説明

キーシート補強フレーム用積層材およびキーシート補強フレーム

【課題】打ち抜き、曲げ、絞り等の加工に耐えうる、着色されたキーシート補強フレーム用の金属板を提供する。
【解決手段】情報端末機器の入力ボタン部に使用されるキーシート補強フレーム用積層材において、金属板、および、該金属板の少なくとも片面に積層された着色樹脂層を備えるものとし、着色樹脂層の厚みを15μm以上200μm以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報端末機器の入力ボタン部に使用されるキーシートを補強するためのキーシート補強フレーム、および、該キーシート補強フレームを製造するために使用されるキーシート補強フレーム用積層材に関する。
【背景技術】
【0002】
キーシートは、情報端末機器の入力ボタン部に使用される部材であり、ボタンとなる複数のキートップが、ゴム弾性体からなるキーパッド表面に固着された構造を有するものである。従来の情報端末機器の入力ボタン部は、筐体パネルに複数の操作孔が形成され、この各操作孔にキートップが配置されて形成されていた。この従来の入力ボタン部においては、各々のキートップの間に筐体パネルによる仕切桟が存在しており、この仕切桟がキーシートが外力により変形するのを防止していた。
【0003】
デザイン性、携帯性の面から、携帯電話に代表される情報端末機器の更なる薄型化が求められなかで、仕切桟を有しない薄型のキーシートと呼ばれる入力操作部が開発されている(特許文献1)。
【0004】
補強部材となっていた仕切桟を有していないキーシートにおいては、キーパッドがゴム弾性体からなる柔らかい樹脂で成形されているため、押圧時にキーシートが歪んでしまったり、キートップの重量によって、全体的に伸びてしまったりといった問題があった。この問題を解決する方法として、キーパッドのキー操作に関係ない部分をポリカーボネート等の硬質樹脂からなる補強版で置き換えることが提案されている。(特許文献2、特許文献3)
【特許文献1】特開2006−216473号公報
【特許文献2】特開2004−327417号公報
【特許文献3】特開2006−209989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、キーシートをさらに薄型化することが求められている。しかし、硬質樹脂製の補強板(キーシート補強フレーム)は、強度を確保する点から、その厚さを薄くするには限界があった。また、キーシート補強フレームとして金属板を使用した場合は、キーシート補強フレームの厚さを薄くしてキーシートの薄型化の要請に応えることができる。しかし、キートップの間から、キーパッドを通して補強フレームの金属板表面が見えてしまい、デザイン性を低下させてしまうという問題があった。
【0006】
キーシートを薄型にしつつキーシート補強フレームの強度を確保し、かつデザイン性を向上させるには、金属板表面が着色されてなるキーシート補強フレームが必要となる。キーシート補強フレームを作製するには、金属板に打ち抜きにより複数の開口部を形成する必要があり、場合によっては、曲げ加工、絞り加工も必要となる。そのため、着色された金属板はこのような加工にも耐えうる材料である必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、打ち抜き、曲げ、絞り等の加工に耐えうる、着色されたキーシート補強フレーム用の金属板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、これにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0009】
第1の本発明は、情報端末機器の入力ボタン部に使用されるキーシート補強フレーム用積層材であって、金属板(10)、および、該金属板(10)の少なくとも片面に積層された着色樹脂層(20)を備えて構成され、前記着色樹脂層の厚みが、15μm以上200μm以下である、キーシート補強フレーム用積層材(100)である。
【0010】
第1の本発明のキーシート補強フレーム用積層材(100)は、金属板(10)を備えているので、補強フレームとしての強度を保ちつつその厚さを薄くすることができる。また、金属板(10)の表面に着色樹脂層(20)を備えているので、キーパッドのデザイン性を向上できる。また、着色樹脂層(20)が所定の厚みで構成されているので、本発明のキーシート補強フレーム用積層材(100)に施す打ち抜き加工等に対して耐久性を備えており、該加工の際に着色層(20)が剥がれたりする問題が生じない。また、このような厚みとすることで、着色樹脂シートを形成する際における加工性、着色樹脂を押出ラミネートする際の加工性が好ましいものとなる。
