説明

ガス圧式アクチュエータ

【課題】より低コストでの無負荷作動対策を可能とする。
【解決手段】ガス圧式アクチュエータ1は、高圧ガス発生部2と高圧ガス発生部からの高圧ガスで作動するピストン機構部3を備える。ピストン機構部は、高圧ガス発生部に接続するボディシリンダ4を備え、そのボディシリンダの内部にピストン6付きのピストンロッド5が設けられる。またピストンロッドにストッパ9が設けられるとともに、ボディシリンダの先端部にボディアッパ10が設けられ、これらストッパとボディアッパによりピストンロッドの前進を停止させる。そして、ストッパとボディアッパの間に介在する状態でダンパ部材11が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発生させる高圧ガスでピストン機構を作動させて駆動力を発生するガス圧式アクチュエータに関する。本発明のガス圧式アクチュエータは、例えば、自動車のフード持ち上げ装置等に使用される。
【背景技術】
【0002】
フード持ち上げ装置に用いられるガス圧式アクチュエータは、高圧ガスを発生させる高圧ガス発生部と、高圧ガス発生部からの高圧ガスが流入するボディシリンダと、ボディシリンダの内部に軸方向移動可能に設けられたピストンロッドと、を有している。ピストンロッドにはストッパが設けられ、ボディシリンダの先端部にボディアッパが設けられている。アクチュエータ作動時において、ピストンロッドのストッパがボディアッパに突き当たることにより、ピストンロッドの前進におけるストローク長が規定される。
【0003】
このガス圧式アクチュエータは、フード持ち上げ装置に取り付けられた状態では、ピストンロッドにボンネットフードの持ち上げ負荷が加わった状態で作動する。したがって、高圧ガス発生部は、持ち上げ負荷に抗しつつピストンロッドを前進可能な量の高圧ガスを発生するように設計される。
【0004】
一方、ガス圧式アクチュエータは、仮に、フード持ち上げ装置への取付け前の輸送時などにおける無負荷状態での作動時には、持ち上げ負荷のある場合に比べ、ボディアッパとストッパとの間に大きな突き当たり衝撃が加わる。これに対応する技術として、従来、ピストンロッドの下端部に衝撃吸収部を設ける構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上記従来技術では、無負荷作動時において、ピストンロッドの衝撃吸収部が、ピストンロッドに対し相対移動するピストン及びストッパにより、塑性変形される。この塑性変形により、ピストンロッドの移動に対する抵抗が発生し、ストッパのボディアッパに対する衝撃が緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−56068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術の構造では、ピストンロッドにストッパやピストンを嵌装した後に、ピストンロッドの下端部の外周形状をプレス加工で変形させ、その変形部分を衝撃吸収部とする必要がある。このため、ガス圧式アクチュエータの加工工程や組立工程が複雑となり、コストの上昇を招く可能性があった。
【0008】
本発明の目的は、より低コストでの無負荷作動対策を可能とするガス圧式アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本願第1の発明は、フード持ち上げ装置に取り付けて用いられ、前記フード持ち上げ装置の駆動時に高圧ガスを発生させる高圧ガス発生部と、前記高圧ガス発生部に基端部を接続されたボディシリンダと、前記高圧ガスの前記高圧ガスのガス圧をピストンで受け、前記ボディシリンダ内を前進するピストンロッドと、前記ピストンロッドに設けられたストッパと、前記ボディシリンダの先端部に設けられ、作動時に前記ストッパを突き当てて前記ピストンロッドの前進を停止するボディアッパと、前記ストッパと前記ボディアッパとの間に介在するとともに、前記ピストンロッドに対し非接触に設けられた、略筒状のダンパ部材と、を有することを特徴とする。
【0010】
本願第1発明のガス圧式アクチュエータにおいては、作動時に高圧ガス発生部から発生した高圧ガスがボディシリンダ内に導入され、そのガス圧がピストンで受圧されることによってピストンロッドが前進する。ボディシリンダの先端には、このようにして前進するピストンロッドのストッパを突き当てることでピストンロッドを停止するためのボディアッパが設けられている。
