説明

キャンバー角及びキャスター角を調整可能なアッパーマウント

【課題】 少ない部品構成でキャンバー角及びキャスター角を簡単に調整することができるアッパーマウントを提供する。
【解決手段】 上記課題を解決するために本発明に係るアッパーマウントは、車両部に固定するためのアッパーシート2と、アッパーシート2に対して可変に固定される第1可動プレート3と、第1可動プレート3に対して可変に固定される第2可動プレート4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種車両における車体部と車輪部との間に設けられる油圧緩衝器を車体部側に取付けるためのアッパーマウントに係り、特には、キャンバー角及びキャスター角を調整可能なアッパーマウントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のストラット取付け構造では車体部材のアッパーマウント取付部の位置によって車輪のホイールアライメントが決定されてしまっていた。また、アライメントを調整する余地が十分に取れないため、ホイールアライメント(例えば、キャスター角やキャンバー角)の調整が困難であった。
【0003】
そこで、近年では、キャスター角及びキャンバー角を調整する機構を備えたアッパーマウントが開発されてきている。
特許文献1には、ストラットマウントのマウント中心を挟むように配置されて一対の取付部が挿通される一対のサポート側取付孔を設け、マウント中心から偏倚せてストラットの軸心が位置するようにサポート側挿通孔を設けたアッパーマウントについて開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、車体に取付けられる上下2枚の取付プレートの間に、第1プレートと第2プレートを挟み込み、第1プレートは緩衝器の上部に固定される状態で、両取付プレートに対し車体の前後方向と車幅方向の双方向に移動可能とし、第2プレートは第1プレートに固定される状態で、両取付プレートに対し車体の前後方向と車幅方向のいずれか一方向に移動可能とするアッパーマウントについて開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、ボディー側からのスタッドボルトを受ける部分が長穴になった、軸受け付支持プレートに、同じくスタッドボルト受けが長穴になった支持プレート、支持プレートを組み付け、軸受け部を前後左右に任意に可動できる構造とするアッパーマウントについて開示されている。
【特許文献1】特開2000−318419号公報
【特許文献2】特開2003−300407号公報
【特許文献3】実願平10−003575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のアッパーマウントは、キャンバー角又はキャスター角のいずれを調整する場合においても、一度車両からストラット上部取付部を取り外して回転させる必要があるため作業負荷が大きいという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載のアッパーマウントは、4枚のプレートからなる構造であるため車体上部取付面から下方への寸法が増加し、ストラットの可動ストロークが減少してしまう。また、車体と4枚のプレートとを共締めして位置決めをしているため、キャンバー角とキャスター角との調整が難しいという問題がある。
【0008】
また、特許文献3に記載のアッパーマウントは、その構造上キャンバー角及びキャスター角が同時に変化してしまうため所望の位置への調整が困難であるという問題がある。
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、少ない部品構成でキャンバー角及びキャスター角を簡単に調整することができるアッパーマウントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るアッパーマウントは、車両部に固定されるアッパーシートと、該アッパーシートに固定される第1可動プレートと、該第1可動プレートに固定され、油圧緩衝器のピストンロッドと揺動可能に固定される第2可動プレートと、を備えるアッパーマウントであって、前記アッパーシートは、第1の方向に対して互いに平行に配された少なくとも一対の第1のガイド孔を備え、該第1のガイド孔に挿通された一端が前記第1可動プレートに螺合し、他端が該アッパーシートに係止される固定部材によって前記第1可動プレートと固定され、前記第1可動プレートは、第2の方向に対して互いに平行に配された少なくとも一対の第2のガイド孔を備え、該第2のガイド孔に挿通された一端が前記第2可動プレートに螺合し、他端が該第1可動プレートに係止される固定部材によって前記第2可動プレートと固定される、ことを特徴とする。
