説明

ガス中の不純物定量方法及び装置

【課題】不純物ガス濃度がきわめて微量であっても、不純物ガス濃度を正確に測定することのできるガス中の不純物定量方法及び装置を提供する。
【解決手段】ガスから不純物を除去してセル15に導入し、そのセル15を透過した光の光強度をリファレンスとして測定する。既知の濃度の不純物を含むガスを同一セル15に導入して、同一温度、同一圧力に保って、セル15を透過した光の光強度を測定し、前記2つの測定で得られた光強度の比から不純物の吸光度を求める。この不純物の吸光度を、不純物の濃度の関数としてメモリ20aに記憶しておく。濃度が未知の不純物を含むガスを同一体積のセル15に導入して、同一温度、同一圧力に保って、セル15を透過した光の光強度を測定し、この測定で得られた不純物の、前記リファレンスに対する吸光度を求め、この吸光度を前記関数に適用して、不純物の濃度を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス中に混入した不純物の濃度を定量する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
赤外分光光度計を用いたガス中の不純物定量方法において、微量の不純物ガスの濃度を測定する場合、主成分ガスの赤外吸収ピークが、微量ガス成分の赤外吸収ピークを妨害し、測定が極めて困難であった。
そこで、アンモニアガス中の微量水分濃度を、アンモニアと水分の赤外吸収が重ならない波数で測定する方法が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001-228085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記のアンモニアと水分の赤外吸収が重ならない波数で測定する方法でも、不純物ガス濃度がきわめて微量の場合、不純物ガスの赤外吸収スペクトルが、赤外吸収スペクトルに埋もれてしまい、不純物ガス濃度の測定が困難となる。
そこで、本発明は、不純物ガス濃度がきわめて微量であっても、不純物ガス濃度を正確に測定することのできるガス中の不純物定量方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のガス中の不純物定量方法は、前記ガスから不純物を除去して、セルに導入して、そのセルを透過した光の光強度を測定し、既知の濃度の不純物を含むガスを同一体積のセルに導入して、前記測定と同一温度、同一圧力に保って、セルを透過した光の光強度を測定し、前記測定で得られた光強度どうしを割って、不純物の吸光度を求め、この不純物の吸光度を、不純物の濃度の関数として記憶しておき、濃度が未知の不純物を含むガスを同一体積のセルに導入して、前記測定と同一温度、同一圧力に保って、セルを透過した光の光強度を測定し、前記測定で得られた光強度どうしを割って、不純物の吸光度を求め、この吸光度を前記関数に適用して、不純物の濃度を求める方法である。
【0005】
この方法によれば、不純物ガスが除去された試料ガスの吸収光強度をリファレンス測定し、既知の濃度の不純物ガスを含む試料ガスを同一温度、同一圧力、同一体積という条件のもとに置いて、その吸収光強度を測定する。そして、これらの光強度比(対数にした場合は差)を算出して、不純物の吸光度を求め、不純物の濃度の関数として記憶しておく。次に、未知の濃度の不純物ガスを含む試料ガスを同一温度、同一圧力、同一体積という条件のもとに置いて、その吸収光強度を測定する。不純物の吸光度を求め、前記記憶した関数に適用すれば、不純物の濃度を求めることができる。
【0006】
したがって、試料ガスの影響が除かれた、不純物のみの濃度を正確に測定することができる。