【0011】
ここで、本願第1発明では、ピストンロッドのストッパとボディシリンダのボディアッパとの間に、略筒状のダンパ部材を設けている。これにより、ピストンロッドにフード持ち上げ負荷が加わらない無負荷状態において、当該ダンパ部材がストッパとボディアッパの間での軸方向に圧縮変形し、ボディアッパに加わる衝撃を緩和可能となる。このとき、別部材であるダンパ部材をピストンロッドと非接触に配置するだけで足りるので、ピストンロッドに加工が必要な従来構造のように加工工程や組立工程が複雑となることがない。したがって、製造時のコストの上昇が抑制されるので、より低コストでの無負荷作動対策が可能となる。
【0012】
第2発明は、上記第1発明において、前記ダンパ部材は、前記ピストンロッドにフード持ち上げ負荷が加わる負荷状態では当該ダンパ部材が軸方向に圧縮変形せずに前記ピストンロッドの前進が停止し、前記ピストンロッドに前記フード持ち上げ負荷が加わらない無負荷状態では当該ダンパ部材が前記ストッパと前記ボディアッパの間での軸方向に圧縮変形しつつ前記ピストンロッドの前進が停止するような、圧縮強度を備えていることを特徴とする。
【0013】
これにより、無負荷状態での衝撃吸収性能を確保しつつ、通常のフード持ち上げ負荷が加わる負荷状態では衝撃を吸収せずに駆動力をフードへと伝達することができる。
【0014】
第3発明は、上記第2発明において、前記ダンパ部材は、座屈を伴う前記圧縮変形を行うような前記圧縮強度を備えていることを特徴とする。
【0015】
ダンパ部材が座屈を伴いつつ圧縮変形することで、上記衝撃吸収性能をより効果的に発揮することができる。
【0016】
第4の発明では、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記ダンパ部材は、前記ボディアッパと前記ボディシリンダの間に形成される隙間に位置する先端部と、前記ピストンロッドの周面に隙間を介して沿うように配置された基端部と、を備えることを特徴とする。
【0017】
これにより、ピストンロッド及びボディシリンダの構造を大きく変えることなくダンパ部材を配置することができる。
【0018】
第5の発明は、上記第1乃至第4発明のいずれかにおいて、前記ボディシリンダは、固定用ナットを螺合するための螺合部と、前記フード持ち上げ装置への取付けに用いられるブラケットを、前記螺合部に螺合された固定用ナットとともに挟持して固定するフランジ部とを、外周部に備えることを特徴とする。
【0019】
ブラケットをナット止めでボディシリンダに組み付ける構造とすることで、ブラケットの組み付け工程の自由度が高まり、生産効率をより向上させることが可能となる。また、ブラケットの形状がガス圧式アクチュエータの製品種類の規定要因となることを避けることができ、生産管理や製品管理の簡素化が可能となる。この結果、ブラケットに関してコスト低減が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、より低コストで無負荷作動対策を実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ガス圧式アクチュエータの適用対象であるフード持ち上げ装置の要部を表す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態によるガス圧式アクチュエータの作動前の状態における外観図、及び縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態によるガス圧式アクチュエータの負荷作動後の状態における外観図、及び縦断面図である。
【図4】ガス圧式アクチュエータの負荷作動での作動後の状態における内部構造を部分的に拡大して示す図である。
【図5】ガス圧式アクチュエータの無負荷作動での作動後の状態における内部構造を部分的に拡大して示す図である。
【図6】ガス圧式アクチュエータの組立て前における各部品の外観を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、本発明のガス圧式アクチュエータをフード持ち上げ装置に適用した場合の実施形態である。
【0023】
図1に、本実施形態のガス圧式アクチュエータ1の適用対象である、フード持ち上げ装置22を示す。
【0024】
