説明

キズ欠点検査装置および方法

【課題】連続的に走行するシートに発生するキズ欠点を高精度に検査できる検査装置を提供する。
【解決手段】ライン状光線を照射する光照射手段と、前記ライン状光線の一部を受光する受光手段と、前記受光手段で受光した信号に応じてキズ欠点を検出する画像処理手段とを備え、かつ、前記光照射手段と前記受光手段とを同時に、シートと平行を維持した状態で回転させる回転手段を設けることを特徴とするシートにおけるキズ欠点検査装置、とすることにより、連続的に走行するシートに発生する欠点を高精度に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムに発生する全ての方向のキズ欠点を検出するための装置、及び前記フィルムに発生する前記欠点を検出する検査方法、及び前記検査方法を用いたフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムなどのシートを連続的に製造する工程において、シートにキズ欠点が発生する場合があり問題となっている。
【0003】
このキズ欠点の発生メカニズムとして、搬送ロールに異物が付着し、フィルム表面に異物が押し付けられることによりキズ欠点が発生する場合と、フィルムにかかる張力やフィルムの搬送速度が一定ではなく、フィルムと搬送ロールが擦れることによりキズ欠点が発生する場合が考えられる。
【0004】
そのため、キズ欠点の形状として、前者の場合は、点状あるいはフィルム流れ方向に長い形状であるのに対し、後者の場合は、フィルムと搬送ロールが擦れる方向により、フィルムの流れ方向に対して、あらゆる方向に長い形状のキズ欠点が発生する。
このように、キズ欠点はフィルムの搬送状態により、あらゆる角度に発生することが知られている。
【0005】
このキズ欠点はユーザーの加工工程で問題となるために、キズ欠点を持つフィルムが製品として出荷されることを避けなければならない。
【0006】
従来、このようなキズ欠点の検査を行う場合、搬送しているフィルムに対して、照明装置で光を照射し、フィルムにキズ欠点が存在する場合には、キズ欠点によって乱反射される散乱光をCCDカメラ等で撮像し、撮像された画像を画像処理することによって、キズ欠点を検出していた。
【0007】
このようなキズ欠点を検出する装置として、特許文献1の方法がある。
特許文献1の方法を、図2、図3を参照にして説明する。
特許文献1の方法は、走行している透過性フィルム11の片側表面から照明装置12により光を照射し、前記透過性フィルム11を透過した光をラインCCDカメラ13により検知して撮像し、画像処理装置14によって、前記ラインCCDカメラにより撮像され生成された画像データを画像処理することにより、前記透過性フィルム11のキズ欠点を検出することを特徴としている。
【0008】
また、特許文献の検査システムを前記透過性フィルム11の流れ方向から見た外観図を図3に示す。
【0009】
このように、前記照明装置12は複数の光軸がそれぞれ平行となって出射されることを特徴としており、フィルム流れ方向に発生したキズ欠点を高感度に検出することが可能である。
【0010】
また、別の方法として特許文献2の方法がある。
【0011】
特許文献2の方法を、図4を参照して説明する。
【0012】
特許文献2の方法は、連続して搬送されるシート21に対して、制御手段23で制御された光源24から光を照射し、前記シート21を透過あるいは反射した光を、前記制御手段23で制御された受光手段22で受光し、さらに、前記光源24は、光を照射する角度が異なる複数の発光源により、前記シート21に光を照射することを特徴としている。
【0013】
このように、光を照射する角度が異なる複数の発光源により前記シート21を照らすことにより、各受光手段と光源に特化した複数の欠点を検出することが可能となる。
【0014】
これをキズ欠点の検出に特化した光学系とすると、複数の形状のキズ欠点に対して高感度な検出が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−216148号公報
【特許文献2】特開2010−223613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1の方法は、照明装置12の長手方向に対して垂直な方向に発生したキズ欠点に対しては、高感度な検出が可能だが、それ以外の方向に関しては、検出感度が低下する。
【0017】
