説明

ガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板およびそれを用いた部材

【課題】基板に比較して大幅に軽量化でき、かつ表示装置のより一層の薄型軽量化を実現するとともに、軽量で、水、空気のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板を提供する。
【解決手段】一対の薄膜ガラス2、2aと、それらに挟まれた中間層3からなり、水蒸気透過率が1×10−2g/(mday)以下であることを特徴とするガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板1である。特に、薄膜ガラス2、2aが、オーバーフロー法により作られ、表面粗さ(Ra値)が1nm以下の平滑な表面を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品用途として薄型軽量化を図るガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板に関する。具体的には、ディスプレイが有機EL、電子ペーパーであるディスプレイ部材や照明が有機ELである照明部材や太陽電池部材に好適な薄型軽量化を図った基板で、水、空気のガスバリア性を有する軽量基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスバリアフィルムは、内容物の品質を変化させる原因となる酸素や水蒸気の影響を防ぐために、食品や医薬品等の包装材料として用いられたり、液晶表示パネルに形成されている素子が水蒸気に触れて性能劣化するのを避けるために、電子デバイス等のパッケージ材料として用いられてきた。しかし、ガスバリアフィルムは、水蒸気透過率が0.1g/(mday)程度であるため、将来、大きな市場が期待されている太陽電池や有機EL関連部品に必要とされているガスバリア性、具体的には、水蒸気透過率が1×10―2g/(mday)以下を達成することは難しい。
【0003】
ガラスのガスバリア性は完全であるが、持ち運び可能な携帯型液晶テレビなどの用途では、軽量化の要求が強い。これらを同時に解決する方法として一対のガラスとこれらに挟まれた樹脂からなるガスバリア性に優れ、且つ表面性に優れた軽量基板の開発に至った。
一方、ガラス積層体によるガスバリア性の改善も期待できる。これまでのガラス積層体の技術としては、以下のようなものがすでに開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2006−96612号公報)では、ホウ珪酸ガラス板を使用し、それらの相互間に介在させる中間膜としてテロラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン‐ビニリデンフロライドの共重合体を使用する合わせガラスが開示されている。ここで使用される薄膜ガラスは防犯ガラス等に使用することを目的としているためその厚みは、2〜15mm程度が使用される。このため、本目的、用途とは本質的に異なる。また、大面積を必要とされる。
【0005】
例えば、太陽電池のバック基板に適応した場合、ガラスが厚く重量的に難がある。
例えば、特許文献2(特開2008−37094号公報)には、ガラス/硬化中間層/ガラスの構成を持つ透明な積層体が軽量薄型ディスプレイに好適な積層体であることが開示される。文献2は積層する薄膜ガラスの厚みは100μm〜200μmである。100μm〜200μmのガラスを使用する場合ですら構造体としては、十分軽量化されているとは言い難く、100μm未満ではディスプレイの基板としての剛性が不足し、基板に適さない。
【0006】
さらに、例えば、特許文献3(特開平7−43696号公報)には、厚さ1.5μm以上250μm未満の超薄ガラス板間に1層の接着性透明性樹脂が介在される表示装置用基板が開示されている。この超薄ガラスは片面に研磨が施される必要があり、ガラスの持つ平滑性についてはまったく着目されていない。また、プロセスコストの大巾な増加につながる。
【0007】
本発明は、ガラス表面の平滑性に優れたガラスを選定し、その特徴を充分発揮させる組み合わせによりガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板提供することが出来ることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−96612号公報
【特許文献2】特開2008−37094号公報
【特許文献3】特開平7−43696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、前記課題を解消し、表示装置などのより一層の薄型軽量化を実現するとともに、軽量で、水、空気のガスバリア性を有する積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも一対の薄膜ガラスと、それらに挟まれた樹脂を主成分とする中間層からなり、水蒸気透過率が1×10−2g/(mday)以下であるガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板である。
また、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板は、薄膜ガラスのうち少なくとも1枚の平均厚みが5μm〜100μmの範囲であることを特徴とする。
また、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板は、薄膜ガラスの平均厚みがそれぞれ5μm〜100μmの範囲であり、これら平均厚みの差が1μm未満であることを特徴とする。
