説明

ガスタービン制御方法及び装置

【課題】設計時に想定した理想的な燃料流量、空気流量での運転状態から逸脱した運転となることを防止し、効率的な運転状態を維持するガスタービンの制御。
【解決手段】燃焼器内の周波数解析手段13と、周波数帯別解析結果と空気流量とパイロット燃料の比を含む操作プロセス量や大気状態と負荷量を含む状態信号とに基づき、燃焼状態を把握する状態把握手段12、及び燃焼振動の特性を把握する燃焼特性把握手段14と、燃焼振動特性と燃焼状態とから、燃焼振動が予め定めた管理値を越える毎に燃焼器に供給する空気流量とパイロット比との少なくとも一方の補正量を算出し、操作プロセス量と状態信号に対応させて予め設定した空気流量とパイロット比の初期設計値を補正して駆動する制御部3とからなり、制御部3は燃焼振動が予め定めた管理値を一定時間下回った状態で、初期設計値の補正をリセットし、初期設計値で運転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスタービン制御方法及び装置に係り、特に、ガスタービン運転時に生じる燃焼振動抑制のための補正により、設計時に想定した理想的な燃料流量、空気流量での運転状態から逸脱した運転を続けることを防止できるようにした、ガスタービン制御方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば発電機を駆動するガスタービンでは、発電機の出力、大気温度・湿度などに基づき、燃焼器へ送る空気流量、燃料流量を試運転で微調整して予め決定し、その値を初期設計値として用いて運転を行なっている。しかし試運転は一定期間のみであり、全ての気象条件に基づいて試運転できるわけではなく、また、圧縮機の性能劣化やフィルターの目詰まりなどの経年変化により、実際の空気流量、燃料流量は設計時や試運転時とずれる可能性がある。
【0003】
またガスタービンは、燃料と空気とによる連続的な発熱酸化反応で生じる燃焼ガスにより駆動されるが、その発熱酸化反応の際に乱流燃焼に伴う燃焼騒音と、燃料蒸発から燃焼までの時間遅れに伴う、放熱と拡散・旋回に伴う火炎伝播速度の変動との相互作用により誘起される燃焼振動とからなる、10Hzから数KHzに亘る周波数を有する圧力変動を伴うことがある。
【0004】
特に、燃焼振動は、燃焼室の燃焼領域で発生する上述した相互作用を加振源とし、燃焼室の気柱との共鳴によってある特有の振動周波数の範囲で成長する。このような燃焼振動は、大小のレベルはあるものの、燃焼ガスの生成過程ではある程度不可避と考えなければならないが、その大小レベルは燃焼器の容積および燃焼ガス温度に基づく燃焼性能によって左右される。
【0005】
一方、最近のガスタービンでは高出力化が求められ、これに伴って燃焼ガス温度も高温となって、ガスタービンの燃焼室は燃焼ガスの急激な温度上昇やガスタービン負荷変動等に伴って生起する過大な熱応力に対処できるよう、強度の高い耐熱鋼を使用すると共に、搬入・据付・点検等の労力軽減のため、高強度の割合には比較的肉厚の薄い材料が使用されている。ところが、不測の過大な燃焼振動が発生した場合、あるいは燃焼振動と燃焼室の気柱とが共振した場合、燃焼室は極度に振動してクラックが発生したり支持部材に過大な損傷が生じ、燃焼器の構成部材の寿命を短くしたりする。
【0006】
こういった燃焼振動は、ガスタービンの運転に大きな支障をきたすため、燃焼振動をできる限り抑制し回避することがプラントの設備保護、及び稼働率向上の観点から強く求められる。そのため、燃焼安定性を保って燃焼振動が生じないよう、年に数回の制御系の調整を熟練調整員により実施し、燃焼安定性の確認・維持が不可欠となるが、それが保守のコストアップや稼動率低下の原因となる。
【0007】
こういった問題に対しては、例えば特許文献1に、圧力センサーによって検出された燃焼ガスの圧力変動を周波数解析する周波数解析装置と、この周波数解析装置によって解析された圧力変動の周波数帯域に基づいて振動安定性を処理する中央演算装置と、この中央演算装置の出力信号を増幅する電圧増幅器と、増幅された出力信号を弁開閉信号として燃料弁に与えて制御するコントローラ部とをそれぞれ備え、圧力変動に伴って誘起する燃焼振動を抑制する燃焼器の燃焼振動抑制装置およびその抑制方法が示されている。
【0008】
また、この特許文献1に示された燃焼振動抑制装置およびその抑制方法は低周波の燃焼振動を対象としたものであるが、ガスタービンで生じる燃焼振動は様々な要因によって低周波から数千Hzといった高周波までの広い帯域で生じるものであり、しかも複数の周波数帯域で燃焼振動が同時に発生することもある。そのため、特許文献1のように低周波域の燃焼振動だけに基づいて燃空比を変化させると、他の周波数帯域での燃焼振動が悪化することもある。
【0009】
そのため本願出願人は特許文献2において、複数の周波数帯域で燃焼振動が発生している場合に予め決めた優先度に応じ、優先度の高い周波数帯域の燃焼振動が抑制されるよう調整をおこない、このように燃焼器に供給する燃料の流量又は空気の流量の少なくとも一方を調整したとき、その調整内容と、調整を行ったことによる燃焼器内における燃焼状態の変化とを関連付けた情報を記憶するデータベースと、そのデータベースに蓄積された情報に基づいて解析して得られた情報が格納された基礎データベースとが設けられ、その基礎データベースに格納された情報に基づき、燃焼器に供給する燃料の流量又は空気の流量の少なくとも一方を調整して、複数の周波数帯域で燃焼振動が発生した場合にも、有効に燃焼振動を抑制できるガスタービン制御装置を提案した。
【0010】
【特許文献1】特開平9−269107号公報
【特許文献2】特開2005−155590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら特許文献1に示された燃焼振動抑制装置およびその抑制方法は、前記したように低周波の燃焼振動を対象としたものであるため、その燃焼振動だけに基づいて燃空比を変化させると他の周波数帯域での燃焼振動が悪化することがある。また特許文献2に開示された方法は、優先度の高い周波数帯域の燃焼振動を抑制することには有効であるが、調整内容と調整を行ったことによる燃焼器内における燃焼状態の変化とを関連付けた情報をデータベースに記憶し、そのデータベースに蓄積された情報に基づいて図12(A)のグラフに示したように、解析して得られた情報で燃焼振動を抑制するようにしているため、図12(B)の時間と効率の関係を示したグラフに示したように、設計時に想定した理想的な燃料流量、空気流量による設計性能や母機の疲労寿命を考慮した運転状態から逸脱した運転が行われてしまう場合がある。
【0012】
この図12(A)のグラフは横軸が負荷、縦軸が燃料流量や空気流量を制御する弁開度を表し、■は補正前の弁開度、▲は燃焼振動の発生を抑制するための調整を行った後の弁開度で、負荷が90から110程度の範囲で調整を行った後の弁開度が大きくなっている。そして図12(B)は、横軸がガスタービンの駆動時間であり、縦軸は効率を表していて、「ここで調整」と記した部分で燃焼振動の発生を抑制するための調整を行った場合であり、調整後は効率が落ちている。すなわちこれは、燃焼振動の発生を抑制するための調整により、設計時に想定した理想的な燃料流量、空気流量とする弁開度とずれた弁開度により、設計性能や母機の疲労寿命を考慮した運転状態から逸脱した運転が行われていることを示している。
【0013】
