説明

キャリア付金属箔

【課題】プリント配線板に使用される片面若しくは2層以上の多層積層板又は極薄のコアレス基板の製造の際に用いられるキャリア付銅箔に関する。特に、積層板の製造時に使用するキャリア付き銅箔に係り、その目的とするのはプリント基板製造工程のハンドリング性向上及び歩留りアップによるコスト削減を実現することを課題とする。
【解決手段】キャリアAと金属箔Bが交互に重なり合う積層体であって、隣接するキャリアAが金属箔Bの全面を覆う面積を有し、かつ当該キャリアAの縁部の一部又は全部が金属箔Bからはみ出す構造を備えていることを特徴とするキャリア付金属箔。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板に使用される片面若しくは2層以上の多層積層板の製造において用いられるキャリア付銅箔に関する。
【背景技術】
【0002】
多層積層体の代表的な例は、プリント回路板である。一般に、プリント回路板は、合成樹脂板、ガラス板、ガラス不織布、紙などの基材に合成樹脂を含浸させて得た「プリプレグ(Prepreg)」と称する誘電材を、基本的な構成としている。
プリプレグ表面(表裏面)には電気伝導性を持った銅又は銅合金箔等のシートが接合されている。このように組み立てられた積層物を、一般にCCL(Copper Clad Laminate)材と呼んでいる。そしてCCL材料に、さらに銅箔をプリプレグを介して多層化したものを多層基板と呼んでいる。
前記銅又は銅合金箔の替りに、アルミニウム、ニッケル、亜鉛などの箔を使用する場合もある。これらの厚さは5〜200μm程度である。
【0003】
以上の工程において、銅箔の表面に異物が付着することを防ぐ目的及びハンドリング性を向上させる目的でキャリア付銅箔が用いられる。
例えば、従来知られているキャリア付銅箔(特許文献2、3、4参照)を使用した4層基板の製造工程においては、厚さが0.2〜2mmのプレス面が平滑なステンレス製のプレス板(通称、「鏡面板」と言う。)の上に、キャリアに剥離可能に接着された極薄銅箔をM面(粗面)が上になるように載置し、次に所定枚数のプリプレグ、次に内層コアと称するCCL材料に回路を形成したプリント回路基板、次にプリプレグ、次にキャリアに剥離可能に接着された極薄銅箔をM面(粗面)が下になるように載置し、これらを鏡面板の順に重ねることにより、1組の4層基板材料からなる組み立てユニットが完成する。
【0004】
以降は、これらのユニット(通称「ページ」)を2〜10回程度繰り返して重ね、プレス組立体(通称「ブック」)を構成する。次に、上記ブックをホットプレス機内の熱板上にセットし、所定の温度及び圧力で加圧成型することにより、積層板を製造する。4層以上の基板については、内層コアの層数を上げることで、同様の工程で生産することが可能である。
この際、使用されるキャリア付銅箔は、極薄銅箔とキャリアとが全面で接着しているため、積層後に作業者がこのキャリアを剥離するのに、かなりの力を必要とし手間がかかるという問題がある。また前記の通り、作業者はレイアップ(積層組み作業)の際に、銅箔のM面を上にして配置する、又はM面を下にして配置する作業を、交互に繰り返す必要があるため、作業効率が低下するという問題がある。さらに、銅箔及びキャリアが同寸法であるため、レイアップ時に銅箔1枚1枚を取り分けることが難しく、この点においても作業性が低下するという問題がある。
【0005】
また、特許文献1に記載されるような、アルミ板表裏に銅箔が接着された構造のCACを用いた回路基板の製造に際して、CAC材料の一部にアルミ板(JIS#5182)が使用されているが、このアルミ板の線膨張係数は、23.8×10−6/°Cと、基板の構成材料である銅箔(16.5×10−6/°C)及び重合後のプリプレグ(Cステージ:12〜18×10−6/°C)に比べて大きいことから、プレス前後の基板サイズが設計時のそれとは異なる現象(スケーリング変化)が起きる。これは面内方向の回路の位置ずれを招くことから、歩留り低下の一因となる問題がある。
【0006】
プリント配線板に使用される各種材料の線膨張係数(常温)は、下記の通りである。アルミニウム板の線膨張係数が、他に突出して大きいことが分かる。
