ガラス含有ブロー容器
【課題】本発明は、汎用性のある樹脂中に40重量%以上のガラス粉末を含有させたペレットを用いて、従来のブロー成形法で成形ができるガラス含有ブロー容器の製品化することができ、そして、優れた物性を有するガラス含有ブロー容器を提供する。
【解決手段】ガラス含有ブロー容器は、熱可塑性樹脂中にガラス粉末を含むガラス含有成形用ペレットを用いてブロー成形法で成形されてなるガラス含有ブロー容器であって、前記ガラス含有成形用ペレットが前記熱可塑性樹脂であるポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群から選ばれる一種の樹脂中に、前記ガラス粉末である中実の球状ガラス粉末をガラス配合率40〜70重量%の範囲で含有しており、該ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有ブロー容器の焼却エネルギー改善指標が特定の式に沿って漸減して改善される。
【解決手段】ガラス含有ブロー容器は、熱可塑性樹脂中にガラス粉末を含むガラス含有成形用ペレットを用いてブロー成形法で成形されてなるガラス含有ブロー容器であって、前記ガラス含有成形用ペレットが前記熱可塑性樹脂であるポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群から選ばれる一種の樹脂中に、前記ガラス粉末である中実の球状ガラス粉末をガラス配合率40〜70重量%の範囲で含有しており、該ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有ブロー容器の焼却エネルギー改善指標が特定の式に沿って漸減して改善される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂中に40重量%以上のガラス粉末が配合されてなるガラス含有成形用ペレットを用いて、従来のブロー成形法で成形されてなる、優れた特性を有するガラス含有ブロー容器に関する。詳しくは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群から選ばれる一種の樹脂中に、前記ガラス粉末である中実の球状ガラス粉末をガラス配合率40〜70重量%の範囲で含有するガラス含有成形用ペレットをブロー成形してなる、焼却時の焼却エネルギーを大幅に低減できるガラス含有ブロー容器に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製容器の生産量の約70%がブロー容器で、該ブロー容器の素材である熱可塑性樹脂は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)ボトルに見られるように、今後とも増加し続ける傾向にあり、他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂が多量に使用されている。これらの樹脂はブロー容器の素材として多量に使用され、汎用性のある樹脂として知られており、他の樹脂としては、ポリスチレンを含むポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートを含むポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が例示できる。
【0003】
ところで、今日の世界的規模の問題である二酸化炭素等の地球温暖化問題、有限な石油資源の枯渇問題が上記したプラスチックの生産量と密接に関係していることはよく知られたことであるが、その地球温暖化及び石油資源の枯渇の問題とプラスチックの生産量の関係を以下に述べる。
プラスチックは石油から合成された高分子化合物で、金型等による成形が簡単なため、大量生産される各種日用品や医療分野、工業分野の製品等の原材料として用いられている。使用する目的・用途に合わせた性能を有する樹脂を合成することが可能なことから、日本におけるプラスチックの生産量は、ここ数年間約1400万トンの量で推移している。
【0004】
平成16年の日本のプラスチック生産量は約1408万トンに達しており、プラスチック別の生産量ではポリエチレン樹脂(以下、「PE」と記載する。)が最も多く、次に、ポリプロピレン樹脂(以下、「PP」と記載する。)、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PET」と記載する。)、ABS樹脂の順で続き、プラスチックの中で熱可塑性樹脂の生産量が上位を占めており、プラスチックの生産量の約90%が熱可塑性樹脂である。
【0005】
本発明者は、今日、全世界が共通の課題として緊急に解決を迫られている、二酸化炭素等の地球温暖化問題、有限な石油資源の枯渇問題を、解決せねばならないとの思いで日々熟慮を重ね続けた結果、一つの解決策を思い至ったものである。
その一つの解決策とは、石油から合成される熱可塑性樹脂にガラス粉末を大量に配合、例えば、70%のガラス粉末を配合させて押出機で混練し押出して成形用ペレットの製造ができたならば、熱可塑性樹脂、即ち、石油の使用量を70%削減でき、その成形体の焼却で排出される二酸化炭素の排出量を70%削減でき、更に、焼却エネルギーが減少できると共に成形体の焼却で残渣となったガラス粉末を樹脂に含有させて、リサイクルすることができるというものである。
【0006】
そこで、本発明者は、本願出願前に、熱可塑性樹脂に40重量%以上のガラス粉末を配合、例えば、70重量%のガラス粉末を配合させて押出機で混練して押出し、ペレット(ガラス含有成形用ペレット)が成形できるよう鋭意研究に努めた結果、熱可塑性樹脂に中実の球状ガラス粉末が40〜70重量%含有するガラス含有成形用ペレットの完成に至り、PCT/JP2008/68093(特願2009−504515号)(発明の名称「ガラス含有成形用ペレット及びその製造方法」、優先権主張日:H19.10.4、(以下、「先願発明」という。))を特許出願した。
【0007】
従来から用いられているペレットにガラス粉末を混ぜて成形用組成物を得る製造方法では、最初に混合機でペレットとガラス粉末を計量して均一に混ぜた後にホッパーに投入する。前記ガラス粉末は、投入する前にガラス繊維を粉砕して粉末状にしてシラン化合物を含有した液に浸漬することで、その表面がシラン化合物で被覆、即ち、シラン化処理がなされたものを用いる場合が多い。前記シラン化合物は有機物とケイ素から構成される化合物で、通常では非常に結びつきにくい有機材料と無機材料を結ぶ仲介役としての働きをするものであるから、従来から樹脂に配合するガラス粉末は、シラン化処理されたものを用いている。
【0008】
このシラン化処理されたガラス粉末をホッパーに投入するが、ホッパーの入り口付近では、ガラス粉末の摩擦抵抗が大きいために、スクリューの剪断力によりガラス粉末が砂を噛むような状態で両材料をダイ側の方向に送り出し、そして、ヒーター・ブロワーの領域に入ると、シリンダーの外筒に設けられたヒーターの加熱により、シリンダーの内筒付近では溶融化されたペレット中にガラス粉末が混合された液相状態で、そして、スクリューの外筒付近では、溶融されていないペレットが固相状態で存在する。しかし、このスクリュー外筒の固相状態のペレットとシリンダー内筒の液相状態のペレットは、高速回転のスクリューにより混練撹拌されて、固相状態のペレットと液相状態のペレットが混合された半溶融状態となる。このように、前記ヒーター・ブロワーの領域の入口付近では、ペレットが半溶融状態のために流動性が低下して、スクリューの剪断力に対向する摩擦抵抗力が急激に増加する。
【0009】
そして、ペレットに大量のガラス粉末を加えて混練したとすると、上記したペレットが半溶融状態で大量のガラス粉末が存在するために流動性が急激に低下することとなり、前記スクリューに対する摩擦抵抗力がスクリューの剪断力以上に大きくなり、スクリューねじ山等の破損を起こして、混練して圧縮するスクリューの制御が停止等を起こすことは、当業者によく知られたことである。そして、前記押出機は1台当たり2〜3千万する高額な機械であるために、押出機の破損及び停止等による、部品交換費、修繕費及び点検費の高額な損失を恐れて、製造業者はガラス粉末の配合率を最大でも35重量%までしか配合しないのが実情である。
このように、プラスチック成形技術の分野では、熱可塑性樹脂の物性の向上を目的として、押出機で熱可塑性樹脂に大量のガラス粉末を配合して混練すると流動性が急激に低下するために、40重量%以上のガラス粉末を含有する熱可塑性樹脂組成物を製造することは不可能なことと認識されている。
【0010】
そこで、本発明者は、押出機で熱可塑性樹脂中に大量のガラス粉末を配合して混練すると流動性が急激に低下する原因を解明すべく、熟慮を重ねて検討した結果、以下に述べる4つの原因が相互に関連することで流動性の急激な低下が起きていると推測するに至った。
流動性の急激な低下は、固相と液相が混合した半溶融状態が発生すること、上述したガラス粉末にシラン化処理を施す方法として、シラン化合物が0.1重量%程度含まれる水溶液にガラス粉末を30分の間撹拌しながら、浸漬した後に濾過して100℃で乾燥する浸漬法が一般的に行われており、その処理により複数のガラス粉末同士が接触した状態でシラン化合物が被覆されるので、ガラス粉末が凝集した状態でフィルター処理されて乾燥されるので、シラン化処理されたガラス粉末の中には凝集した状態のガラス粉末(以下、「凝集ガラス粉末」という。)が存在すること、そして、従来から用いられている熱可塑性樹脂中に配合するガラス粉末は、ガラス繊維を細かく粉砕する等により得ているために、その形状が多角形、長方形等の様々な形状から構成されており、そして、その平均粒径が10〜100μmの広い分布幅にあること、この様々な形状と分布幅の広いこと、更に、ガラスと熱可塑性樹脂の比熱の差が大きいこと、例えば、ガラスの比熱は0.670J/(kg・K)であるのに対して、PETのそれは1.5J/(kg・K)であり、ある一定温度に上げるのにガラスよりPETの方が2.2倍の熱量を必要とすること、この比熱の差が大きいこと、この四つの原因が相互に複雑に作用することで、熱可塑性樹脂中に40重量%以上のガラス粉末を配合して混練すると流動性が急激に低下して、ガラス粉末を含有した成形用組成物が製造できない原因となっていると考え、本発明者はこれらの原因を取り除くことで先願発明を完成するに至った。
【0011】
上述した流動性が急激に低下する原因が解明されていなかったために、従来から樹脂ペレットに35重量%程度のガラス粉末を配合した樹脂組成物を製造できるが、該樹脂ペレットに40重量%以上の大量のガラス粉末を混ぜて、押出機で混練して押出してガラス含有の樹脂ペレットを製造することは、樹脂とガラス粉末の配合物の流動性が低下するために不可能なこととして、40重量%以上の大量のガラス粉末を含有した樹脂ペレットの製品化に成功したとする報告はなされていない。
【0012】
例えば、「本発明では、ポリカーボネート樹脂組成物の上記ガラスフィラーの含有量は、10質量%以上40質量%未満であることを特徴とし、15〜35質量%であることが好ましい。10質量%未満では成形品の機械物性が不充分であり、また、40質量%を超えると、樹脂とガラスフィラーとの接触面積が増大して成形品の透明性が低下し、また、成形性が低下するので好ましくない。」こと(特許文献1の段落[0056]参照)、「本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、上記リン酸塩系ガラスを0.1〜50質量部含む。0.1質量部未満であると難燃性付与の効果が得られず、50質量部超であると該樹脂組成物の成形流動性が劣る場合があるためであります。好ましいリン酸塩系ガラスの量は、0.5〜30質量部である。」(リン酸塩系ガラス50質量部は33.3重量%に相当)こと(特許文献2の段落[0026]参照)、そして、「本発明におけるAg2Oを含有する溶解性リン塩系ガラス粉末の配合量は、0.1〜40重量%である。配合量が0.1重量%未満であると、抗菌性能が発現せず、40重量%を越えると、樹脂自体の粘度が高くなり配合樹脂への均一な分散が得られ難くなる。Ag2Oを含有する溶解性リン塩系ガラス粉末の配合量は、好ましくは0.3〜35重量%であり、より好ましくは0.5〜30重量%である。」こと(特許文献3の段落[0016]参照)が知られている。
【0013】
ところで、ブロー容器の燃焼時の焼却エネルギーを改善する技術として、ポリオレフィン系樹脂に炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等を含有させることで焼却エネルギーを減少させることが従来から行われている。
例えば、プラスチック成形体の燃焼廃棄に際しては、樹脂の燃焼カロリーが高いため、燃焼炉の損傷等の問題が生じ、この種の樹脂製成形体の廃棄が社会問題になっているが、無機物(特に炭酸カルシウム)を添加したポリオレフィンは、添加量の増加にともない燃焼カロリーを低下させることができるが、耐環境応力クラッキングや衝撃強度がポリオレフィン単体容器と比較して劣るものとなってしまうために、燃焼時の燃焼カロリーが低く、優れた機械的性質を有するプラスチック成形体を得るために、分散剤としてカルボン酸基を有する変性ポリオレフィンのエチレン−アクリル酸共重合体を含有させた樹脂組成物を成形してなるブローボトルが知られている(特許文献4参照)。
【0014】
具体的には、高密度ポリエチレン100重量部に、重質炭酸カルシウム30重量部、分散剤としてカルボン酸基を有する変性ポリオレフィンのエチレン−アクリル酸共重合体1又は13重量部を含有させた樹脂組成物を成形してなるブローボトル(実施例5〜7)が開示されている。上記重質炭酸カルシウムの配合率は23又は21重量%に相当する。
なお、特許文献4の請求項1には、ポリオレフィン100重量部に、無機物として重質炭酸カルシウム等の炭酸塩3〜80重量部を含有させた樹脂組成物を成形してなるプラスチック成形体(ブローボトル)の発明が記載されているが、上記実施例5〜7には高密度ポリエチレン100重量部に、重質炭酸カルシウム30重量部を含有させた樹脂組成物を成形してなるプラスチック成形体が示されているだけで、該請求項1に記載の発明は明細書が示す実施例5〜7より広く、該発明を裏付ける実証が示されていない。
【0015】
また、紙を主体とする外装部材と、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、又はポリオレフィン樹脂を主体とする内側容器から成る一体化された複合容器を製造することにより、使用後の廃棄時には外装部材と内側容器を簡単に分離でき、分別廃棄、易焼却が可能な易廃棄性複合容器が知られている(特許文献5参照)。
一方、生分解性プラスチックであるポリ乳酸系樹脂組成物を成形してなるブロー成形体を用いることで、使用後に自然環境下で分解させることで燃焼の必要がないブロー成形体の開発が活発に行われている(特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006−022236号公報
【特許文献2】特開2004−256787号公報
【特許文献3】特開2001−139832号公報
【特許文献4】特開平08−231778号公報
【特許文献5】特開平10−035729号公報
【特許文献6】特開2003−213113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述したように、樹脂ペレットに40重量%以上のガラス粉末を含有させた樹脂ペレットを製造することは、樹脂とガラス粉末の配合物の流動性の低下により製造できないので、当然のことながら、従来のブロー成形法で40重量%以上ガラス粉末を含有したブロー容器を、成形時にトラブルなく製品化ができたとする事例は報告されていない。それ故に、先願発明の40重量%以上のガラス粉末含有ペレットを用いて、従来のブロー成形法で成形時にトラブルを生じることなく製品化が可能なのか否か、また、上記ガラス粉末を含有したブロー容器が焼却エネルギーを大幅に低減できるか否かは不明であり、また、そのガラス粉末含有のブロー容器が特有の物性を有するか否かは不明である。
【0018】
特許文献4には、プラスチック成形体の燃焼廃棄に際しては、樹脂の燃焼カロリーが高いため、燃焼炉の損傷等の問題が生じ、この種の樹脂製成形体の廃棄が社会問題になっているが、無機物(特に炭酸カルシウム)を添加したポリオレフィンは、添加量の増加にともない燃焼カロリーを低下させることができるものとして、無機物配合率23又は21重量%の樹脂組成物を成形させたブローボトルが記載されているが、上記無機物配合率23又は21重量%のブローボトルを焼却した場合に燃焼カロリーが何カロリー減少できるのか、即ち、無機物配合率と燃焼カロリーの関係を示す記載がないので、該無機物配合率が燃焼カロリーをどの程度減少できるか不明である。従って、ガラス粉末を含有したブロー容器を焼却した場合、ガラス配合率の増加に伴って焼却エネルギーが減少するものと推測されるが、40重量%以上のガラス粉末を含有させたブロー容器が、ガラス配合率の増加に伴って焼却エネルギーを減少できる具体的な割合は知られていない。
【0019】
特許文献5の易廃棄性複合容器は、紙の外装部材と樹脂の内側容器を別体に作成して一体化することから、樹脂容器と比べて非常に多数の作業工程数が必要となり、また、破棄時に外装部材と内側容器を分離する作業が必要となることから、製造から廃棄までの行程を通してコスト的に高価なものとなる。特許文献6のポリ乳酸系樹脂組成物を成形してなるブロー成形体は、素材であるポリ乳酸系樹脂がPE、PP及びPETと比べて非常に高価なものであるために、安価で汎用性のある樹脂を用いるブロー容器に代替できない難点がある。
【0020】
それ故に、本発明は、汎用性のある樹脂中に40重量%以上のガラス粉末を含有させたガラス含有成形用ペレットを用いて、従来のブロー成形法で成形する際にトラブルなく製品化でき、該製品が廃棄されて焼却時に生じる焼却エネルギーを大幅に低減でき、また、該焼却エネルギーとガラス配合率の関係を示す関係式により焼却エネルギーを減少できる割合が予測でき、特有の物性を有し、更に、コスト的に安価に製造できるガラス含有ブロー容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
そこで、本発明者は、先願発明の前記ガラス含有成形用ペレットを用いて製造したガラス含有ブロー容器を鋭意研究することで、大量のガラス粉末を含有するガラス含有ブロー容器を製品化すること、焼却エネルギーを大幅に減少できる優れた物性を有すること、そして、ガラス製容器と同様のフロスト感を備える優れた特性を有すること、コスト的に安価に製造できること、これらのことを見出して、本発明のガラス含有ブロー容器を完成したものである。
即ち、上記課題を解決するために、本願の請求項1に記載のガラス含有ブロー容器は、熱可塑性樹脂中にガラス粉末を含むガラス含有成形用ペレットを用いてブロー成形法で成形されてなるガラス含有ブロー容器であって、前記ガラス含有成形用ペレットが前記熱可塑性樹脂であるポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群から選ばれる一種の樹脂中に、前記ガラス粉末である中実の球状ガラス粉末をガラス配合率40〜70重量%の範囲で含有しており、該ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有ブロー容器の焼却エネルギー改善指標が以下の式(1)に沿って漸減して改善されることを特徴とする。
y=−0.01x+1 (1)
(x:ガラス配合率、y:焼却エネルギー改善指標)
同様に、本願の請求項2に記載のガラス含有ブロー容器は、前記ガラス配合率の増加に伴って、焼却エネルギー改善指標が0.60から0.36に漸減して改善されることを特徴とする。
本願の請求項3に記載のガラス含有ブロー容器は、熱可塑性樹脂中にガラス粉末を含むガラス含有成形用ペレットを用いてブロー成形法で成形されてなるガラス含有ブロー容器であって、前記熱可塑性樹脂のペレットがポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群から選ばれる一種からなるペレットであり、前記ガラス粉末が球状の形状で中実であり、該熱可塑性樹脂中にガラス配合率40〜70重量%の範囲で配合されており、該ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有成形用ペレットのメルトフローレート低下割合が以下の式(2)及び(3)に沿って漸減することを特徴とする。
y=−1.34x2−0.08x+1.00 (2)
y=−1.31x2−0.22x+1.00 (3)
(x:ガラス配合率、y:メルトフローレート低下割合)
本願の請求項4に記載のガラス含有ブロー容器は、前記ガラス配合率の増加に伴って、前記メルトフローレート低下割合が0.75から0.20まで漸減することを特徴とする。
本願の請求項5に記載のガラス含有ブロー容器は、前記ガラス含有ブロー容器がボトル、チューブ、カップ及び/又はトレーの形状を有することを特徴とする。
本願の請求項6に記載のガラス含有ブロー容器は、前記ガラス含有ブロー容器の熱伝導率が以下の式(4)及び(5)で記述される範囲で漸増して改善されることを特徴とする。
y=0.011x+1 (4)
y=0.012x+1 (5)
(x:ガラス配合率 y:熱伝導率改善指標)
本願の請求項7に記載のガラス含有ブロー容器は、前記ガラス含有ブロー容器のロックウェル硬度の、ポリエチレン樹脂に対する改善指標が以下の式(6−1)及び(6−2)で、前記ポリプロピレン樹脂に対する改善指標が以下の式(7−1)及び(7−2)で記述される範囲で漸増して改善されることを特徴とする。
y=0.026x+1 (6−1)
y=0.025x+1 (6−2)
y=0.019x+1 (7−1)
y=0.018x+1 (7−2)
(x:ガラス配合率 y:ロックウェル硬度改善指標)
本願の請求項8に記載のガラス含有ブロー容器は、前記ガラス含有ブロー容器がボトル、チューブ、カップ及び/又はトレーの形状を有することを特徴とする。
本願の請求項9に記載のガラス含有ブロー容器は、前記ボトルが飲料容器、化粧品容器、シャンプー容器、リンス容器、ボディーソープ容器であり、前記チューブが化粧品容器、医薬品容器であり、前記カップが食品容器であり、前記トレーが弁当容器、生鮮食品容器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のガラス含有ブロー容器は、ガラス含有成形用ペレットがガラス配合率40〜70重量%の範囲で含有したペレットを使用しても、ブロー容器を成形する際にトラブルを生じることなく製品化が可能となり、また、従来のブロー成形法で成形ができるので、従来の設備で事業化が容易となり安価に製品が製造できる。また、樹脂100%のブロー容器と比べて、焼却エネルギー改善指標が0.60から0.30に減少して改善されることで、焼却エネルギーを最小で40%、最大で70%の大幅な削減ができる。それ故に、焼却エネルギーの大幅な削減、二酸化炭素の排出量及び石油の使用量、これら3者を同時に最大で70%削減することができるので、地球環境に優しい製品であり、地球環境の問題に対する消費者、製造メーカ等の社会的ニーズにマッチした製品である。更に、ガラス配合率を40〜70重量%の範囲で任意に選択することで、樹脂100%ブロー容器の焼却エネルギーの40〜70%の範囲で社会的ニーズに合わせて削減することが可能である。
【0023】
また、本発明のガラス含有ブロー容器は、廃棄されて焼却時に生じる焼却エネルギーとガラス配合率の関係が示されているので、ガラス配合率を決めることで、前記熱可塑性樹脂100%のブロー容器の焼却エネルギーに対して、どのぐらいの割合で改善できるか、また、逆に引張弾性率を決めることで、どの位のガラス配合率が必要であるかを正確に予測することが可能である。
【0024】
更に、本発明のガラス含有ブロー容器は、成形品の焼却後に残った最大で70%のガラス粉末を樹脂に含有させて、再度、ガラス含有成形用ペレットを成形することで、70%のガラス粉末を何度でもリサイクルすることができ、循環型社会を形成する技術としての貢献度も大きい。
そして、ガラス粉末の原料は日本に豊富にある資源であり、その材料費は汎用性樹脂と比べて低廉であるので、汎用性樹脂とガラス粉末の原料で製造されるガラス含有成形用ペレットのトータルの原料費を安くすることができ、また、今日の高騰を続ける石油の代替可能な原料としてガラス粉末は有望である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のガラス含有成形用ペレットを成形し、その組成物を製造する製造方法に用いられる一例の押出機の縦断面図である。
【図2】球状Eガラス粉末の平均粒径の分布を示す分布図である。
【図3】球状Eガラス粉末の1000倍の電子顕微鏡写真である。
【図4A】PPに球状Eガラス粉末50重量%を配合して得られた、ペレットを側面から垂直に切断した切断部を50倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図4B】前記切断部を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
【図4C】前記ペレットの側面を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
【図5】PEのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。
【図6】PPのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。
【図7】PETのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。