【0010】
本発明によると、アッパーシートと第1可動プレートとを固定するために第1可動プレートに螺合された固定部材を緩め、第1のガイド孔に沿って第1可動プレートを移動させることによって、第1の方向に対する第1可動プレートの位置を自在に調整可能となる効果を奏する。
【0011】
また、第1可動プレートと第2可動プレートとを固定するために第2可動プレートに螺合された固定部材を緩め、第2のガイド孔に沿って第2可動プレートを移動させることによって、第2の方向に対する第2可動プレートの位置を自在に調整可能となる効果を奏する。
【0012】
すなわち、アッパーシートが固定される車両部に対して、ピストンロッドを介して揺動可能に第2可動プレートに固定された油圧緩衝器の位置を、第1の方向と第2の方向とに独立して調整することが簡単にできる効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係るアッパーマウントは、車両部に固定されるアッパーシートと、該アッパーシートに固定され、油圧緩衝器のピストンロッドと揺動可能に固定するためのピストンロッド固定部を備える可動プレートと、を備えるアッパーマウントであって、前記アッパーシートは、第1の方向に対して互いに平行に配された少なくとも一対のガイド孔を備え、該ガイド孔に挿通された一端が前記可動プレートに備わる固定部に螺合し、他端が該アッパーシートに係止される固定部材によって前記可動プレートと固定され、前記可動プレートは、前記第1の方向に対向配置された少なくとも一対の前記固定部である第1の固定部と、前記第1の方向に対して交差する第2の方向に対向配置された少なくとも一対の前記固定部である第2の固定部と、を備え、前記第1の固定部の対向方向における中心から所定の位置であって、前記第2の固定部の対向方向における中心から前記所定の位置と異なる位置に前記ピストンロッド固定部が配される、ことを特徴とするアッパーマウントであってもよい。
【0014】
この場合においても、アッパーシートと可動プレートとを固定するために可動プレートに螺合された固定部材を緩め、ガイド孔に沿って可動プレートを移動させることによって、第1の方向に対する可動プレートの位置を自在に調整可能となる効果を奏する。
【0015】
また、固定部材を第1の固定部に螺合してアッパーシートと可動プレートを固定すると、第2の固定部の対向方向における中心から所定の位置A又は−Aだけピストンロッド固定部の位置を変位することが可能となり、固定部材を第2の固定部に螺合してアッパーシートと可動プレートを固定すると、第1の固定部の対向方向における中心から前記所定の位置と異なる位置B又は−Bだけピストンロッド固定部の位置を変位することが可能となる。
【0016】
すなわち、固定部材を固定する固定部を第1の固定部と第2の固定部とで切換えることによって、アッパーシートが固定される車両部に対して、ピストンロッドを介して揺動可能に可動プレートに固定された油圧緩衝器の位置を、第2の方向に調整することが簡単にできる効果を奏する。
【0017】
また、第2の方向に油圧緩衝器の位置を調整する結果、第1の方向と直行する方向に対しても油圧緩衝器の位置を調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によると、少ない部品構成でキャンバー角及びキャスター角を簡単に調整することができるアッパーマウントを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図1から図3に基づいて説明する。
図1は、第1の実施例に係るアッパーマウントの構成例を分解斜視図で示している。
同図に示すアッパーマウント1は、図示しない車両部に固定するためのアッパーシート2と、アッパーシート2に対して可変に固定される第1可動プレート3と、第1可動プレート3に対して可変に固定される第2可動プレート4と、を備える構成となっている。
【0020】
アッパーシート2は、このアッパーシート2に固定されたセレーションボルト5と、互いに平行に配された長孔のキャンバー角調整用ガイド孔(第1のガイド孔)6と、ピストンロッド15を挿通するための貫通孔7と、を備えており、セレーションボルト5を車体側の油圧緩衝器取付部に挿通してナット等で固定される。
【0021】
