説明

ガス検出装置及びガス検出方法

【課題】気流の影響を抑制しながら感度のよいガス検出をリアルタイムに実行可能なガス検出装置及びガス検出方法を提供する。
【解決手段】このガス検出装置10は、検出対象のガスが内部に導入されて流れる中空ファイバ1,1aと、中空ファイバの内部に光を照射する発光部11と、中空ファイバの内部に照射した光の戻り光を検出する検出部12と、検出部で検出した戻り光に基づいてガスの分析を行う分析部16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象のガスを中空ファイバの内部で流しながら検出するガス検出装置及びガス検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なガスセンシングの手法としては、テトラーバック内に捕集ポンプなどを用いて測定ガスを捕集した後で、捕集したガスをガスクロマトグラフィや赤外分光によって同定する方法が知られている。同様に、軸受内部に充填された潤滑剤の劣化を評価する場合でも、軸受から発生するガスを捕集した後でガスを分析評価することが可能である。しかし、発生ガスの検出により軸受の劣化をリアルタイムにモニタリングしようとする場合には、上記のような捕集分析方法を用いることはできない。
【0003】
従来、回転部品を支持する一般軸受装置は、一度組み込まれると定期的な検査がないため、潤滑剤劣化異常に起因する不具合が発生したときに、初めて内部を検査することが多く、また、鉄道車両や風車等の軸受装置の場合は、一定期間使用した後に、軸受装置やその他の部分について分解し検査が行われる。このため、潤滑剤劣化異常に起因する不具合を事前に予測することが難しかった。かかる転がり軸受の異常を自動的に診断する異常診断装置として下記特許文献1に記載のものが公知である。この異常診断装置は、転がり軸受から発生する異常音を周波数解析することによって異常の診断を判断するものである。また、下記特許文献2は、転がり軸受内の潤滑剤の劣化状態を常時検出できるようにするために、転がり軸受のシールド板に、潤滑剤劣化検出装置の検出部として潤滑剤の劣化に伴って発生するガス状の炭化水素を検出する酸化錫等からなるガスセンサを取り付けた潤滑剤劣化検出装置を開示する。酸化錫等の酸化物半導体に炭化水素が付着すると、酸化物半導体の電気抵抗が変化することを利用したものである。
【特許文献1】特開2000−146762
【特許文献2】特開2003−166696
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された異常診断装置によれば、転がり軸受の外輪と内輪または軸受と転動体などの形状が不完全な場合に発生する、いわゆる「びびり音」や、傷の発生による傷音などの異常音が発生して始めて異常の診断がなされるため、異常の発生を未然に防ぐには不充分である。このため、潤滑剤劣化異常に起因する不具合を異常を未然に防ぐには、定期的に潤滑剤を採取してその劣化状態を検出する必要があるが、かかる検出のためには手間と時間を要してしまう。
【0005】
また、特許文献2は、転がり軸受のシールド板に取り付けた酸化錫等の酸化物半導体からなるガスセンサで潤滑剤の劣化に伴って発生するガス状の炭化水素を検出するようにしたものであるが、このような酸化物半導体によるセンサを軸受に用いた場合には、軸受より発生するガスの酸化物半導体への吸着が効率的である必要があるが、特に軸受の回転中では気流の複雑な拡散が生じるため、ガスの吸着が非効率的になり易く、発生したガスの検出感度を向上することが難しい。
【0006】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、気流の影響を抑制しながら感度のよいガス検出をリアルタイムに実行可能なガス検出装置及びガス検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によるガス検出装置は、検出対象のガスが内部に導入されて流れる中空ファイバと、前記中空ファイバの内部に光を照射する発光部と、前記中空ファイバの内部に照射した光の戻り光を検出する検出部と、前記検出部で検出した戻り光に基づいて前記ガスの分析を行う分析部と、を備える。
【0008】
このガス検出装置によれば、検出対象のガスを中空ファイバ内部に導入し流しながらガス検出を行うので、中空ファイバ内部のガスは外部の拡散的な気流の影響を受け難く、このため、ガスの検出感度がよくなる。また、中空ファイバの内部に光を照射しその戻り光を検出することで、例えばガスの透過スペクトルを得てガス分析を行うので、ガス検出をリアルタイムに実行できる。さらに、中空ファイバの長さを長く設定することで等価的に光の通過距離を長くすることができるので、低ノイズとなってS/N比のよいガス検出が可能となる。
