説明

ガラスラン

【課題】取付部への取付作業性の低下を抑制しつつ、長手方向における自身の収縮変形等を抑制することのできるガラスランを提供する。
【解決手段】ガラスラン5は、基底部14、及び基底部14から延出する一対の側壁部15、16を備えて断面略コ字状をなす本体部11と、各側壁部15、16から本体部11の内側に延出するシールリップ12、13とを備えている。ガラスラン5の上辺部を構成する押出成型部6には、側壁部15、16において、基材よりも硬質な樹脂よりなる硬質部21、22が押出成型部6の長手方向に沿って設けられている。硬質部21、22は、押出成型部6の断面における重心位置Xを通り、かつ、ドアガラスGの表面に対して垂直となる仮想直線Y上に少なくとも一部が位置するようにして、側壁部15、16のうち基底部14及びシールリップ12、13との各境界部から離れた位置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスランに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のドアフレームには、その内周に沿ってガラスランが設けられている。ガラスランは、その長手方向に直交する断面方向から見ると、基底部と、該基底部から延びる車内側側壁部及び車外側側壁部とを具備する断面略コ字形の本体部を備えるとともに、両側壁部の先端からそれぞれ本体部の内側に向けて延びる車内側シールリップ及び車外側シールリップを備えている。上記ガラスランは、本体部がドアフレームの内周に沿って設けられた取付部に取着され、両シールリップによって、昇降するドアガラスの内外面の周縁部が挟まれるようにしてシールされる。
【0003】
ところで、ドアの窓部形状に合わせてドアガラスの上縁部が斜めに形成される場合、ガラスランのうちドアガラスの上縁部に対応して設けられる上辺部についても斜めに延在するようにして取付けられる。このようなドアにおいては、窓部が閉め切られる際にドアガラスがガラスランの上辺部に圧接すると、上辺部にはその長手方向に沿って斜め上方への応力が作用することとなり、場合によっては、上辺部がその長手方向において位置がずれたり、縮んだり、たくれたりしてしまう(波打ち状にいびつに変形してしまう)等の不具合を招くおそれがある。この場合、シール性の低下を招いたり、取付状態の悪化を招いたりすることが懸念される。
【0004】
これに対し、例えば、側壁部において硬質樹脂よりなる硬質部を設け、ガラスランの長手方向において伸縮し難くなるように構成することが考えられる(例えば、特許文献1参照。)。当該構成を採用することで、上記のように、窓部の閉鎖時に、上辺部が長手方向に縮んだり、たくれたりするといった不具合を抑止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3132639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ドアフレームの上辺部(窓部の上縁部)は、窓部の外周側に凸となるように湾曲したり、屈曲したりしている場合が多い。従って、単に側壁部に硬質部を設けるという思想のみでは、ガラスランをドアフレームの湾曲形状に合わせて追従変形させ難くなってしまうことが懸念され、取付作業性や取付状態の安定性の低下等を招いてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、取付部への取付作業性の低下を抑制しつつ、位置ずれや、長手方向における自身の収縮変形等を抑制することのできるガラスランを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0009】
手段1.基底部、及び前記基底部から延出する一対の車内側側壁部及び車外側側壁部を備えて断面略コ字状をなし、車両のドアフレームの内周に沿って設けられた取付部に取着される本体部と、前記各側壁部から前記本体部の内側に延出する車内側シールリップ及び車外側シールリップとを備えるガラスランにおいて、
