説明

キーレスエントリー装置

【課題】 通信データをできるだけ小さくして信号強度が微弱な場合にも確実に強度測定できるキーレスエントリー装置を提供する。
【解決手段】 車両側送信部11は携帯機3を起動状態とする第1の信号と、第1の信号の後に複数の送信アンテナ15、15から所定順かつ所定間隔で送信される第2の信号とを送信し、携帯機3は第1の信号で起動し第2の信号の各強度を検出すると共に、検出した強度の情報を携帯機送信部21に送信させる携帯機制御部22を備え、車両側装置2は携帯機3から受信した強度の情報を基に携帯機3の位置を判別する車両側制御部12を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側装置と携帯機の間で無線通信を行うことで車両のドアをロック・アンロックするキーレスエントリー装置に関し、特に携帯機の位置を判別できるキーレスエントリー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に設けられた車両側装置と使用者が携帯する携帯機の間で無線通信を行い、車両のドアをロック・アンロックするキーレスエントリー装置が知られている。また近年、携帯機が車両に近づくと、車両側装置と携帯機の間で自動的に通信が行われ、個々の携帯機に一義的に設定されているIDの認証がなされれば車両のドアのロック・アンロック動作を行うパッシブ・キーレスエントリー装置も知られている。このようなキーレスエントリー装置としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【特許文献1】特開2002−77972号公報
【0003】
特に、パッシブ・キーレスエントリー装置においては、携帯機が車両の外側にあるか内側にあるかを判別できることが重要である。このために、特許文献1には、車両からアンテナの識別情報を含む探査信号を送信し、携帯機は探査信号の受信強度データとアンテナ識別コードを含む信号を応答信号として返信し、その応答信号を基に携帯機の位置を判別することが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のキーレスエントリー装置では、信号強度を検出する際の確実性が充分とは言えなかった。車両から送信される探査信号には、アンテナの識別コードなど各種のコードが含まれており、携帯機の位置によって探査信号の強度が低い場合には、コードを読み取ることができないために、アンテナを識別できないことがある。また、複数のアンテナからそれぞれ信号を送信するため、データ量が多く、通信に時間を要すると共に、消費電力も大きなものとなっていた。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、通信データをできるだけ小さくして信号強度が微弱な場合にも確実に強度測定できるキーレスエントリー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るキーレスエントリー装置は、車両に設けられリクエスト信号を送信する複数の送信アンテナを有する車両側送信部と、アンサー信号を受信する車両側受信部とを備えた車両側装置と、上記リクエスト信号を受信する携帯機受信部と、アンサー信号を送信する携帯機送信部とを備えた携帯機とを有したキーレスエントリー装置において、
上記車両側送信部は上記携帯機を起動状態とする第1の信号と、該第1の信号の後に上記複数の送信アンテナから所定順かつ所定間隔で送信される第2の信号とを送信し、
上記携帯機は上記第1の信号で起動し上記第2の信号の各強度を検出すると共に、検出した強度の情報を上記携帯機送信部に送信させる携帯機制御部を備え、
上記車両側装置は上記携帯機から受信した強度の情報を基に携帯機の位置を判別する車両側制御部を備えることを特徴として構成されている。
【0007】
また、本発明に係るキーレスエントリー装置は、車両に設けられリクエスト信号を送信する複数の送信アンテナを有する車両側送信部と、アンサー信号を受信する車両側受信部とを備えた車両側装置と、上記リクエスト信号を受信する携帯機受信部と、アンサー信号を送信する携帯機送信部とを備えた携帯機とを有したキーレスエントリー装置において、