そのため本発明においては、初期設計値で想定した理想的な燃料流量、空気流量での運転状態から逸脱した運転が続けられることを防止できるようにして、設計時に想定した理想的な燃料流量、空気流量による設計性能や母機の疲労寿命を考慮した運転状態を維持できるようにした、ガスタービン制御方法及び装置を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため本発明になるガスタービン制御方法は、
ガスタービンにおける燃焼器内の圧力変動または加速度を複数の周波数帯別に周波数解析する第1のステップと、
該周波数帯別解析結果と前記ガスタービンにおける空気流量とパイロット燃料の比を含む操作プロセス量、及び大気状態と負荷量を含む状態信号とに基づき、前記ガスタービンの燃焼振動の特性を周波数帯別に把握する第2のステップと、
前記燃焼振動が予め定めた管理値を越える毎に前記燃焼器に供給する空気流量とパイロット比との少なくとも一方の補正量を算出し、前記操作プロセス量と状態信号に対応させて予め設定した空気流量とパイロット比の初期設計値を補正する第3のステップと、
該第3のステップの補正に基づいてガスタービンを駆動し、前記燃焼振動が前記管理値を一定時間下回ったことを判断する第4のステップと、
該第4のステップの判断に基づき、前記第3のステップで行った初期設計値の補正をリセットし、初期設計値で運転することを特徴とする。
【0015】
そしてこのガスタービン制御方法を実施するガスタービン制御装置は、
ガスタービンにおける燃焼器内の圧力変動または加速度を複数の周波数帯別に周波数解析する周波数解析手段と、
該周波数解析手段の周波数帯別解析結果と、前記ガスタービンにおける空気流量とパイロット燃料の比を含む操作プロセス量、及び大気状態と負荷量を含む状態信号とに基づき、前記ガスタービンにおける燃焼状態を把握する状態把握手段、及び燃焼振動の特性を把握する燃焼特性把握手段と、
前記燃焼特性把握手段が把握した燃焼振動特性と状態把握手段の把握した燃焼状態とから、前記燃焼振動が予め定めた管理値を越える毎に前記燃焼器に供給する空気流量とパイロット比との少なくとも一方の補正量を算出し、前記操作プロセス量と状態信号に対応させて予め設定した空気流量とパイロット比の初期設計値を補正して前記ガスタービンを駆動する制御部とを備え、
前記制御部は、前記ガスタービンの燃焼振動が予め定めた前記管理値を一定時間下回った状態で前記初期設計値の補正をリセットし、初期設計値で前記ガスタービンを運転するよう構成されていることを特徴とする。
【0016】
また同じく本発明になるガスタービン制御方法は、
ガスタービンにおける燃焼器内の圧力変動または加速度を複数の周波数帯別に周波数解析する第1のステップと、
該周波数帯別解析結果と前記ガスタービンにおける空気流量とパイロット燃料の比を含む操作プロセス量、及び大気状態と負荷量を含む状態信号とに基づき、前記ガスタービンの燃焼振動の特性を周波数帯別に把握する第2のステップと、
前記燃焼振動が予め定めた管理値を越える毎に前記燃焼器に供給する空気流量とパイロット比との少なくとも一方の補正量を算出し、前記操作プロセス量と状態信号に対応させて予め設定した空気流量とパイロット比の初期設計値を補正する第3のステップと、
該第3のステップの補正に基づいてガスタービンを駆動し、前記燃焼振動が前記管理値を一定時間下回ったことを判断する第4のステップと、
該第4のステップの判断に基づき、前記第3のステップで行った初期設計値の補正値を、徐々に初期設計値に戻しながら運転することを特徴とする。
【0017】
また、同じくこのガスタービン制御方法を実施するガスタービン制御装置は、
ガスタービンにおける燃焼器内の圧力変動または加速度を複数の周波数帯別に周波数解析する周波数解析手段と、
該周波数解析手段の周波数帯別解析結果と、前記ガスタービンにおける空気流量とパイロット燃料の比を含む操作プロセス量、及び大気状態と負荷量を含む状態信号とに基づき、前記ガスタービンにおける燃焼状態を把握する状態把握手段、及び燃焼振動の特性を把握する燃焼特性把握手段と、
前記燃焼特性把握手段が把握した燃焼振動特性と状態把握手段の把握した燃焼状態とから、前記燃焼振動が予め定めた管理値を越える毎に前記燃焼器に供給する空気流量とパイロット比との少なくとも一方の補正量を算出し、前記操作プロセス量と状態信号に対応させて予め設定した空気流量とパイロット比の初期設計値を補正して前記ガスタービンを駆動する制御部とを備え、
前記制御部は、前記ガスタービンの燃焼振動が予め定めた前記管理値を一定時間下回った状態で、前記初期設計値の補正を前記初期設計値に近づく方向に段階的に低減させながら前記ガスタービンを運転するよう構成されていることを特徴とする。
【0018】
このように燃焼振動が生じたとき、その燃焼振動を抑制する補正値で操作プロセス量と状態信号に対応させて予め設定した空気流量とパイロット比の初期設計値を補正し、以後の運転においてその補正結果の燃料流量又は空気流量で運転を続けるようにし、燃焼振動が予め定めた前記管理値を一定時間下回った場合、初期設計値の補正をリセットするか、もしくは段階的に低減させることで、設計時に想定した理想的な燃料流量、空気流量での運転状態から逸脱した運転が続けられることが防止され、母機の疲労寿命も考慮した運転状態を維持できるガスタービン制御方法及び装置とすることができる。
【0019】
そして、前記第3のステップで行った初期設計値の補正値を、予め定めた前記管理値より小さい複数の閾値に従って、初期設計値に近づく方向に段階的に低減し、そのため、前記制御部は、前記初期設計値に加えた補正値を、予め定めた前記管理値より小さい複数の閾値に従って、初期設計値に近づく方向に段階的に低減させて前記ガスタービンを運転するよう構成されていることで、母機の疲労寿命も考慮した運転状態を適切に維持できるガスタービン制御方法及び装置とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上記載のごとく本発明になるガスタービン制御方法及び装置は、燃焼振動発生時に一旦燃焼振動を回避し、制御系設定に対して望ましい補正を行うが、所定時間監視して燃焼振動が落ち着いているようであれば元の制御系設定に戻す、あるいは母機の疲労寿命を考慮した設定とする機能を備えたから、ガスタービンの熱容量などによる一時的な不安定燃焼現象時には燃焼安定性を維持すべく制御系の調整を行うことが可能となり、また、不安定現象が解消すれば当初設定した初期設計値に戻す、あるいは母機の疲労寿命を考慮した設定とするため、特別の場合を除いてメーカやお客様の意図した制御系設定でガスタービンを運用することができ、従来のように設計時に想定した理想的な燃料流量、空気流量での運転状態から逸脱した運転が続けられる、といったことが防止されて、母機の疲労寿命も考慮した運転状態を維持できる、ガスタービン制御方法及び装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例1】
【0022】
最初にガスタービン2の構成を示した図10と、ガスタービン燃焼器23の概略断面図である図11とを用い、ガスタービン2について簡単に説明する。まず図10はガスタービン2の概略構成図であり、ガスタービン2は入口案内翼26を有する圧縮機22と、回転軸39に圧縮機22、発電機40が接続されているタービン24を有するガスタービン本体部21とを有し、このタービン24には燃焼器23から燃焼ガス導入管38経由で燃焼ガスが供給され、またその燃焼ガスは配管を通して外部に排出される。
