説明

ガスバリアコーティング

従来装置を用いて調製することができ、かつ、接着によって形成される積層体、特にPET−PE積層体構造に組み込まれると、高い相対湿度で、良好な積層接着強度に加えて、例外的な酸素バリアをもたらす、ポリビニルアルコール)および/またはエチレン−ビニルアルコール共重合体、分散した粘土およびポリカルボン酸ポリマーを含む水希釈性コーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングに用いて、多様な材料にガスバリア特性を付与し得るガスバリアコーティング、特に、食品および医薬品の包装に関する。ガスバリアコーティングは、特に、接着によって形成される積層体の形成において有用でありうる。本発明のガスバリアコーティングは、有利にガスの通過を遮断する機能を有し、従って、包装へのガスの進入、または包装からのガスの漏れを防ぐことが望ましい包装で使用するために特に有用でありうる。コーティングは、高い相対湿度環境において、効果的なガスバリアおよび高い接着強度を有利に提供する。
【背景技術】
【0002】
合成プラスチック材料は、長い間、取扱および湿気から保護する必要のある食品およびその他の材料の包装に使用されてきた。しかし、近年、さらに、多くの食品およびその他の敏感な材料が大気の酸素から保護されることで利益があることが理解されるようになった。幅広い種類の多層積層構造が、パックの目的に適しているバリア特性およびその他の性能特性をもたらすために開発されてきた。これらの積層体は、プラスチック、金属またはセルロース基材のいずれの組み合わせであってもよく、1以上のコーティング層または接着剤層を含むことができる。その上に付着した金属または無機化合物、例えば酸化シリコンなどを有するポリマーフィルムを含む積層体は、良好な一般的バリア特性をもたらすことが見出され、広く使用されている。多くの目的において、コーティングは、基材と同様にカバーリングも有するものであることが望ましい。このように積層体の2枚のフィルムの間にガスバリアコーティングが挟まれている積層材料は、接着によって形成された積層体と呼ばれる。良好なガスバリア特性をもたらすことに加えて、フィルムとコーティングの間の良好な接着強度が、接着形成された積層体において重要である。
【0003】
PVDC系バリアコーティング
最も商業的に適用されるポリ塩化ビニリデン(polyvinyladene chloride)(PVDC)バリア層は、比較的高いフィルム重量で適用され、1.0gsmよりも大きいフィルム重量が典型的である。例えば、特公昭62−047716B号には、PVDCコーティングの処理したポリエステルフィルムへの塗布、それに続いてポリ(エチレン)フィルムへの接着積層が記載される。8.3cm/m/日の酸素バリアおよび6.6N/15mmの接着強度が記録された。ここで、酸素バリアは、約3gsm(乾燥)のPVDCの乾燥フィルム重量で実現された。
【0004】
蒸着無機フィルム
酸化シリコン、酸化アルミニウムおよびアルミニウム層をフィルム表面に塗布するために蒸着技法を使用することは周知であり、優れたバリアと接着強度の両方が可能である。ポリビニルアルコール(PVOH)および/またはエチレンビニルアルコール(EVOH)および加水分解されたアルコキシ−シランの溶液を含むゾルゲル型組成物を、積層の前に無機層の表面に塗布することができる。これらの無機層は非常に脆弱であるので、これらのコーティングは、無機層のバリア性能を向上させるだけでなく、印刷および積層の間にある程度の保護も提供する。これらの無機層の不十分な耐屈曲性に起因して、これらのさらなるゾルゲルコーティングは、これらの種類の積層体が曲げられ、かつ/または折り畳まれた後に、ある程度の改良されたバリアを与える。
【0005】
特開2007−223286号は、AlOxコーティングされたナイロンフィルムを、上記の種類のゾルゲルコーティングでコーティングすることを開示する。これが、PEフィルムに接着剤によって積層されると、4.2cm/m/日の酸素バリアおよび10.5N/15mmの接着強度が実現された。特開2005−256061号は、15cm/m/日の酸素バリアおよび1.8N/cmの接着強度を実現するPET−AlOx/SiOxフィルムの印刷および接着積層を開示する。
【0006】
PVOH有機複合材料コーティング
国際公開第2007034943号は、ナイロンフィルムに塗布して、それに続いて(最大220℃で)熱処理される、PVOHとエチレン−無水マレイン酸共重合体の両方を含むコーティングを記載する。ヒートシール可能なフィルムに接着積層すると、積層体は、18.6cm/m/日のバリアおよび4.0N/cmの積層接着強度をもたらした。性能を実現するために必要とされる高温処理は、印刷機および変換機の大部分には実施しにくく、従ってこの種類のコーティングの有用性は制限される。
【0007】
PVOH/EVOHおよび粘土に基づく酸素バリアコーティング
分散した粘土、特にナノ粒子、および親水性ポリマー、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)またはエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などを含むガスバリアコーティングが、これまでに使用されている。しかし、可撓性プラスチックフィルム間の良好な接着強度と適切なガスバリア特性の両方を結果としてもたらす効率的なやり方でかかるコーティングを配合および塗布することは困難であることが分かった。これらの組成物の例は、欧州特許第0590263B1号;米国特許第4818782号;欧州特許出願公開第0479031号;および特開平13−1313536号に開示される。典型的には、アンカーまたはプライマー層は、接着形成された積層体に良好な接着強度を実現するために、この種類のバリアコーティングに必要とされる。例えば、特開2007−136984号(凸版印刷)は、第2のプラスチックフィルムへの接着積層の前に、アンカーコート層を有する基層へのEVOH−粘土複合材料コーティングの適用を開示する。実施例にはポリプロピレン系およびポリエステル系の両方のウェブが記載され、両方ともEVOH−粘土複合材料の塗布の前にアンカーコートの使用を必要とする。特開2007−136984号には、粘土含有量の増加につれて接着積層の接着強度が低下することが記載される。
【0008】
国際公開第2009098463号(SunChemical)には、接着形成された積層体において満足のいく接着強度を確実に達成するために、PVOH/EVOH−粘土複合材料コーティングがどのように有利に2パック組成物として送達されるかが記載される。
【0009】
ポリカルボン酸ポリマーを含有する酸素バリアコーティング
特開平11−246729号(住友化学工業)には、ポリビニルアルコール、水溶性ポリアクリル酸系化合物、および無機層状化合物を含有する樹脂組成物が開示される。樹脂組成物は、ポリビニルアルコール、水溶性ポリアクリル酸系化合物、および無機層状化合物を高圧分散装置で処理することにより得られる。特開平11−246729号には、無機層状化合物が、ポリマーの溶液と混合するより前に水と混合され得ることが開示される。しかし、無機層状化合物を樹脂組成物中に完全に分散させるために、高圧分散装置によってそのような混合物を処理することが必要とされる。コーティングをポリエステルフィルムに塗布し、その後それをLLDPEフィルムに積層することが記載される。
【0010】
米国特許第6709735B2号/欧州特許第1451008B1号および米国特許6991837B2号(Mitsubishi)には、バリアコーティングを調製するための、約3500〜約5000の分子量のPVOH、およびアクリル酸とマレイン酸の共重合体の組成物の使用が開示される。
【0011】
高RHで良好なバリア特性をもつバリアコーティング
米国特許第7521103B2号(Mitsubishi)には、ビニルアルコールとビニルアミンの共重合体を含む組成物が開示される。この共重合体の使用は、特に上昇したRHで、先の特許でのバリアよりも優れたバリアを提供することが示される。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、(a)ポリビニルアルコール(PVOH)および/またはエチレンビニルアルコール(EVOH)共重合体の溶液または分散液ならびにポリカルボン酸ポリマーの水溶液または分散液を含むポリマー組成物を、(b)事前に調製した粘土の分散液と混合することを含む、ガスバリアコーティング組成物を調製する方法;その方法から得られるガスバリアコーティング組成物;ならびに、そのガスバリアコーティング組成物から調製されるコーティングを提供する。本発明はさらに、可撓性ポリマーフィルムを、本発明のガスバリアコーティング組成物でコーティングする工程を含む、ガスバリア材料を調製する方法、および同様にその方法により得られるガスバリア材料を提供する。