また、本発明のガス中の不純物定量装置は、前記ガス中の不純物定量方法を実施するための装置であって、ガスを導入するためのセルと、セルに光を照射する光源と、セルを透過した光の強度を測定する検出器と、前記セルを一定温度に保つ保温手段と、前記セル内のガスを所定の圧力に調整する圧力調整手段と、不純物濃度を測定したい試料ガスをセルに導入するための第一のガス導入系と、既知の濃度の不純物を含むガスをセルに導入するための第二のガス導入系と、第一のガス導入系に設けられた、試料ガスから不純物を除去するための不純物除去器と、不純物除去器によって不純物を除去した前記ガスをセルに導入して、セルを透過した光強度を測定する第一の光強度測定手段と、既知の濃度の不純物を含むガスを前記セルに導入して、セルを透過した光強度を測定する第二の光強度測定手段と、前記第一の光強度測定手段の測定で得られた光強度から、前記第二の光強度測定手段の測定で得られた光強度を割って、不純物の吸光度を求め、この不純物の吸光度を、不純物の濃度の関数として記憶しておく記憶手段と、濃度が未知の不純物を含むガスを前記セルに導入して、セルを透過した光強度を測定する第三の光強度測定手段と、前記第一の光強度測定手段の測定で得られた光強度から前記第三の光強度測定手段の測定で得られた光強度を割って、不純物の吸光度を求め、この不純物の吸光度を前記記憶手段によって記憶された関数に適用して、不純物の濃度を求める濃度測定手段とを備えるものである。
【0007】
このガス中の不純物定量装置は、前記ガス中の不純物定量方法と同一発明に係る装置であり、簡単な手順で、試料ガスの影響が除かれた、不純物のみの濃度を正確に測定することができる。
前記光源、前記検出器は、別々に気密性容器に収納することが好ましい。こうすれば、前記気密性容器を容易に真空にでき、前記不純物の吸収スペクトルの波長範囲に吸収を示さないガスで満たすことができる。これにより、前記光源や検出器の汚染を防ぐことができるので、測定される不純物スペクトルは、汚染の影響を受けることがなくなる。したがって、測定誤差が発生するのを防ぐことができる。
【0008】
前記第1の気密性容器と前記セルとのジョイント部は、前記セルを外した状態で、前記第1の気密性容器の気密性を保つことができるものであり、前記第2の気密性容器と前記セルとのジョイント部は、前記セルを外した状態で、前記第2の気密性容器の気密性を保つことができるものであることが好ましい。この構造によれば、気密性容器の気密性を保ったままセルを容易に交換することができる。
【0009】
前記光源又は検出器に電源を供給する電源部は、前記第1の気密性容器及び前記第2の気密性容器の外部に設置されていることが望ましい。これにより、発熱源である電源部からの放熱の効率が低下するのを防ぐことができる。
また本発明は、前記第一の光強度測定手段、第二の光強度測定手段、記憶手段、第三の光強度測定手段、及び濃度測定手段の各機能を実現するコンピュータを備え、前記コンピュータは、前記第1の気密性容器及び前記第2の気密性容器の外部に設置されていることが望ましい。この場合も、この場合も前記電源部と同様、コンピュータからの放熱の効率が低下するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、不純物を取り除いた試料ガス(リファレンス)の光強度を測定するための測定系を示す図である。
同図において、試料ガスの入った試料ボンベ11は、ガスの流量を調節するマスフローコントローラ12、不純物を取り除くための不純物精製器13及び開閉バルブ14を通して、ガスセル15のガス入口INにセットされる。この経路を第一のガス導入系という。
【0011】
一方、ガスセル15のガス出口OUTには調整バルブ16、負圧を作るバキュームジェネレータ17(圧力エジェクタでもよい)がつながれている。バキュームジェネレータ17には、空気又は窒素の高圧ガスボンベ25が接続されている。
ガスセル15は、図1に示すように、筒状の一定容積のセル室15aと、このセル室15aの両端面に設けられた光透過窓15b,cとからなっている。セル室15aには、前記ガス入口IN及びガス出口OUTが設けられ、さらにセル室15a内の圧力を測定するための圧力トランスデューサ18につながるポートが設けられている。
【0012】
前記マスフローコントローラ12、調整バルブ16及び圧力トランスデューサ18は、圧力制御部19に接続されている。圧力制御部19は、圧力トランスデューサ18の圧力測定値に基づいて、試料ガスの流量と調整バルブ16の開閉度を調整することにより、ガスセル15内の圧力を所定の圧力に保つ。
