説明

ガラスフリット

ガラスフリット、導電性インク及び導電性インクが適用された製品が記載される。一以上の実施形態によると、ガラスフリットは意図的に添加された鉛を有さず、TeO、並びにBi、SiO及びそれらの組み合わせの1種以上を含む。ガラスフリットの一実施形態は、Bを含み、更にZnO、Al及び/又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態は、意図的に添加された鉛を有さず、TeO、並びにBi、SiO及びそれらの組み合わせの1種以上を含むガラスフリットを含む導電性インクを提供する。他の実施形態は、意図的に添加された鉛を有さないガラスフリットを含む導電性インクが配置された半導体又はガラスシート等の基板を有する製品を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスフリット、フリットを含む導電性インク、及びその導電性インクが適用された(applied)製品に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性インク、暗化エナメル(obscuration enamels)及び装飾エナメル(decorative enamels)は、通常、低い融解範囲、低い融解粘度、及び制御できない失透(devitrification)に対する安定性を有するので、鉛系のガラスフリットを使用する。暗化エナメルは自動車産業において使用され、及び導電性インクは太陽電池又は光起電力電池製造業を含む電子産業に使用される。
【0003】
光起電性(「PV」)電池は、半導体の価電子帯(valence band)における電荷担体(charge carriers)を半導体の伝導帯(conduction band)へ推進することにより太陽光を電気に変換する。太陽光の光子とドープ半導体物質の相互作用が電子正孔対(electron-hole pair)の電荷担体を形成する。これらの電子正孔対の電荷担体は、p−n半導体の接合により生じ、半導体の表面に塗布又は印刷された導電グリッド又は金属接点に集められた電場に移動し、導電それを通じて外部回路へ流れる。今日の産業における結晶シリコン光起電力電池は、通常、光の吸収を促進し、光起電力電池の効率を向上するため、反射防止膜で被覆されている。しかしながら、反射防止膜は、半導体から金属接点へ流れる電荷担体に、高い電気抵抗を加える。そのような反射防止膜は多くの場合、窒化ケイ素、酸化チタン、又は酸化ケイ素を含む。
【0004】
導電性インクはこれらの導電グリッド又は金属接点を形成するために使用される。導電性インクは通常、ガラスフリット、銀粒子等の導電性種及び有機媒体を含む。金属接点を形成するため、導電性インクは、スクリーン印刷又はその他の方法によって格子(グリッド)線(gridlines)のパターン又はその他のパターンで基板上に印刷される。その後、基板は焼成され、その間に格子線と基板との間に電気接点が構成される。この接点はガラス基材界面で、個々の銀結晶子の形成によって強化される。理論にとらわれずに、電荷担体は基板から銀結晶子へ移動され、その後、トンネル現象(tunneling)によりガラス層を通って格子線へ移動されるか、或いは格子線と半導体の両方に結晶子の直接接点があるならば、直接に格子線の銀へ移動されると考えられている。この方法において、関連コストの低減及び節約されるエネルギーのため、より低い焼成温度が望ましい。
【0005】
ここで別の点について述べると、反射防止膜は、光吸収を増強するだけでなく、基板から金属接点への流れから励起された電子を減ずる絶縁体としても作用する。従って、導電性インクは、基板と抵抗接点(ohmic contact)を有する金属接点を形成するため、反射防止膜を突き抜けるほうが良い。これを達成するため、導電性インクは、銀粒子が基板へ焼結することを補助し、及び形成された金属接点と基板との間の接着及び抵抗接点の形成を促進するガラスフリットを包含する。ガラスフリットが液化した場合、基板上の銀粒子と反射防止膜との間の接触面に向かって流れる傾向がある。融解したガラスは反射防止膜の材料を一部の金属粒子や基板と同様に溶解する。温度が低下した時点で、融解した銀及び融解又は溶解した基板は液相を通じて再結晶化する。その結果、銀の結晶子の一部は反射防止層を突き抜け、基板との抵抗接点を形成することができる。この方法は、「ファイヤースルー(fire-through)」といわれ、低い接触抵抗の形成、及び導電グリッド又は金属接点と基板との間のより強力な結合形成を促進する。
