説明

ガスパージノズルのための透過性耐火材料

透過性の樹脂結合組成物が記載され、ガス噴射ノズルにおける多孔質エレメントとしてその有用性を見出す。この透過性組成物は、不透過性の樹脂結合組成物を金属容器の代わりに用いることを特徴とする、容器のない樹脂結合ガス噴射ノズルにおいて特に有用である。有利には、樹脂結合組成物は、酸素が溶鋼に達することができる前に酸素を排除するための酸素ゲッターを含む。ノズルの製造方法が記載され、それは、標準的な樹脂結合組成物を透過性の樹脂結合組成物の周りに共プレスすることを含む。プレスされた断片は、約800℃未満の温度で硬化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鋼の鋳造で使用するための耐火ノズル、詳しくは鋼/ノズル接触面における望ましくないアルミナ堆積物の蓄積を低減するのに不活性ガスを使用するノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼などの溶融金属の流れを制御するための耐火物が先行技術において公知である。このような耐火物には、ノズル、スライドゲートプレート、ストッパロッド及びシュラウドがあり、これらは、溶融金属の鋳造の際、溶鋼の流れを調節するのにしばしば組み合わせて用いられる。1970年代には、アルミキルド鋼が、その望ましい冶金特性のために製鋼産業の最も一般的な製品の1つとなった。
【0003】
残念ながら、鋳造の際には、アルミナなどの金属酸化物が、溶鋼と耐火物が接触する面に堆積して蓄積する。接触面には、例えば、ノズルの穴及び上面がある。穴に酸化物が堆積すると、最終的にはノズルを完全に閉塞させる場合がある。あるいはまた、上面に堆積物があると、ストッパロッドがもはやノズルの上面を封止してふさぐことができないので、溶鋼流の遮断が妨げられる場合がある。
【0004】
研究によって、酸素がノズル中の成分や溶鋼と反応すると、アルミナの堆積物が形成することが示された。溶鋼を酸素からシールドすることで望ましくない堆積物が効果的に低減される。シールドは、溶鋼を囲む耐火物に過剰圧力の不活性ガス、例えば、アルゴンを噴射することによって達成することができる。噴射によって、閉塞を生じさせるのに利用される酸素の分圧を下げる。
【0005】
不活性ガスの噴射を可能とするノズルアセンブリには、耐火物と金属容器がしばしば含まれる。耐火物は、通常、耐火モルタルで金属容器に固定される。この耐火物は、接触面上に複数の穴開口を含むガス供給システムを含むことができるか、又は接触面付近に多孔質のガス伝導性耐火エレメントを含むことができる。多孔質のガス伝導性耐火エレメントは、典型的には第2の耐火部材によって囲まれるか又はその中に埋め込まれる。ノズルアセンブリはまた、穴又は多孔質エレメントに不活性ガスを向けるノズルの中又はその外のチャンネル、溝又は装置を含むガス供給システムを含むことができる。このようなノズルの例としては、米国特許第4,360,190号明細書、同第5,100,035号明細書、同第5,137,189号明細書、及び同第5,723,055号明細書がある。
【0006】
金属容器は、不透過性バリアとして作用することができ、それにより酸素が耐火物に拡散する可能性を低減し、噴射された不活性ガスが耐火物から流出する。それゆえ、金属容器によって、酸素の低分圧を維持するのに必要なガスの量を少なくすることができる。残念ながら、それでもガスがノズルアセンブリから漏れる場合があり、依然として酸素がノズルアセンブリに紛れ込む可能性がある。金属容器と耐火ノズルとの接触面のモルタルは、ガスの拡散に対し透過性が非常に高い。熱膨張の差によってしばしば金属容器と耐火物の間にギャップが生じる。さらに、鋳造の際、金属容器は相当に劣化する。高温と機械的応力が組み合わさって金属容器においてかなりのクリープ及び塑性的挙動を引き起こす可能性がある。金属容器は穴をあけることができ、それにより耐火物の中に不活性ガスを含むことができなくなるか、又は溶融金属に酸素が吸い込まれるのを防ぐ。
【0007】
金属容器の周り又はそれを通って酸素が拡散することに加え、酸素はまた、不活性ガス中で汚染物質として存在する場合もある。不純な不活性ガスとガスフィードラインの漏れにより、相当な量の酸素が多孔質エレメントを通過するようになる可能性がある。酸素が先行技術の多孔質エレメントを容易に通過し、溶鋼と反応して堆積物が形成される場合がある。先行技術のエレメントは、典型的には炭素結合材料又は酸化物結合材料から成り、入ってくるガス流から酸素を除去しない。