上記車両側送信部は上記携帯機を起動状態とする第1の信号と、該第1の信号の後に上記複数の送信アンテナから所定順かつ所定間隔で送信される第2の信号とを送信し、
上記携帯機は上記第1の信号で起動し上記第2の信号の各強度を検出し、該検出した強度の情報を基に携帯機の位置を判別すると共に、該判別情報を上記携帯機送信部に送信させる携帯機制御部を備えることを特徴として構成されている。
【0008】
さらに、本発明に係るキーレスエントリー装置は、車両に設けられリクエスト信号を送信する車両側送信部と、アンサー信号を受信する複数の受信アンテナを有する車両側受信部とを備えた車両側装置と、上記リクエスト信号を受信する携帯機受信部と、アンサー信号を送信する携帯機送信部とを備えた携帯機とを有したキーレスエントリー装置において、
上記携帯機送信部は上記車両側装置の受信部を起動状態とする第1の信号と、該第1の信号の後に送信される第2の信号とを送信し、
上記車両側装置の受信部は上記第1の信号で起動し上記複数の受信アンテナで受信した第2の信号の各強度を検出し、該検出した強度の情報を基に携帯機の位置を判別する車両側制御部を備えることを特徴として構成されている。
【0009】
さらにまた、本発明に係るキーレスエントリー装置は、上記複数の送信アンテナから送信される第2の信号は一定周期で一定振幅の信号であることを特徴として構成されている。
【0010】
そして、本発明に係るキーレスエントリー装置は、上記携帯機制御部は上記第2の信号の受信タイミングで送信アンテナを判別すると共に、各第2の信号の強度を検出することを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るキーレスエントリー装置によれば、車両側送信部は携帯機を起動状態とする第1の信号と、第1の信号の後に複数の送信アンテナから所定順かつ所定間隔で送信される第2の信号とを送信し、携帯機は第1の信号で起動し第2の信号の各強度を検出し、その強度情報を基に携帯機の位置を判別することにより、各第2の信号にウェークアップ信号やコマンド信号を含める必要がなく、データ量を少なくして通信にかかる時間を減らすことができると共に、消費電力を減らすことができる。
【0012】
また、本発明に係るキーレスエントリー装置によれば、複数の送信アンテナから送信される第2の信号は一定周期で一定振幅の信号であることにより、携帯機側での第2の信号の認識をより確実にすることができる。
【0013】
さらに、本発明に係るキーレスエントリー装置によれば、携帯機制御部は第2の信号の受信タイミングで送信アンテナを判別すると共に、各第2の信号の強度を検出することにより、携帯機の位置によりウェークアップ信号やコマンド信号を認識できない程度の微弱な電波状態の場合でも、受信タイミングによってどの送信アンテナから送信された信号であるかを確実に識別して強度測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。図1には、本実施形態におけるキーレスエントリー装置の概要図を示している。本実施形態におけるキーレスエントリー装置は、車両1のドア1aをロックまたはアンロックするものであり、車両1側には車両側装置2が設けられ、使用者は携帯機3を携帯し、車両側装置2と携帯機3の間で無線通信を行って認証やロック・アンロックの指令等をなすものである。車両側装置2は、車両1の各所に複数の送信アンテナ15を有しており、各送信アンテナ15から携帯機3に対してリクエスト信号が送信される。なお、リクエスト信号は低周波信号からなっている。
【0015】
以下、使用者が車両1に近づいて、ドア1aをアンロックする場合について主に説明する。本実施形態では、携帯機3を持った使用者がドア1aをアンロックするには、ドア1aのドアノブ1b近傍に設けられたリクエストスイッチ16を押すことを必要としている。リクエストスイッチ16が押されると、車両側装置2と携帯機3との間で認証等の通信が行われ、認証がなされた場合に車両側装置2はドア1aのロックを解除する。
