説明

ガラス、ポリエチレン又はポリエステル容器を被覆する方法、及び該被覆方法のための好適な水性配合物

ガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器を被覆する方法、及び該被覆方法に好適な水性配合物。
ガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器を被覆する方法であって、
(A)(A1)DIN53402にしたがい測定された10〜100mg KOH/gの範囲の酸価を有する部分的に酸化されたポリエチレンワックス、及び
(A2)EN ISO1133にしたがい325gの荷重下、160℃での測定において1〜50g/10分の範囲の溶融流れ速度(MFR)を有し、(a)60〜88質量%のエチレン、(b)12〜40質量%の少なくとも一種のエチレン系不飽和カルボン酸を含み且つ少なくとも部分的にアルカリ金属又はアミンで中和された共重合体、
から選択される少なくとも一種の酸官能性の蝋状重合体、
(B)所望により、少なくとも一種の非イオン性又はアニオン性界面活性剤、
(C)所望により、少なくとも一種の消泡剤、
(D)所望により、少なくとも一種の有機アミン、
(E)所望により、少なくとも一種の有機溶媒、
(F)所望により、ポリマー分散物
を含む実質的にパラフィンを含まない少なくとも一種の水性配合物を前記容器に施す工程を含むことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
ガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器を被覆する方法であって、
(A)(A1)DIN53402に準拠して測定された10〜100mg KOH/gの範囲の酸価を有する部分的に酸化されたポリエチレンワックス、及び
(A2)EN ISO1133に準拠して325gの荷重下、160℃での測定において1〜50g/10分の範囲の溶融流れ速度(MFR)を有し、共重合の形態で(a)60〜88質量%のエチレン、(b)12〜40質量%の少なくとも一種のエチレン系不飽和カルボン酸を含み且つ少なくとも部分的にアルカリ金属又はアミンで中和された共重合体、
から選択される少なくとも一種の酸官能性の蝋状共重合体、
(B)所望により、少なくとも一種の非イオン性又はアニオン性界面活性剤、
(C)所望により、少なくとも一種の消泡剤、
(D)所望により、少なくとも一種の有機アミン、
(E)所望により、少なくとも一種の有機溶媒、
(F)所望により、ポリマー分散物
を含み、実質的にパラフィンを含まない少なくとも一種の水性配合物を、ガラス、ポリエチレン又はポリエステル製容器に施す工程を含む被覆する方法に関する。
【0002】
更に、本発明は、本発明に係る方法により被覆された容器に関する。また、本発明は、本発明に係る方法を実行するための特に好適な水性配合物に関する。
【背景技術】
【0003】
現今では、非常に多くの液体、より詳細には飲料が、ガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の透明な容器で販売される。ガラス及びポリエステルは、より詳細にはPET(ポリエチレンテレフタレート)は、非常に多くの利点を有する。それらは確かな機械的安定性を有し;それらは飲料の味をほとんど干渉せず:また、ガラスの場合には、炭酸飲料の輸送に対する高い適性があり;そして、それらは市場に定着している。また、返却制度も定着しており、ボトルの預け率が現在非常に良好である。ガラス容器やポリエステル容器は、洗浄された後、衛生上の懸念がなされることなく再び使用されることが一般的である。
【0004】
それにもかかわらず、何度も使用した後のガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器は、新品のガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器とは異なり不具合を示す。この不具合とは、ひっかき傷、小さな層間はく離及び曇りにより透明度が損なわれ、それゆえ、美しさが減少することである。更に、何度も使用されたガラス、ポリエチレン又はポリエステル容器は、古びた感触を備える。
【0005】
被覆材料の選択において、表面との関係で、パラフィンが薦められることが通例である。パラフィンが表面に施すため、該パラフィンを水中で製剤化し、その後、パラフィンを表面に施すことが都合がよい。従って、パラフィンの製剤化を可能とする一以上の表面活性物質(乳化剤、界面活性剤)が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP−A0813550
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、パラフィンは、一時的な表面の被覆に使用される際において不利益を有する。一般的に、パラフィン被覆の活性は、一日又はそれ未満であり、ガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器としては短すぎる。また、一般的にガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器用に定められている被覆物は、粘着性が高い。更に、パラフィン被覆は、しばしば、汚れやすい傾向にあり、従って、例えば、上述のような清潔性が要求される被覆物用としては許されない。
【0008】
パラフィンを用いた被覆物よりも耐性のあるという利点を備えた他の多くの被覆物は、汚れた場合に、例えば、強いアルカリ性の洗浄溶液を用いた除去が要求され、汚れの除去が難しい。しかしながら、ポリエチレン又はポリエステル容器が強いアルカリ性の洗浄溶液で処理される場合、ガラス又はポリエステルは深刻なダメージを受ける。
【0009】
従って、本発明は、効果的に仮保護が確保され、たとえガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器が傷ついたとしても好ましい外観及び魅力的な感触を与え、更に、被覆物の除去が容易であるガラス、ポリエチレン又はポリエステルで形成される容器を被覆する方法を提供することを目的とする。他の目的は、仮被覆されたガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器を提供することである。他の目的は、本発明にかかる方法を効果的に実行可能な配合物を提供すること、及びこの配合物を製造する方法を提供することである。
【0010】
従って、先ず、本発明において定義された方法が発見された。
【0011】
容器とは、例えば、包装容器や他の所望の形態の容器、好ましくは食器、缶、ポット、及びビン、特にビンを意味する。食物用の容器が特に好ましい。この食物用容器には、飲料容器、クリームポット、ジャム又はヨーグルト用のジャーが含まれ、特に好ましくは炭酸飲料用の飲料容器である。
【0012】
