説明

キャビンの窓開閉装置

【課題】視界性を低下させることがないキャビンの窓開閉装置を提供することを目的とする。
【解決手段】開閉可能なリヤガラス20を半開状態に保持可能な保持アーム25を備えるキャビンの窓開閉装置23であって、保持アーム25は、横フレーム22の長手方向に沿う揺動軸心X周りに揺動可能に支持されるとともに、その揺動軸心Xとは反対側の端部に、リヤガラス20と係合可能なハーフロックストライカ26を備え、ハーフロックストライカ26と半開状態のリヤガラス20とが係合する係合位置と、ハーフロックストライカ26と全閉状態のリヤガラス20とが係合しない非係合位置とに、揺動して切り換わるように構成され、ハーフロックストライカ26は、保持アーム25が非係合位置にあると、横フレーム22における保持アーム25の揺動軸心Xとは反対側に格納される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビンの窓開閉装置に関し、より詳細には、開閉窓を半開状態に保持可能なキャビンの窓開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フレームに揺動可能に支持されて開閉可能な開閉窓と、開閉窓を半開状態に保持可能な保持アームと、を備えるキャビンの窓開閉装置が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、窓開閉装置がリヤウインド(開閉窓)に備えられる。窓開閉装置は、下部フレーム(横フレーム)の上面に揺動可能に支持される保持アームを備える。保持アームは、その先端側にリヤウインドを半開状態でロックするハーフロックストライカ(係合部)が形成されるとともに、その基端側にリヤウインドを全閉状態でロックするフルロックストライカが形成される。保持アームの揺動軸心は、下部フレームの長手方向と直交する方向となる。このような構成により、保持アームが下部フレームの上面に沿って回動して、ハーフロックストライカとリヤウインドとが係合すると、リヤウインドが半開状態にロックされるとともに、フルロックストライカとリヤウインドとが係合すると、リヤウインドが全閉状態にロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−146781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、リヤウインドが全閉状態の場合でも、使用されないハーフロックストライカがフレームの上側にあるため、ハーフロックストライカが邪魔になって後方の視界性が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、視界性を低下させることがないキャビンの窓開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴は、開閉可能な開閉窓を半開状態に保持可能な保持アームを備えるキャビンの窓開閉装置であって、前記保持アームは、フレームにその長手方向に沿う揺動軸心周りに揺動可能に支持されるとともに、その揺動軸心とは反対側の端部に、前記開閉窓と係合可能な係合部を備え、前記係合部と半開状態の前記開閉窓とが係合する係合位置と、前記係合部と全閉状態の前記開閉窓とが係合しない非係合位置とに、揺動して切り換わるように構成され、前記係合部は、前記保持アームが非係合位置にあると、前記フレームにおける前記保持アームの揺動軸心とは反対側に格納される、点にある。
【0007】
本発明の第1特徴によると、係合部と全閉状態の開閉窓とが係合しない非係合位置に保持アームがあると、係合部が保持アームの揺動軸心とは反対側に位置し、保持アームがフレームに巻き付くような状態になる。これにより、係合部が視界外に格納されて、保持アームがコンパクトになるため、開閉窓が全閉状態の場合に係合部が邪魔にならず視界性を低下させることがない。
【0008】
