説明

ガス分解素子

【課題】 ガス分解素子特有の使用のされ方を踏まえて、イオン導電性を十分高く確保しながら、湿潤下でのピンホール対策および耐久性向上をはかった固体電解質を備えたガス分解素子を提供する。
【解決手段】 触媒電極層6と、触媒電極層と対をなす対向電極層7と、触媒電極層と対向電極層とに挟まれたイオン伝導性の固体電解質層11とを備え、固体電解質層11は、多孔質フッ素樹脂膜3と、その多孔質フッ素樹脂膜の多孔質の間隙を充填して触媒電極層および対向電極層へと連続するパーフルオロカーボン系イオン交換性高分子層5とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分解素子に関し、より具体的には、臭気ガスを電気化学反応によって分解し、無臭化するためのガス分解素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気中に含まれる臭気成分を電気エネルギーによって分解するために、水素イオン導電性の電解質層をはさむように位置させた電極にガス導入経路を設け、これら電極に電圧を印加することで臭気ガスを分解する臭気除去装置の提案がなされている(特許文献1)。上記の臭気除去装置によれば、両電極間に電圧を印加して、アノード分解反応によって、アセトアルデヒド等の臭気ガスを分解して無臭化することができる。この臭気除去装置において、水素イオン(プロトン)伝導性の固体電解質にイオン伝導性樹脂を用いた例が、開示されている。
【0003】
上記イオン伝導性樹脂は、「パーフルオロカーボン系陽イオン交換性ポリマー」の一般名で呼ばれる高分子樹脂である。以後の説明では、パーフルオロカーボン系を「PFC系」とし、また電解質について用いる場合は「陽イオン交換性」などは省略して「陽イオン交換性ポリマー」は、単に「ポリマー」または「高分子」と記す。したがって、たとえば、パーフルオロカーボン系陽イオン交換性ポリマーは、電解質に用いる場合は、「PFC系ポリマー」または「PFC系高分子」と記す。また、とくに断らないかぎり、イオンは正負のイオンとするが、本発明では、文脈から陽(正)イオン、とくにプロトンと解することができる場合が多い。
【0004】
上記PFC系高分子は、疎水性のパーフルオロアルキル基を主鎖骨格に、一部のパーフルオロビニルエーテル側鎖の末端にイオン交換基を有する構造をもつ高分子である。PFC系高分子膜は、たとえば容易にイオン交換基に変換できる−SO2Fまたはカルボン酸エステルを有するパーフルオロカーボン系ポリマーを膜状に押出し成形した後、加水分解等を行いイオン交換基を導入することにより製造することができる。イオン交換基にスルホン酸基やカルボン酸基を用いたPFC系ポリマー膜として、デュポン社製の商品名(登録商標)「ナフィオン」、旭硝子(株)社製の「フレミオン」、徳山曹達(株)社製の「ネオセプタ」等がある。上記のナフィオンは、テトラフルオロエチレンとパーフルオロスルホニルエトキシビニルエーテルとの共重合体を、加水分解したパーフルオロアルキル系陽イオン交換性ポリマーである。
【0005】
上記のPFC系高分子は、もっぱら固体燃料電池の固体電解質用に使用が検討されてきた。PFC系高分子膜を燃料電池の固体電解質に用いた例として、薄膜化しながら電極との接触抵抗を低くするための構造例が、提案されている(特許文献2)。この特許文献2では、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(延伸多孔質PTFE)を用いて、電極上に接して配置した延伸多孔質PTFEの多孔質間隙部に液状のPFC系高分子を浸透させて、PFC系高分子と延伸多孔質PTFEとを一体に形成したPFC系高分子・電極接合体の構造が提案されている。このような構造を持つことにより、主目的である接触抵抗の低下を得ることができ、同時に、強度の補強を得ることができる。
【0006】
燃料電池と原理が類似する臭気除去装置においても、固体電解質に用いられる材料にはイオン伝導性が求められ、上記特許文献1においてもPFC系高分子を用いた固体電解質が開示されている。燃料電池か又はガス分解素子かの用途を問わず、PFC系高分子においてイオン伝導の作用を得るには、湿潤状態が必須であり、適切な保水状態を維持しなければイオン伝導性を得ることができない。たとえば水不足状態では電気抵抗が増大し、湿度30%未満ではイオン伝導性を発現しない。また、水分過剰では、いわゆるフラッディング(洪水)状態になって臭気ガスを含んだ気体の電極への接触が阻害される。水分過剰状態でも、湿分枯渇状態でも、安定してガス分解をすることはできない。
【0007】
PFC系高分子を適切な保水状態にするためには、PFC系高分子膜自体を薄膜化するのが効果的である。薄膜化することによって、対極(カソード)での生成水の膜内への逆拡散が促進され、PFC系高分子膜の厚み全体で、イオン伝導性の作用を奏することができる。しかしながら、PFC系高分子は、パーフルオロカーボンスルホン酸高分子等の誘導体を含めて、パーフルオロアルキル主鎖によって形状を保持しており、ファンデルワールス力に起因する結合力のため本質的に弱い材料である。とくに薄膜化された場合、湿潤下では強度は著しく低下する。
【0008】
薄膜化に伴うもう一つの大きな問題は、ピンホールの悪影響の顕在化と、使用中のピンホール径の拡大である。PFC系高分子膜は、100μm以下に薄膜化するとピンホールの悪影響が顕在化して、しかも使用中にピンホールの径が拡大して破れにいたるという弱点を有する。燃料電池に用いたPFC系高分子膜にピンホールがあると、燃料ガスの水素ガスおよび燃焼ガスの酸素ガスがクロスリークして、規格通りの電圧の電力を取り出せなくなり、燃料電池を組み込んだ装置全体に深刻な影響を及ぼす。このような悪影響は、湿潤下での使用中の温度サイクルおよび湿度サイクルにより促進される。
【0009】
【特許文献1】特許第2701923号
【特許文献2】特開2003−142122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
臭気ガスの分解素子としては、上記のPFC系高分子膜を必要とするが、ガス分解素子特有の使用のされ方を踏まえた構成材料の設計が求められる。ガス分解素子の構成部材の材料選択は、当該ガス分解素子が世の中に受け入れられるかどうかを左右する重要な要因となる。ガス分解素子における固体電解質層は、イオン導電性および湿分を確保するために、薄膜、湿潤下における強度低下およびピンホールに対する耐性を備える必要がある。また一方で、ガス分解素子は小さい電極面積で能率よく臭気ガスを分解する反応を遂行しなければならない。商品の競争力を高めるためには、電極単位面積当たりの反応頻度(単位時間当たり反応)を高める必要がある。電極単位面積当たりの能率は、触媒等の配置が一定であれば、PFC系高分子の割合、電気抵抗、などで決まり、PFC系高分子の割合が高いほど、また電気抵抗が小さいほど、好ましいが、すべての要因について完全に把握されるまでに至っていない。
【0011】