また、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板は、薄膜ガラスの平均厚みがそれぞれ5μm〜100μmの範囲であり、これら平均厚みの差が1μm以上、90μm以下であることを特徴とする。
また、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板は、薄膜ガラスの平均厚みが5μm〜100μmの範囲であり、これら平均厚みの合計が中間層の厚みよりも薄いことを特徴とする。
また、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板は、薄膜ガラスの平均厚みが5μm〜100μmの範囲であり、これら平均厚みの合計と中間層の厚みとの総計が3.0mm以下であることを特徴とする。
また、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板は、薄膜ガラスの平均厚みが5μm〜100μmの範囲であり、これら平均厚みの合計と中間層の厚みとの総計が1.0mm以下であることを特徴とする。
また、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板は、薄膜ガラスの平均厚みが5μm〜100μmの範囲であり、これら平均厚みの合計と中間層の厚みとの総計が0.5mm以下であることを特徴とする。
また、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板は、中間層が熱可塑性樹脂を主たる構成成分とすることを特徴とする。
また、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板は、中間層が熱硬化樹脂を主たる構成成分とすることを特徴とする。
また、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板は、中間層が複数の樹脂層からなることを特徴とする。
また、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板は、複数の樹脂層の両最外層が、ガラスとの接着性または粘着性を有する樹脂を主たる構成成分とすることを特徴とする。
また、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板は、薄膜ガラスが、オーバーフロー法により作られ、表面粗さ(Ra値)が1nm以下の平滑な表面を有することを特徴とする。好ましくは、0.5nm以下である。
また、本発明は、前記ガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板を用いたディスプレイ部材であっても良い。
また、本発明は、ディスプレイが有機ELであるディスプレイ部材であっても良い。
また、本発明は、ディスプレイが電子ペーパーであるディスプレイ部材であっても良い。
また、本発明は、前記ガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板を用いた照明部材であっても良い。
また、本発明は、照明光源に有機ELを用いた照明部材であっても良い。
また、本発明は、前記ガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板を用いた太陽電池部材であっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明に従えば、少なくとも一対の薄膜ガラスと、それらに挟まれた樹脂を主成分とする中間層からなり、水蒸気透過率が1×10−2g/(mday)以下であることを特徴とするガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板を使うことにより従来のガラス基板より薄型軽量の電子部品を作成することができる。
【0012】
また、これは空気や水分のバリア性が良好であるので、例えば、液晶表示パネルやEL表示パネル等に形成されている素子が、水蒸気に触れて性能劣化するのを避けることができる等の効果が期待できる。また、電子ペーパー、太陽電池等のバリア性の要求される部材での軽量化をはかることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例である水、空気のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(ガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板)
本発明におけるガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板は、少なくとも一対の薄膜ガラスと、それらに挟まれた樹脂中間層からなり、水蒸気透過率が1×10−2g/(mday)以下であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明におけるガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板は、2枚の薄膜ガラスの平均厚みの合計と樹脂中間層の厚みとの総計(以下『板厚寸法』ということがある)については薄いものが好まれ、3.0mm以下が好ましい。好ましくは、1.0mm以下。さらに好ましくは0.5mm以下である。
【0016】
(薄膜ガラス)
また、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板を構成する薄膜ガラスは、平均厚みが5〜100μmであることが好ましい。厚みが100〜500μmの基板の場合、軽量基板のとしての価値が小さくなってしまう。また、薄膜ガラスの平均厚みが5μm未満では、薄肉すぎて取り扱いが困難になる。