【0008】
酸素から溶鋼を良好にシールドする耐火ノズルに関するニーズがある。先行技術のノズルは、依然として耐火物を通して溶鋼に酸素を拡散させる。金属容器は、溶鋼への酸素の拡散を完全には防がない。酸素は、依然として耐火物と金属容器の接触面に沿って透過し、鋳込温度で金属容器を通過することができる。さらに、「被覆加工」が製品コストに追加される。ノズルは、多孔質エレメントと同様の熱膨張係数を有するガス不透過性バリアを含むことが好ましい。シールドは、機械的手段と化学的手段の両方を含むことが有利である。多孔質エレメントは、不活性ガス中に存在するか又はバリアを透過できる全ての酸素を除去又は排除することがより好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、多孔質の樹脂結合組成物及び該組成物を含む耐火ノズルについて記載する。多孔質の樹脂結合組成物は、溶鋼流にさらされる面上に堆積物が蓄積するのを低減するために溶鋼の鋳造において使用することができる。この面は、樹脂結合ノズルの穴又は上部封止面を含む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
広い態様においては、透過性材料は、不活性ガスに対して透過性である多孔質の樹脂結合組成物を含む。透過性は、例えば、材料における粒度、成形圧力、不堅牢(fugitive)添加剤の含量、又は掘削孔を調整することによって制御することができる。組成物は、耐火性凝集体、バインダー及び酸素ゲッターを含む。酸素ゲッターは、反応性金属及び幾つかのホウ素化合物を含む。耐火性凝集体は、任意の好適な耐火材料、例えば、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、カルシア、それらの混合物及び配合物を含む。硬化組成物は、少なくとも50cDの透過性を保持する。
【0011】
1つの実施態様は、+80メッシュ以上の粒度を有する凝集体を少なくとも約60wt%、+325〜−80メッシュの粒度を有する凝集体を20wt%未満、及び−325メッシュ未満の粒度を有する凝集体を20wt%未満含む粒状の耐火性混合物から作製された透過性材料を含む。
【0012】
透過性材料は、溶鋼を酸素から保護するために多孔質エレメントとして耐火物中に含むことができる。多孔質エレメントは、溶鋼流に又はその周囲に不活性ガスを導入できるよう配置される。あるいはまた、多孔質エレメントは、残留酸素によって堆積物の蓄積が生じることがないように不活性ガスから酸素を排除する酸素ゲッターを含む。
【0013】
不透過性材料が多孔質エレメントを実質的に取り囲むことによって、耐火物中に不活性ガスを含有し、不活性ガスを多孔質エレメントに及びそれを介して溶鋼へ向ける。好都合には、透過性組成物の多孔性を調節し、溶鋼への不活性ガスの拡散を調節することができる。あるいはまた、多孔性とともに、ガス供給システム、例えば、チャンネル、溝又は装置によって、透過性材料を通る不活性ガスの供給及び拡散を促進させることができる。
【0014】
1つの実施態様においては、透過性材料は、樹脂結合ガス不透過性組成物と共プレスされて耐火物が形成される。不透過性組成物を用いることにより金属容器を排除することができ、それによって製造コストを節約し、容器と耐火物との間の透過性接触面を排除する。金属容器とは異なり、不透過性組成物は、透過性組成物と同様の熱膨張係数を有し、鋳込温度で劣化しない。
【0015】
本発明の方法は、透過性組成物の周りに不透過性組成物を共プレスすることを含む。樹脂結合を生成するのに十分な時間、約150℃、好ましくは約200℃よりも高い温度で組成物を加熱し、炭素結合組成物や酸化物結合組成物とは異なり、酸素ゲッターの早期の反応を避ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、透過性の樹脂結合組成物、及び溶融金属の流れにガスを噴射するのに使用できる組成物を含む容器のない樹脂結合耐火ノズルについて記載する。樹脂結合組成物とは、800℃未満の温度、通常は500℃未満の温度で硬化するプレスされた粒状組成物を意味する。対照的に、炭素結合材料及び酸化物結合材料は、非常により高温での硬化を必要とする。炭素結合材料は、800℃を超える温度しばしば1000℃を超える温度で還元性雰囲気において焼成される。酸化物結合材料はさらに高温で焼成される。