・銅箔:16.5(×10-6/°C)
・SUS304:17.3×10-6/°C
・SUS301:15.2×10-6/°C
・SUS630:11.6×10-6/°C
・プリプレグ(Cステージ):12〜18×10-6/°C
・ アルミニウム板(JIS#5182):23.8×10−6/°C
本願発明には直接関係しないが、キャリア付極薄銅箔に関する例として次の文献がある(特許文献2、特許文献3、特許文献4)。
【特許文献1】特許第3100983号公報
【特許文献2】特開2005−161840号公報
【特許文献3】特開2007−186797号公報
【特許文献4】特開2001−140090号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これらの事象に鑑みてなされたものであり、プリント配線板に使用される片面若しくは2層以上の多層積層板又は極薄のコアレス基板の製造の際に用いられるキャリア付銅箔に関する。特に、積層板の製造時に使用するキャリア付き銅箔に係り、その目的とするのはプリント基板製造工程のハンドリング性向上及び歩留りアップによるコスト削減を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、銅箔を支持するキャリアを銅箔の面積よりも大きくすることにより、操作がし易くなるという知見を得た。
この知見に基づき、本発明は
1)キャリアAと金属箔Bが交互に重なり合う積層体であって、隣接するキャリアAが金属箔Bの全面を覆う面積を有し、かつ当該キャリアAの縁部の一部又は全部が金属箔Bからはみ出す構造を備えていることを特徴とするキャリア付金属箔
2)キャリアA及び金属箔Bが矩形であることを特徴とする上記1)記載のキャリア付金属箔
3)キャリアA及び金属箔Bの一辺が互いに整列していることを特徴とする上記2)記載のキャリア付金属箔
4)キャリアA及び金属箔Bの隣接する二辺又は対向する二辺が互いに整列していることを特徴とする請求項2記載のキャリア付金属箔、を提供する。
【0009】
また、本願発明は、
5)金属箔Bが、銅箔又は銅合金箔であることを特徴とする上記1)〜4)のいずか一項に記載のキャリア付金属箔
6)キャリアAが、銅箔又は銅合金箔であることを特徴とする上記1)〜5)のいずか一項に記載のキャリア付金属箔
7)キャリアA及び金属箔Bがそれぞれ光沢面(S面)を有し、それぞれ光沢面が互いに向き合うように積層されていることを特徴とする上記1)〜6)のいずか一項に記載のキャリア付金属箔
8)キャリアA及び金属箔Bがずれないように、接着剤、かしめ若しくは重ね折又は溶着により接合されていることを特徴とする上記1)〜7)のいずか一項に記載のキャリア付金属箔、を提供する。
【0010】
また、本発明は、
9)金属箔が、5〜120μmの厚みを有する電解箔であることを特徴とする上記1)〜8)のいずかに記載のキャリア付金属箔
10)金属箔が、5〜120μmの厚みを有する圧延箔であることを特徴とする請求項1)〜8)のいずかに記載のキャリア付金属箔
11)キャリアの熱膨張率が金属箔の熱膨張率の+10%、−30%以内であることを特徴とする上記1)〜10)のいずかに記載のキャリア付金属箔、を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のキャリア付金属箔は、キャリアAと金属箔Bが交互に重なり合う積層体で、隣接するキャリアAが金属箔Bの全面を覆う面積を有すると共に、当該キャリアAの縁部の一部又は全部が金属箔Bからはみ出す構造を備えていることが第一の特徴である。
これによって、積層された一組のキャリアAと金属箔Bと同種の別の組のキャリアAと金属箔Bとの区別が容易となり、作業者のハンドリング性が向上する。また、キャリアを銅箔から剥離する際にも、寸法が異なっている箇所(縁部又は辺部)があるので、剥離も容易となる。
また、キャリアAと金属箔Bの銅箔の光沢面相互を重ねることは任意ではあるが、このようにすると、作業者が銅箔のM面を下に置くとか上に置くという作業が必要としなくなるので作業効率は飛躍的に向上する。目的に応じてキャリアの光沢面若しくは粗面又は銅箔の光沢面若しくは粗面を任意に使用可能となるからである。