昇降するドアガラスの上縁部に対応して設けられる上辺部には、前記車内側側壁部及び車外側側壁部のうち少なくとも一方において、前記本体部及び前記シールリップを構成する基材よりも硬質な樹脂よりなる硬質部が前記上辺部の長手方向に沿って設けられ、
前記硬質部は、前記上辺部をその長手方向に対して直交する方向で切断した場合の断面における重心位置を通り、かつ、前記ドアガラスの表裏面に対して垂直となる仮想直線上に少なくとも一部が位置するようにして、前記側壁部のうち前記基底部及び前記シールリップとの各境界部から離れた位置に設けられていることを特徴とするガラスラン。
【0010】
手段1によれば、硬質樹脂よりなる硬質部がガラスランの上辺部の長手方向に沿って設けられているため、上辺部をその長手方向において伸縮し難くすることができる。従って、ドアガラスの上縁部が傾斜している等の関係でガラスランの上辺部が斜めに設置される場合であって、ドアの窓部が閉め切られる際に上辺部がドアガラスに突き上げられたとしても、上辺部を長手方向において押し縮めようとする応力に抗して硬質部が突っ張ることとなる。これにより、上辺部がその長手方向に圧縮されるような格好でたくれてしまう等といった事態を抑止することができる。
【0011】
また、ガラスランを取付部に取付ける際に、窓部の外周方向に凸となるようにして湾曲又は屈曲している取付部の形状に合わせて上辺部を追従変形させる場合、側壁部のうち窓部の内周側であるシールリップ側の部位は、上辺部の長手方向において収縮させられ、側壁部のうち窓部の外周側である基底部側の部位は、上辺部の長手方向において伸長させられる。従って、側壁部の基底部からの延出方向における硬質部の幅が長ければ側壁部の追従変形が阻害されるのは勿論のこと、たとえ短く形成したとしても、基底部やシールリップに近接して設けられると、追従変形が阻害されてしまうおそれがある。
【0012】
これに対し、本手段1によれば、硬質部は、ガラスランの上辺部の断面における重心位置を通り、かつ、ドアガラスの表裏面に垂直な仮想直線上に少なくとも一部が位置するようにして、側壁部のうち基底部やシールリップとの境界部から離れた位置に設けられている。つまり、上記のように、側壁部は、窓部の外周方向に湾曲又は屈曲させると、基底部からの延出方向において或るポイントを境にして、本体部の長手方向において伸長する部位と収縮する部位とに切替わるのであるが、前記或るポイントというのは、本体部の長手方向において最も伸縮変形し難い部位であると言える。そして、前記或るポイントは、前記仮想直線と交差する部位或いはその近傍に存在する。このため、前記仮想直線上に少なくとも一部が位置するようにして硬質部が設けられることで、硬質部が設けられることによる上辺部の追従変形性への影響を極力小さくすることができる。従って、上辺部に硬質部を設けても、ドアフレームの湾曲形状に合わせて上辺部を比較的スムースに追従変形させることができ、結果として、取付作業性や取付状態の安定性の低下等を防止することができる。
【0013】
手段2.前記硬質部は、前記側壁部の前記基底部からの延出方向における幅が、当該側壁部の厚み方向における幅以下となるように構成されていることを特徴とする手段1に記載のガラスラン。
【0014】
窓部の閉鎖時における上辺部の長手方向への変形を防止可能な強度を得るために、硬質部の断面積がいくら必要になろうとも、手段2のように、側壁部の延出方向における硬質部の幅が極力長くならないように構成することで、取付部への形状追従性を向上させ、取付作業性の向上等を図るといった上記手段1の作用効果が一層確実に奏される。
【0015】
尚、硬質部の断面形状としては、例えば、正方形状、又は側壁部の延出方向における幅が側壁部の厚み方向における幅よりも短い長方形状等が挙げられる。また、硬質部の横幅が対応する側壁部の厚みよりも大きい場合には、硬質部を側壁部から本体部の内周側に突出させて設けることとしてもよい。この場合、硬質部が側壁部のうち本体部の外周側の面から突出しないように構成することができ、サッシュ部への取付けに際して硬質部がサッシュ部の縁に引っ掛かって内側に押し込み難くなるといった事態を回避することができる。
【0016】
手段3.前記硬質部は、少なくとも前記本体部の外周側の面が前記硬質部よりも軟質な素材よりなる被覆部によって被覆されていることを特徴とする手段1又は2に記載のガラスラン。