【0023】
圧縮機22は回転軸39を介してタービン24の回転が伝えられ、フィルタが設けられている取り込み入口から外部の吸気25を取り込んで圧縮空気を生成し、圧縮空気導入部27から燃焼器23に圧縮空気を供給して燃焼に使用させる。この圧縮機22に設けられた入口案内翼26は、圧縮機22の空気導入側の回転翼で、この入口案内翼26の回転翼の角度、すなわち弁開度を制御することで回転数一定でも、圧縮機22へ導入する空気の流量(圧縮機吸気流量)を調整することが可能である。
【0024】
燃焼器23には圧縮空気導入部27、バイパス空気導入管36、バイパス弁35、バイパス空気混合管37が接続され、圧縮空気導入部27は、圧縮機22に接続された導入管や燃焼器23の車室内へ空気を導く空間で、圧縮機吐出空気を燃焼器23へ導く。バイパス空気導入管36は圧縮空気導入部27内に一端部が開放されて接続され、他端部はバイパス空気導入管36を通過する空気の流量を制御するバイパス弁35に接続されて、圧縮機吐出空気のうち、燃焼器23に供給しない分をタービン24へバイパスする管である。また、バイパス弁35の他端側に接続されたバイパス空気混合管37は燃焼ガス導入管38に接続され、バイパス弁35を通過した空気を燃焼器23で生成した燃焼ガスと混合するよう燃焼ガス導入管38に供給する。
【0025】
また燃焼器23には、メイン燃料流量制御弁28、メイン燃料供給弁29を介してメイン燃料49が、パイロット燃料流量制御弁31、パイロット燃料供給弁32を介してパイロット燃料33がそれぞれ供給される。メイン燃料流量制御弁28は、一方を外部から燃料を供給する配管に、他方を複数のメイン燃料供給弁29に接続した配管に接続され、メイン燃料流量制御弁28は外部から供給される燃料の燃焼器23への流量を、メイン燃料供給弁29は燃焼器23のメインバーナーに供給する燃料を、それぞれ制御する弁である。
【0026】
パイロット燃料流量制御弁31は、一方を外部から燃料を供給する配管に、他方を複数のパイロット燃料供給弁32に接続され、パイロット燃料流量制御弁31は外部から供給される燃料の燃焼器23への流量を、パイロット燃料流量制御弁31はパイロットバーナーに供給する燃料を、それぞれ制御する弁である。メイン燃料49はメイン火炎の燃焼に使用され、パイロット燃料33はメイン火炎の燃焼を安定化するためのパイロット火炎の燃焼に使用される。
【0027】
次にガスタービン燃焼器23の概略断面を示した図11において、ガスタービンの燃焼器23は圧縮機22、燃焼器本体41、車室42、外筒43、内筒44、尾筒45などから構成される。車室42は外筒43に接合され、車室42と外筒43との内部には燃焼器本体41が収納されている。この燃焼器本体41は、サポート46により車室42に接合されて所定の位置に保持される。また、燃焼器本体41にはパイロット燃料47が供給されるパイロット燃料ノズル48、メイン燃料49が供給されるメイン燃料ノズル50が設けられ、圧縮機22から車室42に流入した流入空気が、車室42と内筒44との間の空間を介して燃焼器本体41へ供給される。
【0028】
パイロット燃料ノズル48は、パイロット燃料47を圧縮空気導入部27が存在する領域(図示されない)に噴射して拡散燃焼を行い、拡散炎であるパイロット火炎を発生させる。メイン燃料ノズル50は、メイン燃料49を図示されない予混合装置に噴射して圧縮空気導入部27からの圧縮空気と混合された混合気を生成し、その混合気を内筒44に供給して前記パイロット火炎から混合気に燃焼を伝播させ、メイン火炎を内筒44内で燃焼させる。このメイン火炎の燃焼により高温の燃焼ガス51が生成され、内筒44から尾筒45に導入される。
【0029】
尾筒45は、バイパスエルボ52を介してバイパス弁53に接合され、このバイパス弁53は、車室42の内側に開口して燃焼器流入空気の一部をバイパス空気54として取り出し、尾筒45に供給する。尾筒45は、燃焼ガス51とバイパス空気54とを混合し、燃焼ガス55としてタービン24に供給する。この燃焼ガス51に混合されるバイパス空気54の流量は、バイパス弁53の開度がバイパス弁53に接続されたバイパス弁可変機構56により操作されることで調整され、発電機40がガスタービン2に要求する出力に対応した値とされる。
【0030】
このように構成したガスタービン2において、外部から導入された空気は圧縮機22で圧縮され、各燃焼器23へ供給される。一方、燃料の一部はパイロット燃料流量制御弁31経由で各燃焼器23のパイロット燃料供給弁32に達し、そこから各燃焼器23へ導入される。また、残りの燃料はメイン燃料流量制御弁28経由で各燃焼器23のメイン燃料供給弁29に達し、そこから各燃焼器23へ導入される。導入された空気及び燃料は、各燃焼器23において燃焼して発生した燃焼ガスは、タービン24に導入されてタービン24を回転させ、その回転エネルギーにより発電機40が発電を行う。
【0031】
次に、以上説明してきたガスタービン2の制御装置1について、図1を用いて説明する。図1(A)は、ガスタービン2を制御するための機能的構成を示すためのブロック図であり、図1(B)は、図1(A)に示したガスタービン制御部3における自動調整部9の詳細ブロック図である。図1(A)に示したように、ガスタービン制御部3でガスタービン2を制御するため、ガスタービン2にプロセス量計測部4、圧力変動測定部(センサ)5、加速度測定部(センサ)6、操作機構7が設けられている。
【0032】
プロセス量計測部4は、ガスタービン2上の然るべき部位に設置され、ガスタービン2の運転中における、運転条件や運転状態を示すプロセス量を計測する各種計測機器であり、測定結果は予め定められた時刻t1、t2…毎に、ガスタービン制御部3の制御器8へ出力される。ここでプロセス量(プラント状態量)とは、例えば、発電電力(発電電流、発電電圧)、大気温度、湿度、各部での燃料流量及び圧力、各部での空気流量及び圧力、燃焼器23での燃焼ガス温度、燃焼ガス流量、燃焼ガス圧力、圧縮機22やタービン24の回転数、タービン24からの排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)等をはじめとする排出物濃度等である。このプロセス量は、ガスタービン2に供給される燃料や空気の量等の操作可能な「操作量(プラントデータ)」と、例えば、大気温度といった気象データ、要求によって決定される発電機の負荷の大きさ(MW)等の「操作できない状態量」とに分けられる。
【0033】
圧力変動測定部5は、複数の燃焼器23のそれぞれに取り付けられた圧力測定器であり、制御器8からの指令により予め定められた時刻t1、t2…毎に、燃焼により発生する各燃焼器23内の圧力変動測定値をガスタービン制御部3へ出力する。加速度測定部6は、各燃焼器23に取り付けられた加速度の測定器で、制御器8からの指令により予め定められた時刻t1、t2…毎に、燃焼により発生する各燃焼器23の加速度(位置の2階微分)を計測し、その測定値をガスタービン制御部3へ出力する。
【0034】