【0016】
次に、車両側装置2及び携帯機3の構成について説明する。図2には車両側装置2の構成図を、図3には携帯機3の構成図を、それぞれ示している。図2に示すように、車両側装置2は、携帯機3からのアンサー信号を受信する車両側受信部10と、携帯機3に対してリクエスト信号を送信する車両側送信部11と、アンサー信号を受信した際やリクエストスイッチ16が押された際に各種制御を行う車両側制御部12とを有している。
【0017】
また、車両側制御部12には、車固有の識別符号である例えば8ビットのV−ID(Vhicle−ID)や1台の車両を操作可能な複数の携帯機のIDなど制御に必要な情報を記憶するメモリ13と、上述したリクエストスイッチ16が接続されている。さらに、車両側受信部10にはアンサー信号を受信するための受信アンテナ14が接続され、車両側送信部11にはリクエスト信号を送信するための複数の送信アンテナ15、15が接続される。複数の送信アンテナ15、15は、それぞれ車両1の内外各所に設けられる。
【0018】
図3に示すように、携帯機3は、車両側装置2からのリクエスト信号を受信する携帯機受信部20と、車両側装置2に対してアンサー信号を送信する携帯機送信部21と、リクエスト信号を受信した際に各種制御を行う携帯機制御部22と、自機にそれぞれ固有の値が設定されている例えば24ビットの携帯機ID及びV−ID等を記憶したメモリ24とを有している。また、携帯機受信部20と携帯機送信部21には、互いに直行するX、Y、Z方向の受信軸を有し、リクエスト信号やアンサー信号の送受信を行う三軸アンテナ23が接続される。
【0019】
携帯機制御部22は、携帯機受信部20で受信する車両側装置2からのリクエスト信号に含まれるウェークアップ信号によって、消費電力が略ゼロの状態であるスリープ状態から通常状態に切り替わる。また、携帯機制御部22は、リクエスト信号に含まれるコマンドに基づいて各種動作を行う。
【0020】
図4には、車両1における受信アンテナ14及び送信アンテナ15の配置と、送信アンテナ15からの電波の到達範囲について示している。受信アンテナ14は、車両1内に1か所設けられており、一方で送信アンテナ15は、送信アンテナ15a〜15fまで車両1の内外に複数設けられている。本実施形態においては、送信アンテナ15a〜15cまでの3つが車両1の内側に、送信アンテナ15d〜15fまでの3つが車両1の外側に、それぞれ設けられている。
【0021】
車両1の内側の送信アンテナ15d〜15fは、それぞれ電波の到達範囲が一部重複するように配置されて、3つで車内の略全域に対して電波を到達させ、車内にある携帯機3との間で信号を送受信することができる。車両1の外側の送信アンテナ15a〜15cは、それぞれ車両1の周囲に対して電波を到達させ、車外にある携帯機3との間で信号を送受信することができる。
【0022】
車両側装置2のメモリ13には、携帯機3の認証に必要なIDと、携帯機3の位置を判別するためのデータが記憶されている。携帯機3の位置を判別するためのデータは、車両1の内側と外側のそれぞれについて、各送信アンテナ15からの電波の強度と送信アンテナ15の識別符号を関連付けたデータを多数有した内側データ群と外側データ群から算出される。
【0023】
内側データ群の各データは、車両1内の車外との境界線近傍における各送信アンテナ15からの電波強度のうち、強度の大きいものから3つについて、どの送信アンテナ15であるかの識別符号とそれに対応する電波強度とを有している。このようなデータを、あらかじめ車両1の内側の略全周に渡って取得しておく。外側データ群は、車両1の外側であって車内との境界線近傍の略全周に渡って、内側データ群と同様にあらかじめデータを取得しておく。これらのデータの取得は、製品の開発時に、携帯機3あるいは強度測定装置を用いて実際の車両1について行う。または、製造ラインにおいてデータの取得を行うこともできる。
【0024】
内側データ群と外側データ群を取得したら、それぞれのデータ群についてマハラノビスの統計手法により基準空間を求めて、車両1の内側と外側それぞれの空間座標原点を算出する。これが携帯機3の位置を判別するためのデータとして、メモリ13に記憶されている。
