際に、前記被処理基板の直上に前記被処理基板を遮蔽するように、多数の開口を有する遮蔽部材を設け、生成したプラズマを前記遮蔽部材を介して前記被処理基板に到達させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ膜の成膜方法。
【請求項5】
前記活性化処理を行う際に、前記被処理基板の直上に前記被処理基板を遮蔽するように、多数の開口を有する遮蔽部材を設け、生成したプラズマを前記遮蔽部材を介して前記被処理基板に到達させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ膜の成膜方法。
【請求項6】
前記遮蔽部材は少なくとも2枚上下方向に重ねて設けられることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ膜の成膜方法。
【請求項7】
前記カーボンナノチューブ膜を成膜する際に、前記遮蔽部材に直流電圧を印加することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ膜の成膜方法。
【請求項8】
前記遮蔽部材に負の直流電圧を印加することを特徴とする請求項7に記載のカーボンナノチューブ膜の成膜方法。
【請求項9】
前記カーボンナノチューブ膜を成膜する際に、前記遮蔽部材の少なくとも一つに直流電圧を印加することを特徴とする請求項6に記載のカーボンナノチューブ膜の成膜方法。
【請求項10】
前記遮蔽部材の前記開口は径が2mm以下であることを特徴とする請求項3から請求項9のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ膜の成膜方法。
【請求項11】
前記酸素プラズマ処理、前記活性化処理、前記カーボンナノチューブ膜の成膜の際のプラズマは、マイクロ波プラズマであることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ膜の成膜方法。
【請求項12】
前記酸素プラズマ処理、前記活性化処理、前記カーボンナノチューブ膜の成膜は、同一チャンバ内で連続して行うことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ膜の成膜方法。
【請求項13】
前記酸素プラズマ処理、前記活性化処理、前記カーボンナノチューブ膜の成膜のうち少なくとも1つは、他とは異なるチャンバで実施されることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ膜の成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−68513(P2011−68513A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220370(P2009−220370)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】