説明

ガラス格子耐震壁

【課題】建築物の開放性を確保し、耐震補強壁としての粘り強さを確保し、かつ、組み立てがしやすくする。
【解決手段】外側の縦枠材2、及び縦横の格子材31、3は、米松であり、強化ガラス1を囲んでいる。耐震補強壁の縦枠材2及び格子材31は、桁4と土台5に構造金具によって固定されている。格子材31、3の強化ガラス1の取付部には、押え縁10、11が対向して設けてあり、この間にガラス1が挟み込まれている。強化ガラス1は、樹脂層を介して格子材31、3に固定してある。採光にあまり影響のない壁上下部には、構造用合板60、61を固定して強度を増している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主に木造建築物のガラスを使用した耐震壁に関する。
【背景技術】
【0002】
耐震補強のために、耐震壁を設けると、採光面が限定され、建物の開放性が損なわれてしまい、快適な住空間を形成することができない。開放性を損なわずに水平耐力要素を付加することが重要である。
【0003】
耐震補強壁として透明ガラスを用い開放性を確保できるようにすることが提案されているが、比較的大きなガラスを枠体で支持するものであり、強化ガラスであっても、ガラスは脆性材料であり、急激に力が作用したり、集中的に力が作用するとガラスが破壊されてしまうという問題があった。
【0004】
特許文献1には、古い和風住宅の開放性を維持しながら耐震補強をおこなうため、枠材にガラス板を取り付けた耐震補強パネルを、木造建築物の木部にビス止めする木造建築物の耐震補強構造が開示されている。地震力を受けて枠体が変形してガラスが破壊される前に、ビスが木部にめり込むことによってガラスに力が直接作用しないようにしてガラスの破壊を防止したものである。また、ガラスは、構造用シールを介して枠材に固定されており、地震力を受けてビスがめり込み降伏点に達し、ガラスが破壊される前に構造用シールが破断してガラスが破壊されないようにしてある。
【0005】
しかし、枠体が比較的大きく、ビスを正確に打ち込む必要があるが、施工精度がそれほど高くないため、耐震補強効果が設定通りに発揮できないことがあった。また、構造用シールとシリコンシーリングを介しているため、組み立てが面倒であった。
【特許文献1】特開平10−184030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、ガラスを用いた耐震補強壁において建築物の開放性を確保しつつ、粘り強さを発揮できるようにし、かつ、組み立てを容易にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの課題を解決するため、ガラスを用いた耐震補強壁において、ガラスを構造材として木製の格子枠で囲み、格子枠の変形に応じてガラスが格子枠にめり込むことができるようにしたものである。
格子枠として米松を使用し、格子枠に一対の押え縁を設け、押え縁の間の空間にガラスを挿通することによりガラスを格子枠に固定したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、格子枠にガラスを嵌め込んだ耐震補強壁は、採光性にすぐれ、建築空間に開放性を与え、しかも、剛性を向上できるので、耐震補強壁として有効である。
また、木枠とガラス板を用いた耐震補強壁により木造建築物の開放性を確保し、しかも、木製の部材を用いるので、意匠的にすぐれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1に示すように、耐震補強壁は、外側の縦枠材2は、105×105(mm)の米松であり、縦横の格子材31、3は、90×105(mm)の米松であり、強化ガラス1を囲んでいる。耐震補強壁は、桁4と土台5に構造金具等によって固定されている。木材は、格子枠が変形した際に米松が強化ガラスを食い込ませるのに適宜の硬さを有するものである。
【0010】
図2に示すように、格子材31、3の強化ガラス1の取付部には、押え縁10、11が対向して設けてあり、この間にガラス1が挟み込まれている。強化ガラス1は、3〜8mm程度のエポキシ系樹脂層12と2〜3mm程度のポリセタール樹脂層13を介して格子材31、3に固定してある。なお、ガラスはコーナー部に力を受けると弱いのでコーナー部には樹脂を充填しない。
樹脂層を設けずに、強化ガラスが変形時に直接木材に接触するようにしてもよい。
【0011】
縦枠材2は、土台5に図3(1)に示すように、固定金具20、21で固定されている。また、上部は、図3(2)に示すように、桁4に固定金具22、23で固定されている。採光にあまり影響しない壁の上部及び下部には、構造用合板60、61が固定してあり、耐震補強壁を強化している。
【0012】
格子材31、3は、縦枠材2、桁4及び土台5に短ほぞ差しで固定してある。格子材3と格子材31の交差部は、図4に示すように格子材31、3のそれぞれに切欠51を設けて組み立ててある。縦の格子材31に形成する切欠51は、交互に裏表に形成してあり、切欠51が同じ面に形成されないようにしてある。
【0013】
試験例
壁幅910mm、高さ2700mmのものを用いて強度を測定した。試験の際に加えた力及び測定方法は「木造軸組工法住宅の許容応力度設計法」に準じておこない、載荷方法はタイロッド式を採用した。材料の性状は表−1、接合金物は表−2に示すとおりである。
【0014】
【表1】

【0015】
接合部の特性値の算定は以下のとおりである。
試験体の短期基準剪断耐力P0は表−3に示したa〜dのうち最小値とした。短期許容剪断耐力Pa及び壁倍率は次式によって算定した。
【0016】
Pa=P0×α
0:短期基準剪断耐力、α:本評価ではα=1とする。
壁倍率=Pa×(1/1.96)×(1/L)
Pa:短期許容剪断耐力
1.96:壁倍率=1を算定する数値
L=壁の長さ
短期基準モーメントは木造軸組工法住宅の許容応力度設計に準じた算定を行った。(本試験においては1体のため、ばらつき係数を1とした。)
【0017】
【表2】

【0018】
表−3に示すように最大剪断耐力Pmaxは短期基準剪断耐力P0や短期許容剪断耐力Paよりも大きく、十分な耐震性を備えていることが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の耐震補強壁の正面図。
【図2】実施例の木枠とガラスの取り合いの詳細図。
【図3】実施例の土台及び桁への取付詳細図。
【図4】実施例の格子材の交差部の詳細図。
【図5】従来のガラスを使用した耐震補強の斜視図及び一部詳細。
【符号の説明】
【0020】
1 ガラス
2 縦枠材
3、31 格子材
4 桁
5 土台
10、11 押え縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材からなる格子枠にガラスを嵌め込んだ耐震補強壁であって、壁が変形した際にガラスが破壊せずに格子枠にめり込むようにした耐震壁。
【請求項2】
請求項1において、格子枠に一対の押え縁を設け、押え縁の間の空間にガラスを挿通することによりガラスを格子枠に固定してある耐震壁。
【請求項3】
請求項2において、ガラスと格子枠の間に樹脂が充填してある耐震壁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、格子枠の木材が米松である耐震壁。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかにおいて、壁の上部及び/または下部には、構造用合板を固定し強化してある耐震壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−31959(P2007−31959A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212772(P2005−212772)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(592040826)住友不動産株式会社 (94)
【Fターム(参考)】