【0009】
上記ガス検出装置において、前記中空ファイバに前記ガスを排出するように設けられた排出口と、前記排出口から前記ガスを吸引するガス吸引手段と、を備えることで、ガスを安定してかつ一定に流すことができる。この場合、前記ガス吸引手段による前記ガスの流れを調整するガス流れ調整手段を備えることで、ガスの流量を調整することで所定値に制御することができる。
【0010】
また、前記ガスが前記中空ファイバの一端側から内部に導入されるとともに他端側に光ファイバが配置され、前記光ファイバが前記発光部に接続する光ファイバと前記検出部に接続する光ファイバとに分岐する分岐部を有することが好ましい。光ファイバを分岐し、一方の光ファイバを通して光を他端部から中空ファイバの内部に照射でき、他方の光ファイバを通して他端部からの戻り光を検出できる。
【0011】
また、前記中空ファイバに設けたガス導入口を軸受の内部に配置し、前記軸受の内部で発生したガスを前記ガス導入口から前記中空ファイバに導入するように構成することで、ガス検出装置を軸受内部のガス検出に用いることができ、軸受の回転中でも低ノイズでガス検出が可能になり、潤滑剤劣化異常に起因する不具合を事前に予測できる。
【0012】
この場合、前記軸受は、内部に潤滑剤が充填され、前記潤滑剤が軌道輪と転動体との間に供給され、前記軌道輪と前記転動体との近傍に前記ガス導入口を設置することで、軌道輪と転動体との転動により潤滑剤が劣化して発生した炭化水素ガスを効率的に検出できる。
【0013】
本発明のガス検出方法は、検出対象のガスを中空ファイバの内部に導入し流し、前記中空ファイバの内部に光を照射し、前記中空ファイバの内部に照射した光の戻り光を検出し、前記検出した戻り光に基づいて前記ガスの分析を行うものである。
【0014】
このガス検出方法によれば、検出対象のガスを中空ファイバ内部に導入し流しながらガス検出を行うので、中空ファイバ内部のガスは外部の拡散的な気流の影響を受け難く、このため、ガスの検出感度がよくなる。また、中空ファイバの内部に光を照射しその戻り光を検出することで、例えばガスの透過スペクトルを得てガス分析を行うので、ガス検出をリアルタイムに実行できる。さらに、中空ファイバの長さを長く設定することで等価的に光の通過距離を長くすることができるので、低ノイズとなってS/N比のよいガス検出が可能となる。
【0015】
上記ガス検出方法は、上述のガス検出装置を用いて実行することができ、例えば、潤滑剤により潤滑される機械装置に前記中空ファイバを配置し、前記機械装置で発生したガスを前記中空ファイバに導入することで、ガスの検出を行い、潤滑剤劣化異常に起因する不具合を事前に予測できる。
【0016】
また、潤滑剤が充填された軸受に前記中空ファイバを配置し、前記軸受の内部で発生したガスを前記中空ファイバに導入することで、ガスの検出を行い、潤滑剤劣化異常に起因する不具合を事前に予測できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のガス検出装置及びガス検出方法によれば、気流の影響を抑制しながら感度のよいガス検出をリアルタイムに実行可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。図1は本実施の形態によるガス検出装置の概略的構成を示す概略図である。図2は図1のガス検出装置のガス検出の原理を説明するために中空ファイバの要部を示す図である。図3は、図1のガス検出装置で得られた分光分析による光強度と波長との関係による分光スペクトルの例を概略的に示す図である(スペクトルに物理的な意味はない)。
【0019】
図1に示すように、ガス検出装置10は、検出対象のガスが内部に導入されて流れる中空ファイバ1と、中空ファイバ1の内部に光を照射する発光ダイオードやレーザダイオード等からなる光源11と、中空ファイバ1の内部からの戻り光を受光するフォトダイオード等からなる受光部12と、フロー調整バルブ13と、フローメータ14と、ガス吸引ポンプ15と、受光部12で検出した戻り光に基づいてガス分析を行う分析部16と、光源11からの照射光を中空ファイバ1の内部へと導く光ファイバ17と、中空ファイバ1の内部からの戻り光を受光部12に導く光ファイバ18と、装置全体を制御する中央演算処理装置(CPU)から構成される制御部19と、各種情報を表示する表示器20と、を備える。
【0020】
図1に軸受40を模式的に示すが、軸受40の内部40aに潤滑剤が充填され、ガス検出装置10の検出対象は、例えば、軸受40の使用中に潤滑剤の劣化に伴い内部40aに発生する炭化水素ガスであるが、これに限定されるものではない。
【0021】