【0013】
ガスバリアコーティング組成物を、(a)PVOHおよび/またはEVOH共重合体の溶液または分散液およびポリカルボン酸ポリマーの溶液または分散液を含むポリマー組成物と、(b)事前に形成した粘土分散液を混合することにより調製すると、特性の向上、例えば、改良されたガスバリア特性および/または改良された積層接着強度などが得られることが見出された。特に、本発明のコーティングは、接着形成された積層体における、特にPET−PE構造における良好な積層接着強度とともに、高い相対湿度(RH)で優れたバリア性能をもたらすことが見出された。さらに、どんな特別な追加の下塗層も必要とせずに、本発明のコーティングを用いて、高いRHで接着形成された積層体において優れた性能を達成することができ得ることが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のコーティング組成物の透過型電子顕微鏡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の態様において、本発明は、(i)PVOHおよび/またはEVOH共重合体の溶液または分散液およびポリカルボン酸ポリマーの溶液または分散液を含むポリマー組成物を(ii)粘土の分散液と混合することを含む、ガスバリアコーティング組成物を調製する方法を提供する。
【0016】
本発明の第1の態様の方法に従って調製したガスバリアコーティングを含む、本発明のガスバリアコーティングは、接着形成された積層体の形成において特に有用であることが見出された。第2の態様において、本発明は、PVOHおよび/またはEVOH共重合体の溶液または分散液、およびポリカルボン酸ポリマーの溶液または分散液、および本発明の第1の態様の方法を用いて得られる粘土分散液を含むコーティング組成物を提供する。第3の態様において、本発明は、PVOHおよび/またはEVOH共重合体、および、本発明の第2の態様の組成物を用いて調製した粘土を分散させたポリカルボン酸ポリマーを含むガスバリアコーティングを提供する。有利には、本発明の第3の態様のコーティングは、本発明の第2の態様のコーティング組成物を基材に塗布し、溶媒を除去することにより調製される。
【0017】
良好なバリア特性を達成するために、粘土は本発明の第2の態様のコーティング全体および本発明の第3の態様のコーティング中に十分に分散していることが重要である。組成物またはコーティング中の粘土の良好な分散液は、粘土を最初に液体ビヒクル中に分散し、このようにして得られる分散液をポリマー組成物とブレンドする場合に得られることが見出された。さらに、不十分なバリア性能特性は、ポリマー組成物とブレンドするより前に粘土が液体ビヒクル中にあまり十分に分散していない場合に得られることが見出された。さらに、十分に分散した粘土の分散液とポリマー組成物をブレンドすることにより形成される本発明のガスバリアコーティングは、良好な透明性および低い曇り傾向、特に、粘土があまり十分に分散していない先行技術のコーティングよりも低い曇り傾向を有することが見出された。
【0018】
用語「分散した粘土」または「粘土の分散液」とは、本明細書において、分散工程の間に実質的に層間挿入された(intercalated)かまたは剥離した粘土をさす。対照的に、単に液体中のスラリーにした粘土は、実質的に層間挿入されていないか、または剥離していないので、相当量の粘土が層状材料として残ることになる。当業者は、公知の技法、例えば、高倍率での分析、X線回折または粒度分析などを用いて、粘土が実質的に完全に剥離し、液体中に分散しているかどうかを確認することができる。粘土が実質的に完全に分散したことを確認するのに特に適した方法は、分散液を用いて調製したコーティングのサンプルを銅格子の上に流し込み、透過型電子顕微鏡を用いてサンプルを検査することである。
【0019】
分散した粘土が得られたか確認するためのさらに特に適した方法は、円板超遠心機粒度分析(disc ultracentrifuge particle size analysis)による。粒度分析を用いて、液体中に分散した粘土のサンプルのピーク粒径を測定することにより、粘土が分散していることを確認することができる。ピーク粒径は、粒子の相対重量で最も豊富な最大粒度である。粒子が球形でない場合、粒子の「直径」は、最大寸法である。分散した粘土に相当するピーク粒径は、用いる粘土の種類および起源によって変動する。一実施形態では、本発明の方法を用いるための粘土サンプルの分散液のピーク粘土粒径は、以下の手順を用いて得られるピーク粒径のそれの115%以下、好ましくは約110%以下、特に約108%以下である:
【0020】
25gの粘土を、オーバーヘッドパドルスターラを用いて120gのエタノール中に予めスラリー化する。この粘土スラリーを、次に、1mm篩を備えたSilverson L4R ラボラトリー・ボルテックス・ブレンダーに移す。350gの水をスラリーに添加する。水の添加が完了すると、出力設定(power setting)を50%に増加し、次に、粘土を45分間分散させる。次に、出力設定を25%に低下させ、60gのエタノールを添加する。さらに5分攪拌した後、分散液を排出する。
【0021】
ピーク粒度は、任意の標準的な技法を用いて測定することができ、例えば下の実施例32に関連して記載されるCPS DC24000円板超遠心機粒度分析機器を用いて測定することができる。
【0022】
コーティング組成物中の粘土の分散レベルは、透明な基材、特に透明な無色のプラスチック基材、例えば、PETフィルムなどに塗布される場合にコーティングの層が生じる曇りと相互に関連することが見出された。一実施形態では、本発明のコーティングは、24gsmの湿潤フィルム重量としてポリエステルフィルムに塗布した後、乾燥させた場合に、約32%未満、好ましくは約24%未満、特に約20%未満の曇り値をもたらす。曇り値は、任意の標準的な装置、例えば、Byk−Gardener Haze−gard dual装置などを用いて得ることができる。ポリエステルフィルムは、例えば、コロナ処理された12μm厚さのポリエステルフィルム、例えば、Mylar 800フィルムなどである。
【0023】
第4の態様において、本発明は、基材、例えば可撓性ポリマーフィルムを、本発明の第2の態様のガスバリアコーティング組成物でコーティングする工程を含む、ガスバリア材料を調製する方法を提供する。一実施形態では、本発明の第4の態様の方法には、(a)本発明の第1の態様の方法に従ってガスバリアコーティング組成物を調製する工程;および(b)可撓性ポリマーフィルムをガスバリアコーティング組成物でコーティングする工程が含まれる。有利には、工程(b)は工程(a)の完了の24時間以内に実行される。有利には、コーティング工程(b)には、ガスバリア組成物を乾燥させて乾燥したコーティングを形成する工程が含まれる。本発明の第4の態様の方法に従って調製したガスバリア材料を含む、本発明のガスバリア材料は、高い相対湿度での使用に特に適していることが見出された。
【0024】
本発明の第5の態様において、本発明の第3の態様のコーティング、例えば、可撓性ポリマーフィルムの上の本発明の第3の態様のコーティングを含むガスバリア材料が提供される。有利には、本発明の第5の態様のガスバリア材料は、本発明の第4の態様の方法に従って調製される。
【0025】