【0017】
手段3によれば、ドアフレームが振動する等した場合に、硬質部と取付部とが接触して比較的大きな異音が発生してしまうといった事態を回避することができる。尚、被覆部は、基材と同じ材料によって構成されてもよいし、シールリップのガラス摺動面等に摺動層を一体形成する場合にはその形成材料で構成されてもよい。これらの構成を採用する場合、上辺部の製造作業性の向上を図ることができ、特に前者の構成を採用する場合には、さらに、製造装置の簡素化を図ることができる。
【0018】
手段4.前記基材及び前記硬質部はいずれもオレフィン系樹脂材料を主成分としていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のガラスラン。
【0019】
手段4によれば、硬質部が基材からはがれてしまうといった事態の抑制を図ることができる。従って、例えば、上辺部の長手方向における伸縮を防止する効果が薄れてしまったり、硬質部が側壁部から露出して設けられる場合に硬質部が脱落したりといった各種不具合を防止することができる。また、金属製の硬質部が側壁部に設けられるような場合に比べ、製造作業性の向上を図りつつ、硬質部の相対位置のばらつきを抑制することができるとともに、ガラスランをリサイクル(材料をリユース)する際の作業の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ドアの概略構成を示す正面模式図である。
【図2】図1のJ−J線断面図である。
【図3】別の実施形態におけるガラスランの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、自動車のドア用開口部に開閉可能に設けられるフロントドア(以下、単に「ドア1」と称する)には、ドア1の窓部Wを開閉する昇降可能なドアガラスGと、当該ドアガラスGの外周形状に対応して設けられ、ドアガラスGの昇降を案内するとともに、ドアガラスGの周縁部とドアフレーム2との間をシールするガラスラン5とが設けられている。本実施形態のドアフレーム2の上辺部は、後方(図1では紙面右側)に向けて上方傾斜している上、窓部Wの外周側(前方かつ上方;図1では紙面左上側)に凸となるような湾曲形状をなしている。尚、ドアガラスGの表裏面を構成する車内側面S1及び車外側面S2は互いに平行して延在している(図2参照)。
【0022】
また、ガラスラン5は、ドアガラスGの上縁部に対応する押出成形部6、ドアガラスGの前後の縦縁部に対応する押出成形部7、8と、押出成形部6−7、6−8の端末部同士を接続する型成形部9、10とから構成されている。各押出成形部6〜8は、図示しない押出成形機によりほぼ直線状に形成される。型成形部9、10は、2つの押出成形部6−7、6−8が所定の角度をなした状態で相互に接続されるように図示しない金型装置にて接続成形される。そして、ドアフレーム2の内周に沿って形成されるサッシュ部DS、及びサッシュ部DSの前後の縦辺部を下方に延長するようにしてドアパネル3内に設けられたチャンネル部DCに当該ガラスラン5が取付けられている。本実施形態では、サッシュ部DS及びチャンネル部DCが取付部に相当する。
【0023】
図2に示すように、押出成形部6は、基底部14と、該基底部14から延びる車内側側壁部15及び車外側側壁部16とを具備して断面略コ字状をなし、断面略コ字状のサッシュ部DS(チャンネル部DC)に嵌め込まれる本体部11と、車内側側壁部15の先端部から車外側に向けて延びる車内側シールリップ12と、車外側側壁部16の先端部から車内側に向けて延びる車外側シールリップ13とを備えている。ドアガラスGにより窓部Wが閉鎖された状態においては、車内側シールリップ12がドアガラスGの車内側面S1に対して圧接され、車外側シールリップ13がドアガラスGの車外側面S2に対して圧接される。これにより、ドアガラスGの車内側及び車外側がそれぞれシールされるようになっている。尚、図2では、紙面右側が車内側であり、紙面左側が車外側である。
【0024】