つまり、図5に示すように、同じ強度のキズ欠点17が発生した場合に、照明装置12から光を照射させた場合の散乱光15は、何れのキズ欠点の角度の場合も同じ強度の散乱光が発生する。しかし、ラインCCDカメラが受光する散乱光16はキズ欠点の角度によって異なり、キズ欠点の角度が照明装置12の長手方向と同じ角度に近づくほど少なくなる。
【0018】
このように、特許文献1の方法は、キズ欠点の発生角度によって検出感度が異なるという課題を有していた。
【0019】
またこの問題は特許文献2によって解消される。1つの光学系では、図5に示すように、検出感度が劣る角度のキズ欠点が必ず発生する。そのため、特許文献2に示すように、2つ以上の複数の光学系によりキズ欠点を検出することにより、ある角度のキズ欠点が発生した場合も、どれか1つの光学系では検出可能となる。しかし、このように複数の光学系を設置することは、検査器の設置スペースが増大するだけでなく、コストも大幅に増加するという問題点があった。
【0020】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、連続的に走行するシート表面を低スペース、低コストで高精度に検査できる検査装置、検査方法、及び該検査方法を用いたフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、以下である。
(1)光照射手段からライン状光線をシートの一方の面側に照射し、
前記シートにて反射されたライン状光線を、前記光照射手段と同じ面側に配設された受光手段で受光し、
前記受光手段で受光した信号に応じて、画像処理手段で前記シートのキズ欠点を検出し、
かつ、前記シートと平行を維持した状態で、前記光照射手段と前記受光手段とを相対的位置を保ったまま同時に回転させることを特徴とするシートにおけるキズ欠点検査方法。
(2)前記シートと平行を維持した状態で、前記光照射手段と前記受光手段とを同時に、
移動手段によって前記シートの幅方向に移動させることを特徴とする前記(1)に記載のシートにおけるキズ欠点検査方法。
(3)前記光照射手段と前記受光手段と前記回転手段とが、前記シートの幅方向に複数並んでいることを特徴とする前記(1)に記載のシートにおけるキズ欠点検査方法。
(4)450nmから550nmの波長の光を前記光照射手段から前記シートに照射することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のシートにおけるキズ欠点検査方法。
(5)10μm×10μm以上の受光素子を並列に並べた前記受光手段を使用することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のシートにおけるキズ欠点検査方法。
(6)前記シートの幅方向に対して、前記回転手段により−45度から45度までの90度回転させることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のシートにおけるキズ欠点検査方法。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載のシートにおけるキズ欠点検査方法によってシートのキズ欠点を検査し、シートを製造するシートの製造方法。
(8)ライン状光線を前記シートに対して照射する光照射手段と、前記シートで反射したライン状光線を受光する受光素子を並べた受光手段と、前記受光手段で受光した信号に応じて前記シートのキズ欠点を検出する画像処理手段とを備えたキズ欠点検査装置であって、前記光照射手段と前記受光手段とが固定され、前記光照射手段と前記受光手段との相対的位置を保ったまま同時に前記光照射手段と前記受光手段とを回転させる回転手段を有することを特徴とするシートにおけるキズ欠点検査装置。
(9)前記光照射手段と前記受光手段とを固定した前記回転手段を移動させる移動手段を備えたことを特徴とする前記(8)に記載のシートにおけるキズ欠点検査装置。
(10)前記光照射手段と前記受光手段とを固定した前記回転手段を複数並列されたことを特徴とする前記(8)に記載のシートにおけるキズ欠点検査装置。
(11)前記光照射手段の照射する光の波長は、450nmから550nmであることを特徴とする前記(8)〜(10)のいずれかに記載のシートにおけるキズ欠点検査装置。
(12)前記受光手段の並列に並べられた受光素子のサイズが10μm×10μm以上であることを特徴とする前記(8)〜(11)のいずれかに記載のシートにおけるキズ欠点検査装置。