一実施形態では、本発明の第4の態様の方法により調製されるガスバリア材料または本発明の第5の態様のガスバリア材料は、第2のフィルムに付着した第1のフィルムを含む積層材料である。本発明の第4の態様の一実施形態では、前記方法は、(a)本発明の第1の態様の方法に従ってガスバリアコーティング組成物を調製する工程;(b)第1の可撓性ポリマーフィルムをガスバリアコーティング組成物でコーティングする工程;(c)接着剤コーティングを、前記第1のフィルムのコーティングされた面の片面または両面に、あるいは第2の可撓性ポリマーフィルムに塗布する工程;および(d)第1および第2のフィルムを接着する工程を含む。有利には、本発明の第4の態様の方法を用いて、接着形成された積層材料を調製する。本発明の第4の態様の一実施形態では、ガスバリア材料は、接着剤が完全に硬化した後に75%の相対湿度で2日間積層体を保存した後の2枚のフィルム間の接着強度が少なくとも約1.0N/15mmであるように、接着形成された積層体に組み込まれる。一部の実施形態では、工程(b)〜(d)の各々は、工程(a)の完了の24時間以内に実行される。コーティングが塗布されている第1のフィルムは、基材と称されることができ、基材に付着している第2のフィルムは、カバーリングと称され得る。誤解を避けるために、ガスバリアコーティングは、典型的には、本発明の第4の態様の方法に従って調製された、完成した接着形成された積層材料において、または本発明の第5の態様の接着形成された積層材料において、第1のフィルムもしくは基材と、第2のフィルムもしくはカバーリングとの間に挿入される。接着形成された積層体には、所望により、印刷されたデザインの範囲が含まれてよい。
【0026】
本発明のガスバリア材料は、酸素の通過を遮断するのに特に効果的であることが見出された。本発明の材料はまた、不活性ガス、例えば窒素などを含むその他のガス、およびガス状の揮発性有機化合物、例えば石油ガス(petroleum fumes)などの通過を遮断するのに有用であることも見出された。従って、本発明のガスバリア材料は、包装材料へのガスの進入が望ましくない用途、例えば酸素の進入からの包装された物品の保護など、および包装材料でガスの保持が望ましい用途、例えば、包装内での不活性ガスの保持などの両方で使用することができる。本発明のガスバリア材料はまた、バリアによる臭気のあるガスの通過の阻止が望ましい用途においても使用することができる。
【0027】
第6の態様において、本発明は、包装が本発明の第5の態様のガスバリア材料を含む、包装された物品、例えば、食料、医薬もしくはその他の材料など、例えば酸素感受性の食料、医薬もしくはその他の材料を提供する。一実施形態では、本発明は、前記包装が、PVOHおよび/またはEVOH共重合体、および粘土を分散したポリカルボン酸ポリマーを含むガスバリアコーティングを含むガスバリア材料を含む、包装された物品、例えば、食料、医薬もしくはその他の材料など、例えば酸素感受性の食料、医薬もしくはその他の材料を提供する。
【0028】
第7の態様において、本発明は、本発明の第5の態様に従うガスバリア材料を含む包装材料に物品を包装することを含む、物品を損傷から保護する方法を提供する。本発明の第7の態様の一実施形態では、物品の損傷を保護し、物品の保存期間を延長し、かつ/または物品の悪化を遅延させるための、本発明の第5の態様のガスバリア材料の、物品の包装材料としての使用が提供される。一実施形態では、物品は、酸素感受性であり、例えば、酸素に触れると悪化する食品、医薬品またはその他の物品である。
【0029】
本発明の第1、第2、第3、第4、第5、第6または第7の態様のいずれか1つに関して本明細書に記載される特徴が、適切な場合、本発明のその他の態様にも存在し得ることは当然理解される。
【0030】
従来公知の2パックのPVOH/EVOH−粘土複合材料コーティングは、23℃およびRH50%の周囲条件で優れた酸素バリアおよび積層接着強度をもつ接着形成された積層体を生成するために使用され得るが、驚くことに、この種類のコーティングの性能は、高いRH、例えば、50%を超えるRHなどで低下することが見出された。高いRHで、組成物を含む既知のコーティングの性能は、酸素バリア性能と積層接着強度の両方に関して著しく低下することが見出された。本発明のコーティング組成物は、両方の点において高い湿度性能を有利に改善する。特に、本発明のコーティング組成物から調製したガスバリアコーティングは、高い相対湿度(RH)、例えば約50%またはそれ以上のRH、特にRH約60%またはそれ以上、より特にRH約70%またはそれ以上、例えば約RH75%またはそれ以上などで高い性能を示すことが見出された。本発明のガスバリアコーティングは、強いフィルム間結合を接着形成された積層体、例えばPET−PE積層体などに形成させることが見出された。特に、本発明のガスバリアコーティングは、強いフィルム間結合を、高いRH、例えば約50%以上、例えば約75%以上などで形成させる。有利には、接着剤が完全に硬化した後に75%の相対湿度で2日間積層体を保存した後の2枚のフィルム間の接着強度は、少なくとも約1.0N/15mmである。さらに、アンカーコートは、良好な積層接着強度を達成するために必要でないことが示されている。本発明のガスバリアコーティングは、高いRHで良好な性能を有する接着形成された積層材料の形成での使用に適していることが見出されているが、これらの ガスバリアコーティングは、より低いRH、例えば、50%未満でも利用することができ、良好な性能は典型的に低いRH値でも見出されることは理解される。
【0031】
有利には、本発明は、従来設備を用いて、高いRHで良好な酸素バリア性能および良好な接着性をもつガスバリアコーティング組成物を調製する方法を提供する。本発明のガスバリアコーティング組成物は、一般に、(i)PVOH/EVOHおよびポリカルボン酸ポリマーの溶液または分散液と、(ii)粘土の分散液をブレンドすることにより調製される。本方法は、典型的には、3つの成分の各々がよく制御された割合を達成することを可能にする。さらに、本方法は、コーティング組成物のポリマー成分中にうまく分散した粘土をもたらす。コーティング組成物の調製において好ましい技法は、別々のプロセスによって粘土分散液を調製するために、この分散液を、PVOH/EVOHの溶液または分散液およびポリマー酸の溶液または分散液、例えばPVOH/EVOHとポリマー酸の溶液を含むポリマー組成物とブレンドする前に、高剪断分散装置を使用することである。一実施形態では、本発明の第1の態様は、高剪断分散装置を用いて粘土を分散させる工程;および次に(i)PVOHおよび/またはEVOH共重合体の溶液または分散液およびポリカルボン酸ポリマーの溶液または分散液を含むポリマー組成物と、(ii)粘土の分散液とを混合する工程を含む、ガスバリアコーティング組成物を調製する方法を提供する。分散装置は、例えば、ボルテックス、キャビテーションまたはビーズミル型高剪断分散装置であってよい。好ましくは、分散装置は、ボルテックス型分散装置である。ボルテックス型分散装置は、粘土の分散に特に適していることが見出されている。粘土は、液体ビヒクル中に分散されて粘土の分散液を形成する。粘土が分散している、適した液体ビヒクルとしては、水性溶媒および水混和性溶媒、例えばアルコール類、特にC−Cアルキルアルコールおよびケトン類、特にアセトンなどが挙げられる。有利には、溶媒には、水および混和性共溶媒が含まれる。好ましい共溶媒としては、エタノール、n−プロパノールおよびイソ−プロパノールが挙げられる。誤解を避けるために、用語「水性溶媒」は、本明細書において、純粋な水、および水と1以上の水混和性共溶媒を含む混合物を包含する。典型的には、水が水性溶媒の大部分、例えば少なくとも50%w/wを構成する。典型的には、水混和性共溶媒は、溶媒の50%未満w/wを構成する。有利には、粘土は、水および水溶性アルコールの存在下で分散する。高剪断分散装置、例えばボルテックスおよびキャビテーション型などは、コーティング業界で一般的であり、特開平11−246729号に記載される方法で用いられる装置とは対照的に、高圧を生じない。PVOH/EVOHおよび/またはポリカルボン酸ポリマー溶液または分散液を用いてインサイツで粘土を分散させることによりコーティングを調製する場合、得られる組成物は、約RH75%で不十分な酸素バリア特性を有し、粘土分散液は不安定で、粘土が時間とともに沈殿することが見出された。従って、従来の分散装置は、ワンポット法によって適切なコーティングを生成しない。理論に縛られることを望むものではないが、高いRHで必要な酸素バリア性能を得るために、よく分散した粘土を含めることが必要であると考えられる。さらに、分散した粘土が存在しないと、PVOH/EVOH含有コーティングの酸素バリア性能は、高いRHでのポリ(アクリル酸)の包含により損なわれることが示された。
【0032】