【0017】
有利には、低い硬化温度で種々の有益な化合物を添加及び保持することができる。例えば、反応性金属、例えば、アルミニウム及びマグネシウムは、高温で酸化するか又は炭化物を形成するが、樹脂結合硬化の際にはその元素状態のままである。残念ながら、樹脂結合組成物は、ガスに対して典型的に不透過性であり、ガス噴射ノズルのための多孔質エレメントとして使用するよう改良することができない。透過性は、ASTM規格C−577に従って測定され、それは、試験すべき材料の2インチ立方体を形成すること、3〜6psiの背圧を適用すること、及び立方体を通る流量を測定することを伴う。
【0018】
鋼の連続鋳造における耐火物の予備加熱に対応する1000℃の温度にさらした後、樹脂結合組成物は、しばしば約15cD未満の透過性を有する。より一般的には、透過性は5cD未満である。多孔質エレメントは少なくとも約50cDの透過性を有するべきである。
【0019】
本樹脂結合透過性組成物は、耐火性凝集体、バインダー及び酸素ゲッターを含む。耐火性凝集体は、任意の好適な耐火材料、例えば、アルミナ、ジルコニア、カルシア、それらの混合物及び配合物を含む。好ましくは、高温で揮発性酸化物を生成する化合物、例えば、シリカ及びマグネシアは制限されるべきである。
【0020】
透過性組成物は、少なくとも約50cDの透過性、少なくとも約15%の多孔性、及び少なくとも約5μmの中間細孔サイズを有する樹脂結合組成物を含む。好ましくは、透過性は100cDよりも高く、多孔性は20%を超え、中間細孔サイズは100μmを超える。対照的に、標準的な樹脂結合組成物は、25cD未満の透過性、9〜14%の多孔性、及び2〜4μmの中間細孔サイズを含む。それと比較して、タールを含浸した炭素結合組成物は、10cD未満の透過性、20%未満の多孔性、及び約1μmの中間細孔サイズを含む。
【0021】
透過性は、プレス、粒度分布、不堅牢添加剤、掘削、及び化学組成物を個々に又はそれらを組み合わせたものを含め、様々な方法によって変えることができる。理論的には、プレスの圧力を単に1000〜3000psiに低下するだけで透過性が向上するが、物理的性質、特に耐浸食性及び耐腐食性が相当に低下する可能性がある。不堅牢添加剤は、鋳込温度未満で揮発、溶融又は分解する材料を含み、ワックス及び当業者に公知の他の有機材料を含む。不堅牢添加剤は、加熱によって透過性を向上させる。ここで加熱とは、材料を硬化すること又は硬化した材料を使用中に若しくはその直前に二次的に加熱することを意味する。レーザーを用いて材料に小さな穴を開け、それにより材料中にガス用チャンネルをつくることもできる。様々な化学物質によってガスの形成を誘発し、それにより材料中に細孔を生成することができる。他の化学物質、例えば、フラックスによって多孔性を低下させることができる。
【0022】
好ましくは、透過性は、耐火性凝集体の粒度分布によって調節される。この分布は、大多数の大きな粒度の凝集体と、大きな凝集体間の隙間を完全には満たさない小さな粒度の凝集体とを含む。より小さな粒度の凝集体は、大きな凝集体の隙間のサイズの少なくとも約3分の1、好ましくは2分の1であるべきである。さらにより小さな粒度を有する第3の凝集体を加えて、多孔性を微調整するか、処理を促進させるか又は硬化した物の強度を改善することができる。1つの実施態様においては、好適な粒度分布は、+80メッシュ以上の粒度を有する凝集体を少なくとも約60wt%、+325〜−80メッシュの粒度を有する凝集体を20wt%未満、及び−325メッシュ未満の粒度を有する凝集体を20wt%未満含む。
【0023】
硬化性樹脂バインダーは、プレス及び硬化後に十分なグリーン強度を達成する量で存在すべきである。プレスは、優れた耐浸食性及び耐腐食性を達成するために、通常は少なくとも約3000psiである。樹脂結合組成物の硬化は、典型的に約300℃以下で行われる。更なる強度のため、組成物は、約800℃未満、最も好ましくは約500℃未満の温度で熱処理することができる。透過性は高温で変化する場合があるため、熱処理の際には注意しなければならない。バインダーの量は、例えば、使用されるバインダーのタイプや所望のグリーン強度に応じて変わる。十分な量のバインダーは、典型的には1〜10wt%である。典型的には、バインダーは有機物であり、通常、バインダーは、炭素系樹脂、例えば、フェノール樹脂、ピッチ若しくは樹脂から得られる炭素質バインダー、デンプン又はリグノスルホン酸塩である。
