説明

キー入力装置

【課題】電子機器などのインターフェースにおいてデザインの自由度が高く、機器の使用者にボタン操作が分かりやすいキー入力装置を提供する。
【解決手段】
本発明のキー入力装置の構造は、ベースとなる回路基板10上の各ボタン部にクリック感とスイッチ機能を付与させるメタルドーム11を配置し、さらに各ボタンの照明装置としてLED12を配置してあり、さらにその上に各ボタンの文字や模様が点灯するように印刷された印刷シート13を配置し、最上層に偏光板14を配置した構造になっている。またLED12の代わりにELシート17でもよい。このような構造にすることで操作に必要なボタンのみを表示することができる。また、ボタン表示を全てオフにすれば、キー入力装置表面には何も表示されなくなり、携帯機器の筐体と一体化したデザインも可能となりデザイン性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCのキーボードや携帯電話やPDAなどの電子機器へ搭載されるキー入力装置の構造に関する
【背景技術】
【0002】
従来型のキー入力装置としてELシートを用いた方式がある。このキー入力装置の構造について図10を用いて説明する。図10は、従来のキー入力装置の構造を示す断面図である。
【0003】
まず図10に示すように、従来のキー入力装置の構造は、ベースとなる回路基板10上に固定接点100を形成し、その上にメタルドーム11を配置し、さらにその上にELシート17を配置し、その上にシート状キー操作パッド101を配置し、最上層にボタン等の図形が印刷してあるシート102を配置した構造になっている。また各層は粘着剤15にて接着されている。
【0004】
使用者は指等でシート状キー操作パッド101を上から押圧することで、メタルドーム11が変形し、固定接点100が電気的に接触し、キー入力を行うことができる。さらにキー入力と同時にメタルドーム11の変形による振動でクリック感を持たせ、ボタンを押す感覚を出すことが可能になる。従来例では、暗所での操作時にボタンの図形が操作者に見えるように光源としてELシート17を用い図形を印刷したシート102に光を当て照明を行っている。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−273831号(第5頁、第15図)
【0006】
従来例では比較的キー入力部が平坦な構造のキー入力装置の構造について示したが、一般的な電子機器に用いられるボタンがそれぞれ独立しているキー入力装置においても同様にボタン部下にメタルドームを設け、ボタン部を押圧することで、電気的な入力とクリック感をだし、さらに暗所での操作を容易にするためLEDなどでボタン部を点灯させる構造のキー入力装置もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、携帯電話等の電子機器の高機能化により、キー入力部の1つのボタンに割り当てられる操作が複雑になっている。したがってボタン部分に印刷される機能を示す図形の数が多くなっている傾向にある。使用者はどのボタンを押せばいいのかが分かりにくい。使用者が適切にどのボタンを押せばいいのかを分かりやすくすることが望まれている。
【0008】
しかしながら、従来のキー入力装置では、ボタン部の機能を示す図形を印刷したシートが最上面にあるため、印刷された図形は常に見えている状態となり、多くの機能を割り当てられているボタンの場合は、限られた面積に図形がたくさん印刷され、非常に見えにくくなり、使用者はどのボタンを押せばいいのか分かりづらくなるという課題がある。
【0009】
さらにキー入力部分は電子機器の外観のデザインに大きく影響することから、ボタン部の凸凹や表面に印刷される機能を示す図形がデザインに大きな制限を及ぼしており、筐体のデザインに自由度がないなどの不具合がある。
【0010】
また、従来例のようにボタンの照明として使用しているELシートがメタルドームに張
り付いて湾曲している構造の場合は、ボタンを押すたびにELシートもメタルドームと同様に変形するので、ELシート内の電極配線が断線しやすくなり、耐久性が低くなる不具合がある。
【0011】
さらに、各ボタンの機能を示す図形の印刷面が最表面にあることから、長期間使用すると印刷された図形が変色したり、かすれたりする場合があり、また硬い物とぶつかって表面にキズなどが入ると、図形が読み取れなくなったりする不具合もある。
【0012】
以上のことから明らかなように従来のキー入力装置では、耐久性が高く、使用者に適切にどのボタンを押すのかを表示することが難しく、さらに電子機器の外観のデザイン性に劣るという不具合がある。
【0013】