本発明のコーティング組成物の粘土含有量は、例えば、コーティングの全固体含有量に基づいて、約5重量%〜約70重量%の範囲でありうる。有利には、本発明のコーティング組成物には、コーティングの全固体含有量に基づいて、約30重量%(wt%)またはそれ以上の粘土が含まれる。一部の実施形態では、コーティングは、コーティングの全固体含有量に基づいて、35重量%またはそれ以上の粘土、特に37重量%またはそれ以上、例えば40重量%またはそれ以上の粘土、例えば、45重量%またはそれ以上の粘土などを含む。特に良好なガスバリア特性は、少なくとも37重量%の粘土含有量が使用されている場合に観察された。無機層状化合物濃度が増加するにつれて接着強度の低下を示すと記載される特開平11−246729号のコーティングとは対照的に、本発明のポリカルボン酸ポリマー含有コーティングにより、粘土濃度が増加しても良好な接着強度を維持することができることが見出された。特に、コーティングの全固体含有量に基づいて、約35重量%〜少なくとも約50重量%の粘土含有量を有する本発明のコーティングで良好な接着強度が観察された。例えば、PET−PE積層体において、良好な接着強度は、コーティングの全固体含有量に基づいて少なくとも47.5重量%までの粘土を含むコーティングで得られた。有利には、本発明のコーティングには、コーティングの全固体含有量に基づいて、約60重量%以下の粘土、例えば、約55重量%以下の粘土、例えば約50重量%以下の粘土などが含まれる。一実施形態では、本発明のコーティングの粘土含有量は、コーティングの全固体含有量に基づいて、約30重量%〜約55重量%、例えば約35重量%〜約50重量%である。
【0033】
有利には、本発明のコーティングには、コーティングの全固体含有量に基づいて、約2重量%またはそれ以上のポリカルボン酸ポリマー、例えば約3重量%またはそれ以上、特に約5重量%またはそれ以上のポリカルボン酸ポリマーが含まれる。有利には、本発明のコーティングには、コーティングの全固体含有量に基づいて、約30重量%以下のポリカルボン酸ポリマー、例えば約25重量%以下、特に約20重量%以下のポリカルボン酸ポリマーが含まれる。一実施形態では、本発明のコーティングのポリカルボン酸ポリマー含有量は、コーティングの全固体含有量に基づいて、約3重量%〜約25重量%、例えば約5重量%〜約20重量%である。
【0034】
有利には、本発明のコーティングには、コーティングの全固体含有量に基づいて、約20重量%またはそれ以上のPVOH/EVOH、例えば約25重量%またはそれ以上、特に約30重量%またはそれ以上のPVOH/EVOHが含まれる。有利には、本発明のコーティングには、コーティングの全固体含有量に基づいて、約70重量%以下のPVOH/EVOH、例えば約75重量%以下、特に約60重量%以下のPVOH/EVOHが含まれる。一実施形態では、本発明のコーティングのPVOH/EVOH含有量は、コーティングの全固体含有量に基づいて、約25重量%〜約65重量%、例えば約30重量%〜約60重量%である。
【0035】
一実施形態では、本発明のコーティングは、コーティングの全固体含有量に基づいて、約30重量%〜約55重量%の粘土含有量、約3重量%〜約25重量%のポリカルボン酸ポリマー含有量および約25重量%〜約65重量%のPVOH/EVOH含有量を有する。さらなる実施形態では、本発明のコーティングは、コーティングの全固体含有量に基づいて、約35重量%〜約50重量%の粘土含有量、約5重量%〜約20重量%のポリカルボン酸ポリマー含有量および約30重量%〜約60重量%のPVOH/EVOH含有量を有する。
【0036】
本発明のコーティングは、典型的には、少なくとも約0.5重量%、好ましくは少なくとも約1重量%、より好ましくは少なくとも約2重量%の固体含有量を有する。本発明のコーティングは、典型的には、約15重量%以下、好ましくは約10重量%以下、より好ましくは約8重量%以下の固体含有量を有する。一実施形態では、コーティングは、約1重量%〜約15重量%、例えば約3重量%〜約9重量%の固体含有量を有する。
【0037】
本発明の接着形成された積層材料は、優れた接着および/または高いRHで良好なガスバリア特性も有することが見出された。現在、特性の有利なバランスをもたらす積層材料は、以下の判定基準を満たすようにコーティングを塗布する場合に得られることが見出された:
X=A/B.C/D>約15
ここで;
A=コーティングを含まない積層体(23℃/RH75%)に関する酸素透過率(OTR)(ここで、OTRは、Mocon Oxtran 2/21で測定される、基材による純粋な酸素の拡散速度である(cm/m/日));
B=コーティングを含む積層体(23℃/RH75%)に関する酸素透過率;
C=相対湿度75%での接着強度(N/15mm)(接着強度は、Lloyds Instruments LRX Plus装置を200mm/分の分離速度で用いる、T型剥離試験における積層体の2枚のプラスチックフィルムを分離するために必要な力である);および
D=乾燥コーティング重量(gsm)(乾燥コーティング重量は、フィルムの上に堆積した湿潤コーティングの量、および同様にコーティングの固体含有量から決定する)。
有利には、A/B>約8、C>約1.0および/またはD<約1.0である。
【0038】
有利には、本発明のガスバリア材料、すなわち、本発明の第4の態様の方法に従って調製したガスバリア材料または本発明の第5の態様のガスバリア材料は、上記の判定基準を満たす接着形成された積層体である。コーティング重量、バリア特性および接着強度の間の相互関係が評価され、ガスバリア積層材料を調製するための方法をその判定基準に合うように作る場合、特性の最適なバランスが達成されることが見出された。
【0039】
成分A/Bは、基本的に「バリア強化」因子であり;酸素透過率は、バリアコーティングを含まずに、かつ、バリアコーティングを含んで、75%の相対湿度で達成される。好ましい実施形態では、この因子は約8より大きい。典型的なバリア層を含まないPET−PE積層体に関して、酸素透過率は、典型的には約100cm/m/日となる。このことは、約RH75%で、本発明のバリアコーティングを用いる、好ましい最大酸素透過率が、約12.5cm/m/日となることを意味する。酸素透過率(cm/m/日)は、23℃および相対湿度(RH)75%で、当業者に公知の任意の標準的な方法により測定される。例えば、適したASTM標準試験法としては、以下が挙げられる:
・クーロメトリックセンサーを用いるプラスチックフィルムおよびシートを通る酸素ガス透過率のための、D3985標準試験法;
・クーロメトリック検出器を用いるバリア材料を通る制御された相対湿度での酸素ガス透過率、透過性および浸透度の決定のための、F1927標準試験法;および
・様々なセンサーを用いるプラスチックフィルムおよびシートを通る酸素ガス透過率のための、F2622標準試験法。
【0040】
上記のASTM試験は、23℃および相対湿度(RH)50%でのcm/m/日で表される酸素透過を測定し、従って、本発明の目的において、それらを試験がRH75%で実行されるように適合させる。
【0041】
Cは、N/15mmで示される、接着強度を表す数値である;この力は、カバーリングフィルムをコーティングされた基材から分離するために必要とされる。好ましくは、接着強度は、少なくとも1.0N/15mmである。1.0N/15mmまたはそれ以上の接着強度は、完成した包装材料の適切な完全性をもたらす積層強度の程度を提供することが見出されたが、それよりも低い程度も可能である。接着強度は、T型剥離試験において積層体の2枚の層を分離するために必要とする力(15mm幅のストリップが試験される場合、N/15mmの単位)を記録することにより測定することができる。実施例で用いた分離速度は、200mm/分であり、使用した機器は、50Nロードセルを備えたJJ Lloyd LRX張力計であった。T型剥離試験は、包装業界でよく認識された試験である。Cの最小値は、完成した包装材料の適切な完全性をもたらす積層強度の程度を提供するためのに必要な最小値と考えられる1.0N/15mmである。
【0042】
Dは、乾燥フィルム重量を表す数値である。本発明のガスバリアコーティングは、一般に、グラビアかまたはフレキソ印刷プロセスのいずれかにより塗布される場合に約10重量%未満の固体含有量を有する。そのため、特に厚い乾燥フィルム厚さが現実的に実現可能となるとは考えにくい。例えば、約6重量%の固体を有するコーティングは、約10μmのフィルム厚さで塗布される場合、約0.60g/mのPVOH/EVOHおよび粘土を実現することになる(ある程度の違いは、溶媒媒体からのポリマーと粘土の密度の違いに起因して起こりうる)。約10μmの湿潤塗布フィルム厚さは、グラビアプロセスにより塗布されるこの種類の技術の上の実行可能な範囲である可能性があり、従って乾燥フィルム重量に対する約1.0g/cmの好ましい上限は、この種類のコーティングには妥当である。典型的には、乾燥コーティング厚さは、約10,000nm未満、例えば約5000nm未満、特に約2000nm未満、例えば、約1500nm未満などである。有利には、乾燥コーティング厚さは約50〜約1000nmである。