【0024】
ガス不透過性組成物はまた酸素ゲッターを含む。酸素ゲッターは、ガス不透過性組成物に拡散するか又はその中で形成される酸素と反応し、それにより溶鋼に利用されない酸素をつくる。一般的な酸素ゲッターには、例えば、ホウ素化合物、炭化物、窒化物、並びに反応性金属粉末、例えば、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、それらの混合物及び合金がある。ホウ素化合物は、特に有効な酸素ゲッターであり、元素ホウ素、窒化ホウ素、炭化ホウ素、及びそれらの混合物を含む。ホウ素化合物をフラックスとして作用させ、それによって多孔性を低下させることができるので、その使用は注意深く制限されなければならない。
【0025】
必要とされる酸素ゲッターの量は、耐火物が置かれる特定の用途に依存している。最低0.25wt%が、耐酸化性の明示可能な改善を示すのに必要と考えられる。あるいはまた、15wt%を超える量は高価で、典型的には不要であり、反応性金属粉末を用いる場合などは危険でさえあり得る。さらには、酸素ゲッターは、耐火物の耐熱衝撃性及び耐浸食性を低下させる場合がある。
【0026】
好ましい酸素ゲッターには、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、チタン、それらの混合物及び合金を含む反応性金属がある。好都合には、反応性金属は、粉末、フレークなどとして添加される。溶鋼を鋳造する際、耐火物に拡散するか又はそれから放出される場合のある如何なる酸素も反応性金属によって除去されるように、反応性金属は十分な量で存在すべきである。様々な因子が、酸素を除去するのに十分な反応性金属の量に影響を及ぼす。例えば、シリカなどの酸素放出化合物を含む場合には、放出される酸素を除去するためにより高い含量の反応性金属が必要である。反応性金属の量に関する制限にはコストや危険性がある。反応性金属は耐火性凝集体よりも一般に高価であり、特に粉末としては、反応性金属は処理の際に爆発の可能性がある。反応性金属の典型的な量は5〜12wt%である。
【0027】
耐熱衝撃性を改善するため、黒鉛を透過性の樹脂結合組成物に添加することができる。好ましくは、黒鉛の含量は約10wt%以下である。黒鉛はアルミナの堆積と関連があるため、黒鉛の量は必要な程度に保つべきである。
【0028】
本発明のノズルは、不透過性エレメント、例えば、金属容器又は不透過性の耐火性組成物で囲まれた多孔質の樹脂結合エレメントを含む。ノズルとは、ウェルノズル、サブエントリノズル、サブエントリシュラウド及び捕集ノズルなどのレードル及びタンディッシュノズルを含め、溶融金属の流れを導くのに用いられる任意の耐火物を意味する。
【0029】
図1は先行技術のノズル1を示す。多孔質エレメント2は、ノズル1の内面3の少なくとも一部を形成し、ノズル1の穴4に不活性ガスを供給するのに適合している。穴4は、ノズル入口5からノズル出口6に鋼を運ぶのに適合している。多孔質エレメント2は、第2の耐火材料を含むノズル本体7によって少なくとも部分的に囲まれている。耐火エレメントが、金属容器8内に少なくとも部分的にモルタルでつながれる。鋳造の際、導管9からノズル1に不活性ガスが供給される。不活性ガスは、ノズル1内の又はそれを囲むチャンネル、溝、又は装置の組み合わせを通過することもできる。
【0030】
多孔質エレメント2は、比較的開放された細孔構造と、少なくとも約50cDの、より頻繁には150cDを超える透過性とを有する酸化物結合又はリン酸塩結合材料を典型的に含む。典型的な多孔質エレメントには、酸化物結合マグネシア、アルミナ−クロム、又は高アルミナ組成物がある。第2の耐火材料は、通常、炭素結合耐火物又はキャスタブル耐火物である。キャスタブル耐火物は、水を添加し、続いて硬化した粒状材料を含む。例としては、水と反応して硬質生成物を形成する水和性化合物、例えば、カルシアを含む耐火物がある。金属容器8は、ガスの漏れ又は酸素の進入を防ぐガス不透過性バリアであることを意図される。
