説明

ガラス合紙用段ボールシート

【課題】 高い清浄度や傷品位が要求されるフラットパネル・ディスプレイ用の基板材料として用いられるガラス板表面への汚染や傷入りを防止できるガラス合紙を提供する。
【解決手段】ライナ原紙と中芯原紙を貼合してなる段ボールシートであって、ライナ原紙として無塵紙を用いたガラス合紙用段ボールシート。該無塵紙が、基材紙に合成樹脂エマルジョンを含浸させてなることを特徴とする前項記載のガラス合紙用段ボールシート。段ボールシート表面同士の擦りによるクリーン度試験で、吸引体積0.02立方フィート中に0.3μm以上の塵の数が1000個以下である前項記載のガラス合紙用段ボールシート。該中芯原紙が吸湿化合物を含む前項記載のガラス合紙用段ボールシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板を複数枚積層して保管、運搬する流通過程において、ガラス板表面への汚染や傷入りを防止できるガラス合紙に関するものであり、特に液晶パネルディスプレイやプラズマパネルディスプレイといったフラットパネル・ディスプレイ用ガラス板に好適なガラス合紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、ガラス板を複数枚積層して保管、トラック運搬する流通過程において、ガラス表面が汚染されることや、ガラス板同士が衝撃を受け接触してできる擦れ傷を防止する目的でガラス板の間に合紙を挟み込む方法が一般的である。
【0003】
ガラス用の合紙に必要な特性としては、ガラス表面を汚染させない、またガラスの割れや表面の傷付きを防止可能であることが挙げられ、このようなガラス用合紙としては次のようなものが挙げられる。
例えば、特開昭59−221269号公報、特開昭60−181399号公報、特開平2−53987号公報、特開2003−44498号公報(特許文献1〜4)には、砕木パルプや古紙(主として新聞古紙)を主体としたガラス合紙が開示されている。
【0004】
その他、例えば特開2000−142856号公報(特許文献5)では、ガラス板を運搬する際にガラス板を2〜20度下方に傾斜し収納することで擦り傷の発生を防止している。
【0005】
【特許文献1】特開昭59−221269号公報
【特許文献2】特開昭60−181399号公報
【特許文献3】特開平2−53987号公報
【特許文献4】特開2003−41498号公報
【特許文献5】特開2000−142856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来から使用されているガラス用合紙では、ガラス表面を汚染することは防止できても、緩衝性が無いため、輸送時の振動等でガラス表面に擦り傷が入ることを防止する効果が少ない。特許文献5で示すような輸送時の収納方法で工夫する等しても未だ十分な効果を得ていないのが実情である。
また、古紙を含有するガラス合紙は、原料古紙に多量の樹脂が含まれており、この樹脂は水溶、揮発又は転移してガラス表面へヤケ及び紙肌付着を発生させるものであり、一定の量に減少するまで取り除かなければならない。
【0007】
また、緩衝性を有する紙素材として段ボールシートが広く用いられている。段ボールシートは、中芯のフルート構造による緩衝性を有し、段ボール箱等の梱包材料や、緩衝材等として広く使用されている。
しかし、通常の段ボールシートに使用されるライナと中芯は、主としてコストの問題から古紙パルプが多く含まれている。パルプの種類は、段ボール古紙、雑誌古紙、新聞古紙、地券古紙などがあるが、共通して微細化したパルプ繊維が多く、パルプ繊維以外の異物あるいは無機粉体も多い。そのため、従来の段ボールシートは擦れ・折れ・破れによって発塵しやすく、ガラス表面を傷つけてしまうためにガラス用合紙としては到底使用することが不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために以下の方法をとる。
即ち、本発明の第1は、ライナ原紙と中芯原紙を貼合してなる段ボールシートであって、ライナ原紙として無塵紙を用いたガラス合紙用段ボールシートである。
【0009】
本発明の第2は、該無塵紙が、基材紙に合成樹脂エマルジョンを含浸させてなる本発明の第1に記載のガラス合紙用段ボールシートである。