【0011】
第1の本発明において、着色樹脂層(20)は、着色された樹脂シートであることが好ましい。上記の厚みを有する着色された樹脂シートであれば、樹脂シートの作製および貼り付けの際の加工性が良く、耐久性を備えた着色樹脂層(20)とすることができる。
【0012】
第1の本発明において、着色樹脂層(20)は、着色塗布層と透明樹脂シートとの多層構成とすることもできる。これにより、デザイン性を着色塗布層により付与し、打ち抜き加工等への耐久性を透明樹脂シートにより付与できる。ここで、透明樹脂シートの「透明」とは、透明樹脂シート下部の着色樹脂層が視認できる程度に透明であればよく、半透明も含む意味である。また、透明樹脂シート中に光輝性材料が分散された構造のものであってもよい。
【0013】
第1の本発明において、金属板(10)と樹脂シートとは熱接着されていることが好ましい。金属板(10)と樹脂シートとを接着剤を用いて積層して積層材を形成した場合、この積層材に対して絞り加工を施すと、接着剤層が変形に対応できずに樹脂シートが剥離してしまう虞がある。このような点から、本発明においては、接着剤を必要としない熱接着されていることが好ましい。
【0014】
第1の本発明において、着色樹脂層(20)は、金属板(10)上に着色樹脂を押出ラミネートして形成することもできる。上記の層厚を有する着色樹脂層(20)であれば、押出ラミネートにより加工性良く形成することができる。これにより、耐久性を備えた着色樹脂層(20)とすることとができる。
【0015】
第1の本発明において、金属板(10)は、シランカップリング剤で表面処理されたものであることが好ましい。これにより、金属板(10)と樹脂シートとの密着性をさらに向上させることができる。
【0016】
第2の本発明は、第1の本発明のキーシート補強フレーム用積層材(100)、および、該積層材に打ち抜き加工を施して形成された複数の開口部(220)を備えて構成されるキーシート補強フレーム(200)である。第2の本発明のキーシート補強フレーム(200)においては、第1の本発明のキーシート補強フレーム用積層材(100)の効果を発揮し、補強フレームとしての強度を保ちつつその厚さを薄くすることができ、優れたデザイン性を備えている。また、打ち抜き加工により開口部(220)を形成しても、着色層(20)が剥がれたりする問題が生じない。
【発明の効果】
【0017】
第1の本発明のキーシート補強フレーム用積層材(100)は、金属板(10)を備えているので、補強フレームとしての強度を保ちつつその厚さを薄くすることができる。また、金属板(10)の表面に着色樹脂層(20)を備えているので、キーパッドのデザイン性を向上できる。また、着色樹脂層(20)が所定の厚みで構成されているので、本発明のキーシート補強フレーム用積層材(100)に対して、打ち抜き加工等を施したとしても、着色層(20)が剥がれたりする問題が生じない。また、このような厚みとすることで、着色樹脂シートを形成する際における加工性、着色樹脂を押出ラミネートする際の加工性が好ましいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<キーシート補強フレーム用積層材>
図1(a)に本発明のキーシート補強フレーム用積層材100の層構成を模式的に示す。本発明のキーシート補強フレーム用積層材100は、金属板10および該金属板10の少なくとも片面に積層された着色樹脂層20を備えて構成されている。金属板10の少なくとも片面とは、後でキートップ320を積層する側の面である(図2および図3参照)。操作者から見える該面に少なくとも着色樹脂層20が形成されていればよい。
【0019】
まず、本発明のキーシート補強フレーム用積層材100の用途について、簡単に説明する。本発明のキーシート補強フレーム用積層材100は、打ち抜き加工、曲げ加工、絞り加工等の加工が施され、図1(b)および(c)に示すようなキーシート補強フレーム200とされる。図1(c)は、図1(b)におけるA−A線断面図である。
【0020】
