説明

ガラスランの取付構造

【課題】自動車用ドアのサッシュに取付けられるガラスランのうち、窓ガラス上縁のカットしたコーナに対応する箇所のサッシュに嵌込まれ、窓ガラス閉時に該ガラスのコーナが嵌挿されシールされる型成形部の取付構造において、型成形部の剛性を確保してサッシュと窓ガラスとの間の隙間から棒状のものをこじ入れて窓ガラスがこじ開けられたり、窓ガラス閉時に型成形部の側壁が巻き込まれたり、走行時に開閉することがないようにすると共に、感圧センサによる検出が確実に行えるようにし、更に型成形部の取付けが容易に行えるようにする。
【解決手段】型成形部11に取付部21を形成し、硬質樹脂製の嵌合体23を開閉して型成形部11の取付部21と側壁部13、14を挟み込んで固定した状態でサッシュ4に嵌め込んで取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアサッシュに取付けられるガラスランの取付構造に関し、ことにサッシュのコーナに取付けられるガラスランの型成形部の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すような自動車のフロントドア1に窓ガラス2を組み付ける場合、その組み込みは、窓ガラス2を下部からドアパネル3内に装入し、回し込みながら押込むことによって行われるが、窓ガラスはサッシュ4の形状に沿うように形成されているため、そのままでは窓ガラス2のコーナaがサッシュ4に干渉し、窓ガラス2を組込むことができない。
【0003】
この対策として従来は、ドアパネル3のインナパネルにベルトライン前端において間隙を設け、これにより窓ガラス2を傾けることなく挿入してコーナaがサッシュ4と干渉しないようにするか、或いは窓ガラス2のコーナaを図2の点線で示すように円弧状ないしテーパ状にカットしてサッシュ4と干渉しないようにしていたが、前者のインナパネルの一部に間隙を設けるのは、その修復分を含め工程数が増し、コスト高をもたらす。
【0004】
後者の窓ガラス2のコーナaを円弧状ないしテーパ状にカットする場合、窓ガラス2を閉じたときに該窓ガラス2のコーナをシールするために図2及び図3に示すように型成形部6は、その側壁6aを長く延ばして形成する必要がある。なお、図2に示す三角印は、黒く塗り潰した部分の側が型成形部6、非塗り潰し部分の側が押出成形部5を示す。
【0005】
上述するガラスランの押出成形部5や型成形部6は一般に、EPDM等のゴム材料や熱可塑性エラストマーによって成形されるが、図3に示すように側壁6aを延長した型成形部6は大型化し、必要な剛性を確保することが困難である。型成形部6に必要な剛性が得られないと、
(1)窓ガラス2とサッシュ4との間より硬度の高い棒状のものをこじ入れて窓ガラス2を車外側に押出したり、割ったりしてドアを開けられるおそれがあり、防犯上の問題があること、
(2)側壁6aが撓み易いと、窓ガラス2を閉じたとき側壁6aが図3の一点鎖線で示すように巻き込まれたり、走行中の窓ガラス2の振動により側壁6aが開いたりする不具合を生ずること、
(3)ガラスランには、感圧センサを設けて窓ガラス閉時に手指が挟まれると、それを検知して窓ガラスの上昇を反転させるようにしたものがあるが、型成形部に剛性がなく変形し易いこと、窓ガラス閉時に手指が挟まれても型成形部が変形してしまい、感圧センサによる検知が行われず、窓ガラスが反転しなくなること、
などの問題がある。
【0006】
下記特許文献1には、アウターリップの肉厚を厚くしたガラスランが開示されており、図3に示す型成形部6の側壁6aについても肉厚を薄くすれば、側壁の剛性が増し、前記(1)〜(3)の問題を解消することができるが、肉厚を増すと、「ヒケ」、すなわち成形後の冷却により生ずる収縮によって凹みを生じ、外観を損なうこと、側壁の肉厚を厚くすると、フラッシュサーフェイスでなくなるため外観が悪く、車両走行時に風切り音等の異音を発生し易い、という不具合を生ずる。
【0007】
窓ガラス上縁のコーナのカットは、前述するようなフロントドアの窓ガラス2に限らず、リヤドアにおいても必要とされることがある。その一例として下記特許文献2には、リヤドアにディビジョンバーを容易に取付けられるようにするため、窓ガラスのコーナをカットすることが記載されている。図4は、この文献2に開示されるガラスランのコーナ部の取付構造を示すもので、一端にガラスラン9を嵌め込んだ合成樹脂製の板状の遮蔽部材8が他端においてサッシュ7に嵌込まれるようになっている。この遮蔽部材8を硬質の合成樹脂製とし、これにガラスラン9を取り付けることで前述の問題を解消することができるが、硬質の合成樹脂よりなる遮蔽部材8に、ガラスラン9を嵌め込むのは容易でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実願昭63−126897号(実開平2−48424号)のマイクロフィルム(第2、3図)