【0010】
本発明の第3は、段ボールシート表面同士の擦りによるクリーン度試験で、吸引体積0.02立方フィート中に0.3μm以上の塵の数が1000個以下である本発明の第1〜2のいずれかに記載のガラス合紙用段ボールシートである。
【0011】
本発明の第4は、該中芯原紙が吸湿化合物を含む本発明の第1〜3のいずれかに記載のガラス合紙用段ボールシートである。
【0012】
本発明の第5は、該吸湿化合物の吸湿率が30〜500%(温度30℃、相対湿度70%条件で24時間放置後)である本発明の第4記載のガラス合紙用段ボールシートである。
【0013】
本発明の第6は、温度23℃、相対湿度50%条件で24時間放置後の水分が8.0〜12.0%である本発明の第1〜5のいずれかに記載のガラス合紙用段ボールシートである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のガラス合紙用段ボールシートは、ガラス板の汚染や傷入りを効果的に防止可能であり、特に、一般の建築用窓ガラス板や車両用窓ガラス板等に比べて高い清浄度や傷品位が要求されるフラットパネル・ディスプレイ用の基板材料として用いられるガラス板に好適に用いることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明は、ライナ原紙と中芯原紙を貼合してなる段ボールシートであって、ライナ原紙として無塵紙を用いたガラス合紙用段ボールシートである。
本発明における段ボールシートとは両面段ボールシート、および片面段ボールシート等、一般に段ボールシートと呼ばれるものがすべて含まれるものとする。
また、本発明においては、ライナ原紙だけでなく中芯原紙としても無塵紙を用いることが、塵の発生がより少なくなるため更に効果的である。特に、片面段ボールシートの場合には中芯がガラス面に直接接触するため無塵紙を使用する必要がある。
なお、本発明における無塵紙とは、紙同士の擦りによるクリーン度試験で吸引体積0.02立方フィート中に0.3μm以上の塵の数が1000個以下のものを意味するものとする。さらに好適には、200個以下とする。
従って、塵の数が1000個を越えた場合には、発生する塵の量が多いために、ガラス面の汚染を防止することができない。
合紙より発生する塵は、それが無機系のものであれば、ガラス表面の傷付きの原因となり、樹脂等の有機系のものであれば、保管・輸送中にガラス表面と圧着することによって、通常の洗浄工程では落ちない程度に表面に強固に付着し、汚染の原因となるので、上記原紙を用いることによって、ガラス表面の汚染を防止することが可能となる。
【0016】
本発明の段ボールシートのライナ原紙と中芯原紙に使用する原料パルプには、各種のものが使用でき、例えば、クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP),等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、CTMP、BCTMP)、リファイナーグランドウッドパルプ(RGP)等の機械パルプが使用可能である。
【0017】
その他のパルプとしては、コットンリンター、楮、三椏、麻、ケナフ等を原料とする非木材繊維パルプ、古紙を原料とする脱墨パルプ等がある。これらのパルプは単独でも、二種以上混合使用しても良い。但し、樹種によっては樹脂分が多いものもあり、特にライナ原紙として使用する場合、ガラス板の表面を汚染させることもあるため、なるべく樹脂分の少ない樹種を選定した方が好ましい。例えばコットンリンターやアルカリ処理によりαセルロースの純度を高めたパルプまたはキシラナーゼなどの酵素により酵素処理が施されたパルプ等が挙げられる。
【0018】
また、リグニン、色素系物質等の除去操作がされている点で、漂白処理の施されているパルプを使用することが好ましい。古紙を使用する際には古紙に含まれている不純物を取り除いてから使用することが好ましく、古紙を離解した後、アルカリ薬品を加え繊維からインキ膜を剥がし、界面活性剤に捕集させ繊維から分離除去する。
具体的な除去方法としては泡でインキを洗い流す洗浄法があり、一般には両者を併用して脱油脂処理が行われる。