このキーシート補強フレーム200は、図2または図3に示すように、キートップ320、キーパッド340、ドームスイッチ基板360と組み合わされて使用される。本発明のキーシート補強フレーム200は、図2(a)に使用形態の一例の断面図を示したように、キーパッド340およびドームスイッチ360の間に、あるいは、図3に使用形態の別例の断面図を示したように、キートップ320とキーパッド340の間に配置されて使用される。図3においては、キートップ320の裏面にキーシート補強フレーム200を配置した後、シリコーンゴムをインモールド成形してキーパッド340を形成した例を示しているので、キーシート補強フレーム200がキーパッド340に埋め込まれている。しかし、本発明のキーシート補強フレーム200の使用形態はこれに限定されず、補強フレーム200が埋め込まれない状態で、補強フレーム200の下部にキーパッド340が配置された形態も含む。
【0021】
(金属板10)
金属板10としては、所定の強度を備えた金属板であれば特に限定されず、例えば、アルミニウム板、ステンレス鋼板、洋白、銅板、真鍮、ニッケル鋼板等を使用することができる。中でも、薄くて剛性を得やすいバネ用のステンレス鋼板、バネ用の洋白を使用することが好ましい。
【0022】
金属板10の厚みは、下限が好ましくは50μm以上、より好ましくは80μm以上であり、上限が好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である。50μm以上であれば、操作時の押圧に耐えうる十分な強度をキーシートに付与することができる。また、500μm以下であれば、キーシート補強フレームを薄くして、キーシートの薄型化に寄与できる。
【0023】
金属板10の表面には、樹脂シート20との密着性を向上させる目的で、シランカップリング剤で表面処理することができる。本発明において、シランカップリング剤とは、その分子中に2個以上の異なった反応基をもつ有機ケイ素単量体である。2個の反応基のうちの1つは、無機材料(ガラス、金属など)と化学結合する反応基であり、もう一つの反応基は、有機材料(各種合成樹脂)と化学結合する反応基である。ステンレス鋼板等の無機材料と結合する反応基は、特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、シラノール基等がある。また、各種合成樹脂等の有機材料と結合する反応基は、特に限定されないが、例えば、アミノ基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基等がある。
【0024】
金属板10の表面へのシランカップリング剤の塗布量としては、濃度の下限が、好ましくは0.01mg/m以上、より好ましくは0.1mg/m以上である。シランカップリング剤の塗布量が0.01mg/m以上であれば十分な接着性が得られる。シランカップリング剤の塗布量の上限は、好ましくは1000mg/m以下、より好ましくは750mg/m以下である。塗布量が1000mg/m以下であれば縮合することがなく、取扱いに問題を生じることがない。また、金属板10に塗布する際に、シランカップリング剤水溶液がはじかれる場合は、水溶液に界面活性剤を混ぜて、ぬれ性を改善しても良い。
【0025】
また、同様に樹脂シート20との密着性を向上させる目的で、金属板10にクロメート処理、金属メッキ処理等を施してもよい。
【0026】
(着色樹脂層20)
本発明のキーシート補強フレーム用積層材100においては、金属板10の少なくとも片面に着色樹脂層20が形成され、デザイン性が付与されている。デザイン性を付与することを目的とする場合、金属板10の表面を塗装することも考えられる。しかし、塗装により形成された塗膜は、一般的に厚みが薄く、強度が不足しており、キーシート補強フレーム200作製の際における、打ち抜き加工、曲げ加工または絞り加工において、塗膜が金属板から剥がれてしまう等の強度上の問題があった。塗膜が剥がれてしまうとデザイン性が大きく損なわれてしまい、商品価値がなくなってしまう。
【0027】
本発明のキーシート補強フレーム用積層材100においては、このような問題を解決するために、着色樹脂層20の厚みを、15μm以上200μm以下とした。このような厚みを有する着色樹脂層20であれば、強度が高く、打ち抜き加工等が施されたとしても、金属板との密着性を十分に保つことができる。
【0028】
また、着色樹脂層20は、JIS K7127に準拠して測定される、引っ張り強さが50MPa以上300MPa以下の範囲にあり、伸び率が50%以上200%以下の範囲にあることが好ましい。かかる範囲内にあれば、強度が高く、フィルムが曲げ加工や絞り加工に対応して伸びるため、脆くなって剥離したりすることがない。なお、本発明において着色樹脂層20において好ましく用いられる25μm厚のフィルムの場合、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂からなるフィルムの場合には、引っ張り強さ:215MPa、伸び率:120%であり、例えばポリアミド樹脂からなるフィルムの場合には、引っ張り強さ:215MPa、伸び率:100%である。