【図8】実施例11〜13のガラス含有成形用ペレットにおけるMFR低下割合とガラス配合率の関係を示したグラフである。
【図9A】実施例11〜31のガラス含有成形用ペレットにおけるガラス配合率と最大値及び最小値のMFR低下割合の関係を示したグラフである。
【図9B】ガラス配合率とMFR低下割合の関係を示す式のグラフである。
【図10】実施例11〜31のガラス含有ブロー容器のガラス配合率と焼却エネルギーの関係を示したグラフである。
【図11A】実施例11〜31のガラス含有ブロー容器のガラス配合率と焼却エネルギー改善指標の関係を示したグラフである。
【図11B】実施例11〜31のガラス含有ブロー容器のガラス配合率と平均値の焼却エネルギー改善指標の関係を示したグラフである。
【図12】実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のガラス配合率と熱伝導率の関係を示したグラフである。
【図13】実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のガラス配合率と熱伝導率向上割合の関係を示したグラフである。
【図14】実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のガラス配合率(重量%)とロックウェル硬度の関係を示したグラフである。
【図15】ガラス配合率とロックウェル硬度改善指標の関係を示したグラフである。
【図16】従来から用いられている押出機の例である単軸押出機の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
最初に、ガラス配合率40〜70重量%のガラス含有成形用ペレット及びその製造方法を説明して、その後に、本発明のガラス含有ブロー容器、その物性・特性を説明する。
その説明により、ガラス配合率40〜70重量%のガラス粉末が含有されるガラス含有成形用ペレットが有する物性として、溶融状態にあるポリマーの流動性を示す尺度の一つであるメルトフローレート(以下、「MFR」という。)が理解でき、このガラス含有成形用ペレットを用いて、従来のブロー成形法で成形するに際して、トラブルが生じることなく成形できるガラス含有ブロー容器のMFRの値が理解でき、そして、そのブロー容器が有する物性・特性が理解できる。
【0027】
(ガラス含有成形用ペレットの成形工程)
図1は本発明のガラス含有成形用ペレットの製造に用いられる一つの押出機の縦断面図である。この押出機は、図16の従来の押出機と比べてホッパーの構造を除いて他の構造は同じであるので、図1の押出機の構造を説明することは省略する。前記押出機により40〜70重量%の範囲の中実の球状ガラス粉末と熱可塑性樹脂を混練して押出してガラス含有成形用ペレットが成形される。
図1の押出機に基づいて、40〜70重量%の範囲の中実の球状ガラス粉末と熱可塑性樹脂を混練して押出して、ガラス含有成形用ペレットを形成する工程を説明する。
本発明の実施形態に用いる押出機は、供給材料であるペレットと球状ガラス粉末を投入する2個のホッパーが備えられている。図1に示す押出機のホッパーを左側から順に第1、第2ホッパーと称し、第1ホッパーには熱可塑性樹脂のペレットが投入され、押出機の中間部付近に設けられている第2ホッパーには、球状ガラス粉末が投入される。第2ホッパーの配置位置は、第1ホッパーよりスクリューバレル内に供給されたペレットが、スクリューによる混練搬送に伴って溶融状態になる位置に設けてある。
なお、図1の押出機は、従来の押出機と比べてホッパーの構造を除いて他の構造は従来の押出機と同じ構造であるので、図1の押出機の構造を説明することは省略する。
【0028】
前記第1及び第2ホッパーが備えられた押出機は、樹脂材料と複数種類の充填剤、顔料等を配合して押出成形するものとして従来から知られているが、本発明の第1及び第2ホッパーと従来のそれとの違いは、従来の第2ホッパーでは、ペレットの配合量に対して充填剤等のその配合率が極めて少ないので小型のホッパーが用いられているが、本発明の第2ホッパーは球状のガラス粉末を大量に投入するので、その第2ホッパーの大きさはペレットの第1ホッパーと同等かそれより大きいものを用いる点、該ホッパーの上方に球状のガラス粉末を予熱する加熱装置(図示せず)が設けられている点が異なる。前記加熱装置は150℃〜350℃の範囲で加熱でき、一定温度に制御できるものであれば、通常用いられている加熱装置を用いることができる。
【0029】
従来の第2ホッパーに投入する充填剤、顔料等の温度は常温で用いているが、本発明の球状のガラス粉末は、第2ホッパーに投入する前に熱可塑性樹脂の溶融温度と同じか、それに近似した温度に予熱してから投入する。この予熱温度は溶融温度と同じであることが最も好ましく、(該溶融温度±10%の温度)が好ましい。予熱温度が(前記溶融温度−10%の温度)より低い温度であると、溶融状態の熱可塑性樹脂から大量のガラス粉末が熱を奪うために流動性が低下する恐れがあり、予熱温度が(前記溶融温度+10%の温度)より高い温度であると、熱可塑性樹脂の粘性抵抗が下がりすぎて液体状態になりペレット化できない恐れがあるので、ガラス粉末の予熱温度は(溶融温度±10%の温度)の範囲が適切である。
【0030】
まず、決められた熱可塑性樹脂とガラス配合率にしたがって、供給するペレットの重量を計量して第1ホッパー内に投入し、スクリューによる混練搬送によって送られたペレットがヒーターにより溶融状態になる位置、即ち、第2ホッパーが配置されている位置で、供給する重量が計量された球状ガラス粉末を熱可塑性樹脂の溶融温度と同じか、それに近似した温度に予熱して第2ホッパー内に投入する。溶融熱可塑性樹脂中に投入された中実の球状ガラス粉末が、混練されながら押出されてガラス含有成形用ペレットが形成されて、その後に切断されてペレットが得られる。
【0031】
前記ヒーターの温度は使用される熱可塑性樹脂の融点に応じて決められており、例えば、PEが230℃、PPが220℃、PETが250℃等である。そして、押出機のスクリューの回転数は、200回/分で配合物を混練しながら3mmの径のノズルダイから押し出して棒状にしたものを、水で冷やして長さ4mmに切断してペレットを得た。
【0032】
(中実の球状ガラス粉末)
本発明の中実の球状ガラス粉末(以下、「球状ガラス粉末」という。)のガラス質は、SiO2、B2O3、P2O3の1種又は2種以上を骨格成分とする、アルカリガラス、可溶性ガラス、無アルカリガラス、シリカガラス等が挙げられる。そして、その形状を球状にするには、ガラス繊維を粉砕して球状化する方法を用いることで平均粒径の分布をシャープにすることができる。該球状ガラス粉末のアルカリ分が多いと、熱可塑性樹脂の脆化を招きやすいので、アルカリ分の少ない可溶性ガラスが好ましく、更に、アルカリ分のない無アルカリガラスであるEガラスがより好ましい。しかし、何れのガラス質を使用するかはその用途に応じて決まるものであって、本発明の中実の球状ガラス粉末は実施例に限定されるものではない。
【0033】
前記球状ガラス粉末は、ガラス繊維の直径が20μmのものを材料として用いている。ガラス繊維はその直径が一定であるから、ガラス繊維の長さが前記直径20μmからばらつかないように粉砕することで、直径20μm、長さ10〜30μmの粉砕物が得られる。この粉砕物を炉の内部に設けた酸素バーナーによる2500〜3000℃の火炎に噴霧して球状化し、噴霧状の球体に炉の下部に設けた水の噴射装置より、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシランを0.1重量%含む水を噴射して、噴霧状態でシラン化処理を行いバグフィルターで捕集した。この捕集したガラス粉体は球状の平均粒径が10〜40μmの球状のガラス粉末である。このように、上記ガラス繊維の直径が20μmのものを材料として用いることで、平均粒径が10〜40μmの球状のガラス粉末が得られた。得られた球状ガラス粉末は中実であった。上記噴霧状態で行うシラン化処理を行う方法を、以下、「噴霧法」という。
【0034】
上記球状化したガラス粉末を前記噴霧法でシラン化処理をしたものが前記球状ガラス粉末である。換言すれば、この球状ガラス粉末はその表面がシラン化合物により全体的に覆われていることに特徴がある。
シラン化合物としては、以下の式で表されるものを挙げることができる。
R4-n−Si−(OR’)n
(式中、Rは有機基を表し、R’はメチル基、エチル基又はプロピル基を表し、nは1〜3から選ばれる整数を表す)
【0035】
かかるシラン化合物としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカップリング剤、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0036】
従来から用いられているガラス粉末は、その形状が多角形、長方形等の様々な形状から構成されており、そして、その平均粒径が10〜100μmの広い分布幅にあるのに対して、本発明のガラス粉末は形状が球状であり、その平均粒径が10〜40μmの範囲でその幅が非常に小さい。
【0037】
図2は上述した球状ガラス粉末の製造方法で得られた球状ガラス粉末の平均粒径の分布の頻度を示すグラフである。このグラフの横軸は前記球状ガラス粉末の粒径(μm)で、縦軸は分布の頻度(%)を示している。前記球状Eガラス粉末は、粒径が25μmで最高の分布頻度を示しており、その25μmを中心に正規分布曲線上の10〜40μmの範囲に分布しており、その範囲にある粒径の頻度が高いことがわかる。
図3は前記球状ガラス粉末の1000倍の電子顕微鏡写真である。この写真から球状ガラス粉末は、各々のその形状が球状であり中実であり、大小様々な粒径のものが存在していることが観察できる。
図2の球状Eガラス粉末の平均粒径の分布の頻度を示すグラフとこの図3の写真から、熱可塑性樹脂中の球状ガラス粉末は、その形状が真円の球形であり、大小様々な粒径のものが存在しているが、その平均粒径が10〜40μmであることが示されている。
【0038】
ところで、溶融熱可塑性樹脂中にガラス粉末を投入して混練する際に、その粒径が10μmより以下になると、微細粒子の割合が多くなり、比表面積の増加に伴い樹脂からガラス粉末が熱量を奪い、そのために樹脂の温度が急に低下することで溶融粘度が上昇し、剪断発熱により混練時の樹脂温度が極端に上昇するため、決められた両材料の配合率を調整することが困難になる。又、熱可塑性樹脂にガラス粉末を配合することで、一般的に、成形体の寸法安定性、機械強度(衝撃強度、曲げ強度等)、ソリ性、透過バリア性等の向上が図られるが、その粒径が10μmより以下になると、特に曲げ強度が低下するので好ましくない。
【0039】
前記粒径が40μmより大になると巨大粒子の割合が多くなり、混練時の溶融粘度の上昇は少ないが、ガラス含有組成物を一定サイズのペレットに切断する際に、カット刃の摩耗が激しくなり、大量の該ガラス含有組成物を連続して生産することが困難となり、生産上の問題が生じる。又、その粒径が40μmより大になると、特に衝撃強度が低下するので好ましくない。従って、平均粒径は10〜40μmの範囲が好適である。
【0040】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を用いる。
熱可塑性樹脂に着色や光沢の付与の目的で、顔料、酸化チタン、アルミナ、タルク、マイカ、シリカ、炭酸マグネシウム、金属ラメを配合することができる。
【0041】
PE、PP、PETの何れか一つの樹脂ペレットが溶融状態にある中に、最大で70重量%の球状ガラス粉末を配合して混練することにより、押出機の吐出口に設けたノズルダイより直径3mmの棒状に押し出して水で冷却してカッターで長さ約4mmに切断して、該熱可塑性樹脂中に球状ガラス粉末が独立して分散したペレット状のガラス含有成形用ペレットが得られるが、直径及び長さはこれに限定されるものではない。
【0042】
図4Aは、上述した本発明のガラス含有成形用ペレットの製造方法で製造されたガラス含有成形用ペレット(ペレット)の電子顕微鏡写真である。この電子顕微鏡写真は、PPに球状Eガラス粉末50重量%を配合して得られたペレットを、側面から垂直に切断した切断部を50倍に拡大して撮影したものである。
図4Bは、前記切断部を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
図4Cは、前記ペレットの側面を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
図4Bのペレットの切断部の写真から、該ペレットはPP中に個々の球状のガラス粉末が凝集することなく独立して分散された状態で配合されていることが観察される。
このことから、前記球状ガラス粉末が噴霧法によりその表面がシラン化合物により全面的に被覆されることで、押出機内で混練し押し出して成形された前記ペレットは樹脂中に球状のガラス粉末が凝集することなく独立して分散された状態で配合されていることが判明した。
【0043】
そして、図4Aの写真の中点より上下端部の位置まで円を描き、その円を均等に16分割して、16の各区画に配合されている球状ガラス粉末の数を目視して数え、その数えた結果を表1に示す。
なお、16分割線上に球状ガラス粉末がある場合には、1/2として球状ガラス粉末数の計算を行った。
【表1】
表1の測定結果から、各区画における球状ガラス粉末数は、140±1の範囲にあることから、ペレット中に球状ガラス粉末が均一に分散されていることを示している。
以上のことから、押出機でガラス粉末と熱可塑性樹脂を混練して押出成形されてなる本発明のガラス含有成形用ペレットは、ガラス粉末が、球状の形状で中実であり、10〜40μmの平均粒径であり、その表面がシラン化合物により全面的に被覆されており、熱可塑性樹脂中に40〜70重量%の範囲のガラス配合率で独立して均一に分散されている状態で含有されているものであることが判明した。
図4Cの写真は、ペレットの側面は球形の凸状部で覆われており、その球形凸状部が熱可塑性樹脂で前記球状ガラス粉末を被覆していることを表している。
【0044】
(実施例と比較例)
以下に示す実施例は、3種類のペレット状の熱可塑性樹脂(PE、PP又はPET)を対象として、上記した噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末と3種類のペレット状の樹脂のうち一つの樹脂の重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いており、その重量配合率におけるMFRが示されている。
【0045】
前記MFRは、溶融状態にあるポリマーの流動性を示す尺度の一つで、押出式プラストメーターで、一定圧力、一定温度の下に、規定の寸法をもつノズル(オリフィス)から流出する量を測定し、g/10minの単位で表わした指数である。一般にMFRの数値が大きいほど溶融時の流動性や加工性は良好であるとされ、世界的に樹脂の流量状態を表すものとして、このMFRが用いられている。
【0046】
上記3種類の熱可塑性樹脂のMFRは、実施例として選んだPEが0.25で、APPが10.0のMFRで、PETが20.0のMFRであり、MFRが0.25、10.0、20.0のものを選んでいるが、同じ熱可塑性樹脂であっても分子量に応じてMFRが異なるものである。その分子量の異なる熱可塑性樹脂のMFRは、上記したMFR0.25〜20.0の範囲に入るものとして3種類の熱可塑性樹脂を選定した。
【0047】
比較例1及び2に用いた比較例球体は、Eガラス繊維の粉砕物を球状化したものに浸漬法でシラン化処理したもので、実施例と同じ球状ガラス粉未を用いている。実施例の球状ガラス粉末は噴霧法でシラン化処理されているのに対して、比較例1及び2の球状ガラス粉末が浸漬法でシラン化処理されていることが相違することから、比較例1及び2の球状ガラス粉末は比較例球体と呼んでいる。
【0048】
比較例1及び2の前記浸漬法とは、球状ガラス粉末をγ一グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシランが0.1重量%含まれる水溶液に30分の間撹拌しながら、浸漬した後に濾過して100℃で乾燥したものである。その処理により複数の球状ガラス粉末同士が接触してシラン化合物が被覆されフィルター処理されて乾燥されるので、シラン化処理されたガラス粉末中に凝集した凝集ガラス粉末が存在することになる。
【0049】
なお、比較例として従来の各種形状を含むガラス粉末を用いたものを実施例の比較する対象としない理由は、PEのペレットと従来の各種形状を含む40重量%のガラス粉末を第1ホッパーに投入して混練を試みようとしたところ、流動性が急激に低下して、スクリューに対する摩擦抵抗力がスクリューの剪断力以上に大きくなり、スクリューねじ山等が破損を起こしそうになり、組成物を成形することができないために、実施例と比べて溶融熱可塑性樹脂中にガラス粉末を投入する効果、凝集状態にないガラス粉末の効果を明確にするための実験データが得られないことが分かったので、比較例としてEガラス繊維の粉砕物を球状化したものを用いることとした。このことで、前記溶融熱可塑性樹脂中にガラス粉末を投入する効果、凝集状態にないガラス粉末の効果を示す実験データを得ることができた。
【0050】
比較例1は3種類の樹脂のうちの一つの樹脂と比較例球体を別々に計量して押出機に投入した。第1ホッパーに一つの樹脂のペレットを投入し、第2ホッパーに比較例球体を投入した。比較例球体と一つの樹脂のペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準のものを用いており、その重量配合率における流動性を示すMFRの実験データが以下の表4、6及び8に示されている。
【0051】
比較例2は第1ホッパーに一つの樹脂のペレットと比較例球体を配合して同時に投入し、比較例球体と一つの樹脂のペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準のものを用いており、その重量配合率における流動性を示すMFRの実験データが以下の表4、6及び8に示されている。
【0052】
上記した実施例、比較例1及び2の3種類の成形組成物を得るための条件を、ガラス粒子、シラン化処理の方法、樹脂の種類、ガラス配合率、第1、第2ホッパーへの投入材料の6項目(以下、この6項目の条件を「6項目条件」という。)に分けて表2に示した。 なお、前記「ガラス配合率」は、熱可塑性樹脂中の球状ガラス粉末の重量%と定義して用いている。そして、「ガラス配合率重量%」を「ガラス配合率%」で示す場合があるが、同じ意味で用いている。
【0053】
【表2】
【0054】
ところで、実施例のガラス含有成形用ペレットは、比較例1及び2の比較例球体成形用組成物と比較してどの様な特性を有するものかを調べるために、上記6項目条件で成形した時の各樹脂を溶融する溶融温度と同じ温度で成形用組成物を溶融して、各樹脂の成形用組成物のMFRを測定した。前記各樹脂を溶融する溶融温度と同じ温度で成形用組成物のMFRを測定すれば、成形用押出機内で樹脂が溶融状態にある領域にガラス粉末を投入して混練している時の流動性の状態を数値化して表すことができ、そのことにより比較例1及び2の比較例球体成形用組成物のMFRと対比することにより、実施例のガラス含有成形用ペレットのMFRの特性が明確化される。
その測定結果は以下の実施例1〜3に示されている。
【0055】
(実施例1)
実施例1は熱可塑性樹脂としてHDPE(高密度ポリエチレン)(以下、「PE」という。)が用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPEの重量配合率が40:60、50:50、60:40、70:30の4種類の水準のものを用いた。
【0056】
上記した押出機の第1ホッパーよりPEとしてHI−ZEX 5100B(商品名:株式会社プライムポリマー製品)の重量を計量して60重量%を投入し、230℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度230℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、230℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例1の第1の水準の成形用組成物を得た。予熱温度は溶融温度230℃と同じであることが最も好ましく、(230℃±10%の温度)が好ましい。
【0057】
以下同様に、HI−ZEX 5100B50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用組成物、HI−ZEX 5100B60重量%、球状Eガラス粉末40重量%の第3の水準の成形用組成物、HI−ZEX 5100B30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用組成物を得た。
次に、比較例1−1及び比較例1−2は、表2に示した条件で長さ4mmのペレットを得た。用いた樹脂は実施例1の樹脂と同じものである。
【0058】
なお、以下に記載する他の2種類の熱可塑性樹脂(PP、PET)に関して、前記6項目条件も同様に、項目の「樹脂」及び「第1ホッパー」に対象とする樹脂を記載して他の項目に記載する内容は同じであるので、上記2種類の熱可塑性樹脂ごとに6項目条件を表にして表すことは省略する。
【0059】
ガラス配合率ごとの前記ペレットのMFRを230℃で測定した結果を表4に示す。
なお、表4における実施例1のPE(HI−ZEX 5100B)の熱可塑性樹脂100%のMFRは、0.25である。
【表4】
【0060】
図5は表4に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
このグラフにおいて□印は実施例1のMFRを、△印は比較例1−1のMFRを、×印は比較例1−2のMFRを示している。そして、これらの実施例1、比較例1−1及び比較例1−2のMFRの各曲線は、熱可塑性樹脂100%のMFR(以下、「100%MFR」という。)である0.25に対して、ガラス粉末の配合率が増加したときに各々のMFRがどの様な減少傾向になるかを示したものである。そして、PEの100%MFR(0.25)が1/2の値(以下、「1/2MFR」という。)である0.125の時のガラス配合率を示すために、各曲線との交点からX軸に向かって垂線が引かれている。
なお、1/2MFRのガラス配合率を求める理由は以下の表23の説明のときに述べる。
【0061】
なお、以下に示すグラフにおいて、□印は実施例を、△印は比較例1を、×印は比較例2を示しており、また、各曲線は、熱可塑性樹脂100%のMFR(以下、「100%MFR」という。)に対して、ガラス粉末の配合率が増加したときに各々のMFRがどの様な減少傾向になるかを示したものであるので、実施例2以降にはその説明を省略する。それと共に、1/2MFRの時のガラス配合率を示すために、各曲線との交点からX軸に向かって垂線が引かれていることの説明を省略する。
【0062】
上記1/2MFRの時の比較例1−2、比較例1−1及び実施例1のガラス配合率を表5に示す。
【表5】
【0063】
(実施例2)
実施例2は熱可塑性樹脂としてPPが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPPの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりPPとしてノバテックPP MA3(商品名:日本ポリプロ株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、220℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度220℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、220℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例2の第1の水準の成形用組成物を得た。予熱温度は溶融温度220℃と同じであることが最も好ましく、(220℃±10%の温度)が好ましい。
【0064】
以下同様に、ノバテックPP MA3 50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用組成物、ノバテックPP MA3 40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用組成物、ノバテックPP MA3 30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用組成物を得た。
次に、比較例2−1及び比較例2−2は、表2に示した条件で長さ4mmのペレットを得た。用いた樹脂は実施例2の樹脂と同じものである。
【0065】
ガラス配合率ごとの前記PPのペレットのMFRを220℃で測定した結果を表6に示す。
なお、表6における実施例2のPP(ノバテックPP MA3)の熱可塑性樹脂100%のMFRは、10.0である。
【表6】
【0066】
図6は表6に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
上記1/2MFRの時の比較例2−2、比較例2−1及び実施例2のガラス配合率を表7に示す。
【表7】
【0067】
(実施例3)