【0019】
これらの原料パルプは、叩解を進めることでパルプ繊維間結合力が強化され発塵量が少なくなるため好ましい。遊離状叩解よりも粘状叩解されたものがより好ましい。パルプのフリーネスはカナダ変法ろ水度(0.3g法)で600ml以下にすることが好ましい。叩解を行うあたって叩解装置の種類、パルプ濃度、仕込み速度のような叩解条件は特に限定するものではなく前述のフリーネスの範囲になるように各条件を設定すれば良い。
【0020】
ライナ原紙、中芯原紙を抄造する際の内外添薬品については、必要に応じて適宜公知の薬品が使用可能である。
例えば、ロジン系、スチレン・マレイン酸樹脂系、アルケニル無水コハク酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、各種紙力増強剤、濾水歩留り向上剤、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等の耐水化剤、吸湿剤、柔軟剤、帯電防止剤、消泡剤、スライムコントロール剤、タルク等の填料、染料等を使用することができる。
特にライナ原紙を抄造する際には、ガラス表面を汚染したり、傷つける恐れのないものを使用することが必要である。
また、上記薬品以外に、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、デンプン等があり、それらの中には、高ケン化度PVA、低ケン化度PVA、変性PVA、変性ポリアクリルアミド、生デンプン、酸化デンプン、変性デンプンの水溶液などを、ライナ原紙や中芯原紙の必要に応じて塗布もしくは含浸させることも可能である。
【0021】
本願発明のライナ原紙や中芯原紙として使用する無塵紙を得る方法としては、基紙中に樹脂エマルジョンを含浸して発塵を抑えることが望ましい。前記樹脂は、ガラス表面を汚染させない、又は汚染させても薬液洗浄にて容易に洗い落とせるものがよく、例えば、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)などから選ばれる。これらは単独もしくは2種類以上を混合して基紙中に含んでも良い。
【0022】
基材紙に含浸するこれらの樹脂は、乾燥後の樹脂量を10質量部以下の範囲とすることが望ましい。さらに好ましくは7〜1質量部、最も好ましくは5〜2質量部の範囲であるである。10質量部を越える樹脂を基紙へ含浸させた場合、ガラス表面を汚染させやすく、薬液洗浄やブラッシング洗浄、超音波洗浄だけでは簡単に洗い流すことは難しいばかりかガラス同士が樹脂により接着され容易に剥離できなくなる現象が発生する。また、1質量部未満の場合、繊維間が十分に結合されず、フリーネスが高い場合には発塵量が多くなる恐れがある。
【0023】
なお、紙の発塵を抑えるためには、主として、原料パルプの叩解を進め、カナダ変法ろ水度(0.3g法)でフリーネス600ml以下としたものを使用するか、基材紙に樹脂を含浸させるかのいずれかの手段をとることが可能であるが、必要に応じて両方の手段を組み合わせて無塵紙を得ることも可能である。
【0024】
ライナ原紙や中芯原紙に外添薬品や樹脂エマルジョン等を塗布、含浸する手段は公知のものが適宜用いられる。例えば、バーコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ゲートロールコーターやサイズプレスやキャレンダーコーター等のロールコーター、ビルブレードコーター、ベルバパコーター等がある。
【0025】
本発明のガラス合紙用段ボールシートは、ライナ、もしくはライナと中芯が前述に記載された無塵紙で構成されている。
ライナと中芯は、中芯の段頂部とライナ表面が接着剤を介して接着されており、ライナと中芯を接着する接着剤としては紙と紙とを接着できるものであれば使用することができる。例えば、澱粉、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、酢酸ビニルアルコール、SBR、NBR等の水溶性もしくは水分散系の接着剤とこれらの混合物、段ボール製造用のステンホール糊やその他貼合糊、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、シェラック等の溶剤系接着剤、ホットメルト接着剤、溶融樹脂等が使用可能である。