図1において、車両21に設けられるフード持ち上げ装置22は、車両21が歩行者24に衝突した際の歩行者24に対する二次的な衝撃を緩和する。フード持ち上げ装置22は、図示しない検知システムにより、車両21と歩行者24の衝突が検知された際、あるいは、車両21と歩行者24の衝突が予知された際に、作動する。すなわち、駆動源であるガス圧式アクチュエータ1がボンネットフード25のフロントガラス側を下側から押して持ち上げる。これにより、ボンネットフード25の下側に空隙が生じ、ボンネットフード25のクッション性が高められる。この結果、車両21との衝突により放り上げられた歩行者24がボンネットフード25より受ける衝撃が緩和され、また歩行者24がフロントガラス26へ衝突するのが抑制される。
【0025】
本実施形態のガス圧式アクチュエータ1の構造を図2と図3に示す。図2は、ガス圧式アクチュエータ1の作動前の状態を示している。図2(a)は外観図であり、図2(b)は縦断面図である。図3は、ガス圧式アクチュエータ1の作動後の状態を示している。図3(a)は外観図であり、図3(b)は縦断面図である。
【0026】
これら図2(a)、図2(b)、図3(a)、及び図3(b)において、本実施形態のガス圧式アクチュエータ1は、高圧ガスを発生させる高圧ガス発生部2と、高圧ガス発生部2からの高圧ガスで作動して得られる駆動力をフード持ち上げ装置22に伝えるピストン機構部3を備えている。
【0027】
高圧ガス発生部2は、図示しない信号線が接続されており、外部から作動信号が入力されたことを契機に作動する。
【0028】
ピストン機構部3は、高圧ガス発生部2からの高圧ガスの流入を可能とするように、高圧ガス発生部2に基端部を接続したボディシリンダ4を備える。ボディシリンダ4には、当該ボディシリンダ4の内部にほぼ全体が納まるようにピストンロッド5が設けられている。
【0029】
ピストンロッド5は、基端部にピストン6を有している。ピストン6は、ピストンリングとして機能するO-リング7が装着される。O-リング7は、ボディシリンダ4の内周面に気密的に摺接する。またピストンロッド5は、先端部にキャップ8が装着されている。このキャップ8は、フード持ち上げ装置22においてボンネットフード25を持ち上げる際に、ボンネットフード25への持ち上げ駆動力の伝達経路の一部を構成する。
【0030】
ピストンロッド5は、高圧ガス発生部2からの高圧ガスのガス圧をピストン6で受けつつ、ボディシリンダ4内で前進を行う。ピストンロッド5の前進は一定のストローク長でなされ、前進時にはピストンロッド5が一定の長さでボディシリンダ4から突出する。この突出動作により、フード持ち上げ装置22におけるボンネットフード25の持ち上げ駆動力を発生させる。
【0031】
この際、ピストンロッド5の前進は、ストッパ9を介してボディアッパ10により停止する。より具体的には、ピストンロッド5が一定のストローク長の前進を行うと、ピストンロッド5の前進がストッパ9を介しボディアッパ10で規制されて停止する。これにより、ピストンロッド5の前進が一定のストローク長で規定され、ボンネットフード25の持ち上げが、予め定められた高さで実行される。
【0032】
また、ストッパ9とボディアッパ10の間には、ダンパ部材11が介在するように組み込まれている。ダンパ部材11は、全体として筒形に形成されており、先端部12と基端部13とを有している。
【0033】
ボディアッパ10の基端側に部分的に形成された小径部14とボディシリンダ4の内周面との間には、隙間S(後述の図4参照)が形成される。先端部12は、この隙間Sに入り込むように配置され、図示上端がボディアッパ10に固定される。基端部13は、ピストンロッド5の周面に、隙間を有して沿うように配置される。このような構造により、既存のピストンロッド5及びボディシリンダ4の構造を大きく変えることなくダンパ部材11を配置することができる。また、上記先端部12の固定により、隙間を介した上記の配置状態が保たれる。つまりダンパ部材11は、先端部12をボディアッパ10に固定してボディシリンダ4に組み込まれることで、先端部12と基端部13とのいずれもがピストンロッド5に非接触な状態を維持する。
【0034】
ここで、ダンパ部材11は、ボディアッパ10によるピストンロッド5の前進規制時に、ストッパ9とボディアッパ10との間で軸方向に圧縮される向きの力を受ける。したがって、ダンパ部材11は、このときの圧縮方向の荷重に関して、所定の強度が与えられている。この強度付与の詳細内容について、図4及び図5を用いて説明する。