本発明は、ガス分解素子特有の使用のされ方を踏まえて、電極単位面積当たりの能率(以下、単に「能率」と記す)を確保するために、高いイオン導電性および湿分、ならびに薄膜等の条件を確保しながら、湿潤下における強度劣化およびピンホールに対する高い耐性を持つ固体電解質を備えたガス分解素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のガス分解素子は、触媒機能をもつ触媒微粒子を担持する触媒電極層と、触媒電極層と対をなす対向電極層と、触媒電極層と対向電極層とに挟まれたイオン伝導性の固体電解質層とを備える。そして、固体電解質層は、多孔質フッ素樹脂膜と、その多孔質フッ素樹脂膜の多孔質の間隙を充填して触媒電極層および対向電極層へと連続するパーフルオロカーボン系イオン交換性高分子とを有することを特徴とする。
【0013】
ここで、上述のガス分解素子は、燃料電池と類似した原理および構成を持つが、ガス分解素子特有の使用のされ方をする。たとえば、(1)燃料電池では発電の結果生じる水は定常的に多くなる傾向が強い。しかし、ガス分解素子では、臭気ガスの濃度は通常は人体の許容量以下環境における不快感を除去するのが主用途なので、反応頻度または電極における単位時間当たりの反応箇所密度は高くはない。したがって、ガス分解の結果生じる水分は多くなく、むしろ不足傾向となる。(2)また、触媒電極に導入されるガスは、燃料電池では水素分子(ガス)であるのに対して、ガス分解素子ではメタノール等の分子であり、水素分子のサイズの数倍大きい。
【0014】
ガス分解素子特有の使用のされ方についてさらに詳しく見ると、分解対象のガス種によって、つぎのように燃料電池と相違する場合がある。(G1)アンモニアやアセトアルデヒドなどの臭気ガスのように、それ自体で自発的に反応(脱臭)を起して発電するものと、(G2)メチルメルカプタンやトルエンなどのように、外部電源を必須にして外部電源によって反応させないと分解しないものがある。(G1)のガスも、(G2)のガスと同様に外部電源によって分解をアシストすることは可能である。ただし、(G1)のガスと(G2)のガスとでは、反応における水の流れが相違する。(G1)の臭気ガスに対して、臭気ガス入口側(触媒電極側)に水を含ませると、空気側(対向電極側)に水が生成する。一方、(G2)の臭気ガスの場合、電気分解過程によらなければ臭気ガスを分解することはできない。触媒電極および対向電極の極性は、電気分解でも発電でも同じであり、臭気ガス入口側を陽極(プラス極)とし、空気側(対向電極側)を陰極(マイナス極)とし、空気側に水を導入する。このため、(G2)のガスに対しては、水の不足および過剰はほとんど生じないので、水の流れについてはそれほど重要視しなくてよい。したがって、湿潤下での耐久性低下などの問題は、(G1)のガスの場合に重要課題となる。燃料電池と比較すると、上記(G1)および(G2)の両方を考慮して、ガス分解素子では、湿分の制御は大掛かりな機構は必要なく、湿分を安定化する小さな工夫または機構によって、常に満足すべき湿分を確保できる可能性があると推測される。
【0015】
上記本発明のガス分解素子の構成により、両電極間のイオン伝導を確保した上でPFC系高分子層を薄膜化することにより、湿分を確保し易くし、かつイオン導電性を向上し、電気抵抗を低下させても、多孔質フッ素樹脂膜で補強されているので、湿潤下での強度を高めることができる。またピンホールについては、多孔質フッ素樹脂膜のフッ素樹脂繊維によってピンホールが分断または完全に分断されないまでも彎曲または迂回されるので、半径の小さい水素ガスと異なり、平均径の大きい臭気ガス分子の通過をブロックし易くなる。このため、臭気ガスの分解に長時間を要するなどの問題を克服することができる。なお、対向電極層は、触媒機能をもつ金属微粒子を担持させた電極層としてもよいし、そのような触媒機能を奏しない電極層としてもよい。
【0016】
上記の多孔質フッ素樹脂膜を、二軸延伸多孔質PTFE膜とすることができる。二軸延伸多孔質PTFEは、より高密度で微細な繊維が微小結節から延び出ている。PFC系高分子の補強は、一軸延伸多孔質PTFEでも可能であるが、二軸延伸多孔質PTFEにおける微小結節とそこから延び出る繊維の密度は、一軸延伸多孔質PTFEに比べて格段に高いので、その補強作用も格段に増大する。その結果、湿分を確保しやすく、かつイオン導電性を向上し電気抵抗を減らすために薄膜化することが可能となる。すなわち、薄膜、湿潤下での強度低下、ピンホールに対する耐性を大きく向上することができる。この結果、能率の確保と、耐久性向上の両方を得ることが可能となる。
【0017】
上記の多孔質フッ素樹脂膜の気孔率を、50%以上95%以下とすることができる。多孔質フッ素樹脂膜の気孔率が50%未満では、イオン伝導を担うPFC系高分子の量が不足して固体電解質層の電気抵抗が増大し、能率低下を緩和するために両電極間に印加する電圧の増大を招き、好ましくない。また、気孔率が95%を超えると、多孔質フッ素樹脂膜による補強が不十分になり、たとえばピンホールを経由する悪臭ガスの洩れが増大し、悪臭除去の能率低下を招く。
【0018】
上記の多孔質フッ素樹脂膜の平均孔径を、0.1μm以上5μm以下とすることができる。多孔質フッ素樹脂膜の平均孔径が0.1μm未満の場合、PFC系高分子を、多孔質フッ素樹脂膜の多孔質の間隙に確実に充填させることが難しく、PFC系高分子の届かない箇所にポアが発生し、イオン伝導性を阻害して電気抵抗を増加させる。また、平均粒径が5μmを超えると、強度の弱いPFC系高分子の割合が増加し、全体の強度が低下するため好ましくない。
【0019】
上記の固体電解質層の厚みを、2μm以上50μm以下とすることができる。固体電解質層の厚みを小さくすることは、上述のように、能率確保の上から非常に好ましい。しかし、上記の多孔質フッ素樹脂膜とPFC系高分子とで構成される固体電解質層の厚みが2μm未満の場合、大きな径のピンホールが固体電解質層を容易に貫通し、臭気ガスのリークを生じやすく、また多孔質フッ素樹脂膜で補強しても湿潤下での耐久性の確保が難しい。また厚みが50μmを超えると、固体電解質層の電気抵抗が高くなり、必要な印加電圧を高くしなければならず、ガス分解素子の能率、小型化、軽量化、経済性を阻害する。
【0020】
上記の多孔質フッ素樹脂膜を延伸多孔質PTFE膜として、その延伸多孔質PTFE膜を立体網目状に構成する微小結節および該微小結節間に張られる繊維の表面に親水性樹脂膜を形成したものとするのがよい。PTFEは、本来、撥水性であり水をはじく。このため、保水性のあるPFC系高分子とのなじみがよくなく、使用中の劣化の要因となる。しかし、上記のように親水性樹脂膜を形成することにより、無数の微小結節およびその間に張り巡らされた繊維と、PFC系高分子とのなじみがよくなり、すなわち両者の接触抵抗が増し、PTFEによる補強作用は格段に強化される。また、無数にある微小結節および繊維が水溜として機能するので、湿分枯渇時には湿分をPFC系高分子に供給し、水分過剰時には水分を吸収することができる。このため、PFC系高分子層のイオン伝導作用の円滑な発現を可能にすることができる。この結果、薄膜状態において湿潤環境を確保して、イオン伝導度を高め、電気抵抗を低下させ、その結果、能率を確保しながら、強度を確保することができる。
【0021】