実施例3は熱可塑性樹脂としてPETが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPETの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりPETとしてバイロンFN305(商品名;東洋紡株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、250℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度250℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、250℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例3の第1の水準の成形用組成物を得た。予熱温度は溶融温度250℃と同じであることが最も好ましく、(250℃±10%の温度)が好ましい。
【0068】
以下同様に、バイロンFN305 50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用組成物、バイロンFN305 40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用組成物、バイロンFN305 30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用組成物を得た。
次に、比較例3−1及び比較例3−2は、表2に示した条件で長さ4mmのペレットを得た。用いた樹脂は実施例3の樹脂と同じものである。
【0069】
ガラス配合率ごとの前記ペレットのMFRを250℃で測定した結果を表8に示す。 なお、表8における実施例3のバイロンFN305の熱可塑性樹脂100%のMFRは、20.0である。
【表8】
【0070】
図7は表8に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
上記1/2MFRの時の比較例3−2、比較例3−1及び実施例3のガラス配合率を表9に示す。
【表9】
【0071】
なお、上記実施例では、押出機内に投入する球状のガラス粉末を溶融温度と同じか、それに近似した温度に予熱する最良の実施形態の例を示したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、例えば、押出機内に投入する球状のガラス粉末を溶融温度と同じか、それに近似した温度に予熱する代わりに、第2ホッパーに予熱しないで球状のガラス粉末を投入しても良い。その場合には、大量の球状ガラス粉末の投入により溶融温度が急激な低下を生じないように溶融温度を上げる等の、従来のペレットの成形に用いられている溶融温度(加温、冷却)、スクリュー速度等の制御により混練して押出して得たガラス含有成形用ペレットも、本発明のガラス含有成形用ペレットに含まれるものである。
【0072】
次に、3種類の実施例の有する特性であるMFRについて説明する。
3種類の、球状Eガラス粉末を含有する組成物の実施例、及び、比較例球体を含有する組成物の比較例、この両者のガラス配合率とMFRの関係を図5〜図7のグラフに示したが、この両者のグラフを対比すると、3種類の実施例のグラフは、前記MFRがガラス配合率の増加に伴い熱可塑性樹脂100%のMFRを頂点とする放物線を示しており、100%MFRの1/2の値がガラス配合率50〜60重量の範囲にあるのに対して、3種類の比較例1及び2のグラフは、前記MFRがガラス配合率の増加に伴い熱可塑性樹脂100%のMFRを頂点とする下方へ傾斜するほぼ直線を示しており、比較例1と比較例2の熱可塑性樹脂100%のMFRの1/2の値が、比較例1ではガラス配合率30〜40重量%の範囲にあり、比較例2ではガラス配合率20〜30重量%の範囲にあることを示している。
【0073】
従って、3種類の実施例は、前記MFRがガラス配合率の増加に伴い熱可塑性樹脂100%のMFRを頂点とする放物線を示しており、ガラス配合率40〜50重量%の範囲において、100%MFRの1/2以上の値であり、ガラス配合率50〜60重量%の範囲において、100%MFRの1/2の値から1/2以下の値に変わることを示している。
【0074】
比較例1は前記MFRがガラス配合率の増加に伴い熱可塑性樹脂100%のMFRを頂点とする下方へ傾斜するほぼ直線を示しており、ガラス配合率30〜40重量%の範囲において、100%MFRの1/2以上の値から1/2以下の値に変わることを示し、比較例2は前記MFRがガラス配合率の増加に伴い熱可塑性樹脂100%のMFRを頂点とする下方へ傾斜するほぼ直線を示しており、ガラス配合率20〜30重量%の範囲において、100%MFRの1/2以上の値から1/2以下の値に変わることを示している。
【0075】
実施例1〜3のグラフは、比較例のグラフよりガラス配合率の増加に伴うMFRの低下挙動が緩やかであることを示しており、このことは、製造工程で球状ガラス粉末の配合量が仮に変動しても、それに起因するMFRの変動が小さいことが判る。従って、ガラス含有成形用ペレットの製造工程においても品質管理上、有利であることがこれらのグラフで示されている。
【0076】
次に、実施例1〜3に示した熱可塑性樹脂ごとの1/2MFRの時の比較例2、比較例1及び実施例のガラス配合率を3種類の熱可塑性樹脂をまとめて表10に示す。
表10が示す比較例と実施例のMFRからみて、1/2MFRの時の比較例2のガラス配合率は25〜26重量%の範囲にあり、その時の比較例1のガラス配合率は32〜36重量%の範囲にあり、そして、その時の実施例のガラス配合率は54〜57重量%の範囲にあることから、その最大と最小の差は、比較例2で1%、比較例1で4%、実施例で3%の範囲にあることを示しており、実施例1〜3は、比較例2の約2倍、比較例1の約1.6倍の大量のガラス配合率を含有しても、1/2MFRであることを見出した。
上述した前記熱可塑性樹脂の1/2MFRは、ガラス配合率の増加に伴うガラス含有成形用ペレットのMFRの特性を把握するのに有用である。
【表10】
【0077】
実施例1〜3の熱可塑性樹脂100%のMFR、ガラス配合率40、50、60、70重量%の5点のMFRを表11に示した。図8は表11の5点のデータに基づいて計算された2次多項式の近似曲線を示し、実施例1〜3のガラス含有成形用ペレットにおけるガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。このグラフはガラス配合率の増加に伴って各熱可塑性樹脂100%のMFRが漸減する傾向を示している。
図8に記載の印は、PEが◇印を、PPが□印を、そして、PETが△印を示している。
【表11】
【0078】
実施例1〜3は、図8のグラフからガラス配合率の増加に伴って漸減するMFRが放物線上の値を示していることが判るが、ガラス配合率40、50、60及び70重量%の各増加に伴って、そのMFRが熱可塑性樹脂100%のMFRに対して、どの程度低下しているかを示す定量的な数値としてのMFRの低下割合が、例えば、ガラス配合率70重量%のガラス含有成形用ペレットのMFRの低下割合が求められれば、押出機を長時間に渡って運転し続けた場合、どの程度のMFRの低下割合でスクリューが破損を起こす等のトラブルの発生を防げるかが事前に分かる。
【0079】
また、地球温暖化問題及び石油資源の枯渇問題を解決するためには、大量の球状ガラス粉末を配合すればする程効果的であるが、ガラス含有成形用ペレットをブロー成形法、射出成形法、押出成形法等で成形した成形体を大量生産化することを考えると、MFRの低下割合を求めることで如何なる成形法でも成形し易いガラス配合率を検討する必要がある。
そして、ガラス配合率の値とMFRの低下割合との相互の関係が分かれば、選定した熱可塑性樹脂のMFRに応じてガラス配合率を容易に決定することが可能になる。例えば、PEを選定してガラス含有成形用ペレットを成形する場合、PE100%のMFRが0.25と小さい値であるから、MFRの低下割合を60%に抑えて成形するのに、必要なガラス配合率の値を容易に決定できれば便利である。
【0080】
そこで、最初に、熱可塑性樹脂に対してガラス配合率の増加に伴うMFRの低下割合の求め方を説明する。
上述したしたように、上記実施例1〜3に示した熱可塑性樹脂ごとの1/2MFRの時の比較例2、比較例1及び実施例のガラス配合率を表10に示したが、この熱可塑性樹脂の1/2MFRは、熱可塑性樹脂100%に配合する球状ガラスの増加により、ガラス含有成形用ペレットのMFRが熱可塑性樹脂100%の1/2の値になるガラス配合率を示している。例えば、PEは57重量%、PPは54重量%のガラス配合率の時に熱可塑性樹脂100%の1/2の値を示す。このことから、表12で示した実施例1〜3のガラス配合率40、50、60、70重量%のMFRを熱可塑性樹脂100%のMFRで割った値、即ち、ガラス配合率の増加により熱可塑性樹脂100%のMFRがどの程度低下しているかを示すMFRの低下割合を意味している。
【0081】
そこで、表11で示した実施例1〜3のガラス配合率40、50、60、70重量%のMFRを熱可塑性樹脂100%のMFRで割った値を「メルトフローレート低下割合」(以下、「MFR低下割合」という。)と定義してその値を求めた。その求めた結果を表12に示す。表10は1/2MFRの時に示すガラス配合率の値を表しているが、表12はガラス配合率が40、50、60、70重量%の時に示すMFR低下割合の値を表しているために、MFR低下割合がガラス配合率ごとに異なった範囲を示していることに留意されたい。
【表12】
【0082】
図9Aは表12の5点のデータに基づいて計算された3種類の実施例1〜3に関するMFR低下割合の2次多項式の近似曲線、いわゆる放物線を示し、実施例1〜3のガラス含有成形用ペレットにおけるMFR低下割合とガラス配合率の関係を示したグラフである。PEはy=−1.31x2−0.22x+1.00、PPはy=−1.11x2−0.24x+1.00、そして、PETはy=−1.52x2−0.03x+1.00の式で表され、これらの式は放物線を示すものである。図9Aのグラフはx軸がガラス配合率(重量%)を、y軸がMFR低下割合を示している。3種類の実施例1〜3は100%時のMFRが3種類の固有の値(0.25、10.0、20.0)を有しているが、何れの実施例1〜3であっても、MFR低下割合が、図9Aに示すようにガラス配合率の増加に伴って漸減し続けていること、そして、表12に基づいて各ガラス配合率のMFR低下割合の最大値と最小値の差を示すと、ガラス配合率40重量%の最大値が0.75、最小値が0.70で、その差は0.05であり、ガラス配合率50重量%の最大値が0.62、最小値が0.56で、その差は0.06であり、ガラス配合率60重量%の最大値が0.48、最小値が0.40で、その差は0.08であり、そして、ガラス配合率70重量%の最大値が0.28、最小値が0.20で、その差は0.08である。このことは、各ガラス配合率に対して示す3種類のMFR低下割合が、分散することなく0.05〜0.08の狭い範囲に実験データが存在していることを示している。
【0083】
図9Aが示す3種類の放物線は、各ガラス配合率のMFR低下割合の最大値と最小値の範囲に各実験データが包含されていることを示していると考えられるので、表12に示した各ガラス配合率のMFR低下割合の最大値と最小値からその放物線の式を求めた。最大値から得られた式(1)、y=−1.34x2−0.08x+1.00であり、最小値から得られた式(2)、y=−1.31x2−0.22x+1.00であった。
この式の係数及び常数は小数点第3位を四捨五入して得た式(1)及び式(2)を以下に示す。
y=−1.34x2−0.08x+1.00 (1)
y=−1.31x2−0.22x+1.00 (2)
ここで、xはガラス配合率の必要量(40≦x≦70)を、yはMFR低下割合を示している。
表13は上述した表12のガラス配合率40重量%、50重量%、60重量%、そして70重量%に対するMFR低下割合の最大値と最小値を示す表である。
【表13】
【0084】
図9Bはガラス配合率とMFR低下割合の関係を示す式のグラフである。この式はガラス配合率とMFR低下割合の関係を示しているので、統一的にガラス含有成形用ペレットの流動特性を把握でき、必要とするMFR低下割合を選定すれば樹脂中に配合すべき球状ガラス粉末のガラス配合率の予測、又は、ガラス配合率を選定すればガラス含有成形用ペレットのメルトフローレート低下割合の予測が可能となり、ガラス含有成形用ペレット及びガラス含有ブロー容器の成形時の操業性の向上を図ることが可能となる。
図9Bのグラフは、ガラス配合率40重量%の時の最大値が0.75であり、ガラス配合率70重量%の時の最小値が0.20であるから、ガラス配合率の増加に伴って、ガラス配合率が40〜70重量%の範囲のMFR低下割合が0.75から0.20まで漸減することを示している。
【0085】
次に、汎用性のある樹脂であるPE、PP及びPET中に40重量%以上のガラス粉末を含有させたペレットを用いて、従来のブロー成形法で成形されたガラス含有ブロー容器が焼却時の焼却エネルギーを大幅に低減できること、更に、そのブロー容器のガラス配合率と焼却エネルギーの関係を示して、ガラス配合率又は焼却時の焼却エネルギーが予測できること、コスト的に安価に製造できることを以下に説明する。
上記従来のブロー成形法は、食品、飲料、液体洗剤、トイレタリー、化粧品、医薬品などの容器の製造に主に適用されているが、工業製品である自動車部品の成形にも使用されている。
【0086】
熱可塑性樹脂をブロー成形法で成形するのに各種の樹脂を使用することができるが、上記したように、ブロー容器に多量に使用されている熱可塑性樹脂としては、PE、PP及びPETが挙げられ、本発明のガラス含有ブロー容器はこの3種類の樹脂を対象としている。
そして、本発明のガラス含有ブロー容器に用いるガラス含有成形用ペレットは、第2ホッパーに予熱した球状のガラス粉末を投入した製造方法で成形されたものだけに限定されるものではなく、上述したように、第2ホッパーに予熱しないで球状のガラス粉末を投入した場合には、従来のペレットの成形に用いられている溶融温度(加温、冷却)、スクリュー速度等の制御により混練して押出して得たガラス含有成形用ペレットが、熱可塑性樹脂中にガラス配合率が40〜70重量%の範囲の球状ガラス粉末を含んでおり、そのメルトフローレート値低下割合が上記式(1)及び(2)の範囲にあるものも含んでいることに留意されたい。
【0087】
(ブロー成形法)
押出機、射出装置などによって溶融・形成されたパリソン又はプリフォームを金型内に挟み込み、その内側に気体を吹き込み、その圧力で金型の内面にパリソン又はプリフォームの外面を押し付けて中空体を形成する工程からなる成形法である。ブロー成形法は、まずパリソンの成形が行われる2段の成形法であり、パリソンの成形には押出ブロー成形機と射出ブロー成形機が一般に適用されている。その他に,圧縮成形機も適用可能である。このようにブロー成形法には各種の形式がある。
【0088】
前記押出ブロー成形機(「ダイレクトブロー」とも呼ばれる。)を用いるダイレクトブロー法は、押出機及びヘッドによって金型内にパリソンが供給され、ブロー成形されるもので、成形材料を加熱熔融させてチューブ状に押し出し、金型で挟み、内部に高圧空気を吹き込んでブロー容器を成形する行程からなる成形法であり、これに対して前記射出ブロー成形機(「インジェクションブロー」とも呼ばれる。)を用いるインジェクションブロー法は、射出装置及びブロー機構によって構成される1台の成形機で、プリフォームを成形し、更に直接ブロー成形する行程からなる成形法で、パリソンの成形を射出装置で行うもので、射出装置で接合痕のない平滑な底面を持った有底パリソンを成形し、次にこれを中空用のあわせ金型内に移動し、そこでブロー機構によって空気を吹き込んで中空成形するもので、成形材料を加熱溶解させて予め閉じられた金型内に射出充填した後、固化又は硬化して成形する行程からなる成形法である。インジェクションブロー法には、ホットパリソン法とコールドパリソン法があり、ホットパリソン法は、射出成形された直後の高温状態にあるパリソンを割型内に導入し、直ちにパリソン内にエアーを吹き込むか、又はパリソンを温調後、パリソン内にエアーを吹き込んでブロー成形する方法で、コールドパリソン法は、射出成形されたパリソンを一旦冷却・固化させ、別工程においてパリソンを加熱手段で加熱した後に割型内に導入してパリソン内にエアーを吹き込んでブロー成形する方法である。
【0089】
(ガラス含有ブロー容器の製造方法)
熱可塑性樹脂をブロー成形法で成形するのに各種の樹脂を使用することができるが、ボトルに多量に使用されている熱可塑性樹脂としては、PE、PP及びPETが挙げられる。
以下に示す実施例と比較例の実験データは、PE、PP及びPETの3種類の樹脂を対象としている。実施例は、上記した噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末と3種類の樹脂のうち一つの樹脂の重量配合率が40:60、50:50、60:40、70:30の4種類の水準のものを用いており、その重量配合率における焼却エネルギーの実験データが以下に示されている。
【0090】
実施例として実施例11がPE、実施例21がPP、そして、実施例31がPETの各樹脂の例を以下に説明するが、これらの樹脂のガラス含有成形用ペレットは既述したものを用いるので、そのペレットの製造方法の説明は省略する。ブロー成形法として、実施例11はダイレクトブロー法で、実施例21はホットパリソン法で、実施例31はコールドパリソン法で成形してブロー容器を作成した。
【0091】
このように3種類の異なるブロー成形法を用いてブロー容器を作成したのは、ガラス配合率が40〜70重量%のペレットを用いて、既存の各種のブロー成形機を用いて従来のブロー成形法と同じ条件で、工業的に大量のブロー容器の生産ができか否かを検証するためである。
また、一般的に、同一の樹脂で異なるブロー成形法を用いて作成されたブロー容器は、その物性の特性が同一であることが知られているが、本発明者はPEを用いて上記3種類の異なるブロー成形法を用いてブロー容器の試作品を作成して、焼却エネルギー、熱伝導率及びロックウェル硬度を測定したところ同じ測定結果であったので、PE、PP及びPETのペレットを3種類の異なるブロー成形法を用いてブロー容器を作成して、上記物性の測定を行った。
【0092】
(測定の試験片)
測定の試験片は、実施例11では厚さが1.1mmの120mlのボトルを、実施例21では同じ厚さの500mlのボトルを、実施例31では同じ厚さの1000mlのボトルを作成して、各ボトルから幅が20mm×30mm、その厚さが1.1mmのものを切断したものを用いて上記物性を測定した。
(焼却エネルギーの測定)
焼却エネルギーは、JIS Z7302−2の廃棄物固形化燃料の発熱量試験方法に準じて測定し、発熱量をKcal/Kgで示した。
(熱伝導率の測定)
直径50mm、厚さ3mmの円盤状試験片を作成して、ASTM E1530に基づき熱伝導測定装置(GH1;アルパック理工(株)製)を用いて熱伝導率を測定した。
(硬度の測定)
硬度は、JIS K7202のプラスチックのロックウェル硬さ試験法に基づくM法に準じて測定した。以下、ロックウェル硬度という。
【0093】
(実施例11)
PEのガラス含有成形用ペレット(以下、「ペレット」という。)をダイレクトブロー法によりガラス含有ブロー容器を次のように製造した。
球状ガラス粉末とPEの重量配合比が、40:60、50:50、60:40、70:30のペレットを100℃で4時間乾燥した後に、そのペレットを押出ブロー成形機のホッパーより投入して、後部温度が215℃、前部温度が220℃、スクリュー回転数が100回/分、射出圧力が100kg/cm2、金型温度70℃の条件でダイレクトブロー法を行い、冷却時間が18秒で120mlのガラス含有ブロー容器を成形することができた。
なお、ガラスが含有されないPE100%のペレットで、上記押出ブロー成形機を用いてダイレクトブロー法による120m1ガラス含有ブロー容器を成形して、それにかかった冷却時間を測定したところ21秒を要した。球状ガラスの配合により熱伝導率の増加により、樹脂100%の場合より3秒短くなり冷却時間が14%短縮された。
【0094】
また、球状ガラス粉末とPEの重量配合比が、50:50の上記ペレットを用いて、インジェクションブロー法により、後部温度が235℃、前部温度が242℃、スクリュー回転数が100回/分、射出圧力が100kg/cm2の条件でパリソンを形成し、150m1のガラス含有ブロー容器を成形した。その際にかかった冷却時間は22秒である。なお、球状ガラス粉末が含有されないPE100%のペレットで、インジェクションブロー法による射出ブロー成形機を用いて150mlのガラス含有ブロー容器が成形できた。従来から行われている制御方法を変更することなくガラス含有ブロー容器を製造することができ、成形中にトラブルが発生することはなかった。それにかかった冷却時間を測定したところ25秒を要した。球状ガラスの配合により熱伝導率の増加により、樹脂100%の場合より3秒短くなり冷却時間が12%短縮された。
【0095】
(実施例21)
PPのペレットをホットパリソン法によりガラス含有ブロー容器を次のように製造した。
球状ガラス粉末とPPの重量配合比が、40:60、50:50、60:40、70:30のペレットを100℃で4時間乾燥して、乾燥したペレットを射出ブロー成形機のホッパーより投入して、240℃に溶融し150回/分の攪拌を行って、圧力(1);80kg、圧力(2);25kg、射出圧力;10kgとして4秒の射出でパリソンを作り、ブロー機構に移して6秒後にブローを6秒間行って500m1のガラス含有ブロー容器がホットパリソンで成形できた。
【0096】
(実施例31)
PETのペレットをコールドパリソン法によりガラス含有ブロー容器を次のように製造した。
球状ガラス粉末とPETの重量配合比が、40:60、50:50、60:40、70:30のペレットを130℃で4時間乾燥して、乾燥したペレットを射出ブロー成形機のホッパーより投入して、270℃に溶融し150回/分の攪拌を行って、圧力(1);80kg、圧力(2);25kg、射出圧力が10kgとして8秒の射出でパリソンを作り、取り出して室温でパリソンを放置した、該パリソンをブロー機構に移して270℃に加熱・軟化して8秒間ブローを行って1000m1のガラス含有ブロー容器がコールドパリソン法で成形できた。
【0097】
(ガラス含有ブロー容器の製品化)
ところで、実施例11〜31は、ガラス配合率40〜70重量%のガラス含有成形用ペレットを用いてブロー容器を成形する際にトラブルの発生が生じなかったので、実施例11〜31のブロー容器は、従来のダイレクトブロー法、ホットパリソン法又はコールドパリソン法の従来から行われているブロー成形法で、ガラス配合率40〜70重量%のブロー容器を製品化することができ、成形中にトラブルの発生の虞がないといえる。
それ故に、従来から行われている3種類のブロー成形法でガラス配合率40〜70重量%の範囲のペレットを用いさえすれば、ガラス含有ブロー容器をトラブルなく製品化できるといえる。
【0098】
(比較例)
比較例は上記した3種類のPE、PP及びPETの熱可塑性樹脂100%のブロー容器(以下、「樹脂100%ブロー容器」という。)を用いた。
PE、PP及びPETを上記実施例11〜31に示したガラス含有成形用ペレットの製造方法で成形して、上記した実施例11〜31のガラス含有ブロー容器の製造方法と同じ方法で、樹脂100%ブロー容器を成形して3種類の比較例1〜3を得た。
上記実施例11〜31のガラス含有ブロー容器及び比較例1〜3の樹脂100%ブロー容器の物性として焼却エネルギー、熱伝導率及びロックウェル硬度の測定は次のようにして行った。そして、その測定の試験片は、比較例1が120m1、比較例2が150m1、比較例3が1000m1のガラス含有ブロー容器から幅が20mm×30mm、その厚さが1.1mmのものを切断したものを用いて上記3種類の物性を測定した。
【0099】
比較例1〜3(樹脂100%ブロー容器)及び実施例11〜31(PE、PP及びPE)のブロー容器の有する物性として、焼却エネルギー、熱伝導率及びロックウェル硬度の各測定結果を、以下の表14、表20、表30に示す。これらの各表は横欄にガラス配合率0、40、50、60及び70重量%が、縦欄に実施例11〜31のPE、PP、PETが配置されており、上記物性の測定結果が示されている。
なお、以下に示す焼却エネルギー、熱伝導率及びロックウェル硬度の実験データは、誤差を小さくするために実験データ数として4個のデータを取得して、その4個のデータを合計して4で割った平均値を示している。
【0100】
(焼却エネルギー)
次に、樹脂100%ブロー容器である比較例1〜3(表14のガラス配合率「0」の欄が相当する。)の焼却エネルギー、及び、ガラス含有ブロー容器の実施例11〜31の40、50、60及び70重量%の焼却エネルギーは表14に示す通りである。
PE100%ブロー容器の焼却エネルギーが11000Kcal/Kgであるのに対して、PEのガラス含有ブロー容器の焼却エネルギーが6730Kcal/Kgから3200Kcal/Kgに、PP100%ブロー容器の焼却エネルギーが10500Kcal/Kgであるのに対して、PPのガラス含有ブロー容器の焼却エネルギーが6540Kcal/Kgから3000Kcal/Kgに、PET100%ブロー容器の焼却エネルギーが5500Kcal/Kgであるのに対して、PETのガラス含有ブロー容器の焼却エネルギーが3300Kcal/Kgから1640Kcal/Kgに減少されており、PE、PP及びPET樹脂中に球状ガラス粉末を含有させることにより焼却エネルギーを大幅に減少できることが示されている。
【表14】
【0101】
図10のグラフは直線の近似式であり、表14に示した比較例1〜3及び実施例11〜31のガラス含有ブロー容器のガラス配合率(重量%)をx軸に、焼却エネルギーをy軸にプロットして得られた5点を基にして近似式を求めた結果、直線の近似式が得られた。図10に示す印はガラス含有ブロー容器の種類を識別するもので、◇印はPE、同様に、□印はPP、△印はPETである。
図10の直線の近似式は、樹脂100%ブロー容器の焼却エネルギーと比べて、実施例11〜31のガラス含有ブロー容器の焼却エネルギーがガラス配合率の増加に伴って漸減して改善されていることを示している。