そこで、本発明の目的は上記課題を解決し、耐久性がありデザイン性に優れ、さらに使用者が操作しやすいキー入力装置の構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明のキー入力装置は、基本的に下記記載の構成要件を採用する。電子機器などの入力に用いるキー入力装置において、回路基板上の入力部位に対応した位置にメタルドームを配置し、この入力部位を独立して点灯させる照明装置を設け、さらに入力部位に対応した位置に、文字や模様が配置されるように印刷シートを設け、さらにこの印刷シートの視認側に偏光板を設けることを特徴とする。
【0015】
この偏光板は2枚の偏光フィルムで構成されていることを特徴とする。また、2枚の偏光フィルムの偏光軸が互いに10°から80°の間の角度で交差するように、2枚の偏光フィルムが配置されていることを特徴とする。
【0016】
入力領域は複数箇所あり、メタルドームも複数個配置されていることを特徴とする。また、印刷シートと偏光板を一体とし、偏光板の下面に印刷を施してもよい。または、印刷シートと照明装置とを一体とし、照明装置の表面に印刷を施してもよい。
【0017】
また、照明装置は、複数個のLED光源であることを特徴とする。または、照明装置は、入力部位が独立して点灯出来るようにしたELシートであってもよい。さらに、メタルドームより視認側にタッチセンサーを配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のキー入力装置の構造を採用することにより、入力位置ごとに発光することが可能なため、機器の操作者が必要なボタンを適切に知ることが出来るため操作を容易にすることができる。さらに表面に印刷される図形を必要時以外は隠すことが出来るため、外観のデザインにより自由度を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のキー入力装置の構造について、図を用いて説明する。図2は、本発明のキー入力装置を搭載した電子機器例として携帯電話に搭載した場合の外観を示す斜視図である。図2(a)は、照明を点灯していない状態のストレート型携帯電話80の外観を示した図で、図2(b)はボタン部81の照明を点灯した場合の外観の様子を図示している。図2(a)では、照明を点灯していないので、ボタン部81表面には何も表示されず、筐体と一体化した外観となる。図2(b)に示すように、電話モードにしてボタン部81の照明を点灯すると、消灯時には何も表示されていない場所にボタンが表示される。このような表示をすることが可能になるため、機器の筐体部分とボタン部81の境界を見えなくすることができ、機器の外観デザインの自由度が上がる。
【0020】
さらに液晶表示面82もボタン部81の照明が消灯している時と同じく照明を消しておけば図2(a)に示すようにストレート型携帯電話80の表面には何も表示されず、板状の筐体のみの外観デザインになり、ボタン部81と液晶表示面82の照明を点灯させると図2(b)に示すような表面にボタン部81と液晶表示面82が表示される機能を持たせることが出来る。
【実施例】
【0021】
次に本発明のキー入力装置の構造について詳しく説明する。図1は、図2(a)のA−A´断面図である。図1(a)は、本発明で用いるキー入力装置の断面構造を示している。ベースとなる回路基板10上の各ボタン部にクリック感とスイッチ機能を付与させるメタルドーム11を配置し、さらに各ボタンの照明装置としてLED12を配置している。さらにその上に各ボタンの文字や模様が点灯するように印刷された印刷シート13を配置し、最上層に偏光板14を配置した構造になっている。各層は粘着剤15によって接着し、固定されている。またスペーサー16を用いて、メタルドーム11の変形を適切に行う事が出来るように回路基板10と印刷シート13の間の隙間を調整している構造になっている。
【0022】
また図示しないが回路基板10には、メタルドーム11と電気的接続を行うための接点電極が設けられており、さらにLED12を点灯させるための電源配線も形成されている。
【0023】
図1(b)には照明装置をLED12からELシート17に変えた場合の構造を示している。ベースとなる回路基板10上の各ボタン部にクリック感とスイッチ機能を付与させるメタルドーム11を配置し、その上に各ボタンが独立して点灯出来るように配線したELシート17を配置し。さらにその上に各ボタンの文字や模様が点灯するように印刷された印刷シート13を配置し、最上層に偏光板14を配置した構造になっている。この場合も図1(a)の構造と同様に、各層は粘着剤15によって接着し、固定されている。またスペーサー16を用いて、メタルドーム11の変形が適切行う事が出来るように回路基板10とELシート17の間の隙間を調整している構造になっている。
【0024】
各ボタン部は、LED12もしくはELシート17で印刷シート13に印刷された図形が、それぞれ独立に光ることが出来るようにする。図1(a)のように、LED12で照明を行う場合は、印刷シート13に印刷されたそれぞれの図形の位置に合うように回路基板10上にLED12を配置する。
【0025】