【0017】
本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板を構成する薄膜ガラスは、各種成形法によって成形されたものを採用することが可能である。例えばロールアウト法、リドロー法、ダウンドロー法、フロート法等を必要に応じて使用することが可能である。ただし、前記フロート法を使用した場合、溶融金属(溶融錫)の上面に溶融ガラスを流し込んでガラス層を形成するという手法のため、このフロート法により成形されたガラス基板は、溶融錫との接触側に対応する片面を精密研磨する必要が出てくる。この場合、出来たガラス面も例えば表面粗さRa20nm程度である。しかし、研磨回数などを調整することにより目的物に近い表面を作りだすことは可能ある。
【0018】
従って、本発明における薄膜ガラスは、上記の成形法のうちオーバーフロー法により作成されたものであることが特に好ましい。オーバーフロー法の場合、ガラス固化工程で上記のような溶融金属との接触がないため、オーバーフロー法により作成された薄膜ガラスは、表面が極めて平滑で、均質なものが出来き、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板に好適に用いることができる。また、後工程でガラスの研磨等の作業をする必要がなく、生産コストの面でも優位である。
【0019】
ここで、オーバーフロー成形方法であるとは、上部が開口した樋形状の溶融ガラス供給溝をオーバーフロー成形装置頂部に有し、このガラス供給溝の両側壁頂部をオーバーフローの堰とし、かつ両側壁の外面部の断面が略楔形となるように両側壁の外面同士を下方に向けて相互に接近させて下端で終結させた成形体を備え、溶融ガラスをガラス供給溝の一端から連続的に供給して両側壁頂部稜線からオーバーフローさせ、両側壁外面に沿って流下させて略楔形下端で合流させて薄膜ガラスとすることのできる薄膜ガラスの成形装置を使用し、薄膜ガラスを成形する方法であることを意味している。
【0020】
このような製造方法で製造された薄膜ガラスであれば、ガラス溶融時の自由表面を維持してガラス表面が形成されるため、ガラス透光面に強度に影響するような傷等が製造時に形成され難い。そのため、高い形状品位の薄膜ガラスを成形し易く、薄膜ガラスの強度低下となる原因を低減できるため、好ましい。
【0021】
このような製造方法で作成された薄膜ガラスの表面粗さのRa値は1nm以下を確保でき、本電気電子用途にて特に好ましい。特にこのましくは、0.5nm以下である。表面粗さのRa値が1nmを超える場合、例えば、光半導体用窓ガラスのような場合、透過光がガラス窓の表面で散乱し、受発信する信号にノイズを生じさせるなどの不具合がある。
尚、超薄ガラス板の表面粗さ(Ra値)は、垂直分解能0.05nm程度の市販されている走査型プローブ顕微鏡(SPM)によって測定できる。
【0022】
本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板を構成する薄膜ガラスの材質としては、多成分系酸化物ガラスであればどのようなものであってもよい。例えば、本発明を適用することのできる材質としては、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、アルミノシリケートガラス等が特に好適であり、その中でも無アルカリガラスは最も好ましい。
【0023】
また、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板を構成する薄膜ガラスを所望の寸法となるように加工する方法としては種々の加工方法を採用してもよい。例えば、ダイヤモンドホイールによる切断加工、ウォータージェット切断加工、切削加工、ワイヤーソー切断装置による切断、バンドソー切断装置による加工、レーザー切断装置、折り割加工機、研磨装置、切削装置等を必要に応じて使い分けることが可能である。
【0024】
(中間層)
本発明における中間層は、樹脂を主成分とする。樹脂には、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂(以下、併せて『樹脂』ということがある)を用いることができる。
【0025】
中間層は、どのような有機樹脂を充填したものであってもよい。例えばPVB(ポリビニルブチラール)、ウレタン樹脂、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PS(ポリスチレン)、PMA(メタクリル樹脂)、PC(ポリカーボネート)、PVF(ポリビニルホルマール)、POM(ポリアセタール)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、AS(AS樹脂)、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、PA(ポリアミド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、DAP(ジアリルフタレート樹脂)、AAS(AAS樹脂)、ACS(ACS樹脂)、TPX(ポリメチルペンテン)、PPO(ポリフェニレンオキシド)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、BS(ブタジエンスチレン樹脂)、PABM(ポリアミノビスマレイミド)、MBS(MBS樹脂)、PAI(ポリイミド)、PAR(ポリアリレート)、PASF(ポリアリルスルフォン)、BR(ポリブタジエン)、PESF(ポリエーテルスルフォン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、SI(ケイ素樹脂)、PTFE(ポリ4フッ化エチレン)、FEP(ポリフッ化エチレンプロピレン)、PFA(ペルフロロアルコキシフッ化プラスチック)、耐熱フッ素系樹脂等の材料を必要に応じて使用することができる。これらの中間層は単一層であっても、さらに多層構造(複数樹脂層の多層構造)となっているものであってよい。