【特許文献2】実願昭62−122619号(実開昭64−26521号)のマイクロフィルム(第14図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を解消したサッシュのコーナへのガラスラン型成形部の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係わる発明は、自動車用ドアのサッシュに取付けられるガラスランのうち、窓ガラス上縁のカットしたコーナに対応する箇所に設けられる型成形部の取付構造であって、前記型成形部が底壁と、該底壁と一体をなして対峙する車外側側壁及び車内側側壁と、両側壁の先端よりそれぞれ内向きに延設され、窓ガラス閉時に窓ガラスに弾接して窓ガラスとの間をシールするシールリップと、底壁より前記両側壁とは逆向きに突設される取付部からなり、開閉可能であり、型成形部を構成する各側壁の少なくとも一部と前記取付部を両側より挟み込んで固定した状態でサッシュに嵌込まれる硬質樹脂製の嵌合体を有することを特徴とし、
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、型成形部の取付部と嵌合体のいずれか一方に凹部又は孔よりなる被嵌合部が、他方に前記被嵌合部が嵌着する嵌合部が形成され、嵌合体が型成形部を挟み込んで閉じたとき、嵌合部が被嵌合部に嵌着することを特徴とする。
【0011】
請求項3に係わる発明は、請求項1又は2に係わる発明において、嵌合体は、底部と、底部両側の壁部よりなり、底部にはノッチが形成され、該ノッチにおいて屈折して開閉可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係わる発明によると、閉じた窓ガラス上縁のカットされたコーナ部とサッシュとの間は、その一部または全てが硬質樹脂製の嵌合体で遮蔽されるため、棒状のものをこじ入れて窓ガラスをこじ開けたり割ったりすることが困難であること、型成形部の側壁は、図3に示す側壁6aに比べて短く、押出成形部の側壁と同じ長さにできるうえ、外側から当てられる嵌合体により保形されるため、窓ガラス閉時に側壁が巻込まれたり、窓ガラスの振動により開いたりすることがないこと、窓ガラス閉時に手指が挟まれたときには、嵌合体により型成形部が必要以上に変形することがなく、感圧センサの検出による窓ガラスの反転が確実に行えること、嵌合体は開閉することにより型成形部を挟んで固定することができ、型成形部の材質の如何に係わらず嵌合体への取付けが容易に行えること、等の効果を有する。
【0013】
請求項2に係わる発明によると、嵌合体を閉じて型成形部を挟み込んだときには、嵌合部が被嵌合部に嵌着することにより型成形部の嵌合体からの抜け出しが防止され、型成形部と嵌合体の固定がより確実に行えるようになる。
請求項3に係わる発明によると、嵌合体の開閉が容易に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】自動車のフロントドアに窓ガラスを組込むときの態様を示す図。
【図2】図1に示すa部の拡大図。
【図3】図2のA−A線における従来構造の断面図。
【図4】従来の取付構造の別の例の断面図。
【図5】図2のA−A線における本発明に係わる取付構造の断面図。
【図6】嵌合体を開いた状態を示す断面図。
【図7】本発明に係わる取付構造の別の態様の断面図。
【図8】型成形部の別の態様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面により説明する。図中、図2及び図3に示すものと同一構造部分には同一符号を付してある。
【0016】
図5は、図2のA−A線における、本発明に係わるガラスラン5の型成形部11の取付構造を示すもので、型成形部11は、底壁12と、底壁12の両端に一体形成されて対峙する車外側側壁13及び車内側側壁14と、両側壁13、14の先端よりそれぞれ斜め内向きに底壁12に向かって延出し、窓ガラス2閉時に該窓ガラス2に弾接して窓ガラス2との間をシールするシールリップ16、17と、車内側側壁14との間に差込溝18を形成するリップ19及びサッシュ4に当てられるリップ20と、底壁12より両側壁13、14とは逆向きに突出する取付部21よりなり、全体がEPDM等のゴム材料又は熱可塑性エラストマーで型成形される。
【0017】
嵌合体23は、底部24と、底部24の両端に一体形成されて対峙する車外側壁部25及び車内側壁部26と、サッシュ4に嵌め込んだときにサッシュ4に係止して抜け止される爪部28、29よりなり、全体が硬質樹脂、例えばポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール等で型成形され、底部24にはノッチ31が形成され、該ノッチ31において図6の矢印で示すように屈折し、開閉できるようになっている。
【0018】
車外側壁部25と車内側壁部26は、閉じた状態において型成形部11の取付部21を挟み込むと共に、車外側壁部25は更に先端側が型成形部11の車外側側壁13を先端近くまで外側より押さえ、また車内側壁部26は先端側が前記差込み溝18に差込まれ、型成形部11の車外側側壁14を中間部まで外側より押えている(図5)。
型成形部11のサッシュ4のコーナへの取付けは、嵌合体23を開閉して図5に示すように型成形部11を挟み込んだのち、サッシュ4に嵌め込むことによって行う。
【0019】
図5に示す取付構造において、嵌合体23の車外側壁部25は型成形部11の取付部21と、車外側側壁13をその先端近くまで覆い、窓ガラス2と、サッシュ4との間を全て遮蔽している。
【0020】