上記親水性樹脂膜を形成した延伸多孔質PTFE膜を用いた場合には、固体電解質層の厚みを30μm以下とし、上記の延伸多孔質PTFE膜を二軸延伸多孔質PTFE膜とすることができる。上述のように、二軸延伸多孔質PTFEは、より高密度で微細な繊維が微小結節から延び出ている。そこに親水性樹脂膜を形成すれば、より高密度で水溜を配置したことになり、PFC系高分子の湿分が枯渇する際や、逆に洪水状態になろうとする際、より大きな緩衝作用を奏することができる。すなわち親水性樹脂膜は、湿分枯渇時には湿分を供出し、水分過剰時にはその水を吸収することができる。個々の親水性樹脂膜は微小かもしれないが、高密度で存在するため、その作用効果は累積されて大きなものとなる。このような水溜の役割は、固体電解質層が薄くなったとき、すなわちPFC系高分子層が薄くなって、湿分保持容量が小さくなり、湿度の変動幅が大きくなる場合に価値が大きくなる。上記のような親水性樹脂膜の形成は一軸延伸多孔質PTFEでも可能であるが、上記のとおり、二軸延伸多孔質PTFEにおける微小結節とそこから延び出る繊維の密度は、一軸延伸多孔質PTFEに比べて格段に高く、保水能力密度も高くなる。また、親水性樹脂膜をPFC系高分子との粘着性の高いものにすることにより、二軸延伸多孔質PTFEにおける微小結節および繊維の微細化と密度上昇によって、その補強作用も格段に増大する。その結果、能率確保、および薄膜、湿潤下での強度低下、ピンホールに対する耐性を大きく向上することができる。
【0022】
平面的に見て、触媒電極層から対向電極層にかけて多孔質フッ素樹脂膜を含まないPFC系高分子層の単相領域が、複数、設けられている構造をとることができる。これによって、多孔質フッ素樹脂膜の繊維の間隙を通過するだけでなく、対向電極側へと直に通過できるPFC系高分子部分を得ることができる。すなわち単相領域を通って、直に、電極間のイオン伝導性を確保できる。臭気ガス濃度が高くない場合のガス分解反応では固体電解質層中のプロトン密度(電流密度)は低いので、実質的に、多孔質フッ素樹脂膜を用いない場合の電気抵抗のレベルに近づき、能率を確保することが容易になる。
【0023】
また、使用中の耐久性については、多孔質フッ素樹脂膜が存在する箇所で確保することができる。使用中のピンホールの孔拡大や、強度劣化、破壊発生などに対しては次のようなメカニズムによる耐性向上を期待することができる。すなわち、2つの電極間にこの固体電解質層をはさむ組み立て工程の際に、両側の表層に位置するPFC系高分子に厚み方向に小さめの圧力を加えたまま、製品とするのがよい。このような組み立てによれば、単相領域に位置するPFC系高分子はその単相領域の外側に向けて逃げようとする(面内変位)が、単相領域の外側は多孔質フッ素樹脂膜で補強されているので、ブロックされ、この単相領域を充填しているPFC系高分子に周囲から面内圧力が加わる。また、製造時に圧力を負荷しなくても、湿分を得てPFC系高分子は膨潤するので、面内方向にも、また厚み方向にも広がろうとする。しかし、厚み方向については両側に接する電極により押さえ込まれ、また面内方向については、上述のように多孔質フッ素樹脂膜により面内変位が阻止されるので、面内圧力が加わる。このため、使用中の湿分の増加に起因する膨潤→ピンホールの径拡大という劣化パターンは防止される。この結果、ピンホールの拡大は抑制され、また湿潤下での耐久性向上も得ることができる。単相領域の外側におけるPFC系高分子においては、多孔質フッ素樹脂膜で補強される。
【0024】
上記の単相領域の平均径を、1mm以上30mm以下するのがよい。単相領域の平均径が1mm未満では、高いイオン伝導度を実現することができない。また、単相領域の平均径が30mmを超えると、多孔質フッ素樹脂膜による補強作用が固体電解質膜の全領域にゆきわたらず、薄膜化によって単相領域部分にピンホールや耐久性劣化が生じる。
【0025】
上記の多孔質フッ素樹脂膜を小片としたものとし、その小片を多数、PFC系高分子内に分散したものとしてもよい。一般に、多孔質フッ素樹脂膜の厚みの下限は20μmがせいぜいであり、それより薄くすることはできず、したがって、大雑把にいって固体電解質層の厚みもそれより薄くすることは困難である。しかし、多孔質フッ素樹脂膜を裁断などして作製した小片を用いる場合には、固体電解質層の厚み下限は、小片の最小方向寸法によって決まるので、固体電解質層の厚みを、多孔質フッ素樹脂膜の厚みを超えて、容易により薄くできる。また上記の多孔質フッ素樹脂膜の小片は、ピンホールの分断、彎曲、迂回等にも有効に作用する。さらに、小片は延伸された膜と異なり、延伸面に規制されず、固体電解質層の厚み方向に、小片の構成部分を突き出すことができるので、たとえば触媒電極層を導電性多孔質材料で形成した場合、その導電性多孔質材料に絡み付いて、触媒電極層と固体電解質層との接合強度を高めることができる。
【0026】
上記の小片を、二軸延伸多孔質PTFE膜から形成するのがよい。二軸延伸多孔質PTFE膜における微小結節とそこから延び出る多数の繊維部分が、PFC系高分子内に根を張り、補強作用を高め、薄膜状態でのPFC系高分子膜の湿潤下での耐久性向上に資することができる。
【0027】
上記の固体電解質層の厚みを25μm以下として、小片における微小結節および繊維に親水性樹脂膜を形成するのがよい。上記の小片に基づく作用を得た上で、親水性樹脂膜により、二軸延伸多孔質PTFEにおける高密度の微小結節およびその間に張り巡らされた繊維と、PFC系高分子とのなじみがよくなり、PTFEによる補強作用は格段に強化される。また、高密度の微小結節および繊維が水溜として機能するので、湿分枯渇時には湿分をPFC系高分子に供給し、水分過剰時には水分を吸収することができる。この結果、25μm以下の薄膜状態において湿潤環境を確保してイオン伝導度を高め、電気抵抗を低下させ、高い能率を維持しながら、強度を確保することができる。より好ましくは、固体電解質の厚みは20μm以下とする。厚みの下限は、いくら薄くてもよいが、現実的には2μm未満とすることは難しい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ガス分解素子特有の使用のされ方に適合して、能率を確保するために、高いイオン導電性および湿分、ならびに薄膜等の条件を確保しながら、湿潤下でのピンホール対策および耐久性向上をはかった固体電解質を備えたガス分解素子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるガス分解素子10を示す図である。このガス分解素子10は、イオンとくにプロトン伝導性を有する固体電解質層11を挟んで、多孔質の導電材に触媒微粒子を担持させた触媒電極層6と、対向電極層7とが積層されたことを特徴とするものである。触媒電極層6は多孔質の導電性基体8により支持されている。また対向電極層7も多孔質の導電材に触媒微粒子を担持しており、また多孔質の導電性基体9によって支持されている。本実施の形態においては、図2に示すように、固体電解質層11が、多孔質フッ素樹脂膜である延伸多孔質PTFE膜3と、その多孔質の間隙を充填しながら両電極6,7に、直接、接触するPFC系高分子層5とで構成される点にポイントがある。延伸多孔質PTFE膜3は、たとえば住友電気工業株式会社製のポアフロン(登録商標)が知られている。多孔質の触媒電極層6,7は、多孔質の導電性基体8,9と別に形成してもよいし、多孔質の導電性基体8,9の部分に触媒微粒子を担持した導電粒子を接触・保持させることによって形成してもよい。
【0030】