操作機構7は制御器8からの指令により、メイン燃料流量制御弁28及びメイン燃料供給弁29の開度、パイロット燃料流量制御弁31及びパイロット燃料供給弁32の開度、バイパス弁35の開度、圧縮機22の入口案内翼26の回転翼の角度、などを操作する機構であり、これによりメイン燃料の流量制御、パイロット燃料の流量制御、各燃焼器23へ供給する空気の流量制御、圧縮機22に導入される空気の流量の制御などを行う。なお、各燃焼器23へ供給する空気の流量制御は、具体的には各燃焼器23においてバイパス弁35の開度を大きく(あるいは小さく)し、バイパス側に流れる空気流量を増加(あるいは減少)することにより、燃焼器23に供給される空気の流量を制御する。
【0035】
ガスタービン制御部3は、制御器8と、自動調整部(探索制御部)9とを備える。制御器8は、プロセス量計測部4、圧力変動測定部5、加速度測定部6から出力される測定値を受け取り、これを自動調整部9に転送する。また、この制御器8は、自動調整部9からの指令に基づき、メイン燃料流量制御弁28及びメイン燃料供給弁29、パイロット燃料流量制御弁31及びパイロット燃料供給弁32、バイパス弁35、入口案内翼26を、操作機構7で操作するための信号を出力する。
【0036】
図1(B)は、図1(A)に示したガスタービン制御部3における自動調整部9の詳細ブロック図であり、11は入力手段、12は状態把握手段、13は周波数解析手段、14は燃焼特性把握手段、15はデータベース、16は調整量決定手段、17は出力手段であり、これらで構成される自動調整部9では、燃焼振動が発生したときに、振動を抑制するのに最も効果的な方向に操作量(プロセス量)を変化させる制御を行う。
【0037】
すなわち自動調整部9は、制御器8から転送されたプロセス量計測部4、圧力変動測定部5、加速度測定部6からのプロセス量や圧力、加速度のデータを入力手段11により受け取り、さらに周波数解析手段13によるガスタービン2内の振動周波数解析結果とから、状態把握手段12でガスタービン2の状態等を、燃焼特性把握手段14で各燃焼器23の燃焼特性を把握する。そして調整量決定手段16で、この状態把握手段12および燃焼特性把握手段14で把握した内容に基づき、ガスタービン2で燃焼振動が発生しないような対策、すなわちメイン燃料流量制御弁28及びメイン燃料供給弁29、パイロット燃料流量制御弁31及びパイロット燃料供給弁32、バイパス弁35、入口案内翼26を調整するか否か、および、調整する場合にはその調整部位と調整量を決定する。そしてその調整量決定手段16の決定結果は、出力手段17により制御器8に出力される。
【0038】
またこの調整量決定手段16は、後記するように燃焼振動が発生したとき、それを抑制するため制御系設定に対して望ましい補正を行うが、所定時間監視して燃焼振動が落ち着いているようであれば元の制御系設定に戻す、あるいは補正量を低減する機能を備え、ガスタービンの熱容量などによる一時的な不安定燃焼現象時には燃焼安定性を維持すべく制御系の調整をおこない、また、不安定現象が解消すれば当初設定した制御系設定に戻す、あるいは補正量を低減し、特別の場合を除いてメーカやお客様の意図した制御系設定でガスタービンを運用する機能を有している。
【0039】
図2は、本発明によるガスタービン制御方法のフロー図である。この図2に示したフロー図は、ガスタービン2を稼働させるためのプログラムの一部として組み込まれるものであり、ガスタービン2が稼働している間、所定時間毎に一連の処理を実行する。
【0040】
ステップS10で処理がスタートすると、まずステップS11で図1(A)のプロセス量計測部4、圧力変動測定部5、加速度測定部6から制御器8を介して転送されたプロセス量や圧力、加速度のデータが入力手段11で受けとられ、状態把握手段12、周波数解析手段13に送られる。
【0041】
状態把握手段12では、プロセス量計測部4で計測されたガスタービン2に供給される燃料の特性の把握、ガスタービン2に異常がないかどうかの診断等が行われる。ガスタービン2に供給される燃料の特性の把握は、例えば図示していないタンク内に貯えられている燃料が時間の経過と共にタンク内で重い分子が下降し、軽い分子が上昇する結果、ガスタービン2に供給される燃料成分(カロリー)がタンク内の燃料残量等に応じて変動するためである。そのためガスタービン2に供給されている燃料成分に応じ、プロセス量計測部4としてタンクからガスタービン2に至る燃料系統にカロリーメータ、燃料の組成を測る測定器等を設け、得られる燃料のカロリーや組成のデータに基づき、燃空比を増減する際の調整量を状態把握手段12で決定する。
【0042】
なお、プロセス量計測部4で燃料のカロリーや組成をリアルタイムで計測するのではなく、予め、タンク内の燃料の残量と燃料成分の変化との関係を計測し、これに基づいて調整量を決定するためのテーブルやチャートを作成しておくようにしてもよい。その場合、プロセス量計測部4ではタンク内の燃料の残量を計測し、計測された燃料の残量に基づいて燃空比を増減する際の調整量を決定する。また、タンクからの供給だけでなく、パイプラインにより燃料を供給される場合も同様にしてもよい。
【0043】
ガスタービン2に異常がないかどうかの診断は、プロセス量計測部4で計測されたガスタービン2の各部の温度や流量のデータに基づき、ガスタービン2の異常の有無を判断するもので、例えば、ガスタービン2の特定部分の温度が予め設定した閾値以上に上昇していたり、特定部分の流量が閾値以下に低下していた場合等に、ガスタービン2自体に異常が発生していると判断する。そして状態把握手段12は、ガスタービン2に異常があるとの判断がなされた場合、アラームや警告ランプ等の報知手段によってガスタービン2に異常が生じていることをオペレータ等に向けて報知する。
【0044】
ガスタービン2に異常が認められない場合、次のステップS12で周波数解析手段13で内圧変動や加速度の周波数解析、およびセンサの異常診断が行われる。周波数解析手段13は、各燃焼器23において圧力変動測定部5で計測された圧力変動測定値に基づき、例えば圧力の変動(振動)の周波数解析(高速フーリエ変換:FFT)を行う。図5は、圧力変動測定部5により測定された圧力変動測定値に基づき、周波数解析手段13が周波数解析を行った結果の一例である。横軸は周波数、縦軸は振動の強度(レベル)を示している。なお、周波数解析手段13は、加速度測定部6で計測された加速度測定値に基づいて加速度の周波数解析を行うこともできる。
【0045】
この図5に示されているように、燃焼器23において発生する燃焼振動(圧力振動及び加速度振動)は、複数の振動の周波数を有し、各周波数の振動はそれぞれ複雑な要因により発生しているため、画一的な制御、あるいは一つのパラメータを制御することだけでは振動を抑えることが難しい。また、振動数によってガスタービン2に与える影響が異なり、同じ振動強度でもある周波数では許容範囲であっても、他の周波数においては致命的である場合もありうる。これらの点からガスタービン2の運転条件の制御は、振動の周波数に応じて複数のパラメータに対して行う必要がある。
【0046】
そのため周波数解析手段13は、図6に示すように、内圧変動や加速度の周波数解析結果を複数(n)の周波数帯に区切って周波数帯別解析結果として出力する。ここで周波数帯とは、周波数解析手段13が周波数解析を行った結果に基づいて対応を行う最小単位となる周波数領域である。例えば図5において振動は、主に0〜5000Hzで発生しているから、周波数範囲を0〜5000Hzとし、その周波数範囲を適当な大きさの周波数帯に区切り、n個に分割する。例えば、50Hz毎に区切るとすると、n=100となる。なお、この周波数帯は、必ずしも一定の大きさである必要はない。周波数解析手段13は、上記のようにして得た圧力又は加速度の周波数帯別解析結果を、状態把握手段12に出力する。