本発明に従う被覆対象の容器は、ガラス、ポリエチレン又はポリエステル製であり、ポリエチレンとしては低圧法、すなわち、例えばジーグラーナッタ(Ziegler-Natta)触媒を用いて製造されるポリエチレンが特に好ましい。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含むことが特に好ましい。ガラス被覆されたポリエチレンテレフタレート又はガラス被覆されたポリエチレンから製造される容器も含まれる。
【0013】
ガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器は、5mm以下で少なくとも0.5mmの壁厚を有することが好ましい。ガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器は、好ましくは5mm以下の壁厚を備える。
【0014】
本発明の一つの実施の形態において、ガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器は、被覆された多用途容器などである。
【0015】
本発明の他の実施の形態において、ポリエステル容器は、単体で溶融され、溶融物が鎖延長剤と混合されて、この溶融物が再処理されて新たにブロー成形されることで、一つの容器となるものである。
【0016】
本発明の一つの実施の形態において、ガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器を本発明の被覆より以前の従来の方法により洗浄することが可能である。
【0017】
本発明の方法は、実質的にパラフィンを含まない少なくとも一種の水性配合物を用いた処理によりガラス、ポリエチレン又はポリエステル製容器を被覆することで実行される。この少なくとも一種の水性配合物は、
(A)(A1)DIN53402にしたがい測定された10〜100mg KOH/gの範囲の酸価を有する部分的に酸化されたポリエチレンワックス、及び
(A2)EN ISO1133にしたがい325gの荷重下、160℃での測定において1〜50g/10分の範囲の溶融流れ速度(MFR)を有し、共重合の形態で(a)60〜88質量%のエチレン、(b)12〜40質量%の少なくとも一種のエチレン系不飽和カルボン酸を含み且つ少なくとも部分的にアルカリ金属又はアミンで中和された共重合体、
から選択される少なくとも一種の酸官能性の蝋状共重合体、
(B)所望により、少なくとも一種の非イオン性又はアニオン性界面活性剤、
(C)所望により、少なくとも一種の消泡剤、
(D)所望により、少なくとも一種の有機アミン、
(E)所望により、少なくとも一種の有機溶媒、
(F)所望により、ポリマー分散物
を含む。
【0018】
本発明の被覆方法において使用される水生配合物は、実質的にパラフィンを含まない。パラフィンを含まないとは、本発明の方法、すなわち、本発明の被覆方法において、使用される水性配合物に含まれるパラフィンが、当該水性配合物の固体容量、すなわち、成分(A)、(B)、(C)(適宜、D)及び/又は(F))の総量に対して0.5質量%未満、好ましくは0.1質量%未満であることを意味する。本発明の目的のために使用されるパラフィンは、ホワイトオイルを含む。
【0019】
本発明の被覆方法において使用される水性分散物は、好ましくは、シリコーンオイルを実質的に含まない。シリコーンオイルを実質的に含まないとは、本発明の被覆方法において使用される水性配合物が、当該水性配合物の固体容量、すなわち、成分(A)、(B)、(C)(適宜、D)及び/又は(F))の総量に対して0.5質量%未満、好ましくは0.1質量%未満であることを意味する。
【0020】
本発明の被覆方法において使用される水性配合物は、
(A)(A1)DIN53402にしたがい測定された10〜100mg KOH/gの範囲、好ましくは10〜50mg KOH/gの範囲の酸価を有する部分的に酸化されたポリエチレンワックス、及び
(A2)EN ISO1133にしたがい325gの荷重下、160℃での測定において1〜50g/10分の範囲、好ましくは5〜20g/10分の範囲、より好ましくは7〜15g/10分の範囲の溶融流れ速度(MFR)を有し、共重合の形態で(a)60〜88質量%、好ましくは65〜80質量%のエチレン(b)12〜40質量%、好ましくは20〜35質量%の少なくとも一種のエチレン系不飽和カルボン酸を含み、且つ、少なくとも部分的にアルカリ金属(より好ましくは、カリウム又はナトリウム)、又はアミン(より好ましくは、アンモニア又はω‐ヒドロキシアルキルアミン)で中和された共重合体、
を含む。
(なお、上記質量%は共重合体(A2)の全体量に基づく。以下、上記蝋状共重合体を省略して重合体(A)と記す。)
ここで、少なくとも部分的な中和とは、共重合体(A)の全カルボン酸の少なくとも33モル%が、アルカリ金属又はアミンで中和されていることを意味する。
【0021】
DIN53402にしたがい測定された10〜100mg KOH/gの範囲、好ましくは10〜50mg KOH/gの範囲の酸価を有する部分的に酸化されたポリエチレンワックスは、本発明において、共重合体(A1)として識別され、以下に簡潔に記載される。共重合体(A1)は、アルカリ金属(より好ましくは、カリウム又はナトリウム)、又はアミン(より好ましくは、アンモニア又はω‐ヒドロキシアルキルアミン)で少なくとも部分的に中和されている。
【0022】
共重合体(A1)は、慣例的な方法により製造される。例えば、平均分子量Mnが20000g/molを未満のポリエチレンをはじめに製造し、続いてこのポリエチレンを溶融状態として、酸素又は酸素ガス、より好ましくは空気を用いて所望の酸価となるまで部分的に酸化する。このような部分的な酸化のための適切な反応器は、例えば、“Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie”, 4th edition, Verlag Chemie, Weinheim, Volume 3, p. 369において知られている管型反応器、及び気泡塔反応器である。
【0023】
この種のポリエチレンは、種々の方法で製造することができる。「高圧法」という表現は、200から350℃の温度において1500から3500バールの圧力で行われる方法として定義される。本明細書における高圧法は、酸素又は過酸化物により開始されるフリーラジカル付加重合に関連する。これに対して、「低圧法」という表現は、例えば、ジーグラーナッタ触媒、Cr触媒、又はメタロセン触媒等を用いる触媒的に実行される重合として定義される。低圧法は、例えば、適切な50から100℃の温度範囲で、30から100バールの圧力で実行することが可能である。
【0024】
「ポリエチレン」という表現は、エチレンのホモ重合体に限定されないが、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、又は1−ドデセン等の1以上のα‐オレフィン、さらにイソブテン等の他のオレフィン、及びエチレン系不飽和モノカルボン酸又はジカルボン酸(より好ましくは(メタ)アクリル酸)を備えたエチレンの共重合体を含む。
【0025】
本発明の一つの実施の形態において、共重合体(A1)はDIN53402にしたがい決定される10〜70mg KOH/gの範囲の加水分解度を有する。