【0025】
携帯機3の位置を判別する際には、携帯機3からは各送信アンテナ15のうち強度の大きいものから3つについて、どの送信アンテナ15であるかの識別符号とそれに対応する電波強度とを有したデータが送信される。この携帯機3から送信されたデータについて、メモリ13に記憶された内側データ群の空間座標原点からのマハラノビス距離と、外側データ群の空間座標原点からのマハラノビス距離とを、それぞれ算出し、マハラノビス距離の小さい方、すなわちどちらの集合により近似しているかを判断して、そちらに携帯機3が位置しているものと判別する。
【0026】
次に、キーレスエントリー装置の動作について説明する。図5には、ドアをアンロックする際の動作についてのフローチャートを示している。また、図6には、図5のフローにおいて車両側装置2と携帯機3からそれぞれ送信される信号のチャート図を示している。本実施形態のキーレスエントリー装置は、車両1に設けられたリクエストスイッチ16が押されることで、車両側装置2と携帯機3との間で無線通信がなされ、ドアのアンロックがされるものである。したがって、まず使用者が車両1のリクエストスイッチ16を押すことでフローが開始する(S1)。
【0027】
リクエストスイッチ16が押されると、車両側制御部12は車両側送信部11に携帯機の存在の可能性が高い運転席側の送信アンテナからリクエスト信号LF1を送信させる(S2)。図6に示すように、リクエスト信号LF1は、ウェークアップ信号を含む信号Aと、コマンド信号CMD1とからなっている。コマンド信号CMD1には、車固有の識別符号であるV−ID(Vhicle−ID)の情報が含まれている。
【0028】
携帯機3は、携帯機受信部20でリクエスト信号LF1を受信すると、携帯機制御部22がウェークアップ信号によりスリープ状態から通常状態となり、リクエスト信号LF1に含まれるV−IDが、自機が保持するV−IDと一致するか否かを判定する。ここでV−IDが一致しなければ、そこでフローは終了する。V−IDが一致すれば、携帯機制御部22は携帯機送信部21にアンサー信号RF1を送信させる(S5)。
【0029】
車両側受信部10がアンサー信号RF1を受信すると(S6)、車両側制御部12は車両側送信部11に位置確認信号LF2を送信させる。ところで、携帯機3のリクエスト信号LF1を受信してから該アンサー信号RF1送信するまでの時間は、それぞれの携帯機3に応じて異なる時間が設定されており、よって車両側装置2でリクエスト信号LF1を送信してからアンサー信号RF1を受信するまでの時間を測定する事によって複数の携帯機のうち、どれから応答があったかを判断できる。なお、該判断においては時間だけでの判断であり精度が乏しい為、以下の工程で精度の高い例えば24ビットの携帯機IDによる認証を行なう。
位置確認信号LF2は、図6に示すようにリクエスト信号LF1と同様にウェークアップ信号を含むと共に、前記時間によって判断した携帯機のIDを含む信号Aと、コマンド信号CMD2を含む信号及び各送信アンテナ15a〜15fから順に送信される複数のRssi測定用信号とからなっている。なお、この際、携帯機のIDを含む信号とコマンド信号が送信されるのは、前記リクエスト信号LF1の送信においてアンサー信号RF1を受信する事ができた、運転席側の送信アンテナの信号に含ませる。
【0030】
制御部12からの信号は送信部11によって、振幅変調を行なって各送信アンテナ15a〜15fから送信されるが、Rssi測定用の制御部12からの信号は、図6に示すように所定強度を有し所定時間に渡って継続するパルス状の信号であり、携帯機3側で受信強度を測定するために用いられる。よって、Rssi測定用の制御部12からの信号が、アンテナ15a〜15fから、送信される際には、変調の際に用いる搬送波の信号がそのまま送信される。各Rssi測定用信号は、車両側送信部11が各送信アンテナ15a〜15fに所定の順序かつ所定間隔で送信させるので、携帯機3は受信のタイミングによりどの送信アンテナ15からのRssi測定用信号であるかを識別することができる。