【0029】
このような強度を備えた着色樹脂層20を形成する方法として、着色された樹脂シートを金属板10に貼り付ける方法、および、着色樹脂を金属板10上に押出ラミネートする方法が挙げられる。
【0030】
着色された樹脂シートとしては、金属板10と接着させることができ、打ち抜き加工等に耐えうる所定の強度を備えたものであれば特に限定されないが、例えば、着色顔料があらかじめ練り込んであるポリエチレンテレフタレートフィルムやポリアミドフィルムなどが特に好ましく使用できる。また、他の樹脂としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリウレタン等も使用可能である。
【0031】
なお、着色された樹脂シートとして、透明樹脂シート上に着色塗布層を設けた多層構成とすることもできる。例えば、表面に着色インクが塗布されている易接着ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用することができる。
【0032】
なお、樹脂シートの「シート」は、フィルムと区別する意味で用いているのではない。本明細書において、樹脂シートとは、樹脂シートおよびフィルムの意味であり、フィルムとされる層厚も含む意味である。
【0033】
樹脂シートに使用する着色顔料としては、樹脂シートを着色して金属板10の表面を隠ぺいできるものであれば、特に限定されない。着色顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化鉄等の黒色顔料、酸化チタン等の白色顔料、鉛丹等の赤色顔料、黄鉛等の黄色顔料等の無機顔料、あるいは、各種の有機顔料を使用することができる。この中でも、下地の金属板10の隠ぺい性の点から、無機顔料を使用することが好ましい。
【0034】
また、黒色顔料である酸化鉄は、1次粒子の平均粒子径は200nm程度であり、かなりばらつきが大きい。また、1次粒子が凝集してなる2次粒子の粒子径は、数十マイクロとなることもある。そのため、樹脂シートを薄型化したい場合は、黒色顔料としては、粒子径の小さいカーボンブラックを使用することが好ましい。
【0035】
顔料の添加量は、着色樹脂層20が好ましい隠ぺい性を示す量であるが、例えば、上記の無機顔料を使用した場合は、樹脂材料100質量部に対して、0.3質量部以上20質量部以下添加することが好ましく、特に、1.0質量部以上10質量部以下添加することが好ましい。0.3質量部以上であれば、十分に遮蔽することができ、20質量部以内であれば、加工に耐えられる。
【0036】
金属板10と樹脂シートとは、熱接着されていることが好ましい。熱接着の方法は、特に限定されず、公知の熱接着法を採用できる。熱接着法としては、例えば、金属板10を200℃〜500℃の加熱炉に通し、表面温度を100℃〜350℃に制御した状態で、樹脂シートを加熱された金属板10に積層して、加圧ロールで加圧する方法、ならびに、加熱前に金属板10と樹脂シートとを積層して、金属板10の表面が100℃〜350℃になるように加熱金属ロールで押圧しながら接着する方法が挙げられる。
【0037】
また、着色樹脂層20は、着色樹脂を金属板10上に押出ラミネートすることによっても形成できる。着色樹脂としては、上記の樹脂シートを形成するための樹脂材料が使用できる。押出ラミネートの方法は、特に限定されず、公知の方法を採用できる。
【0038】
また、形成された着色樹脂層20の厚みは、強度および加工上の点から、必要最低限の厚さであればよく、下限が15μm以上であり、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上である。また、15μm以上であれば金属板表面を十分に隠蔽することができ、デザイン性を損なうことがない。上限としては200μm以下であり、好ましくは150μm以下であり、より好ましくは100μm以下である。200μm以下であれば曲げ加工や絞り加工において剥離等を生じることがない。
【0039】
また、着色樹脂層20の表面には、マット加工が施されていてもよい。これによりデザインにバリエーションを付与できる。マット加工を施す方法としては、金属板10上に着色樹脂層20を形成してから、該着色樹脂層20を加熱して、エンボスロールで表面にエンボス加工する方法、金属板10に貼り付ける前の樹脂シートにあらかじめエンボス加工を施しておく方法がある。