(13)前記回転手段の回転する角度は、前記シートの幅方向に対して、−45度から45度までの90度であることを特徴とする前記(8)〜(12)のいずれかに記載のシートにおけるキズ欠点検査装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明の検査装置及び検査方法では、連続的に走行するシート表面に発生するキズ欠点を、高感度に検出することができる。特に、本発明は、検出対象を周期的に発生するキズ欠点とすることにより大幅なコスト削減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略図
【図2】特許文献1の発明の概略図
【図3】特許文献1の発明の別の角度から見た概略図
【図4】特許文献2の発明の概略図
【図5】フィルムでの光の散乱反射光量を示す図
【図6】散乱反射光の受光のための光照射手段と受光手段の位置関係を示す図
【図7】本発明の実施形態の1つの回転手段の上面図
【図8】キズ欠点の角度による検出感度の違いを表す図
【図9】光照射手段2と受光手段3を回転させた場合の検出感度を表す図
【図10】本発明のもう一つの実施の形態の一例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における光透過性フィルムの検査装置の図を示すものである。
【0025】
図1において、1は被検査体であるフィルム、2は光照射手段、3は受光手段、4は画像処理手段、5は前記光照射手段と前記受光手段を同時に、前記フィルムと平行を保ちながら回転することができる回転手段である。また、前記光照射手段、前記受光手段、前記回転手段は、前記フィルムの幅方向を抜けなく検査できるように、複数個設置されている。
【0026】
フィルム1としては、光を反射するものであれば、特に限定されないものの、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルムなどのような無色透明なフィルムが好適に用いられる。
【0027】
本発明の装置は、光照射手段2を有する。好ましくは、光照射手段2はフィルム1の一方の面側(面A)に配設され、フィルム1の面Aに対して光を照射する。
【0028】
また、光照射手段2は可視光領域の波長を照射する。また前記光照射手段2が照射する光の波長は、キズ欠点による散乱光成分を増加させるために、550nmより短い波長の光であることが好ましい。また、受光手段3の分光感度特性より、450nmより波長の短い光の受光量は減少する。そのため、前記光照射手段2が照射する光の波長は、450nmから550nmとすることがさらに好ましい。
【0029】
特定波長の単色光を照射する光照射手段としては、単一波長の光を照射するLEDや蛍光灯、ランプ前面にバンドパスフィルターを配設したハロゲンやメタルハライド照明を伝送ロッドや光ファイバから照射するものなどを用いることができる。また、光照射手段2の光照射部の形状は、後述する受光手段3の受光範囲が線状の形態が好適であるため、それにあわせて線状にすることが好ましく、受光手段3の視野幅方向と光照射手段3の長手方向が平行になるように光照射手段3を配置することが好ましい。
【0030】
本発明の装置は、前記フィルム1で反射された光に由来する光を受光する受光手段を有する。
【0031】
受光手段3は、フィルム1に対して光照射手段2と同じ面A側に配設され、光照射手段2から照射されてフィルム1によって反射された光を受光するように配設されている。
受光手段3は、フィルム1に発生したキズ欠点によって散乱反射された光を受光するように配設されることが好ましいのであり、光照射手段2から照射されフィルム1で正反射された光を受光することは好ましくない。ここで、フィルム1に発生したキズ欠点によって散乱反射された光を受光するためには、光照射手段2と受光手段3の位置関係が重要である。本位置関係を図6を用いて説明する。図6は、キズ欠点での散乱反射光を受光するための光照射手段2と受光手段3の位置関係を示す図である。図6に示すように、受光手段3は、光照射手段2で照射され、フィルム1で正反射された光を受光しないよう配設することが重要であり、フィルム1で正反射された光の光軸から角度θずらすことで実現できる。ここで、角度θは5°から30°の範囲が好ましい。
【0032】
受光手段3は、受光素子が1次元に配列されたラインセンサカメラや、受光素子を2次元に配列したエリアセンサカメラを用いることができ、受光手段3の視野幅方向が、光照射手段2の長手方向と平行になるように配設されている。
【0033】