まず、固体電解質層11の周囲の構成部材について説明する。図1のガス分解素子10では、空気に混入しているエタノール、メタノール、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド等の臭気ガスを分解することを目的とする。このため、(導電性基体8,触媒電極層6)と、(導電性基体9,触媒電極層7)とには、触媒電極層6において臭気ガスが酸化反応によって分解するように電位が印加される。すなわち触媒電極層6をアノードとし、その触媒電極層6からプロトンが固体電解質層11に送り出され、図示しない配線に電子が放出される。このときアノード6には、臭気ガスを含む空気が図示しないポンプなどで入口21から導入され、上記アノード反応によって分解したガスを含む空気が、出口22から周囲環境に排出される。固体電解質層11を伝導したプロトンは、対向電極7において、空気と、接触電極層7に配線(図示せず)から流入する電子と還元反応して、水を生成する。対向電極7への空気の供給のために、多孔質の導電性基体9には、外部から触媒電極層7にいたる空気流入用孔29が、多数、設けられている。対向電極7における空気量が、多孔質の導電性基材9の間隙を通る空気で間に合えば、空気流入用孔29は設けなくてもよい。
【0031】
固体電解質層11はイオン伝導性を持たなければならないが、固体電解質層11においてイオン伝導性を担う材料がPFC系高分子である場合には、イオン伝導性の発現に湿分は必須である。すなわち湿分が所定レベルを超えて低下すると、ガス分解素子10は機能しなくなる。プロトンは両電極間を移動する必要があるので、固体電解質層11の全厚みにわたって、上記の湿分は必要である。このため、対向電極層7での水生成反応の水を固体電解質層11に有効に行き渡らせるためには、上述のように固体電解質層11は薄いほうが好ましい。とくに、居住空間の無臭化用のガス分解素子では、臭気ガス濃度は高くなく反応頻度は低く、生成する水分レベルは低いので、固体電解質層11またはPFC系高分子膜の薄膜化は重要な要素である。さらに、全固体電解質層11は、上記のガス分解素子10のなかで、電気抵抗として位置づけられるが、この全固体電解質膜11を薄くするほうが電気抵抗は低く、したがってイオン伝導度は高く、触媒電極層6におけるガス分解効率を高めることができる。
【0032】
上記の薄膜化を、湿潤下で、ピンホールの無害化をしながら、また強度低下を抑制しながら実現するために、本実施の形態では、固体電解質層11を、延伸多孔質PTFE膜3で補強したPFC系高分子層5によって形成する。延伸多孔質PTFE膜3は撥水性の絶縁体であり、イオン伝導性はないが、強度は非常に高く、PFC系高分子膜5の補強をすることができる。図3は一軸延伸多孔質PTFE膜のミクロ構造を示す図であり、(a)は走査型電子顕微鏡(SEM)像であり、(b)はその模式図である。また図4は二軸延伸多孔質PTFE膜のミクロ構造を示す図であり、(a)はSEM像であり、(b)はその模式図である。本発明の実施の形態における延伸多孔質PTFE膜は、一軸延伸された多孔質PTFE膜でも二軸延伸された多孔質PTFE膜でもよい。どちらの延伸多孔質PTFE膜も、微小結節3pとその微小結節3p間に延び渡る複数の繊維3fが厚み範囲内で立体的な網状組織を形成している。一軸延伸多孔質PTFE膜は、図3(a),(b)に示すように、一軸延伸の圧延方向の影響をとどめており、繊維の流れ方向に沿っており、したがって多孔質の孔の平均的な形状は、圧延方向の径deが長く、直交方向の径dsが短くなる。一方、図4に示す二軸延伸多孔質PTFE膜では、微小結節3pの密度が高くなり、繊維が交差して織りなす立体的な網状組織は微細に錯綜し、かつ等方的である。なお図4(b)の模式図は、その煩雑さのため、微細な箇所は省略しており、図4(a)のSEM像を100%正確には模写していず、実際はより多くの精細で微小な組織となっている。
【0033】
図3および図4に示すような、微小結節とその間の繊維による立体的な網状の多孔質構造は、延伸しなければ形成されない。単なる押し出し加工では、埋もれた切れ目のような萌芽組織は押し出された膜に内在しているが、しごき加工またはせん断成分の入った加工を含む延伸加工によって、その萌芽組織を顕在化しなければ、上記立体的な網目状の多孔質構造は形成されない。一軸延伸は、一方向に延伸する加工であり、二軸延伸は、一軸延伸の加工の後、その一軸延伸方向に交差または直交する方向に延伸加工をする。一軸延伸ままでは内在したままの萌芽組織は、二軸延伸で十分に顕在化され、上記立体的な網状組織も錯綜度が増し、微細化する。
【0034】
本実施の形態における延伸多孔質PTFE膜3の気孔率は、PFC系高分子層5の比率を高くしてイオン伝導性を高くするために、高いことが望ましく、50%以上95%以下とするのがよい。より好ましくは70%以上95%以下である。ガス分解素子においては、湿分は燃料電池等にくらべて比較的低く、そしてピンホール径は大きくてもメタノール等の臭気ガス分子を通さないからである。また、延伸多孔質PTFE膜3の厚みは、50μm以下とするのがよいが、より好ましいのは30μm以下である。下限はとくに限定しないが、市販の一般品で厚み20μm未満のものは存在しない。しかし、延伸多孔質PTFE膜3の厚みは、可能であれば5μm、さらには1μm程度であってもよい。また、本実施の形態では、上記の気孔率および厚みの条件が満たされれば、孔の大きさ、形状等については、どのようなものであってもよいが、望ましい平均孔径は0.1μm以上5μm以下の範囲がよい。
【0035】
上記の延伸多孔質PTFE膜3は、本来、撥水性であり水をはじく。このため、保水性のPFC系高分子と分離する傾向があり、補強が十分効かず使用中の亀裂発生などの劣化の要因となる。すなわち湿分が十分ある場合、撥水性の延伸多孔質PTFE膜の表面に水膜などができ、PFC系高分子が延伸多孔質PTFEから浮くような事態が生じうる。親水性樹脂膜を形成することにより、無数の微小結節およびその間に張り巡らされた繊維と、PFC系高分子とのなじみがよくなり、両者間の接触抵抗が増して、PTFEによる補強作用は格段に強化される。さらに、親水性樹脂膜を、PFC系高分子との粘着性の高いものとすることによって、上記の補強効果は非常に大きいものとなる。
【0036】
また、延伸多孔質PTFE膜3が撥水性のままの場合、PFC系高分子5は湿分不足になり、イオン伝導性を失い易くなる。しかし、延伸多孔質PTFE膜3に対して親水化処理を施して親水性樹脂膜を形成した場合、延伸多孔質PTFE3における無数の繊維3fの表面に湿分が保持されているので、湿分の貯留箇所として機能する。とくに図4に示すように、二軸延伸多孔質PTFE膜3では微細な繊維3fが無数に交錯する立体組織となるので、個々の部分は微小であるが全体では、湿分の大きな貯留場所として機能する。このため、固体電解質層11またはPFC系高分子層を薄膜化して、PFC系高分子層5の湿度変動幅が大きくなる場合、湿分枯渇のリスクを減らし、また、水分過剰の際には水分を吸収することができる。この結果、固体電解質における能率を長期にわたって安定して保持することができる。
【0037】