【0026】
本発明の一つの実施の形態において、共重合体(A1)は0.95から0.99g/cm3の密度を有する。
【0027】
EN ISO1133にしたがい325gの荷重下、160℃での測定において1〜50g/10分の範囲の溶融流れ速度(MFR)を有し、上述のエチレン(a)とエチレン系不飽和カルボン酸(b)を含む共重合体は、本発明における共重合体(A2)と記載され、以下に簡潔に説明される。共重合体(A2)は、アルカリ金属(より好ましくは、カリウム又はナトリウム)、又はアミン(より好ましくは、アンモニア又はω‐ヒドロキシアルキルアミン)で少なくとも部分的に中和されている。
【0028】
好適なエチレン系不飽和カルボン酸として、より好ましくは、C−Cの二重結合を含むC3−C12モノカルボン酸、及びC4−C12ジカルボン酸、又は低分子量の対応するC4−C12ジカルボン酸無水物である。
【0029】
エチレン系不飽和カルボン酸(a)としては、少なくとも一種の一般式Iのカルボン酸が選択される。
【0030】
【化1】

【0031】
変化する部分は以下に定義される。
【0032】
1とR2は類似しているか、又は異なるものである。
【0033】
1は、水素、及び非分岐又は分岐C1−C10アルキルから選択され、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル等であり、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチル等のC1−C4アルキルで、より好ましくはメチルである。
2は、非分岐及び分岐C1−C10アルキルから選択され、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル等であり、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチル等のC1−C4アルキルで、より好ましくはメチル:COOH、及び特に好ましくは水素である。
【0034】
本発明のR1の一つの実施の形態は、水素又はメチルである。R1はメチルであることが特に好ましい。
【0035】
本発明のR1の一つの実施の形態は、水素又はメチルであり、本発明のR2の一つの実施の形態は、水素である。
【0036】
化学式Iのエチレン系不飽和C3−C12カルボン酸として、メタアクリル酸を使用することが非常に好ましい。
【0037】
4−C12ジカルボン酸の好ましい例は、フマル酸、マレイン酸、メチレンマロン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メタコン酸であり、より好ましくはマレイン酸、及びこれらの低分子量の無水物、特に無水マレイン酸である。
【0038】
共重合された形態でエチレン系不飽和カルボン酸(a)を含む2以上の共重合体(A2)を使用することが望ましい。そして、例えば、アクリル酸及びメタアクリル酸等の一般式Iの2種のエチレン系不飽和カルボン酸を使用することも可能である。この場合、上記質量%は、エチレン系不飽和カルボン酸(a)の全体量に基づく。
【0039】
一つの実施の形態において、共重合された形態の共重合体(A2)は、一種以上の他の単量体(c)を含む。この単量体(c)は、例えば、ビニル酢酸、ビニルプロピオネート、スチレン、又は一種以上のエチレン系不飽和C3−C12カルボン酸C1−C10アルキルエステル、より好ましくはメチルアクリレート、メチル、メタアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、及びさらにイソブテン及びC6−C30αオレフィンである。
【0040】
共重合の形態における共重合体(A2)が一種以上の単量体(c)を含む場合には、共重合エチレン(a)及び共重合エチレン系不飽和カルボン酸(b)の総量に対する単量体(c)の量は0.1から20質量%でも良い。
【0041】
本発明の他の実施の形態において、共重合された形態の共重合体(A2)は、エチレン(a)及びエチレン系不飽和カルボン酸(b)以外の他の単量体を含まない。
【0042】
本発明の一つの実施の形態において、DIN53402にしたがい決定される共重合体(A2)の酸価は、10〜300mg KOH/g、好ましくは115〜230mg KOH/gである。
【0043】
本発明の一つの実施の形態において、共重合体(A1)は、120℃の温度で測定される少なくとも5000mm2/s、好ましくは50000mm2/sの溶融動粘性率を有する。
【0044】
本発明の一つの実施の形態において、共重合体(A)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される10000から20000g/molの分子量Mnを有する。
【0045】
本発明の一つの実施の形態において、共重合体(A1)の溶融範囲又は好ましくは(A2)の溶融範囲は、DIN51007に準拠するDTC(示差熱分析)法により測定される60から110℃の範囲、好ましくは65から90℃の範囲である。
【0046】
共重合体(A)は、例えば、撹拌高圧オートクレーブ又は高圧管型反応器内等の高圧下においてフリーラジカル反応で開始される共重合によって好適に製造される。撹拌高圧オートクレーブ内における製造が好ましい。撹拌高圧オートクレーブ自体は、知られている。その記載は、「Ulmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th eddtion,heading:Waxes,Vol.A28,p.146 ff.,Verlag Chemie Weinheim,Basel,Cambrige,New York,Tokyo,1996」にある。このような反応器において、長さと径の比は、主として5:1から30:1、好ましくは10:1から20:1である。同様に高圧管型反応器も使用することが可能であり、これもXに記載されている。
【0047】
重合のために好適な圧力は、500から4000バール、好ましくは1500から2500バールである。この条件は、以下に「高圧」として記載される。反応温度は、170から300℃の範囲、好ましくは195から280℃の範囲である。
【0048】
重合は、調整剤を用いて有利に実行される。使用される調整剤は、例えば、水素、又は少なくとも一種の脂肪族アルデヒド、又は少なくとも一種の化学式IIの脂肪族ケトン、又はそれらの混合物である。
【0049】
【化2】

【0050】
この式において、基R3及びR4は、類似しているか、又は異なるものであり、水素;例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル等のC1−C6アルキル、より好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチル等のC1−C4アルキル;例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、及びシクロドデシル等のC3−C12シクロアルキル;シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルが好ましい。