第1可動プレート3は、取付ボルト(固定部材)8でアッパーシート2と固定するためのネジ孔9と、互いに平行に配されたキャスター角調整用ガイド孔(第2のガイド孔)10a及び10bと、ピロボール14を挿入するための貫通孔11と、を備え、キャンバー角調整用ガイド孔6に挿通された取付ボルト8とネジ孔9とを螺合することによってアッパーシート2に対して固定される。
【0022】
ここで、キャスター角調整用ガイド孔10a及び10bに使用する固定部材には、頭部がテーパー状に広がっているさらネジ12a及び12bを使用し、第1可動プレート3上面よりも上方にさらネジの頭が突出しないようにしている。このため、キャスター角調整用ガイド孔10a及び10bの内部も、さらネジの形状に合わせてテーパー状になっている。
【0023】
また、貫通孔11は、図1に示す形状(長孔)に限定するものではなく、第1可動プレート3と第2可動プレート4とを摺動可能に固定した際に、第1可動プレート3に対して第2可動プレート4をキャスター角調整方向Bに摺動させる摺動範囲に合わせてピロボール14が貫通孔11内を自由に移動できる形状に決めればよい。
【0024】
第2可動プレート4は、さらネジ(固定部材)12a及び12bで第1可動プレート3と固定するためのネジ孔13と、ピストンロッド15を嵌挿しピストンロッド15の固定部を支点に揺動可能に固定するためのピロボール14と、を備え、キャスター角調整用ガイド孔10a及び10bにそれぞれ挿通されたさらネジ12a及び12bとネジ孔13とを螺合することによって第1可動プレート3に対して固定される。
【0025】
また、第2可動プレート4は、アッパースプリングシート17及びワッシャ19を介してピロボール14を貫通するピストンロッド15をナット16で螺合することによって図示しないシリンダ本体に対して固定される。
【0026】
ここで、第1可動プレート3と第2可動プレート4とを固定するためにさらネジを使用しているが、これに限定する趣旨ではない。図1に示すアッパーシート2下面と第1可動プレート3上面とが密接するように、第1可動プレート3と第2可動プレート4とを固定するものであればよい。
【0027】
また、図1に示す各ネジ孔13は、均等間隔に配してもよく、必要に応じて異なる間隔で配してもよい。
ここで、本実施例で示すキャンバー角調整用ガイド孔6は、互いに平行な長孔で構成されているが、これに限定する趣旨ではなく、キャスター角調整用ガイド孔10a及び10bのように、アッパーシート2と第1可動プレート3とを固定する機能とキャンバー角調整方向A(第1の方向)に第1可動プレート3を摺動するためのガイドとしての機能とを備える長孔と、アッパーシート2と第1可動プレート3とを固定する機能のみを備えるネジ孔とで構成してもよく、複数のネジ孔で構成してもよい。
【0028】
同様に、本実施例で示すキャスター角調整用ガイド孔10a及び10bは、第1可動プレート3と第2可動プレート4とを固定する機能とキャスター角調整方向B(第2の方向)に第2可動プレート4を摺動するためのガイドとしての機能とを備えるキャスター角調整用ガイド孔10aと、第1可動プレート3と第2可動プレート4とを固定する機能のみを備えるキャスター角調整用ガイド孔10bとで構成されているが、これに限定する趣旨ではない。
【0029】
すなわち、キャンバー角調整用ガイド孔6と同様に互いに平行な一対の長孔で構成してもよく、複数のネジ孔のみで構成してもよい。
以上に説明したように、アッパーシート2、第1可動プレート3及び第2可動プレート4で構成されるアッパーマウント1は、取付ボルト8、さらネジ12a及び12bによって一体に固定される。
【0030】
ここで、キャンバー角を調整する場合には、アッパーシート2と第1可動プレート3とを固定している全ての取付ボルト8を緩め、キャンバー角調整用ガイド孔6に沿って、第1可動プレート3(第1可動プレート3に第2可動プレート4及びシリンダ本体が固定されている場合には、これらを含む)を摺動させる。
【0031】
そして、必要な目盛り18の位置まで第1可動プレート3を摺動させた後に、再び取付ボルト8によってアッパーシート2と第1可動プレート3とを固定すればよい。
また、キャスター角を調整する場合には、さらネジ12aを緩め、さらにさらネジ12bを一度取り外す。そして、必要な位置まで第2可動プレート4をキャスター角調整用ガイド孔10aに沿って摺動させる。
【0032】
そして、必要な位置まで第2可動プレート4を摺動させた後に、再びさらネジ12a及び12bによって第1可動プレート3と第2可動プレート4とを固定すればよい。