前記光透過窓15b,cは、例えば赤外線を透過させるサファイヤ透過窓である。
【0013】
前記ガスセル15は、所定温度に保ちやすいように、発泡スチロール等の断熱材(図示せず)で包囲されている。またガスセル15の全体は、後述する赤外線光源G、分光器あるいは干渉計S、赤外線検出器Dとともに、保温容器(図示せず)に収納されている。保温容器内は、ヒータ又はペルチェ素子などにより一定温度に保たれる。
符号Gは、赤外線光源Gを示す。赤外線発生の方式は、任意のものでよく、例えばセラミックスヒータ(表面温度450℃)等が使用可能である。また、赤外線の波長を選択するための分光器あるいは干渉計Sが設けられている。なお、赤外線光源Gで発生した光を一定周期でしゃ断し通過させる回転するチョッパ(図示せず)を付加してもよい。
【0014】
赤外線光源Gから照射され、前記光透過窓15cを通してガスセル15に入った光は、前記光透過窓15bを通してガスセル15から出射され、赤外線検出器Dによって検出される。前記赤外線検出器Dは、DtGs検出器(重水素トリグリシンサルフェイト検出器)、InAs検出器又はCCD素子などからなる。
赤外線検出器Dの検出信号は、吸光度/濃度測定部20により解析される。この解析方法は後述する。
【0015】
なお、圧力制御部19及び吸光度/濃度測定部20は、パーソナルコンピュータから構成される。圧力制御部19、吸光度/濃度測定部20の処理機能は、CD−ROMやハードディスクなど所定の媒体に記録されたプログラムを、パーソナルコンピュータが実行することにより実現される。また、吸光度/濃度測定部20に接続されるメモリ20aは、ハードディスクなどの記録媒体内に作られた、書き込み可能な設定ファイルにより実現される。
【0016】
以上の測定系において、試料ボンベ11に蓄えられた試料ガス(例えばアンモニアガス)は、不純物精製器13の中の不純物吸収剤(例えばシリカゲルのような水分を吸収する薬品)によって、不純物(例えば水分)が除去され、ガスセル15の中に導かれる。
ガスセル15の中は、圧力トランスデューサ18により圧力測定されている。そしてこの圧力測定値が目標値になるように、前記圧力制御部19により、前記マスフローコントローラ12及び前記調整バルブ16の制御が行われる。このフィードバック制御によって、ガスセル15の中は、最終的に所望かつ一定の圧力に保たれる。この圧力を"Ps"と表記する。
【0017】
この状態で、前記赤外線光源Gから光を照射し、前記分光器あるいは干渉計Sをスペクトル走査させて、前記赤外線検出器Dによって、ガスセル15を透過した光の強度を読み取る。このようにして、ガスセル15に満たされた不純物の除かれた試料ガスの光強度のスペクトル強度を測定することができる。例えばアンモニアガスを試料ガスとし、不純物を水とした場合、水分が除去されたアンモニアガスの光強度スペクトルが得られる。
【0018】
このようにして得られる、不純物の除かれた試料ガスの光強度のスペクトルは、光源Gの光量変動、検出器の感度変動などを補正するために役立つ。
図2は、検量線を作成するための、既知濃度の不純物を含む標準試料ガスを測定するための測定系を示す図である。
試料ボンベ11から試料ガスを供給する系、ガスセル15からガスを排出する系は、図1の構成と同じものを用いる。また、スペクトルの測定をする光学測定系も図1の構成と同様である。
【0019】
図1と異なるところは、濃度既知の不純物ガスの入った不純物ボンベ21と、マスフローコントローラ22と、バルブ23からなる系を設けて、不純物ガスをガスセル15内に導入可能にしたことである。この経路を第二のガス導入系という。
以上の測定系において、試料ボンベ11に蓄えられた試料ガス(例えばアンモニアガス)を、不純物精製器13を通して、マスフローコントローラ12によって流量を制御しながら、ガスセル15の中に導入する。ガスセル15の温度は図1の測定時の温度と同一とする。これと同時に、不純物ボンベ21蓄えられた濃度既知の不純物ガス(例えば水蒸気)を、マスフローコントローラ22によって流量を制御しながら、ガスセル15の中に導入する。
【0020】