【0006】
自動車、電子及び太陽電池産業は、環境に優しい部品や方法を使用することにより重点を置いている。この重点は環境規制に適合するための必要性により、更に要請されている。それに応じて、太陽電池産業は、太陽電池パネルに使用される部品や材料において鉛の使用を排除するように移行している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、低温で焼成でき、反射防止層を突き抜け、基板と抵抗接点となる金属接点を形成できる無鉛(lead-free)のガラスフリットが要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、意図的に添加された鉛を有さない、テルルを含むガラスフリット、及びその用途に関する。一以上の実施形態によれば、ここに記載されたガラスフリットは、非常に低粘度であり、特に腐食性である。例えば、一以上の実施形態において、そのガラスフリットは、通常、光起電性製品において反射防止層として使用される、SiO、TiO、SiN等の難溶性物質を溶解する傾向がある。
【0009】
具体的な実施形態は、意図的に添加された鉛を有さない、TeO、並びにBi、及び/又はSiOを含むガラスフリットを含む。この出願全体で使用される、用語「意図的に添加された鉛を有さない」及び「実質的に無鉛の」は、ガラスフリットに含まれる鉛が約1000ppm未満であることを意味する。一以上の実施形態において、TeOは、約0.01質量%〜約10質量%の量で存在する。また、他の実施形態は、Bを含む。一実施形態によれば、ガラスフリットはまた、少なくとも1種の第一の酸化物成分を含む。本発明の第二の実施形態は、更に少なくとも1種の第二の酸化物成分を含み、一方、第三の実施形態は、少なくとも1種のアルカリ金属酸化物成分を含む。本発明の他の実施形態においては、少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物が含まれる。
【0010】
一以上の実施形態の第一の酸化物成分はZnO及び/又はAlを含んでも良い。ZnOは一実施形態において、約0質量%〜15質量%の量で存在し、一方、Alは他の実施形態において、約0質量%〜約3質量%の量で存在している。一実施形態の第二の酸化物成分はAgO、Sb、GeO、In、P、V、Nb、及びTaを含み、以下の量:AgO、P、V、Nb、及びTaは約0質量%〜約8質量%の量で、In及び/又はSbは約0質量%〜約5質量%の量で、GeOは約0質量%〜約10質量%の量で存在しても良い。少なくとも1種のアルカリ金属酸化物成分を有する実施形態は、NaO、LiO、及び/又はKOを約0質量%〜約3質量%の範囲の量で利用し、一方、少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物成分を有する実施形態は、BaO、CaO、MgO及び/又はSrOを約0質量%〜約8質量%の範囲の量で利用する。
【0011】
本発明の他の側面に従って、導電性インクは、導電性種に加えて、TeO、並びに美にBi及び/又はSiOを有し、意図的に添加された鉛を有さない、実質的に無鉛のガラスフリットを含む。導電性インクの一以上の実施形態は、TeOを約0.01質量%〜約10質量%の範囲の量で含む。他の実施形態は、導電性種として銀を利用する。一以上の実施形態に従って、導電性インクはBも包含するガラスフリットを含む。更なる導電性インクの実施形態は、少なくとも1種の第一の酸化物成分、少なくとも1種の第二の酸化物成分、少なくとも1種のアルカリ金属酸化物成分、及び/又は少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物成分を含むガラスフリットを有しても良い。一実施形態によれば、導電性インクにおいてガラスフリットは約1質量%〜約5質量%の範囲の量で存在する。
【0012】