なお、ライナと中芯を接着する方法は、各種の段ボールシートの製造に使用される各種の段ボール製造機が使用できる。
【0026】
また、段ボールシートには一般に言うE段、F段、G段、N段、マイクロフルート等様々な段高のものが存在する。本発明における段ボールシートとしては、必要に応じて任意の段高のものを用いることが可能であるが、本発明のようにガラス用合紙として使用する場合は、0.70mm〜0.05mm、好ましくは0.3mm〜0.1mmが好適である。段高が0.70mmを越える場合には、運搬時の積載効率が悪くなるので好ましくない。また、0.05mm未満の場合には、製造も困難であり、また、緩衝性が乏しくなるため傷付き防止効果を得ることができない恐れがあるので好ましくない。
なお、本発明における段ボールシートの段数は、ガラス用合紙としての緩衝性や使用後の離解性、コストを勘案しながら適正な段数を選択すればよい。
なお、本発明で用いられるライナの坪量は特に限定されるものではないが、質量面、経済面からは、なるべく軽い坪量のものを選択すればよいが、強度や貼合適性的には30g/m以上あることが望ましい。
また、中芯の坪量は、緩衝効果面、強度面、経済面から30〜150g/mの範囲で適宜選択すればよい。
【0027】
ガラスには、空気中の水分によってヤケという表面が変性する現象が発生する性質があり、これが汚染の一因である。ガラスのヤケとは、主としてガラスに含まれるナトリウムやカリウム等のアルカリイオンがガラス表面に析出し、それが空気中の水分と反応することによって水酸化アルカリが生成されることである。生成された水酸化アルカリが潮解して水分を集め、その水分に大気中の炭酸ガスが溶解する事によって微小異物が発生すること、及び、ガラス表層のアルカリイオンが減少することにより表面にシリカリッチの変性層が形成されることを指す。この変性層は干渉色を示し、表面から目視観察可能である。
【0028】
この現象を防止するためには、吸湿性を有するガラス用合紙を使用することが、保管、および輸送時に、ガラス周囲の空気中の水分を減少させることが可能なので特に望ましい。
本発明のガラス合紙用段ボールシートにおいては、両面にライナ原紙が積層されるため、ガラスに直接接触しない中芯部分が吸湿性を有する構造であることが特に好ましい。
【0029】
また、中芯原紙に吸湿性を付与するには、吸湿性化合物を含有させることで可能である。
本発明における吸湿化合物とは、温度30℃、相対湿度70%の環境下で吸湿率が5%以上あるものとする。本発明においては、30〜500%のものを使用することが好ましく、さらに好ましくは50〜500%、最も好ましくは100〜500%である。30%未満のものは、吸湿性を付与する効果が十分でない恐れがある。また、500%を越えるものは、吸湿性が高いため、中芯原紙の水分量が多くなり、段ボールシートの段構造の強度が弱まって緩衝性が十分選られない可能性がある。
また、吸湿化合物としては、一般的に、燐酸塩、ハロゲン化物、酸化物、塩類、水酸化物及び吸収性ポリマーなど知られているが、特に吸湿性能が高い塩化リチウム、炭酸カリウム、塩化カルシウムなどを用いるのが好ましい。
また、これら吸湿性化合物は単独でも、また混合して使用して使用してもよい。さらにその中芯原紙への添加量は適宜調整可能であるが、0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜5%が最も望ましい。15質量%を越えた場合、吸湿性能が格段に高くなり中芯原紙の強度が弱くなり、必要な緩衝性を得ることができないという問題が発生する恐れがあり、また0.1未満の場合、十分な吸湿性が得られないためガラス表面のヤケが発生するという問題が発生する恐れがある。
【0030】
また、本発明のガラス合紙用段ボールシートは吸湿性を有することが望ましく、具体的には、温度23℃、相対湿度50%RHの環境下に1日放置すると水分率が8%を超えることが望ましい。上記条件における水分率が8%未満の場合、ガラス用の合紙として用いた場合、ガラス板の表面のヤケ防止効果が十分でない場合がある。なお、上記段ボールシートの吸湿性は、前述の吸湿化合物を含有した中芯原紙を用いることで容易に達成可能である。