【0026】
また、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板に係る中間層には、着色剤、赤外線や紫外線などの特定波長についての光線の吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、消泡剤、増粘剤、塗料性改良剤、あるいは耐電防止剤等の各種添加剤、薬剤などを適量配合することでさらに付加的な性能を付与することができる。
さらに、軽量化の目的から発砲体であってもよい。
【0027】
本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板に係る中間層に適用する材料は、予め部分架橋した状態にあるゲル状重合物を準備し、それを中間層となるように成形したものを使用することもできる。この場合には、部分架橋したゲル状重合物についてはどのような形態であってもよく、粉粒状、ペレット状、ボール状、あるいはシート状等の種々の形状とすることができる。この中でも特にシート形状とするならば、さらにシート表面に所望の表面処理剤、機能膜を塗布、被覆させる等の対処を行うことができる。また成形時の微細な気泡の除去も行い易いので好ましい。
【0028】
本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板を形成する方法については、各種の方法が利用できる。例えば、予め積層状態に保持した薄膜ガラスの間に中間層となる樹脂を注入することで積層体とし、その後で樹脂を硬化させることによって積層構造体とするものでもよく、あるいは、薄膜ガラス間に樹脂製のシート材を挿入した状態で薄膜ガラスを重ねた状態とし、そのまま加熱処理や圧縮処理を施すものでもよい。
【0029】
また、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板は、上述に加え、中間層が、熱可塑性樹脂を用いたシート材により構成されてなるものであるならば、積層構造を構成する際に効率的な工程で積層構造体を形成することができ、積層構造体の成形品位を管理し易く好ましい。
【0030】
例えば、PVB(ポリビニルブチラール)やEVA(エチレンポリビニルアセテート)などの熱可塑性樹脂材をシート状に予め成形したものを薄膜ガラスと薄膜ガラスとの間に挟接した状態で保持し、その状態で加熱などして薄膜ガラスと接合させて中間層とすることができる。
【0031】
また、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板は、上述に加え、中間層に、ガラス、結晶化ガラス、金属及び炭素の群の内、1種以上により構成されてなる繊維状物、網状物、組布あるいは織布を含有してなるものであるならば、用途に応じて最適な構成を採用することによって、充分な剛性と強度を有するガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板とすることができ、多様なニーズに対応することが可能となる。
【0032】
上記のガラス、結晶化ガラス、金属及び炭素については、その材質については特に限定しない。例えばガラスについては、各種の多成分系ガラス、あるいは石英ガラスなどを使用でき、結晶化ガラスについても種々の結晶化ガラス材質が利用できる。また、金属やカーボンについても同様である。さらに繊維状物、網状物、組布あるいは織布については、その大きさや形状などについても限定されることはない。
【0033】
また、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板は、必要に応じて適所にレーザーやエッチング、サンドブラスト等を使用することによって材質コードや型番等をガラス表面に刻印することが可能である。
【0034】
また、本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板は、積層体を形成する際に予め成形した型材中に薄膜ガラスを押圧することによって、全体が湾曲した構造物としてもよい。
【0035】
また、使用目的に応じて本発明に従えば、ガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板の最外層の片面または両面に各種方法により被膜(機能性被膜)を積層した構造体を得ることができる。
【0036】
例えば、ガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板の一対の薄膜ガラスのうち、少なくとも一方の薄膜ガラスの積層体外方表面となる面には、反射防止処理を施こした軽量基板に有用な構造体とすることができる。したがって前記反射防止処理面が、前記軽量基板が備えられる表示装置の表示面側となるように配置されることによって、反射光による表示面のちらつきを防止することができる。
【0037】
前記機能性被膜としては、光学性能を付与する屈折率調整膜、不透過膜、反射防止膜や耐候性を向上させる保護膜、さらに導電膜、帯電膜等の導電性被膜を適宜採用することができる。これら被膜のうち、導電性被膜、半導体被膜、防眩性被膜(反射防止被膜)が特に好ましい。
【0038】
被膜の施工方法としては、化学蒸着法、物理蒸着法、スプレー法、ディッピング法、貼り付け法あるいは刷毛塗り法等を適宜使用することが可能である。
また、機能性被膜に半導体機能を有する被膜を用いた構造体は、太陽電池部材として特に有用である。
【0039】