加えて、押出成形部7、8、型成形部9、10についても、基本的に押出成形部6と同様の断面形状をなしており、本体部11及びシールリップ12、13等を備えている(図示略)。また、本実施形態では、窓部Wの外周側に凸となるように湾曲しつつ、後方に向けて上方傾斜しているドアフレーム2の上辺部に対応して、サッシュ部DSの上辺部(窓部Wの上縁部)、及び、ドアガラスGの上縁部についても、同様に湾曲しつつ後方に向けて上方傾斜している。このため、サッシュ部DSの上辺部に取付けられる押出成型部6についても、窓部Wの外周側に凸となるように湾曲しつつ、後方に向けて上方傾斜するようにして延在している。
【0025】
さて、本実施形態では、ガラスラン5の上辺部を構成する押出成形部6の車内側側壁部15及び車外側側壁部16において、本体部11やシールリップ12、13等を構成する基材よりも硬質なオレフィン系樹脂よりなる車内側硬質部21及び車外側硬質部22が設けられている。本実施形態の基材はTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)で構成され、硬質部21、22はポリプロピレンで構成されている。また、押出成型部6は、本体部11等の基材で構成される部位と硬質部21、22とが共押出成型されることで形成されている。尚、押出成型部6は押出成型によって略直線状に形成されており、サッシュ部DSに取付けられることで、追従的に湾曲することとなる。
【0026】
硬質部21、22は、サッシュ部DSへの取付状態にあるガラスラン5の押出成型部6をその長手方向に対して直交する方向に切断した場合の断面における重心位置Xを通り、かつ、窓部Wを閉め切った状態におけるドアガラスGの表面(互いに平行な車内側面S1及び車外側面S2)に対して直交して延びる仮想直線Y上(仮想直線Yと交差する部位)に少なくとも一部が位置するように配置されている。
【0027】
また、硬質部21、22の断面形状は略正方形状をなしている。本実施形態では、各側壁部15、16に設けられる各硬質部21、22の1辺の長さは、それぞれ対応する側壁部15、16の厚みt1、t2よりも若干小さくなっている。従って、硬質部21、22が上記の位置に設けられることで、硬質部21、22は、側壁部15、16と基底部14との境界部から離間するとともに、側壁部15、16とシールリップ12、13との境界部からも離間することとなる。そして、押出成型部6を湾曲しているサッシュ部DSに取付けるべく追従変形させた場合、側壁部15、16のうち、硬質部21、22よりも基底部14側の部位は長手方向において伸長し、硬質部21、22よりもシールリップ12、13側の部位は長手方向において収縮することとなる。
【0028】
尚、側壁部15、16のうち、上記仮想直線Yと交差する部位は、サッシュ部DSの湾曲形状に追従させて湾曲させた場合に、押出成型部6の長手方向において伸長する部位と収縮する部位とが切り替わる部位に相当し、押出成型部6の長手方向において最も伸縮し難い部位となっている。つまり、サッシュ部DSへの取付けに際しての追従変形性に極力影響のない位置に硬質部21、22が設けられている。
【0029】
さらに、硬質部21、22のうち本体部11の外周側の面を覆う被覆部25が設けられている。本実施形態の被覆部25は、基材を構成するTPOを硬質部21、22の外周側の面に回すことで形成されている。また、被覆部25の表面は、側壁部15、16の本体部11の外周側の面と面一に形成されている。その一方で、硬質部21、22のうち、本体部11の内周側の面は、側壁部15、16の本体部11の内周側の面と面一とされて露出した状態となっている。
【0030】
以上詳述したように、本実施形態によれば、PPよりなる硬質部21、22がガラスラン5の上辺部を構成する押出成型部6の長手方向に沿って設けられているため、押出成型部6をその長手方向において伸縮し難くすることができる。従って、ドアガラスGの上縁部が傾斜している等の関係で押出成型部6が斜めに設置される場合であって、ドア1の窓部Wが閉め切られる際に押出成型部6がドアガラスGに突き上げられたとしても、押出成型部6を長手方向において押し縮めようとする応力に抗して硬質部21、22が突っ張ることとなる。これにより、押出成型部6がその長手方向に圧縮されるような格好でたくれてしまう等といった事態を抑止することができる。