【0031】
炭素結合であるか、キャスタブルであるかに関係なく、第2の材料は、多孔質エレメントを含むほどには多孔質でないが、不活性ガスの漏れ及び酸素の進入を許すほどには多孔質である。酸素が溶鋼と接触する機会は他にも多数ある。ノズル本体7と金属容器8の間のモルタル接合10は、しばしば多孔質であり、容易に酸素を拡散させる。ノズル7、金属容器8又は導管との間の熱膨張の差によってクラッキングが生じる場合もある。酸素がこれらのクラックに沿って溶鋼に流れることがある。酸素はまた、ガス中のわずかな不純物としてか又は供給システムの漏れによって不活性ガスフィードを汚染する場合もある。
【0032】
図2で示されるように、本発明の1つの実施態様は、多孔質の樹脂結合組成物を含む多孔質エレメント2を含むノズル1である。多孔質エレメント2は、実質的に不透過性の材料を含むノズル本体7によって少なくとも部分的に囲まれている。不透過性材料は、金属容器を含むことができるが、図2に示すように、不透過性材料は、第2の樹脂結合組成物を含むことができる。第2の樹脂結合組成物は、ガスに対して実質的に不透過性であり、先行技術の金属容器の代わりとなる。有利には、モルタル接合は不要であり、不透過性耐火物は鋳込温度で劣化しない。他の実施態様においては、ノズル本体は、透過性材料と、さらには、不透過性材料がノズル本体の外面を実質的に形成するという条件で多孔質の樹脂結合組成物とを実質的に含むことができる。好都合には、不透過性材料は金属容器を含み、ノズルの残りの部分は、本質的には耐火性セラミック材料から成る。耐火性セラミック材料は、複数のセラミック成分を含むことができるか、又は単に多孔質エレメントから成ることができる。有利には、後者の実施態様は、単一の処理工程、単一の硬化工程、及び単一の鋳造工程によって容易に製造される。
【0033】
ノズルの不透過性材料は、約15cD未満、好ましくは5cD未満の透過性を有するべきである。当業者であれば、様々な不透過性セラミック材料又は金属材料、及び様々な化学的及び機械的手段による不透過性セラミック材料の複数の生成方法を知っている。例えば、フラックス、上薬、粒度分布、結合システム、耐火物の組成、及び処理条件は、個々に及び組み合わせて透過性に作用することができる。フラックスは、低温相をもたらし、ガラス化を促進する。上薬は、耐火物の表面に不透過性のコーティングを生成する。耐火性凝集体の粒度分布は、完成品の多孔性に実質的に作用し、最終的に透過性に作用する。処理条件、例えば、焼成温度やプレスは、透過性に重大な影響を有する。耐火物の化学組成及び結合システムも同様に、透過性に実質的に作用する。
【0034】
不透過性組成物は、樹脂結合組成物を含むことが好ましい。不透過性組成物は、少なくとも1つの耐火性凝集体、硬化性樹脂バインダー及び反応性金属を含む。耐火性凝集体は、鋼の鋳造に好適な任意の耐火材料を含み、アルミナ、マグネシア、カルシア、ジルコニア、シリカ、それらの配合物及び混合物を含むがそれらに限定されない。典型的な不透過性組成物は、耐火性凝集体を50〜90wt%、バインダーを1〜10wt%、及び反応性金属を0.5〜15wt%含む。より好ましくは、不透過性組成物は、溶融アルミナを65〜80wt%、焼成アルミナを2〜30wt%、バインダーを1〜10wt%、アルミニウム金属を0.5〜10wt%、ジルコニアを最大15wt%、及びシリカを3wt%未満含む。黒鉛は、処理又は耐熱衝撃性のために添加することができ、好都合には0.5〜10wt%のレベルで添加される。
【0035】
ガス供給システムは、耐火ノズル中のガスの輸送を向上させることができる。このようなシステムは、耐火物中又はその表面にチャンネル、溝又は装置を含む。この装置は、その長さに沿ってガスの均一な分布を可能にするため穴を開けることができる。チャンネルは、耐火物にプレス又は鋳造されたワックス又は他の低融点材料を焼き尽くすことによってしばしば生成される。
【0036】