本発明の他の側面は、基板、及びその基板に配置された、ここに記載された導電性インクを含む製品を含む。一以上の実施形態に従って、その基板は半導体、ガラスシート及び/又はガラスシート上に配置されたエナメルである。半導体基板を有する実施形態はまた、基板上に配置された反射防止層を含み、導電性インクがその反射防止層上に配置されている。更に具体的な実施形態において、反射防止層はSiO、TiO又はSiNを含む。
【0013】
製品の一以上の実施形態において、導電性インクは実質的に無鉛のガラスフリット及び導電性種を含む。具体的な実施形態において、ガラスフリットはB及びTeOを含む。
【0014】
前述においては、本発明のいくつかの特徴及び技術的優位性について、かなり広範に概要を述べている。当業者にとって当然のことながら、開示された具体的な実施形態は本発明の範囲内で、他の構造又は方法を修正又は設計する基礎として利用することができる。同様に当業者にとって当然のことながら、そのような均等な構造は、添付の請求項に記載の本発明の精神と範囲から逸脱しない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のいくつかの典型的な実施形態を記載する前に、本発明は以下の記載において説明された構造又は工程段階の詳細に制限されないことが理解される。本発明は他の実施形態及び種々の方法により実施又は実行されることが可能である。
【0016】
本発明の具体的な実施形態は、TeO、並びにBi及び/又はSiOを含み、意図的に添加された鉛を有さないガラスフリットを含む。一以上の実施形態において、TeOは約0.01質量%〜約10質量%の間の量で存在する。更に具体的な実施形態において、TeOは約0.5質量%〜約2質量%の間の量で存在する。一以上の実施形態において、Biは約40質量%〜約95質量%の範囲の量で、ガラスフリット中に存在する。具体的な実施形態において、Biは約50質量%〜約80質量%の範囲で存在し、更に具体的な実施形態はBiを約60質量%〜約75質量%の範囲で有する。
【0017】
一以上のガラスフリットの実施形態は、SiOを約0質量%〜約30質量%の範囲の量で含む。具体的な実施形態において、SiOは約1質量%〜約4質量%の範囲の量で存在しても良い。
【0018】
一以上の実施形態によると、Bもまたガラスフリットに含まれる。具体的な実施形態において、Bは約0.1質量〜約10質量%の範囲の量で存在する。より具体的な実施形態において、Bは約0.5質量%〜約8質量%の範囲の量で存在する。更により具体的な実施形態において、Bは約1質量%〜約4質量%の範囲の量で存在する。
【0019】
本発明の一実施形態は、TeO、Bi、SiO、及びBを有するガラスフリットを含む。ガラスフリットの他の実施例は、TeO、Bi、SiO、B、ZnO及びAlを含む。ガラスフリットの更なる実施形態は、0.01〜10質量%のTeO、40〜95質量%のBi、0〜30質量%のSiO、0.1〜10質量%のB、0〜15質量%のZnO及び0〜3質量%のAlを含む。本発明の更なる実施形態は、TeO、Bi、SiO、B、ZnO及び第二の酸化物成分を有するガラスフリットを含む。一以上の実施形態ではZnOをAlと置き換え、一方、他の実施形態はZnO及びAlの両方を包含する。
【0020】
本発明の一実施形態は、少なくとも1種の、例えば、
約0質量%〜約10質量%の範囲の量のZnO、及び/又は
約0質量%〜約2質量%の範囲の量のAl等の第一の酸化物成分を含む。
【0021】
本発明の他の実施形態は、少なくとも1種の、
約0質量%〜約4質量%の範囲の量のAgO、
約0質量%〜約4質量%の範囲の量のSb
約0質量%〜約4質量%の範囲の量のGeO
約0質量%〜約4質量%の範囲の量のIn
約0質量%〜約4質量%の範囲の量のP
約0質量%〜約4質量%の範囲の量のV
約0質量%〜約4質量%の範囲の量のNb、及び/又は
約0質量%〜約4質量%の範囲の量のTaを含む第二の酸化物成分を包含する。
【0022】
本発明の一以上の実施形態は少なくとも1種の、
約0質量%〜約2質量%の範囲の量のNaO、
約0質量%〜約2質量%の範囲の量のLiO、及び/又は
約0質量%〜約2質量%の範囲の量のKOを含むアルカリ金属酸化物成分を包含する。
【0023】
本発明の更なる実施形態はまた、少なくとも1種の、例えば、
約0質量%〜約4質量%の範囲の量のBaO、
約0質量%〜約2質量%の範囲の量のCaO、
約0質量%〜約2質量%の範囲の量のMgO、及び/又は
