説明

キーパッドおよびこれを備えた電子機器

【課題】電子機器の筐体に形成された押圧部材と密着性を高めることによって、電子機器の操作性や防水機能を維持することができるキーパッドおよびこれを備えた電子機器を提供する。
【解決手段】本発明のキーパッド4は、電話機の開口部にそれぞれ配置されるボタン6aと、このボタン6aの外側に形成された周縁部6bとから構成される。周縁部6bのリブ8aが押圧する面の反対側の面には、押圧するリブ8aの位置と同一線上となる位置よりわずかに内側に、リブ8aの先端形状と略同じ形状を有する溝部10がキーパッド4のほぼ全周に渡って形成されている。リブ8aに押圧され食い込まれた部分のゴムは、溝部10にできた空間を利用して十分に弾性変形することができる。よって、リブ8aはキーパッド4に対して十分に食い込むことができ、リブ8aとキーパッド4との密着性が高まるので、電話機の操作性や防水機能を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の筐体内部に配置されるゴム製のキーパッドおよびこれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
適度な硬度を持ち、弾性的な変形が可能であるゴムの特性を生かして、複数の押下ボタンが一体成型されたゴム製のキーパッドが電子機器に用いられている(例えば、特許文献1)。このようなゴム製のキーパッドにより、使用者はわずかな力でも確実にボタンを繰り返し押下することができ、また、ゴムの弾性変形による密着性を利用して、電子機器に防水機能を持たせることが可能となる。
【0003】
図6から図8にゴム製のキーパッドを備えた電子機器の一つである従来の電話機を示す。図6は従来の電話機を示す図、図7は従来の電話機の上ケースの背面図、図8は図6のC−C線断面図である。図6、図7および図8に示すように、電話機は、筐体およびこの筐体内部に配置されるキーパッド4およびこのキーパッド4の裏面に配置される接触部材となる回路基板5により構成されている。電話機の筐体は、上ケース2と下ケース3により形成され、上ケース2にはゴム製のキーパッド4の押下ボタンとなるボタン6aがそれぞれ配置される開口部7が複数設けられている。また、キーパッド4を固定するとともに上ケース2の複数の開口部7から水が侵入するのを防ぐため、筐体の内側となる上ケース2の背面側には、上ケース2から背面側に向かってほぼ垂直に、また、全ての開口部7をまとめて取り囲むように、キーパッド4を押圧する押圧部材となるリブ8aが形成されている。
【0004】
電話機1は、上ケース2を下に向け、この上ケース2の開口部7にキーパッド4のボタン6aを突出させた状態で配置し、さらにキーパッド4の裏面側に回路基板5を密着させて置き、最後に下ケース3を上ケース2と嵌合させることによって組み立てられる。
【特許文献1】特開平9−270837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の電話機では、リブ8aが複数の開口部7をまとめて取り囲むように形成されており、またキーパッド4の裏面には回路基板5が密着しているので、リブ8aは、キーパッド4の表面に食い込んで押さえることができずキーパッド4全体を押し下げてしまい、リブ8aとキーパッド4との密着性が悪くなり防水機能に不具合が生じる。さらに、ボタン6aの開口部7からの突出高さが所定の高さよりも低くなって操作性も悪くなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、電子機器の筐体に形成された押圧部材との密着性を高めることによって電子機器の操作性や防水機能を維持することができるキーパッドおよびこれを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のキーパッドは、ゴム製の板状体の表面に一体成型された複数の押下ボタンを備え、前記複数の押下ボタンがそれぞれ配置される複数の開口部を有する電子機器の筐体内部に配置されるキーパッドであって、前記複数の押下ボタンの外側には、前記複数の開口部をまとめて取り囲むように前記筐体内部に形成された押圧部材と当該キーパッドの裏面に配置される接触部材とで狭持される周縁部が形成され、この周縁部には、前記押圧部材が押圧する面の反対側の面に溝部が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のキーパッドは、押圧部材が押圧する面の反対側の面に、押圧部材によって押圧されたゴムが弾性変形することができる溝部が形成されており、押圧部材によって押し込まれた部分のゴムが溝部を利用して十分に弾性変形するので、押圧部材はキーパッドの表面に十分食い込むことができる。