本発明の方法は、透過性組成物、例えば、透過性組成物をプレス又は押し出し、硬化して多孔質エレメントを形成することなどによって透過性組成物を形成することを含む。硬化は、約800℃未満、好ましくは約500℃未満、最も好ましくは300℃以下の温度で行われる。低硬化温度によって、酸素ゲッターが樹脂結合組成物中に保持される。次いで、不透過性組成物が多孔質エレメントの実質的に全周に置かれ、完成した耐火物が形成される。複数の焼成又は被覆加工工程が回避される。1つの実施態様においては、透過性組成物を不透過性組成物で共プレスし、プレスされた断片を形成する。それを硬化して完成したノズルを形成する。共プレスは、耐浸食性及び耐腐食性を含め十分な機械強度を確実にするため、3000psiを超える圧力で最も頻繁に行われる。この実施態様では先行技術と異なり、金属容器や高温の焼成が不要である。
【実施例】
【0037】
[例1]
表1に示すように、透過性樹脂結合組成物(A)の透過性を、3つの先行技術の組成物(B〜D)の透過性と比較した。組成物Aは、アルミナ凝集体に基づいた透過性樹脂結合材料を含んでいた。組成物Bは、標準的な不透過性樹脂結合材料であった。組成物Cは、標準的な透過性酸化物結合マグネシアであった。組成物Dは、標準的な焼成炭素結合耐火物であった。樹脂結合組成物は200℃で硬化した。酸化物結合材料は、1000℃を超える温度で4時間以上焼成した。炭素結合組成物は、還元性雰囲気において800℃を超える温度で4時間以上焼成した。透過性は、ASTM規格C−577に従って測定した。透過性樹脂結合材料の透過性は、標準的な樹脂結合材料と炭素結合材料を大きく上回り、酸化物結合マグネシアと好意的に匹敵するものであった。
【0038】
【表1】

【0039】
[例2]
表2は、様々な耐火性組成物の酸素排除容量を示す。排除容量は、試料をアルゴン中1200℃に加熱すること、試料を1200℃で空気にさらすこと、及び試料を計量することによって測定される。質量の増加は、試料による酸素の吸収を示し、試料中の成分と酸素が反応して酸化物が生成されることを典型的に意味する。試料A〜Cは、(A)本発明の透過性樹脂結合材料、(B)不透過性樹脂結合材料、及び(C)焼成された酸化物結合マグネシア組成物を含む。試料Aの透過性樹脂結合材料は、試料Bよりも常に相当により多くの酸素を吸収し、3時間後でさえより速く酸素を吸収し続けた。試料Cの焼成された酸素ゲッターなしの耐火物は酸素を全く吸収しなかった。
【0040】
【表2】

【0041】
明らかに、本発明の多くの改良及び変更が可能である。それゆえ、特許請求の範囲内において、本発明は具体的に記載された以外の方法で実施することができると解されるべきである。本発明は、幾つかの好ましい実施態様に関して記載したが、本発明に対する様々な変形態様、改良及び追加は当業者にとって明白であろう。全てのこのような改良、変更及び追加は、本特許の範囲内に包含されることを意図し、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】先行技術の耐火ノズルの断面を示す。
【図2】本発明の耐火ノズルの断面を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約50cDの透過性を有する透過性材料であって、樹脂結合されかつ
a)耐火性凝集体と、
b)少なくとも1つの酸素ゲッターを0.5〜15wt%と、
c)十分な量のバインダーと
を含む組成物から作製されたことを特徴とする、透過性材料。
【請求項2】
前記耐火性凝集体が、前記組成物の少なくとも80wt%を含み、
a)+80メッシュ以上の粒度を有する凝集体を少なくとも約60wt%、
b)−80〜+325メッシュの粒度を有する凝集体を20wt%未満、及び
c)−325メッシュ未満の粒度を有する凝集体を20wt%未満
含むことを特徴とする、請求項1に記載の透過性材料。
【請求項3】
前記耐火性凝集体が、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、カルシア、それらの混合物及び配合物から成る群より選択された少なくとも1つの酸化物を含むことを特徴とする、請求項2に記載の透過性材料。
【請求項4】
前記酸素ゲッターが、ホウ素化合物、炭化物、窒化物、及び反応性金属から成る群より選択された少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の透過性材料。
【請求項5】
前記反応性金属が、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、チタン、それらの混合物及び合金から成る群より選択されたことを特徴とする、請求項4に記載の透過性材料。