【0031】
また、押出成型部6をサッシュ部DSに取付ける際に、窓部Wの外周方向に凸となるようにして湾曲しているサッシュ部DSの形状に合わせて押出成型部6を追従変形させる場合、側壁部15、16のうち窓部Wの内周側であるシールリップ12、13側の部位は、押出成型部6の長手方向において収縮させられ、側壁部15、16のうち窓部Wの外周側である基底部14側の部位は、押出成型部6の長手方向において伸長させられる。従って、側壁部15、16の基底部14からの延出方向(各側壁部15、16の厚み方向に対して直交する方向;図2では車内側側壁部15の延出方向をL1、車外側側壁部16の延出方向をL2として図示する)における硬質部21、22の幅が長ければ側壁部15、16の追従変形が阻害されるのは勿論のこと、たとえ短く形成したとしても、基底部14やシールリップ12、13に近接して設けられると、追従変形が阻害されてしまうおそれがある。
【0032】
これに対し、本実施形態によれば、硬質部21、22は、押出成型部6の断面における重心位置Xを通り、かつ、ドアガラスGの表裏面S1、S2に垂直な仮想直線Y上に少なくとも一部が位置するようにして、側壁部15、16のうち基底部14やシールリップ12、13との境界部から離れた位置に設けられている。つまり、上記のように、側壁部15、16は、窓部Wの外周方向に湾曲させると、基底部14からの延出方向において或るポイントを境にして、本体部11の長手方向において伸長する部位と収縮する部位とに切替わるのであるが、前記或るポイントというのは、本体部11の長手方向において最も伸縮変形し難い部位であると言える。そして、前記或るポイントは、前記仮想直線Yと交差する部位或いはその近傍に存在する。このため、前記仮想直線Y上に少なくとも一部が位置するようにして硬質部21、22が設けられることで、硬質部21、22が設けられることによる押出成型部6の追従変形性への影響を極力小さくすることができる。従って、押出成型部6に硬質部21、22を設けても、ドアフレーム2の湾曲形状に合わせて押出成型部6を比較的スムースに追従変形させることができ、結果として、取付作業性や取付状態の安定性の低下等を防止することができる。
【0033】
また、硬質部21、22は断面略正方形状に構成されている。このため、断面積が同じでも、断面形状が側壁部15、16の延出方向に沿って長い長方形状の硬質部が設けられる場合に比べ、側壁部15、16の延出方向における硬質部21、22の幅を短くすることができる。従って、サッシュ部DSへの形状追従性を向上させ、取付作業性の向上等を図るといった上記作用効果が一層確実に奏される。
【0034】
さらに、硬質部21、22のうち本体部11の外周側の面は、基材と同じTPOよりなる被覆部25で覆われている。このため、ドア1が振動する等した場合に、硬質部21、22とサッシュ部DSとが接触して比較的大きな異音が発生してしまうといった事態を回避することができる。また、ガラスラン5は、基材がTPOで構成されるとともに、硬質部21、22がポリプロピレンで構成されている。このTPOとポリプロピレン(PP)とは共にオレフィン系樹脂であるため、相溶性が良い。このため、硬質部21、22が基材からはがれてしまうといった事態を抑制することができる。従って、例えば、押出成型部6の長手方向における伸縮を防止する効果が薄れたり、硬質部21、22が側壁部15、16から露出して設けられる場合に硬質部21、22が脱落したりする等の各種不具合を防止することができる。また、例えば、硬質部が金属で構成される場合のように、はがれを防止するための構成を設けずとも済むため、製造作業性の向上等を図ることができる。
【0035】
また、例えば、可撓性を有する金属製のワイヤによって硬質部を構成する場合に比べ、硬質部21、22の相対位置のばらつきの抑制を図ることができる上、リサイクル(構成材料をリユース)する際の作業の簡素化を図ることができる。加えて、例えば、型成形部9のうちガラスラン5の上辺部を構成する部位から上方に突出し、サッシュ部DSに形成された孔、又はサッシュ部DSの端縁に引っ掛けるストッパーを設ける等しなくても、ガラスラン5の上辺部の位置ずれを防止することができる。このため、ストッパーを設けたり、サッシュ部DSにストッパー用の孔を設けたりする手間が省け、製造作業性の向上等が図られるとともに、コストの削減を図ることができる。