従って、キーパッドと押圧部材との密着性を高めることができ、このキーパッドを備えた電子機器の操作性や防水機能を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本願の第1の発明は、ゴム製の板状体の表面に一体成型された複数の押下ボタンを備え、複数の押下ボタンがそれぞれ配置される複数の開口部を有する電子機器の筐体内部に配置されるキーパッドであって、複数の押下ボタンの外側には、複数の開口部をまとめて取り囲むように筐体内部に形成された押圧部材と当該キーパッドの裏面に配置される接触部材とで狭持される周縁部が形成され、この周縁部には、押圧部材が押圧する面の反対側の面に溝部が形成されたことを特徴とする。
【0010】
本発明のキーパッドは、電子機器の筐体内部に配置される際、周縁部が電子機器の筐体内部に形成された押圧部材と当該キーパッドの裏面に配置される接触部材とで狭持される。キーパッドは、キーパッドと押圧部材との密着性を高めるため、押圧部材がキーパッドの表面にある程度食い込んで密着するような位置に配置されている。押圧部材がキーパッドを押圧すると、押圧部材によって押し込まれた部分のゴムは、押圧部材が押圧する面の反対側の面に形成された溝部を利用して十分に弾性変形するので、押圧部材はキーパッドに十分食い込むことができ、押圧部材とキーパッドとの密着性が高まる。従って、キーパッドが押圧部材により全体的に押し下げられて電子機器の操作性が悪くなったり、キーパッドと押圧部材との密着性が落ちて防水機能に不具合が生じたりすることを防止できる。なお、溝部はゴムの硬度や押しつけ量によってその形状や大きさを適宜決めることができる。また、溝部を設ける位置は、押圧部材により押圧されたゴムが十分に弾性変形するための溝部として機能できれば、押圧部材と同一線上に設けても、その近傍に設けてもよい。
【0011】
本願の第2の発明は、本願の第1の発明において、周縁部の押圧部材が押圧する面には、押圧部材が押圧する位置よりも外側に、この面から連続して起立する側壁部が設けられたことを特徴とする。
【0012】
キーパッドの側壁部は、周縁部の押圧部材が押圧する面の、押圧部材が押圧する位置よりも外側に設けられているので、押圧部材とキーパッドの側壁部とで二重の防水機能を維持することができる。なお、側壁部は、キーパッドを押圧する押圧部材の外側の側面と接触する位置に設けることがより望ましい。これにより、押圧部材とキーパッドの側壁部との密着性を高めることができ、電子機器の防水機能をさらに高めることができる。
【0013】
本願の第3の発明は、本願の第1または第2の発明において、ゴムは、硬度が40°から80°であることことを特徴とする。
【0014】
ゴムの硬度が40°から80°であることによって、このキーパッドを備えた電子機器の使用者が押下ボタンを繰り返し押下しても、ゴムの弾性により押下ボタンは元の位置に戻るので操作性がよく、またわずかな力で押下ボタンを操作することができる。
【0015】
ここで、ゴムの硬度が40°より小さいと、ゴムの粘性の影響がでてしまうので、使用者が押下ボタンを押下した際に押下ボタンが弾性的な変形をすることができず、筐体内部に落ち込んだままとなってしまったり、押下ボタンの押圧力不足による操作不良を起こしたりする。また、ゴムの硬度が80°より大きいと、押下ボタンを操作する際に大きな力を加えないといけないので、電子機器の操作性が悪くなる。
【0016】
本願の第4の発明は、本願の第1から第3の発明において、溝部の容積は、押圧部材によって周縁部が押し込まれたときの押し込み部分のゴムの容積以下であることを特徴とする。
【0017】
溝部の容積が、押圧部材によって周縁部が押し込まれたときの押し込み部分のゴムの容積以下であることによって、押圧部材によって押し込まれた部分のゴムが弾性変形することができる容積が十分に確保され、押圧部材がキーパッドに十分食い込むことができ、押圧部材とキーパッドとの密着性を高めることができる。ここで、押圧部材が周縁部に食い込む容積とは、キーパッドの周縁部に押し込まれた押圧部材の体積を意味する。なお、溝部の容積が、押圧部材が周縁部に食い込む容積よりも大きい場合は、キーパッドの強度が落ちてしまい密着性が低下する。
【0018】
本願の第5の発明は、複数の開口部を有する電子機器の筐体と、筐体内部に配置され、複数の開口部にそれぞれ配置される複数の押下ボタンがゴム製の板状体の表面に一体成型されたキーパッドと、当該キーパッドの裏面に配置される接触部材とで構成される電子機器であって、キーパッドの複数の押下ボタンの外側には、複数の開口部をまとめて取り囲むように筐体に形成された押圧部材と接触部材とで狭持される周縁部が形成され、この周縁部には、押圧部材が押圧する面の反対側の面に溝部が形成されたことを特徴とする電子機器である。