【0102】
図10の直線の近似式で表した実施例11〜31のグラフは、樹脂100%ブロー容器の固有の焼却エネルギーが大きい、PE、PPそしてPETの順に各直線が交差することなく減少しているので、樹脂100%ブロー容器であるPEの11000、PPの10500、PETの5500の焼却エネルギーの大きさが、その直線の勾配に影響を与えているのか否かを検討するために、また、ガラス配合率40〜70重量%のガラス含有ブロー容器が、樹脂100%ブロー容器の焼却エネルギーと比べてどの程度の割合で減少しているかを理解しやすくするために、実施例11〜31のガラス含有ブロー容器の焼却エネルギーを樹脂100%ブロー容器の焼却エネルギーで割ってその値を求めた。その計算により得られた値を表15に示す。
【表15】
ここで、上記実施例11〜31のガラス含有ブロー容器の焼却エネルギーを樹脂100%ブロー容器の焼却エネルギーで割った値を、「焼却エネルギー改善指標」と定義する。
図11Aは実施例11〜31のガラス含有ブロー容器のガラス配合率と焼却エネルギー改善指標の関係を直線の近似式で示したグラフである。
【0103】
表15に示した比較例1〜3及び実施例11〜31のガラス含有ブロー容器のガラス配合率(重量%)をx軸に、焼却エネルギー改善指標をy軸にプロットして得られた5点を基にして近似式を求めた結果、直線の近似式が得られた。
この直線の近似式のグラフは、ガラス配合率の増加に伴って、前記焼却エネルギー改善指標の値が該直線の近似式に沿って漸減することを示している。
PE、PP及びPETの樹脂100%の比較例1〜3のブロー容器は、焼却エネルギー改善指標が1であるので、ガラス配合率の増加に伴って、ガラス含有ブロー容器が樹脂100%ブロー容器と比べて、どの程度の割合で焼却エネルギーが漸減するか理解できる。換言すれば、図11Aの焼却エネルギー改善指標を示すグラフは、樹脂100%ブロー容器と比べてガラス含有ブロー容器のガラス配合率が分かれば、該ガラス含有ブロー容器を焼却する際に焼却エネルギーを、樹脂100%ブロー容器と比べて、どの程度の割合で減少できるかを示すもので、焼却エネルギーを減少できる割合を容易に決定できる。逆に、製造する製品に要求される焼却エネルギーが決められている場合には、前記グラフはその決められている焼却エネルギーから、ガラス含有成形用ペレットの必要なガラス配合率を示すもので、ガラス配合率の必要量が容易に決定できる。
【0104】
次に、図11Aの直線の近似式を以下に詳細に検討する。
図11Aの直線の近似式のうち、(イ)y=−0.0101x+1.0056はPEのガラス含有ブロー容器の近似式を、(ロ)y=−0.0101x+1.0004はPETのガラス含有ブロー容器の近似式を、(ハ)y=−0.0102x+1.0075はPPのガラス含有ブロー容器の近似式を示しており、この(イ)〜(ハ)の直線の近似式は、実験データが有する誤差を考慮すれば、ガラス配合率の増加に伴って同じ勾配で漸減していると考えられるので、表15に示した各ガラス配合率の焼却エネルギー改善指標の値を合計して平均値を求め、その求めた5点の平均値から得られた式は、y=−0.0101x+1.0047であった。
この式の係数及び常数は小数点第3位を四捨五入して得た式(3)を以下に示す。
y=−0.01x+1.00 (3)
ここで、xはガラス配合率の必要量(40≦x≦70)を、yは焼却エネルギー改善指標を示している。
【0105】
図11Bは、実施例11〜31のガラス含有ブロー容器のガラス配合率と平均値の焼却エネルギー改善指標の関係を示したグラフである。
上記の式(3)は、ガラス含有ブロー容器は、PE、PP及びPETの樹脂に関係なく、また、ダイレクトブロー法、ホットパリソン法又はコールドパリソン法のブロー成形法に関係なく、ガラス配合率の増加に伴って焼却エネルギー改善指標が漸減していることを示している。
【0106】
表15の焼却エネルギー改善指標の値は、実験データが有する誤差のために、上記の式(3)のxにガラス配合率を代入して得られる焼却エネルギー改善指標と異なる値が示されているが、この実験データがガラス配合率40、50、60及び70重量%毎にどの位の誤差の範囲にあるか計算を行ってみた。ガラス配合率40重量%で誤差が±1.6%、50重量%で誤差が+1.4〜−0.6%、60重量%で誤差が+2.5%、そして、70重量%で誤差が+2.4〜−1.0%であることから、実験により得られたガラス含有ブロー容器の焼却エネルギー改善指標は、+2.5〜−1.6%の誤差の範囲にあることが判った。
従って、上記の式(3)は、ガラス配合率の増加に伴って、ガラス含有ブロー容器の焼却エネルギー改善指標が該式(3)に沿って漸減して改善されることを示している。ここで、「式(3)に沿って漸減して改善される」の用語は誤差を含めた値と定義して用いるので、以下に該用語を用いる場合には誤差を含めた値を意味していることに注意されたい。
【0107】
上記式(3)は、例えば、ガラス配合率55重量%のPEのガラス含有ブロー容器を成形すれば、焼却エネルギー改善指標が0.45の容器が得られることを意味している。即ち、PE100%のブロー容器に対して、焼却エネルギーを55%も大幅に削減できることが分かる。このことは、成形されたガラス含有ブロー容器の表面にガラス配合率55重量%と表記すれば、消費者は、PE100%のブロー容器に対して、焼却エネルギーのみならず、二酸化炭素及び石油を55%も大幅に削減することができ、二酸化炭素等の地球温暖化問題、有限な石油資源の枯渇問題の対策が図られる地球環境に優しい製品であることが理解でき、また、製造メーカ等は社会的ニーズにマッチした製品として宣伝できるので、今日、急速に高まりつつある地球環境の問題に対する社会的ニーズにマッチした製品である。
このように、ガラス配合率と焼却エネルギー改善指標の関係を示す上記式(3)は、樹脂100%ブロー容器と比べて、ガラス配合率によりガラス含有ブロー容器の焼却エネルギーをどの程度の割合まで減少できて改善できるかを示すもので、また、事前に焼却エネルギーが決められている場合には、ガラス配合率の必要量を決定できるものである。
【0108】
(熱伝導率)
次に、樹脂100%ブロー容器である比較例1〜3(表26のガラス配合率「0」の欄が相当する。)の熱伝導率、及び、実施例1〜3の40、50、60及び70重量%の熱伝導率は表16に示す通りである。
【表16】
【0109】
図12のグラフは直線の近似式であり、表28に示した比較例1〜3及び実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のガラス配合率(重量%)をx軸に、熱伝導率をy軸にプロットして得られた5点を基にして近似式を求めた結果、直線の近似式が得られた。
図12に示す各印は図8の説明の際に記載した内容と同じである。
図12は実施例1〜3のガラス含有ブロー容器の熱伝導率が樹脂100%ブロー容器の有する熱伝導率と比べて、ガラス配合率の増加に伴って直線に沿って熱伝導率が増加していることを示している。
このことは、液体用容器の製品として前記ガラス含有ブロー容器を製造すれば、従来の液体用容器より外気の温度を早く液体に伝達できる製品が製造できることを意味している。例えば、冷蔵庫用の製氷器、製氷装置に水を供給する給水容器や、加温庫用の容器が挙げられる。
【0110】
図12の直線の近似式で表した実施例1〜3のグラフは、樹脂100%ブロー容器の固有の熱伝導率が大きい、PET、PE、PPの順に各直線が交差することなく増加しているので、この実施例1〜3の直線のグラフは、該固有の熱伝導率の値、PEの0.224、PETの0.217、PPの0.204の値の大きさがその直線の勾配に影響を与えているのかを検討するために、また、成形されたガラス配合率40〜70重量%のガラス含有ブロー容器が、樹脂100%ブロー容器と比べて前記固有の熱伝導率がどの程度の割合で増加しているかを理解しやすくするために、実施例1〜3のガラス含有ブロー容器の熱伝導率を樹脂100%ブロー容器の固有の熱伝導率で割ってその値を求めた。その計算により得られた値を表29に示す。
【表29】
【0111】
ここで、上記実施例1〜3のガラス含有ブロー容器の熱伝導率を樹脂100%ブロー容器の固有の熱伝導率で割った値を、「熱伝導率改善指標」と定義する。
例えば、PEを例にその計算の仕方を説明すれば、前記樹脂100%ブロー容器が有する固有の熱伝導率が0.224であるから、ガラス配合率40重量%の計算は0.321/0.224=1.433であり、以下同様に、50重量%の計算は0.350/0.224=1.563であり、60重量%の計算は0.370/0.224=1.652であり、70重量%の計算は0.400/0.224=1.786である。
【0112】
PE樹脂100%ブロー容器の熱伝導率と比べて、PEガラス配合率40重量%のブロー容器のそれは1.43倍に、そして、ガラス配合率50重量%のそれは1.56倍に、ガラス配合率60重量%のそれは1.65倍に、ガラス配合率70重量%のそれは1.79倍に増加することを示している(小数点第3位以下を四捨五入)。以下PP及びPETも樹脂100%ブロー容器の熱伝導率と比べて、ガラス配合率の増加に伴って増加することは同様である。
【0113】
図13はガラス配合率と前記熱伝導率改善指標の関係を示したグラフである。
表29に示した比較例1〜3及び実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のガラス配合率(重量%)をx軸に、熱伝導率改善指標をy軸にプロットして得られた5点を基にして近似式を求めた結果、直線の近似式が得られた。
この直線の近似式のグラフは、前記熱伝導率改善指標がガラス配合率の増加に伴って該直線の近似式に沿って増加することを示している。
【0114】
次に、上記熱伝導率改善指標の必要な値の決定の仕方、そして、ガラス配合率の必要量の決定の仕方について説明する。
熱伝導率改善指標の必要な値及びガラス配合率の必要量は、下記の式(ニ)〜(へ)で記述される直線に沿って増加することを示している。
xはガラス配合率の必要量(40≦x≦70)を、yは熱伝導率改善指標を示している。
y=0.0145x+1.0101 (ニ)
y=0.0115x+0.9931 (ホ)
y=0.0111x+0.9996 (へ)
【0115】
PETの直線の近似式(ニ)はy=0.0145x+1.0101であり、PPの直線の近似式(ホ)はy=0.0115x+0.9931あり、PEの直線の近似式(へ)はy=0.0111x+0.9996である。
【0116】
この熱伝導率改善指標の最大値及び最小値は、製造する製品に要求される表面硬度が、樹脂100%ブロー容器の熱伝導率に対して、その熱伝導率を改善できる最小値と最大値を示すことで、熱伝導率の改善ができる範囲を示す指標としての機能を有している。熱伝導率改善指標は1.43〜1.94であるので、例えば、樹脂100%ブロー容器に対して熱伝導率を最小で1.43倍、最大で1.94倍まで改善できることが容易に理解でき、その改善指標を用いることで熱伝導率改善指標の必要な値及びガラス配合率の必要量が容易に決定できる。
【0117】
ところで、上記したように、ロックウェル硬度改善指標の直線の近似式である式(イ)〜(ハ)は、全ての実験データから得られた計算値を含まないので、該式(イ)〜(ハ)が全ての計算値を含むための範囲を求めて新たな式を求めたが、それと同様な手順で計算して、全ての実験データから得られた計算値を含む新たな熱伝導率改善指標の式を求めた。例えば、図14のPEのグラフ(式(ニ))を例に取れば、ガラス配合率50重量%の実験データから得られた計算値は式(ニ)から上に一番離れており、ガラス配合率40重量%のその計算値は式(ニ)から下に一番離れているので、樹脂100%ブロー容器の改善指標の1とガラス配合率50重量%の改善指標の1.563を通る直線式を求めると、y=0.011x+1で、樹脂100%ブロー容器の改善指標の1とガラス配合率40重量%の改善指標の1.433を通る直線式を求めると、y=0.011x+1であった。なお、計算して得た式の勾配の値は小数点以下4位を四捨五入して求めた。
【0118】
従って、下記の式(6)で記述される範囲には、PEの改善指標の全ての計算値が含まれることが分かる。同様にしてPETの改善指標の式(4−1)及び(4−2)、PPの改善指標の式(5−1)及び(5−2)が求められた。
その求めたPETの改善指標の式は(4−1)及び(4−2)に、PPの改善指標の式は(5−1)及び(5−2)に、PEの改善指標の式は(6)に示す通りである。
y=0.015x+1 (4−1)
y=0.014x+1 (4−2)
y=0.012x+1 (5−1)
y=0.011x+1 (5−2)
y=0.011x+1 (6)
上記式で記述される範囲には、PET、PP及びPEの改善指標の全ての計算値が含まれている。
【0119】
ガラス配合率と熱伝導率改善指標の関係を示す上記式(4−1)〜(6)は、樹脂100%ブロー容器と比べて、ガラス配合率によりガラス含有ブロー容器の熱伝導率をどの程度の割合まで増加できて改善できるかを示すもので、また、事前に熱伝導率が決められている場合には、ガラス配合率の必要量を決定できるものである。
【0120】
例えば、PE45重量%のブロー容器成形を製造する場合には、上記式(6)のxに45を代入してyを計算して求めれば、1.50が得られる。従って、PEのガラス配合率45重量%のガラス含有成形用ペレットを用いて製品を製造すれば、樹脂100%ブロー容器の1.50倍の熱伝導率の製品が得られることが製造する前に決定できる。次に、PE100%の製品に対して1.6倍の熱伝導率が要求される場合には、上記式(6)のyに1.6を代入してxを計算して求めれば、54.5が得られる。従って、PEのガラス配合率54.5重量%のガラス含有成形用ペレットを用いて製品を製造すれば、樹脂100%ブロー容器の1.6倍の熱伝導率の製品が得られることが製造する前に決定できる。
【0121】
従って、PE、PET及びPPのガラス配合率40〜70重量%のガラス含有ブロー容器の熱伝導率は、樹脂100%ブロー容器のそれの約1.44〜1.77倍の値を示すことから、ブロー容器を液体用の容器に用いれば、その液体用容器が従来の樹脂100%ブロー容器の液体用容器より外気の温度を1.4〜2倍の速さで液体に伝達させる特性を備えているので、例えば、冷蔵庫用の製氷器、製氷装置に水を供給する給水容器や、加温庫用の容器等の製品を製造することで、容器中の液体を急速に冷却又は加温することが可能となった。
【0122】
(ロックウェル硬度)
つぎに、樹脂100%ブロー容器である比較例1〜3(表26のガラス配合率「0」の欄が相当する。)のロックウェル硬度、及び、実施例1〜3のガラス配合率40、50、60及び70重量%のブロー容器の有するロックウェル硬度の測定結果を以下の表26に示す。比較例1〜3である樹脂100%ブロー容器のロックウェル硬度は、樹脂100%ブロー容器であるので表26の「0」の欄にその値が示されている。
【表17】
【0123】
表17に示した比較例1〜3及び実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のガラス配合率(重量%)をx軸に、ロックウェル硬度をy軸にプロットして得られた5点を基にして近似式を求めた結果、直線の近似式が得られた。
図14のグラフは上記直線の近似式である。そして、図14に示す印はガラス含有ブロー容器の種類を識別するもので、◇印はPE、同様に、△印はPET、□印はPPである。
【0124】
図14は実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のロックウェル硬度が樹脂100%ブロー容器の有するロックウェル硬度と比べて、ガラス配合率の増加に伴って直線に沿ってロックウェル硬度が増加していることを示している。このことは、容器等の製品として前記ガラス含有成形用ペレットを用いて成形すれば、ガラス配合率の増加に比例して表面が傷付きにくい製品が製造できることを意味している。例えば、表面が傷付きにくい製品を必要としているものとして、食品容器、化粧品容器等が挙げられる。
【0125】
図14の直線の近似式で表した実施例1〜3のグラフは、樹脂100%ブロー容器の固有のロックウェル硬度が大きい、PP、PET、PEの順に各直線が交差することなく増加しているので、この実施例1〜3の直線のグラフは、該固有のロックウェル硬度の値、PPの80、PETの68、PEの40の値の大きさがその直線の勾配に影響を与えているのかを検討するために、また、成形されたガラス配合率40〜70重量%のガラス含有ブロー容器が、樹脂100%ブロー容器と比べて前記固有のロックウェル硬度がどの程度の割合で増加しているかを理解しやすくするために、実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のロックウェル硬度を樹脂100%ブロー容器の固有のロックウェル硬度で割ってその値を求めた。その計算により得られた値を表18に示す。
【表18】
【0126】
ここで、上記実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のロックウェル硬度を樹脂100%ブロー容器の固有のロックウェル硬度で割った値を、「ロックウェル硬度改善指標」と定義する。
例えば、PEを例にその計算の仕方を説明すれば、前記樹脂100%ブロー容器が有する固有のロックウェル硬度が40であるから、ガラス配合率40重量%の計算は82/40=2.05であり、以下同様に、50重量%の計算は91/40=2.28であり、60重量%の計算は100/40=2.50であり、70重量%の計算は111/40=2.78である。
【0127】
PE樹脂100%ブロー容器のロックウェル硬度と比べて、PEガラス配合率40重量%のブロー容器のそれは2.05倍に、そして、ガラス配合率50重量%のそれは2.28倍に、ガラス配合率60重量%のそれは2.50倍に、ガラス配合率70重量%のそれは2.78倍に増加することを示している。以下同様に、PP樹脂100%ブロー容器のロックウェル硬度と比べて、PPガラス配合率40重量%のブロー容器のそれは1.73倍に、そして、ガラス配合率50重量%のそれは1.90倍に、ガラス配合率60重量%のそれは2.13倍に、ガラス配合率70重量%のそれは2.25倍に増加すること、PET樹脂100%ブロー容器のロックウェル硬度と比べて、PETガラス配合率40重量%のブロー容器のそれは1.84倍に、そして、ガラス配合率50重量%のそれは2.01倍に、ガラス配合率60重量%のそれは2.32倍に、ガラス配合率70重量%のそれは2.54倍に増加することを示している。
【0128】
図15はガラス配合率とロックウェル硬度改善指標の関係を示したグラフである。
表18に示した比較例1〜3及び実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のガラス配合率(重量%)をx軸に、ロックウェル硬度改善指標をy軸にプロットして得られた5点を基にして近似式を求めた結果、直線の近似式が得られた。
この直線の近似式のグラフは、前記ロックウェル硬度改善指標がガラス配合率の増加に伴って該直線の近似式に沿って増加すること、そして、その直線の近似式の勾配は、PPの直線の近似式が最も大きく、PETのそれが次に大きく、PEのそれが最も小さいことを示している。このことは、図15のグラフでは、実施例1〜3を対比すればPPのガラス含有ブロー容器成形のロックウェル硬度が最も大きく、PEのそれが最も小さいが、図15のグラフでは、上記したようにPEの勾配が最も大きく、PPのそれが最も小さく、図14のグラフの結果と逆になっていることが判る。
【0129】
比較例1〜3のガラス配合率0重量%(PE、PP及びPET100%)のブロー容器は、ロックウェル硬度改善指標が1であるので、ガラス配合率の増加に伴って、ガラス含有ブロー容器が樹脂100%ブロー容器と比べて、どの程度の割合でロックウェル硬度が増加しているか理解できる。換言すれば、図15のロックウェル硬度改善指標を示すグラフは、樹脂100%ブロー容器と比べてガラス配合率をどの程度まで増加させれば、製造する製品に要求される表面硬度が得られるかを示すもので、ロックウェル硬度改善指標の必要な値が容易に決定できる。逆に、製造する製品に要求される表面硬度が決められている場合には、前記グラフはその決められている表面硬度から、ガラス含有成形用ペレットの必要なガラス配合率を示すもので、ガラス配合率の必要量が容易に決定できる。
【0130】
次に、上記ロックウェル硬度改善指標の必要な値の決定の仕方、そして、ガラス配合率の必要量の決定の仕方について説明する。
PEの直線の近似式はy=0.0253x+1.0105であり、PETの直線の近似式はy=0.0219x+0.9797であり、PPの直線の近似式はy=0.0182x+1.0025である。PEの直線の近似式の勾配は0.0253で、PPのそれは0.0182であり、その両者の勾配の値を足して2で割った値は、0.0218である。この値はPETの直線の近似式の勾配の値、0.0219と近似しているから、PETの直線の近似式は両者の中間の位置にあることが分かる。
ロックウェル硬度改善指標の必要な値及びガラス配合率の必要量は、下記の式(ト)〜(リ)で記述される直線に沿って増加することを示している。
xはガラス配合率の必要量(40≦x≦70)を、yはロックウェル硬度改善指標を示している。
y=0.0253x+1.0105 (ト)
y=0.0219x+0.9797 (チ)
y=0.0182x+1.0025 (リ)
【0131】
上記の式(ト)〜(リ)は表18及び図15のグラフから分かるように、ガラス含有ブロー容器のロックウェル硬度改善指標は、ガラス配合率40重量%の時に最小値が1.73であり、ガラス配合率70重量%の時に最大値が2.78である。このロックウェル硬度改善指標の最大値及び最小値は、製造する製品に要求される表面硬度が、樹脂100%ブロー容器と比べて最小で1.73倍、最大で2.78倍の範囲で選択できることを示すもので、樹脂100%ブロー容器の表面硬度に対して、その表面硬度を改善できる最小値と最大値を示すことで、表面硬度の改善ができる範囲を示す指標としての機能を有している。それ故に、この物性の改善できる範囲を示す指標を「改善指標」と定義する。従って、ロックウェル硬度改善指標はロックウェル硬度改善指標の最大値から最小値である1.73〜2.78の範囲にあるので、例えば、樹脂100%ブロー容器に対してロックウェル硬度を最小で1.73倍、最大で2.78倍まで改善できることが容易に理解でき、その改善指標を用いることでロックウェル硬度改善指標の必要な値及びガラス配合率の必要量が容易に決定できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂中に40重量%以上のガラス粉末が配合されてなるガラス含有成形用ペレットを用いて、従来のブロー成形法で成形されてなる、優れた特性を有するガラス含有ブロー容器に関する。詳しくは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群から選ばれる一種の樹脂中に、前記ガラス粉末である中実の球状ガラス粉末をガラス配合率40〜70重量%の範囲で含有するガラス含有成形用ペレットをブロー成形してなる、焼却時の焼却エネルギーを大幅に低減できるガラス含有ブロー容器に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製容器の生産量の約70%がブロー容器で、該ブロー容器の素材である熱可塑性樹脂は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)ボトルに見られるように、今後とも増加し続ける傾向にあり、他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂が多量に使用されている。これらの樹脂はブロー容器の素材として多量に使用され、汎用性のある樹脂として知られており、他の樹脂としては、ポリスチレンを含むポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートを含むポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が例示できる。
【0003】
ところで、今日の世界的規模の問題である二酸化炭素等の地球温暖化問題、有限な石油資源の枯渇問題が上記したプラスチックの生産量と密接に関係していることはよく知られたことであるが、その地球温暖化及び石油資源の枯渇の問題とプラスチックの生産量の関係を以下に述べる。
プラスチックは石油から合成された高分子化合物で、金型等による成形が簡単なため、大量生産される各種日用品や医療分野、工業分野の製品等の原材料として用いられている。使用する目的・用途に合わせた性能を有する樹脂を合成することが可能なことから、日本におけるプラスチックの生産量は、ここ数年間約1400万トンの量で推移している。
【0004】
平成16年の日本のプラスチック生産量は約1408万トンに達しており、プラスチック別の生産量ではポリエチレン樹脂(以下、「PE」と記載する。)が最も多く、次に、ポリプロピレン樹脂(以下、「PP」と記載する。)、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PET」と記載する。)、ABS樹脂の順で続き、プラスチックの中で熱可塑性樹脂の生産量が上位を占めており、プラスチックの生産量の約90%が熱可塑性樹脂である。
【0005】
本発明者は、今日、全世界が共通の課題として緊急に解決を迫られている、二酸化炭素等の地球温暖化問題、有限な石油資源の枯渇問題を、解決せねばならないとの思いで日々熟慮を重ね続けた結果、一つの解決策を思い至ったものである。
