説明

ギヤポンプ

【課題】吸入口から吸入される流体の駆動ギヤ側への漏れを抑制して流体の吐出圧力及び吐出量を高める。
【解決手段】駆動ギヤ2と、駆動ギヤと噛み合う第1従動ギヤ3及び第2従動ギヤ4とを備え、駆動ギヤ及び第1従動ギヤにより第1ポンプ部が構成され、駆動ギヤ及び第2従動ギヤにより第2ポンプ部が構成されるギヤポンプ1であって、ケース5には、第1ポンプ部に流体を吸入する第1吸入口14aと、第1ポンプ部から流体を吐出する第1吐出口19aと、第1吐出口に連なり第2ポンプ部に流体を吸入する第2吸入口19bと、第2ポンプ部から流体を吐出する第2吐出口15aとを形成し、第1吸入口14aは、その開口中心c1が駆動ギヤ及び第1従動ギヤの外接点を通る接線t1から第1従動ギヤ側に離間するように配設されており、第2吸入口19bは、その開口中心c4が駆動ギヤ及び第2従動ギヤの外接点を通る接線t2から第2従動ギヤ側に離間する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤポンプに関し、さらに詳しくは、吸入口から吸入される流体の駆動ギヤ側への漏れを抑制して流体の吐出圧力及び吐出量を十分に高めることができるギヤポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のギヤポンプとして、例えば、図7に示すように、回転可能な駆動ギヤ102と、この駆動ギヤ012と噛み合う第1従動ギヤ103及び第2従動ギヤ104と、をケース105内に備え、駆動ギヤ102及び第1従動ギヤ103により第1ポンプ部107が構成され、駆動ギヤ102及び第2従動ギヤ104により第2ポンプ部108が構成されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。これにより、比較的低粘度の流体であっても第1及び第2ポンプ部107、108で昇圧することにより高い吐出圧力及び吐出量が得られる。
【0003】
そして、上記従来のギヤポンプでは、ケース105に、第1ポンプ部107に流体を吸入する第1吸入口114aと、第1ポンプ部107から流体を吐出する第1吐出口119aと、第1吐出口119aに連なり第2ポンプ部108に流体を吸入する第2吸入口119bと、第2ポンプ部108から流体を吐出する第2吐出口115aと、が形成されている。そして、第1吸入口114aは、その開口中心c1が駆動ギヤ102及び第1従動ギヤ103の外接点を通る接線t1上に位置するように配設され、第2吸入口119bは、その開口中心c4が駆動ギヤ102及び第2従動ギヤ104の外接点を通る接線t2上に位置するように配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−265975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来のギヤポンプでは、第1及び第2吸入口114a、119bは、それぞれの開口中心c1、c4が駆動ギヤ102及び各従動ギヤ103、104の外接点を通る接線t1、t2上に位置するように配設されているので、第1及び第2吸入口114a、119bから各ポンプ部107、108に吸入される流体が駆動ギヤ102側に漏れ易く、流体の吐出圧力及び吐出量を十分に高めることができない。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、吸入口から吸入される流体の駆動ギヤ側への漏れを抑制して流体の吐出圧力及び吐出量を十分に高めることができるギヤポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、回転可能な駆動ギヤと、該駆動ギヤと噛み合う第1従動ギヤ及び第2従動ギヤと、をケース内に備え、該駆動ギヤ及び該第1従動ギヤにより第1ポンプ部が構成され、該駆動ギヤ及び該第2従動ギヤにより第2ポンプ部が構成されるギヤポンプであって、前記ケースには、前記第1ポンプ部に流体を吸入する第1吸入口と、該第1ポンプ部から流体を吐出する第1吐出口と、該第1吐出口に連なり前記第2ポンプ部に流体を吸入する第2吸入口と、該第2ポンプ部から流体を吐出する第2吐出口と、が形成されており、前記第1吸入口は、その開口中心(c1)が前記駆動ギヤ及び前記第1従動ギヤの外接点を通る接線(t1)から該第1従動ギヤ側に離間するように配設されており、前記第2吸入口は、その開口中心(c4)が前記駆動ギヤ及び前記第2従動ギヤの外接点を通る接線(t2