親水性樹脂膜は、親水化処理によって形成する。親水化処理は、親水性の樹脂、たとえばPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を溶媒に溶解して溶液とし、その中に延伸多孔質PTFE膜を浸漬して付着させ、乾燥することにより行う。溶媒は、PFAの場合、エタノール、メタノールなどのアルコール系の低分子溶媒が好適である。またPVdFの場合は、これらアルコール系低分子溶媒にさらにn−メチル−2−ピロリドンの溶剤を加えると、さらに緻密な膜形成が可能である。乾燥は40℃〜60℃程度に保持して行い、その後、ナフィオンの融点(130℃前後)で1分間〜10分間程度保持する加熱処理によって、多孔質PTFEとの密着性をより強化することができる。上記のPFAやPVdFは、もともとPFC系高分子に対して粘着力が高いが、上記の密着性強化処理によって、より大きな補強作用を奏することができる。図5は、親水化処理によって、延伸多孔質PTFE膜3の繊維3fおよび微小結節3pに形成された親水性樹脂膜13を示す断面図である。この親水化処理によって、図3または図4に示す膨大な数の微細な繊維3fの表面に極薄の親水性樹脂膜13が形成され、そこに湿分が付着することになる。これら膨大な数の繊維3fの親水性樹脂膜13は、水分過剰な状態においても水分を吸収して洪水状態を防ぐことに役立つ。結局のところ、繊維3pにおける親水性樹脂膜13は、水分の循環に対して、地面等と同様の役割を固体電解質層中で担うことができる。裸のままのPTFEでは、無機的なガラスや鉄板の役割しか果たしえない。しかし、個々の土の部分は微小かもしれないが、図3および図4に示すように、高密度で存在するので累積することにより、大きな作用効果を奏することが可能になる。この結果、固体電解質層11の厚みを20μm程度以下に薄くした場合に、適切な湿潤環境を維持するのに重要な役割を担う。なお、親水性樹脂膜13は、図5に示すように連続した均質の膜でなく、途切れた断続的な部分からなる膜であってもよい。PTFEのPFC系高分子とのなじみを高め、水溜の作用を奏する点で、同じだからである。
【0038】
本実施の形態におけるガス分解素子10における固体電解質層11は、延伸多孔質PTFE膜3を準備して、所定厚みにするように、予め溶媒に溶かしたPFC系高分子溶液に浸漬し、その溶媒を除去して乾燥させることにより、製造される。その際に、触媒電極層6,7と電気的コンタクトがとれるよう、固体電解質層11の表裏面にPFC系高分子層5が露出するようにする。出来上がった固体電解質層11を表裏面からはさむように触媒電極層6,7および導電性基体8,9を配置して、120℃程度に加熱してホットプレスにより接合して積層体のMEA(Membrane Electrode Assembly)を形成する。この製造方法以外にも、固体電解質層を触媒電極層上に積み上げながら製造する方法など、多くの変形された製造方法を用いることができる。
【0039】
触媒電極層6,7は、上述のように、導電性基体8,9の延長部分に触媒微粒子を担持した導電粒子を、導電接触を確保しながら分散・保持させるのがよい。導電性基体8,9は、導電性でかつ導電粒子を分散保持できる層状多孔質体がよいが、例えばカーボンペーパーやカーボンフェルト等の、カーボン繊維からなる多孔質のシートが好ましい。とくにカーボン繊維の多孔質のシートは、分解反応によって発生するプロトン起因の強酸性雰囲気に対する耐性に優れている上、多孔質ゆえに、多数の触媒微粒子を担持することができるため、臭気ガスを分解する効率を、さらに向上できるという利点を有している。
【0040】
カーボンペーパーは、たとえば、単繊維状のカーボン繊維を、湿式または乾式抄紙等により製造されて、任意の厚みや坪量を有するものであってよい。また、カーボンフェルトとしては、単繊維状のカーボン繊維をカーディング等し、積層し、ニードルパンチ加工等によって互いに結合させる等して製造される。任意の平均繊維径や目付け量を有するものが、使用可能である。ただし、ガス分解素子を、できるだけ薄型化することを考慮すると、基体としてはカーボンペーパーが好適に使用される。
【0041】
前記カーボンペーパー等の導電性基体に触媒微粒子を分散保持させた触媒電極層6,7としては、種々の構造を有するものを採用することができる。すなわち、前記触媒電極層としては、(1)導電性基体の表面に、直接に、触媒微粒子を担持させたもののほか、(2)前記触媒微粒子を、例えばカーボンブラック等の導電性粉末の表面に担持させた複合粒子を、プロトン透過性を有するバインダ樹脂中に分散させた膜を、導電性基体の表面に積層してもよい。上記(1)の触媒電極層は、例えば、触媒微粒子のもとになる金属のイオンを含む溶液中に、導電性基体を浸漬した状態で、還元剤の作用によって、前記金属のイオンを還元させて、微粒子状に析出させるとともに、導電性基体の表面(多孔質導電性基体の場合は、孔の内表面も含む)に直接に担持させることによって構成される。
【0042】
また、(2)の触媒電極層は、例えば、前記と同様の方法で、カーボンブラック等の導電性粉末の表面に、触媒微粒子を担持させた複合粉末を、プロトン透過性を有するバインダ樹脂の液中に配合して塗布液を調整した後、この塗布液を、導電性基体の表面に塗布し、乾燥させて、複合粉末が分散されたバインダ樹脂の膜を形成する。上記(2)の触媒電極層においては、導電性基体として、先に説明したカーボンペーパー、カーボンフェルト等の、多孔質で、通気性を有するものを用いるとともに、バインダ樹脂の膜が、プロトン透過性を有する絶縁層と接するように、その絶縁層と積層して使用される。
【0043】
上記の積層状態においては、多孔質の導電性基体によって、触媒微粒子と臭気ガスとの接触を維持しながら、触媒微粒子を含む複合粒子を、プロトン透過性を有するバインダ樹脂からなる膜中に分散させたことと、当該膜を、導電性基体と絶縁層とで挟んだこととの相乗効果によって、触媒微粒子の脱落等を防止して、より長期間にわたって、触媒機能を発揮させることができるという利点がある。触媒微粒子のもとになる金属としては、例えばルテニウム、パラジウム、オスミウム、白金等の白金族の金属や、鉄、コバルト、ニッケル等の鉄族の金属、あるいはバナジウム、マンガン、銀、金等の、触媒微粒子にすると触媒機能を発揮する種々の金属、上記金属の2種以上の合金、あるいは、上記金属の1種または2種以上と、他の金属との合金等が挙げられる。
【0044】
触媒微粒子の粒径は、良好な触媒機能を発揮させることを考慮すると100nm以下、特に0.5〜50nmであるのが好ましい。(2)の触媒金属層に用いる、プロトン透過性を有するバインダ樹脂としては、プロトン透過性を有する種々の高分子電解質等、たとえば上記のPFC系高分子が使用可能である。PFC系高分子の溶液や水分散液が好適に使用される。上記の溶液や水分散液中に複合粉末を配合することで、先に説明した塗布液を、簡単に調整することができる。上記の触媒電極層6,7などの製造方法については、このあと説明する実施の形態2以降においても共通する。
【0045】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2のガス分解素子における固体電解質層11を示す平面図である。本実施の形態におけるガス分解素子の固体電解質層11では、PFC系高分子5の単相領域を形成するために、延伸多孔質PTFE膜3に大きな貫通孔3hがあけられている。貫通孔3hの平面形状は問わない。そして、その貫通孔3hおよび延伸多孔質PTFE膜3の多孔質間隙を充填して、上下(表裏)面に露出するようにPFC系高分子層5が配置されている点にポイントがある。図6に示す固体電解質層11では、貫通孔3hは数個〜十数個であり、その直径は、固体電解質層11の辺の数分の一〜十数分の一程度である。しかし、延伸多孔質PTFE膜3にあけられる貫通孔3hは、図7に示すように、数百個程度あってもよい。図6および図7の場合、貫通孔3hの面積率は、25%以上85%以下とするのが好ましい。本実施の形態におけるガス分解素子10において、MEAにおける固体電解質11の両側の構造(触媒電極層6,7等)は、図1に示すガス分解素子10の構造と同じである。