その一つの解決策とは、石油から合成される熱可塑性樹脂にガラス粉末を大量に配合、例えば、70%のガラス粉末を配合させて押出機で混練し押出して成形用ペレットの製造ができたならば、熱可塑性樹脂、即ち、石油の使用量を70%削減でき、その成形体の焼却で排出される二酸化炭素の排出量を70%削減でき、更に、焼却エネルギーが減少できると共に成形体の焼却で残渣となったガラス粉末を樹脂に含有させて、リサイクルすることができるというものである。
【0006】
そこで、本発明者は、本願出願前に、熱可塑性樹脂に40重量%以上のガラス粉末を配合、例えば、70重量%のガラス粉末を配合させて押出機で混練して押出し、ペレット(ガラス含有成形用ペレット)が成形できるよう鋭意研究に努めた結果、熱可塑性樹脂に中実の球状ガラス粉末が40〜70重量%含有するガラス含有成形用ペレットの完成に至り、PCT/JP2008/68093(特願2009−504515号)(発明の名称「ガラス含有成形用ペレット及びその製造方法」、優先権主張日:H19.10.4、(以下、「先願発明」という。))を特許出願した。
【0007】
従来から用いられているペレットにガラス粉末を混ぜて成形用組成物を得る製造方法では、最初に混合機でペレットとガラス粉末を計量して均一に混ぜた後にホッパーに投入する。前記ガラス粉末は、投入する前にガラス繊維を粉砕して粉末状にしてシラン化合物を含有した液に浸漬することで、その表面がシラン化合物で被覆、即ち、シラン化処理がなされたものを用いる場合が多い。前記シラン化合物は有機物とケイ素から構成される化合物で、通常では非常に結びつきにくい有機材料と無機材料を結ぶ仲介役としての働きをするものであるから、従来から樹脂に配合するガラス粉末は、シラン化処理されたものを用いている。
【0008】
このシラン化処理されたガラス粉末をホッパーに投入するが、ホッパーの入り口付近では、ガラス粉末の摩擦抵抗が大きいために、スクリューの剪断力によりガラス粉末が砂を噛むような状態で両材料をダイ側の方向に送り出し、そして、ヒーター・ブロワーの領域に入ると、シリンダーの外筒に設けられたヒーターの加熱により、シリンダーの内筒付近では溶融化されたペレット中にガラス粉末が混合された液相状態で、そして、スクリューの外筒付近では、溶融されていないペレットが固相状態で存在する。しかし、このスクリュー外筒の固相状態のペレットとシリンダー内筒の液相状態のペレットは、高速回転のスクリューにより混練撹拌されて、固相状態のペレットと液相状態のペレットが混合された半溶融状態となる。このように、前記ヒーター・ブロワーの領域の入口付近では、ペレットが半溶融状態のために流動性が低下して、スクリューの剪断力に対向する摩擦抵抗力が急激に増加する。
【0009】
そして、ペレットに大量のガラス粉末を加えて混練したとすると、上記したペレットが半溶融状態で大量のガラス粉末が存在するために流動性が急激に低下することとなり、前記スクリューに対する摩擦抵抗力がスクリューの剪断力以上に大きくなり、スクリューねじ山等の破損を起こして、混練して圧縮するスクリューの制御が停止等を起こすことは、当業者によく知られたことである。そして、前記押出機は1台当たり2〜3千万する高額な機械であるために、押出機の破損及び停止等による、部品交換費、修繕費及び点検費の高額な損失を恐れて、製造業者はガラス粉末の配合率を最大でも35重量%までしか配合しないのが実情である。
このように、プラスチック成形技術の分野では、熱可塑性樹脂の物性の向上を目的として、押出機で熱可塑性樹脂に大量のガラス粉末を配合して混練すると流動性が急激に低下するために、40重量%以上のガラス粉末を含有する熱可塑性樹脂組成物を製造することは不可能なことと認識されている。
【0010】
そこで、本発明者は、押出機で熱可塑性樹脂中に大量のガラス粉末を配合して混練すると流動性が急激に低下する原因を解明すべく、熟慮を重ねて検討した結果、以下に述べる4つの原因が相互に関連することで流動性の急激な低下が起きていると推測するに至った。
流動性の急激な低下は、固相と液相が混合した半溶融状態が発生すること、上述したガラス粉末にシラン化処理を施す方法として、シラン化合物が0.1重量%程度含まれる水溶液にガラス粉末を30分の間撹拌しながら、浸漬した後に濾過して100℃で乾燥する浸漬法が一般的に行われており、その処理により複数のガラス粉末同士が接触した状態でシラン化合物が被覆されるので、ガラス粉末が凝集した状態でフィルター処理されて乾燥されるので、シラン化処理されたガラス粉末の中には凝集した状態のガラス粉末(以下、「凝集ガラス粉末」という。)が存在すること、そして、従来から用いられている熱可塑性樹脂中に配合するガラス粉末は、ガラス繊維を細かく粉砕する等により得ているために、その形状が多角形、長方形等の様々な形状から構成されており、そして、その平均粒径が10〜100μmの広い分布幅にあること、この様々な形状と分布幅の広いこと、更に、ガラスと熱可塑性樹脂の比熱の差が大きいこと、例えば、ガラスの比熱は0.670J/(kg・K)であるのに対して、PETのそれは1.5J/(kg・K)であり、ある一定温度に上げるのにガラスよりPETの方が2.2倍の熱量を必要とすること、この比熱の差が大きいこと、この四つの原因が相互に複雑に作用することで、熱可塑性樹脂中に40重量%以上のガラス粉末を配合して混練すると流動性が急激に低下して、ガラス粉末を含有した成形用組成物が製造できない原因となっていると考え、本発明者はこれらの原因を取り除くことで先願発明を完成するに至った。
【0011】
上述した流動性が急激に低下する原因が解明されていなかったために、従来から樹脂ペレットに35重量%程度のガラス粉末を配合した樹脂組成物を製造できるが、該樹脂ペレットに40重量%以上の大量のガラス粉末を混ぜて、押出機で混練して押出してガラス含有の樹脂ペレットを製造することは、樹脂とガラス粉末の配合物の流動性が低下するために不可能なこととして、40重量%以上の大量のガラス粉末を含有した樹脂ペレットの製品化に成功したとする報告はなされていない。
【0012】
例えば、「本発明では、ポリカーボネート樹脂組成物の上記ガラスフィラーの含有量は、10質量%以上40質量%未満であることを特徴とし、15〜35質量%であることが好ましい。10質量%未満では成形品の機械物性が不充分であり、また、40質量%を超えると、樹脂とガラスフィラーとの接触面積が増大して成形品の透明性が低下し、また、成形性が低下するので好ましくない。」こと(特許文献1の段落[0056]参照)、「本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、上記リン酸塩系ガラスを0.1〜50質量部含む。0.1質量部未満であると難燃性付与の効果が得られず、50質量部超であると該樹脂組成物の成形流動性が劣る場合があるためであります。好ましいリン酸塩系ガラスの量は、0.5〜30質量部である。」(リン酸塩系ガラス50質量部は33.3重量%に相当)こと(特許文献2の段落[0026]参照)、そして、「本発明におけるAg2Oを含有する溶解性リン塩系ガラス粉末の配合量は、0.1〜40重量%である。配合量が0.1重量%未満であると、抗菌性能が発現せず、40重量%を越えると、樹脂自体の粘度が高くなり配合樹脂への均一な分散が得られ難くなる。Ag2Oを含有する溶解性リン塩系ガラス粉末の配合量は、好ましくは0.3〜35重量%であり、より好ましくは0.5〜30重量%である。」こと(特許文献3の段落[0016]参照)が知られている。
【0013】
ところで、ブロー容器の燃焼時の焼却エネルギーを改善する技術として、ポリオレフィン系樹脂に炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等を含有させることで焼却エネルギーを減少させることが従来から行われている。
例えば、プラスチック成形体の燃焼廃棄に際しては、樹脂の燃焼カロリーが高いため、燃焼炉の損傷等の問題が生じ、この種の樹脂製成形体の廃棄が社会問題になっているが、無機物(特に炭酸カルシウム)を添加したポリオレフィンは、添加量の増加にともない燃焼カロリーを低下させることができるが、耐環境応力クラッキングや衝撃強度がポリオレフィン単体容器と比較して劣るものとなってしまうために、燃焼時の燃焼カロリーが低く、優れた機械的性質を有するプラスチック成形体を得るために、分散剤としてカルボン酸基を有する変性ポリオレフィンのエチレン−アクリル酸共重合体を含有させた樹脂組成物を成形してなるブローボトルが知られている(特許文献4参照)。
【0014】
具体的には、高密度ポリエチレン100重量部に、重質炭酸カルシウム30重量部、分散剤としてカルボン酸基を有する変性ポリオレフィンのエチレン−アクリル酸共重合体1又は13重量部を含有させた樹脂組成物を成形してなるブローボトル(実施例5〜7)が開示されている。上記重質炭酸カルシウムの配合率は23又は21重量%に相当する。
なお、特許文献4の請求項1には、ポリオレフィン100重量部に、無機物として重質炭酸カルシウム等の炭酸塩3〜80重量部を含有させた樹脂組成物を成形してなるプラスチック成形体(ブローボトル)の発明が記載されているが、上記実施例5〜7には高密度ポリエチレン100重量部に、重質炭酸カルシウム30重量部を含有させた樹脂組成物を成形してなるプラスチック成形体が示されているだけで、該請求項1に記載の発明は明細書が示す実施例5〜7より広く、該発明を裏付ける実証が示されていない。
【0015】
また、紙を主体とする外装部材と、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、又はポリオレフィン樹脂を主体とする内側容器から成る一体化された複合容器を製造することにより、使用後の廃棄時には外装部材と内側容器を簡単に分離でき、分別廃棄、易焼却が可能な易廃棄性複合容器が知られている(特許文献5参照)。
一方、生分解性プラスチックであるポリ乳酸系樹脂組成物を成形してなるブロー成形体を用いることで、使用後に自然環境下で分解させることで燃焼の必要がないブロー成形体の開発が活発に行われている(特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006−022236号公報
【特許文献2】特開2004−256787号公報
【特許文献3】特開2001−139832号公報
【特許文献4】特開平08−231778号公報
【特許文献5】特開平10−035729号公報
【特許文献6】特開2003−213113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述したように、樹脂ペレットに40重量%以上のガラス粉末を含有させた樹脂ペレットを製造することは、樹脂とガラス粉末の配合物の流動性の低下により製造できないので、当然のことながら、従来のブロー成形法で40重量%以上ガラス粉末を含有したブロー容器を、成形時にトラブルなく製品化ができたとする事例は報告されていない。それ故に、先願発明の40重量%以上のガラス粉末含有ペレットを用いて、従来のブロー成形法で成形時にトラブルを生じることなく製品化が可能なのか否か、また、上記ガラス粉末を含有したブロー容器が焼却エネルギーを大幅に低減できるか否かは不明であり、また、そのガラス粉末含有のブロー容器が特有の物性を有するか否かは不明である。
【0018】
特許文献4には、プラスチック成形体の燃焼廃棄に際しては、樹脂の燃焼カロリーが高いため、燃焼炉の損傷等の問題が生じ、この種の樹脂製成形体の廃棄が社会問題になっているが、無機物(特に炭酸カルシウム)を添加したポリオレフィンは、添加量の増加にともない燃焼カロリーを低下させることができるものとして、無機物配合率23又は21重量%の樹脂組成物を成形させたブローボトルが記載されているが、上記無機物配合率23又は21重量%のブローボトルを焼却した場合に燃焼カロリーが何カロリー減少できるのか、即ち、無機物配合率と燃焼カロリーの関係を示す記載がないので、該無機物配合率が燃焼カロリーをどの程度減少できるか不明である。従って、ガラス粉末を含有したブロー容器を焼却した場合、ガラス配合率の増加に伴って焼却エネルギーが減少するものと推測されるが、40重量%以上のガラス粉末を含有させたブロー容器が、ガラス配合率の増加に伴って焼却エネルギーを減少できる具体的な割合は知られていない。
【0019】
特許文献5の易廃棄性複合容器は、紙の外装部材と樹脂の内側容器を別体に作成して一体化することから、樹脂容器と比べて非常に多数の作業工程数が必要となり、また、破棄時に外装部材と内側容器を分離する作業が必要となることから、製造から廃棄までの行程を通してコスト的に高価なものとなる。特許文献6のポリ乳酸系樹脂組成物を成形してなるブロー成形体は、素材であるポリ乳酸系樹脂がPE、PP及びPETと比べて非常に高価なものであるために、安価で汎用性のある樹脂を用いるブロー容器に代替できない難点がある。
【0020】
それ故に、本発明は、汎用性のある樹脂中に40重量%以上のガラス粉末を含有させたガラス含有成形用ペレットを用いて、従来のブロー成形法で成形する際にトラブルなく製品化でき、該製品が廃棄されて焼却時に生じる焼却エネルギーを大幅に低減でき、また、該焼却エネルギーとガラス配合率の関係を示す関係式により焼却エネルギーを減少できる割合が予測でき、特有の物性を有し、更に、コスト的に安価に製造できるガラス含有ブロー容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
そこで、本発明者は、先願発明の前記ガラス含有成形用ペレットを用いて製造したガラス含有ブロー容器を鋭意研究することで、大量のガラス粉末を含有するガラス含有ブロー容器を製品化すること、焼却エネルギーを大幅に減少できる優れた物性を有すること、そして、ガラス製容器と同様のフロスト感を備える優れた特性を有すること、コスト的に安価に製造できること、これらのことを見出して、本発明のガラス含有ブロー容器を完成したものである。
即ち、上記課題を解決するために、本願の請求項1に記載のガラス含有ブロー容器は、熱可塑性樹脂中にガラス粉末を含むガラス含有成形用ペレットを用いてブロー成形法で成形されてなるガラス含有ブロー容器であって、前記ガラス含有成形用ペレットが前記熱可塑性樹脂であるポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群から選ばれる一種の樹脂中に、前記ガラス粉末である中実の球状ガラス粉末をガラス配合率40〜70重量%の範囲で含有しており、該ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有ブロー容器の焼却エネルギー改善指標が以下の式(1)に沿って漸減して改善されることを特徴とする。
y=−0.01x+1 (1)
(x:ガラス配合率、y:焼却エネルギー改善指標)
同様に、本願の請求項2に記載のガラス含有ブロー容器は、前記ガラス配合率の増加に伴って、焼却エネルギー改善指標が0.60から0.36に漸減して改善されることを特徴とする。
本願の請求項3に記載のガラス含有ブロー容器は、熱可塑性樹脂中にガラス粉末を含むガラス含有成形用ペレットを用いてブロー成形法で成形されてなるガラス含有ブロー容器であって、前記熱可塑性樹脂のペレットがポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群から選ばれる一種からなるペレットであり、前記ガラス粉末が球状の形状で中実であり、該熱可塑性樹脂中にガラス配合率40〜70重量%の範囲で配合されており、該ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有成形用ペレットのメルトフローレート低下割合が以下の式(2)及び(3)に沿って漸減することを特徴とする。
y=−1.34x2−0.08x+1.00 (2)
y=−1.31x2−0.22x+1.00 (3)
(x:ガラス配合率、y:メルトフローレート低下割合)
本願の請求項4に記載のガラス含有ブロー容器は、前記ガラス配合率の増加に伴って、前記メルトフローレート低下割合が0.75から0.20まで漸減することを特徴とする。
本願の請求項5に記載のガラス含有ブロー容器は、前記ガラス含有ブロー容器がボトル、チューブ、カップ及び/又はトレーの形状を有することを特徴とする。
本願の請求項6に記載のガラス含有ブロー容器は、前記ガラス含有ブロー容器の熱伝導率が以下の式(4)及び(5)で記述される範囲で漸増して改善されることを特徴とする。
y=0.011x+1 (4)
y=0.012x+1 (5)
(x:ガラス配合率 y:熱伝導率改善指標)
本願の請求項7に記載のガラス含有ブロー容器は、前記ガラス含有ブロー容器のロックウェル硬度の、ポリエチレン樹脂に対する改善指標が以下の式(6−1)及び(6−2)で、前記ポリプロピレン樹脂に対する改善指標が以下の式(7−1)及び(7−2)で記述される範囲で漸増して改善されることを特徴とする。
y=0.026x+1 (6−1)
y=0.025x+1 (6−2)
y=0.019x+1 (7−1)
y=0.018x+1 (7−2)
(x:ガラス配合率 y:ロックウェル硬度改善指標)
本願の請求項8に記載のガラス含有ブロー容器は、前記ガラス含有ブロー容器がボトル、チューブ、カップ及び/又はトレーの形状を有することを特徴とする。
本願の請求項9に記載のガラス含有ブロー容器は、前記ボトルが飲料容器、化粧品容器、シャンプー容器、リンス容器、ボディーソープ容器であり、前記チューブが化粧品容器、医薬品容器であり、前記カップが食品容器であり、前記トレーが弁当容器、生鮮食品容器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のガラス含有ブロー容器は、ガラス含有成形用ペレットがガラス配合率40〜70重量%の範囲で含有したペレットを使用しても、ブロー容器を成形する際にトラブルを生じることなく製品化が可能となり、また、従来のブロー成形法で成形ができるので、従来の設備で事業化が容易となり安価に製品が製造できる。また、樹脂100%のブロー容器と比べて、焼却エネルギー改善指標が0.60から0.30に減少して改善されることで、焼却エネルギーを最小で40%、最大で70%の大幅な削減ができる。それ故に、焼却エネルギーの大幅な削減、二酸化炭素の排出量及び石油の使用量、これら3者を同時に最大で70%削減することができるので、地球環境に優しい製品であり、地球環境の問題に対する消費者、製造メーカ等の社会的ニーズにマッチした製品である。更に、ガラス配合率を40〜70重量%の範囲で任意に選択することで、樹脂100%ブロー容器の焼却エネルギーの40〜70%の範囲で社会的ニーズに合わせて削減することが可能である。
【0023】
また、本発明のガラス含有ブロー容器は、廃棄されて焼却時に生じる焼却エネルギーとガラス配合率の関係が示されているので、ガラス配合率を決めることで、前記熱可塑性樹脂100%のブロー容器の焼却エネルギーに対して、どのぐらいの割合で改善できるか、また、逆に引張弾性率を決めることで、どの位のガラス配合率が必要であるかを正確に予測することが可能である。
【0024】
更に、本発明のガラス含有ブロー容器は、成形品の焼却後に残った最大で70%のガラス粉末を樹脂に含有させて、再度、ガラス含有成形用ペレットを成形することで、70%のガラス粉末を何度でもリサイクルすることができ、循環型社会を形成する技術としての貢献度も大きい。
そして、ガラス粉末の原料は日本に豊富にある資源であり、その材料費は汎用性樹脂と比べて低廉であるので、汎用性樹脂とガラス粉末の原料で製造されるガラス含有成形用ペレットのトータルの原料費を安くすることができ、また、今日の高騰を続ける石油の代替可能な原料としてガラス粉末は有望である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のガラス含有成形用ペレットを成形し、その組成物を製造する製造方法に用いられる一例の押出機の縦断面図である。
【図2】球状Eガラス粉末の平均粒径の分布を示す分布図である。
【図3】球状Eガラス粉末の1000倍の電子顕微鏡写真である。
【図4A】PPに球状Eガラス粉末50重量%を配合して得られた、ペレットを側面から垂直に切断した切断部を50倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図4B】前記切断部を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
【図4C】前記ペレットの側面を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
【図5】PEのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。
【図6】PPのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。
【図7】PETのガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。
【図8】実施例11〜13のガラス含有成形用ペレットにおけるMFR低下割合とガラス配合率の関係を示したグラフである。
【図9A】実施例11〜31のガラス含有成形用ペレットにおけるガラス配合率と最大値及び最小値のMFR低下割合の関係を示したグラフである。
【図9B】ガラス配合率とMFR低下割合の関係を示す式のグラフである。
【図10】実施例11〜31のガラス含有ブロー容器のガラス配合率と焼却エネルギーの関係を示したグラフである。
【図11A】実施例11〜31のガラス含有ブロー容器のガラス配合率と焼却エネルギー改善指標の関係を示したグラフである。
【図11B】実施例11〜31のガラス含有ブロー容器のガラス配合率と平均値の焼却エネルギー改善指標の関係を示したグラフである。
【図12】実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のガラス配合率と熱伝導率の関係を示したグラフである。
【図13】実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のガラス配合率と熱伝導率向上割合の関係を示したグラフである。
【図14】実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のガラス配合率(重量%)とロックウェル硬度の関係を示したグラフである。
【図15】ガラス配合率とロックウェル硬度改善指標の関係を示したグラフである。
【図16】従来から用いられている押出機の例である単軸押出機の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
最初に、ガラス配合率40〜70重量%のガラス含有成形用ペレット及びその製造方法を説明して、その後に、本発明のガラス含有ブロー容器、その物性・特性を説明する。
その説明により、ガラス配合率40〜70重量%のガラス粉末が含有されるガラス含有成形用ペレットが有する物性として、溶融状態にあるポリマーの流動性を示す尺度の一つであるメルトフローレート(以下、「MFR」という。)が理解でき、このガラス含有成形用ペレットを用いて、従来のブロー成形法で成形するに際して、トラブルが生じることなく成形できるガラス含有ブロー容器のMFRの値が理解でき、そして、そのブロー容器が有する物性・特性が理解できる。
【0027】
(ガラス含有成形用ペレットの成形工程)
図1は本発明のガラス含有成形用ペレットの製造に用いられる一つの押出機の縦断面図である。この押出機は、図16の従来の押出機と比べてホッパーの構造を除いて他の構造は同じであるので、図1の押出機の構造を説明することは省略する。前記押出機により40〜70重量%の範囲の中実の球状ガラス粉末と熱可塑性樹脂を混練して押出してガラス含有成形用ペレットが成形される。
図1の押出機に基づいて、40〜70重量%の範囲の中実の球状ガラス粉末と熱可塑性樹脂を混練して押出して、ガラス含有成形用ペレットを形成する工程を説明する。
本発明の実施形態に用いる押出機は、供給材料であるペレットと球状ガラス粉末を投入する2個のホッパーが備えられている。図1に示す押出機のホッパーを左側から順に第1、第2ホッパーと称し、第1ホッパーには熱可塑性樹脂のペレットが投入され、押出機の中間部付近に設けられている第2ホッパーには、球状ガラス粉末が投入される。第2ホッパーの配置位置は、第1ホッパーよりスクリューバレル内に供給されたペレットが、スクリューによる混練搬送に伴って溶融状態になる位置に設けてある。
なお、図1の押出機は、従来の押出機と比べてホッパーの構造を除いて他の構造は従来の押出機と同じ構造であるので、図1の押出機の構造を説明することは省略する。
【0028】
前記第1及び第2ホッパーが備えられた押出機は、樹脂材料と複数種類の充填剤、顔料等を配合して押出成形するものとして従来から知られているが、本発明の第1及び第2ホッパーと従来のそれとの違いは、従来の第2ホッパーでは、ペレットの配合量に対して充填剤等のその配合率が極めて少ないので小型のホッパーが用いられているが、本発明の第2ホッパーは球状のガラス粉末を大量に投入するので、その第2ホッパーの大きさはペレットの第1ホッパーと同等かそれより大きいものを用いる点、該ホッパーの上方に球状のガラス粉末を予熱する加熱装置(図示せず)が設けられている点が異なる。前記加熱装置は150℃〜350℃の範囲で加熱でき、一定温度に制御できるものであれば、通常用いられている加熱装置を用いることができる。
【0029】
従来の第2ホッパーに投入する充填剤、顔料等の温度は常温で用いているが、本発明の球状のガラス粉末は、第2ホッパーに投入する前に熱可塑性樹脂の溶融温度と同じか、それに近似した温度に予熱してから投入する。この予熱温度は溶融温度と同じであることが最も好ましく、(該溶融温度±10%の温度)が好ましい。予熱温度が(前記溶融温度−10%の温度)より低い温度であると、溶融状態の熱可塑性樹脂から大量のガラス粉末が熱を奪うために流動性が低下する恐れがあり、予熱温度が(前記溶融温度+10%の温度)より高い温度であると、熱可塑性樹脂の粘性抵抗が下がりすぎて液体状態になりペレット化できない恐れがあるので、ガラス粉末の予熱温度は(溶融温度±10%の温度)の範囲が適切である。