2つのマスフローコントローラ12,22の流量の比を調整することにより、不純物ガスと試料ガスとの分圧比rを任意に設定することができる。試料ガスの圧力Psに対して、設定される不純物ガスの分圧をPiと書く。Pi=rPsである。
試料ガスと不純物ガスとの合計の圧力が、(Pi+Ps)になるように、圧力制御部19により、前記マスフローコントローラ12,22及び前記調整バルブ16の制御を行う。
【0021】
なお、Piは、一般にPsよりも3桁も4桁も小さな値であるので、実際にはPiを無視して、試料ガスと不純物ガスとの合計の圧力が(Pi+Ps)でなく、Psになるように制御するのが実際的である。
このようにして、ガスセル15内には、試料ガスが分圧Psで存在し、不純物ガスが分圧Piで存在することになる。
【0022】
この状態で、前記赤外線光源Gから光を照射し、前記分光器あるいは干渉計Sをスペクトル走査させて、前記赤外線検出器Dによって、ガスセル15を透過した光の強度を読み取る。このようにして、ガスセル15に満たされた既知の濃度の不純物を含む試料ガスの吸収スペクトルを測定することができる。
例えばアンモニアガスを試料ガスとし、不純物を水とした場合、既知の濃度の水分を含むアンモニアガスの吸収スペクトルが得られる。
【0023】
図3は、不純物である水蒸気の濃度が、アンモニアガスに対して100ppbになるように、水蒸気の分圧比を調整し、図1の測定系で測定した精製されたアンモニアガスの吸収スペクトルと、図2の測定系で測定した不純物である水を含むアンモニアガスの吸収スペクトルとを比較して掲載したグラフである。横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は光強度をあらわす任意目盛りである。横軸の波数の範囲は3870(cm-1)から3780(cm-1)までであり、これを波長に換算すると2583nmから2645nmになる。
【0024】
図3によれば、わずかであるが、精製されたアンモニアガスの吸収スペクトルと水を含むアンモニアガスの吸収スペクトルとの違いが現れている。
図4は、両吸収スペクトルの比をとって、吸光度に変換したグラフである。縦軸は吸光度を表している。
ここで「吸光度」とは、ガスセル15内に不純物を含まない試料ガスを入れて測定したときの光検出強度R0と、ガスセル15内に不純物を含む試料ガスを入れて測定したときの光検出強度R1との比(R0/R1)の対数log(R0/R1)をいう。
【0025】
この図4のグラフは、ガスセル15内における濃度100ppbの水の吸光度スペクトルを表している。
吸光度/濃度測定部20は、前記図4のスペクトルを、波長に対するデータとしてメモリ20aに記憶する。
そして、このようなデータを不純物の濃度をいろいろ変えながら多数取得する。すると、波長ごとに、不純物の濃度と吸光度との関係を表す曲線が得られる。この曲線を、「検量線」という。
【0026】
なお、波長が違っても検量線の傾きはあまり変わらないと推測されるので、1つ又はそれ以上の代表的な波長に対する検量線を用いることができる。「代表的な波長」とは、不純物スペクトルが典型的なピークを示す波長とする。例えば、図4では、3854(cm-1)に最大のピークがあるので、この波長における検量線を用いるとよい。
図5は、濃度が未知の不純物を含む試料を測定する測定系を示す図である。この測定系は、基本的には図1の測定系と変わらないが、試料ガスから不純物を取り除くための不純物精製器を取り付けていないところが、図1と違っている。したがって、ガス入口INを通して、不純物を含む試料ガスがガスセル15に導入される。不純物の濃度は未知とする。測定するときのガスセル15の温度は、図1、図2の場合と同一とし、ガスセル15内の圧力は、前述したPsになるようにする。この図5の測定系で測定した強度スペクトルは、試料ガスと不純物ガスの混合ガスの強度スペクトルになっている。
【0027】
本発明のガス中の不純物定量方法では、吸光度/濃度測定部20において次のようなデータ処理を行う。
まず、図1の測定系で測定した強度スペクトルから図5の測定系で測定した強度スペクトルを割る。これにより、不純物ガス固有の吸光度スペクトルを知ることができる。