受光手段3の受光素子のサイズは、大きいほど受光素子に入る光の量が増加し、キズ欠点による微小な散乱光を受光できるようになる。そのため、受光手段3の受光素子のサイズは10μm×10μm以上であることが好ましい。
【0034】
受光手段3は、モノクロやカラーのカメラを用いることができる。キズ欠点による散乱光の光量差を捉える場合はモノクロカメラでもよく、キズ欠点による散乱光の波長特性を捉える場合はカラーカメラを用いることができる。
【0035】
なお、受光手段3が受光する光とは、前記のように、フィルム1に発生したキズ欠点によって散乱反射された光に由来する光であることが重要である。
【0036】
本発明の装置は、光照射手段2と受光手段3を同時に、フィルム1面に対して平行に回転させる回転手段5を有する。ここで、回転手段5は、フィルム1面に対して、平行に回転することできる平面状の台であり、図7に示すように、受光手段3のフィルム1面に対する視野幅の中心部Oを軸に回転する。つまり、回転手段5に配設された光照射手段2のフィルム1面に対する光線と受光手段3のフィルム1面に対する視野幅も、フィルム1面に対して平行であり、フィルム1面に対する光照射手段2と受光手段3の設置位置関係は、回転手段5による回転角度によらず相対的位置が保たれるように配設されている。
【0037】
また、回転手段5は、サーボモータやステッピングモータを用いて回転することができるが、回転角度を高精度に制御する必要があるため、サーボモータを使用することが好ましい。
【0038】
また、回転手段の形状として、回転した際の半径をできるだけ小さくするため、円盤状とすることが好ましい。
【0039】
また、回転手段5は、回転する角度の領域が広いほど、検出可能な角度のキズ欠点が増加するため好ましい。しかし、フィルム1の幅方向に対する回転手段5の角度が増大するほど、1つの受光手段3によるキズ欠点の検査範囲が小さくなるため、図7に示すフィルム1の幅方向に対する角度φは、−45度から45度までの90度であることが好ましい。
【0040】
また、光照射手段2と受光手段3とこれらを回転させる回転手段5は、フィルム1の幅方向に対して複数並べることによって、フィルムの全幅を検査可能とする。
【0041】
また、本発明の装置は、受光手段が受光した光量の変化を検出することで、フィルム表面を検査する画像処理手段を有する。つまり受光手段3の出力信号は、画像処理手段4に接続されている。
【0042】
受光手段3からは、受光手段3が受光した光量に応じたアナログまたはデジタル信号が出力され、アナログ信号が出力される場合は、画像処理手段4内でデジタル信号に変換される。画像処理手段4はデジタル信号を検出して画像処理し、画像処理結果に基づいてフィルム1の表面のキズ欠点を検出する。
【0043】
次に、本発明によってフィルム1に発生するキズ欠点を検出する原理について説明する。
【0044】
本発明は、光照射手段2の照射する光をフィルム1に照射させ、反射させる。受光手段3は、フィルム1で正反射した光を受光しない位置に配設されているため、キズ欠点がフィルム1に発生していない場合は光を受光しない。しかし、フィルム1にキズ欠点が発生した場合は、キズ欠点による散乱光を受光手段3が受光することにより、キズ欠点を検出することができる。
【0045】
さらに、キズ欠点は発生する角度により検出感度が異なるため、回転手段5により一定時間ごとに回転させることにより、あらゆる角度のキズ欠点を検出することが可能になる。
【0046】
まず、キズ欠点の角度による検出感度の違いについて図8を用いて説明する。
【0047】
図8はフィルム1の幅方向に対するキズ欠点の角度が90°、45°、0°の時の受光手段3に受光される散乱光量の違いを示す図である。
【0048】
キズ欠点による散乱光は、フィルム1面において、キズ欠点の長手方向に対して垂直な方向に散乱光が多く発生する。
【0049】
そのため、図8(A)に示すフィルム1の幅方向に対するキズ欠点の角度が90°の場合、受光手段3に受光される散乱光は、キズ欠点による散乱光をaとした場合、
a・cos90°=0
となり、ほぼ受光手段3に受光されない。
【0050】
また、図8(B)に示すフィルム1の幅方向に対するキズ欠点の角度が45°の場合、受光手段3に受光される散乱光は、
a・cos45°=a/√2
となり、フィルム1の幅方向に対するキズ欠点の角度が小さくなるほど、受光手段3が受光する散乱光は増大し、キズ欠点の検出感度が高くなる。
さらに、図8(C)に示すフィルム1の幅方向に対するキズ欠点の角度が0°の場合、受光手段3に受光される散乱光は、
a・cos0°=a