【0051】
一つの好ましい実施の形態において、基R3及びR4は、互いに共有結合し、4〜13員環を形成している。従って、基R3及びR4は、ともに、−(CH24−、−(CH25
、−(CH26−、−(CH27−、−CH(CH3)−CH2−CH2−CH(CH3)−、又は−CH(CH3)−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−等でも良い。
【0052】
適切な調整剤の他の例は、アルキルアミン化合物であり、例えば、トルエン、エチルベンゼン、又は一種以上のキシレンの異性体である。更に、極めて好適な調整剤は、イソドデカン(2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン)又はイソオクチル等のパラフィンである。
【0053】
フリーラジカル共重合のための開始剤として、有機過酸化物、酸素、又はアゾ化合物等の一般的なフリーラジカル開始剤を使用することができる。2種以上のフリーラジカル開始剤の混合物も好適である。
【0054】
好適な過酸化物は、市販されている物質から選択され、例えば特許文献1に記載されているように、過酸化デカノイル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルエキサノイルペルオキシ)ヘキサン、tert−アミルペルオキシ−2−ヘキサン酸エチル、過酸化ジベンゾイル、tert−ブチルペルオキシ−2−ヘキサン酸エチル、tert−ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert−ブチルペルオキシジエチルイソブチレート、1,4−ジ(tert−ブチルペルオキシカルボニル)シクロヘキサン、異性体混合物としてtert−ブチルperisononanoate、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−シクロヘキサン、メチルイソブチルケトン過酸化物、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,2−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ブテン、又はtert−ブチルペルオキシアセテート;tert−ブチルペロキシベンゾエート、ジ−tert−アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、異性体ジ(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチルペルオキシヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシド)−hex−3−yne、ジtert−ブチルペルオキシド、1,3−ジイソプロピルベンゼン、モノヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、又はtert−ブチルヒドロペルオキシド、又は特許文献1に記載されているような二量体又は三量体ケトンペルオキシドである。
【0055】
特に好適なペルオキシドは、ジtert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシイソノナノエート、又はジベンゾイルペルオキサイド、又はそれらの混合物である。アゾ化合物の例は、アゾ・ビス・イソブチロニトリル(AIBN)である。フリーラジカル開始剤は、一般的な共重合用の量に量られる。
【0056】
多数の市販されている有機過酸化物が、それらの処理特性を向上させる目的で販売される前の状態でいわゆる鈍感化剤を用いて混合される。好適な鈍感化剤の例は、ホワイトオイル、又は特にイソドデカン等の炭化水素である。高圧重合の条件下において、このような鈍感化剤は、分子量を調整する効果をもたらす可能性がある。本発明の目的のために、鈍感化剤の使用の他に、他の付加的な分子量調整剤の使用が考慮されるべきである。
【0057】
エチレン系不飽和カルボン酸がエチレンよりも迅速に共重合体(A)に取り込まれるので、一般的な測定において単量体(a)、(b)、及び望ましくは(c)の比率は、共重合体(A)における構成単位の比率に厳密には対応しない。単量体(a)、(b)、及び望ましくは(c)は、一般的に、ともに又は別個に測定される。
【0058】
単量体(a)、(b)、及び望ましくは(c)は、圧縮器において共重合圧力まで圧縮されても良い。本発明の方法における他の実施の形態では、単量体は、はじめにポンプを用いて150から400バール、好ましくは200から300バール、より好ましくは260バールまで加圧され、その後、圧縮器を用いて実際の共重合圧力まで加圧される。
【0059】
単量体(a)、(b)、及び望ましくは(c)の共重合は、任意に、鉱油、ホワイトオイル、及び他の溶液などの溶媒の存在下又は非存在下で行っても良い。溶媒が存在する場合は、該溶媒は、共重合の間は反応器内に存在し、フリーラジカル開始剤又は開始剤の鈍感化のために使用され、本発明の目的のための溶液として作用するものではない。好適な溶媒は、トルエン、イソドデカン、及びキシレンの異性体を含む。
【0060】
少なくとも部分的に中和された形態をとる共重合体(A)を製造するために、この共重合体(A)を、基本的なアルカリ金属化合物の好ましい水性溶媒と混合することができる。なお、アルカリ金属化合物は、例えば、アルカリ金属ヒドロキシド及び/又はアルカリ金属カーボネート及び/又はアルカリ金属炭酸水素塩であり、より好ましくは水酸化カリウム、又は水酸化ナトリウムである。
【0061】
本発明の一つの実施の形態において、共重合体(A)は、カルボン酸基の中和のための必要量よりも多い一種以上のアルカリ金属ヒドロキシド及び/又はアルカリ金属カーボネート及び/又はアルカリ金属炭酸水素塩と混合される。
【0062】
本発明の被覆方法において使用される水性配合物は、(B)少なくとも一種の非イオン性又はアニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。
【0063】
好ましくは、非イオン性界面活性剤は、2級から13級まで、好ましくは10級まで、より好ましくは3級から7級のアルコキシ化されたオキソ合成、脂肪アルコールから選択され、及びフッ素化界面活性剤から選択される。
【0064】
2級から10級、好ましくは3級から7級のアルコキシ化されたオキソ合成、及び脂肪アルコールとは、2から10、好ましくは3から7モルのアルキレンオキシド、好ましくはC2−C4アルキレンオキシド、例えば、ブチレンオキシド、好ましくはプロピレンオキシド、より好ましくはエチレンオキシドが、1モルのオキソ合成及び/又は脂肪アルコールを反応することを意味する。
【0065】
好ましいオキソ合成アルコールは、C11−C21オキソ合成アルコール、より好ましくはC13−C15オキソ合成アルコールである。好ましい脂肪アルコールは、非分岐、好ましくは飽和又は高々単飽和の第1級C12−C40アルコールである。