【0047】
また、周波数解析手段13は、圧力変動測定部5、加速度測定部6において圧力測定器や加速度測定器自体、あるいは圧力測定器や加速度測定器から出力されるデータが、入力手段11に入力されるまでのデータ転送系統に異常がないか否かも診断する。これは、圧力測定器や加速度測定器あるいはデータ転送系統に異常がある場合、正常な制御ができなくなるからで、例えば電源周波数成分(例えば60Hz)のノイズや全周波数帯域にわたってランダム状のノイズが乗ったり、また、数十Hz未満の領域、特に直流成分でパルス状ノズルが乗ると、図5に示した本来のレベルに比較して全体に上昇したレベルの信号になったりする。また、圧力測定器や加速度測定器自体が劣化した場合、全周波数帯域にわたってレベルが下がるから、周波数解析手段13で振動レベルが予め設定した範囲から外れているか否かを判断し、範囲から外れた場合に圧力測定器や加速度測定器、あるいはデータ転送系統に異常があると判定する。なおこの判定のため、周波数解析手段13で上記したようなパターンの解析結果が得られた場合に、これを検出できるような閾値を予め設定しておくことで、データ転送系統に異常が生じた場合もそれを容易に判定することができる。
【0048】
なおここで周波数解析手段13に、圧力測定器や加速度測定器を複数組設けておいてこれら複数組の測定結果を比較し、それによって圧力測定器や加速度測定器、あるいは圧力測定器や加速度測定器からのデータ転送系統に異常が発生したか否かを判定しても良い。また、加速度測定部6は、燃焼器23自体の振動を加速度として検出するため、1つの加速度測定部6で複数の燃焼器23で発生する燃焼振動を監視しても良い。この場合、一つの燃焼器23に設けられた圧力変動測定部5がセンサ異常と判断されても、加速度測定部6によって燃焼振動を検知することができ、さらに加速度測定部6を複数設けた場合は、圧力変動測定部5で燃焼振動を検知しなくとも少なくとも二つの加速度測定部6で燃焼振動を検知した場合、燃焼振動が発生していると判定することで信頼性を高めることもできる。
【0049】
再度図2に戻って、こうして周波数解析が行われるわけであるが、この処理が2サイクル目以降であって前の処理サイクルで何らかの調整を行っている場合、次のステップS13で調整を行ったことによる効果の評価が行われる。これは状態把握手段12による圧力又は加速度の周波数帯別解析結果により、燃焼振動が直ちに調整の必要な状態であるか否か、燃焼振動が生じていないものの直ちに調整する必要がある燃焼振動の予兆が生じている状態であるか否か、を予め設定した閾値と比較して判定するものである。
【0050】
その結果、管理値を逸脱、または燃焼振動の予兆があると判定(Yes)された場合、ステップS14でそのときの前回の処理サイクルで行った調整内容と、その結果変化した稼働状態のデータを図1(B)のデータベース15に追加・更新する。
【0051】
そしてX11−1、X11−2、……、X11−n、X12−1、X12−2、……、X22−nはプロセス量、Yi1−1、Yi1−2、……、Yi1−n、Yi2−1、Yi2−2、……、Yin−nは各周波数帯での振動強度の最大値である。即ち、データベース15では、プロセス量及び各周波数帯での振動強度の最大値Yinが時刻t1、t2…毎に整理されて格納されており、制御器8及び周波数解析手段13からこれらのデータが時々刻々とデータベース15に送信されてくると、それらのデータがデータベース15に追加記憶される。
【0052】
データベース15に蓄積される振動強度のデータは圧力振動のみでも、加速度振動のみでもよく、圧力振動及び加速度振動の両方でもよい。一例として、図7の時刻t1のときはバイパス弁35の弁開度がX11−1であり、パイロット比がX12−1、大気温度がX21−1、発電機の負荷(MW)がX22−1で、第1周波数帯での振動強度の最大値がYi1−1、第2周波数帯での振動強度の最大値がYi2−1、第n周波数帯での振動強度の最大値がYin−1であることを示している。同様に時刻t2のときは、バイパス弁35の弁開度がX11−2、パイロット比がX12−2、大気温度がX21−2、発電機の負荷がX22−2であり、第1周波数帯での振動強度の最大値がYi1−2、第2周波数帯での振動強度の最大値がYi2−2、第n周波数帯での振動強度の最大値がYin−2であることを示している。
【0053】
こうしてデータベース15にデータが追加・修正されると、次のステップS15で発生している燃焼振動の特性が算出される。これは、燃焼特性把握手段14によってデータベース15に格納された、周波数解析手段13からの圧力又は加速度の周波数帯別解析結果と、プロセス量計測部4からのプロセス量とに基づき、燃焼特性をモデル化するための数式モデルの構築である。
【0054】
例えば、燃焼器23の数をm、モデル化すべき周波数帯数をnとすると、下記式(1)のような重回帰モデルで内圧変動をモデル化する。
ij=aij,0+aij,1×X11+aij,2×X12
+aij,3×X21+aij,4×X22 …………(1)
ここで、
ij:第i燃焼器(i=1、2、・・・、m)の第j周波数帯(j=1、2、・・・、n)の最大振幅値
11:操作量1の値(本例では、バイパス弁35の弁開度)
12:操作量2の値(本例では、パイロット比)
21:操作量できない状態量1の値(本例では、気象データ)
22:操作できない状態量2の値(本例では、発電機の負荷(MW))
ij,0、aij,1、aij,2、aij,3、aij,4:係数パラメータ
である。
【0055】
そして燃焼特性把握手段14は、データベース15に時刻(t1、t2…)ごとに整理して格納された最大振幅値Yij、操作量X11、X12、操作できない状態量X21、X22を用い、上記(1)式の係数パラメータaij,0、aij,1、aij,2、aij,3、aij,4を求める。係数パラメータaij,0、aij,1、aij,2、aij,3、aij,4の解法には、例えば最小二乗法が用いられる。
【0056】
ここで最大振幅値Yijとは、圧力変動測定部5及び加速度測定部6により測定された測定結果のデータを、周波数解析手段13にてA/D変換して周波数解析した結果をn個の周波数帯に区切り、夫々の周波数帯においてある時間(t1、t2…)内に得られた最大振幅値である。すなわち前記した図6においては、第1周波数帯の最大振幅値がYi1、第2周波数帯の最大振幅値がYi2、第n周波数帯の最大振幅値がYinであることが示されている。
【0057】
なお、上記では、説明の都合上、操作量を2変数、操作できない状態量を2変数としてモデル式を記述しているが、特に2変数に限るものではなく、また、モデル構造として線形の一次式として記述しているが、2次以上の高次モデルやニューラルネットワーク等の非線形モデルとしてもよい。また、ガスタービン2から入力された操作量や操作できない状態量を用いたモデル式として記述しているが、質量収支等の法則に基づいて変換した値を用いてもよい。
【0058】
そして燃焼特性把握手段14は、時刻t1、t2…毎に得られる上記数式モデル(1)を用い、燃焼振動の発生し易い領域を求める。例えば、操作量1、操作量2、操作できない状態量1、操作できない状態量2が、それぞれX’11、X’12、X’21及びX’22である時の、第i燃焼器の第j周波数帯の内圧変動予測値Y’ijは、次式(2)で求められる。