次に、この不純物ガスの吸光度スペクトルを、すでに作成してある検量線に適用して、不純物ガスの濃度を求める。
【0028】
以上のようにして、濃度が未知の不純物ガスの濃度を求めることができる。
次に、前記測定系の変更例を説明する。図1、図2及び図5に示した測定系では、前記赤外線光源G、前記分光器あるいは干渉計S、前記赤外線検出器Dは、すべて室内の空気中に設置されていた。ところが、例えば水分、炭酸ガス、窒素酸化物などの赤外領域に吸収を持つ成分を測定対象とする場合、これらの成分は空気中に含まれているので、精度よく測定するためには、前記赤外線光源G、前記分光器あるいは干渉計S、前記赤外線検出器Dなどから、これらの空気中に含まれている成分を除外する必要がある。
【0029】
そこで、前記赤外線光源G、前記分光器あるいは干渉計S、前記赤外線検出器Dなどを高気密性容器の内部に設置して、容器内を真空にするか、あるいは赤外に吸収を持たない高純度ガスで満たして、測定するようにした。
図6は、この前記赤外線光源G、前記干渉計S、前記赤外線検出器Dなどを高気密性容器内部に設置した測定系を示す図である。
【0030】
同図において、ガス導入系などガスの流れる経路の図示は省略している。赤外線光源G及び干渉計Sは、光路中のスリット32、集光レンズ34とともに、高気密性容器31の中に配置されている。高気密性容器31の下部外壁には、真空コネクタ37が設けられていて、ここに、電源部44からの電源供給ケーブルなどが接続される。またジョイントC4に真空ポンプの吸込み口が接続される。
【0031】
また、高気密性容器31には、光透過窓35を通してレーザ装置Lからのレーザ光が導入される。このレーザ光は、干渉計Sにおいて、特定波長の光を選択するために用いられる。なお、このレーザ装置Lを用いた干渉計Sの構造は、図1の構成でも適用可能なものである。
さらに、高気密性容器31の側壁には、ガスセル15に接続するためのジョイントC1が取り付けられている。ジョイントC1には、光透過窓41が装着されている。ジョイントC1と光透過窓41との接着箇所は、気密性が保たれている。したがって、ジョイントC1からの気体の漏れはなく、高気密性容器31の中の気密を保つことができる。なお、40は、ジョイントC1にガスセル15を接続するためのOリングである。
【0032】
さらに、前記赤外線検出器Dを収納した高気密性容器33が設けられている。36は、高気密性容器33内に前記赤外線検出器Dとともに収納された集光レンズである。この高気密性容器33の下部外壁には、真空コネクタ38が設けられていて、ここに、電源部44からの電源供給ケーブルなどが接続される。またジョイントC3に真空ポンプの吸込み口が接続される。
【0033】
高気密性容器33の側壁にも、ガスセル15に接続するためのジョイントC2が取り付けられている。ジョイントC2には、光透過窓43が装着されている。ジョイントC2は、Oリング40を備えていて、このOリング40によりガスセル15との接続が行われる。さらにジョイントC2は、ガスセル15との取り付け・取り外しを容易に行うために、光軸方向に移動可能である。42は、この光軸方向への移動時に気体の漏れを防ぐためのOリングである。
【0034】
また、ジョイントC1の窓41と、ガスセル15の窓15cとの間の空間、及びガスセル15の窓15bとジョイントC2の窓43との間の空間に入った大気を除去するために、ジョイントC2のコネクタ47に真空ポンプを接続することができる。これら2つの空間はガスセル15に設けられた貫通孔48により連通しているので、ジョイントC2のコネクタ47に真空ポンプを接続するだけで、2つの空間の大気を同時に吸引できる。
【0035】
本発明の実施の形態では、前記赤外線光源G、前記干渉計S、前記赤外線検出器D以外の主要な部材、例えば、前記レーザ装置L、電源部44、前記パーソナルコンピュータなどは高気密性容器31,33の外側に配置する工夫をした。もし、これらのレーザ装置、電源部、コンピュータなどを高気密性容器31,33の内側に配置すれば、真空状態では熱の対流が極端に少なくなるので、レーザ装置、電源部、コンピュータなどの熱が外部に伝わらなくなり、高気密性容器31,33の内部の温度が異常に上がり、測定系に悪い影響を与えるからである。