【0030】
まず、決められた熱可塑性樹脂とガラス配合率にしたがって、供給するペレットの重量を計量して第1ホッパー内に投入し、スクリューによる混練搬送によって送られたペレットがヒーターにより溶融状態になる位置、即ち、第2ホッパーが配置されている位置で、供給する重量が計量された球状ガラス粉末を熱可塑性樹脂の溶融温度と同じか、それに近似した温度に予熱して第2ホッパー内に投入する。溶融熱可塑性樹脂中に投入された中実の球状ガラス粉末が、混練されながら押出されてガラス含有成形用ペレットが形成されて、その後に切断されてペレットが得られる。
【0031】
前記ヒーターの温度は使用される熱可塑性樹脂の融点に応じて決められており、例えば、PEが230℃、PPが220℃、PETが250℃等である。そして、押出機のスクリューの回転数は、200回/分で配合物を混練しながら3mmの径のノズルダイから押し出して棒状にしたものを、水で冷やして長さ4mmに切断してペレットを得た。
【0032】
(中実の球状ガラス粉末)
本発明の中実の球状ガラス粉末(以下、「球状ガラス粉末」という。)のガラス質は、SiO2、B2O3、P2O3の1種又は2種以上を骨格成分とする、アルカリガラス、可溶性ガラス、無アルカリガラス、シリカガラス等が挙げられる。そして、その形状を球状にするには、ガラス繊維を粉砕して球状化する方法を用いることで平均粒径の分布をシャープにすることができる。該球状ガラス粉末のアルカリ分が多いと、熱可塑性樹脂の脆化を招きやすいので、アルカリ分の少ない可溶性ガラスが好ましく、更に、アルカリ分のない無アルカリガラスであるEガラスがより好ましい。しかし、何れのガラス質を使用するかはその用途に応じて決まるものであって、本発明の中実の球状ガラス粉末は実施例に限定されるものではない。
【0033】
前記球状ガラス粉末は、ガラス繊維の直径が20μmのものを材料として用いている。ガラス繊維はその直径が一定であるから、ガラス繊維の長さが前記直径20μmからばらつかないように粉砕することで、直径20μm、長さ10〜30μmの粉砕物が得られる。この粉砕物を炉の内部に設けた酸素バーナーによる2500〜3000℃の火炎に噴霧して球状化し、噴霧状の球体に炉の下部に設けた水の噴射装置より、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシランを0.1重量%含む水を噴射して、噴霧状態でシラン化処理を行いバグフィルターで捕集した。この捕集したガラス粉体は球状の平均粒径が10〜40μmの球状のガラス粉末である。このように、上記ガラス繊維の直径が20μmのものを材料として用いることで、平均粒径が10〜40μmの球状のガラス粉末が得られた。得られた球状ガラス粉末は中実であった。上記噴霧状態で行うシラン化処理を行う方法を、以下、「噴霧法」という。
【0034】
上記球状化したガラス粉末を前記噴霧法でシラン化処理をしたものが前記球状ガラス粉末である。換言すれば、この球状ガラス粉末はその表面がシラン化合物により全体的に覆われていることに特徴がある。
シラン化合物としては、以下の式で表されるものを挙げることができる。
R4-n−Si−(OR’)n
(式中、Rは有機基を表し、R’はメチル基、エチル基又はプロピル基を表し、nは1〜3から選ばれる整数を表す)
【0035】
かかるシラン化合物としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカップリング剤、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0036】
従来から用いられているガラス粉末は、その形状が多角形、長方形等の様々な形状から構成されており、そして、その平均粒径が10〜100μmの広い分布幅にあるのに対して、本発明のガラス粉末は形状が球状であり、その平均粒径が10〜40μmの範囲でその幅が非常に小さい。
【0037】
図2は上述した球状ガラス粉末の製造方法で得られた球状ガラス粉末の平均粒径の分布の頻度を示すグラフである。このグラフの横軸は前記球状ガラス粉末の粒径(μm)で、縦軸は分布の頻度(%)を示している。前記球状Eガラス粉末は、粒径が25μmで最高の分布頻度を示しており、その25μmを中心に正規分布曲線上の10〜40μmの範囲に分布しており、その範囲にある粒径の頻度が高いことがわかる。
図3は前記球状ガラス粉末の1000倍の電子顕微鏡写真である。この写真から球状ガラス粉末は、各々のその形状が球状であり中実であり、大小様々な粒径のものが存在していることが観察できる。
図2の球状Eガラス粉末の平均粒径の分布の頻度を示すグラフとこの図3の写真から、熱可塑性樹脂中の球状ガラス粉末は、その形状が真円の球形であり、大小様々な粒径のものが存在しているが、その平均粒径が10〜40μmであることが示されている。
【0038】
ところで、溶融熱可塑性樹脂中にガラス粉末を投入して混練する際に、その粒径が10μmより以下になると、微細粒子の割合が多くなり、比表面積の増加に伴い樹脂からガラス粉末が熱量を奪い、そのために樹脂の温度が急に低下することで溶融粘度が上昇し、剪断発熱により混練時の樹脂温度が極端に上昇するため、決められた両材料の配合率を調整することが困難になる。又、熱可塑性樹脂にガラス粉末を配合することで、一般的に、成形体の寸法安定性、機械強度(衝撃強度、曲げ強度等)、ソリ性、透過バリア性等の向上が図られるが、その粒径が10μmより以下になると、特に曲げ強度が低下するので好ましくない。
【0039】
前記粒径が40μmより大になると巨大粒子の割合が多くなり、混練時の溶融粘度の上昇は少ないが、ガラス含有組成物を一定サイズのペレットに切断する際に、カット刃の摩耗が激しくなり、大量の該ガラス含有組成物を連続して生産することが困難となり、生産上の問題が生じる。又、その粒径が40μmより大になると、特に衝撃強度が低下するので好ましくない。従って、平均粒径は10〜40μmの範囲が好適である。
【0040】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を用いる。
熱可塑性樹脂に着色や光沢の付与の目的で、顔料、酸化チタン、アルミナ、タルク、マイカ、シリカ、炭酸マグネシウム、金属ラメを配合することができる。
【0041】
PE、PP、PETの何れか一つの樹脂ペレットが溶融状態にある中に、最大で70重量%の球状ガラス粉末を配合して混練することにより、押出機の吐出口に設けたノズルダイより直径3mmの棒状に押し出して水で冷却してカッターで長さ約4mmに切断して、該熱可塑性樹脂中に球状ガラス粉末が独立して分散したペレット状のガラス含有成形用ペレットが得られるが、直径及び長さはこれに限定されるものではない。
【0042】
図4Aは、上述した本発明のガラス含有成形用ペレットの製造方法で製造されたガラス含有成形用ペレット(ペレット)の電子顕微鏡写真である。この電子顕微鏡写真は、PPに球状Eガラス粉末50重量%を配合して得られたペレットを、側面から垂直に切断した切断部を50倍に拡大して撮影したものである。
図4Bは、前記切断部を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
図4Cは、前記ペレットの側面を100倍に拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。
図4Bのペレットの切断部の写真から、該ペレットはPP中に個々の球状のガラス粉末が凝集することなく独立して分散された状態で配合されていることが観察される。
このことから、前記球状ガラス粉末が噴霧法によりその表面がシラン化合物により全面的に被覆されることで、押出機内で混練し押し出して成形された前記ペレットは樹脂中に球状のガラス粉末が凝集することなく独立して分散された状態で配合されていることが判明した。
【0043】
そして、図4Aの写真の中点より上下端部の位置まで円を描き、その円を均等に16分割して、16の各区画に配合されている球状ガラス粉末の数を目視して数え、その数えた結果を表1に示す。
なお、16分割線上に球状ガラス粉末がある場合には、1/2として球状ガラス粉末数の計算を行った。
【表1】
表1の測定結果から、各区画における球状ガラス粉末数は、140±1の範囲にあることから、ペレット中に球状ガラス粉末が均一に分散されていることを示している。
以上のことから、押出機でガラス粉末と熱可塑性樹脂を混練して押出成形されてなる本発明のガラス含有成形用ペレットは、ガラス粉末が、球状の形状で中実であり、10〜40μmの平均粒径であり、その表面がシラン化合物により全面的に被覆されており、熱可塑性樹脂中に40〜70重量%の範囲のガラス配合率で独立して均一に分散されている状態で含有されているものであることが判明した。
図4Cの写真は、ペレットの側面は球形の凸状部で覆われており、その球形凸状部が熱可塑性樹脂で前記球状ガラス粉末を被覆していることを表している。
【0044】
(実施例と比較例)
以下に示す実施例は、3種類のペレット状の熱可塑性樹脂(PE、PP又はPET)を対象として、上記した噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末と3種類のペレット状の樹脂のうち一つの樹脂の重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いており、その重量配合率におけるMFRが示されている。
【0045】
前記MFRは、溶融状態にあるポリマーの流動性を示す尺度の一つで、押出式プラストメーターで、一定圧力、一定温度の下に、規定の寸法をもつノズル(オリフィス)から流出する量を測定し、g/10minの単位で表わした指数である。一般にMFRの数値が大きいほど溶融時の流動性や加工性は良好であるとされ、世界的に樹脂の流量状態を表すものとして、このMFRが用いられている。
【0046】
上記3種類の熱可塑性樹脂のMFRは、実施例として選んだPEが0.25で、APPが10.0のMFRで、PETが20.0のMFRであり、MFRが0.25、10.0、20.0のものを選んでいるが、同じ熱可塑性樹脂であっても分子量に応じてMFRが異なるものである。その分子量の異なる熱可塑性樹脂のMFRは、上記したMFR0.25〜20.0の範囲に入るものとして3種類の熱可塑性樹脂を選定した。
【0047】
比較例1及び2に用いた比較例球体は、Eガラス繊維の粉砕物を球状化したものに浸漬法でシラン化処理したもので、実施例と同じ球状ガラス粉未を用いている。実施例の球状ガラス粉末は噴霧法でシラン化処理されているのに対して、比較例1及び2の球状ガラス粉末が浸漬法でシラン化処理されていることが相違することから、比較例1及び2の球状ガラス粉末は比較例球体と呼んでいる。
【0048】
比較例1及び2の前記浸漬法とは、球状ガラス粉末をγ一グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシランが0.1重量%含まれる水溶液に30分の間撹拌しながら、浸漬した後に濾過して100℃で乾燥したものである。その処理により複数の球状ガラス粉末同士が接触してシラン化合物が被覆されフィルター処理されて乾燥されるので、シラン化処理されたガラス粉末中に凝集した凝集ガラス粉末が存在することになる。
【0049】
なお、比較例として従来の各種形状を含むガラス粉末を用いたものを実施例の比較する対象としない理由は、PEのペレットと従来の各種形状を含む40重量%のガラス粉末を第1ホッパーに投入して混練を試みようとしたところ、流動性が急激に低下して、スクリューに対する摩擦抵抗力がスクリューの剪断力以上に大きくなり、スクリューねじ山等が破損を起こしそうになり、組成物を成形することができないために、実施例と比べて溶融熱可塑性樹脂中にガラス粉末を投入する効果、凝集状態にないガラス粉末の効果を明確にするための実験データが得られないことが分かったので、比較例としてEガラス繊維の粉砕物を球状化したものを用いることとした。このことで、前記溶融熱可塑性樹脂中にガラス粉末を投入する効果、凝集状態にないガラス粉末の効果を示す実験データを得ることができた。
【0050】
比較例1は3種類の樹脂のうちの一つの樹脂と比較例球体を別々に計量して押出機に投入した。第1ホッパーに一つの樹脂のペレットを投入し、第2ホッパーに比較例球体を投入した。比較例球体と一つの樹脂のペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準のものを用いており、その重量配合率における流動性を示すMFRの実験データが以下の表4、6及び8に示されている。
【0051】
比較例2は第1ホッパーに一つの樹脂のペレットと比較例球体を配合して同時に投入し、比較例球体と一つの樹脂のペレットの重量配合率を20:80、30:70、40:60の3種類の水準のものを用いており、その重量配合率における流動性を示すMFRの実験データが以下の表4、6及び8に示されている。
【0052】
上記した実施例、比較例1及び2の3種類の成形組成物を得るための条件を、ガラス粒子、シラン化処理の方法、樹脂の種類、ガラス配合率、第1、第2ホッパーへの投入材料の6項目(以下、この6項目の条件を「6項目条件」という。)に分けて表2に示した。 なお、前記「ガラス配合率」は、熱可塑性樹脂中の球状ガラス粉末の重量%と定義して用いている。そして、「ガラス配合率重量%」を「ガラス配合率%」で示す場合があるが、同じ意味で用いている。
【0053】
【表2】
【0054】
ところで、実施例のガラス含有成形用ペレットは、比較例1及び2の比較例球体成形用組成物と比較してどの様な特性を有するものかを調べるために、上記6項目条件で成形した時の各樹脂を溶融する溶融温度と同じ温度で成形用組成物を溶融して、各樹脂の成形用組成物のMFRを測定した。前記各樹脂を溶融する溶融温度と同じ温度で成形用組成物のMFRを測定すれば、成形用押出機内で樹脂が溶融状態にある領域にガラス粉末を投入して混練している時の流動性の状態を数値化して表すことができ、そのことにより比較例1及び2の比較例球体成形用組成物のMFRと対比することにより、実施例のガラス含有成形用ペレットのMFRの特性が明確化される。
その測定結果は以下の実施例1〜3に示されている。
【0055】
(実施例1)
実施例1は熱可塑性樹脂としてHDPE(高密度ポリエチレン)(以下、「PE」という。)が用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPEの重量配合率が40:60、50:50、60:40、70:30の4種類の水準のものを用いた。
【0056】
上記した押出機の第1ホッパーよりPEとしてHI−ZEX 5100B(商品名:株式会社プライムポリマー製品)の重量を計量して60重量%を投入し、230℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度230℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、230℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例1の第1の水準の成形用組成物を得た。予熱温度は溶融温度230℃と同じであることが最も好ましく、(230℃±10%の温度)が好ましい。
【0057】
以下同様に、HI−ZEX 5100B50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用組成物、HI−ZEX 5100B60重量%、球状Eガラス粉末40重量%の第3の水準の成形用組成物、HI−ZEX 5100B30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用組成物を得た。
次に、比較例1−1及び比較例1−2は、表2に示した条件で長さ4mmのペレットを得た。用いた樹脂は実施例1の樹脂と同じものである。
【0058】
なお、以下に記載する他の2種類の熱可塑性樹脂(PP、PET)に関して、前記6項目条件も同様に、項目の「樹脂」及び「第1ホッパー」に対象とする樹脂を記載して他の項目に記載する内容は同じであるので、上記2種類の熱可塑性樹脂ごとに6項目条件を表にして表すことは省略する。
【0059】
ガラス配合率ごとの前記ペレットのMFRを230℃で測定した結果を表4に示す。
なお、表4における実施例1のPE(HI−ZEX 5100B)の熱可塑性樹脂100%のMFRは、0.25である。
【表4】
【0060】
図5は表4に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
このグラフにおいて□印は実施例1のMFRを、△印は比較例1−1のMFRを、×印は比較例1−2のMFRを示している。そして、これらの実施例1、比較例1−1及び比較例1−2のMFRの各曲線は、熱可塑性樹脂100%のMFR(以下、「100%MFR」という。)である0.25に対して、ガラス粉末の配合率が増加したときに各々のMFRがどの様な減少傾向になるかを示したものである。そして、PEの100%MFR(0.25)が1/2の値(以下、「1/2MFR」という。)である0.125の時のガラス配合率を示すために、各曲線との交点からX軸に向かって垂線が引かれている。
なお、1/2MFRのガラス配合率を求める理由は以下の表23の説明のときに述べる。
【0061】
なお、以下に示すグラフにおいて、□印は実施例を、△印は比較例1を、×印は比較例2を示しており、また、各曲線は、熱可塑性樹脂100%のMFR(以下、「100%MFR」という。)に対して、ガラス粉末の配合率が増加したときに各々のMFRがどの様な減少傾向になるかを示したものであるので、実施例2以降にはその説明を省略する。それと共に、1/2MFRの時のガラス配合率を示すために、各曲線との交点からX軸に向かって垂線が引かれていることの説明を省略する。
【0062】
上記1/2MFRの時の比較例1−2、比較例1−1及び実施例1のガラス配合率を表5に示す。
【表5】
【0063】
(実施例2)
実施例2は熱可塑性樹脂としてPPが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPPの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりPPとしてノバテックPP MA3(商品名:日本ポリプロ株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、220℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度220℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、220℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例2の第1の水準の成形用組成物を得た。予熱温度は溶融温度220℃と同じであることが最も好ましく、(220℃±10%の温度)が好ましい。
【0064】
以下同様に、ノバテックPP MA3 50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用組成物、ノバテックPP MA3 40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用組成物、ノバテックPP MA3 30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用組成物を得た。
次に、比較例2−1及び比較例2−2は、表2に示した条件で長さ4mmのペレットを得た。用いた樹脂は実施例2の樹脂と同じものである。
【0065】
ガラス配合率ごとの前記PPのペレットのMFRを220℃で測定した結果を表6に示す。
なお、表6における実施例2のPP(ノバテックPP MA3)の熱可塑性樹脂100%のMFRは、10.0である。
【表6】
【0066】
図6は表6に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
上記1/2MFRの時の比較例2−2、比較例2−1及び実施例2のガラス配合率を表7に示す。
【表7】
【0067】
(実施例3)
実施例3は熱可塑性樹脂としてPETが用いられており、噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末とPETの重量配合率が40:60、50:50、60:40及び70:30の4種類の水準のものを用いた。
上記した押出機の第1ホッパーよりPETとしてバイロンFN305(商品名;東洋紡株式会社製品)の重量を計量して60重量%を投入し、250℃で溶融状態にした中に、第2ホッパーより上記実施例の球状Eガラス粉末の重量を計量して溶融温度250℃と同じか、それに近似した温度に予熱した40重量%を投入して、250℃、スクリュー回転数200回/分で混練し、3mm径の棒状に押出し、水冷して長さ4mmに切断してペレット状とし実施例3の第1の水準の成形用組成物を得た。予熱温度は溶融温度250℃と同じであることが最も好ましく、(250℃±10%の温度)が好ましい。
【0068】
以下同様に、バイロンFN305 50重量%、球状Eガラス粉末50重量%の第2の水準の成形用組成物、バイロンFN305 40重量%、球状Eガラス粉末60重量%の第3の水準の成形用組成物、バイロンFN305 30重量%、球状Eガラス粉末70重量%の第4の水準の成形用組成物を得た。
次に、比較例3−1及び比較例3−2は、表2に示した条件で長さ4mmのペレットを得た。用いた樹脂は実施例3の樹脂と同じものである。
【0069】
ガラス配合率ごとの前記ペレットのMFRを250℃で測定した結果を表8に示す。 なお、表8における実施例3のバイロンFN305の熱可塑性樹脂100%のMFRは、20.0である。
【表8】
【0070】
図7は表8に示したガラス配合率(重量%)とMFRのデータに基づいて作成した、ガラス配合率とMFRの関係を2次多項式の近似曲線で示したグラフである。
上記1/2MFRの時の比較例3−2、比較例3−1及び実施例3のガラス配合率を表9に示す。
【表9】
【0071】
なお、上記実施例では、押出機内に投入する球状のガラス粉末を溶融温度と同じか、それに近似した温度に予熱する最良の実施形態の例を示したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、例えば、押出機内に投入する球状のガラス粉末を溶融温度と同じか、それに近似した温度に予熱する代わりに、第2ホッパーに予熱しないで球状のガラス粉末を投入しても良い。その場合には、大量の球状ガラス粉末の投入により溶融温度が急激な低下を生じないように溶融温度を上げる等の、従来のペレットの成形に用いられている溶融温度(加温、冷却)、スクリュー速度等の制御により混練して押出して得たガラス含有成形用ペレットも、本発明のガラス含有成形用ペレットに含まれるものである。
【0072】
次に、3種類の実施例の有する特性であるMFRについて説明する。
3種類の、球状Eガラス粉末を含有する組成物の実施例、及び、比較例球体を含有する組成物の比較例、この両者のガラス配合率とMFRの関係を図5〜図7のグラフに示したが、この両者のグラフを対比すると、3種類の実施例のグラフは、前記MFRがガラス配合率の増加に伴い熱可塑性樹脂100%のMFRを頂点とする放物線を示しており、100%MFRの1/2の値がガラス配合率50〜60重量の範囲にあるのに対して、3種類の比較例1及び2のグラフは、前記MFRがガラス配合率の増加に伴い熱可塑性樹脂100%のMFRを頂点とする下方へ傾斜するほぼ直線を示しており、比較例1と比較例2の熱可塑性樹脂100%のMFRの1/2の値が、比較例1ではガラス配合率30〜40重量%の範囲にあり、比較例2ではガラス配合率20〜30重量%の範囲にあることを示している。
【0073】
従って、3種類の実施例は、前記MFRがガラス配合率の増加に伴い熱可塑性樹脂100%のMFRを頂点とする放物線を示しており、ガラス配合率40〜50重量%の範囲において、100%MFRの1/2以上の値であり、ガラス配合率50〜60重量%の範囲において、100%MFRの1/2の値から1/2以下の値に変わることを示している。
【0074】
比較例1は前記MFRがガラス配合率の増加に伴い熱可塑性樹脂100%のMFRを頂点とする下方へ傾斜するほぼ直線を示しており、ガラス配合率30〜40重量%の範囲において、100%MFRの1/2以上の値から1/2以下の値に変わることを示し、比較例2は前記MFRがガラス配合率の増加に伴い熱可塑性樹脂100%のMFRを頂点とする下方へ傾斜するほぼ直線を示しており、ガラス配合率20〜30重量%の範囲において、100%MFRの1/2以上の値から1/2以下の値に変わることを示している。
【0075】
実施例1〜3のグラフは、比較例のグラフよりガラス配合率の増加に伴うMFRの低下挙動が緩やかであることを示しており、このことは、製造工程で球状ガラス粉末の配合量が仮に変動しても、それに起因するMFRの変動が小さいことが判る。従って、ガラス含有成形用ペレットの製造工程においても品質管理上、有利であることがこれらのグラフで示されている。
【0076】
次に、実施例1〜3に示した熱可塑性樹脂ごとの1/2MFRの時の比較例2、比較例1及び実施例のガラス配合率を3種類の熱可塑性樹脂をまとめて表10に示す。