【0046】
本実施の形態における固体電解質層11においては、延伸多孔質PTFE膜に貫通孔3hがあけられているので、貫通孔3hに充填されたPFC系高分子層5では、PFC系高分子本来のイオン伝導度を得ることができる。このような固体電解質は、マクロ的には大小の電気抵抗部分が並列接続されている等価回路となり、電気抵抗は、マクロ的には貫通孔部分のPFC系高分子単独の部分で決まり、イオンはもっぱら貫通孔部分のPFC系高分子を通ることになる。臭気ガス濃度が高くない場合のガス分解反応では固体電解質層中のプロトン密度(電流密度)は低いので、実質的に、多孔質フッ素樹脂膜を用いない場合の電気抵抗とほとんど同じとなる。このため、ガス分解素子10全体の電気抵抗を低くすることができ、その結果、能率、すなわちガス分解効率を高めることができる。
【0047】
また、ピンホールや湿潤下での強度劣化の耐性については、延伸多孔質PTFE膜3が存在する箇所で確保することができる。とくに、2つの電極間にこの固体電解質層11をはさむ組み立て工程の際に、両表層に位置するPFC系高分子層に厚み方向に小さめの圧力を加えたまま、製品とするのがよい。このような組み立てによれば、貫通孔3hに位置するPFC系高分子層5はその貫通孔3hの外側に向けて逃げようとする(面内変位)が、貫通孔3hの外側は延伸多孔質PTFE膜3で補強されているので、ブロックされ、この貫通孔3hを充填しているPFC系高分子5に周囲から面内圧力が加わる。
【0048】
また、製造時に圧力を負荷しなくても、湿分を得てPFC系高分子は膨潤するので、面内方向にも、また厚み方向にも広がろうとする。しかし、厚み方向については両側に接する電極6,7により押さえ込まれ、また面内方向については、上述のように延伸多孔質PTFE膜3により面内変位が阻止されるので、面内圧力が加わる。このため、使用中の湿分の増加に起因する膨潤→ピンホールの径拡大→破れ、という劣化パターンは防止される。この結果、ピンホールの拡大は抑制され、また湿潤下での耐久性向上も得ることができる。貫通孔3hの外側におけるPFC系高分子層5においては、延伸多孔質PTFE膜3で補強される。
【0049】
上記の貫通孔3hの平均径Dを、1mm以上30mm以下するのがよい。貫通孔3hの平面形状は、矩形、円形、楕円、多角形等どのような形状でもよい。そして、平均径は、貫通孔の平面形状における最小径と最大径との平均値とする。貫通孔の平均径が1mm未満では、電気抵抗がマクロ的にPFC系高分子単独の部分とはならず、イオン伝導において実質的に低い電気抵抗を実現することができない。また、貫通孔の平均径が30mmを超えると、多孔質フッ素樹脂膜による補強作用が固体電解質膜の全領域にゆきわたらず、薄膜化によってピンホールの悪影響の顕在化や耐久性劣化が生じる。なお、本実施の形態に限らず、すべての実施の形態において、延伸多孔質PTFE膜3の表裏面側に、PFC系高分子層が単独で存在する厚みdmは、ほとんどゼロでもよい。
【0050】
貫通孔3hの穿孔は、ドリルなどによる機械加工、電磁波アブレーション加工、金型によるモールド加工、超音波加工などを用いることができる。この場合、貫通孔の位置、形状等の精度は必要ないので、加工しやすく、バリ取りなどしなくてよい簡単な加工工程の方法を用いるのがよい。
【0051】
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3におけるガス分解素子10の固体電解質層11を示す図である。本実施の形態における固体電解質11では、延伸多孔質PTFE膜3の小片を多数、PFC系高分子層5内に分散したことにポイントがある。これによって、固体電解質層11の薄膜化を画期的に推進することができ、かつピンホールおよび湿潤下での強度低下に対する耐性を向上させることができる。
【0052】
一般に、延伸多孔質PTFE膜3の厚みの下限は20μmがせいぜいであり、それより薄くすることはできず、したがって、固体電解質層11の厚みもそれより薄くすることは困難である。しかし、延伸多孔質PTFE膜3を裁断などして作製した小片を用いる場合には、固体電解質層11の厚み下限は、小片の最小方向寸法によって決まるので、固体電解質層の厚みを、延伸多孔質PTFE膜3の厚みを超えて、容易により薄くできる。そして、延伸多孔質PTFE膜の小片を用いることにより、延伸多孔質PTFE膜3における結節3pから延び出る無数の繊維3fが、図11に示すように、ヒゲ根のようにPFC系高分子層5内に根を張り、そのPFC系高分子層5の湿潤下での強度低下やピンホールなどに対する耐性向上に資することができる。また、薄膜化自体の作用によって、高い能率を確保できることは、再三、強調してきたことである。
【0053】
さらに、図11に示すように、多孔質の導電性基体に形成される触媒電極層6,7では、その多孔質の導電性基体の孔の中に、小片の微小結節や繊維を入り込ませ、触媒電極層6,7と固体電解質層11との接着力を高めることができる。図11において、触媒電極層6は、多孔質の導電性基体の構造体のカーボン6bと、触媒微粒子6zを担持する導電粒子6aとを有している。触媒微粒子6zや導電粒子6aの大きさは、微小結節3pや繊維3fの大きさに比べて、誇張して描いている。延伸多孔質PTFE膜のままでは延伸面の制約を受け、延伸面から外に突出する部分は存在しないが、上記のように小片では、そのような制約は除かれ、上記のように触媒電極層6,7と固体電解質層11との接着力を高めることが可能になる。また上記の延伸多孔質PTFE膜の小片は、ピンホールを生じたとしても、そのピンホールの分断や彎曲によって、臭気ガスの透過抑制にも有効に作用する。
【0054】
また、上記の小片の微小結節や繊維の立体構造にも、親水性樹脂膜を形成することは、湿潤下での強度確保および湿分の安定保持の点で、非常に望ましく、とくに薄膜化された場合に価値がある。このため、固体電解質層11の厚みを20μm以下に薄膜化して、二軸延伸多孔質PTFE膜3から得た小片に親水化処理を施しておくのがよい。親水化処理は、上述の方法によって、図5に示すようにPTFE繊維3fの表面に親水性樹脂膜13を形成するが、小片にした後で親水化処理してもよいし、小片にする前に親水化処理してもよい。小片にする方法は、任意の方法を用いることができるが、室温で切断工具によって裁断する方法以外に、次の2つをあげることができる。
(1)小片の多孔質のPTFE、PFA、PVdFなどは、粒子状のそれぞれの樹脂をメカノフージョンなどの機械的衝突を用いたプロセスによって多孔質化することによって、準備することができる。この準備された、小片、多孔質のPTFE、PFAまたはPVdFなどのディスパージョンを用いることができる。
(2)延伸多孔質PTFEを冷凍しておき、チョッピングなどによって破砕する。このチョッピングの際に、任意の破砕工具を用いることができる。
【0055】