本発明のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板(以下、単に『ガスバリア性に優れた軽量基板』ということがある)は、例えば、液晶部材、ディスプレイ部材、有機EL部材、電子ペーパー部材、照明部材、太陽電池部材などの各種部材に好適に用いられる。
【実施例】
【0040】
以下実施例にて詳述する。ただし、本発明は実施例に限定されない。
尚、実施例中の各物性値は下記測定法による。
【0041】
(表面粗さ(Ra値))
垂直分解能0.05nmの走査型プローブ顕微鏡(SPM)で測定した。
【0042】
(ガスバリア性評価:水蒸気透過率)
MOCON社製のパーマトランW1Aを用いて40℃、90RH%雰囲気下における水蒸気透過率を測定した。
【0043】
(薄膜ガラスの平均厚み)
(株)ミツトヨ社製の厚み計測器にて測定した。
[ガスバリア性に優れた軽量基板1の作成]
図1は、本発明の一実施例であるガスバリア性に優れた軽量基板1の構成を示す断面図である。図1に示すように、ガスバリア性に優れた軽量基板1は、一対の薄膜ガラス2および薄膜ガラス2a間に、前記薄膜ガラス2,2aより厚いポリビニルブチラール系中間層3を介在して形成される。
ガスバリア性に優れた軽量基板1は、以下に示す手順で作成される。厚さ3mmのソーダライムガラス板を支持体としてこの上に、以下に述べるそれぞれ20cm×20cmの大きさの部材が積層される。まず、オーバーフロー法で作成された表面粗さRa0.2nmで厚さ100μmの薄膜ガラス2が積層される。この上に接着性を有し、水洗、乾燥、裁断、調湿した厚さ400μmのポリビニルブチラールフィルム3が積層される。さらに、オーバーフロー法で作成された表面粗さRa0.2nmで厚さ100μmの薄膜ガラス2aを上にして設置される。
【0044】
このようにして、支持体上に積層されたガスバリア性に優れた軽量基板1は、ゴム袋の中に収納されて温度85℃、真空度550mmHgで25分間減圧加熱され、予備接着が行われる。次いで、前記ガスバリア性に優れた軽量基板1の端面にUV(紫外線)硬化型アクリル樹脂が塗布され、紫外線照射によって前記アクリル樹脂の硬化が行われる。これによってガスバリア性に優れた軽量基板1の端面が封止される。さらにガスバリア性に優れた軽量基板1は、オートクレーブで137℃、10kg/cm で25分間加圧され、同時にガスバリア性に優れた軽量基板1の端面に塗布されたUV硬化型アクリル樹脂の十分な硬化が行われる。
前記オーバーフロー法で作成された表面粗さRa0.2nmで厚さ100μmの薄膜ガラスは、日本電気硝子(株)製のガラスシートを使用し、前記ポリビニルブチラールフィルム3には、積水化学工業社製フィルムを使用した。
【0045】
[ガスバリア性に優れた軽量基板2の作成]
ガスバリア性に優れた軽量基板2のガラスは、日本電気硝子社製のオーバーフロー法で作成された表面粗さRa0.4nmで厚さ50μmの薄膜ガラスを2枚使用し、中間層の樹脂は帝人化成社製ポリカーボネートフィルム100μmを使用した。これを用いた軽量基板の作成手順は軽量基板1と同様である。ただし、ポリカーボネートとガラス基板との間にアクリル系の粘着剤(日本合成化学社製ポリエスターXI−1001)を塗布した。
【0046】
[ガスバリア性に優れた軽量基板3の作成]
ガスバリア性に優れた軽量基板3のガラスは、日本電気硝子社製のオーバーフロー法で作成された表面粗さRa0.3nmで厚さ100μmの薄膜ガラスを2枚使用し、中間層の樹脂は帝人化成社製ポリカーボネートシート300μmを使用した。ただしこのシートには、日本電気硝子社製ガラスファイバーSPF-60が約5%程含まれている。これを用いた軽量基板の作成手順は軽量基板1と同様である。ただし、ポリカーボネートとガラス基板との間にアクリル系の粘着剤(日本合成化学社製ポリエスターXI−1001)を塗布した。
【0047】
[ガスバリア性に優れた軽量基板4の作成]
ガスバリア性に優れた軽量基板4のガラスは、日本電気硝子社製のオーバーフロー法で作成された表面粗さRa0.2nmで厚さ50μmの薄膜ガラスを2枚使用し、中間層は、エポキシ系フィルム(3M社製TMフィルムAF-162−2)厚み200μmを使用した。その他の基板作成手順は「軽量基板1」と同様に行った。ただし、オートクレーブの加圧条件は、120℃、10kg/cm で60分間である。
【0048】
[基板5の作成]
基板5のガラスは従来のRa20nmで厚み300μmのガラス2枚を使用した。その他の基板作成手順は「軽量基板1」と同様に行った。
【0049】
[実施例1]
軽量基板1のガスバリア性を測定したところ、測定限界の1×10−2g/(m・day)以下のガスバリア性を示した。これを有機EL照明のバック基板として使用したところ5万時間以上の良好な耐久性を示した。ただし、有機EL照明は環境温度など大きく依存するため23℃の標準環境条件下でテストした。この条件は以下実施例、比較例においても同様である。
【0050】
[実施例2]
軽量基板2のガスバリア性を測定したところ、測定限界の1×10−2g/(m・day)以下のガスバリア性を示した。これを有機EL照明のバック基板として使用したところ5万時間以上の良好な耐久性を示した。
【0051】
[実施例3]
軽量基板3のガスバリア性を測定したところ、測定限界の1×10−2g/(m・day)以下のガスバリア性を示した。これを有機EL照明のバック基板として使用したところ5万時間以上の良好な耐久性を示した。
【0052】
[実施例4]
軽量基板4のガスバリア性を測定したところ、測定限界の1×10−2g/(m・day)以下のガスバリア性を示した。これを有機EL照明のバック基板として使用したところ5万時間以上の良好な耐久性を示した。
【0053】
[比較例1]