表10が示す比較例と実施例のMFRからみて、1/2MFRの時の比較例2のガラス配合率は25〜26重量%の範囲にあり、その時の比較例1のガラス配合率は32〜36重量%の範囲にあり、そして、その時の実施例のガラス配合率は54〜57重量%の範囲にあることから、その最大と最小の差は、比較例2で1%、比較例1で4%、実施例で3%の範囲にあることを示しており、実施例1〜3は、比較例2の約2倍、比較例1の約1.6倍の大量のガラス配合率を含有しても、1/2MFRであることを見出した。
上述した前記熱可塑性樹脂の1/2MFRは、ガラス配合率の増加に伴うガラス含有成形用ペレットのMFRの特性を把握するのに有用である。
【表10】
【0077】
実施例1〜3の熱可塑性樹脂100%のMFR、ガラス配合率40、50、60、70重量%の5点のMFRを表11に示した。図8は表11の5点のデータに基づいて計算された2次多項式の近似曲線を示し、実施例1〜3のガラス含有成形用ペレットにおけるガラス配合率とMFRの関係を示したグラフである。このグラフはガラス配合率の増加に伴って各熱可塑性樹脂100%のMFRが漸減する傾向を示している。
図8に記載の印は、PEが◇印を、PPが□印を、そして、PETが△印を示している。
【表11】
【0078】
実施例1〜3は、図8のグラフからガラス配合率の増加に伴って漸減するMFRが放物線上の値を示していることが判るが、ガラス配合率40、50、60及び70重量%の各増加に伴って、そのMFRが熱可塑性樹脂100%のMFRに対して、どの程度低下しているかを示す定量的な数値としてのMFRの低下割合が、例えば、ガラス配合率70重量%のガラス含有成形用ペレットのMFRの低下割合が求められれば、押出機を長時間に渡って運転し続けた場合、どの程度のMFRの低下割合でスクリューが破損を起こす等のトラブルの発生を防げるかが事前に分かる。
【0079】
また、地球温暖化問題及び石油資源の枯渇問題を解決するためには、大量の球状ガラス粉末を配合すればする程効果的であるが、ガラス含有成形用ペレットをブロー成形法、射出成形法、押出成形法等で成形した成形体を大量生産化することを考えると、MFRの低下割合を求めることで如何なる成形法でも成形し易いガラス配合率を検討する必要がある。
そして、ガラス配合率の値とMFRの低下割合との相互の関係が分かれば、選定した熱可塑性樹脂のMFRに応じてガラス配合率を容易に決定することが可能になる。例えば、PEを選定してガラス含有成形用ペレットを成形する場合、PE100%のMFRが0.25と小さい値であるから、MFRの低下割合を60%に抑えて成形するのに、必要なガラス配合率の値を容易に決定できれば便利である。
【0080】
そこで、最初に、熱可塑性樹脂に対してガラス配合率の増加に伴うMFRの低下割合の求め方を説明する。
上述したしたように、上記実施例1〜3に示した熱可塑性樹脂ごとの1/2MFRの時の比較例2、比較例1及び実施例のガラス配合率を表10に示したが、この熱可塑性樹脂の1/2MFRは、熱可塑性樹脂100%に配合する球状ガラスの増加により、ガラス含有成形用ペレットのMFRが熱可塑性樹脂100%の1/2の値になるガラス配合率を示している。例えば、PEは57重量%、PPは54重量%のガラス配合率の時に熱可塑性樹脂100%の1/2の値を示す。このことから、表12で示した実施例1〜3のガラス配合率40、50、60、70重量%のMFRを熱可塑性樹脂100%のMFRで割った値、即ち、ガラス配合率の増加により熱可塑性樹脂100%のMFRがどの程度低下しているかを示すMFRの低下割合を意味している。
【0081】
そこで、表11で示した実施例1〜3のガラス配合率40、50、60、70重量%のMFRを熱可塑性樹脂100%のMFRで割った値を「メルトフローレート低下割合」(以下、「MFR低下割合」という。)と定義してその値を求めた。その求めた結果を表12に示す。表10は1/2MFRの時に示すガラス配合率の値を表しているが、表12はガラス配合率が40、50、60、70重量%の時に示すMFR低下割合の値を表しているために、MFR低下割合がガラス配合率ごとに異なった範囲を示していることに留意されたい。
【表12】
【0082】
図9Aは表12の5点のデータに基づいて計算された3種類の実施例1〜3に関するMFR低下割合の2次多項式の近似曲線、いわゆる放物線を示し、実施例1〜3のガラス含有成形用ペレットにおけるMFR低下割合とガラス配合率の関係を示したグラフである。PEはy=−1.31x2−0.22x+1.00、PPはy=−1.11x2−0.24x+1.00、そして、PETはy=−1.52x2−0.03x+1.00の式で表され、これらの式は放物線を示すものである。図9Aのグラフはx軸がガラス配合率(重量%)を、y軸がMFR低下割合を示している。3種類の実施例1〜3は100%時のMFRが3種類の固有の値(0.25、10.0、20.0)を有しているが、何れの実施例1〜3であっても、MFR低下割合が、図9Aに示すようにガラス配合率の増加に伴って漸減し続けていること、そして、表12に基づいて各ガラス配合率のMFR低下割合の最大値と最小値の差を示すと、ガラス配合率40重量%の最大値が0.75、最小値が0.70で、その差は0.05であり、ガラス配合率50重量%の最大値が0.62、最小値が0.56で、その差は0.06であり、ガラス配合率60重量%の最大値が0.48、最小値が0.40で、その差は0.08であり、そして、ガラス配合率70重量%の最大値が0.28、最小値が0.20で、その差は0.08である。このことは、各ガラス配合率に対して示す3種類のMFR低下割合が、分散することなく0.05〜0.08の狭い範囲に実験データが存在していることを示している。
【0083】
図9Aが示す3種類の放物線は、各ガラス配合率のMFR低下割合の最大値と最小値の範囲に各実験データが包含されていることを示していると考えられるので、表12に示した各ガラス配合率のMFR低下割合の最大値と最小値からその放物線の式を求めた。最大値から得られた式(1)、y=−1.34x2−0.08x+1.00であり、最小値から得られた式(2)、y=−1.31x2−0.22x+1.00であった。
この式の係数及び常数は小数点第3位を四捨五入して得た式(1)及び式(2)を以下に示す。
y=−1.34x2−0.08x+1.00 (1)
y=−1.31x2−0.22x+1.00 (2)
ここで、xはガラス配合率の必要量(40≦x≦70)を、yはMFR低下割合を示している。
表13は上述した表12のガラス配合率40重量%、50重量%、60重量%、そして70重量%に対するMFR低下割合の最大値と最小値を示す表である。
【表13】
【0084】
図9Bはガラス配合率とMFR低下割合の関係を示す式のグラフである。この式はガラス配合率とMFR低下割合の関係を示しているので、統一的にガラス含有成形用ペレットの流動特性を把握でき、必要とするMFR低下割合を選定すれば樹脂中に配合すべき球状ガラス粉末のガラス配合率の予測、又は、ガラス配合率を選定すればガラス含有成形用ペレットのメルトフローレート低下割合の予測が可能となり、ガラス含有成形用ペレット及びガラス含有ブロー容器の成形時の操業性の向上を図ることが可能となる。
図9Bのグラフは、ガラス配合率40重量%の時の最大値が0.75であり、ガラス配合率70重量%の時の最小値が0.20であるから、ガラス配合率の増加に伴って、ガラス配合率が40〜70重量%の範囲のMFR低下割合が0.75から0.20まで漸減することを示している。
【0085】
次に、汎用性のある樹脂であるPE、PP及びPET中に40重量%以上のガラス粉末を含有させたペレットを用いて、従来のブロー成形法で成形されたガラス含有ブロー容器が焼却時の焼却エネルギーを大幅に低減できること、更に、そのブロー容器のガラス配合率と焼却エネルギーの関係を示して、ガラス配合率又は焼却時の焼却エネルギーが予測できること、コスト的に安価に製造できることを以下に説明する。
上記従来のブロー成形法は、食品、飲料、液体洗剤、トイレタリー、化粧品、医薬品などの容器の製造に主に適用されているが、工業製品である自動車部品の成形にも使用されている。
【0086】
熱可塑性樹脂をブロー成形法で成形するのに各種の樹脂を使用することができるが、上記したように、ブロー容器に多量に使用されている熱可塑性樹脂としては、PE、PP及びPETが挙げられ、本発明のガラス含有ブロー容器はこの3種類の樹脂を対象としている。
そして、本発明のガラス含有ブロー容器に用いるガラス含有成形用ペレットは、第2ホッパーに予熱した球状のガラス粉末を投入した製造方法で成形されたものだけに限定されるものではなく、上述したように、第2ホッパーに予熱しないで球状のガラス粉末を投入した場合には、従来のペレットの成形に用いられている溶融温度(加温、冷却)、スクリュー速度等の制御により混練して押出して得たガラス含有成形用ペレットが、熱可塑性樹脂中にガラス配合率が40〜70重量%の範囲の球状ガラス粉末を含んでおり、そのメルトフローレート値低下割合が上記式(1)及び(2)の範囲にあるものも含んでいることに留意されたい。
【0087】
(ブロー成形法)
押出機、射出装置などによって溶融・形成されたパリソン又はプリフォームを金型内に挟み込み、その内側に気体を吹き込み、その圧力で金型の内面にパリソン又はプリフォームの外面を押し付けて中空体を形成する工程からなる成形法である。ブロー成形法は、まずパリソンの成形が行われる2段の成形法であり、パリソンの成形には押出ブロー成形機と射出ブロー成形機が一般に適用されている。その他に,圧縮成形機も適用可能である。このようにブロー成形法には各種の形式がある。
【0088】
前記押出ブロー成形機(「ダイレクトブロー」とも呼ばれる。)を用いるダイレクトブロー法は、押出機及びヘッドによって金型内にパリソンが供給され、ブロー成形されるもので、成形材料を加熱熔融させてチューブ状に押し出し、金型で挟み、内部に高圧空気を吹き込んでブロー容器を成形する行程からなる成形法であり、これに対して前記射出ブロー成形機(「インジェクションブロー」とも呼ばれる。)を用いるインジェクションブロー法は、射出装置及びブロー機構によって構成される1台の成形機で、プリフォームを成形し、更に直接ブロー成形する行程からなる成形法で、パリソンの成形を射出装置で行うもので、射出装置で接合痕のない平滑な底面を持った有底パリソンを成形し、次にこれを中空用のあわせ金型内に移動し、そこでブロー機構によって空気を吹き込んで中空成形するもので、成形材料を加熱溶解させて予め閉じられた金型内に射出充填した後、固化又は硬化して成形する行程からなる成形法である。インジェクションブロー法には、ホットパリソン法とコールドパリソン法があり、ホットパリソン法は、射出成形された直後の高温状態にあるパリソンを割型内に導入し、直ちにパリソン内にエアーを吹き込むか、又はパリソンを温調後、パリソン内にエアーを吹き込んでブロー成形する方法で、コールドパリソン法は、射出成形されたパリソンを一旦冷却・固化させ、別工程においてパリソンを加熱手段で加熱した後に割型内に導入してパリソン内にエアーを吹き込んでブロー成形する方法である。
【0089】
(ガラス含有ブロー容器の製造方法)
熱可塑性樹脂をブロー成形法で成形するのに各種の樹脂を使用することができるが、ボトルに多量に使用されている熱可塑性樹脂としては、PE、PP及びPETが挙げられる。
以下に示す実施例と比較例の実験データは、PE、PP及びPETの3種類の樹脂を対象としている。実施例は、上記した噴霧法でシラン化処理した球状Eガラス粉末と3種類の樹脂のうち一つの樹脂の重量配合率が40:60、50:50、60:40、70:30の4種類の水準のものを用いており、その重量配合率における焼却エネルギーの実験データが以下に示されている。
【0090】
実施例として実施例11がPE、実施例21がPP、そして、実施例31がPETの各樹脂の例を以下に説明するが、これらの樹脂のガラス含有成形用ペレットは既述したものを用いるので、そのペレットの製造方法の説明は省略する。ブロー成形法として、実施例11はダイレクトブロー法で、実施例21はホットパリソン法で、実施例31はコールドパリソン法で成形してブロー容器を作成した。
【0091】
このように3種類の異なるブロー成形法を用いてブロー容器を作成したのは、ガラス配合率が40〜70重量%のペレットを用いて、既存の各種のブロー成形機を用いて従来のブロー成形法と同じ条件で、工業的に大量のブロー容器の生産ができか否かを検証するためである。
また、一般的に、同一の樹脂で異なるブロー成形法を用いて作成されたブロー容器は、その物性の特性が同一であることが知られているが、本発明者はPEを用いて上記3種類の異なるブロー成形法を用いてブロー容器の試作品を作成して、焼却エネルギー、熱伝導率及びロックウェル硬度を測定したところ同じ測定結果であったので、PE、PP及びPETのペレットを3種類の異なるブロー成形法を用いてブロー容器を作成して、上記物性の測定を行った。
【0092】
(測定の試験片)
測定の試験片は、実施例11では厚さが1.1mmの120mlのボトルを、実施例21では同じ厚さの500mlのボトルを、実施例31では同じ厚さの1000mlのボトルを作成して、各ボトルから幅が20mm×30mm、その厚さが1.1mmのものを切断したものを用いて上記物性を測定した。
(焼却エネルギーの測定)
焼却エネルギーは、JIS Z7302−2の廃棄物固形化燃料の発熱量試験方法に準じて測定し、発熱量をKcal/Kgで示した。
(熱伝導率の測定)
直径50mm、厚さ3mmの円盤状試験片を作成して、ASTM E1530に基づき熱伝導測定装置(GH1;アルパック理工(株)製)を用いて熱伝導率を測定した。
(硬度の測定)
硬度は、JIS K7202のプラスチックのロックウェル硬さ試験法に基づくM法に準じて測定した。以下、ロックウェル硬度という。
【0093】
(実施例11)
PEのガラス含有成形用ペレット(以下、「ペレット」という。)をダイレクトブロー法によりガラス含有ブロー容器を次のように製造した。
球状ガラス粉末とPEの重量配合比が、40:60、50:50、60:40、70:30のペレットを100℃で4時間乾燥した後に、そのペレットを押出ブロー成形機のホッパーより投入して、後部温度が215℃、前部温度が220℃、スクリュー回転数が100回/分、射出圧力が100kg/cm2、金型温度70℃の条件でダイレクトブロー法を行い、冷却時間が18秒で120mlのガラス含有ブロー容器を成形することができた。
なお、ガラスが含有されないPE100%のペレットで、上記押出ブロー成形機を用いてダイレクトブロー法による120m1ガラス含有ブロー容器を成形して、それにかかった冷却時間を測定したところ21秒を要した。球状ガラスの配合により熱伝導率の増加により、樹脂100%の場合より3秒短くなり冷却時間が14%短縮された。
【0094】
また、球状ガラス粉末とPEの重量配合比が、50:50の上記ペレットを用いて、インジェクションブロー法により、後部温度が235℃、前部温度が242℃、スクリュー回転数が100回/分、射出圧力が100kg/cm2の条件でパリソンを形成し、150m1のガラス含有ブロー容器を成形した。その際にかかった冷却時間は22秒である。なお、球状ガラス粉末が含有されないPE100%のペレットで、インジェクションブロー法による射出ブロー成形機を用いて150mlのガラス含有ブロー容器が成形できた。従来から行われている制御方法を変更することなくガラス含有ブロー容器を製造することができ、成形中にトラブルが発生することはなかった。それにかかった冷却時間を測定したところ25秒を要した。球状ガラスの配合により熱伝導率の増加により、樹脂100%の場合より3秒短くなり冷却時間が12%短縮された。
【0095】
(実施例21)
PPのペレットをホットパリソン法によりガラス含有ブロー容器を次のように製造した。
球状ガラス粉末とPPの重量配合比が、40:60、50:50、60:40、70:30のペレットを100℃で4時間乾燥して、乾燥したペレットを射出ブロー成形機のホッパーより投入して、240℃に溶融し150回/分の攪拌を行って、圧力(1);80kg、圧力(2);25kg、射出圧力;10kgとして4秒の射出でパリソンを作り、ブロー機構に移して6秒後にブローを6秒間行って500m1のガラス含有ブロー容器がホットパリソンで成形できた。
【0096】
(実施例31)
PETのペレットをコールドパリソン法によりガラス含有ブロー容器を次のように製造した。
球状ガラス粉末とPETの重量配合比が、40:60、50:50、60:40、70:30のペレットを130℃で4時間乾燥して、乾燥したペレットを射出ブロー成形機のホッパーより投入して、270℃に溶融し150回/分の攪拌を行って、圧力(1);80kg、圧力(2);25kg、射出圧力が10kgとして8秒の射出でパリソンを作り、取り出して室温でパリソンを放置した、該パリソンをブロー機構に移して270℃に加熱・軟化して8秒間ブローを行って1000m1のガラス含有ブロー容器がコールドパリソン法で成形できた。
【0097】
(ガラス含有ブロー容器の製品化)
ところで、実施例11〜31は、ガラス配合率40〜70重量%のガラス含有成形用ペレットを用いてブロー容器を成形する際にトラブルの発生が生じなかったので、実施例11〜31のブロー容器は、従来のダイレクトブロー法、ホットパリソン法又はコールドパリソン法の従来から行われているブロー成形法で、ガラス配合率40〜70重量%のブロー容器を製品化することができ、成形中にトラブルの発生の虞がないといえる。
それ故に、従来から行われている3種類のブロー成形法でガラス配合率40〜70重量%の範囲のペレットを用いさえすれば、ガラス含有ブロー容器をトラブルなく製品化できるといえる。
【0098】
(比較例)
比較例は上記した3種類のPE、PP及びPETの熱可塑性樹脂100%のブロー容器(以下、「樹脂100%ブロー容器」という。)を用いた。
PE、PP及びPETを上記実施例11〜31に示したガラス含有成形用ペレットの製造方法で成形して、上記した実施例11〜31のガラス含有ブロー容器の製造方法と同じ方法で、樹脂100%ブロー容器を成形して3種類の比較例1〜3を得た。
上記実施例11〜31のガラス含有ブロー容器及び比較例1〜3の樹脂100%ブロー容器の物性として焼却エネルギー、熱伝導率及びロックウェル硬度の測定は次のようにして行った。そして、その測定の試験片は、比較例1が120m1、比較例2が150m1、比較例3が1000m1のガラス含有ブロー容器から幅が20mm×30mm、その厚さが1.1mmのものを切断したものを用いて上記3種類の物性を測定した。
【0099】
比較例1〜3(樹脂100%ブロー容器)及び実施例11〜31(PE、PP及びPE)のブロー容器の有する物性として、焼却エネルギー、熱伝導率及びロックウェル硬度の各測定結果を、以下の表14、表20、表30に示す。これらの各表は横欄にガラス配合率0、40、50、60及び70重量%が、縦欄に実施例11〜31のPE、PP、PETが配置されており、上記物性の測定結果が示されている。
なお、以下に示す焼却エネルギー、熱伝導率及びロックウェル硬度の実験データは、誤差を小さくするために実験データ数として4個のデータを取得して、その4個のデータを合計して4で割った平均値を示している。
【0100】
(焼却エネルギー)
次に、樹脂100%ブロー容器である比較例1〜3(表14のガラス配合率「0」の欄が相当する。)の焼却エネルギー、及び、ガラス含有ブロー容器の実施例11〜31の40、50、60及び70重量%の焼却エネルギーは表14に示す通りである。
PE100%ブロー容器の焼却エネルギーが11000Kcal/Kgであるのに対して、PEのガラス含有ブロー容器の焼却エネルギーが6730Kcal/Kgから3200Kcal/Kgに、PP100%ブロー容器の焼却エネルギーが10500Kcal/Kgであるのに対して、PPのガラス含有ブロー容器の焼却エネルギーが6540Kcal/Kgから3000Kcal/Kgに、PET100%ブロー容器の焼却エネルギーが5500Kcal/Kgであるのに対して、PETのガラス含有ブロー容器の焼却エネルギーが3300Kcal/Kgから1640Kcal/Kgに減少されており、PE、PP及びPET樹脂中に球状ガラス粉末を含有させることにより焼却エネルギーを大幅に減少できることが示されている。
【表14】
【0101】
図10のグラフは直線の近似式であり、表14に示した比較例1〜3及び実施例11〜31のガラス含有ブロー容器のガラス配合率(重量%)をx軸に、焼却エネルギーをy軸にプロットして得られた5点を基にして近似式を求めた結果、直線の近似式が得られた。図10に示す印はガラス含有ブロー容器の種類を識別するもので、◇印はPE、同様に、□印はPP、△印はPETである。
図10の直線の近似式は、樹脂100%ブロー容器の焼却エネルギーと比べて、実施例11〜31のガラス含有ブロー容器の焼却エネルギーがガラス配合率の増加に伴って漸減して改善されていることを示している。
【0102】
図10の直線の近似式で表した実施例11〜31のグラフは、樹脂100%ブロー容器の固有の焼却エネルギーが大きい、PE、PPそしてPETの順に各直線が交差することなく減少しているので、樹脂100%ブロー容器であるPEの11000、PPの10500、PETの5500の焼却エネルギーの大きさが、その直線の勾配に影響を与えているのか否かを検討するために、また、ガラス配合率40〜70重量%のガラス含有ブロー容器が、樹脂100%ブロー容器の焼却エネルギーと比べてどの程度の割合で減少しているかを理解しやすくするために、実施例11〜31のガラス含有ブロー容器の焼却エネルギーを樹脂100%ブロー容器の焼却エネルギーで割ってその値を求めた。その計算により得られた値を表15に示す。
【表15】
ここで、上記実施例11〜31のガラス含有ブロー容器の焼却エネルギーを樹脂100%ブロー容器の焼却エネルギーで割った値を、「焼却エネルギー改善指標」と定義する。
図11Aは実施例11〜31のガラス含有ブロー容器のガラス配合率と焼却エネルギー改善指標の関係を直線の近似式で示したグラフである。
【0103】
表15に示した比較例1〜3及び実施例11〜31のガラス含有ブロー容器のガラス配合率(重量%)をx軸に、焼却エネルギー改善指標をy軸にプロットして得られた5点を基にして近似式を求めた結果、直線の近似式が得られた。
この直線の近似式のグラフは、ガラス配合率の増加に伴って、前記焼却エネルギー改善指標の値が該直線の近似式に沿って漸減することを示している。
PE、PP及びPETの樹脂100%の比較例1〜3のブロー容器は、焼却エネルギー改善指標が1であるので、ガラス配合率の増加に伴って、ガラス含有ブロー容器が樹脂100%ブロー容器と比べて、どの程度の割合で焼却エネルギーが漸減するか理解できる。換言すれば、図11Aの焼却エネルギー改善指標を示すグラフは、樹脂100%ブロー容器と比べてガラス含有ブロー容器のガラス配合率が分かれば、該ガラス含有ブロー容器を焼却する際に焼却エネルギーを、樹脂100%ブロー容器と比べて、どの程度の割合で減少できるかを示すもので、焼却エネルギーを減少できる割合を容易に決定できる。逆に、製造する製品に要求される焼却エネルギーが決められている場合には、前記グラフはその決められている焼却エネルギーから、ガラス含有成形用ペレットの必要なガラス配合率を示すもので、ガラス配合率の必要量が容易に決定できる。
【0104】
次に、図11Aの直線の近似式を以下に詳細に検討する。
図11Aの直線の近似式のうち、(イ)y=−0.0101x+1.0056はPEのガラス含有ブロー容器の近似式を、(ロ)y=−0.0101x+1.0004はPETのガラス含有ブロー容器の近似式を、(ハ)y=−0.0102x+1.0075はPPのガラス含有ブロー容器の近似式を示しており、この(イ)〜(ハ)の直線の近似式は、実験データが有する誤差を考慮すれば、ガラス配合率の増加に伴って同じ勾配で漸減していると考えられるので、表15に示した各ガラス配合率の焼却エネルギー改善指標の値を合計して平均値を求め、その求めた5点の平均値から得られた式は、y=−0.0101x+1.0047であった。
この式の係数及び常数は小数点第3位を四捨五入して得た式(3)を以下に示す。
y=−0.01x+1.00 (3)
ここで、xはガラス配合率の必要量(40≦x≦70)を、yは焼却エネルギー改善指標を示している。
【0105】
図11Bは、実施例11〜31のガラス含有ブロー容器のガラス配合率と平均値の焼却エネルギー改善指標の関係を示したグラフである。
上記の式(3)は、ガラス含有ブロー容器は、PE、PP及びPETの樹脂に関係なく、また、ダイレクトブロー法、ホットパリソン法又はコールドパリソン法のブロー成形法に関係なく、ガラス配合率の増加に伴って焼却エネルギー改善指標が漸減していることを示している。
【0106】
表15の焼却エネルギー改善指標の値は、実験データが有する誤差のために、上記の式(3)のxにガラス配合率を代入して得られる焼却エネルギー改善指標と異なる値が示されているが、この実験データがガラス配合率40、50、60及び70重量%毎にどの位の誤差の範囲にあるか計算を行ってみた。ガラス配合率40重量%で誤差が±1.6%、50重量%で誤差が+1.4〜−0.6%、60重量%で誤差が+2.5%、そして、70重量%で誤差が+2.4〜−1.0%であることから、実験により得られたガラス含有ブロー容器の焼却エネルギー改善指標は、+2.5〜−1.6%の誤差の範囲にあることが判った。
従って、上記の式(3)は、ガラス配合率の増加に伴って、ガラス含有ブロー容器の焼却エネルギー改善指標が該式(3)に沿って漸減して改善されることを示している。ここで、「式(3)に沿って漸減して改善される」の用語は誤差を含めた値と定義して用いるので、以下に該用語を用いる場合には誤差を含めた値を意味していることに注意されたい。
【0107】