【0066】
好ましいアニオン性界面活性剤は、エーテルカルボキシレート、エーテルスルフェート、特にアルコールエーテルスルフェート、ラウリルエーテルスルフェート、直鎖アルキルベンゼンスルフォネート、すなわち、直鎖アルキル基により置換されるベンゼンスルフォネート、及びナトリウムドデシルスルフェートである。
【0067】
フルオロ界面活性剤とは、特に、フッ素化アルコールの酸性リン酸エステル、及びフッ素化又は非フッ素化アルコールの酸性リン酸エステル、また、上述の酸性リン酸エステルの塩を意味する。フッ素化アルコールは、より好ましくは1モル中に少なくとも1個のフッ素原子を含む(好ましくは1モル中に5個のフッ素原子を含む)n−C4−C20−アルカノールを含む。非フッ素化アルコールは、特に、フッ素を含まないn−C4−C20−アルカノールである。
【0068】
特に好ましくは一般式IIIの酸性リン酸エステルである。
【0069】
【化3】

【0070】
この式において、
Fは、F(CF2CF2zから選択される。
zは、1から9、好ましくは1から7の整数である。
xは、1又は2であり、yは、2又は1であり、x+y=3である。
また、一般式IVの酸性リン酸エステルも特に好ましい。
【0071】
【化4】

【0072】
この式においてR5は、n−C4−C20−アルキル、好ましくはC18までのアルキル、例えば、n−ブチル、n−ペンチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−アンデシル、n−ドデシル、n−テトラドデシル、n−ヘキサドデシル、n−オクタドデシル、及びn−エイコシルである。より好ましくは、n−デシル、n−アンデシル、n−ドデシル、n−テトラドデシル、n−ヘキサドデシル、n−オクタドデシルである。そして、他の変数は上述のように定義される。
【0073】
本発明の被覆方法において使用される水性配合物は、好ましくは、(C)本発明において抑制剤又は泡消し剤として言及される少なくとも一種の消泡剤を含む。
【0074】
好ましい消泡剤(C)は、特に、多重アルコキシ化グリセロールから選択される。これは、例えば2級から13級のエトキシ化グリセロールであり、例えば1モル中に10から50のプロピレンオキシド単位を備えるポリプロピレンオキシド、及び好ましくはリン酸トリ−C1−C6アルキルエステルである。リン酸トリ−C1−C6アルキルエステルにおいて、C1−C6アルキル基は、異なっていても良く、又は好ましくは類似している。そして、それらは非分岐である。それらは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、又はn−ヘキシル、又は好ましくは、分岐した、特に、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、イソペンチル、sec−ペンチル、3−ペンチル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、イソアミルである;イソブチルが特に好ましい。
【0075】
一つの非常に好ましい消泡剤(C)は、リン酸トリイソブチルエステルであり、また、トリイソブチルホスフェートと呼ばれている。
【0076】
本発明の一つの実施の形態において、本発明の被覆方法において使用される水性配合物は、少なくとも一種の有機アミン(D)、好ましくはエタノールアミンを含んでいても良い。このエタノールアミンは、例えば、モノエタノールアミン,N,N−ジエタノールアミン,N,N,N−トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、又はN,N−ジメチル−N−エタノールアミンである。
【0077】
本発明の一つの実施の形態において、本発明の被覆方法で使用される水性配合物は、少なくとも一種のアルカリ金属塩を含んでいても良い。
【0078】
本発明の一つの実施の形態において、本発明の被覆方法で使用される水性配合物は、少なくとも一種の有機溶媒(E)を含んでいても良い。この有機溶媒は、水に対して混和性を示すことが好ましい。特に好ましくは、C1−C4アルコールであり、より好ましくはエタノール及びイソプロパノール、また、イソブタノール、n−ブタノール、ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル)、及びメタノールである。
【0079】
本発明の一つの実施の形態において、本発明の被覆方法で使用される水性配合物は、少なくとも一種のポリマー分散物(F)を含む。ポリマー分散物(F)とは、好ましくは、共重合体(A)とは異なるカルボキシル官能性重合体又は共重合体の水性分散液を意味する。好適な重合体及び共重合体の例では、以下が含まれる。;(メタ)アクリル酸が50質量%から100質量%埋め込まれた(メタ)アクリル系のホモ重合体及び共重合体、特に、アクリル酸ホモ重合体、及びメチル(メタ)アクリレート又はビニル芳香族化合物を含むスチレンのようなメタアクリル酸の共重合体である。また、少なくとも1個のカルボキシル官能性をポリウレタン1分子あたりに平均して含むポリウレタンも含まれる。埋め込まれたカルボキシル官能性分子は、好ましくは、1,1−ジメチロール酢酸、1,1−ジメチロールブチル酸、又は好ましくは1,1−ジメチロールプロピオン酸である。ヒドロキシ酢酸が、防止剤(stopper)として含まれていても良い。
【0080】
本発明の一つの実施の形態において、本発明の被覆方法において使用される実質的にパラフィンを含まない水性配合物は、1質量%から40質量%、好ましくは5質量%から30質量%の共重合体(A)、
好ましくは0.0001質量%から10質量%、より好ましくは0.0001質量%から8質量%のアニオン性又は非イオン性界面活性剤(B)、
好ましくは0.01質量%から10質量%、より好ましくは0.1質量%から8質量%の消泡剤(C)、
0質量%から10質量%、より好ましくは0.1質量%から8質量%の有機アミン(D)又はアルカリ金属塩、
0質量%から60質量%、より好ましくは0.1質量%から20質量%の有機溶媒(E)、
0質量%から10質量%、より好ましくは0.1質量%から5質量%のポリマー分散物(F)、
を含む。
残存物は、塩を含むか、好ましくは蒸留により又はイオン交換樹脂を用いて脱塩されている水であることが好ましい。質量%は、本発明の被覆方法において使用される水性配合物の全量を基準とする。ポリマー分散物(F)に関して、更に、質量%は、ポリマー分散物(F)の固体部分を基準とする。
【0081】
本発明の被覆方法は、例えば、ガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の被覆されるべき容器に対する噴霧により行われる。この噴霧は、上述のように、容器を水性配合物の噴霧領域中を移動させる1種以上の搬送手段を用いて行われる。ガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器は、最適な結果物を得るために、全体として水性配合物により湿潤されることが好ましい。