【請求項6】
前記バインダーが、フェノール樹脂、炭素質バインダー、デンプン及びリグノスルホン酸塩から成る群より選択されたことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の透過性材料。
【請求項7】
前記組成物が、前記透過性材料を加熱する際に、透過性を向上させることができる不堅牢(fugitive)添加剤を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の透過性材料。
【請求項8】
前記不堅牢添加剤が、有機化合物を含むことを特徴とする、請求項7に記載の透過性材料。
【請求項9】
前記透過性材料によって溶融金属の鋳造で使用する耐火ノズルの内面を少なくともライニングし、該ノズルが、入口、出口、外面、該入口と該出口を流動的に接続する穴を画定する内面、及び該入口を囲む上面を含み、不活性ガスの流れを受け入れるよう適合され、前記透過性組成物の少なくとも一部を囲む不透過性材料を含み、該外面を通してガスが拡散するのを実質的に防ぐことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の透過性材料。
【請求項10】
前記不透過性材料が、金属及び不透過性耐火性組成物から成る群より選択されたことを特徴とする、請求項9に記載の透過性材料。
【請求項11】
前記不透過性耐火性組成物が、耐火性凝集体を50〜90wt%、バインダーを1〜10wt%、及び反応性金属を0.5〜15wt%含む組成物から作製されたことを特徴とする、請求項9又は10に記載の透過性材料。
【請求項12】
前記不透過性組成物が、溶融アルミナを65〜80wt%、焼成アルミナを2〜30wt%、バインダーを1〜10wt%、アルミニウム金属を0.5〜10wt%、ジルコニアを最大15wt%、及びシリカを3wt%未満含むことを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1項に記載の透過性材料。
【請求項13】
前記ノズルが、不活性ガスの供給システムを含むことを特徴とする、請求項9〜12のいずれか1項に記載の透過性材料。
【請求項14】
前記ガス供給システムが、チャンネル、溝及び装置から成る群より選択されたことを特徴とする、請求項13に記載の透過性材料。
【請求項15】
前記ノズルが、
a)前記透過性材料であるよう適合された第1組成物を型のマンドレルの周りに置くこと;
b)前記不透過性組成物であるよう適合された第2組成物を該第1組成物の少なくとも部分的周囲に置くこと;
c)該第1組成物と該第2組成物を少なくとも約3000psiの圧力で一緒にプレスして未処理断片を形成すること;
d)該未処理断片を800℃未満の温度で硬化してノズルを形成すること
によって作製されることを特徴とする、請求項9〜14のいずれか1項に記載の透過性材料。
【請求項16】
前記第1組成物が、
a)+80メッシュ以上の粒度を有する凝集体を少なくとも約60wt%、−80〜+325メッシュの粒度を有する凝集体を20wt%未満、及び−325メッシュ未満の粒度を有する凝集体を20wt%未満含む耐火性凝集体を少なくとも80wt%と、
b)少なくとも1つの酸素ゲッターを0.5〜15wt%と、
c)十分な量のバインダーと
を含むことを特徴とする、請求項15に記載の透過性材料。
【請求項17】
前記第2組成物が、
a)耐火性凝集体を50〜90wt%、
b)バインダーを1〜10wt%、及び
c)反応性金属を0.5〜15wt%
含むことを特徴とする、請求項16に記載の透過性材料。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−503153(P2006−503153A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544865(P2004−544865)
【出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/032427
【国際公開番号】WO2004/035249
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(500573370)ベスビウス クルーシブル カンパニー (23)
【Fターム(参考)】