となり、フィルム1の幅方向に対するキズ欠点の角度が0°の場合に、検出感度が最も高くなる。
【0051】
このように、フィルム1の幅方向に対するキズ欠点の角度によって、検出感度は大きく異なる。
【0052】
そのため、本装置では、前記のように、光照射手段2と受光手段3がフィルム1面に対して平行を保った状態で回転可能な回転手段5を設けている。そのため、図9に示すように、光照射手段2と受光手段3を45°回転させた場合に、フィルム1の幅方向に対する角度が45°のキズ欠点が発生した場合の受光手段3に受光される散乱光は、
a・cos45°=a/√2
となり、図8(A)に比べて検出感度が高くなる。
【0053】
このように、光照射手段2と受光手段3をフィルム1面に対して平行を保った状態で、回転させる回転手段5を設けることにより、全キズ欠点に対する検出感度を向上することができる。また、回転角度を−45度から45度までの90度とすることにより、全ての角度のキズ欠点に対する検出感度をa/√2以上とすることができるため、好ましい。
【0054】
つまり、ひとつの角度では検出することができないキズ欠点も別の角度から検出することができ、より検出感度の低いキズ欠点も検出することができる。
(実施の形態2)
フィルム1の幅が広い場合、光照射手段2と受光手段3とこれらを回転させる回転手段5が多数必要となってくる。また、回転手段5の回転角度領域を大きくした場合も、フィルム1の幅方向に抜けなく検査する場合も光照射手段2と受光手段3とこれらを回転させる回転手段5が多数必要となってくる。
【0055】
これにより、これらを実現しようとした場合、コストが大幅に増加する場合がある。
【0056】
そこで、図10のように、光照射手段2と受光手段3とこれらを回転させる回転手段5を1セットとし、これらを移動させる移動手段6を設けることよって、コストを削減することが可能となる。
【0057】
しかし、図10の実施形態では、フィルム1の全幅を同時に検査することができないため、フィルム1の全長に渡って周期的に発生するキズ欠点は検出することが可能であるが、突発的に発生するキズ欠点は検出することができない。このように、フィルム1の全長に渡って周期的に発生するキズ欠点のみを検出するためであれば、図10の実施形態とすることにより、コストを大幅に削減することが可能となる。
【0058】
続いて本発明の検査方法について説明する。
【0059】
本発明の検査方法とは、光照射手段2からライン状光線をフィルム1の面Aに照射する工程1、フィルム1にて反射されたライン状光線を、光照射手段2と同じ面A側に配設された受光手段3で受光する工程2、受光手段2で受光した信号に応じて、画像処理手段4でキズ欠点を検出する工程3と光照射手段2と受光手段3を一定時間ごとに回転手段5で回転させる工程4とを有することを特徴とする。
【0060】
本発明の検査方法は、光反射性フィルムに対して、上記工程1から4をこの順に適用した発明である。
【0061】
工程1では、受光手段3の分光感度特性とキズ欠点の散乱光を増加させることを考慮し、450nmから550nmの波長の光を光照射手段2からフィルム1に照射することが好ましい。
【0062】
工程2では、工程1で照射されてフィルム1で正反射された光を受光せず、キズ欠点による散乱光を、面A側で受光手段3により受光することが好ましい。また、キズ欠点による微小な散乱光も受光し、キズ欠点の検出感度を向上させるために10μm×10μm以上の受光素子を並列に並べた受光手段3を用いることが好ましい。
【0063】
工程3では、工程2で受光した光量の変化を検出して、フィルム1の表面を検査することが重要であり、このためには、前述の検出手段を用いる方法がある。
【0064】
工程4では、一定時間ごとに光照射手段2と受光手段3とこれらを回転させる回転手段5を同時にフィルム1面に対して平行に回転させることが好ましい。さらに、キズ欠点の検出感度と検査幅を考慮し、フィルム1の幅方向に対して、−45度から45度までの90度回転させることが好ましい。さらに、キズ欠点の発生角度によって検出感度が異なるために、1回の回転の角度が小さいほど、より検出感度の低いキズを検出できる。しかし、全方向のキズ欠点の検査が完了するまでの時間が長くなるため、回転手段5の1回の回転角度は10°から30°までが好ましい。
【0065】
また、1回の検査時間について、短かければ長周期欠点の検出ができず、長ければ全方向の検査を完了するまでの時間が長くなるため、1回の検査時間は、30秒から180秒までとすることが好ましい。