【0036】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0037】
(a)上記実施形態では、フロントドアのガラスラン5に具体化されているが、リアドア等のガラスランに適用してもよい。また、上記実施形態のドアガラスGの上縁部は湾曲しているが、水平部と傾斜部とから構成されるように屈曲させてもよい。さらに、上記実施形態では特に言及していないが、ドア1は、ドアフレーム2を構成するアウタパネルとインナパネルとの間にチャンネル部材を設けたり、アウタパネルやインナパネルの端部にモール部材を取付けたりするタイプに限定されるものではなく、チャンネル部材を介在させないタイプ(チャンネルレス構造)のものを採用してもよい。つまり、上記実施形態では、押出成型部6をサッシュ部DSに引っ掛けたりすることなく、押出成型部6の長手方向におけるずれ(たくれ)を防止することができるため、チャンネルレス構造のドアフレームに取付けられるガラスランに適用しても、確実に上記実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0038】
(b)上記実施形態では、ガラスラン5の上辺部を構成する押出成型部6において硬質部21、22が設けられているが、前後の縦辺部を構成する押出成型部7、8や型成形部9、10にも硬質部21、22を設けることとしてもよい。例えば、押出成型部7、8に硬質部21、22が設けられた場合、ドアガラスGの上昇につられて押出成型部7、8が上方にたくれてしまうといった事態をより確実に回避することができる。
【0039】
また、上記実施形態では、車外側側壁部16及び車内側側壁部15の両方に硬質部21、22が設けられているが、少なくとも一方に設けられていればよい。但し、窓部Wの閉鎖時に、車内側側壁部15及び車外側側壁部16のうち硬質部が設けられた方と設けられていない方とで長手方向にずれが生じてしまうことが懸念されるため、両方に設けることが望ましい。
【0040】
(c)上記実施形態では、硬質部21、22のうち本体部11の外周側の部位を本体部11の基材であるTPOによって被覆しているが、基材とは別に、摺動性を向上させるためにシールリップ12、13のガラス摺動面等において共押出成型される摺動層を構成する材料(例えば、基材よりも硬いTPO等)によって被覆することも可能である。但し、異音の発生を抑制するべく、被覆部25は硬質部21、22よりも柔らかい材料で構成されることが望ましい。
【0041】
また、硬質部21、22の本体部11外周側の面を被覆しなくてもよい。さらに、例えば、図3に示すように、車外側側壁部16に設けられる車外側硬質部22の車外側面をTPO等で被覆しなくても、車外側硬質部22の車外側に凹部31が形成されるようにして、車外側硬質部22を車外側側壁部16の車外側面よりも没入した位置に設けることとしてもよい。この場合、車外側硬質部22とサッシュ部DSとの接触を抑制することができ、万一、接触したとしても比較的大きな異音の発生を防止ることができる。尚、かかる構成を車内側側壁部15及び車内側硬質部21に適用することも可能である。
【0042】
(d)上記実施形態では、硬質部21、22が断面略正方形状に構成されているが、必ずしもかかる形状に限定されるものではない。但し、硬質部21、22の剛性を確保するべく硬質部21、22を縦(側壁部15、16の延出方向)に延ばすと、側壁部15、16の追従変形性の低下を招くおそれがあるため、必要に応じて横(側壁部15、16の厚み方向)に延ばし、硬質部21、22の縦幅を横幅よりも短くする、又は、ほぼ同じとすることが望ましい。また、断面形状は必ずしも矩形状に限定されるものではなく、幾分丸みを帯びていてもよいし、円形、楕円形、長円形等であってもよい。
【0043】