ここで、とくにことわっておくが、小片にする元の多孔質フッ素樹脂膜は、どれでもよいというわけではない。小片は、図11に示すように、ヒゲ根のように繊維3f等がPFC系高分子中に突出するものでなければ効果は小さい。このため、微小結節3pとその間に張られる繊維3fとが形成される延伸された多孔質PTFE膜でなければ、本実施の形態における効果を得ることはできない。とくに二軸延伸PTFE膜が、上記の作用効果を得る上で非常に好ましい。また、親水性樹脂膜を形成する場合についても、上記の延伸多孔質PTFEを原料として小片を作製することは必須であり、とくに二軸延伸多孔質PTFE膜を原料とすることが非常に好ましい。
【0056】
二軸延伸多孔質PTFEから得た小片3を用いることによって、図5に示すように二軸延伸多孔質PTFE3における高密度の繊維3fや微小結節3pに親水性樹脂膜13が形成され、撥水性のPTFEは親水性となる。このため、PFC系高分子が乾燥状態や洪水状態になったとき、高密度で存在する親水性樹脂膜13から湿分をPFC系高分子層5内へと供給したり、吸収したりすることができる。この結果、PFC系高分子は安定して適切な範囲の湿分を維持することができ、上述したように長期間にわたって安定して能率を確保することが可能となる。厚みの下限は、いくら薄くてもよいが、現実的には2μm未満とすることは難しい。
【実施例】
【0057】
上記の本発明のガス分解素子について、とくに固体電解質に着目して実施例により、その作用効果のうち、ガス分解の能率面について作用効果を検証した。耐久性については、検証実験を準備している。
1.(多孔質フッ素樹脂/PFC系高分子)複合膜の作製
延伸多孔質PTFEとPFC系高分子のナフィオンとの複合膜を次のようにして作製した。まず、延伸多孔質PTFEについては、住友電工ファインポリマー株式会社製ポアフロンを用いた。試験に用いたポアフロンの各諸元は、次の範囲とした。一軸および二軸延伸(標準:二軸延伸)、孔径0.2μm〜1μm(標準:0.2μm)、厚み10μm〜25μm(標準:20μm)、気孔率60%(標準:70%)
また、本発明例7を除いて残りのすべての本発明例に対して、親水化処理を行って、親水性樹脂膜を形成した。親水性樹脂膜の形成方法または親水化処理法は、つぎのとおりである。
(1)上記のポアフロンをIPA(イソプロピルアルコール)に、30分間、浸漬する。
(2)このあと、PVA水溶液(1wt%)に浸漬し、次いで乾燥を2回繰り返した。PVA水溶液は0.3〜1.2wt%のものを用いることができる。
(3)0.1N塩酸を含むグルタルアルデヒド水溶液(2.5wt%)に、(2)の処理を終えたポアフロンを直ちに浸漬し、常温で1時間架橋反応させる。次いで、純水中で12時間以上、攪拌洗浄を行う。
(4)このあとポアフロンを枠に固定して自然乾燥し、次いで真空乾燥する。
上記(3)において、架橋は、グルタルアルデヒド水溶液に浸漬する方法を用いているが、この方法以外にも、テレフタルアルデヒドに浸漬する方法を用いてもよい。さらに、電子線架橋によってもよい。
一部の試験体については、貫通孔を設け(本発明例8)、また小片を混入させた(本発明例9)。
上記のポアフロンにナフィオン溶液(20wt%)を塗布し、50℃で10分間乾燥した。乾燥後、さらに130℃に20分間保持する加熱処理を行い、複合膜を得た。
2.MEAの作製
白金を40wt%でアセチレンブラックに担持した触媒に適量水を加えて混合後、5wt%ナフィオン溶液を加え、攪拌した。これをカーボンペーパーに塗工した後、60℃に10分間程度保持して乾燥した。次いで、上記1.で作製した(ポアフロン/ナフィオン)複合膜の両側に、乾燥を終えたカーボンペーパーを配置して、温度130℃、加圧時間3分間、圧力20kgf/cm2の条件によって、ホットプレスでMEAを作製した。上記のMEAにガス拡散層として5mm厚みのカーボンフェルトを入れ、その陽極側および負極側に電極集電体を配置した。最後にアクリル製のガスホルダーを取り付け、0.5kgf/cm2の圧力でボルト締めした。なお、電極面積は4cm角サイズで実施した。
3.ガス分解性能の評価
100ppm濃度のアセトアルデヒドガスをテトラパックに5000cm3満たした中に、上記の試験体を装入し、シールした。外部電源で2Vの電圧を陰陽極間に印加し、テトラパック内部のアセトアルデヒド濃度を検知管で定期的に測定した。表1に示すアセトアルデヒド濃度は20分後のアセトアルデヒド濃度である。試験体の仕様および性能測定結果(20分後のアセトアルデヒド濃度)について、表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
電極面積4cm角サイズの場合、ガス分解素子を運転開始して10分後のアルデヒド濃度が初期100ppmの半分以下の濃度まで分解することを1つの基準とした。表1に示す測定結果は、最も能率の低い本発明例7が40ppmであり、その他の本発明例はいずれも基準値より低く、満足すべき能率を有している。
【0060】
(1)厚み(固体電解質層の厚み≒延伸多孔質PTFEの厚み)
本発明例5(厚み25μm)、本発明例4(厚み15μm)、本発明例2(厚み20μm)は、厚み以外の要因を共通にするが、厚みが薄くなるにつれて、アセトアルデヒド層度は25ppm→20ppm→15ppmと低下している。この結果、厚みが能率に大きく作用することが確認できた。また、小片を分散させた本発明例9では、厚みを10μmまで薄くしているが、アセトアルデヒド濃度2ppmまで低減できており、厚みの効果が歴然と認められる。
(2)親水化処理
本発明例7は、本発明例2を基準に、親水化処理がされていないという要因のみ異なる。本発明例2のアセトアルデヒド濃度は20ppmであったのに対して、本発明例7では40ppmという高い値であった。したがって、親水性樹脂膜の形成は、能率を確保するうえで重要である。
(3)気孔率
本発明例1〜3は、厚み、平均孔径、親水性樹脂膜の形成、の要因を共通にして、気孔率を50%〜90%の範囲に変えた試験体であるが、気孔率の増大につれてアセトアルデヒド濃度が減少しており、気孔率を大きくすることが能率の確保に重要であることが分かる。
(4)貫通孔
さらに、貫通孔については広い意味での気孔率とみることができるので、本発明例8において、低いアセトアルデヒド濃度の結果を得たことも、上記の延長上で理解することができる。
(5)一軸延伸、二軸延伸
本発明例2と本発明例10とを比較すると、ポアフロンのうちの一軸延伸と二軸延伸のどちらが、能率に関して好ましいか検証できる。それによれば、一軸延伸ポアフロンの本発明例10ではアセトアルデヒド濃度は35ppmであるのに対して、本発明例2では20ppmであり、二軸延伸のポアフロンが好ましいことがわかる。二軸延伸の場合、一軸延伸に比べて樹脂部分が微細なので、イオン伝導の障害になる程度が小さいためと考えられる。
(6)平均孔径
本発明例2と本発明例6とを比較すると、能率に関して、平均孔径の影響がわかる。本発明例6のアセトアルデヒド濃度は25ppmであるのに対して、本発明例2では20ppmであった。したがって、気孔率などを一定にした場合は、平均孔径は小さいほうが、やや好ましいということができる。
(7)小片
小片を分散させた本発明例9における非常に低いアセトアルデヒド測定結果については、上述のように、小片自身の影響というよりも、小片によって厚み10μmまで薄膜化したことによる効果が大きいと考えられる。
【0061】