基板5を有機EL照明のバック基板として使用したところ、実施例1〜4に比べ約1.5倍から2倍程度重く、また、基板層内に非常に微細な気泡が入り、これが剥離の起点になり問題が発生した。
【0054】
[比較例2]
実施例1〜4の基板の代わりに厚み300μの帝人化成(株)製ポリカーボネートシートを用い、有機EL照明のバック基板とした場合、ダークスポトと呼ばれる非発光部が約10時間後に発生した。この原因の詳細は不明であるが、水分等の影響が作用しているものと考えられる。ちなみに、厚み300μのポリカーボネートシート単独のガスバリア性は12g/(m・day)である。
【0055】
最後に、ガスバリア性に優れる軽量基板1〜4は、有機EL照明以外にも高度なガスバリア性が必要な電気電子材用部材、例えば、液晶関連部品や太陽電池関連部品に用いるとこれまでにない良好な特性を付与することが出来る。
【符号の説明】
【0056】
1:ガスバリア性に優れた軽量基板
2:薄膜ガラス
2a:薄膜ガラス
3:ポリビニルブチラール系中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の薄膜ガラスと、それらに挟まれた、樹脂を主成分とする中間層からなり、水蒸気透過率が1×10−2g/(mday)以下であることを特徴とするガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板。
【請求項2】
前記薄膜ガラスのうち少なくとも1枚の平均厚みが5μm〜100μmの範囲である請求項1記載のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板。
【請求項3】
前記薄膜ガラスの平均厚みがそれぞれ5μm〜100μmの範囲であり、これら平均厚みの差が1μm未満である請求項1記載のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板。
【請求項4】
前記薄膜ガラスの平均厚みがそれぞれ5μm〜100μmの範囲であり、これら平均厚みの差が1μm以上、90μm以下である請求項1記載のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板。
【請求項5】
前記薄膜ガラスの平均厚みが5μm〜100μmの範囲であり、これら平均厚みの合計が中間層の厚みよりも薄い請求項1記載のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板。
【請求項6】
前記薄膜ガラスの平均厚みが5μm〜100μmの範囲であり、これら平均厚みの合計と中間層の厚みとの総計が3.0mm以下である請求項1記載のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板。
【請求項7】
前記薄膜ガラスの平均厚みが5μm〜100μmの範囲であり、これら平均厚みの合計と中間層の厚みとの総計が1.0mm以下である請求項1記載のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板。
【請求項8】
前記薄膜ガラスの平均厚みが5μm〜100μmの範囲であり、これら平均厚みの合計と中間層の厚みとの総計が0.5mm以下である請求項1記載のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板。
【請求項9】
中間層が熱可塑性樹脂を主たる構成成分とする請求項1〜8のいずれか1項記載のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板。
【請求項10】
中間層が熱硬化樹脂を主たる構成成分とする請求項1〜8のいずれか1項記載のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板。
【請求項11】
中間層が複数の樹脂層からなる請求項1〜8のいずれか1項記載のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板。
【請求項12】
前記複数の樹脂層の両最外層が、ガラスとの接着性または粘着性を有する樹脂を主たる構成成分とする請求項11記載のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項記載の薄膜ガラスが、オーバーフロー法により作られ、表面粗さ(Ra値)が1.0nm以下の平滑な表面を有するガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板。
【請求項14】
請求項13記載のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板を用いたディスプレイ部材。
【請求項15】
ディスプレイが有機ELである請求項14記載のディスプレイ部材。
【請求項16】
ディスプレイが電子ペーパーである請求項14記載のディスプレイ部材。
【請求項17】
請求項13記載のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板を用いた照明部材。
【請求項18】
照明光源に有機ELを用いた請求項17記載の照明部材。
【請求項19】
請求項13の記載のガスバリア性に優れ、かつ表面性に優れた軽量基板を用いた太陽電池部材。

【図1】
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【公開番号】特開2011−51278(P2011−51278A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203562(P2009−203562)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】