本実施形態の取付構造においては、硬質樹脂よりなる嵌合体23の車外側壁部25が窓ガラス2を閉じた状態で窓ガラス2とサッシュ4との間を全て遮蔽しているため棒状のものをこじ入れて窓ガラス2をこじ開けたり、割ったりすることが困難であること、型成形部11は嵌合体23により保形され、窓ガラス閉時に側壁13、14が巻き込まれたり、走行中の窓ガラス2の振動により側壁13、14が開いたり、また感圧センサにより手指が挟まれたときの圧力を検知して窓ガラス2が反転する機構を設けた場合、手指が挟まれたときには、嵌合体23により型成形部11の不要な変形を少なくできるため、感圧センサによる検知が確実に行えるようになること、型成形部11の嵌合体23への取付けが嵌合体23をノッチ31において屈曲し、開閉することにより容易かつ確実に行えるようになること、等の効果を有する。
【0021】
図7に示す取付構造においては、型成形部11の取付部21に被嵌合部である孔33が貫通して形成される一方、嵌合体23の車外側壁部25と、車内側壁部26にそれぞれ嵌合部である突部34、34が形成され、各突部34、34を孔33に両側より嵌着して嵌合体23を閉じたとき、型成形部11の抜け止めが行えるようにしてある。
本実施形態の取付構造によると、前記実施形態の取付構造による効果に加え、型成形部と嵌合体の固定がより確実に行え、サッシュへ取付ける前の部品のサブアッシーが安定する、という利点を有する。
【0022】
図7に示す実施形態においては、嵌合体23の車外側壁部25と車内側壁部26の相方に突部34、34を形成し、各突部34、34を型成形部11の取付部21に形成される孔33に両側より嵌着するようになっているが、突部34を車外側側壁25と車内側側壁26のいずれか一方にのみ形成してもよいし、孔33又は孔33に代えて凹部としてもよく、各孔又は凹部に突部34をそれぞれ嵌着するようにしてもよい。この場合、各孔33又は凹部や突部34はそれぞれ大きさを異にしてもよい。また前記実施形態とは逆に孔又は凹部を取付部21に形成する代わりに壁部25、26に形成し、突部34を取付部21に形成してもよい。また嵌合体23の車外側壁部25と車内側壁部26を型成形部11の車外側側壁13及び車内側側壁14に接着剤等で接着して固定してもよい。
【0023】
図5及び図7に示す実施形態の型成形部11は、成形時のシールリップ16、17の重なり防止のため側壁部25、26が開いた状態で成形されるが、図8に示す型成形部37ように底壁12にV形のノッチ36を入れた型成形部11を成形すれば、開いた嵌合体23に型成形部37を装着し閉じると、ノッチ36が閉じ、図5に示す取付構造となる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、前述の実施形態に示されるようなフロントガラス上縁のカットしたコーナに対応する箇所のサッシュに嵌込まれる型成形部の取付構造に適用されるほか、コーナをカットしたリヤガラスのコーナに対応する箇所のサッシュに嵌込まれる型成形部の取付構造にも適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1・・フロントドア
2・・窓ガラス
3・・ドアパネル
4・・サッシュ
5・・押出成形部
11、37・・型成形部
12・・底壁
13・・車外側側壁
14・・車内側側壁
16、17・・シールリップ
18・・差込溝
19、20・・リップ
21・・取付部
23・・嵌合体
24・・底部
25・・車外側壁部
26・・車内側壁部
28、29・・爪部
31,36・・ノッチ
33・・孔
34・・突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用ドアのサッシュ4に取付けられるガラスランのうち、窓ガラス上縁のカットしたコーナに対応する箇所に設けられる型成形部11、37の取付構造であって、前記型成形部11、37が底壁12と、該底壁12と一体をなして対峙する車外側側壁13及び車内側側壁14と、両側壁13、14の先端よりそれぞれ内向きに延設され、窓ガラス閉時に窓ガラス2に弾接して窓ガラス2との間をシールするシールリップ16、17と、底壁12より前記両側壁13、14とは逆向きに突設される取付部21からなり、開閉可能であり、型成形部11、37を構成する各側壁13、14の少なくとも一部と前記取付部21を両側より挟み込んで固定した状態でサッシュ4に嵌込まれる硬質樹脂製の嵌合体23を有することを特徴とするガラスランの型成形部の取付構造。
【請求項2】
前記型成形部11、37の取付部21と嵌合体23のいずれか一方に被嵌合部33が、他方に前記被嵌合部が嵌着する嵌合部34が形成され、嵌合体が型成形部を挟み込んで閉じたとき、嵌合部34が被嵌合部33に嵌着することを特徴とする請求項1記載のガラスランの型成形部の取付構造。
【請求項3】
前記嵌合体23は、底部24と、底部両側の壁部25、26よりなり、底部24にはノッチ31が形成され、該ノッチ31において屈折して開閉可能であることを特徴とする請求項1又は2記載のガラスランの型成形部の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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