上記より、ポアフロンを用いて固体電解質層の薄膜化を推し進める。その際に、薄膜化を推し進める上で、必要な場合は、ポアフロンの小片を用いるのがよい。また、強度確保の面から貢献し、かつ能率確保にも有効な、二軸延伸のポアフロンを用い、親水化処理を行うのがよい。そして、強度確保を念頭におきながら貫通孔や気孔率の設定を行うことができる。
【0062】
(他の実施の形態)
1.上記の説明では、酸化反応(アノード反応)によるガス分解の例を示したが、還元反応(カソード反応)であってもよい。還元反応の場合は、固体電解質を伝導するイオンは陰イオンとなり、陰イオン伝導を示す固体電解質を用いることになる。
2.上記の実施の形態における各ポイント要素を組み合わせたものも本発明の範囲に含まれる。たとえば、(1)「貫通孔をあけた延伸多孔質PTFE膜」を補強材とする固体電解質において、延伸多孔質PTFE膜の微小結節および繊維に親水性樹脂膜を形成したものであってもよい。また、(2)単相領域を貫通孔にPFC系高分子を充填して形成する場合、延伸多孔質PTFE膜から作製した小片によって単相領域の周囲を補強してもよい。小片を用いたほうが薄膜化しやすい利点を有する。
【0063】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、ガス分解素子特有の使用のされ方に適合して、イオン導電性を十分高く確保しながら、湿潤下でのピンホール対策および耐久性向上をはかった固体電解質を備えたガス分解素子を得ることができるので、自動車を含む各種乗り物、オフィス、一般家庭、駅、港、空港等の待合所、トイレなどでの利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態1におけるガス分解素子を示す断面図である。
【図2】図1に示すガス分解素子の部分断面図である。
【図3】固体電解質層に用いられる一軸延伸多孔質PTFE膜についての、(a)はSEM像であり、(b)はその模式図である。
【図4】固体電解質層に用いられる二軸延伸多孔質PTFE膜についての、(a)はSEM像であり、(b)はその模式図である。
【図5】親水化処理によって、延伸多孔質PTFE膜の繊維の表面に形成される親水性樹脂膜を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2のガス分解素子における固体電解質層を示す平面図である。
【図7】図6の固体電解質層の変形例を示す斜視図である。
【図8】図6のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】図8の固体電解質の部分を平面的に見た図である。
【図10】本発明の実施の形態3のガス分解素子における固体電解質層を示す断面図である。
【図11】図10の固体電解質層の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0066】
3 延伸多孔質PTFE膜、3f 繊維、3h 貫通孔(単相領域形成用)、3p 微小結節、5 PFC系高分子層、6 触媒電極層、6a 導電粒子(粉末)、6b 導電構造体(多孔質部材)、6z 触媒微粒子、7 対向電極層(触媒電極層)、8,9 導電性基体、10 ガス分解素子、11 固体電解質層、13 親水性樹脂膜、21 空気入口、22 出口、29 空気流入用孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒機能をもつ触媒微粒子を担持する触媒電極層と、
前記触媒電極層と対をなす対向電極層と、
前記触媒電極層と前記対向電極層とに挟まれたイオン伝導性の固体電解質層とを備え、
前記固体電解質層は、多孔質フッ素樹脂膜と、その多孔質フッ素樹脂膜の多孔質の間隙を充填して前記触媒電極層および対向電極層へと連続するパーフルオロカーボン系イオン交換性高分子とを有することを特徴とする、ガス分解素子。
【請求項2】
前記多孔質フッ素樹脂膜が、二軸延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜であることを特徴とする、請求項1に記載のガス分解素子。
【請求項3】
前記多孔質フッ素樹脂膜の気孔率が50%以上95%以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のガス分解素子。
【請求項4】
前記多孔質フッ素樹脂膜の平均孔径が0.1μm以上5μm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載のガス分解素子。
【請求項5】
前記固体電解質層の厚みが、2μm以上50μm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載のガス分解素子。
【請求項6】
前記多孔質フッ素樹脂膜が延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜であり、その延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜を立体網目状に構成する微小結節および該微小結節間に張られる繊維の表面に親水性樹脂膜が形成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載のガス分解素子。
【請求項7】
前記固体電解質層の厚みが30μm以下であり、前記延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜が二軸延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜であることを特徴とする、請求項6に記載のガス分解素子。
【請求項8】
平面的に見て、前記触媒電極層から対向電極層にかけて前記多孔質フッ素樹脂膜を含まないパーフルオロカーボン系イオン交換性高分子層の単相領域が、複数、設けられていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載のガス分解素子。
【請求項9】
前記単相領域の平均径が、1mm以上30mm以下であることを特徴とする、請求項8に記載のガス分解素子。
【請求項10】
前記多孔質フッ素樹脂膜が小片にされたものであり、その小片が多数、前記パーフルオロカーボン系イオン交換性高分子内に分散したものであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載のガス分解素子。
【請求項11】
前記小片が二軸延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜から形成されたものであることを特徴とする、請求項10に記載のガス分解素子。
【請求項12】
前記固体電解質層の厚みが25μm以下であり、前記小片における微小結節および繊維には親水性樹脂膜が形成されていることを特徴とする、請求項11に記載のガス分解素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−172475(P2009−172475A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11763(P2008−11763)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】