さらに、キャリアを銅箔にすることは任意であるが、キャリアを銅箔にした場合には線膨張係数が基板の構成材料である銅箔及び重合後のプリプレグと同等のレベルにあることから、回路の位置ずれを招くことがないので、不良品発生が少なくなり、歩留りを向上させることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
一般に、プリント回路板は、合成樹脂板、ガラス板、ガラス不織布、紙などの基材に合成樹脂を含浸させて得た「プリプレグ(Prepreg)」と称する誘電材を用い、このプリプレグを間に挟んで、電気伝導性を持った銅又は銅合金箔等のシートが接合されている。このように組み立てられた積層物を、一般にCCL(Copper Clad Laminate)材と呼んでいる。この一般的に用いられるCCL(Copper Clad Laminate)材の前記銅又は銅合金箔の替りに、アルミニウム、ニッケル、亜鉛などの箔を使用する場合もある。これらの厚さは5〜200μm程度である。
【0013】
本願発明のキャリア付金属箔を図1に示す。図1キャリア付金属箔においてキャリアをAで、金属箔をBで示す。構造的には、前記CCL材と類似しているが、本願発明のキャリア付金属箔は、キャリアAと金属箔Bとは最終的に分離されるもので、機械的に容易に剥離できる構造を有する。この点、CCL材は剥離させるものではないので、構造と機能は、全く異なるものである。
図1において、いずれの場合も、キャリアAが金属箔Bよりも面積が大きく、図1(a)の場合は、対向する対向する二辺が、金属箔Bよりもはみ出している構造を有し、図1(b)場合は、一辺が金属箔Bよりもはみ出している構造を有している。
はみ出し量は、全く任意であり、作業性に応じて適宜選択できる。およそ1cm〜10cm程度であるが、この範囲を超えて作製することは当然可能である。残りのキャリアAの辺縁は、金属箔Bと整列させておくことが望ましいが、それは製造の工程の目的に応じて、任意に調整又は選択することができる。
【0014】
これは、キャリアAが金属箔Bよりも面積を大きくしてキャリアAがはみ出した構造とし、積層された一組のキャリアAと金属箔Bと同種の別の組のキャリアAと金属箔Bとの区別を容易とし、またキャリアAと金属箔Bから剥離する際に、寸法が異なっている箇所(縁部又は辺部)を設けて剥離を容易とし、全体として作業者のハンドリング性を向上させることが本発明の第一義的目的であるからである。
通常、キャリアA及び金属箔Bは、矩形(長方形又は正方形)とする。この形状は製造上での取り扱いの便宜な形状とするので良く、任意であるが、一般には正方形又は長方形を用いる。
【0015】
また、重ね合わせる取り扱い上、キャリアA及び金属箔Bの一辺が互いに整列していること、あるいはキャリアA及び金属箔Bの隣接する二辺又は対向する二辺が互いに整列していることが望ましい。これらの選択も又任意である。
本発明のキャリア付金属箔は、金属箔Bが銅箔又は銅合金箔であること、またキャリアAが、銅箔又は銅合金箔であることが好ましい形態である。
本発明のキャリア付金属箔は、キャリアA及び金属箔Bがそれぞれ光沢面(S面)を有し、それぞれ光沢面が互いに向き合うように積層することが多くの利点があり、さらに望ましい形態である。
【0016】
図2に、キャリアAが金属箔Bよりも面積を大きくしてキャリアAがはみ出した構造とし、かつそれぞれ光沢面が互いに向き合うように積層したキャリア付金属箔を示す。図2において、上方の金属箔Bに、例えば銅箔を使用し上面をM面(粗面)とし、下面をS面(光沢面)とすると共に、下のキャリアAの上面をS面(光沢面)とし、下面をM面(粗面)とし、これらのS面(光沢面)相互を接着したものである。
【0017】
この場合、キャリアAと金属箔Bが同質材料の箔であれば、剥離後にキャリアAと金属箔Bのそれぞれ表裏の光沢面を、裏返しの操作をしなくても、使用することができる。これは作業性を著しく高めることが可能である。
従来、作業者はレイアップ(積層)の際に、銅箔のM面を上にして配置すること、さらにM面を下にして配置する作業を、交互に繰り返す必要があるため、作業効率が低下するという問題があったが、これが一挙に解決させることができる効果を有する。
【0018】