Y’ij=aij,0+aij,1×X’11+aij,2×X’12
+aij,3×X’21+aij,4×X22 …………(2)
従って上記したように、係数パラメータaij,0、aij,1、aij,2、aij,3、aij,4は、例えば最小二乗法により求められている。
【0059】
前記した図6に示すように、第i燃焼器の第j周波数帯(周波数帯1〜n)の最大振幅値には、燃焼器23や周囲の設備の構造面から閾値Zi1、Zi2、…Zinが設けられている。その閾値Zi1、Zi2、…Zinは周波数解析手段13に格納されており、ここで閾値Zi1、Zi2、…Zinは、各周波数帯において許容できる最高の振動強度を示す値である。またこの閾値Zi1、Zi2、…Zinは、例えば、その周波数の振動により共振する部材や構造があるか、損傷を受け易い部材や構造があるか、どのくらいの強度の振動まで許容できるか等により決定される。
【0060】
周波数解析手段13から送られてきた第i燃焼器の第j周波数帯の最大振幅値の閾値をZijとすると、
ij=aij,0+aij,1×X’11+aij,2×X’12
+aij,3×X’21+aij,4×X22 …………(3)
となるX’11、X’12、X’21及びX’22が存在することになる。今、制御器8において操作できない状態量1及び操作できない状態量2の値が燃焼特性把握手段14に入力されたとすると、(3)式のうち、X’11及びX’12以外は定数となり、(3)式を満たす(X’11、X’12)を容易に求めることができる。
【0061】
一方、制御器8から与えられたα(k=1、2、・・・、p)なるゲインにより、
αij=aij,0+aij,1×X’11+aij,2×X’12
+aij,3×X’21+aij,4×X22 …………(4)
として(X’11、X’12)を求めれば、各燃焼器の各周波数帯域毎にp本の線を求めることができる。図8は、これを示したもので、ここで係数パラメータaij,2が正であれば、直線の上側が燃焼振動の発生し易い領域、下側が発生しにくい領域となる。逆に、係数パラメータaij,2が負であれば、直線の下側が燃焼振動の発生し易い領域、上側が発生しにくい領域となる。
【0062】
燃焼特性把握手段14は、制御器8から与えられる第i燃焼器の第j周波数帯の最大振幅値の閾値Zij(i=1、2、・・・m、j=1、2、・・・、n)、ゲインα(k=1、2、・・・p)、及び特定の2つ(運転実績である各時刻t1、t2…での操作できない状態量X21、X22)を除く変数の値(運転実績である各時刻t1、t2…でのX11、X12)と、最小2乗法等により求めた係数パラメータaij,0、aij,1、aij,2、aij,3、及びaij,4から、全ての燃焼器23の全ての周波数帯について上記の直線を求め、線形計画法の手順に基づき、最終的に燃焼振動の発生し易い領域、発生しにくい領域を求める。
【0063】
図9は、燃焼特性把握手段14により求められた、横軸をX11、縦軸をX12とする燃焼振動領域の例を示している。この例では、ゲインαごとに等高線のように燃焼振動領域を表現しており、中央部が燃焼振動の発生しにくい領域、周辺部ほど発生し易い領域である。なお図9は、上記の通り説明の都合上操作量を2変数としたことに伴い、2次元座標に示されているが、操作量をN変数とすればN次元座標空間に示される。
【0064】
そして調整量決定手段16は、状態把握手段12から調整命令を入力したとき、その調整命令に応答し、次のステップS16で現在の運転状態(X11=x、X12=x)を調整するための対策内容(対策箇所と調整量)を決定する。このとき、複数の周波数帯域において、最大振幅値Yijが閾値Zi1、Zi2、…Zinを超えている場合、既に設置・稼働が行われている他の同型のガスタービン2において採取されたデータを用い、解析した結果得られた標準的な燃焼特性を示す数式モデルや、ガスタービン2を運転する上で、例えば失火や逆火が発生しないための燃空比の制限値等の制約情報を格納したデータベース15内の、基礎データベース(図示せず)に記憶された優先順位(優先度)に基づき、優先順位の高い周波数帯域に対して調整を施す。ここでは、一例として最も低い周波数帯域の優先度を最も高くし、次は、高周波側の周波数帯域から優先度を順次高く設定している。これは、最も低い周波数帯域で燃焼振動が生じる場合、ガスタービン2の火が消えやすい状況になっている可能性が高いこと、また高い周波数帯域では、燃焼振動によるエネルギーが大きいため、損傷などを及ぼす影響力が強いからである。
【0065】
また、調整を施す周波数帯域を選択した後に調整量決定手段16は、つぎに現在の運転状態(X11=x、X12=x)を調整すべき方向を、例えば最急降下法などの最適化手法を用いて決定する。なお、ここで用いる最適化手法は最急降下法に限定されるものではない。
【0066】
即ち調整量決定手段16は、燃焼特性把握手段14により求めた図9を参照し、現在の運転状態(X11=x、X12=x)を示す例えば点Qよりも、より中央部側の線(α=0.8)に対して垂直に仮想線Lを引き、そのままαの線で囲まれた領域内まで延ばしてさらにその仮想線Lがαの線に当たる位置Q(X11=x、X12=x)まで延ばす。次に、点Qから図9におけるより中央部側の線(α=0.6)に対して垂直に仮想線Lを延ばし、調整量決定手段16が点Qから点Qを経てその仮想線Lを延ばす方向が、調整量決定手段16により決定される調整の方向である。
【0067】
このとき調整量決定手段16では、燃焼特性把握手段14において燃焼特性が十分に把握できない場合、データベース15における過去に施した調整とその調整を施すことで生じたガスタービン2の稼働状態の変化とを関連付けた情報を蓄積した、図示していない知識データベースの内容に基づいて調整の方向を決定することができる。また、ガスタービン2を設置した直後等、データベース15に十分なデータが蓄積されていない場合には、前記した基礎データベース、および知識データベースに蓄積された、標準的な燃焼特性を示す数式モデル、制約情報、経験情報などに基づき、調整の方向を決定することができる。なお、知識データベースには、熟練した調整員の経験(ノウハウ)に基づいて設定された「症状」と、そのような症状のときに有効な対策とを関連付けた経験情報を格納してもよい。
【0068】
また、上記したような調整を行うに際し、調整量決定手段16は状態把握手段12が入力手段11から得た燃焼特性のデータに基づき、その時点での燃焼特性に応じた補正を加味することができる。これら基礎データベース、知識データベースに格納された情報に基づいて施した調整の内容と、それに応じてその後に生じたガスタービン2の状態の変化は、次の処理サイクルでステップS13〜S14で評価され、データベース15に蓄積(反映)され、また、知識データベースの経験情報と異なる場合にはその更新に用いられる。
【0069】
そして出力手段17は、ステップS17において、調整量決定手段16により決定された調整の方向を示すデータを制御器8に出力する。そのため制御器8は、出力手段17から入力した上記調整の方向を示すデータに基づき、操作機構7を制御してメイン燃料流量制御弁28、パイロット燃料流量制御弁31、バイパス弁35、及び入口案内翼26等を操作し、バイパス弁開度X11、パイロット比X12をそれぞれ変化させる。即ち制御器8は、出力手段17から入力した点Qから点Qに移行するような調整指示に対し、バイパス弁開度X11をxからxまで変化させ、パイロット比X12をxからxまで変化させるようメイン燃料流量制御弁28、パイロット燃料流量制御弁31、バイパス弁35、及び入口案内翼26の少なくともいずれか一つを制御する。