【0031】
このようにして得られたガラス合紙用段ボールシートは、従来から使用されている通常のガラス用合紙から比較すると、発塵量が大幅に低減するばかりか、格段に高い吸湿性や緩衝性を有するのでガラス板表面への汚染や傷入りを防止することが可能である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、配合、濃度等を示す数値は、固型分又は有効成分の質量基準の数値である。
【0033】
<実施例1>
NUKP100%のパルプスラリーを300mlCSF(カナディアンスタンダードフリーネス)まで叩解し、定着剤として硫酸バンドを全繊維質量に対し0.2%添加、内添紙力増強剤としてポリアクリルアミド系紙力剤(商品名:ポリストロン117、荒川化学工業社製)を全繊維質量に対して0.2%添加したパルプスラリーを円網抄紙機にてシート化し、樹脂エマルジョンAM−290(昭和高分子社製 アクリル酸エステル樹脂)をサイズプレスにてパルプ100質量部に対し樹脂量が5.0質量部になるように含浸し、50g/mの無塵紙であるライナ原紙を得た。また同様にして70g/mの無塵紙である中芯基材を得た。
前記中芯基材は、キャレンダーコーターにて塩化カルシウム(セントラル硝子社製;吸湿率220%)溶液を固形分1.0g/m以上となるように塗工した。
前述のようにして得たライナ原紙及び中芯原紙とを、貼合糊を用い、コルゲーターにて段高0.3mmのガラス合紙用両面段ボールシートを得た。
【0034】
<実施例2>
針葉樹クラフトパルプ80%と広葉樹クラフトパルプ20%を混合したパルプスラリーをカナダ変法ろ水度(0.3g法)で600mlまで叩解し、該スラリーを用いて抄紙することにより、50g/mの無塵紙であるライナ原紙を得た。また同様にして90g/mの無塵紙である中芯基材を得た。
前記中芯基材はキャレンダーコーターにて塩化リチウム(大東化学株式会社製;吸湿率373%)溶液を固形分1.0g/m以上となるように塗工した。
前述の様にして得たライナ原紙及び中芯原紙とを、貼合糊を用い、コルゲーターにて段高0.3mmのガラス合紙用両面段ボールシートを得た。
【0035】
<実施例3>
中芯原紙に吸湿剤を塗工しない以外は、実施例1と同様にしてガラス合紙用段ボールシートを得た。
【0036】
<比較例1>
NUKP100%のパルプスラリーを300mlCSF(カナディアンスタンダードフリーネス)まで叩解し、定着剤として硫酸バンドを全繊維質量に対し0.2%添加、内添紙力増強剤としてポリアクリルアミド系紙力剤(商品名:ポリストロン117、荒川化学工業社製)を全繊維質量に対して0.2%添加したパルプスラリーを円網抄紙機にてシート化して、45g/mのライナ原紙を得た。また同様にして80g/mの中芯原紙を得た。
前述のようにして得たライナ原紙及び中芯原紙とを、貼合糊を用い、コルゲーターにて段高0.3mmのガラス合紙用両面段ボールシートを得た。
【0037】
<比較例2>
新聞古紙100%のパルプスラリーに、定着剤として硫酸バンドを全繊維質量に対し0.2%添加、内添紙力増強剤としてポリアクリルアミド(商品名:ポリストロン1250、荒川化学工業社製)を全繊維質量に対して0.4%添加したパルプスラリーを長網抄紙機にてシート化し、50g/m2で厚さ80μmのガラス用合紙を得た。
【0038】
<比較例3>
実施例1で抄造されたライナ用の無塵紙のみをガラス用合紙として用いた。
【0039】
前述の実施例1〜3及び比較例1〜3を以下の手段により評価した。
結果は表1に示す。
<擦り試験による発塵量測定>
実施例、比較例で得たガラス合紙用段ボールシートもしくはガラス用合紙を試験片として、段ボールの平面同士を擦ったときの発塵量を測定する。
直径14cmの円形の試験片、および10cm角に切り取った試験片を一対用意する。円形の試験片を円盤に貼付け、回転数600rpmで回転させる。10cm角の試験片を回転する円盤に貼付けた試験片と接触させ1分間擦り付ける。この作業はクリーンベンチ内で行うものとする。上記作業において、発生する塵を吸引管で集め、光散乱型微粒子計数計(リオン製、KC−14)で、吸引体積0.02立法フィート(ft)中における0.3μm以上の塵の個数を記録した。