前記の通り、キャリアAが金属箔Bよりも面積を大きくしてキャリアAがはみ出した構造を有しているので、積層された一組のキャリアAと金属箔Bと同種の別の組のキャリアAと金属箔Bとの区別が容易となり、またキャリアを銅箔から剥離する際にも、寸法が異なっている箇所(縁部又は辺部)があるので、剥離も容易となる。これらを綜合すると、従来の工程に比べて、作業者のハンドリング性が著しく向上する効果があり、本願発明の顕著性が明らかである。
【0019】
キャリアA及び金属箔Bがずれないように、相互が接合されるが、接着剤、かしめ若しくは重ね折又は溶着により接合することが望ましい。この接合方法も任意であるが、上記の接合法が好ましい接合方法である。
図3に、キャリア(例えば銅箔)Aの光沢面を上にして、金属(銅)箔Bの光沢面を下にして、超音波により溶着させた例を示す。図3では、キャリア(例えば銅箔)Aの光沢面が一部右側に露出している。また金属(銅)箔Bの粗面(M面)が背に見えているのが分かる。
これにより、作業者はキャリアAと金属箔Bが固定されているので、レイアップ(積層)作業が効率的に改善される。また、全面が固定されているわけではないので、積層後の剥離(解体)作業も容易となる。
【0020】
金属箔Bとしては、銅又は銅合金箔が代表的なものであり、最も好ましいが、アルミニウム、ニッケル、亜鉛などの箔を使用することもできる。同様に、キャリアAは金属箔Bと同一の材質の箔を使用することができる。
銅又は銅合金箔の場合、5〜120μmの厚みを有する電解箔又は圧延箔を使用することができる。
【0021】
さらに、金属箔Bの熱膨張率が、金属箔Bの熱膨張率の+10%、−30%以内であることが望ましい。これによって、熱膨張差に起因する回路の位置ずれを効果的に防止することができ、不良品発生を減少させ、歩留りを向上させることができる。
一般に、キャリアAと金属箔Bとは、めっき又はエッチング等の工程前に機械的に剥がすことになるので、両者の剥離強度は、1g/cm以上、1kg/cm以下であることが望ましい。さらに、剥離面はキャリアAと金属Bとの境界であることが望ましく、両者の間で、相手材料の残渣が残ることは、除去工程が必要となり、工程の複雑化になるので、避けなければならない。
【実施例】
【0022】
次に、本発明の具体的な実施例を説明する。なお、以下の実施例は、本願発明の理解を容易にするためのものであり、これに制限されるものではない。すなわち、本願発明の技術思想に基づく変形、実施態様、他の例は、本願発明に含まれるものである。
【0023】
(実施例1)
樹脂材料として、エポキシ樹脂から作製したプリプレグを用いた。キャリア付金属箔上に、所望枚数のプリプレグ、次に内層コアと称する2層プリント回路基板、次にプリプレグ、さらにキャリア付金属箔を順に重ねることで1組の4層基板の材料組み立てユニットが完成させた。
次に、このユニット(通称「ページ」と言う)を10回程度繰り返し、プレス組み立て物(通称「ブック」と言う)を構成した。
【0024】
本発明においては、キャリア付金属箔の構造に特徴があり、キャリアAが金属箔Bよりもはみ出している構造を備えている。図4にこの構造を示す。
図4にキャリア付金属箔、所望枚数のプリプレグ、内層コアである2層プリント回路基板、プリプレグ、さらにキャリア付金属箔を順に重ね合わせた4層基板のユニット(通称、「ページ」)を形成する。鏡面板(中間板)を挟んで、さらに積み重ねた様子を示す(図4では2段)。通常、これを10回程度繰り返してプレス用の組立物(通称、「ブック」)を作製する。なお、図4に示す「×n」は、多層(n=1、2、3・・n)を意味する。
【0025】
これらの積層体は、殆どが整列しているが、前記ユニットの右側に突出している部分が本実施例の特徴点となる。これが金属箔Bからはみ出したキャリアAである。キャリアAに35μmの圧延銅合金箔を使用(この例では、銅65%、亜鉛35%の真鍮を使用)すると共に、金属箔Bには5μmの圧延銅箔を使用し、これらをエポキシ系接着剤を使用して接合させたものである。
接合箇所は図3に示す位置とした。なおキャリアAと金属箔Bの接合面は、キャリアAの光沢面(S面)と金属箔Bの粗面(M面)とした。
【0026】