約0質量%〜約4質量%の範囲の量のSrO等のアルカリ土類金属酸化物成分を含む。
【0024】
本発明の一以上の実施形態は、ここに開示されたガラスフリットと導電性種を利用する導電性インクを含む。一以上の実施形態において、導電性インクは、例えば、粉末又は微粒子形態の銀等の導電性種を利用する。一以上の実施形態において、銀微粒子は球状、薄片状又は不定形でも良く、また、コロイド懸濁液で提供されても良い。適した導電性種の他の限定されない実施例は、例えば、粉末又は微粒子形態の金、銅及び白金等の導電性金属を含む。
【0025】
一以上の実施形態において、使用される銀の種類は銀金属又は銀合金の微粉末の形態でも良い。他の実施形態において、一部の銀は酸化銀(AgO)、塩化銀(AgCl)、硝酸銀(AgNO)及び/又は酢酸銀等の銀塩として添加しても良い。
【0026】
また、本発明の一以上の実施形態による導電性インクは、テルル酸ビスマス及び/又はケイ酸ビスマス粉末を包含する。テルル酸ビスマス及び/又はケイ酸ビスマス粉末の添加は、結晶化の発生を低温度に推移させることによりガラスフリットの結晶化を制御することができることができることが明らかになっている。本発明は理論にとらわれるべきではないが、テルル酸ビスマス及び/又はケイ酸ビスマス粉末は結晶成長の核形成部位を供給すると考えられる。光起電製品において、ガラスフリットは、銀が抵抗接点を形成できるように反射防止層を突き抜けるか、溶解する必要があるが、一方で、ガラスフリットの攻撃性の制御として、機器を短絡する半導体の接合点の突き抜けを防ぐことが望ましい。他の実施形態は、テルル酸ビスマス及び/又はケイ酸ビスマスと同様又は類似の効果を生じる、チタニア、ジルコニア、リン化合物などの他の公知の相を利用する。
【0027】
一以上の実施形態による導電性インクは、また、液体媒体(liquid vehicle)を含む。液体媒体は微粒子成分を分散し、インク組成物の表面への移動を促進すると考えられる。具体的には、液体媒体は、一以上の実施形態によると、溶媒及び溶解した有機樹脂からなり、導電性種及びガラスフリットを分散し、適当な粘度を有するインクを得る。ペーストの粘度への影響に加えて、樹脂はペーストが基板に沈着祖乾燥した後の接着力及び生強度(green-strength)を向上させると考えられる。種々の液体媒体は増粘剤、安定剤、界面活性剤、消泡剤及び/又は他の添加剤を含む、含まないにかかわらず、本発明の実施形態の調製に使用するのに適している。使用されうる液体媒体の例は、アルコール(グリコールを含む)、例えば酢酸エステル、プロピオン酸エステル、及び例えばジブチルフタレート等のフタル酸エステル等のそのアルコールのエステル、パインオイル等のテルペン、テルピネオール及びその同様なものを含む。より具体的な液体媒体はジエチレングリコールモノブチルエーテル、テルピネオール、イソプロパノール、トリデカノール、水、及び2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートを含む。いくつかの実施形態は、基板への塗布後の迅速硬化(fast setting)を促進するために揮発性液体も含む液体媒体を利用する。
【0028】
液体媒体に溶解した適当な有機樹脂の例は、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルヒドロキシルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース及び他のセルロース誘導体を含む。他の例は、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエステル及びポリケトン等の樹脂を含む。
【0029】
具体的な一実施形態において、低級アルコールのポリメタクリレート等の樹脂の溶液が使用され、更に具体的な実施形態において、液体媒体は、パインオイル及びジエチレングリコールのモノブチルエーテル等の溶媒に溶解したエチルセルロースを含む。
【0030】
一以上の実施形態による導電性インクにおける液体媒体の固形物に対する比は大幅に変えることができ、最終的な所望の製剤の粘度により決定され、同様に、システムの印刷要件によっても決定される。一以上の実施形態において、導電性インクは約50〜約95質量%の固形物及び、約5〜約50質量%の液体媒体を含んでも良い。