【0035】
すなわち、ガス圧式アクチュエータ1が車体側に取り付けられた状態では、ピストンロッド5には、ボンネットフードの持ち上げ負荷が加わる。図4に、この状態での負荷作動時のストッパ9、ボディアッパ10、及びダンパ部材11の挙動を部分的に拡大して示す。図4及び図3において、前述の作動信号の入力により高圧ガス発生部2が高圧ガスを発生する。その高圧ガスは、ボディシリンダ4に流入してピストン6にガス圧を作用させてピストンロッド5を前進させる。ピストンロッド5の前進が一定のストローク長に達すると、ボディアッパ10がピストンロッド5の前進を阻止し、停止させる。ダンパ部材11は、この際に加わる負荷作動時荷重に耐え、元の形状を保ったまま、ストッパ9とボディアッパ10の間に介在する。
【0036】
一方、ガス圧式アクチュエータ1が車体側に取り付けられる前の、例えば輸送時の状態では、ピストンロッド5に上記負荷がかかっていない無負荷状態である。
【0037】
図5に、この状態での無負荷作動時のストッパ9、ボディアッパ10、及びダンパ部材11の挙動を部分的に拡大して示す。図5において、高圧ガス発生以後、ピストンロッド5の前進が一定のストローク長に達するまでは負荷作動の場合と同様である。無負荷作動でピストンロッド5の前進が一定のストローク長に達すると、ストッパ9がダンパ部材11に突き当たる。この場合、ボンネットフード25の持ち上げ負荷がないことから、ボンネットフード25の持ち上げ負荷で消費されるのに相当する分だけ余分な運動エネルギをピストンロッド5が有している。そのため、負荷作動の場合に比べてその余分な運動エネルギが加わった無負荷作動時荷重をもってストッパ9がダンパ部材11に突き当たる。この結果、ダンパ部材11が座屈を伴って圧縮変形する。そしてこのダンパ部材11の圧縮変形によりボディアッパ10に加わる衝撃が緩和される。
【0038】
ここで、ダンパ部材11が座屈を伴う圧縮変形を行う際、先端部12の外周面とボディシリンダ4の内周面の間に設けた上記隙間Sが有効である。つまり、座屈を伴って圧縮変形するダンパ部材11が隙間Sに納まるので、ダンパ部材11が座屈を伴う圧縮変形を行いやすい。
【0039】
以上のように、ダンパ部材11の強度は、上記負荷作動時に負荷作動荷重に耐えて元の形状を保つことができ、かつ、無負荷作動時に無負荷荷重で圧縮変形を生じるような強度に設定される。これにより、無負荷作動時での衝撃吸収性能を確保しつつ、通常のフード持ち上げ負荷が加わる負荷作動時では衝撃を吸収せずに駆動力をボンネットフード25へと伝達することができる。上記のような耐圧縮荷重特性を必要とするダンパ部材11は、アルミ合金材で作製するのが好ましい。
【0040】
図2及び図3に戻り、ストッパ9の側面には、テーパ面16が形成されている。テーパ面16の下方には、ボールユニット17が設けられている。ボールユニット17は、ボールリング18に複数のボール19を支持させた構造である。このボールユニット17は、テーパ面16とボディシリンダ4の内周面との間に、複数のボール19が配された状態で、ピストンロッド5に組み付けられている。ピストンロッド5が後退しようとすると、テーパ面16によりボールユニット17の各ボール19が、ボディシリンダ4の内周面に押し付けられる。これにより、ピストンロッド5の後退が規制され、ピストンロッド5の前進状態が維持される。この結果、ピストンロッド5が一定長さでボディシリンダ4から突出した状態が維持され、これによってボンネットフード25が持ち上げられた後の当該持ち上げられた高さが維持される。
【0041】
なお、上記のようなガス圧式アクチュエータ1をフード持ち上げ装置22に駆動源として組み込むについては、ボディシリンダ4に組み付けたブラケット27を介して車両21の所定の部位に取り付ける。その取付け部位は、車両21の車種に応じて異なるが、例えばダッシュアッパーコンポーネント(図示せず)などの車両部材を利用して取り付けるのが一つの例である。
【0042】
ブラケット27のボディシリンダ4への組み付けは、ナット止めで行う。すなわち、ボディシリンダ4の外周面には、固定受けフランジ部28と螺合部29とが設けられている。組み付け時には、螺合部29に固定用ナット30が螺合され、この固定用ナット30と固定受けフランジ部28とがブラケット27を挟持して固定する。これにより、ブラケット27がボディシリンダ4に組み付けられる。
【0043】