【0031】
各送信アンテナ15a〜15fから送信されたRssi測定用信号を含む位置確認信号LF2は、携帯機3の携帯機受信部20によって受信される(S8)。携帯機制御部22は、上述のように各Rssi測定用信号の強度を測定し、そのうち強度の強い方から3つのデータについて、どの送信アンテナ15であるかの識別符号とそれに対応する強度データとをアンサー信号RF2として車両側装置2に送信する(S9)。またこの際、アンサー信号RF2には、個々の携帯機に一義的に設定されているIDである携帯機のIDも含めて送信される。なお、信号の強度測定は、車両1側からRssi測定用信号を送信して、携帯機3側でその強度を測定するものには限られず、車両1側から送信されるリクエスト信号そのものの強度を測定するものであってもよい。但しリクエスト信号の場合は所定のコードを示す信号であり、コードによってRssi値が変化するので精度を高められないが、本実施例の場合は一定の信号であり精度を高められる。
【0032】
各送信アンテナ15a〜15fから送信されるRssi測定用信号は、所定順かつ所定間隔で送信され、携帯機3側では受信のタイミングによって送信アンテナ15を識別するので、各Rssi測定用信号にウェークアップ信号やコマンド信号を含める必要がなく、データ量を少なくして通信にかかる時間を減らすことができると共に、消費電力を減らすことができる。また、携帯機3の位置によりウェークアップ信号やコマンド信号を認識できない程度の微弱な電波状態の場合でも、受信タイミングによってどの送信アンテナ15から送信された信号であるかを確実に識別することができる。
【0033】
車両側装置2の車両側送信部11は、携帯機3からのアンサー信号RF2を受信する(S10)。アンサー信号RF2を受信したら、車両側制御部12はそれに含まれる携帯機のIDについて、車両に登録されたものと一致するか否かを判別する(S11)。ここで携帯機のIDが車両に登録されたものと一致しない場合には、そこでフローを終了し、次の携帯機に対して同様の動作を行う。一方、携帯機のIDが車両に登録されたものと一致する場合には、次に携帯機3の位置を判別する(S12)。
【0034】
携帯機3の位置の判別は、上述のように携帯機3から送信されたアンサー信号RF2に含まれる識別符号及び強度データと、メモリ13に記憶された内側データ群の空間座標原点及び外側データ群の空間座標原点との各マハラノビス距離を算出し、内側データ群の空間座標原点に近ければ携帯機3は車両1内に、外側データ群の空間座標原点に近ければ携帯機3は車両1外にあるものと判別する。
【0035】
車両側制御部12は、携帯機3が車両1内にあるか、車両1外にあるかによってその後、異なる制御を行う(S13)。携帯機3の位置が車両1外にない、すなわち携帯機3が車両1内にあると判別した場合には、そのままフローを終了する。
【0036】
リクエストスイッチ16を押してドアをアンロックさせる際には、携帯機3は車両1外にあるはずであって、使用者と共に携帯機3が車両1内にある場合にドアをアンロックさせると、携帯機3を持っていない人でもリクエストスイッチ16を押してドアをアンロックさせることができてしまう。これを防ぐために、携帯機3が車両1内にある場合には、ドアをアンロックしないようにしている。
【0037】
一方、携帯機3の位置が車両1外にあると判別した場合には、ドアの施錠装置(図示しない)に対してアンロックの指令信号を出力し、ドアをアンロックする(S14)。携帯機3の位置を、内側データ群と外側データ群からのマハラノビス距離算出により判別することとしたため、精度よく位置判別を行うことができ、したがってアンロックの誤動作を少なくすることができる。
【0038】
ここではリクエストスイッチ16を押してドアをアンロックする動作について示したが、ドアをロックする動作についても同様に携帯機3の位置判別を行って、その結果に応じた制御を行うことができる。また、ドアのロック・アンロック動作に限らず、携帯機3の位置に応じてエンジンを起動させるなどの動作についても、同様に携帯機3の位置判別を行って、その結果に応じて動作させることができる。