【0043】
一態様では、本発明は、上の試験を満たすガスバリアコーティングを粘土が、ポリマー組成物と合わせる前に液体ビヒクル中に分散している場合に、従来の分散装置、例えば高剪断混合装置などを用いて達成することができるという、驚くべき実現に関する。
【0044】
有利には、本発明のコーティング組成物を調製する方法において使用するポリマー組成物は、PVOHおよび/またはEVOH共重合体を溶液中に含む。有利には、組成物は、ポリカルボン酸ポリマーを溶液中に含む。本発明の方法で使用されるPVOH/EVOHおよびポリカルボン酸ポリマーの溶液または分散液は、有利には水溶液である。ポリマーが分散または溶解している適した溶媒には、水性溶媒および水混和性溶媒、例えば、アルコール類、特にC−Cアルキルアルコールおよびケトン類、特にアセトンなどが含まれる。有利には、溶媒には、水および混和性共溶媒が含まれる。好ましい共溶媒としては、エタノール、n−プロパノールおよびイソ−プロパノールが挙げられる。誤解を避けるために、用語「水性溶媒」は、本明細書において、純粋な水、および水と1以上の水混和性共溶媒を含む混合物を包含する。典型的には、水が水性溶媒の大部分、例えば少なくとも50%w/wを構成する。典型的には、水混和性共溶媒は、溶媒の50%未満w/wを構成する。一実施形態では、本発明は、(i)PVOHおよび/またはEVOH共重合体およびポリカルボン酸ポリマーの水溶液を(ii)粘土の分散液と混合することを含む、ガスバリアコーティング組成物を調製する方法を提供する。
【0045】
粘土化合物は、有利には、水性媒体中で容易に分散するものであり、最大のバリア性能を得るために、鉱物のラメラの高度の剥脱が必要とされる。本発明で使用される粘土の種類には、それが水性媒体中で十分に分散性であり、分散の間に層間挿入されるかまたは剥離する能力があり、かつ/または酸素バリアコーティングでの使用に適しているのであれば制限はない。有利には、粘土は水性溶媒または水混和性溶媒、好ましくは水性溶媒に分散される。
【0046】
使用される粘土は、好ましくはナノ粒子である。ナノ粒子粘土は、少なくとも1つの寸法がナノメートルの範囲内、すなわち100nm未満である粒子を含む粘土である。典型的には、ナノ粒子粘土の粒子は、100nm未満の最大厚さ寸法、例えば50nm未満の最大寸法、例えば20nm未満の最大寸法などを有する。剥離した形態では、この粘土のアスペクト比(すなわち、単一の粘土「シート」の長さと厚さとの間の比)は、達成する酸素バリアのレベルに影響を及ぼすことになる。アスペクト比が大きいほど、乾燥コーティングおよび積層体を通る酸素の拡散率の低下は大きくなる。有利には、粘土は、その剥離された形態で約20よりも大きいアスペクト比を有する。20〜10,000の間のアスペクト比をもつ粘土鉱物が、典型的に使用される。特に好ましいのは、約50よりも大きい、例えば約100よりも大きいアスペクト比を有する鉱物である。
【0047】
適した粘土の例としては、カオリナイト、モンモリロナイト、アタパルジャイト(atapulgite)、イライト、ベントナイト、ハロイサイト、カオリン、マイカ、バーミキュライト、珪藻土およびフラー土、焼成アルミニウムシリケート、水和アルミニウムシリケート、マグネシウムアルミニウムシリケート、ケイ酸ナトリウムおよびケイ酸マグネシウムが挙げられる。これらの中で、ベントナイトを含むモンモリロナイト粘土類が好ましく、ナノ粒子粘土が最も好ましい。適した材料の市販例は、Cloisite Na+(Southern Clayより入手可能)、Bentone ND(Elementisより入手可能)である。
【0048】
有利には、本発明の組成物中に存在するポリカルボン酸ポリマー(類)は、酸、典型的には、不飽和酸、例えばエチレン性不飽和酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸およびマレイン酸などのホモポリマーおよび共重合体である。一実施形態では、ポリカルボン酸ポリマーは、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)もしくはそれらの共重合体、または、マレイン酸とアクリル酸もしくはメタクリル酸のいずれかとの共重合体、またはそれらのブレンドから選択される。さらなる実施形態では、ポリカルボン酸ポリマーは、ポリ(アクリル酸)である。コーティングの粘度が有用な固体含有量で高くなりすぎて、フレキソ印刷かまたはグラビアプロセスのいずれかによる塗布を妨げるほど分子量が大きいのでなければ、ポリカルボン酸ポリマーの分子量には制約はない。本発明のコーティングは、一連のポリマー酸でうまく機能することが見出され、マレイン酸およびアクリル酸の低分子量共重合体に制限されない。例えば、約20,000の分子量のアクリル酸およびメタクリル酸の共重合体であるポリマー酸が含まれる、本発明の方法により調製されるコーティングはうまく機能することが見出された。有利には、ポリカルボン酸ポリマーの分子量は、約300,000未満、例えば、約200,000未満、特に約150,000未満である。好ましい実施形態では、ポリカルボン酸ポリマーは、その主に非中和形態で使用される。有利には、使用されるポリカルボン酸ポリマーは、主に遊離酸の形態であり、例えば、ポリマー中のカルボン酸基の少なくとも50mol%は遊離酸形態であり、特に、ポリマー中のカルボン酸基の少なくとも70mol%、より特に少なくとも90mol%は遊離酸形態である。酸部分の実質的な割合が塩に変換されている、部分的にまたは完全に中和した類似体が、高い湿度で酸素バリアと積層接着強度性能の両方の悪化を誘導し得ることが示された。有利には、ガスバリアコーティング組成物の形成で使用されるポリカルボン酸溶液または分散液のpHは、約4以下、例えば約3.5以下、特に約3以下のpHを有する。典型的には、ポリカルボン酸溶液または分散液の固体含有量は、約10〜約50重量%である。一実施形態では、ガスバリアコーティング組成物は、部分的にまたは完全に中和したポリカルボン酸ポリマーを実質的に含まない。好ましくは、ガスバリアコーティング組成物は、ポリカルボン酸ポリマーと塩を形成する能力のある塩基性成分を実質的に含まずに調製される。
【0049】
一実施形態では、ガスバリアコーティング組成物は、EVOH共重合体の溶液または分散液、好ましくは溶液を含む。さらなる実施形態では、EVOH共重合体は、本発明のコーティング中に分散している。有利には、EVOH共重合体は、エチレン含有量が20mol%未満であるビニルアルコール−エチレン共重合体である。上述の特開2007−136984号、米国特許第4818782号および欧州特許出願公開第0479031号のバリアコーティングで使用されているような、従来のEVOH共重合体のエチレンモル濃度は、20%よりも大きい。本明細書に記載されるコーティングの基本的なポリマー成分が、エチレン含有量が20mol%未満(例えば「Exceval」の商標名でKurarayより入手可能なEVOHポリマーの範囲など)であるビニルアルコール−エチレン共重合体である場合、従来のEVOH共重合体を使用する場合よりも安定した溶液が得られることが見出された。従来のEVOH共重合体溶液が、それが乾燥するときにコーティングの透明性を確保するために、通常高温下で塗布されるのに対して、エチレン含有量が20mol%未満であるEVOH共重合体を含む本発明のコーティングは、周囲条件下でうまく塗布することができることが見出された。
【0050】
必要に応じて、PVAおよび/またはEVOH共重合体、およびポリカルボン酸に加えて、その他のポリマーまたは樹脂を、これらの共樹脂(co−resins)が最終組成物中でそれら自体と適合するという条件で、コーティング組成物に含めることができる。かかるポリマーおよび樹脂の例としては、アクリル溶液、アクリル乳濁液、ポリエステル、アルキド、スルホポリエステル、ポリウレタン、酢酸ビニル乳濁液、ポリ(ビニルブチラール)、ポリビニルピロリドン)、ポリアミド、多糖、タンパク質、エポキシ、などが挙げられる。また、ゾルゲル前駆体、例えば、テトラエチルオルトシリケートの加水分解物をこれらの組成物中に含めることも可能である。有利には、コーティング組成物には、ポリカルボン酸ポリマーと塩を形成する、相当なレベルの塩基性ポリマーまたは樹脂、例えば、ポリエチレンイミンなどを含めない。