この1組の4層基板の材料組み立てユニットを作製する段階で、キャリア付金属箔を反転する必要があったが、キャリアAが金属箔Bよりも面積を大きくしてキャリアAがはみ出した構造を有しているので、積層された一組のキャリアAと金属箔Bと同種の別の組のキャリアAと金属箔Bとの区別が容易となり、反転操作は容易であった。上記の通り、このプレス用の組立物を作製する前段階で、作業効率の大きな改善が図ることができた。
【0027】
その後、このブックをホットプレス機にセットし、所定の温度及び圧力で加圧成型することにより4層基板を製造することができた。なお、4層以上の基板についても、一般的には内層コアの層数を上げることで、同様の工程で生産することが可能である。
【0028】
このようにして作製された、積層板はキャリア樹脂と銅箔の間で、剥離分離させ、その後めっき工程及び又はエッチング工程経て回路を形成し、完成品とした。キャリアAで金属箔Bを全面に亘って支持しているので、前記積層中に、金属箔に皺の発生は全く認められなかった。
さらに、キャリアAに銅合金箔と金属箔Bに銅を使用しているので、線膨張係数が基板の構成材料である銅箔及び重合後のプリプレグと、殆ど同じレベルにあることから、回路の位置ずれを起こすことがなかった。したがって、従来のCACを使用する場合に比べて、不良品発生が少なくなり、歩留りを向上させることができた。
本実施例1においては、金属箔Bからはみ出したキャリアAの構造に特徴を有するものであり、この構造の利点は、金属箔B及びキャリアAの材質や厚さに影響を受けるものでないことは容易に理解できる。
【0029】
(実施例2)
実施例1と同様に、樹脂材料として、エポキシ樹脂から作製したプリプレグを用いた。キャリア付金属箔上に、所望枚数のプリプレグ、次に内層コアと称する2層プリント回路基板、次にプリプレグ、さらにキャリア付金属箔を順に重ねることで1組の4層基板の材料組み立てユニットを完成させた。
次に、このユニット(通称「ページ」と言う)を10回程度繰り返し、プレス組み立て物(通称「ブック」と言う)を構成した。
【0030】
本発明においては、キャリア付金属箔の構造に特徴があり、キャリアAが金属箔Bよりもはみ出している構造を備え、かつキャリアAが銅、金属箔Bに銅を使用した。図5にこの構造を示す。この図は図4と同一構造に見えるが、表示されていないだけで、後述するように、キャリアAと金属箔Bの使用材料と重ね合わせ形態が異なる。図の説明は実施例1と同様である。
図5にキャリア付金属箔、所望枚数のプリプレグ、内層コアである2層プリント回路基板、プリプレグ、さらにキャリア付金属箔を順に重ね合わせた4層基板のユニット(通称、「ページ」)を形成する。鏡面板(中間板)を挟んで、さらに積み重ねた様子を示す(図5では2段)。通常、これを10回程度繰り返してプレス用の組立物(通称、「ブック」)を作製する。なお、図5に示す「×n」は、多層(n=1、2、3・・n)を意味する。
【0031】
これらの積層体は、殆どが整列しているが、前記ユニットの右側に突出している。これが金属箔Bからはみ出したキャリアAである。さらにキャリアAに に圧延銅箔を使用すると共に、金属箔Bには電解銅箔を使用した。そして、それぞれの光沢面(S面)相互を超音波溶着法を使用して接合させた。接合箇所は図3に示す位置とした。上記の通り、このプレス用の組立物を作製する前段階で、さらに作業効率の大きな改善が図ることができた。
【0032】
その後、このブックをホットプレス機にセットし、所定の温度及び圧力で加圧成型することにより4層基板を製造することができた。なお、4層以上の基板についても、一般的には内層コアの層数を上げることで、同様の工程で生産することが可能である。
【0033】
このようにして作製された、プリプレグを有する多層構造のプリント回路基板は、めっき工程及び又はエッチング工程経て回路を形成し、さらにキャリア樹脂と銅箔の間で、剥離分離させて完成品とした。前記積層中に、金属箔に皺の発生は全く認められなかった。