【0082】
本発明の他の型として、ガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器が、上述の水性配合物に浸漬される。
【0083】
本発明の他の型として、一種以上の製品、例えば、布、ワイプ、又は他の繊維製品を上述の水性配合物により浸潤させて、これを用いてガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器を処理しても良い。この処理は、少数のガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器に適用することが望ましい。
【0084】
切断を実行するために、例えば30から100℃の熱処理を実行することや、空気により乾燥させることが可能である。
【0085】
更に、本発明は、本発明の方法により被覆されたガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器を提供する。発明によるガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器は、パラフィンで被覆された容器類と比較して表面が非常に汚れにくい傾向にある。更に、本発明のガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器は、卓越した透明性を示す。基体であるガラス、ポリエチレン又はポリエステル自体がすでに傷つくか、又は比較的小さい剥離が見られるような場合でさえも、本発明の方法により容器はまるで損傷が無いかのような高い透明度を有する。
【0086】
更に、本発明のガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器は、被覆物を除去するための洗浄を容易に行うことができる。後の洗浄において、耐用年数の増加のために水性配合物を再び適用することができ、何度かポリエチレン又はポリエステル製の容器に対する本発明の被覆を実行することができる。
【0087】
多くの場合、本発明の方法により被覆されたガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器及びそれについた指紋を、大きな力をかけることなく、フリース、雑巾、キッチンタオル、又はペーパーティッシュ等の乾いた布やコットンタオルで拭き取ることができる。
【0088】
乾燥の後において、本発明の方法により被覆されたガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器では、被覆の厚さが1から100μm、より好ましくは1.5から50μmである。一つの型において、乾燥の後、本発明の方法により被覆されたガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器は、その被覆の厚さが0.05から100μm、好ましくは0.1から50μmである。被覆の厚さは、例えば、計量により測定される。被覆の厚さは、顕微鏡等により光学的に測定されても良い。共重合体(A)と乳化剤(B)の定量的堆積量を推定することで被覆の厚さを計算することも可能である。
【0089】
更に、本発明は、実質的にパラフィンを含まない少なくとも一種の水性配合物を提供する。この水性配合物は、
(A)(A1)DIN53402にしたがい測定された10〜100mg KOH/gの範囲、好ましくは10〜50mg KOH/gの範囲の酸価を有する部分的に酸化されたポリエチレンワックス、及び
(A2)EN ISO1133にしたがい325gの荷重下、160℃での測定において1〜50g/10分の範囲、好ましくは5〜20g/10分の範囲、より好ましくは7〜15g/10分の範囲の溶融流れ速度(MFR)を有し、(a)60〜88質量%、好ましくは65〜80質量%のエチレン(b)12〜40質量%、好ましくは20〜35質量%の少なくとも一種のエチレン系不飽和カルボン酸を含み、且つ、少なくとも部分的にアルカリ金属(より好ましくは、カリウム又はナトリウム)、又はアミン(より好ましくは、アンモニア又はω‐ヒドロキシアルキルアミン)で中和された共重合体(ただし、上記質量%は、例えば共重合体(A2)の全体量に基づく。)、
(B)所望により、少なくとも一種の非イオン性又はアニオン性界面活性剤、
(C)所望により、少なくとも一種の消泡剤、
(D)所望により、少なくとも一種の有機アミン、
(E)所望により、少なくとも一種の有機溶媒、
(F)所望により、ポリマー分散物
を含む。
【0090】
本発明の水性配合物は、特に、本発明の方法の実施に好適である。
【0091】
本発明の一つの実施の形態において、非イオン性界面活性剤(B)は、2から13級まで、好ましくは10級まで、より好ましくは3級から7級のアルコキシ化されたオキソ合成、及び脂肪アルコールから選択される。
【0092】
本発明の一つの実施の形態において、アニオン性界面活性剤はフッ素化界面活性剤から選択される。
【0093】
本発明の一つの実施の形態において、消泡剤(C)は、多重アルコキシ化グリセロール、ポリプロピレンオキシド、及びリン酸トリ−C1−C6アルキルエステルから選択される。
【0094】
本発明の一つの実施の形態において、消泡剤(C)は、トリイソブチルホスフェートである。
【0095】
本発明の一つの実施の形態において、本発明の実質的にパラフィンを含まない水性配合物は、
1質量%から40質量%、好ましくは5質量%から30質量%の共重合体(A)、
好ましくは0.0001質量%から10質量%、より好ましくは0.001質量%から5質量%のアニオン性又は非イオン性界面活性剤(B)、
好ましくは0.01質量%から10質量%、より好ましくは0.1質量%から8質量%の消泡剤(C)、
好ましくは0質量%から10質量%、より好ましくは0.1質量%から8質量%の有機アミン(D)、
0質量%から60質量%、好ましくは0.1質量%から20質量%の有機溶媒(E)、
0質量%から10質量%、好ましくは0.1質量%から5質量%のポリマー分散物(F)、
を含む。
【0096】
残存物は、塩を含むか、好ましくは蒸留により又はイオン交換樹脂を用いて脱塩されている水であることが好ましい。質量%は、本発明の水性配合物の全量を基準とする。ポリマー分散物(F)に関して、更に、質量%は、ポリマー分散物(F)の固体部分を基準とする。
【0097】
共重合体(A)、アニオン性又は非イオン性界面活性剤(B)、消泡剤(C)、有機アミン(D)、有機溶媒(E)、及びポリマー分散体(F)についての詳細は、上述のとおりである。
【0098】
本発明の一つの実施の形態において、本発明の水性配合物は、7から14の範囲のpH、好ましくは7.5から12の範囲のpH、より好ましくは8から11.5の範囲のpHを備える。
【0099】
本発明の一つの実施の形態において、本発明の水性配合物は、1.0101質量%から45質量%、好ましくは3質量%から35質量%の範囲の固形成分含有量を備える。
【0100】