【0051】
基材の性質には特に制限はないが、好ましくは可撓性の基板、例えばプラスチックフィルムなどであり、意図する使用に適したいずれの材料を用いてもよい。しかし、本発明のコーティングフィルムで包装されるものが、食料または医薬品である場合、通常、プラスチックフィルムまたはその他の基材は食物等級であることが好ましい。適した材料の例としては:ポリオレフィン類、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンなど;ポリエステル類、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラートまたはポリエチレンナフテナートなど;ナイロン類、例えば、ナイロン−6またはナイロン−66などを含むポリアミド類;およびその他のポリマー類、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、アクリル系ポリマー、ポリスチレン、セルロース、またはポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。本発明のコーティングは、ポリエステルと使用するのに特に適していることが見出された。また、これらのポリマーを作製するために使用した任意の適合する2またはそれ以上のモノマーの共重合体を使用することも可能である。さらに、本発明の組成物は、紙基材(例えば、食品包装で一般的に見られるポリエステルおよびポリオレフィンコーティングされた板紙など)を含む、接着形成された積層体に含めることができる。
【0052】
本発明のガスバリアコーティングは、比較的不十分な固有の酸素バリア特性を有する可撓性プラスチックフィルム基材と使用するのに特に適していることが見出された。一実施形態では、コーティングを含まない積層材料のOTRは、23℃でRH75%で少なくとも50cm/m/日、特に23℃でRH75%で少なくとも80cm/m/日である。一実施形態では、コーティングを含まない積層材料のOTRは、23℃でRH75%で少なくとも1000cm/m/日である。
【0053】
基材は、好ましくは本発明の組成物でそれがコーティングされる直前にコロナ放電により処理される。このプロセスは当分野で周知であり、例えば、「Plastics Finishing and Decoration」,edited by Donatas Satas,published by Van Nostrand Reinhold Company in 1986,at pages 80−86に記載されている。以降の実施例において、コロナ放電処理に関して、本発明者らは50ダイン/cmより大きい表面エネルギーを実現した。一実施形態では、コーティングは、コロナ放電処理されたプラスチックフィルム、例えばPET(ポリエステル)などに塗布され、第2のプラスチックフィルム、例えばポリ(エテン)などに、適した積層接着剤を用いて積層される。
【0054】
カバーリングフィルムの性質への制限は特にない。基材として使用するための上記のプラスチックフィルムの種類は、一般に、カバーリングフィルムとしての使用にも適している。カバーリングフィルムは、基材フィルムと同じであってもよいし、それらは相互に異なっていてもよい。
【0055】
使用する接着剤の性質への制限は特になく、2またはそれ以上のプラスチックフィルムの接着に一般的に使用されるいずれの接着剤を本発明で用いてもよい。適した接着剤の例としては、溶剤系(ポリウレタン)の種類、例えば、Henkel製のもの(Liofol UR3969/UR 6055、Liofol UR3640/UR6800、Liofol UR3894/UR6055)、Rohm&Haas製(Adcote 811/9L10)およびCoim(CA2525/2526)などが挙げられ、溶剤を含まないポリウレタン接着剤、例えば、Henkel製Liofol 7780/UR6082、UR7750/UR6071、およびRohm&Haas製Mor−Free ELM−415A/Mor−Free CR140なども使用してよい。ポリウレタン接着剤と同様に、エポキシ系の種類、例えばLamal 408−40A/C5083なども使用することができる。水性接着剤、例えばRohm&Haas製のAqualam 300A/300D、エポキシ型なども使用してよい。
【0056】
接着剤は、フィルムのうち1枚に直接塗布し、次にもう一方のフィルムの上のガスバリアコーティングに接着させてもよいし、接着剤を1枚のフィルム上のガスバリアコーティングに塗布し、次にもう一方のフィルムに接着させてもよい。いずれの場合も、層の順序は、プラスチックフィルム;ガスバリアコーティング;接着剤;およびもう一方のプラスチックフィルムとなる。必要に応じて、その他の材料の層を、これらの層のいずれか2つの間に、またはバリアコーティングをその間に有する2枚の可撓性プラスチックフィルム基材のいずれかの面に置いてもよい。
【0057】
本発明の第4の態様の一実施形態では、接着剤が完全に硬化した後に75%の相対湿度で2日間積層体を保存した後の2枚のフィルム間の接着強度が少なくとも約1.0N/15mmであるように、ガスバリア材料は接着形成された積層体に組み込まれる。
【0058】
コーティング組成物は、いずれの湿潤フィルム重量でも塗布することができる;しかし最終的に最大湿潤フィルム重量は、従来のプレス機で現実的なプレス速度でこれらのコーティングを塗布する必要性によって決定される。そのため、好ましい塗布最大フィルム重量は、約10gsm(湿潤)となる。これらのコーティングの固体含有量が約4〜9%の範囲内であるとすると、塗布される考え得る最大乾燥フィルム重量は、恐らく約1.0gsm(乾燥)となる。PVOH/EVOH(PVOHに関して約1.3)および粘土(モンモリロナイトに関して約2.5)の異なる密度に起因して、フィルム重量は、フィルム厚さよりも関係のある、本発明のガスバリア材料の特徴である。
【0059】
一実施形態では、本発明は、PVOHおよび/またはEVOHの溶液または分散液およびポリカルボン酸ポリマーの水溶液または分散液を、事前に調製した粘土の分散液と混合すること、次に、以下の工程を実行することを含む、ガスバリア材料を調製するための方法を提供する:
a.第1の可撓性ポリマーフィルムを得られる混合物でコーティングする工程;
b.接着剤コーティングを、第1のフィルムのコーティングされた面の片面または両面に、あるいは第2の可撓性ポリマーフィルムに塗布する工程;および
c.第1および第2のフィルムを一緒に接着する工程(接着剤が完全に硬化した後の、2枚のフィルム間の接着強度は、少なくとも約1.0N/15mm(積層体を2日間、相対湿度75%で保存後)、より好ましくは約1.5N/15mmより大きい)。
【0060】
有利には、工程a、bおよびcは、3つの成分の混合完了から約24時間以内に実行される。有利には、粘土は、コーティングの全固体含有量の約35〜50重量%の量で存在し、ポリカルボン酸ポリマーは、約5〜20重量%の量で存在し、PVOH/EVOHは、約30〜60重量%の量で存在する。有利には、ポリカルボン酸ポリマーは、主にその中和していない形態で存在する。有利には、ポリカルボン酸ポリマーは、アクリル酸および/またはメタクリル酸のホモポリマーまたは共重合体、またはマレイン酸およびアクリル酸の共重合体である。有利には、ポリカルボン酸ポリマーの分子量は、約200,000未満である。有利には、乾燥コーティング厚さは、約50〜1000nmである。有利には、粘土は(その剥離された形態で)約20よりも大きいアスペクト比を有する。有利には、粘土分散液は、従来の高剪断分散装置を用いて作製される。有利には、分散装置は、ボルテックス、キャビテーションまたはビーズミル型、好ましくはボルテックス型分散装置である。有利には、粘土は、水および水溶性アルコールの存在下で分散している。
【0061】
有利には、本発明の方法は、
(A/B).(C/D)>約15、
式中、
A=コーティングを含まない積層体に関する酸素透過率(23℃/RH75%);
B=コーティングを含む積層体に関する酸素透過率(23℃/RH75%);
C=相対湿度75%での接着強度(N/15mm);
D=コーティング重量[gsm(乾燥)];
但し:A/B>約8、C>約1.0、かつD<約1.0
であるガスバリア材料を提供する。
【0062】
本発明はさらに、酸素感受性の、包装された食料、医薬もしくはその他の材料を提供し、前記包装は、本発明のガスバリア材料、例えば本発明の方法に従って調製したガスバリア材料を含む。