ところで、前述のS2において運転席側の送信アンテナからリクエスト信号LF1を送信させアンサー信号RF1が受信できた場合について言及したが、できない場合は次に優先順の高い送信アンテナ(例えば存在の頻度が多い、あるいはロック、アンロック等の所定条件を考慮して存在の頻度が高い)から同様に信号を送信して、携帯機3が受信できるアンテナを特定し、その後のLF2の送信において、ウェークアップ信号を送信するアンテナを決定する。
また、LF2の送信において携帯機3のIDの認証ができない場合には、次に、優先順の高い例えば車両の中央のアンテナにウェークアップ信号と携帯機3のIDを送信するアンテナを切り替えて信号を送信し認証ができるまでアンテナを切り替える。そのようにしても認証ができない場合には残りの携帯機のうちの優先度が高い携帯機(優先度は例えば所定期間内の使用頻度によって決定しておく)に対して、同様に、LF1の送信で特定したアンテナ、優先順が高いアンテナの順番で、ウェークアップ信号と携帯機3のIDを送信するアンテナを切り替える。更にこれでも認証できない場合は、他の携帯機に対して同様の手順を行う。ところで、このように携帯機のIDをLF2に含めた場合、認証できないと非常に多くの時間がかかってしまうので、携帯機のIDをLF2の信号に含めないで別途認証を行なうようにしても良い。
また、例えばLF1においてが特定ができなかった場合には、全てのアンテナからの送信信号にウェークアップ信号と携帯機のIDとを含める、あるいは優先順が高い複数のアンテナからの送信信号に含める等の変形が可能である。
また、LF1の送信を行なって受信可能なアンテナ、携帯機の特定、を必ずしも行う必要は無く、優先順が高い1つのアンテナ、あるいは全部のアンテナではない複数のアンテナにウェークアップ信号を含め、また携帯機のIDによる認証を別途行なうようにしても良い。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。例えば、本実施形態では図4に示すように送信アンテナ15を車両1内外にそれぞれ3つずつ設けているが、送信アンテナ15の数と配置はこれに限られず、車両1の内側と外側にそれぞれ1つ以上ずつあればよい。ただし、送信アンテナ15は複数あった方がより精度よく位置を判別することができる。また本実施形態では、送信アンテナ15からの受信強度が大きいものから3つを選び、それをデータとして位置判別に用いているが、これも3つには限られず、全てのデータを用いるようにしてもよい。
【0040】
さらに、本実施形態では車両側装置2側の車両側制御部12で、携帯機3からのデータと内側データ群及び外側データ群とのマハラノビス距離を算出しているが、携帯機3にメモリ13と同様のメモリを設けて内側データ群及び外側データ群の各空間座標原点を記憶しておき、携帯機制御部22においてマハラノビス距離を算出して、携帯機3の位置判別を行うようにしてもよい。
【0041】
さらにまた、メモリ13に記憶させておくデータとしては、本実施形態のように空間座標原点ではなく、内側データ群及び外側データ群であってもよく、この場合には携帯機3の位置判別の際に空間座標原点及びマハラノビス距離を算出することになる。そして、位置判別の手法としては、本実施形態のようにマハラノビス距離を算出するものには限られず、線形判別式を用いるものであってもよい。ただし、マハラノビス距離を用いた方がより精度よく位置判別を行うことができる。
【0042】
また、本実施形態では、車両側装置2に複数の送信アンテナ15を設け、携帯機3で複数のRssi測定信号の強度を測定し、それを基に携帯機3の位置判別を行っているが、車両側装置2には複数の受信アンテナ14を設け、携帯機3からの信号をそれら複数の受信アンテナ14で受信して強度を測定し、それを基に車両側制御部12で携帯機3の位置判別を行うこともできる。この際、携帯機3からの信号には、アンサー信号と共に強度測定用の信号も含まれる。この場合には、メモリ13に記憶させておくデータは、携帯機3を車両1の内側に沿わせた際の複数の受信アンテナ14の受信強度データを多数集めた内側データ群と、車両1の外側について同様の受信強度データを多数集めた外側データ群となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施形態におけるキーレスエントリー装置の概要図である。