中空ファイバ1は、一端2が軸受40の内部40aに開口し、軸受40に螺旋状に巻かれて配置され、他端3がファイバ継手5に分離可能に接続しており、ファイバ継手5に一端が接続されて延びた中空ファイバ1aが他端3aでフロー調整バルブ13とフローメータ14とを通してガス吸引ポンプ15に接続している。ガスがガス吸引ポンプ15に吸引されて中空ファイバ1,1a内を流れ、全体として図1の方向fへと流れる。
【0022】
すなわち、図2のように、中空ファイバ1の一端2には開口を設け導入口2aとし、ガス吸引ポンプ15の作動により軸受40の内部40aのガスを導入口2aから中空ファイバ1の内部7に方向aから取り入れて導入する。ガスは中空ファイバ1,1aの内部7で方向bへと流れ、中空ファイバ1aの他端3a側に設けた排出口4から方向cへと流れ、図1のフロー調整バルブ13へと流れる。
【0023】
また、中空ファイバ1,1aへと光を導入しかつ戻り光を検出するために、中空ファイバ1aの他端3a近傍には光ファイバの分岐部6が設けられ、分岐部6から光ファイバ17,18が中空ファイバ1aに対し光通過可能に接続し二股状に延びている。これにより、光源11からの照射光を方向dへ光ファイバ17を通して送り、中空ファイバ1,1aの内部7へ導くとともに、中空ファイバ1,1aからの戻り光を方向eへ光ファイバ18を通して送り、受光部12へと導くようになっている。
【0024】
光源11からの照射光は光ファイバ17内を全反射しながら図2の方向dに伝搬し中空ファイバ1aの他端3aから中空ファイバ1,1a内に導かれ、中空ファイバ1,1aの内部7で図2の方向xのように反射しながら一端2まで伝搬する。そして、その光は、図2の方向yのように戻り光となって中空ファイバ1,1aの内部7で反射しながら他端3aで光ファイバ18に導かれ、光ファイバ18内を全反射しながら図2の方向eに受光部12へと伝搬する。
【0025】
なお、中空ファイバ1,1aは、円筒形の母材にNiやAlやAuなどのめっきを行なった後、円筒形母材をエッチングするなどの様々な方法によって作製できる。
【0026】
中空ファイバ1,1aの他端3aの排出口4(図2)には、フロー調整バルブ13とフローメータ14とが配置され、ガス吸引ポンプ15によりガスを吸引して流したとき、そのガス流量をフローメータ14で測定し、その測定したガス流量に基づいて制御部19が所定の流量となるようにフロー調整バルブ13を制御する。これにより、中空ファイバ1,1a内に導入するガス導入量を制御し、ガス流量を所定値に制御できる。
【0027】
光源11,受光部12は制御部19により制御され、分析部16が受光部12の受光結果に基づいてガスの分光分析を行う。制御部19は、光源11,受光部12からの信号情報に基づいて光の受光情報やガスの流量などを計算し、その計算結果、検出結果、分析結果等を表示器20に表示する。
【0028】
次に、図1、図2のガス検出装置10の動作について説明する。軸受40の使用中にガス吸引ポンプ15を作動させ、軸受40の内部40aからガスを中空ファイバ1の一端2の導入口2aから中空ファイバ1の内部7に引き込み、中空ファイバ1,1a内で流し、中空ファイバ1aの他端3a側に設けた排出口4からフロー調整バルブ13へと流し、フローメータ14で測定したガス流量に基づいて制御部19がフロー調整バルブ13を制御し所定の流量にする。これにより、軸受40の内部40aのガスが中空ファイバ1,1aの内部7に導かれて所定の流量で流れる。
【0029】
一方、光源11から照射光を、光ファイバ17を通して中空ファイバ1,1aの内部7に導く。照射光が中空ファイバ1の一端2まで伝搬し、一端2から戻り、その戻り光が光ファイバ18を通して受光部12に達し、受光部12で分光スペクトルを検出し、分析部16で分光スペクトルにより分光分析を行う。
【0030】
すなわち、戻り光の分光スペクトルは、戻り光が中空ファイバ1,1aの内部7で他端3aと一端2との間で往復してガスを透過するあいだにガスの特定成分により特定の波長成分が吸収され、例えば、図3のような波長と光強度の関係を持つ透過スペクトルになることから、ガス成分の同定を行うことができる。これにより、軸受40の内部40aのガスをリアルタイムに検出しその成分を分析することができる。
【0031】
以上のように、本実施の形態のガス検出装置及び方法によれば、中空ファイバ1,1aの内部7に検出対象のガスを導入することにより、軸受40の回転中でも低ノイズでガスの分光分析が可能となる。これにより、軸受40内の潤滑剤の劣化により放出される炭化水素ガスを検出し、軸受40内の潤滑剤の劣化を評価することができる。
【0032】
また、中空ファイバ1,1aの内部7にガスを導入することにより、検出対象のガスが軸受40の回転中に生じる外部の拡散的な気流の影響を受け難くなるため、ガスの検出感度がよくなる。