【0040】
<水分量>
実施例、比較例で得たガラス合紙用段ボールシートもしくはガラス用合紙を温度23℃、相対湿度50%条件で24時間放置後の水分量を測定した。
【0041】
<ガラス輸送テスト>
アルミ製で75度の角度がつけられたL字架台上のガラス載置面に発泡ウレタンを敷き、ガラス板を垂直方向に載置するための載置面と載置面の後端部から垂直方向に延びる背もたれ面に向けて、サイズ360mm×460mm×0.7mmのガラス板120枚とガラス板の間に各ガラス合紙を挿入して、背もたれ面に平行となるように立てかけ、架台に固定された帯状のベルトを後端部から背もたれ面へ全周にわたり掛け渡してガラス板を固定した。上記のようにセットされた架台は、外部からの埃や塵等の混入を防ぐため包装材で全面を被覆して包装体とした。
さらに上記包装体をトラックにより輸送するテストを実施した。
輸送テスト条件は、(1)輸送距離0km(倉庫に5日間保管、但し23℃×30%RHの環境下で保管したものを(1)−a、40℃×95%RHの環境下で保管したものを(1)−bとする)、(2)輸送距離530km(40℃×95%RHの環境下で5日間輸送及び保管)、(3)輸送距離1100km(40℃×95%RHの環境下で5日間輸送及び保管)とした。
上記のテスト後、ガラス表面をブラッシングと超音波により洗浄した後、ガラス表面の発塵付着による汚染(a)、ヤケによる汚染(b)、および傷入り状態を観察した。
【0042】
<ガラス表面の汚染評価>
汚染状態を目視で確認し、汚染が全く無かったものを○、汚染が確認されたものを×とした。
【0043】
<ガラス表面の傷入り評価>
洗浄後の傷入り状態を目視で確認し、傷が全く発生しなかったものを○、傷が発生したものを×とした。
【0044】
【表1】

【0045】
表1から明らかなように実施例1、2の方法により製造されたガラス合紙用段ボールシートは発塵量も少なく、吸湿性が高いためヤケや発塵によってガラス表面が汚染することがなく、更には、高い緩衝性があるためガラス表面へ傷を入れることがない。
【0046】
実施例と比較例との対比から明らかなように、本発明のガラス合紙用段ボールシートは、ガラス板を複数枚積層して保管、運搬する流通過程において、ガラス板表面への汚染や傷入りを高いレベルで防止可能である。したがって、特に液晶パネルディスプレイやプラズマパネルディスプレイ等のフラットパネル・ディスプレイ用の基板材料として用いられるガラス板用合紙としての適性が格段に優れていることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライナ原紙と中芯原紙を貼合してなる段ボールシートであって、ライナ原紙として無塵紙を用いたことを特徴とするガラス合紙用段ボールシート。
【請求項2】
該無塵紙が、基材紙に合成樹脂エマルジョンを含浸させてなることを特徴とする請求項1記載のガラス合紙用段ボールシート。
【請求項3】
段ボールシート表面同士の擦りによるクリーン度試験で、吸引体積0.02立方フィート中に0.3μm以上の塵の数が1000個以下であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のガラス合紙用段ボールシート。
【請求項4】
該中芯原紙が吸湿化合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラス合紙用段ボールシート。
【請求項5】
該吸湿化合物の吸湿率が30〜500%(温度30℃、相対湿度70%条件で24時間放置後)であることを特徴とする請求項4記載のガラス合紙用段ボールシート。
【請求項6】
温度23℃、相対湿度50%条件で24時間放置後の水分が8.0〜12.0%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガラス合紙用段ボールシート。


【公開番号】特開2006−143221(P2006−143221A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331321(P2004−331321)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】