本発明の第2特徴は、前記開閉窓の窓面に沿って回動可能に支持されるハンドルを備え、前記係合部は、略U字状に折り曲げられて形成され、折曲部と、前記折曲部を挟んで配置される一対の平板部と、を備え、前記開閉窓が前記保持アームによって半開状態に保持された状態で、前記ハンドルが回動操作されて、前記係合部の平板部が前記ハンドルと前記開閉窓とで挟み込まれることにより、前記開閉窓が半開状態に固定され、前記開閉窓を半開状態に固定する際に、前記ハンドルは、前記係合部の折曲部側から回動操作される、点にある。
【0009】
本発明の第2特徴によると、開閉窓を半開状態に固定する際に、ハンドルが係合部の折曲部の傾斜部分によって平板部に案内されるため、ハンドルを容易に回動操作することができる。
【0010】
本発明の第3特徴は、前記開閉窓の縁部には、弾性材で構成されるシール部材が設けられ、前記係合部の平板部が前記シール部材を介して前記ハンドルと前記開閉窓とで挟み込まれる、点にある。
【0011】
本発明の第3特徴によると、係合部がハンドルと開閉窓とで挟み込まれると、シール部材が弾性変形するため、シール部材の弾性変形による反力により、開閉窓を半開状態に強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】窓開閉装置を備えるトラクタを示す側面図。
【図2】キャビンフレームを示す斜視図。
【図3】キャビンフレームを示す正面図。
【図4】後支柱を示す側面断面図。
【図5】(a)開閉窓が全閉状態の場合の窓開閉装置を示す斜視図。(b)開閉窓が全閉状態の場合の窓開閉装置を示す側面断面図。
【図6】(a)開閉窓が半開状態の場合の窓開閉装置を示す斜視図。(b)開閉窓が半開状態の場合の窓開閉装置を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0014】
先ず、窓開閉装置23を備えるトラクタについて、図1から図4により説明する。
【0015】
図1に示すように、トラクタは、走行車体1を備えるとともに、走行車体1には、右及び左の前輪2並びに右及び左の後輪3が備えられる。走行車体1の前部には、ボンネット4が備えられるとともに、ボンネット4内には、エンジン5が備えられる。走行車体1の後部には、キャビン6が備えられるとともに、キャビン6には、ステアリングハンドル7及び運転席8が備えられる。
【0016】
また、エンジン5の下側部からは、右及び左の前フレーム9が前方に延出される。前フレーム9には、前輪2を支持する図示しない前間車軸ケースが備えられる。また、エンジン5の後部には、クラッチハウジング10、ミッションケース11、及び後輪3を支持する後車軸ケース12が連結される。ミッションケース11の後部には、右及び左のリフトアーム13並びにPTO軸14が備えられる。
【0017】
図1及び図2に示すように、キャビン6は、キャビンフレーム15を備える。キャビンフレーム15は、右及び左の前支柱16と、右及び左の後支柱17と、を備える、いわゆる四柱式とされる。キャビンフレーム15には、フロントガラス18、右及び左のサイドガラス19、本発明に係る「開閉窓」としてのリヤガラス20、及びルーフ21が取り付けられる。右及び左のサイドガラス19は、その後部が揺動可能に支持されて開閉可能とされる。また、リヤガラス20は、その上部が揺動可能に支持されて開閉可能とされる。リヤガラス20は、外側に揺動して開くとともに、内側に揺動して閉じる。また、右及び左の後支柱17の下部には、本発明に係る「フレーム」としての横フレーム22が取り付けられる。横フレーム22とリヤガラス20との間には、窓開閉装置23が備えられる。
【0018】
図3に示すように、前支柱16は、直線部16aと、円弧部16bと、を備える。直線部16aは、正面視にて外側に傾斜しながら上方に延びる直線状に形成される。円弧部16bは、直線部16aの上端部に連なり、外側に凸となるように湾曲する円弧状に形成される。直線部16aと円弧部16bとの接続点は、前支柱16の下部(前支柱16の上下中央よりも下側)に位置する。このような構成により、運転席8に着座する運転者の目の高さ付近での前支柱16の左右間の幅が広くなって、前方の視界性を向上させることができる。
【0019】