【0031】
導電性インクの一以上の実施形態は、更に、当技術分野で公知の更なる添加物、例えば、顔料、染料、レオロジー調整剤、接着強化剤、焼結阻害剤、生強度調整剤、界面活性剤及びその同様なものを含んでも良い。
【0032】
本発明の一以上の実施形態において、保存剤が被覆組成物中に包含されている。いくつかの実施形態は、ホウ酸、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸及び/又はそれらの組み合わせ等の保存剤を利用し、一方で、他の実施形態は、当技術分野で公知の他の保存剤を利用する。
【0033】
本発明の他の側面は、基板、及び基板に配置する導電性インクを含む製品に関する。一以上の実施形態は、ここに記載されたガラスフリット、即ち、TeOを含み、意図的に添加された鉛を有さないガラスフリットを有する導電性インクを含む。基板の例としては、半導体ウェハー、ガラスシート及び光起電力電池産業において、光起電力電池の形成に使用される、その他の適当な基板を含む。一実施形態において、半導体基板はリンでドープされ、一方で他の実施形態はドープ導電性インクを含む。本発明の一実施形態によると、半導体基板はアモルファス(非晶質)、多結晶又は単結晶シリコンを含む。
【0034】
一以上の実施形態において、半導体基板は、その上に配置された反射防止膜を有し、導電性インクがその反射防止膜の上部に印刷される。いくつかの実施形態によると、反射防止膜は、二酸化ケイ素、酸化チタン、窒化ケイ素又は当技術分野で公知の他の被膜を含む。
【0035】
当技術分野で公知の方法は、導電性インクが上部に配置された半導体基板を製造するために使用できる。一以上の実施形態は、非晶質、単結晶、多結晶のいずれにもなり得るような結晶シリコンを使用する。膜形成は基板に塗布しても良く、化学蒸着法(chemical vapor deposition)、プラズマ蒸着法(plasma vapor deposition)及びその同様な方法等の公知の方法により膜又は層が形成されても良い。反射防止膜もまた化学蒸着技術を適用することができる。いくつかの実施形態において、プラズマ化学気相成長技術(plasma enhanced chemical vapor deposition techniques)が基板上への反射防止膜の形成に使用される。一以上の実施形態によると、半導体製品は、太陽光の反射を減少させ、光吸収のレベルを強めるためにエッチング処理やテクスチャー処理(texture)がされていても良い。
【0036】
一以上の実施形態によると、導電性インクはその後、基板又は反射防止膜の表面にスクリーン印刷又は他の技術によって塗布される。基板は、導電性インクの微粒子を格子線へ焼結するために、約750℃〜850℃の温度に加熱又は焼成される。本願において、別途説明したように、焼成工程はガラスフリットが融解し、基板上に形成された反射防止膜を突き抜けるか、又は溶解することを可能とする。一以上の実施形態において、導電性種はガラスフリット及び基板の接触面で結晶子を形成し、導電性インクから形成される金属接点と半導体基板との間の電気的又は抵抗接点の形成を強める。
【0037】
本発明の一以上の実施形態は、ガラスシート基板とその上に印刷された導電性インクを含む。具体的な例において、ガラスシートは自動車の後部窓である。他の例において、ガラスシートは、その上に配置されたエナメルを有し、そのエナメルの上に導電性インクが印刷される。いくつかの実施形態において使用されるエナメルは、自動車のフロントガラスを自動車の本体に接合する接着糊を劣化させうる紫外線から保護する暗化エナメルでも良い。ガラスシート基板の実施態様は、また、通常ポリビニルブチレート(「PVB」)で構成される柔軟な中間層を含んでも良い。
【0038】
導電性インクが上部に配置された半導体製品に関する本発明の実施形態と同様に、導電性インクは、ガラスシート基板又はエナメル基板にスクリーン印刷又は他の公知の方法により塗布されても良い。更なる実施形態において、基板は、導電性インクの微粒子が格子線へ焼結するように、約600℃〜750℃の温度に焼成加熱又は加熱される。
【0039】
本発明の実施形態は、以下の実施例により更に詳細に説明されるが、いかなる方法においても、本発明を制限する意図はない。