【0070】
更に、点Qから先に仮想線Lが延びる方向への調整指示に対しても、同様に、バイパス弁開度X11、メイン燃料流量とパイロット燃料流量の和である全燃料流量とパイロット燃料流量との比、すなわちパイロット燃料流量/全燃料流量であるパイロット比X12をそれぞれ変化させる。ここで制御器8は、パイロット比X12を上げる場合、パイロット燃料流量を変えずに全燃料流量を下げるように調整することも可能であるし、もしくは全燃料流量を変えずにパイロット燃料流量を上げるように調整することも可能である。
【0071】
一方、図2におけるフロー図のステップS13で閾値との比較の結果、管理値を逸脱しておらず、しかも燃焼振動の予兆が無い場合、処理はステップS18に進み、プロセス量計測部4で計測したプロセス量に基づき、前回の処理サイクル時とのガスタービン2の稼働パラメータの変化の有無、すなわち燃焼器23に供給する燃料流量又は空気流量の少なくとも一方が補正されているか否かを判定する。その結果、稼働状態に変化がなければステップS20に進み、稼働パラメータに変化があればステップS14と同様、前回の処理サイクルで行った調整内容と、その結果変化した稼働状態のデータを図1(B)のデータベース15に追加・更新する。
【0072】
そして次のステップS20でステップS13と同様、状態把握手段12による圧力又は加速度の周波数帯別解析結果により、燃焼振動が調整の必要の無い安定状態かどうかが判定され、安定状態ではなくて調整が必要であるか、燃焼振動が生じていないが直ちに調整する必要がある、すなわち燃焼振動の予兆が生じている状態である場合は処理がステップS11に戻り、以上説明してきたことが繰り返され、また充分安定であればステップS21に進み、前の処理サイクルにおけるステップS17の補正量の出力で行った調整の方向を示すデータを「0」とし「補正量のリセット」を行なう。なお、ステップ20ではステップ13で利用する管理値よりも安全側の閾値を用いてもよい。
【0073】
即ち補正の結果、燃焼振動も燃焼振動の予兆もなく、燃焼が安定していると判断される場合、燃焼振動は気象状況や熱容量の変化等で突発的に発生した可能性があり、燃焼振動の発生を抑制するための調整で、設計時に想定した理想的な燃料流量、空気流量による設計性能を考慮した運転状態から逸脱した運転となっている可能性があるから、補正した状態を元の初期状態に戻すことで、設計時に想定した理想的な燃料流量、空気流量での運転状態から逸脱した運転が続けられることが防止され、効率が保たれたガスタービン制御方法及び装置とすることができる。
【実施例2】
【0074】
以上が本発明の実施例1であるが、この実施例1では、燃焼振動の発生を抑制するための調整により、設計時に想定した理想的な燃料流量、空気流量による設計性能を考慮した運転状態から逸脱した運転となっている場合、補正した状態を初期状態に戻すようにしたが、この場合は母機の消費寿命による劣化などが考慮されないため、消費寿命により最適運転ポイントがずれている場合も初期状態に戻されてしまう。そのため、以下に説明する実施例2では、この点も考慮した調整を行えるようにした。
【0075】
図3は本発明によるガスタービン制御方法の実施例2のフロー図である。この図3のフロー図において、ステップS30〜40は前記図2で説明した実施例1のフロー図におけるステップS10〜20と同じ内容であり、図2の実施例1のフロー図におけるステップS21の「補正量のリセット」が無くなって、ステップS40において燃焼振動が充分安定してる場合、ステップS35に処理が戻る点が大きな違いである。
【0076】
すなわち前記図2の場合と同様、ステップS30〜37では燃焼振動が生じたか予兆がある場合、ステップS33でそれを判断してステップS34から37で燃焼振動特性の算出、補正量の決定、補正量の出力を行い、ステップS33で予兆も管理値の逸脱もない場合は、ステップS38に進んで前記と同様、プロセス量計測部4で計測したプロセス量に基づき、前回の処理サイクル時とのガスタービン2の稼働パラメータの変化の有無、すなわち燃焼器23に供給する燃料流量又は空気流量の少なくとも一方が補正されているか否かを判定する。その結果、稼働状態に変化がなければステップS40に進み、稼働パラメータに変化があればステップS34と同様、前回の処理サイクルで行った調整内容と、その結果変化した稼働状態のデータを図1(B)のデータベース15に追加・更新する。
【0077】
そして次のステップS40でステップS33と同様、状態把握手段12による圧力又は加速度の周波数帯別解析結果により、燃焼振動が調整の必要の無い安定状態かどうかが判定され、安定状態ではなくて調整が必要であるか、燃焼振動が生じていないが直ちに調整する必要がある、すなわち燃焼振動の予兆が生じている状態である場合は処理がステップS31に戻り、以上説明してきたことが繰り返され、また充分安定であればステップS35に戻る。なお、ステップ40では、ステップ33で利用する管理値よりも安全側の閾値を用いてもよい。
【0078】
そしてこのステップS35で再度、燃焼振動特性の算出を行うわけであるが、今、図4のグラフに示したように燃焼器23が、例えば局所的に温度がかなり高くなっているとかのストレスが加わって燃焼振動が発生している場合、その燃焼振動を避けるために補正量を材料の疲労温度の90%程度の許容限界1の閾値に設定したとすると、その状態でガスタービン2の稼動状態を把握し、燃焼振動が充分安定となったことを確認したら母機の消費寿命による劣化などを考慮し、閾値を許容限界2の値に下げてやる。そしてステップS36で、許容限界2の閾値を用いた補正量を決定し、ステップS37で補正量を出力する。
【0079】
このようにして、燃焼振動発生時には一旦燃焼振動を回避するため、制御系設定に対して望ましい補正を行うが、状態把握手段12によりタービン2を所定時間監視し、燃焼振動が落ち着いているようであれば母機の消費寿命に関する指標を長期的な寿命評価の観点から評価し、現状の制御系設定が良くないと判断された場合は消費寿命を評価しながら、徐々に制御系設定を初期値の方向に戻し、消費寿命上問題とならない制御系設定まで戻すわけである。従って、ガスタービン本体21の熱容量などによる一時的な不安定燃焼現象時や経年変化による不安定燃焼時には、燃焼安定性を維持すべく制御系の調整を行うことができ、また、不安定現象が解消すれば消費寿命等の指標を評価しながら制御系設定を徐々に戻すことで、高い効率でガスタービンを運用することができる。
【0080】
以上種々述べてきたように、本発明になるガスタービン制御方法及び装置は、燃焼振動発生時に一旦燃焼振動を回避し、制御系設定に対して望ましい補正を行うが、所定時間監視して燃焼振動が落ち着いているようであれば元の制御系設定に戻す、あるいは母機の疲労寿命を考慮した設定とする機能を備えたから、ガスタービンの熱容量などによる一時的な不安定燃焼現象時には燃焼安定性を維持すべく制御系の調整を行うことが可能となり、また、不安定現象が解消すれば当初設定した初期設計値に戻す、あるいは母機の疲労寿命を考慮した設定とするため、特別の場合を除いてメーカやお客様の意図した制御系設定でガスタービンを運用することができ、従来のように設計時に想定した理想的な燃料流量、空気流量での運転状態から逸脱した運転が続けられる、といったことが防止されて、母機の疲労寿命も考慮した運転状態を維持できる、ガスタービン制御方法及び装置とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、初期の設計効率を長期に渡って維持できるガスタービン制御方法及び装置を提供することができ、燃料を無駄にすることなく発電機等を効率的に運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】(A)は、ガスタービン2を制御するための機能的構成を示すためのブロック図であり、(B)は(A)に示したガスタービン制御部3における自動調整部9の詳細ブロック図である。