次に、ガス圧式アクチュエータ1の組立て手順の例を、図6を参照しつつ説明する。図6は、ガス圧式アクチュエータ1を組立て前における各部品の分解図である。図6において、まずロッドアセンブリRAが組み立てられる。ロッドアセンブリRAの組立ては、予めストッパ9とピストン6とが設けられたピストンロッド5に対し、O-リング7、ボールリング18、ボール19のそれぞれを適宜な順番で組み付けることにより行われる。
【0044】
次に、上記ロッドアセンブリRAがボディシリンダ4に挿入され、セットされる。その後、ボディアッパアセンブリBAが組み立てられる。ボディアッパアセンブリBAの組立ては、ボディアッパ10にダンパ部材11がかしめ法などで固定的に組み付けられることにより、行われる。
【0045】
その後、ロッドアセンブリRAがセット済みのボディシリンダ4に対し、上記ボディアッパアセンブリBAが組み付けられる。ボディアッパアセンブリBAの組み付けは、螺合によって行われる。すなわちボディアッパ10の外周に形成してある雄ねじ部31がボディシリンダ4に形成してある雌ねじ部(図示省略)に螺合されることで、組み付けられる。
【0046】
そして、ボディシリンダ4にセット済みのピストンロッド5の先端に、キャップ8が螺合により装着される。そして最後に、前述したようにして、ブラケット27が、固定用ナット30によるナット止めによりボディシリンダ4に組み付けられる。
【0047】
以上の例のように、ブラケット27のボディシリンダ4への組み付けは、最終工程として行うことができる。
【0048】
以上のように構成した本実施形態のガス圧式アクチュエータ1によれば、以下の効果を得る。
【0049】
本実施形態のガス圧式アクチュエータ1では、ピストンロッド5のストッパ9とボディシリンダ4のボディアッパ10との間に、略筒状のダンパ部材11を設けている。これにより、ピストンロッド5にフード持ち上げ負荷が加わらない無負荷作動時において、当該ダンパ部材11がストッパ9とボディアッパ10の間での軸方向に圧縮変形し、ボディアッパ10に加わる衝撃を吸収し緩和できる。特に、ダンパ部材11が座屈を伴いつつ圧縮変形することで、上記衝撃吸収性能をより効果的に発揮することができる。このとき、別部材であるダンパ部材11をピストンロッド5と非接触に配置するだけで足りるので、ピストンロッド5に加工が必要な従来構造のように加工工程や組立工程が複雑となることがない。したがって、製造時のコストの上昇が抑制されるので、より低コストでの無負荷作動対策が可能となる。
【0050】
また、ブラケット27をナット止めでボディシリンダ4に組み付ける構造とすることで、ブラケット27がボディシリンダ4に対し蝋付けなどにより一体化される場合と異なり、ブラケット27の組み付け工程の自由度が高まる。
【0051】
すなわち、ガス圧式アクチュエータ1では、高圧ガス発生部2に作動信号を入力するための通電部位が設けられる。その通電部位の気密性を促進するために、例えば樹脂ポッティング加工が施される。樹脂ポッティング加工は、熱硬化性樹脂を用いることから、加熱炉での一定時間の加熱処理を必要とする。しかしながら、上記のように蝋付けを用いたブラケット組み付け手法の場合、蝋付けに専用の設備を必要とするなどのことから、樹脂ポッティング加工の前にブラケット27の組み付けを行う必要がある。したがって樹脂ポッティング加工のための加熱炉には、ブラケット27を組み付け済みの比較的大きな加工途中品を投入することになるため、加熱炉に投入可能な加工途中品の数が制限される。その結果、ガス圧式アクチュエータ1の生産効率向上への阻害要因になる。
【0052】
本実施形態では、前述したように、ブラケット27のボディシリンダ4への組み付けは、最終工程として行うことができる。この結果、例えば高圧ガス発生部2に施す樹脂ポッティング加工をブラケット27の組み付け前に実行可能である。そしてこのことにより、樹脂ポッティング加工の作業効率を高めることが可能である。
【0053】
また上記のように蝋付け等によりブラケット27がボディシリンダ4に一体化される構造では、ブラケット27の形状自体がガス圧式アクチュエータ1の製品種類の規定要因となる。このため、形状の異なるブラケット27も含めてガス圧式アクチュエータ1の生産管理や製品管理を行う必要があり、このこともコスト低減を阻害する要因となる。
【0054】