【実施例】
【0040】
少なくともガラスフリット及び導電性種を有する2種のインク(インクA及びインクB)を調製した。インクA及びBは一般的な手順で調製した。一般的な手順は、計量、及び、例えば、3本ロールミル法(triple roll milling)を使用する分散を含む。業界で知られている、ビーズミル法、サンドミル法及びコロイドミル法等の別の分散方法もまた有機バインダー媒体に固体微粒子を分散するために使用できる。
【0041】
インクA及びBの両方は、ガラスフリットを3質量%、及び銀を97質量%の含有量で(固形分を基準として)有していた。両方のガラスフリットはホウケイ酸ビスマス(bismuth borosilicate)組成物であり、同様な熱膨張係数及びガラス転移温度を有していた。インクAは意図的に添加された鉛を有さない、当技術分野で公知のガラスフリットを含んでいた。インクBは意図的に添加された鉛を有さず、TeOを包含する当技術分野で公知のガラスフリットを含んでいた。
【0042】
8個のテクスチャー処理された、リンドープによるエミッタ電極及びボロンドープによるベース電極で40オーム/スクエアー(ohm/square)を有し、窒化ケイ素の反射防止膜を有する単結晶シリコンウェハーを使用した。8個のウェハーの裏面は市販の裏面アルミニウムインク(back surface aluminum ink)及び銀リアコンタクトインク(silver rear contact ink)で印刷した。両方のインクを完全に乾燥した。その後、4個のウェハーについて、表面にインクAで325メッシュスクリーンを使用して印刷した(セル1−4)(比較例に相当)。別の4個のウェハーについては、表面にインクBで同じ方法で印刷した(比較セル5−8)(実施例に相当)。その後、各PVセルを乾燥し、赤外炉において、表1に示した最高焼成温度に焼成した。各ウェハーを最高温度でおよそ3〜5秒間焼成した。冷却後、各セルについて、その電流電圧(I−V)特性を試験した。
【0043】
【表1】

【0044】
「曲線因子(fill factor)」及び「効率(efficiency)」は 半導体の性能の評価を参照にする。用語「曲線因子」は、太陽電池の光電流密度−電圧(J−V)特性において、最大出力(maximum power)(VmpxJmp)を短絡電流(short-circuit current)(Isc)と開放電圧(open-circuit voltage)(Voc)の積で除した比として定義される。開放電圧(Voc)は開放条件(open-circuit condition)下の負荷で、得られる最大電圧である。短絡電流密度(short-circuit current density)(Jsc)は短絡条件(short-circuit condition)下の負荷で流れる最大電流である。曲線因子(FF)はこのように(Vmpmp)/Vocsc)、[但し、Jmp及びVmpは、最大出力点(maximum power point)での電流密度及び電圧を表す。]として定義される。セル効率、ηは、方程式、η=(IscocFF)/Pin、[但し、Iscは短絡電流に相当し、Vocは開放電圧に相当し、FFは曲線因子に相当し、及びPinは入射する太陽放射力である。]によって得られる。
【0045】
TeOを含む比較セル5〜8(実施例)の曲線因子及び効率は、TeOを含まないセル1〜4(比較例)に比べて有意に高かった。この改良は両方の焼成温度で認められた。理論にかかわらず、TeOの使用は、融解されたガラスフリットの粘度を低下させ、その結果、ガラスフリットが光起電力電池の反射防止層を突き抜け、溶解し、及び/又は消化し、銀又は形成された金属接点と基板セルとの間の抵抗接点を改良することが可能となっているものと考えられる。
【0046】
本明細書全体にわたった、「一実施形態」、[いくつかの実施形態」、「一以上の実施形態」、又は「実施形態」への言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、材料、又は特性は本発明の少なくとも一実施形態に含まれるということを意味する。従って、本明細書全体にわたって、種々の箇所に「一以上の実施形態において」、「いくつかの実施形態において」、「一実施形態において」、又は「実施形態において」等の表現は、本発明において、必ずしも、同一の実施形態に言及しているとは限らない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、一以上の実施形態において、どのような適切な方法でも、組み合わされても良い。