以上に説明したように、本実施例によれば、キャンバー角とキャスター角とを調整可能なアッパーシートを少ない構成部品で実現することができる。
【0033】
さらに、キャンバー角とキャスター角とは互いに独立に調整することができるので、簡単に調整することができる。
また、キャンバー角においては、アッパーシート2を取付ける車両部に通常備わる貫通孔から取付ボルト8のネジ締めを行なうことによって、アッパーマウント1を車両部及び車輪部に実装した状態で調整することが可能となる。
【0034】
さらに、アッパーシート2と第1可動プレート3との結合時に、貫通孔7からキャスター角調整用ガイド孔10a及び10bを臨める程度に貫通孔7の大きさを調整することによって、キャスター角においても、本実施例に係るアッパーマウントを車両部及び車輪部に実装した状態で調整することが可能となる。
【0035】
また、キャンバー角及びキャスター角の調整幅は、それぞれキャンバー角調整用ガイド孔6、キャスター角調整用ガイド孔10aで決まるので、構造上の制約がほとんどなく、調整範囲を大きく確保することが可能となる。
【0036】
また、本実施例においては、キャンバー角調整用ガイド孔6を第1可動プレート3に設け、キャスター角調整用ガイド孔10a及び10bをアッパーシート2に設けても同様の効果を奏する。
【0037】
以上の説明において、取付ボルト8、ネジ孔9、さらネジ12a、12b、及びネジ孔13の数が、図1に示した数に限定されないのは当然である。
図2は、第2の実施例に係るアッパーマウントの構成例を分解斜視図で示している。
【0038】
同図に示すアッパーマウント21は、図示しない車両部に固定するためのアッパーシート22と、アッパーシート22に対して可変に固定される可動プレート23と、を備える構成となっている。
【0039】
アッパーシート22は、このアッパーシート22に固定されたセレーションボルト24と、互いに平行に配された長孔のキャンバー角調整用ガイド孔25と、ピストンロッド15を貫通するための貫通孔26と、を備えており、セレーションボルト24を車体側の油圧緩衝器取付部に挿通してナット等で固定される。
【0040】
ここで、図2に示すキャンバー角調整用ガイド孔25は、互いに平行な長孔で構成されているが、これに限定する趣旨ではなく、図1に示したキャスター角調整用ガイド孔10a及び10bのように、アッパーシート22と可動プレート23とを固定する機能とキャンバー角調整方向A(第1の方向)に可動プレート23を摺動するためのガイドとしての機能とを備える長孔と、アッパーシート22と可動プレート23とを固定する機能のみを備えるネジ孔とで構成してもよく、複数のネジ孔のみで構成してもよい。
【0041】
可動プレート23は、取付ボルト(固定部材)27でアッパーシート22と固定しキャスター角を調整するためのネジ孔(第1の固定部)28a及び(第2の固定部)28bと、ピストンロッド15と揺動可能に固定するためのピロボール(ピストンロッド固定部)14と、を備えている。
【0042】
可動プレート23は、キャスター角調整用ガイド孔25に挿通された取付ボルト27とネジ孔28a又は28b(図2は、ネジ孔28aを使用している場合を示す)とを螺合することによってアッパーシート22に対して固定される。
【0043】
また、可動プレート23は、アッパースプリングシート17及びワッシャ19を介してピロボール14を貫通するピストンロッド15をナット16で螺合することによって図示しないシリンダ本体(油圧緩衝器)に対して固定される。
【0044】
以上に説明したように、アッパーシート22、可動プレート23で構成されるアッパーマウント21は、取付ボルト27によって一体に固定される。
ここで、図3に可動プレート23の上面図を示す。
【0045】
図3に示すように、可動プレート23は、互いに平行に対向配置されたネジ孔28a及び28bの中心cからそれぞれ距離a及び距離bの位置にピロボール14が配されている。
【0046】
したがって、可動プレート23をピロボール14を中心として90°、180°、又は270°(−90°)回転することによって、キャスター角調整方向B(第2の方向)に対して中心cから距離a、距離b、距離(−a)、及び距離(−b)の4通りの距離を設定することが可能となる。
【0047】
なお、各ネジ孔28a及び28bは、均等間隔に配してもよく、必要に応じて異なる間隔で配してもよい。また、可動プレート23の形状は、図3に示す形状に限定されないのは当然である。
【0048】