【0036】
以上の図6に示した測定系において、両高気密性容器31,33を排気して気圧を下げた状態(例えば10-4〜10-6Torr)で、図1から図5を用いて説明した方法で不純物ガスの吸光度スペクトルを測定すれば、空気中の赤外線吸収成分の影響を免れることができるので、より精密な吸光度測定が可能になる。
図7は、図6の測定系において、ジョイントC2とガスセル15との結合を解除して、ガスセル15を外した状態を示す図である。この状態で、ガスセル15を他のガスセルと交換することができる。ジョイントC1,C2は、前述したように、高気密性容器31,33との気密性が保たれているので、ガスセルの交換時にも、高気密性容器31,33の真空度が低下することはない。したがって、交換が済めば、すぐに測定に入ることができる。
【0037】
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではない。例えば、測定波長を今まで説明したよりも、長波長(40μm)まで延ばすことにより、従来測定できなかった成分や、測定困難であった成分(例えばタングステン化合物やりん化合物)の測定が可能になる。この場合、ガスセルの光透過窓15b,cや、ジョイントC1,C2の光透過窓41,43や、干渉計Sの光透過部分を、当該波長領域を透過できる材料で作成する必要がある。例えば、干渉計Sの光透過部分をCsI(ヨウ化セシウム)とし、光透過窓にKRS−5(臭化タリウム45.7%+ヨウ化タリウム54.3%)を用いることにより、赤外領域で安定した測定を行うことが可能となる(CsIは0.5から40μmの波長範囲で80%以上の光透過率を示す光学材料であり、KRS−5は3から40μmの波長範囲で70%以上の光透過率を示す光学材料である)。
【0038】
また、ジョイントC1の窓41と、ジョイントC2の窓43とを取り除くこともできる。この場合、ガスセル15をジョイントC1,C2に接続することによって、高気密性容器31,33の気密性を保つことができる。2つの高気密性容器31,33は、ガスセル15の貫通孔48を通じて連通するので、いずれかの容器に真空ポンプを接続するだけで、全体を真空にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】不純物を取り除いた試料ガス(リファレンス)の光強度を測定するための測定系を示す図である。
【図2】検量線を作成するための、既知濃度の不純物を含む標準試料ガスを測定するための測定系を示す図である。
【図3】不純物である水蒸気の濃度が、アンモニアガスに対して100ppbになるように、水蒸気の分圧比を調整し、図1の測定系で測定した精製されたアンモニアガスの吸収スペクトルと、図2の測定系で測定した不純物である水を含むアンモニアガスの吸収スペクトルとを比較して掲載したグラフである。
【図4】図3の両吸収スペクトルの比をとって、吸光度に変換したグラフである。
【図5】濃度が未知の不純物を含む試料を測定する測定系を示す図である。
【図6】赤外線光源G、干渉計S、赤外線検出器Dなどを高気密性容器内部に設置した測定系を示す図である。
【図7】図6の測定系において、ジョイントC2とガスセル15との結合を解除して、ガスセル15を外した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
11 試料ボンベ
12 マスフローコントローラ
13 不純物精製器
14 開閉バルブ
15 ガスセル
16 調整バルブ
17 バキュームジェネレータ
18 圧力トランスデューサ
19 圧力制御部
20 吸光度/濃度測定部
20a メモリ
21 不純物ボンベ
22 マスフローコントローラ
25 高圧ガスボンベ
31 高気密性容器
32 光路中のスリット
33 高気密性容器
34 集光レンズ
35 光透過窓
36 集光レンズ
37 真空コネクタ
38 真空コネクタ
40,42 Oリング
41 光透過窓
43 光透過窓
44 電源部
47 コネクタ
48 貫通孔
C1,C2,C3,C4 ジョイント
G 赤外線光源