図1(b)のように、ELシート17で照明する場合は、印刷シート13に印刷された図形がそれぞれ独立して点灯するようにELシート17内で電極パターンを形成し、それぞれの図形が独立して点灯出来るようにする。
【0026】
このような構造にすることで電子機器のプログラムによって自由に各ボタンの図形を任意に点灯したり消灯したりすることができる。
【0027】
さらに本発明の照明に用いてELシートは平坦に固定されているため、従来例で用いているELシートのように屈曲していないので、ボタンを指で押した場合にも変形量が少なくですむ。そのため、ELシート内の電極配線が割れにくく耐久性をさらに上げることが出来る。
【0028】
次に最表面に配置する偏光板の構造について図3を用いて説明する。本発明に用いる偏光板は図3(a)に示すように透過する光の振動方向が異なる2枚の偏光フィルム20を
用いる。2枚の偏光フィルム20における透過の方向21を平行に設定した場合は、ほとんど透明となり、下の印刷シート13の模様が透けて見えてしまう。また90°ずらして重ねて設定した場合は、どの方向の光も透過しないため真っ暗になってしまい、照明装置を点灯してもボタンがまったく見みえなくなってしまう。そのため、2枚の偏光フィルム20は10°から80°の間の角度で、印刷パターン13の模様は見えないが照明を点灯させたときには各ボタンの図形が点灯して見えるような透明度になる角度に調整して重ねる。したがって図3(b)に示すように本発明で用いる偏光板14は偏光フィルム20を2枚重ね、粘着剤15で貼り付けた構造になっている。このようにすることで、照明がない場合は何も表示されず、照明を点灯させるとボタン部が点灯してボタンの機能を表す図形が表示されるようにすることが可能になる。
【0029】
次に本発明で用いる印刷シート13について図4を用いて説明する。図4に示すように、入力部位30の機能を表す数字や記号やアルファベットなどの図形を印刷してあり、さらに図形部分を光が透過するように反転して印刷した構造になっている。ここで入力部位30は入力可能な領域を示しているのみであり、印刷シート13上の別の構成部材を示しているものではない。このような印刷シート13を設けることで、各ボタンの図形を照明装置にて独立に点灯させることが出来るようにする。電子機器に搭載される機能に応じて、印刷シート13に印刷する図形を変えることでいろいろな機能に対応することができる。
【0030】
次に本発明のキー入力装置の表示例を図5、6、7、8を用いて説明する。図5は、照明装置が点灯していない状態を示した図である。偏光板14が、印刷シートの視認側にあるため、図4に図示した印刷シート13の模様が透けて見えず、表面には何も表示されない状態にすることが出来る。また偏光板14に色を付けることで黒色以外の色にも対応することが出来る。
【0031】
図6に、電話モードにした場合の表示例を示す。この場合は、電話をかけるのに必要な図形の位置のみ照明装置が点灯し、必要な図形が偏光板14を透して表示され、必要のない表示は見えない状態となる。
【0032】
図7は、メールを作成するモードにした場合の表示例を示す。この場合も文字を打ち込むのに必要な図形のみが偏光板14を透して表示される。
【0033】
図8に、音楽を再生するモードにした場合の表示例を示す。この場合は音楽生成に必要な図形のみが偏光板14を透して表示される。
【0034】
このように、携帯電話などの電子機器の機能に応じてボタン表示を変えることが可能になる。さらに、各モードに切り替えたときに使用しないボタンの入力は受け付けないように設定することで、ボタンの打ち間違いによる誤入力も防ぐことが出来る。
【0035】
次に、本発明のキー入力装置におけるスイッチ機能をタッチパネルで行う場合の構造について、図9を用いて説明する。図9は、図2(a)のA−A´断面図である。
【0036】
図9(a)に照明光源としてLEDを用いた場合の断面構造を示す。ベースとなる回路基板10上の各ボタン部にクリック感を付与させるメタルドーム11を配置し、さらに各ボタンの照明装置としてLED12を配置し、さらにその上に各ボタンの文字や模様が点灯するように印刷された印刷シート13を配置し、その上にタッチパネル90を配置し、最上層に偏光板14を配置した構造になっている。
【0037】
また図9(b)には照明光源にELシート17を用いた場合の構造について示す。この
場合もベースとなる回路基板10上の各ボタン部にクリック感を付与させるメタルドーム11を配置し、さらに各ボタンの照明装置としてELシート17を配置し、さらにその上に各ボタンの文字や模様が点灯するように印刷された印刷シート13を配置し、その上にタッチパネル90を配置し、最上層に偏光板14を配置した構造になっている。ここでは、タッチパネル90の位置は偏光板14と印刷シート13の間に配置してあるが、偏光板14の上に配置した構造でもよい。
【0038】
このようにタッチパネルを用いる場合は、メタルドーム11は電気的な接続は全く行わず、ボタンを押した時のクリック感を出すためのみの作用をする。そのため図示しないが、回路基板10には電気的な配線は全く必要がなくなり、大幅に簡略化することができる。