以上に説明したアッパーマウント21において、キャンバー角を調整する場合は、アッパーシート22と可動プレート23とを固定している全ての取付ボルト27を緩め、キャンバー角調整用ガイド孔25に沿って、可動プレート23(シリンダ本体が可動プレート23に固定されている場合には、シリンダ本体も含む)を摺動させる。
【0049】
そして、例えば、必要な目盛り18の位置まで可動プレート23を摺動させた後に、再び取付ボルト27によってアッパーシート22と可動プレート23とを固定すればよい。
また、キャスター角を調整する場合は、取付ボルト27を一度取り外し、可動プレート23を90°、180°、又は270°(−90°)回転させる。
【0050】
そして、必要な位置まで可動プレート4を回転させた後に、再び取付ボルト27によってアッパーシート22と可動プレート23とを固定すればよい。
ここで、図3には、互いに平行に対向配置されたネジ孔がネジ孔28aとネジ孔28bの二組のネジ孔であって、互いの対向方向に対して直交する場合について示したが、二組のネジ孔に限定する趣旨ではない。また、互いの対向方向に対して直交するネジ孔に限定する趣旨ではない。
【0051】
例えば、可動プレート23は、図4に示す形状であってもよい。
図4に示す可動プレート30は、互いに平行に対向配置されたネジ孔31a、31b、31c、及び31dを備えている。
【0052】
ネジ孔31a、31b、31c、及び31dそれぞれの対向方向の中心軸A、B、C、及びDは交点Oと交差し、この交点Oにピロボール14が配されている。
また、ピロボール14(交点O)は、ネジ孔31a、31b、31c、及び31dの中心からそれぞれ距離a、距離b、距離c、及び距離0の位置に配されている。例えば、ネジ孔31aをキャスター角調整方向Bに固定した場合、ネジ孔31aの中心線(1)と交点Oとの距離はaとなる。
【0053】
同様に、ネジ孔31b、31c、31dの中心線(2)、(3)、(4)(中心軸Bと重複)と交点Oとの距離は、それぞれb、c、0となる。
したがって、ネジ孔31dを取付ボルト27で固定した位置(キャスター角調整方向Bに固定した位置)から、ピロボール14を中心として45°、90°、135°、180°、225°(−135°)、270°(−90°)、又は315°(−45°)回転することによって、キャスター角調整方向Bに対して中心Cから距離a、距離b、距離c、距離0、距離(−a)、距離(−b)、及び距離(−c)の7通りの距離を設定することが可能となる。
【0054】
なお、図3と同様に、各ネジ孔31a〜31dは、均等間隔に配してもよく、必要に応じて異なる間隔で配してもよい。また、可動プレート30の形状は、図4に示す形状に限定されないのは当然である。
【0055】
以上に説明したように、本実施例によってもキャンバー角とキャスター角とを調整可能なアッパーシートを少ない構成部品で実現することが可能となる。
さらに、キャンバー角とキャスター角とは互いに独立に調整することができるので、簡単に調整することができる。
【0056】
また、キャンバー角においては、アッパーシート22を取付ける車両部に通常備わる貫通孔から取付ボルト27のネジ締めを行なうことによって、アッパーマウント21を車両部及び車輪部に実装した状態で調整することが可能となる。
【0057】
以上の説明において、取付ボルト27、ネジ孔28a、28b、31a〜31dの数が、図3又は図4に示した数に限定されないのは当然である。
また、本実施例においては、キャンバー角調整用ガイド孔25をキャスター角調整方向Bに対して平行に設けても同様の効果を奏する。この場合、可動プレートを回転することによって、キャンバー角を調整することとなる。
【0058】
また、第1及び第2の実施例で説明したキャンバー角及びキャスター角を調整する手順は、例示であって、この手順に限定する趣旨でないのは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1の実施例に係るアッパーマウントの構成例を示す図である。
【図2】第2の実施例に係るアッパーマウントの構成例を示す図である。
【図3】図2で示した可動プレートの上面図である。
【図4】図3で示した可動プレートの変形例を示す上面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 ・・・ アッパーマウント
2 ・・・ アッパーシート
3 ・・・ 第1可動プレート
4 ・・・ 第2可動プレート
5 ・・・ セレーションボルト
6 ・・・ キャンバー角調整用ガイド孔
7 ・・・ 貫通孔
8 ・・・ 取付ボルト
9 ・・・ ネジ孔
10a ・・・ キャスター角調整用ガイド孔
10b ・・・ キャスター角調整用ガイド孔