【0033】
また、ガス分析のため、ガスを充填した中空ファイバ1,1a中に入射光を導入し、この戻り光を検出することで、ガスの透過スペクトルを得てガス成分を同定することができる。この場合、中空ファイバ1の長さが長ければ長いほど(例えば軸受表面上に螺旋状に巻くことにより)、等価的に入射光の通過長さが長くなるために、低ノイズでガス分析が可能になる。分光分析を行うことで様々な種類のガスの同定が可能になる。また、軸受の内部等の狭い空間にもに中空ファイバ1を容易に実装することができる。
【0034】
なお、図1のように、中空ファイバ1の途中にファイバ継手5を設置し、ファイバ継手5で中空ファイバの途中を接続・分離する構成とすることにより、測定プローブ(中空ファイバ)とそれ以外の測定系とを分離して使用できる。
【0035】
次に、上述の中空ファイバ1を軸受に実装した具体例について図4を参照して説明する。図4は図1,図2の中空ファイバ1の一端2を内部に配置した転がり軸受の要部を示す要部断面図である。
【0036】
図4に示すように、軸受50は、外周面に軌道面21aを有する内輪21と、内周面に軌道面22aを有する外輪22と、外輪22と内輪21との間に配置された転動体である複数の玉24と、複数の玉24を均等位置に保持するための保持器23と、を備え、内輪21と外輪22とが軸受の回転中心軸に関し同心的に配置され、軌道面21aと22aとの間で各玉24が転動自在になっている。
【0037】
軸受50は、内輪回転の場合のシールの付いた転がり軸受であり、両側にシール30,33を備える。シール30は、外周に鈎部を有するリング状の芯金31と、その外側に合成ゴムを一体に加硫成形してなる弾性体32と、から構成され、その機能上から、芯金31の鈎部以外とその外側の弾性体32とからなる円環状の主部34と、芯金31の鈎部とその外側の弾性体とからなり外輪22内周面の止め溝25に係止される加締部35と、芯金31の内周側の弾性体からなり内輪21の外周面の受け溝26に接触されるリップ部36と、に分けられる。
【0038】
シール30は、リップ部36を内輪21の外周面の受け溝26に接触させた状態で、加締部35を弾性変形させながら外輪22の内周面の止め溝25に押し込むことによって、軸受50の外輪22と内輪21との間に配設される。シール33もシール30と同じ構造であり、同様に外輪22と内輪21との間に配設される。このようなシール30,33の一般的な材料は、芯金としてはSPCCやSECCなどの鋼板が使用され、リップ等を形成する弾性体としてはニトリルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の合成ゴムが使用される。なお、シール30,33は、図4のような接触ゴムシールに限らず、非接触ゴムシール、非接触鋼板などであってもよい。
【0039】
転がり軸受50は、内部にグリース等の潤滑剤が充填され、シール30,33で密封状態とされ、潤滑剤が軌道面21a、22aと転動体である玉24との間に供給され、軌道面21a、22aと玉24の転動面との間に介在し、相対運動する両者の接触面における摩耗を低減する。
【0040】
図1,図2の中空ファイバ1を軸受50内に設置するために、図4のように、外輪22に中空ファイバの導出孔Sを設けている。すなわち、導出孔Sを外輪22の内周面22bと外周面22dとの間に貫通するように形成し、導出孔Sを通して中空ファイバ1を、その先端の導入口2aが軌道面22aと玉24との近傍に位置するように設置する。中空ファイバ1の他端3は図1のようにファイバ継手5を介して測定系に接続される。なお、外輪22の外周面22dに導出された中空ファイバ1は外周面22dに複数回巻かれている。
【0041】
軸受50の使用を続けると、潤滑剤が軌道面21a、22aと玉24の転動面との間で温度上昇やせん断等により次第に劣化するが、かかる劣化に伴い発生する炭化水素ガスを図1,図2のガス検出装置10でリアルタイムに検出することで、潤滑剤の劣化の程度を検知し、軸受の寿命を予測することができるとともに、潤滑剤劣化異常に起因する不具合を未然に防ぐことができる。
【0042】
なお、中空ファイバ1を軸受50内から外部に導出するための導出孔として、図4の破線で示すようにシール33を貫通するように導出孔Tを設け、中空ファイバ1を破線のように導出孔Tから外部に導出するようにしてもよい。
【0043】
また、中空ファイバ1を軸受50の外輪22の外周面22dに巻くことで、中空ファイバ1の長さを長くして等価的に入射光の透過距離を長くしているが、中空ファイバ1はこれ以外の方法で長くして配置するようにしてもよいことはもちろんである。
【0044】