図4に示すように、後支柱17は、樹脂製の後支柱カバー24(ガーニッシュ)によって被覆される。後支柱カバー24には、樹脂製のフック24aが一体成形される。フック24aには、荷物袋や上着等が引っ掛けられる。フック24a及び後支柱カバー24は、上下対称形状に形成される。このような構成により、後支柱カバー24とフック24aとが樹脂で一体成形されるため、これらを安価に製造することができる。また、フック24a及び後支柱カバー24が上下対称形状であるため、フック24a付の後支柱カバー24を左右兼用することができる。
【0020】
次に、窓開閉装置23について、図5及び図6により説明する。
【0021】
図5及び図6に示すように、窓開閉装置23は、保持アーム25と、本発明に係る「係合部」としてのハーフロックストライカ26と、フルロックストライカ27と、ハンドル28と、を備える。
【0022】
保持アーム25は、横フレーム22の長手方向(左右方向)に沿う揺動軸心(横軸心)X周りに揺動可能に支持される。保持アーム25の揺動軸心Xは、横フレーム22の長手方向(左右方向)となる。横フレーム22上面には、保持アーム25を揺動可能に支持する右及び左の支持部29が設けられる。支持部29には、キャップ30が取り付けられる。保持アーム25は、側面視にて略L字状に形成され、短辺部25aと、長辺部25bと、を備える。短辺部25aの自由端は、右及び左の支持部29に揺動可能に支持される。短辺部25aの自由端側の縁部には、フルロックストライカ27との干渉を避けるための切欠部25cが形成される。また、長辺部25bの自由端には、ハーフロックストライカ26が設けられる。つまり、保持アーム25とハーフロックストライカ26とで、側面視にて略コ字状の部分を形成している。この略コ字状に形成された部分は、横フレーム22の形状(角パイプ形状)に沿う形状であり、横フレーム22を格納することができる。
【0023】
ハーフロックストライカ26は、略U字状に折り曲げられて形成され、折曲部26aと、折曲部26aを挟んで配置される一対の平板部26bと、を備える。ハーフロックストライカ26は、平板部26bの外側面が保持アーム26の長辺部25bに連結される。ハーフロックストライカ26は、折曲部26aが走行車体1の右方を向くように、換言すると、走行車体1の左方に開口するように設けられる。
【0024】
フルロックストライカ27は、横フレーム22上面にて右及び左の支持部29の左右間に設けられる。フルロックストライカ27は、略直方体状に形成される。
【0025】
ハンドル28は、リヤガラス20の窓面(ガラス面)に固定された基部28aに、軸心Z周りに回動可能に支持される。ハンドル28の軸心Zは、リヤガラス20の窓面(ガラス面)に直交する。ハンドル28の回動支点側の端部には、固定部28bが設けられる。
【0026】
次に、リヤガラス20を全閉状態と半開状態とに固定する方法について、図5及び図6により説明する。
【0027】
図5に示すように、保持アーム25が下方(図5(b)に示す矢印A)に揺動することにより、ハーフロックストライカ26と全閉状態のリヤガラス20とが係合しない非係合位置に切り換えられる。
【0028】
保持アーム25が非係合位置にある場合、保持アーム25の揺動軸心Xとは反対側にハーフロックストライカ26が位置し、保持アーム25が横フレーム22に巻き付くような状態になる。これにより、ハーフロックストライカ26が視界外(横フレーム22の下側)に格納されて、保持アーム25がコンパクトになるため、リヤガラス20が全閉状態の場合にハーフロックストライカ26が邪魔にならず視界性を低下させることがない。そして、ハンドル28が回動操作されて、固定部28bとフルロックストライカ27とが係合することにより、リヤガラス20が全閉状態に固定される。
【0029】
ここで、保持アーム25には、横フレーム22に当接可能なゴム31が備えられる。ゴム31は、長辺部25bに取り付けられる。リヤガラス20が全閉状態に固定された状態で、ゴム31と横フレーム22とが当接することにより、保持アーム25が振動するのを防止することができる。
【0030】
また、図6に示すように、保持アーム25が上方(図6(b)に示す矢印B)に揺動することにより、ハーフロックストライカ26と半開状態のリヤガラス20とが係合する係合位置に切り換えられる。
【0031】