L レーザ装置
S 分光器あるいは干渉計
D 赤外線検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス中に混入した不純物の濃度を定量する方法であって、
(a)前記ガスから不純物を除去して、セルに導入して、そのセルを透過した光の光強度を測定し、
(b)既知の濃度の不純物を含むガスを同一体積のセルに導入して、前記(a)の測定と同一温度、同一圧力に保って、セルを透過した光の光強度を測定し、
(c)前記(a)の測定で得られた光強度から前記(b)の測定で得られた光強度を割って、不純物の吸光度を求め、この不純物の吸光度を、不純物の濃度の関数として記憶しておき、
(d)濃度が未知の不純物を含むガスを同一体積のセルに導入して、前記(a)及び前記(b)の測定と同一温度、同一圧力に保って、セルを透過した光の光強度を測定し、
(e)前記(a)の測定で得られた光強度から前記(d)の測定で得られた光強度を割って、不純物の吸光度を求め、この吸光度を前記関数に適用して、不純物の濃度を求めることを特徴とするガス中の不純物定量方法。
【請求項2】
ガス中に混入した不純物の濃度を定量する装置であって、
ガスを導入するためのセルと、
セルに光を照射する光源と、
セルを透過した光の強度を測定する検出器と、
前記セルを一定温度に保つ保温手段と、
前記セル内のガスを所定の圧力に調整する圧力調整手段と、
不純物濃度を測定したい試料ガスをセルに導入するための第一のガス導入系と、
既知の濃度の不純物を含むガスをセルに導入するための第二のガス導入系と、
第一のガス導入系に設けられた、試料ガスから不純物を除去するための不純物除去器と、
不純物除去器によって不純物を除去した前記ガスをセルに導入して、セルを透過した光強度を測定する第一の光強度測定手段と、
既知の濃度の不純物を含むガスを前記セルに導入して、セルを透過した光強度を測定する第二の光強度測定手段と、
前記第一の光強度測定手段の測定で得られた光強度から、前記第二の光強度測定手段の測定で得られた光強度を割って、不純物の吸光度を求め、この不純物の吸光度を、不純物の濃度の関数として記憶しておく記憶手段と、
濃度が未知の不純物を含むガスを前記セルに導入して、セルを透過した光強度を測定する第三の光強度測定手段と、
前記第一の光強度測定手段の測定で得られた光強度から前記第三の光強度測定手段の測定で得られた光強度を割って、不純物の吸光度を求め、この不純物の吸光度を前記記憶手段によって記憶された関数に適用して、不純物の濃度を求める濃度測定手段とを備えることを特徴とするガス中の不純物定量装置。
【請求項3】
前記光源を第1の気密性容器に収納し、前記検出器を第2の気密性容器に収納した状態で測定が可能な請求項2記載のガス中の不純物定量装置。
【請求項4】
前記第1の気密性容器と前記セルとのジョイント部は、前記セルを外した状態で、前記第1の気密性容器の気密性を保つことができ、
前記第2の気密性容器と前記セルとのジョイント部は、前記セルを外した状態で、前記第2の気密性容器の気密性を保つことができる請求項3記載のガス中の不純物定量装置。
【請求項5】
前記光源又は検出器に電源を供給する電源部は、前記第1の気密性容器及び前記第2の気密性容器の外部に設置されている請求項3又は請求項4記載のガス中の不純物定量装置。
【請求項6】
前記第一の光強度測定手段、第二の光強度測定手段、記憶手段、第三の光強度測定手段、及び濃度測定手段の各機能を実現するコンピュータが備えられ、
前記コンピュータは、前記第1の気密性容器及び前記第2の気密性容器の外部に設置されている請求項3から請求項5記載のガス中の不純物定量装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−30032(P2006−30032A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210693(P2004−210693)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000206967)大塚電子株式会社 (50)
【Fターム(参考)】