本実施形態では、前述のようにブラケット27をナット止めでボディシリンダ4に組み付ける構造とすることで、ブラケット27の形状がガス圧式アクチュエータ1の製品種類の規定要因となることを避けることができ、生産管理や製品管理の簡素化が可能となる。この結果、ブラケット27に関してコスト低減が可能となる。
【0055】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、これは代表的な例に過ぎず、本発明はその趣旨を逸脱することのない範囲で様々な形態で実施可能である。例えば上記形態は、フード持ち上げ装置22に適用した場合であったが、これに限られず、本発明によるガス圧式アクチュエータ1は動作の急速性が求められる様々な装置に使用可能である。また上記形態では、ボディシリンダ4に高圧ガス発生部2が直線的な位置関係で接続される構造であったが、これに限られない。すなわち、ボディシリンダ4の基端部にエルボ形の曲折部が設けられ、その曲折部に高圧ガス発生部2が接続されるタイプのガス圧式アクチュエータ(例えば、特開2008-56068号参照)に対し、本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 ガス圧式アクチュエータ
2 高圧ガス発生部
3 ピストン機構部
4 ボディシリンダ
5 ピストンロッド
6 ピストン
9 ストッパ
10 ボディアッパ
11 ダンパ部材
12 先端部
13 基端部
27 ブラケット
28 固定受けフランジ部
29 螺合部
30 固定用ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フード持ち上げ装置に取り付けて用いられ、前記フード持ち上げ装置の駆動時に高圧ガスを発生させる高圧ガス発生部と、
前記高圧ガス発生部に基端部を接続されたボディシリンダと、
前記高圧ガスの前記高圧ガスのガス圧をピストンで受け、前記ボディシリンダ内を前進するピストンロッドと、
前記ピストンロッドに設けられたストッパと、
前記ボディシリンダの先端部に設けられ、作動時に前記ストッパを突き当てて前記ピストンロッドの前進を停止するボディアッパと、
前記ストッパと前記ボディアッパとの間に介在するとともに、前記ピストンロッドに対し非接触に設けられた、略筒状のダンパ部材と、
を有することを特徴とするガス圧式アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載のガス圧式アクチュエータにおいて、
前記ダンパ部材は、
前記ピストンロッドにフード持ち上げ負荷が加わる負荷状態では当該ダンパ部材が軸方向に圧縮変形せずに前記ピストンロッドの前進が停止し、前記ピストンロッドに前記フード持ち上げ負荷が加わらない無負荷状態では当該ダンパ部材が前記ストッパと前記ボディアッパの間での軸方向に圧縮変形しつつ前記ピストンロッドの前進が停止するような、圧縮強度を備えている
ことを特徴とするガス圧式アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2記載のガス圧式アクチュエータにおいて、
前記ダンパ部材は、
座屈を伴う前記圧縮変形を行うような前記圧縮強度を備えている
ことを特徴とするガス圧式アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のガス圧式アクチュエータにおいて、
前記ダンパ部材は、
前記ボディアッパと前記ボディシリンダの間に形成される隙間に位置する先端部と、
前記ピストンロッドの周面に隙間を介して沿うように配置された基端部と、
を備えることを特徴とするガス圧式アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のガス圧式アクチュエータにおいて、
前記ボディシリンダは、
固定用ナットを螺合するための螺合部と、
前記フード持ち上げ装置への取付けに用いられるブラケットを、前記螺合部に螺合された固定用ナットとともに挟持して固定するフランジ部と
を、外周部に備えることを特徴とするガス圧式アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−162136(P2011−162136A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29369(P2010−29369)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】