【0047】
ここに本発明は特定の実施形態を参照にして記載されているが、これらの実施形態は、単に本発明の原理及び応用の説明に役立つものであると理解される。本発明の精神及び範囲を逸脱しないで、本発明の方法及び装置を種々の改良及び変更することが可能であることは、当業者にとって明らかである。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等の範囲である改良及び変更を含むことが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TeO、並びにBi及びSiOの1種以上を含み、且つ意図的に添加された鉛を含まないことを特徴とするガラスフリット。
【請求項2】
更に、Bを含む請求項1に記載のガラスフリット。
【請求項3】
更に、ZnO、Al及びそれらの組み合わせの1種以上から選択される少なくとも1種の第一の酸化物成分を含む請求項2に記載のガラスフリット。
【請求項4】
更に、AgO、Sb、GeO、In、P、V、Nb、Ta及びそれらの組み合わせの1種以上から選択される少なくとも1種の第二の酸化物成分を含む請求項2又は3に記載のガラスフリット。
【請求項5】
更に、Na、LiO、KO及びそれらの組み合わせの1種以上から選択される少なくとも1種のアルカリ金属酸化物成分を含む請求項2に記載のガラスフリット。
【請求項6】
更に、BaO、CaO、MgO、SrO及びそれらの組み合わせの1種以上から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物成分を含む請求項2に記載のガラスフリット。
【請求項7】
TeOが約0.1質量%〜約10質量%の範囲の量で存在する請求項2に記載のガラスフリット。
【請求項8】
更に、約0質量%〜約15質量%の範囲の量のZnO、及び
約0質量%〜約3質量%の範囲の量のAl
1種以上から選択される少なくとも1種の第一の酸化物成分を含む請求項7に記載のガラスフリット。
【請求項9】
更に、約0質量%〜約8質量%の範囲の量のAgO、
約0質量%〜約5質量%の範囲の量のSb
約0質量%〜約10質量%の範囲の量のGeO
約0質量%〜約5質量%の範囲の量のIn
約0質量%〜約8質量%の範囲の量のP
約0質量%〜約8質量%の範囲の量のV
約0質量%〜約8質量%の範囲の量のNb、及び
約0質量%〜約8質量%の範囲の量のTa
1種以上から選択される少なくとも1種の第二の酸化物成分を含む請求項7又は8に記載のガラスフリット。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか1項に記載の実質的に無鉛のガラスフリット、及び導電性種を含むことを特徴とする導電性インク。
【請求項11】
ガラスフリットが約1質量%〜約5質量%の範囲の量で存在する請求項10に記載の導電性インク。
【請求項12】
更に、テルル酸ビスマス、ケイ酸ビスマス、チタニア、ジルコニア、リン化合物、及びそれらの組み合わせの1種以上を含む請求項10に記載の導電性インク。
【請求項13】
基板、及び該基板上に配置された請求項10に記載の導電性インクを含むことを特徴とする製品。
【請求項14】
前記基板が、半導体、ガラスシート又はガラスシート上に配置されたエナメルのいずれか1種である請求項13に記載の製品。
【請求項15】
TiO及びSiを含む反射防止層が、前記基板の上に直接配置され、前記反射防止層の上に導電性インクが配置された請求項14に記載の製品。

【公表番号】特表2011−510897(P2011−510897A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545076(P2010−545076)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/032107
【国際公開番号】WO2009/097264
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】