【0040】
また、着色樹脂層20は、金属板10上にまず着色塗布層を形成し、その上に透明樹脂シートを貼り付けた多層構成とすることもできる。この場合、着色塗布層により、金属板10の色が隠ぺいされデザイン性が付与できる。そして、その上に透明樹脂シートが積層されることにより打ち抜き加工等に対する耐久性も付与できる。ここで、透明樹脂シートの「透明」とは、透明樹脂シート下部の着色樹脂層が視認できる程度に透明であればよく、半透明も含む意味である。また、透明樹脂シート中に光輝性材料が分散された構造のものであってもよい。
【0041】
<キーシート補強フレーム200>
本発明のキーシート補強フレーム200は、上記したキーシート補強フレーム用積層材100に対して打ち抜き加工、場合によっては、さらに、曲げ加工や絞り加工を施すことによって作製される。本発明のキーシート補強フレーム200の正面図を図1(b)に、図1(b)のA−A線における断面図を図1(c)に示した。図示したキーシート補強フレーム200には、合計九個の開口部220が打ち抜き加工により形成されている。打ち抜き加工は、作製するキーシート補強フレーム200の形状に対応する所定の金型および一般的な打ち抜き装置を用いて行うことができる。また、場合によって施されるプレス成形(曲げ加工、絞り加工)は、公知の冷間プレス成形により行うことができる。
【0042】
図2に本発明のキーシート補強フレーム200の使用形態の一例を示した。図2(a)に使用形態の断面図を示した。キーシートは、キートップ320およびキーパッド340から構成されている。キーシートは、ドームスイッチ基板360上に本発明のキーシート補強フレーム200を介して配置されている。なお、図2(b)には、ぞれぞれの部材の正面図を示した。また、図3に本発明のキーシート補強フレーム200の使用形態の別例を示した。
【0043】
キーシートは、携帯電話、PDA等の情報端末機器の入力操作部を構成する部品であり、ウレタンゴムやシリコーンゴムなどのゴム弾性を有する樹脂よりなるシート状のキーパッド340の上面に、硬質樹脂製のキートップ320を接着したしたものをいう。キーパッド340の下方向には、ドームスイッチ基板360が配置されている。キーパッド340裏面には押し子と呼ばれる突起が形成されており、キートップ320をクリックすると、この押し子がドームスイッチを押すこととなる。また、図2(b)に示すようにキートップ320には、文字や記号の形に光が透過できるように抜き文字を形成できる。これによって、キートップ320背後よりLEDやELで照光することで、暗所でもキー操作が可能となる。その際に、キーパッド340は光を通す必要があるため、キーパッド340の多くは無色透明に近いものとなっている。
【0044】
本発明のキーシート補強フレーム200に形成された開口部220は、キーシートの可動部分に対応するように配置される。よって、例えば図2の使用形態の場合にはキーパッド340に形成された押し子の下部に、各開口部220が位置するように、キーシート補強フレーム200は配置される。また、図3の使用形態の場合にはキーパッド340に形成された押し子の上部に、各開口部220が位置するように、キーシート補強フレーム200は配置される。また、本発明のキーシート補強フレーム200のフレーム部分は、キーシートの不動部分に対応しており、各キートップ320、320…の外縁下部に位置するように配置される。このようにしてキーシートの変形が防止されている。
【0045】
また、このように補強フレームが配置されるので、透明なキーパッド340を通して、あるいは直接的に、外部(操作者側)から、補強フレームの表面が視認できる。本発明の補強フレーム200においては、着色樹脂層20が表面に形成されているので、金属板表面を隠すことができ、デザイン性を向上できる。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
コイル状の150μm厚のSUS304(1/2H)を、450℃の加熱炉を通過させて、表面温度が300℃になるようにコントロールした状態で、カーボンブラックを1質量%含んだ厚み25μmのポリエチレンテレフタレート製の黒色樹脂シートを貼り合わせた。その後、樹脂シートを280℃に再加熱し、エンボスロールで樹脂シートの表面にエンボス加工を施して、キーシート補強フレーム用積層材を得た。
【0047】
得られたキーシート補強フレーム用積層材に打ち抜き加工と曲げ加工を行い、キーシート補強フレームを得た。
【0048】