更に、本発明は、以下に本発明の配合方法として記載される水性配合物を製造する方法を提供する。本発明の配合方法は、水中において、
(A)(A1)DIN53402にしたがい測定された10〜100mg KOH/gの範囲、好ましくは10〜50mg KOH/gの範囲の酸価を有する部分的に酸化されたポリエチレンワックス、及び
(A2)EN ISO1133にしたがい325gの荷重下、160℃での測定において1〜50g/10分の範囲、好ましくは5〜20g/10分の範囲、より好ましくは7〜15g/10分の範囲の溶融流れ速度(MFR)を有し、
(a)60〜88質量%のエチレン
(b)12〜40質量%の少なくとも一種のエチレン系不飽和カルボン酸を含み、且つ、少なくとも部分的にアルカリ金属、又はアミンで中和されている共重合体、
(B)所望により、少なくとも一種の非イオン性又はアニオン性界面活性剤、
(C)所望により、少なくとも一種の消泡剤、
(D)所望により、少なくとも一種の有機アミン、
(E)所望により、少なくとも一種の有機溶媒、
(F)所望により、ポリマー分散物
を混合する工程を含む。
【0101】
好ましい手法は、本発明の配合方法を2つのステップで実行することである。第1のステップでは、水中において、少なくとも一種の非イオン性又はアニオン性界面活性剤(B)が存在する場合に、共重合体(A)は、十分に又は少なくとも部分的に中和される。第2のステップでは、消泡剤(C)が添加され、及び非イオン性又はアニオン性界面活性剤(B)が第1のステップにおいて添加されていない場合には、非イオン性又はアニオン性界面活性剤(B)も添加される。なお、所望の場合、有機アミン(D)、ポリマー分散物(F)、及び有機溶媒(E)が本発明の配合方法における任意の段階で添加することが可能である。
【0102】
共重合体(A)の融点を超える温度において、本発明の配合方法の第1ステップを実行することが好ましい。
【0103】
本発明の一つの実施の形態において、本発明の配合方法の実施は、上述の一種以上の共重合体(A)から開始される。共重合体(A)は、フラスコ、オートクレイブ、又はタンク等の管に入れられ、共重合体又は共重合体類(A)、水、及び一種以上のアルカリ金属化合物、アンモニア又は有機アミン(D)、及び所望により他の成分が入れられ、加熱される。非イオン性又はアニオン性界面活性剤(B)等の他の成分を添加することも可能である。この添加の順番は任意で良い。本発明の配合方法を実行するための温度は、100℃を超えた温度であり、上昇する圧力下で行うことが好ましく、従って、それに応じて管を選定することが有効である。得られる乳化物は、例えば機械的又は空気式の撹拌により均一化される。共重合体又は共重合体類(A)の融点を超えるまで加熱を行うことが好適である。加熱は、少なくとも10℃まで、より好ましくは共重合体又は共重合体類(A)の融点を超える少なくとも30℃になるまで行うことが好ましい。
【0104】
2種以上の共重合体類(A)が使用される場合、加熱は、もっとも高い融点を有する共重合体(A)の融点を超えるまで行われる。2種以上の共重合体類(A)が使用される場合、加熱は、最も高い融点を備える共重合体(A)の融点を超える少なくとも10℃になるまで行うことが好ましい。2種以上の共重合体類(A)が使用される場合、加熱は、最も高い融点を備える共重合体(A)の融点を超える少なくとも30℃になるまで行うことが好ましい。
【0105】
続いて、製造された水性配合物は、冷却することができ、好ましくは冷却される。冷却の前、冷却中、或いは冷却後において、少なくとも一種の非イオン性又はアニオン性界面活性剤(B)又は消泡剤(C)又はポリマー分散物(F)を添加することができる。これは所望の場合に適用される。
【0106】
本発明の配合方法により製造される水性配合物は、その貯蔵において高い安定性を備え、上述の本発明の被覆方法を効果的に用いることができる。
【実施例】
【0107】
本発明は、実施例により説明される。
【0108】
共重合体(A2.1)の製造
エチレン及びメタクリル酸を、文献(M.Buback et al.,Chem.Ing.Tech.1994,66,510)に記載されている種類の高圧オートクレイブにおいて共重合した。この共重合は、1700バールの反応圧力の下、エチレン(12.0kg/h)を連続的に高圧オートクレイブに送り出すことで行った。これとは別に、0.71kg/h(0.72l/h)のメタクリル酸を初めに圧縮器を用いて260バールの中間圧力で圧縮した。そして、このメタクリ酸を、他の圧縮器を用いて1700バールの反応圧力の下、連続的に高圧オートクレイブに送り出した。高圧反応器の最大内部温度は、およそ220℃であった。18%のエチレン変換に対応して2.9kg/hの共重合体(A2.1)が得られた。解析データを以下に記す。
【0109】
エチレン含有量:72.8質量%、メタクリル酸含有量27.2質量%、酸価:170KOH/g、融点79.3℃、密度0.961g/cm3であった。共重合体(A2.1)のMFRは、325gの荷重下、160℃の温度で10.3g/10分であった。
共重合体(A2.1)のエチレン及びメタクリル酸含有量は、NMRスペクトロスコピー及び滴定により測定した。共重合体(A2.1)の酸価は、DIN53402にしたがう滴定法により測定した。KOH消費は、共重合体(A2.1)のメタクリル酸含有量に一致した。
【0110】
DIN53479にしたがい密度を測定した。溶融範囲は、DIN51007にしたがいDSC(示差熱量測定、示差熱分析)を用いて測定した。
【0111】
2.発明の配合物の製造
アンカー型撹拌機を備えた2リットルオートクレーブに、206.8gの共重合体(A2.1)を貯めた。36.3gのKOHを添加し、それを蒸留水を用いて1リットルにして、撹拌しながら98℃まで加熱した。撹拌しながら98℃で180分加熱した後に、それを15分以上かけて室温まで冷却した。これにより、KOHで中和された21質量%の乳化共重合体(A2.1)を得た。
【0112】
撹拌容器における乳化共重合体(A2.1)の量を表1に示した。この乳化共重合体(A2.1)を混合し、アニオン性又は非イオン性界面活性剤(B)、消泡剤(C)、及び所望によりジエタノールアミン(D1)を添加した。これにより、本発明の配合物F1からF8が得られた。
【0113】
【表1】

【0114】
略記号:
(B.1):C13−C15オキソ合成アルコール(C13−C15オキソ合成アルコール1モル中、3モルのエチレンオキシドでエトキシ化されている。)
(B.2):水/イソプロパノール(質量部;3:1)におけるF(CF2CF25−CH2CH2O)−P(O)(ONH42及び[F(CF2CF25−CH2CH2O]2P(O)(ONH4)の1:1混合物の、水により99:1に希釈された溶液の40%重量強度
(C.1):トリイソブチルホスフェート
【0115】
本発明の配合物F−10は、さらに、200gのブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル)を含んでいた。
【0116】
本発明の配合物F−11は、さらに、575gのブチルジグリコールを含んでいた。
【0117】