さらに、キャリアAに銅箔と金属箔Bにも銅箔を使用しているので、線膨張係数が基板の構成材料である銅箔及び重合後のプリプレグと、殆ど同じレベルにあることから、回路の位置ずれを起こすことがなかった。したがって、従来のCACを使用する場合に比べて、不良品発生が少なくなり、歩留りを向上させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のキャリア付金属箔は、キャリアAと金属箔Bを交互に重なり合う積層体とし、隣接するキャリアAが金属箔Bの全面を覆う面積を有し、かつ当該キャリアAの縁部の一部又は全部が金属箔Bからはみ出す構造を備えているので、積層された一組のキャリアAと金属箔Bと同種の別の組のキャリアAと金属箔Bとの区別が容易となり、作業者のハンドリング性が向上する。また、キャリアを銅箔から剥離する際にも、寸法が異なっている箇所(縁部又は辺部)があるので、剥離も容易となる。
また、キャリアAと金属箔Bの銅箔の光沢面相互を重ねることは任意ではあるが、このようにすると、作業者が銅箔のM面を下に置くとか上に置くという作業が必要としなくなるので作業効率は飛躍的に向上する。
さらに、キャリアを銅箔にすることは任意であるが、キャリアを銅箔にした場合には線膨張係数が基板の構成材料である銅箔及び重合後のプリプレグと同等のレベルにあることから、回路の位置ずれを招くことがないので、不良品発生が少なくなり、歩留りを向上させることができるという優れた効果を有する。
本願発明により得られるキャリア付金属箔のメリットは大きく、特にプリント回路板の製造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】銅箔、プリプレグ、コア材、銅箔を順に重ね、キャリアAの縁部の一部が金属箔Bからはみ出す構造を備えた本発明のキャリア付金属箔の概念説明図である。
【図2】キャリアAの光沢面(S面)と金属箔Bの光沢面(S面)を相互に張り合わせた本発明のキャリア付銅箔の説明図である。
【図3】本発明のキャリアAと金属箔Bの接合部を示す説明図である。
【図4】銅箔、プリプレグ、コア材、銅箔を順に重ね、キャリアAがその縁部の一部が金属箔Bからはみ出す構造を備え、ホットプレスすることにより、L2の銅箔層を形成する様子を示す説明図である。
【図5】銅箔、プリプレグ、コア材、銅箔を順に重ね、キャリアAはその縁部の一部が金属箔Bからはみ出す構造を備え、さらにキャリアA及び金属箔Bの光沢面を相互に接合したキャリア付銅箔を使用して、ホットプレスすることにより、最外層の銅箔層を形成する様子を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアAと金属箔Bが交互に重なり合う積層体であって、隣接するキャリアAが金属箔Bの全面を覆う面積を有し、かつ当該キャリアAの縁部の一部又は全部が金属箔Bからはみ出す構造を備えていることを特徴とするキャリア付金属箔。
【請求項2】
キャリアA及び金属箔Bが矩形であることを特徴とする請求項1記載のキャリア付金属箔。
【請求項3】
キャリアA及び金属箔Bの一辺が互いに整列していることを特徴とする請求項2記載のキャリア付金属箔。
【請求項4】
キャリアA及び金属箔Bの隣接する二辺又は対向する二辺が互いに整列していることを特徴とする請求項2記載のキャリア付金属箔。
【請求項5】
金属箔Bが、銅箔又は銅合金箔であることを特徴とする請求項1〜4のいずか一項に記載のキャリア付金属箔。
【請求項6】
キャリアAが、銅箔又は銅合金箔であることを特徴とする請求項1〜5のいずか一項に記載のキャリア付金属箔。
【請求項7】
キャリアA及び金属箔Bがそれぞれ光沢面(S面)を有し、それぞれ光沢面が互いに向き合うように積層されていることを特徴とする請求項1〜6のいずか一項に記載のキャリア付金属箔。
【請求項8】
キャリアA及び金属箔Bがずれないように、接着剤、かしめ若しくは重ね折又は溶着により接合されていることを特徴とする請求項1〜7のいずか一項に記載のキャリア付金属箔。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−143233(P2009−143233A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2008−327448(P2008−327448)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】