【0066】
また本発明のフィルムの製造方法は、フィルムの製造工程中に、前述の本発明の検査方法を適用することを特徴とする。つまり本発明のフィルムの製造方法の一例は、フィルムを製膜中に、前記工程1から工程4をこの順序で行うものである。本発明の製造方法により得られたフィルムは、製造過程においてキズ欠点を高精度に検出できているため、得られたフィルムからキズ欠点箇所を除去することが容易であり、またキズ欠点が検出された時点でフィルムの巻き取りを止めることで、キズ欠点の存在しないフィルムロールとすることもできる。
【0067】
なお本発明のフィルムの製造方法では、前述の検査方法をその工程中に有することが重要なのであり、押出工程、キャスト工程、延伸工程、コーティング工程などの他のフィルムの製造工程は、既知の方法を適用することができる。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
図1の配置に従った装置を用いて検査を実施した。フィルムとして、幅1000mm、厚み100μmのPETフィルムを用い、40m/minでフィルムを走行させた。さらに、光照射手段として、500nmから550nmの光を照射する直線型LED照明を用い、フィルム面とLED照明の為す角度が80°、フィルム面とLED照明との距離を150mmに設置した。
【0069】
また、受光手段として、モノクロラインセンサカメラを用い、フィルム面で発生したキズ欠点による散乱光を受光するように配設した。このとき、フィルム面とモノクロラインセンサカメラの受光軸の為す角度を75度とし、フィルム面とラインセンサカメラとの距離を200mmに設置した。
【0070】
また、LED照明とラインセンサカメラをフレームで一体化し、そのフレームをフィルム面と平行に回転面を配設し、回転面φ160mmの自動回転ステージに固定した。
【0071】
また、ラインセンサカメラの1台が検査するフィルム幅は、回転ステージが±45°の場合に100mmであるため、LED照明とラインセンサカメラとこれらを回転させる自動回転ステージを10セット用いた。
【0072】
さらに、回転ステージを−45°から45°まで、15°毎に1分ごとに検査することにより、フィルム面に発生した深さ300nm、長さ300μm以上の全方向のキズ欠点を検出することができた。
(実施例2)
実施例1の方法では、深さ300nm、長さ300μm以上の全方向のキズ欠点を検出することができるが、フィルム幅が広くなるに応じて、LED照明とラインセンサカメラと自動回転ステージが複数セット必要になり、コストが増加する。そのため、LED照明とラインセンサカメラと自動回転ステージを1セットとし、これらをフィルム幅方向に移動する自動移動ステージの上に設置し(図10に図示)、それ以外は実施例1と同様にした。
【0073】
移動方式は、フィルム幅方向へ1分毎に移動し、フィルム幅方向に移動する際は、自動回転ステージの角度は一定とし、全フィルム幅方向を移動後に、再度移動を開始する前に、角度を15°回転することとした。
【0074】
これにより、実施例1に比べて、コストを約1/5とすることができ、周期的に発生する全方向のキズ欠点を検出することができた。
(比較例)
特許文献1に記載の方法として、図2と同じ構成を有する装置を用いた。フィルムとして、幅1000mm、厚み100μmのPETフィルムを用い、40m/minでフィルムを走行させた。さらに、光照射手段として、PETフィルムに対して、プラスチック光ファイバを30°斜めに配列した照明装置をPETフィルムから150mm離れた位置に配設し、プラスチック光ファイバにハロゲン光源の光を入射した。受光手段として、モノクロラインセンサカメラを用い、フィルム面で発生したキズ欠点による散乱光を受光するように配設した。このとき、フィルム面と照明からの光軸の為す角度を75度とし、フィルム面とラインセンサカメラとの距離を200mmとした。
【0075】
特許文献1に記載の方法では、PETフィルムの流れ方向に平行に発生する、深さ300nm、長さ300μmのキズ欠点は検出することが可能であったが、PETフィルムの幅方向に平行に発生する、深さ300nm、長さ300μmのキズ欠点は検出することができなかった。
【符号の説明】
【0076】
1:フィルム
2:光照射手段
3:受光手段
4:画像処理装置
5:回転手段
6:移動手段
7:キズ欠点
8:キズ欠点による散乱光
9:光照射手段から照射され、フィルムで正反射された光の光軸
10:光照射手段から照射され、フィルム表面のキズ欠点により散乱された光の光軸