上記式(3)は、例えば、ガラス配合率55重量%のPEのガラス含有ブロー容器を成形すれば、焼却エネルギー改善指標が0.45の容器が得られることを意味している。即ち、PE100%のブロー容器に対して、焼却エネルギーを55%も大幅に削減できることが分かる。このことは、成形されたガラス含有ブロー容器の表面にガラス配合率55重量%と表記すれば、消費者は、PE100%のブロー容器に対して、焼却エネルギーのみならず、二酸化炭素及び石油を55%も大幅に削減することができ、二酸化炭素等の地球温暖化問題、有限な石油資源の枯渇問題の対策が図られる地球環境に優しい製品であることが理解でき、また、製造メーカ等は社会的ニーズにマッチした製品として宣伝できるので、今日、急速に高まりつつある地球環境の問題に対する社会的ニーズにマッチした製品である。
このように、ガラス配合率と焼却エネルギー改善指標の関係を示す上記式(3)は、樹脂100%ブロー容器と比べて、ガラス配合率によりガラス含有ブロー容器の焼却エネルギーをどの程度の割合まで減少できて改善できるかを示すもので、また、事前に焼却エネルギーが決められている場合には、ガラス配合率の必要量を決定できるものである。
【0108】
(熱伝導率)
次に、樹脂100%ブロー容器である比較例1〜3(表26のガラス配合率「0」の欄が相当する。)の熱伝導率、及び、実施例1〜3の40、50、60及び70重量%の熱伝導率は表16に示す通りである。
【表16】
【0109】
図12のグラフは直線の近似式であり、表28に示した比較例1〜3及び実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のガラス配合率(重量%)をx軸に、熱伝導率をy軸にプロットして得られた5点を基にして近似式を求めた結果、直線の近似式が得られた。
図12に示す各印は図8の説明の際に記載した内容と同じである。
図12は実施例1〜3のガラス含有ブロー容器の熱伝導率が樹脂100%ブロー容器の有する熱伝導率と比べて、ガラス配合率の増加に伴って直線に沿って熱伝導率が増加していることを示している。
このことは、液体用容器の製品として前記ガラス含有ブロー容器を製造すれば、従来の液体用容器より外気の温度を早く液体に伝達できる製品が製造できることを意味している。例えば、冷蔵庫用の製氷器、製氷装置に水を供給する給水容器や、加温庫用の容器が挙げられる。
【0110】
図12の直線の近似式で表した実施例1〜3のグラフは、樹脂100%ブロー容器の固有の熱伝導率が大きい、PET、PE、PPの順に各直線が交差することなく増加しているので、この実施例1〜3の直線のグラフは、該固有の熱伝導率の値、PEの0.224、PETの0.217、PPの0.204の値の大きさがその直線の勾配に影響を与えているのかを検討するために、また、成形されたガラス配合率40〜70重量%のガラス含有ブロー容器が、樹脂100%ブロー容器と比べて前記固有の熱伝導率がどの程度の割合で増加しているかを理解しやすくするために、実施例1〜3のガラス含有ブロー容器の熱伝導率を樹脂100%ブロー容器の固有の熱伝導率で割ってその値を求めた。その計算により得られた値を表29に示す。
【表29】
【0111】
ここで、上記実施例1〜3のガラス含有ブロー容器の熱伝導率を樹脂100%ブロー容器の固有の熱伝導率で割った値を、「熱伝導率改善指標」と定義する。
例えば、PEを例にその計算の仕方を説明すれば、前記樹脂100%ブロー容器が有する固有の熱伝導率が0.224であるから、ガラス配合率40重量%の計算は0.321/0.224=1.433であり、以下同様に、50重量%の計算は0.350/0.224=1.563であり、60重量%の計算は0.370/0.224=1.652であり、70重量%の計算は0.400/0.224=1.786である。
【0112】
PE樹脂100%ブロー容器の熱伝導率と比べて、PEガラス配合率40重量%のブロー容器のそれは1.43倍に、そして、ガラス配合率50重量%のそれは1.56倍に、ガラス配合率60重量%のそれは1.65倍に、ガラス配合率70重量%のそれは1.79倍に増加することを示している(小数点第3位以下を四捨五入)。以下PP及びPETも樹脂100%ブロー容器の熱伝導率と比べて、ガラス配合率の増加に伴って増加することは同様である。
【0113】
図13はガラス配合率と前記熱伝導率改善指標の関係を示したグラフである。
表29に示した比較例1〜3及び実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のガラス配合率(重量%)をx軸に、熱伝導率改善指標をy軸にプロットして得られた5点を基にして近似式を求めた結果、直線の近似式が得られた。
この直線の近似式のグラフは、前記熱伝導率改善指標がガラス配合率の増加に伴って該直線の近似式に沿って増加することを示している。
【0114】
次に、上記熱伝導率改善指標の必要な値の決定の仕方、そして、ガラス配合率の必要量の決定の仕方について説明する。
熱伝導率改善指標の必要な値及びガラス配合率の必要量は、下記の式(ニ)〜(へ)で記述される直線に沿って増加することを示している。
xはガラス配合率の必要量(40≦x≦70)を、yは熱伝導率改善指標を示している。
y=0.0145x+1.0101 (ニ)
y=0.0115x+0.9931 (ホ)
y=0.0111x+0.9996 (へ)
【0115】
PETの直線の近似式(ニ)はy=0.0145x+1.0101であり、PPの直線の近似式(ホ)はy=0.0115x+0.9931あり、PEの直線の近似式(へ)はy=0.0111x+0.9996である。
【0116】
この熱伝導率改善指標の最大値及び最小値は、製造する製品に要求される表面硬度が、樹脂100%ブロー容器の熱伝導率に対して、その熱伝導率を改善できる最小値と最大値を示すことで、熱伝導率の改善ができる範囲を示す指標としての機能を有している。熱伝導率改善指標は1.43〜1.94であるので、例えば、樹脂100%ブロー容器に対して熱伝導率を最小で1.43倍、最大で1.94倍まで改善できることが容易に理解でき、その改善指標を用いることで熱伝導率改善指標の必要な値及びガラス配合率の必要量が容易に決定できる。
【0117】
ところで、上記したように、ロックウェル硬度改善指標の直線の近似式である式(イ)〜(ハ)は、全ての実験データから得られた計算値を含まないので、該式(イ)〜(ハ)が全ての計算値を含むための範囲を求めて新たな式を求めたが、それと同様な手順で計算して、全ての実験データから得られた計算値を含む新たな熱伝導率改善指標の式を求めた。例えば、図14のPEのグラフ(式(ニ))を例に取れば、ガラス配合率50重量%の実験データから得られた計算値は式(ニ)から上に一番離れており、ガラス配合率40重量%のその計算値は式(ニ)から下に一番離れているので、樹脂100%ブロー容器の改善指標の1とガラス配合率50重量%の改善指標の1.563を通る直線式を求めると、y=0.011x+1で、樹脂100%ブロー容器の改善指標の1とガラス配合率40重量%の改善指標の1.433を通る直線式を求めると、y=0.011x+1であった。なお、計算して得た式の勾配の値は小数点以下4位を四捨五入して求めた。
【0118】
従って、下記の式(6)で記述される範囲には、PEの改善指標の全ての計算値が含まれることが分かる。同様にしてPETの改善指標の式(4−1)及び(4−2)、PPの改善指標の式(5−1)及び(5−2)が求められた。
その求めたPETの改善指標の式は(4−1)及び(4−2)に、PPの改善指標の式は(5−1)及び(5−2)に、PEの改善指標の式は(6)に示す通りである。
y=0.015x+1 (4−1)
y=0.014x+1 (4−2)
y=0.012x+1 (5−1)
y=0.011x+1 (5−2)
y=0.011x+1 (6)
上記式で記述される範囲には、PET、PP及びPEの改善指標の全ての計算値が含まれている。
【0119】
ガラス配合率と熱伝導率改善指標の関係を示す上記式(4−1)〜(6)は、樹脂100%ブロー容器と比べて、ガラス配合率によりガラス含有ブロー容器の熱伝導率をどの程度の割合まで増加できて改善できるかを示すもので、また、事前に熱伝導率が決められている場合には、ガラス配合率の必要量を決定できるものである。
【0120】
例えば、PE45重量%のブロー容器成形を製造する場合には、上記式(6)のxに45を代入してyを計算して求めれば、1.50が得られる。従って、PEのガラス配合率45重量%のガラス含有成形用ペレットを用いて製品を製造すれば、樹脂100%ブロー容器の1.50倍の熱伝導率の製品が得られることが製造する前に決定できる。次に、PE100%の製品に対して1.6倍の熱伝導率が要求される場合には、上記式(6)のyに1.6を代入してxを計算して求めれば、54.5が得られる。従って、PEのガラス配合率54.5重量%のガラス含有成形用ペレットを用いて製品を製造すれば、樹脂100%ブロー容器の1.6倍の熱伝導率の製品が得られることが製造する前に決定できる。
【0121】
従って、PE、PET及びPPのガラス配合率40〜70重量%のガラス含有ブロー容器の熱伝導率は、樹脂100%ブロー容器のそれの約1.44〜1.77倍の値を示すことから、ブロー容器を液体用の容器に用いれば、その液体用容器が従来の樹脂100%ブロー容器の液体用容器より外気の温度を1.4〜2倍の速さで液体に伝達させる特性を備えているので、例えば、冷蔵庫用の製氷器、製氷装置に水を供給する給水容器や、加温庫用の容器等の製品を製造することで、容器中の液体を急速に冷却又は加温することが可能となった。
【0122】
(ロックウェル硬度)
つぎに、樹脂100%ブロー容器である比較例1〜3(表26のガラス配合率「0」の欄が相当する。)のロックウェル硬度、及び、実施例1〜3のガラス配合率40、50、60及び70重量%のブロー容器の有するロックウェル硬度の測定結果を以下の表26に示す。比較例1〜3である樹脂100%ブロー容器のロックウェル硬度は、樹脂100%ブロー容器であるので表26の「0」の欄にその値が示されている。
【表17】
【0123】
表17に示した比較例1〜3及び実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のガラス配合率(重量%)をx軸に、ロックウェル硬度をy軸にプロットして得られた5点を基にして近似式を求めた結果、直線の近似式が得られた。
図14のグラフは上記直線の近似式である。そして、図14に示す印はガラス含有ブロー容器の種類を識別するもので、◇印はPE、同様に、△印はPET、□印はPPである。
【0124】
図14は実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のロックウェル硬度が樹脂100%ブロー容器の有するロックウェル硬度と比べて、ガラス配合率の増加に伴って直線に沿ってロックウェル硬度が増加していることを示している。このことは、容器等の製品として前記ガラス含有成形用ペレットを用いて成形すれば、ガラス配合率の増加に比例して表面が傷付きにくい製品が製造できることを意味している。例えば、表面が傷付きにくい製品を必要としているものとして、食品容器、化粧品容器等が挙げられる。
【0125】
図14の直線の近似式で表した実施例1〜3のグラフは、樹脂100%ブロー容器の固有のロックウェル硬度が大きい、PP、PET、PEの順に各直線が交差することなく増加しているので、この実施例1〜3の直線のグラフは、該固有のロックウェル硬度の値、PPの80、PETの68、PEの40の値の大きさがその直線の勾配に影響を与えているのかを検討するために、また、成形されたガラス配合率40〜70重量%のガラス含有ブロー容器が、樹脂100%ブロー容器と比べて前記固有のロックウェル硬度がどの程度の割合で増加しているかを理解しやすくするために、実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のロックウェル硬度を樹脂100%ブロー容器の固有のロックウェル硬度で割ってその値を求めた。その計算により得られた値を表18に示す。
【表18】
【0126】
ここで、上記実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のロックウェル硬度を樹脂100%ブロー容器の固有のロックウェル硬度で割った値を、「ロックウェル硬度改善指標」と定義する。
例えば、PEを例にその計算の仕方を説明すれば、前記樹脂100%ブロー容器が有する固有のロックウェル硬度が40であるから、ガラス配合率40重量%の計算は82/40=2.05であり、以下同様に、50重量%の計算は91/40=2.28であり、60重量%の計算は100/40=2.50であり、70重量%の計算は111/40=2.78である。
【0127】
PE樹脂100%ブロー容器のロックウェル硬度と比べて、PEガラス配合率40重量%のブロー容器のそれは2.05倍に、そして、ガラス配合率50重量%のそれは2.28倍に、ガラス配合率60重量%のそれは2.50倍に、ガラス配合率70重量%のそれは2.78倍に増加することを示している。以下同様に、PP樹脂100%ブロー容器のロックウェル硬度と比べて、PPガラス配合率40重量%のブロー容器のそれは1.73倍に、そして、ガラス配合率50重量%のそれは1.90倍に、ガラス配合率60重量%のそれは2.13倍に、ガラス配合率70重量%のそれは2.25倍に増加すること、PET樹脂100%ブロー容器のロックウェル硬度と比べて、PETガラス配合率40重量%のブロー容器のそれは1.84倍に、そして、ガラス配合率50重量%のそれは2.01倍に、ガラス配合率60重量%のそれは2.32倍に、ガラス配合率70重量%のそれは2.54倍に増加することを示している。
【0128】
図15はガラス配合率とロックウェル硬度改善指標の関係を示したグラフである。
表18に示した比較例1〜3及び実施例1〜3のガラス含有ブロー容器のガラス配合率(重量%)をx軸に、ロックウェル硬度改善指標をy軸にプロットして得られた5点を基にして近似式を求めた結果、直線の近似式が得られた。
この直線の近似式のグラフは、前記ロックウェル硬度改善指標がガラス配合率の増加に伴って該直線の近似式に沿って増加すること、そして、その直線の近似式の勾配は、PPの直線の近似式が最も大きく、PETのそれが次に大きく、PEのそれが最も小さいことを示している。このことは、図15のグラフでは、実施例1〜3を対比すればPPのガラス含有ブロー容器成形のロックウェル硬度が最も大きく、PEのそれが最も小さいが、図15のグラフでは、上記したようにPEの勾配が最も大きく、PPのそれが最も小さく、図14のグラフの結果と逆になっていることが判る。
【0129】
比較例1〜3のガラス配合率0重量%(PE、PP及びPET100%)のブロー容器は、ロックウェル硬度改善指標が1であるので、ガラス配合率の増加に伴って、ガラス含有ブロー容器が樹脂100%ブロー容器と比べて、どの程度の割合でロックウェル硬度が増加しているか理解できる。換言すれば、図15のロックウェル硬度改善指標を示すグラフは、樹脂100%ブロー容器と比べてガラス配合率をどの程度まで増加させれば、製造する製品に要求される表面硬度が得られるかを示すもので、ロックウェル硬度改善指標の必要な値が容易に決定できる。逆に、製造する製品に要求される表面硬度が決められている場合には、前記グラフはその決められている表面硬度から、ガラス含有成形用ペレットの必要なガラス配合率を示すもので、ガラス配合率の必要量が容易に決定できる。
【0130】
次に、上記ロックウェル硬度改善指標の必要な値の決定の仕方、そして、ガラス配合率の必要量の決定の仕方について説明する。
PEの直線の近似式はy=0.0253x+1.0105であり、PETの直線の近似式はy=0.0219x+0.9797であり、PPの直線の近似式はy=0.0182x+1.0025である。PEの直線の近似式の勾配は0.0253で、PPのそれは0.0182であり、その両者の勾配の値を足して2で割った値は、0.0218である。この値はPETの直線の近似式の勾配の値、0.0219と近似しているから、PETの直線の近似式は両者の中間の位置にあることが分かる。
ロックウェル硬度改善指標の必要な値及びガラス配合率の必要量は、下記の式(ト)〜(リ)で記述される直線に沿って増加することを示している。
xはガラス配合率の必要量(40≦x≦70)を、yはロックウェル硬度改善指標を示している。
y=0.0253x+1.0105 (ト)
y=0.0219x+0.9797 (チ)
y=0.0182x+1.0025 (リ)
【0131】
上記の式(ト)〜(リ)は表18及び図15のグラフから分かるように、ガラス含有ブロー容器のロックウェル硬度改善指標は、ガラス配合率40重量%の時に最小値が1.73であり、ガラス配合率70重量%の時に最大値が2.78である。このロックウェル硬度改善指標の最大値及び最小値は、製造する製品に要求される表面硬度が、樹脂100%ブロー容器と比べて最小で1.73倍、最大で2.78倍の範囲で選択できることを示すもので、樹脂100%ブロー容器の表面硬度に対して、その表面硬度を改善できる最小値と最大値を示すことで、表面硬度の改善ができる範囲を示す指標としての機能を有している。それ故に、この物性の改善できる範囲を示す指標を「改善指標」と定義する。従って、ロックウェル硬度改善指標はロックウェル硬度改善指標の最大値から最小値である1.73〜2.78の範囲にあるので、例えば、樹脂100%ブロー容器に対してロックウェル硬度を最小で1.73倍、最大で2.78倍まで改善できることが容易に理解でき、その改善指標を用いることでロックウェル硬度改善指標の必要な値及びガラス配合率の必要量が容易に決定できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂中にガラス粉末を含むガラス含有成形用ペレットを用いてブロー成形法で成形されてなるガラス含有ブロー容器であって、
前記ガラス含有成形用ペレットが前記熱可塑性樹脂であるポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群から選ばれる一種の樹脂中に、前記ガラス粉末である中実の球状ガラス粉末をガラス配合率40〜70重量%の範囲で含有しており、該ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有ブロー容器の焼却エネルギー改善指標が以下の式(1)に沿って漸減して改善されることを特徴とするガラス含有ブロー容器。
y=−0.01x+1 (1)
(x:ガラス配合率、y:焼却エネルギー改善指標)
【請求項2】
前記ガラス配合率の増加に伴って、焼却エネルギー改善指標が0.60から0.36に漸減して改善されることを特徴とする請求項1に記載のガラス含有ブロー容器。
【請求項3】
熱可塑性樹脂中にガラス粉末を含むガラス含有成形用ペレットを用いてブロー成形法で成形されてなるガラス含有ブロー容器であって、
前記熱可塑性樹脂のペレットがポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群から選ばれる一種からなるペレットであり、前記ガラス粉末が球状の形状で中実であり、該熱可塑性樹脂中にガラス配合率40〜70重量%の範囲で配合されており、該ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有成形用ペレットのメルトフローレート低下割合が以下の式(2)及び(3)に沿って漸減することを特徴とするガラス含有ブロー容器。
y=−1.34x2−0.08x+1.00 (2)
y=−1.31x2−0.22x+1.00 (3)
(x:ガラス配合率、y:メルトフローレート低下割合)
【請求項4】
前記ガラス配合率の増加に伴って、前記メルトフローレート低下割合が0.75から0.20まで漸減することを特徴とする請求項3に記載のガラス含有成形用ペレット。
【請求項5】
前記ガラス含有ブロー容器がボトル、チューブ、カップ及び/又はトレーの形状を有することを特徴とする請求項1又は3に記載のガラス含有ブロー容器。
【請求項6】
前記ガラス含有ブロー容器の熱伝導率が以下の式(4)及び(5)で記述される範囲で漸増して改善されることを特徴とする請求項1又は3に記載のガラス含有ブロー容器。
y=0.011x+1 (4)
y=0.012x+1 (5)
(x:ガラス配合率 y:熱伝導率改善指標)
【請求項7】
前記ガラス含有ブロー容器のロックウェル硬度の、ポリエチレン樹脂に対する改善指標が以下の式(6−1)及び(6−2)で、前記ポリプロピレン樹脂に対する改善指標が以下の式(7−1)及び(7−2)で記述される範囲で漸増して改善されることを特徴とする請求項1又は3に記載のガラス含有ブロー容器。
y=0.026x+1 (6−1)
y=0.025x+1 (6−2)
y=0.019x+1 (7−1)
y=0.018x+1 (7−2)
(x:ガラス配合率 y:ロックウェル硬度改善指標)
【請求項8】
前記ガラス含有ブロー容器がボトル、チューブ、カップ及び/又はトレーの形状を有することを特徴とする請求項6又は7に記載のガラス含有ブロー容器。
【請求項9】
前記ボトルが飲料容器、化粧品容器、シャンプー容器、リンス容器、ボディーソープ容器であり、前記チューブが化粧品容器、医薬品容器であり、前記カップが食品容器であり、前記トレーが弁当容器、生鮮食品容器であることを特徴とする請求項1、3、6又は7に記載のガラス含有ブロー容器。
【請求項1】
熱可塑性樹脂中にガラス粉末を含むガラス含有成形用ペレットを用いてブロー成形法で成形されてなるガラス含有ブロー容器であって、
前記ガラス含有成形用ペレットが前記熱可塑性樹脂であるポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群から選ばれる一種の樹脂中に、前記ガラス粉末である中実の球状ガラス粉末をガラス配合率40〜70重量%の範囲で含有しており、該ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有ブロー容器の焼却エネルギー改善指標が以下の式(1)に沿って漸減して改善されることを特徴とするガラス含有ブロー容器。
y=−0.01x+1 (1)
(x:ガラス配合率、y:焼却エネルギー改善指標)
【請求項2】
前記ガラス配合率の増加に伴って、焼却エネルギー改善指標が0.60から0.36に漸減して改善されることを特徴とする請求項1に記載のガラス含有ブロー容器。
【請求項3】
熱可塑性樹脂中にガラス粉末を含むガラス含有成形用ペレットを用いてブロー成形法で成形されてなるガラス含有ブロー容器であって、
前記熱可塑性樹脂のペレットがポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群から選ばれる一種からなるペレットであり、前記ガラス粉末が球状の形状で中実であり、該熱可塑性樹脂中にガラス配合率40〜70重量%の範囲で配合されており、該ガラス配合率の増加に伴って、前記ガラス含有成形用ペレットのメルトフローレート低下割合が以下の式(2)及び(3)に沿って漸減することを特徴とするガラス含有ブロー容器。
y=−1.34x2−0.08x+1.00 (2)
y=−1.31x2−0.22x+1.00 (3)
(x:ガラス配合率、y:メルトフローレート低下割合)
【請求項4】
前記ガラス配合率の増加に伴って、前記メルトフローレート低下割合が0.75から0.20まで漸減することを特徴とする請求項3に記載のガラス含有成形用ペレット。
【請求項5】
前記ガラス含有ブロー容器がボトル、チューブ、カップ及び/又はトレーの形状を有することを特徴とする請求項1又は3に記載のガラス含有ブロー容器。
【請求項6】
前記ガラス含有ブロー容器の熱伝導率が以下の式(4)及び(5)で記述される範囲で漸増して改善されることを特徴とする請求項1又は3に記載のガラス含有ブロー容器。
y=0.011x+1 (4)
y=0.012x+1 (5)
(x:ガラス配合率 y:熱伝導率改善指標)
【請求項7】
前記ガラス含有ブロー容器のロックウェル硬度の、ポリエチレン樹脂に対する改善指標が以下の式(6−1)及び(6−2)で、前記ポリプロピレン樹脂に対する改善指標が以下の式(7−1)及び(7−2)で記述される範囲で漸増して改善されることを特徴とする請求項1又は3に記載のガラス含有ブロー容器。
y=0.026x+1 (6−1)
y=0.025x+1 (6−2)
y=0.019x+1 (7−1)
y=0.018x+1 (7−2)
(x:ガラス配合率 y:ロックウェル硬度改善指標)
【請求項8】
前記ガラス含有ブロー容器がボトル、チューブ、カップ及び/又はトレーの形状を有することを特徴とする請求項6又は7に記載のガラス含有ブロー容器。
【請求項9】
前記ボトルが飲料容器、化粧品容器、シャンプー容器、リンス容器、ボディーソープ容器であり、前記チューブが化粧品容器、医薬品容器であり、前記カップが食品容器であり、前記トレーが弁当容器、生鮮食品容器であることを特徴とする請求項1、3、6又は7に記載のガラス含有ブロー容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−240880(P2010−240880A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89246(P2009−89246)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【特許番号】特許第4542603号(P4542603)
【特許公報発行日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000212005)
【出願人】(595118010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【特許番号】特許第4542603号(P4542603)
【特許公報発行日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000212005)
【出願人】(595118010)
【Fターム(参考)】
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