【0063】
本発明はさらに、ポリ(ビニルアルコール)および/またはエチレン−ビニルアルコール共重合体、分散した粘土およびポリカルボン酸ポリマーを含む水希釈性コーティング組成物を提供する。好ましいポリカルボン酸ポリマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸およびマレイン酸のホモポリマーおよび共重合体が挙げられる。本コーティングは、特にPET−PE積層構造に対する、良好な積層接着強度に加えて、接着形成された積層体に組み込まれると例外的な酸素バリアをもたらす。
【実施例】
【0064】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を説明するものであり、いかなる点においてもその範囲を制限するものでなく、そのように解釈されるべきではない。
【0065】
コーティングされたサンプルの酸素透過率(OTR)を、Mocon Oxtran 2/21ガス透過性試験機で23℃および相対湿度75%で測定した。すべての場合において使用した基材は、新たにコロナ放電処理された12μm Mylar 800であった。コーティングを、No.2 K−bar(約12μm)で塗布し、暖かい空気の流れで乾燥させた(実験室の印刷はヘアドライヤーで乾燥させた)。乾燥コーティング重量は、約0.84gsmであった。コーティングを、粘土分散液およびポリマー組成物の混合の直後に、典型的には2時間以内に、Mylar 800に塗布した。
【0066】
積層体を、ポリエステルフィルムの処理面にコーティングを塗布することにより調製し、接着剤を乾燥したコーティングの上面一面に塗布した後、30μmゲージのポリ(エテン)の処理面に積層した。用いた接着剤は、Morchem、PS220/CA40により供給され、製造業者の説明書に従って調製され、約2.5gsmの最終乾燥フィルム重量を実現するように塗布された。次に、積層体を10日間25℃で保存して、イソシアネート系接着剤の完全な硬化を確保した。
【0067】
次に、積層体を、2日間RH75%で保存した後に接着強度(N/15mm)について試験した。
【0068】
以下のコーティング実施例は、制約つき混合物の実験計画に従って、12重量%の固体を有するPVOH溶液を4.5重量%の固体含有量を有する粘土分散液と、ポリカルボン酸ポリマー水溶液とをブレンドすることにより調製された。PVOH溶液は、12%のExceval AQ4104および30%のn−プロパノールを含んでいた。溶液の残りは脱イオン水であった。粘土分散液は、4.5重量%のCloisite Na+および30%イソ−プロパノールを含有した;残りは脱イオン水であった。高剪断ブレンダーを用いて粘土を分散させた。これは、アルコール中に粘土のスラリーを最初に形成し、その後それに脱イオン水を添加することにより達成された。特に指定のない限り、1L円筒形容器および4cmのブレードを備えたDispermat CV キャビテーション型ブレンダーを2500rpmで45分間用いて分散液を調製した。分散液の全質量は、500gであった。コーティングを、PVOH溶液、粘土分散液およびポリ(酸)溶液を正確な量でブレンドすることにより、約7.0重量%の全固体含有量で作製した。コーティングの残りは脱イオン水で構成した。
【0069】
実施例1〜13: ポリ(アクリル酸)に基づくバリアコーティングの性能
表1は、Acriflow 041S、Witton Chemicalsより入手したポリ(アクリル酸)溶液で調製したコーティングの詳細を、それらの酸素バリア性能、接着強度および計算A/BおよびX値とともに提供する。
【表1】

実施例1〜13の各々において、フィルム間の良好な接着強度が観察された。より高いバリア強化因子は、粘土含有量が約38重量%以上である実施例において達成された。実施例5のコーティングだけが、15よりも低いX値をもたらした。
【0070】
実施例14〜26: これらのコーティングを、BASFより入手したアクリル酸およびマレイン酸の共重合体である、Sokalan CP12S[別名ポリ(マレイン酸−コ−アクリル酸]を用いて作製したこと以外は、実施例1〜13を反復した。
【表2】

【0071】
実施例27: Sokalan CP12SをSokalan CP13S[ポリ(アクリル酸−コ−メタクリル酸]に置き換えたこと以外は実施例25を反復。
【表3】

【0072】
粘土が実質的に完全に分散したことを確認するために、実施例27の材料のサンプルを脱イオン水で希釈し、次に銅格子の上に流し込み、乾燥させた。次に、サンプルを透過型電子顕微鏡で調べて、鉱物のかなりの部分が完全に分散したことを確認した。結果を図1に示す。
【0073】
粉末X線回折分析もまた用いて、実施例27の調製で使用した粘土分散液が完全に分散していることを確認した。粉末X線回折分析は乾燥させて粉にしたコーティングで実行するので、湿潤分散液の分散の程度について間接的な情報をもたらす。さらに、より高濃度の粘土は乾燥プロセスの間に再凝集する可能性があり、従って、粘土の分散のレベルについての情報は、低濃度の粘土を用いて試験コーティング組成物を比較した場合に最も確実に得られる。
【0074】
実施例27のものに類似するが10重量%Cloisite Na+のコーティング、d001(分散Cloisite Na+のサンプル中に観察される粘土ラメラ間の距離)に相当する12.1オングストロームの回折ピークは消失し、この粘土がが剥離していることを示す。粘土濃度が実施例27の25%および40〜45%に増加するにつれて、回折パターンがそれぞれ35および26オングストロームで再び現れた。このことは、回折パターンを得るための粘土の再秩序化(re−ordering)を明白に示している;予測されるように、粘土濃度が増加するにつれて、ラメラ間の距離は低下する。このデータは、例えば層間挿入された複合材料よりもむしろ、実施例27を調製するために使用した分散液が完全に剥離していることを確認するために、10重量%の粘土を含むコーティングを分析することが必要であることを示す。
【0075】
この分析により、上記の技法を用いるDispermat CV キャビテーション型ブレンダーを用いて粘土分散液を調製することは、粘土の高レベルの剥脱を引き起こすのに十分であることが確認された。
【0076】
比較例1および2: Sokalan CP13Sを含まないこと以外は実施例27を反復した(比較例1)。同様に、少なくとも30重量%の好ましいレベルよりも低い粘土濃度を有するコーティングも調製した(比較例2)。以下の結果が得られた。
【表4】

(ポリマー)酸の含有が、高いRHでの酸素バリアおよび積層接着強度の組み合わせの有利な実現を促進することは、比較例1から明白である。比較例2は、粘土のレベルの低下による、コーティングの酸素バリア性能への影響を実証し、30重量%より低い粘土レベルは、特に良好なバリア性能をもつコーティングをもたらさないことを示す。
【0077】
比較例3〜5: PVOHおよび粘土と組み合わせた(ポリマー)酸の役割を実証するため、粘土を含めずに組成物を調製した。これらの組成物を下の表5に、RH75%でのOTR結果とともに提供する。
【表5】

比較例3〜5は、比較例1および2とともに、高い相対湿度で改良された酸素バリアおよび積層接着強度性能を実現する鍵であることを実証する。さらに、これらは、本明細書に指定される好ましいレベルで3つの成分を包含することが、最適な特性バランスを得る際に有利であることを実証する。
【0078】
比較例6〜8: 粘土分散液のインサイツでの調製
特開平11−246729号は、この種類の組成物が、ポリ(ビニルアルコール)溶液およびポリ(アクリル酸)の水溶液の存在下で粘土を分散させるための高圧分散装置を用いて作製され得ることを示す。しかし、本発明者らは、コーティング業界で用いられる典型的な従来の(高剪断)分散設備(例えば、Dispermat(キャビテーション)およびSilverson(ボルテックス)型など)を使用すると、この「すべてを含む」アプローチは満足のいく結果を生じないことを見出した。
【0079】
実施例27に表される組成物を例として、粘土分散液を以下の組成で作製した:
比較例6: 4%Cloisite Na+、4.3%Sokalan CP13S(25%溶液として供給)、30%EtOH、61.7%脱イオン水。
比較例7: 4%Cloisite Na+、31.2%Exceval AQ−4104の12.65%溶液、20.3%EtOH、44.5%脱イオン水.