また、例えば、図3に示すように、車内側硬質部21の横幅が車内側側壁部15の厚みよりも大きい又は同じ場合、車内側硬質部21を車内側側壁部15から本体部11の内周側に突出させるようにして設けることとしてもよい。この場合、車内側硬質部21が車内側側壁部15から本体部11の外周側(車内側)に突出してしまうといった事態を回避することができる。従って、ガラスラン5のサッシュ部DSへの取付けに際し、車内側硬質部21がサッシュ部DSに引っ掛かって押し込み難くなってしまうといった事態を防止することができる。
【0044】
さらに、上記のように、車内側硬質部21を本体部11の内周側に突出させた場合、図3に示すように、本体部11の内側にドアガラスGが進入して車内側シールリップ12が弾性変形した場合に、車内側シールリップ12の裏面に接触し、車内側シールリップ12と協働してドアガラスGを支持するサブリップ33を、車内側硬質部21の先端部から延出させることとしてもよい。この場合、サブリップ33を短くすることができ、省資源化等を図ることができる。また、サブリップ33の付け根部の安定化が図られ、より確実に車内側シールリップ12を支持することができる。尚、これらの構成を車外側側壁部16及び車外側硬質部22に適用することも可能である。
【0045】
(e)上記実施形態では特に言及していないが、仮想直線Yが各硬質部21、22の中心(重心)を通るように構成されていることとしてもよい。この場合、押出成型部6に硬質部21、22を設けても、ドアフレーム2の湾曲形状に合わせて押出成型部6を比較的スムースに追従変形させることができるといった作用効果がより一層奏されることとなる。
【符号の説明】
【0046】
1…ドア、2…ドアフレーム、5…ガラスラン、6〜8…押出成形部、11…本体部、12…車内側シールリップ、13…車外側シールリップ、14…基底部、15…車内側側壁部、16…車外側側壁部、21…車内側硬質部、22…車外側硬質部、DC…チャンネル部、DS…サッシュ部、G…ドアガラス、W…窓部、X…重心位置、Y…仮想直線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基底部、及び前記基底部から延出する一対の車内側側壁部及び車外側側壁部を備えて断面略コ字状をなし、車両のドアフレームの内周に沿って設けられた取付部に取着される本体部と、前記各側壁部から前記本体部の内側に延出する車内側シールリップ及び車外側シールリップとを備えるガラスランにおいて、
昇降するドアガラスの上縁部に対応して設けられる上辺部には、前記車内側側壁部及び車外側側壁部のうち少なくとも一方において、前記本体部及び前記シールリップを構成する基材よりも硬質な樹脂よりなる硬質部が前記上辺部の長手方向に沿って設けられ、
前記硬質部は、前記上辺部をその長手方向に対して直交する方向で切断した場合の断面における重心位置を通り、かつ、前記ドアガラスの表裏面に対して垂直となる仮想直線上に少なくとも一部が位置するようにして、前記側壁部のうち前記基底部及び前記シールリップとの各境界部から離れた位置に設けられていることを特徴とするガラスラン。
【請求項2】
前記硬質部は、前記側壁部の前記基底部からの延出方向における幅が、当該側壁部の厚み方向における幅以下となるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のガラスラン。
【請求項3】
前記硬質部は、少なくとも前記本体部の外周側の面が前記硬質部よりも軟質な素材よりなる被覆部によって被覆されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスラン。
【請求項4】
前記基材及び前記硬質部はいずれもオレフィン系樹脂材料を主成分としていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガラスラン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−153278(P2012−153278A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14822(P2011−14822)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】