11:透過性フィルム
12:照明装置
13:ラインCCDカメラ
14:画像処理装置
15:キズ欠点による散乱光
21:シート
22:受光手段
23:制御手段
24:光源
25:反射用発光源
26:透過用発光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射手段からライン状光線をシートの一方の面側に照射し、
前記シートにて反射されたライン状光線を、前記光照射手段と同じ面側に配設された受光手段で受光し、
前記受光手段で受光した信号に応じて、画像処理手段で前記シートのキズ欠点を検出し、
かつ、前記シートと平行を維持した状態で、前記光照射手段と前記受光手段とを相対的位置を保ったまま同時に回転させることを特徴とするシートにおけるキズ欠点検査方法。
【請求項2】
前記シートと平行を維持した状態で、前記光照射手段と前記受光手段とを同時に、
移動手段によって前記シートの幅方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載のシートにおけるキズ欠点検査方法。
【請求項3】
前記光照射手段と前記受光手段と前記回転手段とが、前記シートの幅方向に複数並んでいることを特徴とする請求項1に記載のシートにおけるキズ欠点検査方法。
【請求項4】
450nmから550nmの波長の光を前記光照射手段から前記シートに照射することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシートにおけるキズ欠点検査方法。
【請求項5】
10μm×10μm以上の受光素子を並列に並べた前記受光手段を使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシートにおけるキズ欠点検査方法。
【請求項6】
前記シートの幅方向に対して、前記回転手段により−45度から45度までの90度回転させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のシートにおけるキズ欠点検査方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のシートにおけるキズ欠点検査方法によってシートのキズ欠点を検査し、シートを製造するシートの製造方法。
【請求項8】
ライン状光線を前記シートに対して照射する光照射手段と、前記シートで反射したライン状光線を受光する受光素子を並べた受光手段と、前記受光手段で受光した信号に応じて前記シートのキズ欠点を検出する画像処理手段とを備えたキズ欠点検査装置であって、前記光照射手段と前記受光手段とが固定され、前記光照射手段と前記受光手段との相対的位置を保ったまま同時に前記光照射手段と前記受光手段とを回転させる回転手段を有することを特徴とするシートにおけるキズ欠点検査装置。
【請求項9】
前記光照射手段と前記受光手段とを固定した前記回転手段を移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項8に記載のシートにおけるキズ欠点検査装置。
【請求項10】
前記光照射手段と前記受光手段とを固定した前記回転手段を複数並列されたことを特徴とする請求項8に記載のシートにおけるキズ欠点検査装置。
【請求項11】
前記光照射手段の照射する光の波長は、450nmから550nmであることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のシートにおけるキズ欠点検査装置。
【請求項12】
前記受光手段の並列に並べられた受光素子のサイズが10μm×10μm以上であることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載のシートにおけるキズ欠点検査装置。
【請求項13】
前記回転手段の回転する角度は、前記シートの幅方向に対して、−45度から45度までの90度であることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載のシートにおけるキズ欠点検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−53860(P2013−53860A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190346(P2011−190346)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】