保持アーム25が係合位置にある場合、リヤガラス20が保持アーム25によって半開状態に保持された状態で、ハンドル28が回動操作されて、ハーフロックストライカ26の平板部26bがハンドル28(固定部28b)とリヤガラス20とで挟み込まれることにより、リヤガラス20が半開状態に固定される。そして、リヤガラス20が半開状態に固定される際に、ハンドル28は、ハーフロックストライカ26の折曲部26a側から回動操作される。具体的には、ハンドル28を正面視にて反時計方向に回動操作すると、固定部28bが上方から下方に移動して折曲部26aの傾斜部分によって平板部26bに案内される。ここで、リヤガラス20の下側縁部には、弾性材で構成される本発明に係る「シール部材」としてのトリム20aが設けられており、ハーフロックストライカ26の平板部26bがトリム20aを介して、ハンドル28の固定部28bとリヤガラス20とで挟み込まれる。
【0032】
なお、本発明の実施形態は、以下のようなものであってもよい。
【0033】
本実施形態に係る窓開閉装置23は、四柱式のキャビン6に備えられるが、本発明に係る窓開閉装置は、六柱式のキャビンに備えられてもよい。例えば、六柱式のキャビンの場合は、本発明に係る窓開閉装置をサイドガラスに適用することもできる。この場合、具体的には、サイドガラスは、その前部が揺動可能に支持されて開閉可能とされるとともに、サイドガラスの後部と縦向き(上下向き)の縦フレームとの間に、窓開閉装置が備えられる。保持アームは、縦フレームの長手方向(上下方向)に沿う揺動軸心(縦軸心)周りに揺動可能に支持される。
【0034】
本実施形態に係る窓開閉装置23は、外側に揺動して開くリヤガラス20に適用されるが、本発明に係る窓開閉装置は、内側に揺動して開く開閉窓に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、開閉窓を半開状態に保持可能なキャビンの窓開閉装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
6 キャビン
20 リヤガラス(開閉窓)
20a トリム(シール部材)
22 横フレーム(フレーム)
23 窓開閉装置
25 保持アーム
26 ハーフロックストライカ(係合部)
26a 折曲部
26b 平板部
28 ハンドル
X 揺動軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な開閉窓を半開状態に保持可能な保持アームを備えるキャビンの窓開閉装置であって、
前記保持アームは、フレームにその長手方向に沿う揺動軸心周りに揺動可能に支持されるとともに、その揺動軸心とは反対側の端部に、前記開閉窓と係合可能な係合部を備え、前記係合部と半開状態の前記開閉窓とが係合する係合位置と、前記係合部と全閉状態の前記開閉窓とが係合しない非係合位置とに、揺動して切り換わるように構成され、
前記係合部は、前記保持アームが非係合位置にあると、前記フレームにおける前記保持アームの揺動軸心とは反対側に格納されるキャビンの窓開閉装置。
【請求項2】
前記開閉窓の窓面に沿って回動可能に支持されるハンドルを備え、
前記係合部は、略U字状に折り曲げられて形成され、折曲部と、前記折曲部を挟んで配置される一対の平板部と、を備え、
前記開閉窓が前記保持アームによって半開状態に保持された状態で、前記ハンドルが回動操作されて、前記係合部の平板部が前記ハンドルと前記開閉窓とで挟み込まれることにより、前記開閉窓が半開状態に固定され、
前記開閉窓を半開状態に固定する際に、前記ハンドルは、前記係合部の折曲部側から回動操作される請求項1に記載のキャビンの窓開閉装置。
【請求項3】
前記開閉窓の縁部には、弾性材で構成されるシール部材が設けられ、
前記係合部の平板部が前記シール部材を介して前記ハンドルと前記開閉窓とで挟み込まれる請求項2に記載のキャビンの窓開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−112947(P2013−112947A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257983(P2011−257983)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】