比較例8: 3.1%Cloisite Na+、24.2%Exceval AQ−4104の12.65%溶液、3.3%Sokalan CP13S、20.8%エタノール、48.6%脱イオン水。この実施例は、「すべてを含む」方法によりコーティングを作製することに相当する。
【0080】
比較例6〜8では、エタノールを最初に分散容器に添加し、それに続いて粘土を添加する。脱イオン水、それに続いてその他の成分を添加する。次に、上記の手順に従って粘土を分散させた。
【0081】
比較例5および6の場合は、これらをその後に、その他の成分を添加することにより実施例27の組成物に相当するコーティングにし、水で希釈して約7.0%の最終固体含有量を実現した。
【0082】
23℃/RH75%で以下のOTRを得た;
比較例6: 35.3cm/m/日
比較例7: 52.9cm/m/日
比較例8: 82.0cm/m/日
【0083】
これらの酸素バリアの結果は、粘土分散液を別々のプロセスで調製し、その後にポリマー溶液とブレンドした実施例27に関する結果よりも顕著に悪い。さらに、比較例7および8で調製した粘土分散液に関して、粘土が急速に沈降したことが観察され、適切な分散液が実現されなかったことが示される。
【0084】
従って、本発明のさらなる態様は、好ましくは、(ポリマー)酸の溶液とともに、水性粘土分散液をポリ(ビニルアルコール)および/またはエチレンおよびビニルアルコールの共重合体の溶液とブレンドすることにより、コーティングを調製することである。
【0085】
実施例28〜33: 粘土分散液の性能依存性
粘土分散液の質を評価するために、ポリエステルフィルム(コロナ放電処理された12μm Mylar 800)に塗布した場合のコーティングの曇りを測定し、得られるコーティングの酸素バリアへのその影響を決定した。コーティングの曇りのレベルは、コーティングを調製するために使用する粘土分散液の質を示すことが見出され、不十分に分散したコーティングは高レベルの曇りを有するコーティングをもたらした。
【0086】
上記のようにDipermat CVを用いるか、またはSilverson L4Rを用いて、いずれの場合もCloisite Na+を様々な方法で分散させること以外は、実施例27を反復した。これらのブレンダーは両方とも実験室規模の装置であり、Dispermatはキャビテーション型であり、Silversonはボルテックス型である。いずれの場合も約500gの粘土分散液を調製した。
【0087】
一例として、実施例33の分散液は、以下の通り調製した:25gのCloisite Na+を、最初にオーバーヘッドパドルスターラを用いて120gのエタノール中に予めスラリー化した。次に、この粘土スラリーを、0.5mm篩を備えたSilverson L4R ラボラトリー・ボルテックス・ブレンダーに移した。350gの脱イオン水をスラリーに添加した。水の添加が完了すると、出力設定を50%に増加し、次に、粘土を90分間分散させた。生じた分散液の固体含有量は、4.8%(w/w)であった。注記:理論値よりも低い固体含有量の理由は、Cloisite Na+が、保存の間にそれが獲得する水残渣を含有していることである。その他の分散液は、下の表6に提供される詳細に従って様々な手順により調製した。
【0088】
Dispermatの場合、直径4cmのブレードを使用し、速度を表6に記載されるように変化させた。Silversonを用いて調製する分散液の場合、羽根車を最大出力の50%(実施例33は最大出力の75%)に設定し、表6の詳細に従って篩を交換した。
【0089】
これらのコーティングの酸素バリアは、前の実施例に記載されるものと同じ方法で評価した。コーティングをPETフィルムにも、No.3 K−Bar(例、RK Print)を用いて24μmのウェットコーティング厚さで塗布した。コーティングを乾燥させ、次にこれらのコーティングされたフィルムの曇りを、Byk−Gardner Haze−gard dual装置を用いて決定した。
【表6】

【0090】
比較例9のコーティング組成物の調製で用いた粘土は、完全に分散されず、結果として高い曇りおよび5.3の酸素バリア強化因子(A/B)をもつコーティングをもたらした。上の表6に示される結果は、粘土の分散の程度の尺度であるコーティングの曇りと、得られるコーティングの酸素バリア性能との間の相互関係の存在を実証する。
【0091】
上の結果は、適切なレベルの分散は、キャビテーション型高剪断分散装置を十分に高いrpmで使用する場合に得ることができることを実証する。しかし、より大きい程度の分散は、ボルテックス型分散装置を用いて達成可能であることが見出された。
【0092】
実施例32に従って作製したCloisite Na分散液を、ピーク粒度について、CPS DC24000機器;円板速度10000rpm;較正標準直径0.377μm;較正標準密度1.385g/mL;粒度密度2.5g/mL;粒度吸収0.01、非球形粒子1.0、流体密度1.064g/mL、データポイントの数1775;分析時間5.5分;総重量44.44μg;オフセットなし、ノイズ濾過なし;ピーク検出因子:高さ=0.5、幅=10;検出ピーク0.2156μmを用いて分析した。この試験は、216nmに相当するピーク最大値をもつ多分散性のサンプルを示し、それはこの種類の完全に剥離した鉱物に予期されるものである。
【0093】
対照的に、比較例9の手順に従って作製したCloisite Na分散液を同一の手順を用いて分析し、252nmのピーク最大値を観察した。この大幅に高いピーク粒度は、比較例9の最終コーティングの不十分なガスバリア性能によって確認されるように、粘土が完全に剥離していなかったことを示す。
【0094】
本発明は、その好ましい実施形態を含め、詳細に記載された。しかし、当業者は、本開示を検討し、本発明の範囲および精神の範囲に入る変更および/または改良を行うことができることは当然理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)PVOHおよび/またはEVOH共重合体の溶液または分散液およびポリカルボン酸ポリマーの溶液または分散液を含むポリマー組成物を、(ii)粘土の分散液と混合することを含む、ガスバリアコーティング組成物の調製方法。
【請求項2】
前記粘土が、前記コーティング組成物の全固体含有量の、約35〜50重量%の量で存在し、前記ポリカルボン酸ポリマーが、約5〜20重量%の量で存在し、かつ/または前記PVOH/EVOHが、約30〜60重量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリカルボン酸ポリマーが、主にその中和していない形態である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリカルボン酸ポリマーが、アクリル酸および/もしくはメタクリル酸のホモポリマーまたは共重合体、またはマレイン酸およびアクリル酸の共重合体である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリカルボン酸ポリマーの分子量が、約200,000未満である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリカルボン酸の溶液または分散液のpHが約4以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、20mol%未満のエチレン含有量を有するビニルアルコール−エチレン共重合体であるEVOH共重合体の溶液または分散液を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記粘土が、水および/または水溶性アルコール中に分散している、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記粘土が、高剪断分散装置を用いて分散される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記粘土が、その剥離形態で約20よりも大きいアスペクト比を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法を用いて得られるガスバリアコーティング組成物。
【請求項12】
請求項11に記載のガスバリアコーティング組成物で基材をコーティングする工程を含む、ガスバリア材料の調製方法。
【請求項13】
(a)請求項1から10のいずれか一項に記載の方法に従ってガスバリアコーティング組成物を調製する工程と、(b)前記基材を前記ガスバリアコーティング組成物でコーティングする工程とを含む、請求項12に記載のガスバリア材料の調製方法。
【請求項14】
工程(b)が、工程(a)の完了の約24時間以内に実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記基材が、可撓性ポリマーフィルムである、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記可撓性ポリマーフィルムが、第1の可撓性ポリマーフィルムであり、前記方法が、(c)接着剤コーティングを、前記第1のフィルムの前記コーティングされた面の片面または両面に、あるいは第2の可撓性ポリマーフィルムに塗布する工程と、(d)前記第1および第2のフィルムを一緒に接着する工程とをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記接着剤が完全に硬化した後に75%の相対湿度で2日間前記積層体を保存した後の2枚のフィルム間の接着強度が少なくとも約1.0N/15mmであるように、ガスバリア材料が、接着によって形成された積層体に組み込まれる、請求項12から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
約50〜約1000nmの乾燥コーティング厚さが形成されるように、バリアコーティング組成物が塗布される、請求項12から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
(A/B).(C/D)>約15、
式中、
A=コーティングを含まない積層体に関する酸素透過率(23℃/RH75%);
B=コーティングを含む積層体に関する酸素透過率(23℃/RH75%);
C=相対湿度75%での接着強度(N/15mm);
D=コーティング重量[gsm(乾燥)];
但し:
A/B>約8;
C>約1.0;および
D<約1.0
である、請求項12から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項12から19のいずれか一項の方法を用いて得られるガスバリア材料。
【請求項21】
(A/B).(C/D)>約15、
式中、
A=コーティングを含まない積層体に関する酸素透過率(23℃/RH75%);
B=コーティングを含む積層体に関する酸素透過率(23℃/RH75%);
C=相対湿度75%での接着強度(N/15mm);
D=コーティング重量[gsm(乾燥)];
但し:
A/B>約8;
C>約1.0;および
D<約1.0
である、接着によって形成される積層体材料。
【請求項22】
前記包装が、請求項20に記載のガスバリア材料を含む、包装された食料、医薬もしくはその他の材料。
【請求項23】
請求項20に記載のガスバリア材料を含む包装材料の中に前記物品を包装することを含む、酸素感受性の食料、医薬もしくはその他の物品を保護する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−511587(P2013−511587A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539409(P2012−539409)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/GB2010/002148
【国際公開番号】WO2011/061510
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(512130464)サン ケミカル ビー.ブイ. (2)
【Fターム(参考)】