【0039】
また、このようにボタンの入力を可動部のないタッチパネル90にすることでスイッチ入力の耐久性をさらに向上させることが可能になる。
【0040】
本発明で示した各ボタンの図形を印刷した印刷シート13は、1つのシート部材としているが、印刷パターンを偏光板14の下面に直接印刷する、あるいはELシート17の表面に印刷するなどしても同じ効果を持たせることが可能になる。この場合はキー入力装置を構成する部材をさらに少なくすることができる。
【0041】
このように本発明のキー入力装置では、各モードに合わせて必要な入力部位のみが表示されるため、使用者がどのボタンを押せばいいのか適切に理解することができ、ボタン操作を間違えることがなくなる。さらにボタン表示を全てオフにすれば、キー入力装置表面には何も表示されないためデザイン性も向上する。
【0042】
以上の説明からも明白なように、本発明のキー入力装置では、従来例の不具合を解決し、電子機器の使用者に分かりやすいインターフェースを提供することが可能になる。また機器を使用しない状態では、表面が平坦で何も表示されない状態となり、機器の筐体デザインと一体化したようなデザインも可能になり、機器のデザインの自由度を増すことができる。
【0043】
さらに表面に図形を印刷しないため、長期間の使用により印刷面の変色やキズなどによる劣化を起こらず、ボタン表示が見えにくくなることがない。このように電子機器の使用者が使い安く耐久性が高くデザイン性に優れた入力装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明で用いるキー入力装置の構造を示す断面図である。
【図2】本発明のキー入力装置を搭載した携帯電話の外観を示す斜視図である。
【図3】本発明で用いる偏光板の構造を示す図である。
【図4】本発明で用いる印刷シートの構造を示す平面図である。
【図5】本発明のキー入力装置の表示例を示す平面図である。
【図6】本発明のキー入力装置の表示例を示す平面図である。
【図7】本発明のキー入力装置の表示例を示す平面図である。
【図8】本発明のキー入力装置の表示例を示す平面図である。
【図9】本発明のキー入力装置の構造を示す断面図である。
【図10】従来のキー入力装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 回路基板
11 メタルドーム
12 LED
13 印刷シート
14 偏光板
15 粘着剤
16 スペーサー
17 ELシート
20 偏光フィルム
21 透過の方向
80 ストレート型携帯電話
81 ボタン部
82 液晶表示面
90 タッチパネル
100 固定接点
101 キー操作パッド
102 シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器などの入力に用いるキー入力装置において、
回路基板上の入力部位に対応した位置にメタルドームを配置し、前記入力部位を独立して点灯させる照明装置を設け、
前記入力部位に対応した位置に、文字や模様が配置されるように印刷シートを設け、
さらに前記印刷シートの視認側に偏光板を設けることを特徴とするキー入力装置。
【請求項2】
前記偏光板は2枚の偏光フィルムで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のキー入力装置。
【請求項3】
前記2枚の偏光フィルムの偏光軸が互いに10°から80°の間の角度で交差するように、前記2枚の偏光フィルムが配置されていることを特徴とする請求項2に記載のキー入力装置。
【請求項4】
前記入力領域は複数箇所あり、前記メタルドームも複数個配置されていることを特徴とする請求項1に記載のキー入力装置。
【請求項5】
前記印刷シートと前記偏光板は一体であり、前記偏光板の下面に印刷が施されていることを特徴とする請求項1に記載のキー入力装置。
【請求項6】
前記印刷シートと前記照明装置は一体であり、前記照明装置の表面に印刷が施されていることを特徴とする請求項1に記載のキー入力装置。
【請求項7】
前記照明装置は、複数個のLED光源であることを特徴とする請求項1に記載のキー入力装置。
【請求項8】
前記照明装置は、前記入力部位が独立して点灯出来るようにしたELシートであることを特徴とする請求項1に記載のキー入力装置。
【請求項9】
前記メタルドームの視認側にタッチセンサーを配置することを特徴とする請求項1に記載のキー入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−76293(P2009−76293A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243521(P2007−243521)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】