【0019】
周縁部の押圧部材が押圧する面の反対側の面に溝部が形成されたキーパッドを備えた電子機器は、キーパッドと押圧部材との密着性を保つことができ、また、押下ボタンの開口部からの突出高さが所定の高さを維持することができるので、防水機能と操作性を維持した電子機器とすることができる。
【0020】
(実施の形態)
以下、図を用いて本発明の電子機器の一例である電話機について説明する。図1は本発明の実施の形態における電話機の正面図である。図2は電話機の上ケースの背面図である。図3は本発明の実施の形態における電話機内に配置されるキーパッドであり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は背面図、(d)は(a)のB−B線断面図である。図4は図1のA−A線断面図である。図5は図4のP部拡大図であり、(a)は押圧前、(B)は押圧後である。
【0021】
図1および図4に示すように、本実施の形態の電話機1は、上ケース2と下ケース3により筐体が形成され、その内部にキーパッド4とこのキーパッド4の裏面に配置される接触部材となる回路基板5が配置されている。
【0022】
上ケース2および下ケース3はプラスチック製で、上ケース2の突起部(図示せず)と下ケース3の凹部(図示せず)を嵌合させて筐体を形成する。図2に示すように、上ケース2には、後述するゴム製のキーパッド4のボタン6aがそれぞれ配置される複数の開口部7が設けられている。また、上ケース2の背面側には、キーパッド4を押圧する押圧部材となるリブ8aが、上ケース2から背面側に向かってほぼ垂直に突出した状態で、そして、全ての開口部7をまとめて取り囲むように形成されている。リブ8aは、幅が約0.7mmであり、先端は曲面を有している。また、それぞれの開口部7の周囲にはリブ8bがリブ8aと同様に、上ケース2から背面側に向かってほぼ垂直に突出した状態で設けられている。
【0023】
図3に示すように、キーパッド4は硬度60°のシリコンゴムを材料とし、電話機1の開口部7にそれぞれ配置される押下ボタンとなるボタン6aと、このボタン6aをすべて取り囲むようにキーパッド4の周縁に形成された周縁部6bと、それぞれのボタン6aの裏面に取り付けられた円柱状の導電部材6cとから構成される。ボタン6aは、上ケース2のリブ8a,8bが押圧する面となるキーパッド4の表面側から複数突出した状態でキーパッド4と一体成型されている。導電部材6cは、各ボタン6aにつき一つずつ取り付けられており、ボタン6aが押下されると、この導電部材6cは回路基板5に形成された各ボタン6aに対応する接点パターンを短絡することができる。
【0024】
キーパッド4は硬度が60°のゴムにより成型されているので、ゴムの弾性作用により、操作者が押下をやめるとボタン6aは元の位置に戻る。従って、電話機1の使用者が繰り返しボタン6aを押下しても、その都度ボタン6aは回路基板5を短絡することができ、このボタン6aに対応した操作がその都度行われる。それぞれのボタン6aの付け根部分の厚さはその周囲よりも薄く形成されており、ボタン6aを押下したときにボタン6aの付け根部分が容易に弾性変形するので、電話機1の使用者はわずかな力でボタン6aを押下することができる。
【0025】
キーパッド4の周縁部6bには、キーパッド4の表面側から連続して起立する側壁部9が形成されている。この側壁部9は、上ケース2のリブ8aがキーパッド4を押圧する際、リブ8aの外側の側面と密着する位置に設けられている。
【0026】
また、図3および図5(a)に示すように、周縁部6bのリブ8aが押圧する面の反対側の面には、押圧するリブ8aの位置と同一線上となる位置よりわずかに内側に、リブ8aの先端形状と略同じ形状を有する溝部10がキーパッド4のほぼ全周に渡って形成されている。この溝部10は、幅が約0.7mm、深さが0.2mmとなっている。
【0027】
回路基板5には、キーパッド4の裏面と接触する面となる表面に、それぞれのボタン6aに対応した接点パターン(図示せず)が形成されている。ボタン6aが押下され、導電部材6cがこの接点パターンを短絡することにより電話機1の所定の機能を実行することができる。
【0028】
本実施の形態の電話機1は、上ケース2を下に向けた状態で、この上ケース2の開口部7にキーパッド4のボタン6aを突出させた状態で配置し、このキーパッド4の導電部材6cが取り付けられた面に、回路基板5の接点パターンが形成された面を密着させて置き、最後に下ケース3を上ケース2と嵌合させることによって組み立てられる。このとき、図5(b)に示すように、リブ8aにより押圧された部分のゴムは、溝部10にできた空間を利用して十分に弾性変形することができる。よって、リブ8aはキーパッド4に対して約0.3mm食い込むことができる。