(実施例2)
コイル状の150μm厚のSUS304(H材)の片面に、アミノシランと界面活性剤の濃度がそれぞれ、0.3質量%、0.05質量%となるように調製した水溶液をコーターロールによって、金属板表面のアミノシラン濃度が50mg/mとなるように塗布した。これを、300℃の加熱炉を通過させて、表面温度が270℃になるように制御した状態で、酸化鉄を5質量%含んだ厚み50μmのポリアミドフィルム製の黒色樹脂シートを貼り合わせた。その後、樹脂シートを250℃に再加熱し、エンボスロールで樹脂シートの表面にエンボス加工を施して、キーシート補強フレーム用積層材を得た。
【0049】
得られたキーシート補強フレーム用積層材に打ち抜き加工と曲げ加工を行い、キーシート補強フレームを得た。
【0050】
(比較例1)
150μm厚のSUS304(1/2H)に、ポリウレタン系の黒色塗料を乾燥塗布厚10μmになるように塗装し、150℃で60秒焼き付けて、塗装ステンレス鋼板を得た。得られた塗装ステンレス鋼板に打ち抜き加工と曲げ加工を行い、キーシート補強フレームを得た。
【0051】
<結果>
上記の実施例1、実施例2および比較例1におけるキーシート補強フレームをそれぞれ20個作製し、加工性を目視で評価した。
【0052】
実施例1、実施例2では、全数において、樹脂シート面に傷は見られず、端部に剥離も見られなかった。曲げ加工された部分にも樹脂シートの欠落等の欠陥は見られなかった。これに対して、比較例1では、20個中、3個において、塗装面に傷(開口部端部付近の塗膜の剥離)が見られた。曲げ加工された部分では、20個中5個で塗料の剥離が見られた。
【0053】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うキーシート補強フレーム用積層材およびキーシート補強フレームもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(a)は、本発明のキーシート補強フレーム用積層材100の断面図である。(b)は、本発明のキーシート補強フレーム200の正面図である。(c)は本発明のキーシート補強フレーム200のA−A線断面図である。
【図2】(a)は、本発明のキーシート補強フレームの使用形態の一例を示す説明図である。(b)は各部材の正面図である。
【図3】本発明のキーシート補強フレームの使用形態の別例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
10 金属板
20 樹脂シート
100 キーシート補強フレーム用積層材
220 開口部
200 キーシート補強フレーム
320 キートップ
340 キーパッド
360 ドームスイッチ基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報端末機器の入力ボタン部に使用されるキーシート補強フレーム用積層材であって、金属板、および、該金属板の少なくとも片面に積層された着色樹脂層を備えて構成され、
前記着色樹脂層の厚みが、15μm以上200μm以下である、
キーシート補強フレーム用積層材。
【請求項2】
前記着色樹脂層が、着色された樹脂シートである、請求項1に記載のキーシート補強フレーム用積層材。
【請求項3】
前記着色樹脂層が、着色塗布層と透明樹脂シートとの多層構成である、請求項1に記載のキーシート補強フレーム用積層材。
【請求項4】
前記金属板と前記樹脂シートとが熱接着されている、請求項2または3に記載のキーシート補強フレーム用積層材。
【請求項5】
前記着色樹脂層が、金属板上に着色樹脂を押出ラミネートして形成されたものである、請求項1に記載のキーシート補強フレーム用積層材。
【請求項6】
前記金属板が、シランカップリング剤で表面処理されたものである、請求項1〜5のいずれかに記載のキーシート補強フレーム用積層材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のキーシート補強フレーム用積層材、および、該積層材に打ち抜き加工を施して形成された複数の開口部を備えて構成されるキーシート補強フレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−243716(P2008−243716A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85494(P2007−85494)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】