【図2】本発明になるガスタービン制御方法の実施例1のフロー図である。
【図3】本発明になるガスタービン制御方法の実施例2のフロー図である。
【図4】燃焼振動発生を抑制するための補正量を低減して保存するに当たり、ガスタービン運転が可能な許容限界からなる閾値を複数定めることを説明するためのグラフである。
【図5】周波数解析手段による解析結果の一例を示したグラフである。
【図6】周波数解析手段による周波数帯別解析結果の一例を示したグラフである。
【図7】本発明に用いるデータベースの構成の一例である。
【図8】燃焼振動領域の推定法に関する原理図である。
【図9】燃焼振動領域の推定例を示す図である。
【図10】ガスタービンの構成概略を説明するための図である。
【図11】ガスタービン燃焼器の概略構成断面図である。
【図12】(A)は周波数解析により得られた情報で燃焼振動を抑制した場合の負荷と弁開度の関係を示したグラフ、(B)は燃焼振動を抑制のための調整を行ったため、効率が低下した例を示したグラフである。
【符号の説明】
【0083】
1 制御装置
2 ガスタービン
3 ガスタービン制御部
4 プロセス量計測部
5 圧力変動測定部(センサ)
6 加速度測定部(センサ)
7 操作機構
8 制御器
9 自動調整部
11 入力手段
12 状態把握手段
13 周波数解析手段
14 燃焼特性把握手段
15 データベース
16 調整量決定手段
17 出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンにおける燃焼器内の圧力変動または加速度を複数の周波数帯別に周波数解析する第1のステップと、
該周波数帯別解析結果と前記ガスタービンにおける空気流量とパイロット燃料の比を含む操作プロセス量、及び大気状態と負荷量を含む状態信号とに基づき、前記ガスタービンの燃焼振動の特性を周波数帯別に把握する第2のステップと、
前記燃焼振動が予め定めた管理値を越える毎に前記燃焼器に供給する空気流量とパイロット比との少なくとも一方の補正量を算出し、前記操作プロセス量と状態信号に対応させて予め設定した空気流量とパイロット比の初期設計値を補正する第3のステップと、
該第3のステップの補正に基づいてガスタービンを駆動し、前記燃焼振動が前記管理値を一定時間下回ったことを判断する第4のステップと、
該第4のステップの判断に基づき、前記第3のステップで行った初期設計値の補正をリセットし、初期設計値で運転することを特徴とするガスタービン制御方法。
【請求項2】
ガスタービンにおける燃焼器内の圧力変動または加速度を複数の周波数帯別に周波数解析する第1のステップと、
該周波数帯別解析結果と前記ガスタービンにおける空気流量とパイロット燃料の比を含む操作プロセス量、及び大気状態と負荷量を含む状態信号とに基づき、前記ガスタービンの燃焼振動の特性を周波数帯別に把握する第2のステップと、
前記燃焼振動が予め定めた管理値を越える毎に前記燃焼器に供給する空気流量とパイロット比との少なくとも一方の補正量を算出し、前記操作プロセス量と状態信号に対応させて予め設定した空気流量とパイロット比の初期設計値を補正する第3のステップと、
該第3のステップの補正に基づいてガスタービンを駆動し、前記燃焼振動が前記管理値を一定時間下回ったことを判断する第4のステップと、
該第4のステップの判断に基づき、前記第3のステップで行った初期設計値の補正値を、徐々に初期設計値に戻しながら運転することを特徴とするガスタービン制御方法。
【請求項3】
前記第3のステップで行った初期設計値の補正値を、予め定めた前記管理値より小さい複数の閾値に従って、初期設計値に近づく方向に段階的に低減させることを特徴とする請求項2に記載したガスタービン制御方法。
【請求項4】
ガスタービンにおける燃焼器内の圧力変動または加速度を複数の周波数帯別に周波数解析する周波数解析手段と、
該周波数解析手段の周波数帯別解析結果と、前記ガスタービンにおける空気流量とパイロット燃料の比を含む操作プロセス量、及び大気状態と負荷量を含む状態信号とに基づき、前記ガスタービンにおける燃焼状態を把握する状態把握手段、及び燃焼振動の特性を把握する燃焼特性把握手段と、
前記燃焼特性把握手段が把握した燃焼振動特性と状態把握手段の把握した燃焼状態とから、前記燃焼振動が予め定めた管理値を越える毎に前記燃焼器に供給する空気流量とパイロット比との少なくとも一方の補正量を算出し、前記操作プロセス量と状態信号に対応させて予め設定した空気流量とパイロット比の初期設計値を補正して前記ガスタービンを駆動する制御部とを備え、
前記制御部は、前記ガスタービンの燃焼振動が予め定めた前記管理値を一定時間下回った状態で前記初期設計値の補正をリセットし、初期設計値で前記ガスタービンを運転するよう構成されていることを特徴とするガスタービン制御装置。
【請求項5】
ガスタービンにおける燃焼器内の圧力変動または加速度を複数の周波数帯別に周波数解析する周波数解析手段と、
該周波数解析手段の周波数帯別解析結果と、前記ガスタービンにおける空気流量とパイロット燃料の比を含む操作プロセス量、及び大気状態と負荷量を含む状態信号とに基づき、前記ガスタービンにおける燃焼状態を把握する状態把握手段、及び燃焼振動の特性を把握する燃焼特性把握手段と、
前記燃焼特性把握手段が把握した燃焼振動特性と状態把握手段の把握した燃焼状態とから、前記燃焼振動が予め定めた管理値を越える毎に前記燃焼器に供給する空気流量とパイロット比との少なくとも一方の補正量を算出し、前記操作プロセス量と状態信号に対応させて予め設定した空気流量とパイロット比の初期設計値を補正して前記ガスタービンを駆動する制御部とを備え、
前記制御部は、前記ガスタービンの燃焼振動が予め定めた前記管理値を一定時間下回った状態で、前記初期設計値の補正を前記初期設計値に近づく方向に段階的に低減させながら前記ガスタービンを運転するよう構成されていることを特徴とするガスタービン制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記初期設計値に加えた補正値を、予め定めた前記管理値より小さい複数の閾値に従って、初期設計値に近づく方向に段階的に低減させて前記ガスタービンを運転するよう構成されていることを特徴とする請求項5に記載したガスタービン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−203943(P2009−203943A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48835(P2008−48835)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】