【0029】
このように、リブ8aは、キーパッド4全体を押し下げることなくキーパッド4に食い込むので、ボタン6aの開口部7からの突出高さが所定の高さよりも低くなって電話機1の操作性が悪くなることを防止することができる。また、キーパッド4の側壁部9とリブ8aの外側の側面とがキーパッド4の周縁部6bでしっかりと密着するので、上ケース2の開口部7から水が侵入し、キーパッド4の周縁部6bに流れ込んでも、この水はリブ8aおよびキーパッド4の側壁部9で堰き止められ、キーパッド4の裏側にある回路基板5へと流れ込まないようになっているため、電話機1は高い防水機能を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のキーパッドは、電子機器の筐体に形成された押圧部材によって押し込まれた部分のゴムを十分に弾性変形させることができ、押圧部材とキーパッドの密着性を高めることができるので、特に、防水機能を備えた電子機器のキーパッドとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態である電話機の正面図
【図2】電話機の上ケースの背面図
【図3】(a)本発明の実施の形態である電話機内に配置されるキーパッドの正面図、(b)同キーパッドの右側面図、(c)同キーパッドの背面図、(d)図3(a)のBーB線断面図
【図4】図1のA−A線断面図
【図5】(a)図4におけるP部の押圧前の拡大図、(b)図4におけるP部の押圧後の拡大図
【図6】従来の電話機を示す図
【図7】従来の電話機の上ケースの背面図
【図8】図6のC−C線断面図
【符号の説明】
【0032】
1 電話機
2 上ケース
3 下ケース
4 キーパッド
5 回路基板
6a ボタン
6b 周縁部
6c 導電部材
7 開口部
8a,8b リブ
9 側壁部
10 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材の板状体の表面に一体成型された複数の押下ボタンを備え、前記複数の押下ボタンがそれぞれ配置される複数の開口部を有する電子機器の筐体内部に配置されるキーパッドであって、
前記複数の押下ボタンの外側には、前記複数の開口部をまとめて取り囲むように前記筐体内部に形成された押圧部材と当該キーパッドの裏面に配置される接触部材とで狭持される周縁部が形成され、
この周縁部には、前記押圧部材が押圧する面の反対側の面に溝部が形成されたキーパッド。
【請求項2】
前記周縁部の前記押圧部材が押圧する面には、前記押圧部材が押圧する位置よりも外側に、この面から連続して起立する側壁部が設けられた請求項1に記載のキーパッド。
【請求項3】
前記板状体は、硬度が40°から80°のゴムである請求項1または2記載のキーパッド。
【請求項4】
前記溝部の容積は、前記押圧部材によって前記周縁部が押し込まれたときの押し込み部分のゴムの容積以下である請求項1から3のいずれかの項に記載のキーパッド。
【請求項5】
複数の開口部を有する電子機器の筐体と、
前記筐体内部に配置され、前記複数の開口部にそれぞれ配置される複数の押下ボタンがゴム製の板状体の表面に一体成型されたキーパッドと、
当該キーパッドの裏面に配置される接触部材とで構成される電子機器であって、
前記キーパッドの前記複数の押下ボタンの外側には、前記複数の開口部をまとめて取り囲むように前記筐体に形成された押圧部材と前記接触部材とで狭持される周縁部が形成され、
この周縁部には、前記押圧部材が押圧する面の反対側の面に溝部が形成されたことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
複数の開口部を有する筐体と、
前記筐体内部に配置され、前記複数の開口部にそれぞれ配置される複数の押下ボタンがゴム製の板状体の表面に一体成型されたキーパッドと、
当該キーパッドの裏面に配置される接触部材とで構成され、
前記キーパッドの前記複数の押下ボタンの外側には、前記複数の開口部をまとめて取り囲むように前記筐体に形成された押圧部材と前記接触部材とで狭持される周縁部が形成され、
この周縁部には、前記押圧部材が押圧する面の反対側の面に溝部が形成されたことを特徴とする電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−147158(P2006−147158A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331529(P2004−331529)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】