比較配合物C−F−9は、WO2004/108601の400gの分散物D1を、10gの(B.2)、5gの消泡剤(C.1)、及び585gの蒸留水と混合することにより製造した。
【0118】
3. ガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器の被覆
柔軟な布を用いて、発明の配合物F1−F10を傷ついた(1cm2あたりに2か所の傷があり、傷の長さは平均3mm)ガラス製の1リットル瓶に施し、大気中で乾燥させた。被覆の厚さは、平均3から15μmであった。本発明の被覆されたガラス製容器は、魅力的な外観を有し、内部が明確に視認できるほど完全に透明であった。更に、紙のラベルを容易に接着することができた。
【0119】
柔軟な布を用いて、発明の配合物F1−F10を傷ついた(1cm2あたりに2か所の傷があり、傷の長さは平均3mm)ポリエステル製の0.5リットル瓶に施し、大気中で乾燥させた。被覆の厚さは、平均3から15μmであった。本発明の被覆されたポリエステル製容器は、魅力的な外観を有し、内部が明確に視認できるほど完全に透明であった。更に、紙及び樹脂製のラベルを容易に接着することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス、ポリエチレン又はポリエステル製の容器を被覆する方法であって、
(A)(A1)DIN53402に準拠して測定された10〜100mg KOH/gの範囲の酸価を有する部分的に酸化されたポリエチレンワックス、及び
(A2)EN ISO1133に準拠して325gの荷重下、160℃での測定において1〜50g/10分の範囲の溶融流れ速度(MFR)を有し、共重合の形態で(a)60〜88質量%のエチレン、(b)12〜40質量%の少なくとも一種のエチレン系不飽和カルボン酸を含み且つ少なくとも部分的にアルカリ金属又はアミンで中和された共重合体、
から選択される少なくとも一種の酸官能性の蝋状共重合体、
(B)所望により、少なくとも一種の非イオン性又はアニオン性界面活性剤、
(C)所望により、少なくとも一種の消泡剤、
(D)所望により、少なくとも一種の有機アミン、
(E)所望により、少なくとも一種の有機溶媒、
を含む、実質的にパラフィンを含まない少なくとも一種の水性配合物を前記容器に施す工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
容器の外表面が被覆される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非イオン性界面活性剤(B)が、3級から7級のアルコキシ化オキソ合成及び脂肪アルコール類から選択される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アニオン性界面活性剤(B)が、フッ素化アルコールの酸性リン酸エステル類から選択される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
水性配合物の前記容器への施与を、ディッピング法又は噴霧法により行う請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
エチレン系不飽和カルボン酸(b)が、(メタ)アクリル酸である請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
消泡剤(C)が、多級アルコキシ化グリセロール、ポリプロピレンオキシド、及びリン酸トリC−Cアルキルエステルから選択される請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
消泡剤(C)が、トリイソブチルホスフェートである請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の方法により被覆された容器。
【請求項10】
瓶である請求項9に記載の容器。
【請求項11】
(A)(A1)DIN53402に準拠して測定された10〜100mg KOH/gの範囲の酸価を有する部分的に酸化されたポリエチレンワックス、及び
(A2)EN ISO1133に準拠して325gの荷重下、160℃での測定において1〜50g/10分の範囲の溶融流れ速度(MFR)を有し、共重合の形態で(a)60〜88質量%のエチレン、(b)12〜40質量%の少なくとも一種のエチレン系不飽和カルボン酸を含み且つ少なくとも部分的にアルカリ金属又はアミンで中和された共重合体、
から選択される少なくとも一種の酸官能性の蝋状共重合体、
(B)所望により、少なくとも一種の非イオン性又はアニオン性界面活性剤、
(C)所望により、少なくとも一種の消泡剤、
(D)所望により、少なくとも一種の有機アミン、
(E)所望により、少なくとも一種の有機溶媒、
を含む実質的にパラフィンを含まない水性配合物。
【請求項12】
非イオン性界面活性剤(B)が、3級から7級のアルコキシ化オキソ合成及び脂肪アルコール類から選択される請求項10に記載の水性配合物。
【請求項13】
アニオン性界面活性剤が、フッ素化界面活性剤類から選択される請求項10に記載の水性配合物。
【請求項14】
エチレン系不飽和カルボン酸(b)が、(メタ)アクリル酸である請求項10〜12の何れか1項に記載の水性配合物。
【請求項15】
消泡剤(C)が、多級アルコキシ化グリセロール、ポリプロピレンオキシド、及びリン酸トリC−Cアルキルエステルから選択される請求項10〜13の何れか1項に記載の水性配合物。
【請求項16】
消泡剤(C)が、トリイソブチルホスフェートである請求項10〜14の何れか1項に記載の水性配合物。
【請求項17】
請求項11〜16の何れか1項に記載の水性配合物を製造する方法であって、
(A)(A1)DIN53402に準拠して測定された10〜100mg KOH/gの範囲の酸価を有する部分的に酸化されたポリエチレンワックス、及び
(A2)EN ISO1133にしたがい325gの荷重下、160℃での測定において1〜50g/10分の範囲の溶融流れ速度(MFR)を有し、共重合の形態で(a)60〜88質量%のエチレン、(b)12〜40質量%の少なくとも一種のエチレン系不飽和カルボン酸を含み且つ少なくとも部分的にアルカリ金属で中和された共重合体、
から選択される少なくとも一種の酸官能性の蝋状共重合体、
(B)少なくとも一種の非イオン性又はアニオン性界面活性剤、
(C)少なくとも一種の消泡剤、
(D)所望により、少なくとも一種の有機アミン、
(E)所望により、少なくとも一種の有機溶媒、
を水中で共に混合する工程を含むことを特徴とする方法。

【公表番号】特表2011−520597(P2011−520597A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508876(P2011−508876)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055637
【国際公開番号】WO2009/138367
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】