以上のように本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、図4では、軸受として深列玉軸受を例にして説明したが、本発明はこれに限定されず、アンギュラ玉軸受、円筒ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト玉軸受、スラスト円筒ころ軸受等の他の転がり軸受に適用できることは勿論である。
【0045】
また、図1の転がり軸受は、外輪固定タイプであったが、内輪固定タイプに構成されてもよく、この場合は、内輪21の軌道面21aの近傍に中空ファイバ1の導入口2aを配置し、中空ファイバ1の導出孔を内輪21やシール30,33に設けることができる。
【0046】
また、本実施の形態では、ガス検出装置10を軸受に適用したが、本発明は、これに限定されず、潤滑剤により潤滑される機械装置に用いることができ、これにより、潤滑剤の劣化の際に発生する炭化水素ガス等を検出することで、機械装置について潤滑剤劣化異常に起因する不具合を事前に予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施の形態によるガス検出装置の概略的構成を示す概略図である。
【図2】図1のガス検出装置のガス検出の原理を説明するために中空ファイバの要部を示す図である。
【図3】図1のガス検出装置で得られた分光分析による光強度と波長との関係による分光スペクトルの例を概略的に示す図である。
【図4】図1,図2の中空ファイバ1の一端2を内部に配置した転がり軸受の要部を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1,1a 中空ファイバ
2 中空ファイバの一端
2a 導入口
3,3a 中空ファイバの他端
4 排出口
5 ファイバ継手
6 分岐部
7 中空ファイバの内部
10 ガス検出装置
11 光源(発光部)
12 受光部、検出部
13 フロー調整バルブ
14 フローメータ
15 ガス吸引ポンプ
16 分析部
17,18 光ファイバ
19 制御部
21 内輪
21a 軌道面
22 外輪
22a 軌道面
24 玉
40,50 軸受
S 導出孔
T 導出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象のガスが内部に導入されて流れる中空ファイバと、
前記中空ファイバの内部に光を照射する発光部と、
前記中空ファイバの内部に照射した光の戻り光を検出する検出部と、
前記検出部で検出した戻り光に基づいて前記ガスの分析を行う分析部と、を備えるガス検出装置。
【請求項2】
前記中空ファイバに前記ガスを排出するように設けられた排出口と、
前記排出口から前記ガスを吸引するガス吸引手段と、を備える請求項1に記載のガス検出装置。
【請求項3】
前記ガス吸引手段による前記ガスの流れを調整するガス流れ調整手段を備える請求項2に記載のガス検出装置。
【請求項4】
前記ガスが前記中空ファイバの一端側から内部に導入されるとともに他端側に光ファイバが配置され、前記光ファイバが前記発光部に接続する光ファイバと前記検出部に接続する光ファイバとに分岐する分岐部を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガス検出装置。
【請求項5】
前記中空ファイバに設けたガス導入口を軸受の内部に配置し、前記軸受の内部で発生したガスを前記ガス導入口から前記中空ファイバに導入する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガス検出装置。
【請求項6】
前記軸受は、内部に潤滑剤が充填され、前記潤滑剤が軌道輪と転動体との間に供給され、前記軌道輪と前記転動体との近傍に前記ガス導入口を設置した請求項5に記載のガス検出装置。
【請求項7】
検出対象のガスを中空ファイバの内部に導入し流し、
前記中空ファイバの内部に光を照射し、
前記中空ファイバの内部に照射した光の戻り光を検出し、
前記検出した戻り光に基づいて前記ガスの分析を行うガス検出方法。
【請求項8】
潤滑剤により潤滑される機械装置に前記中空ファイバを配置し、前記機械装置で発生したガスを前記中空ファイバに導入する請求項7に記載のガス検出方法。
【請求項9】
潤滑剤が充填された軸受に前記中空ファイバを配置し、前記軸受の内部で発生したガスを前記中空ファイバに導入する請求項7に記載のガス検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−92511(P2009−92511A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263318(P2007−263318)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】