【図2】車両側装置のブロック図である。
【図3】携帯機のブロック図である。
【図4】車両に設けられる送信アンテナの位置と電波の到達範囲を示した図である。
【図5】アンロック動作の際のフローチャートである。
【図6】車両側装置と携帯機からの信号のチャート図である。
【符号の説明】
【0044】
1 車両
2 車両側装置
3 携帯機
10 車両側受信部
11 車両側送信部
12 車両側制御部
13 メモリ
14 受信アンテナ
15 送信アンテナ
16 リクエストスイッチ
20 携帯機受信部
21 携帯機送信部
22 携帯機制御部
23 三軸アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられリクエスト信号を送信する複数の送信アンテナを有する車両側送信部と、アンサー信号を受信する車両側受信部とを備えた車両側装置と、上記リクエスト信号を受信する携帯機受信部と、アンサー信号を送信する携帯機送信部とを備えた携帯機とを有したキーレスエントリー装置において、
上記車両側送信部は上記携帯機を起動状態とする第1の信号と、該第1の信号の後に上記複数の送信アンテナから所定順かつ所定間隔で送信される第2の信号とを送信し、
上記携帯機は上記第1の信号で起動し上記第2の信号の各強度を検出すると共に、検出した強度の情報を上記携帯機送信部に送信させる携帯機制御部を備え、
上記車両側装置は上記携帯機から受信した強度の情報を基に携帯機の位置を判別する車両側制御部を備えることを特徴とするキーレスエントリー装置。
【請求項2】
車両に設けられリクエスト信号を送信する複数の送信アンテナを有する車両側送信部と、アンサー信号を受信する車両側受信部とを備えた車両側装置と、上記リクエスト信号を受信する携帯機受信部と、アンサー信号を送信する携帯機送信部とを備えた携帯機とを有したキーレスエントリー装置において、
上記車両側送信部は上記携帯機を起動状態とする第1の信号と、該第1の信号の後に上記複数の送信アンテナから所定順かつ所定間隔で送信される第2の信号とを送信し、
上記携帯機は上記第1の信号で起動し上記第2の信号の各強度を検出し、該検出した強度の情報を基に携帯機の位置を判別すると共に、該判別情報を上記携帯機送信部に送信させる携帯機制御部を備えることを特徴とするキーレスエントリー装置。
【請求項3】
車両に設けられリクエスト信号を送信する車両側送信部と、アンサー信号を受信する複数の受信アンテナを有する車両側受信部とを備えた車両側装置と、上記リクエスト信号を受信する携帯機受信部と、アンサー信号を送信する携帯機送信部とを備えた携帯機とを有したキーレスエントリー装置において、
上記携帯機送信部は上記車両側装置の受信部を起動状態とする第1の信号と、該第1の信号の後に送信される第2の信号とを送信し、
上記車両側装置の受信部は上記第1の信号で起動し上記複数の受信アンテナで受信した第2の信号の各強度を検出し、該検出した強度の情報を基に携帯機の位置を判別する車両側制御部を備えることを特徴とするキーレスエントリー装置。
【請求項4】
上記複数の送信アンテナから送信される第2の信号は一定周期で一定振幅の信号であることを特徴とする請求項1または2記載のキーレスエントリー装置。
【請求項5】
上記携帯機制御部は上記第2の信号の受信タイミングで送信アンテナを判別すると共に、各第2の信号の強度を検出することを特徴とする請求項1、2、4のいずれか1項に記載のキーレスエントリー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−348497(P2006−348497A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173219(P2005−173219)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】