11 ・・・ 貫通孔
12a ・・・ さらネジ
12b ・・・ さらネジ
13 ・・・ ネジ孔
21 ・・・ アッパーマウント
22 ・・・ アッパーシート
23 ・・・ 可動プレート
24 ・・・ セレーションボルト
25 ・・・ キャンバー角調整用ガイド孔
26 ・・・ 貫通孔
27 ・・・ 取付ボルト
28a〜28b ・・・ ネジ孔
30 ・・・ 可動プレート
31a〜31d ・・・ ネジ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両部に固定されるアッパーシートと、
該アッパーシートに固定される第1可動プレートと、
該第1可動プレートに固定され、油圧緩衝器のピストンロッドと揺動可能に固定される第2可動プレートと、
を備えるアッパーマウントであって、
前記アッパーシートは、
第1の方向に対して互いに平行に配された少なくとも一対の第1のガイド孔を備え、
該第1のガイド孔に挿通された一端が前記第1可動プレートに螺合し、他端が該アッパーシートに係止される固定部材によって前記第1可動プレートと固定され、
前記第1可動プレートは、
第2の方向に対して互いに平行に配された少なくとも一対の第2のガイド孔を備え、
該第2のガイド孔に挿通された一端が前記第2可動プレートに螺合し、他端が該第1可動プレートに係止される固定部材によって前記第2可動プレートと固定される、
ことを特徴とするアッパーシート。
【請求項2】
前記第1の方向は、キャンバー角を調整する方向であり、前記第2の方向は、キャスター角を調整する方向であることを特徴とする請求項1に記載のアッパーマウント。
【請求項3】
前記第1の方向は、キャスター角を調整する方向であり、前記第2の方向は、キャンバー角を調整する方向であることを特徴とする請求項1に記載のアッパーマウント。
【請求項4】
前記第1のガイド孔は、1つの長孔で構成されることを特徴とする請求項2または3に記載のアッパーマウント。
【請求項5】
前記第2のガイド孔は、1つの長孔で構成されることを特徴とする請求項2または3に記載のアッパーマウント。
【請求項6】
前記第2のガイド孔は、複数の貫通孔及び長孔で構成されることを特徴とする請求項2または3に記載のアッパーマウント。
【請求項7】
前記アッパーシートは、前記第2のガイド孔と重畳しない貫通孔を中心部に備えることを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載のアッパーマウント。
【請求項8】
車両部に固定されるアッパーシートと、
該アッパーシートに固定され、油圧緩衝器のピストンロッドと揺動可能に固定するためのピストンロッド固定部を備える可動プレートと、
を備えるアッパーマウントであって、
前記アッパーシートは、
第1の方向に対して互いに平行に配された少なくとも一対のガイド孔を備え、
該ガイド孔に挿通された一端が前記可動プレートに備わる固定部に螺合し、他端が該アッパーシートに係止される固定部材によって前記可動プレートと固定され、
前記可動プレートは、
前記第1の方向に対向配置された少なくとも一対の前記固定部である第1の固定部と、前記第1の方向に対して交差する第2の方向に対向配置された少なくとも一対の前記固定部である第2の固定部と、を備え、
前記第1の固定部の対向方向における中心から所定の位置であって、前記第2の固定部の対向方向における中心から前記所定の位置と異なる位置に前記ピストンロッド固定部が配される、
ことを特徴とするアッパーマウント。
【請求項9】
前記第1の方向は、キャンバー角を調整する方向であり、前記第2の方向は、キャスター角を調整する方向であることを特徴とする請求項8に記載のアッパーマウント。
【請求項10】
前記第1の方向は、キャスター角を調整する方向であり、前記第2の方向は、キャンバー角を調整する方向であることを特徴とする請求項8に記載のアッパーマウント。
【請求項11】
前記第1のガイド孔及び前記第2のガイド孔は、それぞれ一対の長孔で構成されることを特徴とする請求項9または10に記載のアッパーマウント。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−224829(P2006−224829A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41414(P2005−41414)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(598172860)株式会社テイン (5)
【Fターム(参考)】