)から該第2従動ギヤ側に離間するように配設されていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載において、前記第1吸入口は、その開口端縁(e1)が前記駆動ギヤ及び前記第1従動ギヤの外接点を通る接線(t1)上又は該接線の近傍に位置するように配設され、前記第2吸入口は、その開口端縁(e2)が前記駆動ギヤ及び前記第2従動ギヤの外接点を通る接線(t2)上又は該接線の近傍に位置するように配設されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載において、前記ケースは、前記第1吸入口及び前記第2吐出口が形成され且つ前記駆動ギヤ、前記第1従動ギヤ及び前記第2従動ギヤのそれぞれの一方の側面を覆う第1カバーと、前記第1吐出口及び前記第2吸入口が形成され且つ前記駆動ギヤ、前記第1従動ギヤ及び前記第2従動ギヤのそれぞれの他方の側面を覆う第2カバーと、該第1カバー及び該第2カバーの間に挟持され且つ前記駆動ギヤ、前記第1従動ギヤ及び前記第2従動ギヤのそれぞれの歯先を覆うケーシングと、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のギヤポンプによると、第1吸入口は、その開口中心が駆動ギヤ及び第1従動ギヤの外接点を通る接線から第1従動ギヤ側に離間するように配設されており、第2吸入口は、その開口中心が駆動ギヤ及び第2従動ギヤの外接点を通る接線から第2従動ギヤ側に離間するように配設されているので、第1及び第2吸入口から各ポンプ部に吸入される流体が駆動ギヤ側へ漏れてしまうことが抑制される。その結果、流体の吐出圧力及び吐出量を十分に高めることができる。
また、前記第1吸入口は、その開口端縁が前記駆動ギヤ及び前記第1従動ギヤの外接点を通る接線上又は該接線の近傍に位置するように配設され、前記第2吸入口は、その開口端縁が前記駆動ギヤ及び前記第2従動ギヤの外接点を通る接線上又は該接線の近傍に位置するように配設されている場合は、第1吸入口の全部又は大部分が駆動ギヤに開口せず第1従動ギヤに開口し、第2吸入口の全部又は大部分が駆動ギヤに開口せず第2従動ギヤに開口する。よって、第1及び第2吸入口から各ポンプ部に吸入される流体の駆動ギヤ側への漏れを更に効果的に抑制することができる。
さらに、前記ケースが、第1カバーと、第2カバーと、ケーシングと、を備える場合は、各吸入口及び吐出口の加工性に優れるとともに、部品点数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例に係るギヤポンプの縦断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】上記ギヤポンプの分解斜視図である。
【図4】実施例に係るバックカバーの正面図である。
【図5】実施例に係るフロントカバーの正面図である。
【図6】上記ギヤポンプの作用説明図である。
【図7】従来のギヤポンプの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
1.ギヤポンプ
本実施形態1.に係るギヤポンプは、回転可能な駆動ギヤ(2)と、駆動ギヤと噛み合う第1従動ギヤ(3)及び第2従動ギヤ(4)と、をケース(5)内に備え、駆動ギヤ及び第1従動ギヤにより第1ポンプ部(7)が構成され、駆動ギヤ及び第2従動ギヤにより第2ポンプ部(8)が構成されるギヤポンプ(1)であって、上記ケースには、第1ポンプ部に流体を吸入する第1吸入口(14a)と、第1ポンプ部から流体を吐出する第1吐出口(19a)と、第1吐出口に連なり第2ポンプ部に流体を吸入する第2吸入口(19b)と、第2ポンプ部から流体を吐出する第2吐出口(15a)と、が形成されており、上記第1吸入口(14a)は、その開口中心(c1)が駆動ギヤ及び第1従動ギヤの外接点を通る接線(t1)から第1従動ギヤ側に離間するように配設されており、上記第2吸入口(19b)は、その開口中心(c4)が駆動ギヤ及び第2従動ギヤの外接点を通る接線(t2)から第2従動ギヤ側に離間するように配設されていることを特徴とする(例えば、図2及び図6等参照)。
【0012】
なお、上記「外接点」とは、駆動ギヤ及び従動ギヤのそれぞれのピッチ円の接点を意図する。また、上記「開口中心」とは、吸入口において駆動ギヤ及び従動ギヤの外接点を通る接線と略直交する方向の開口幅の中心を意図する。さらに、上記「離間」とは、駆動ギヤ及び従動ギヤの軸間線分と平行方向に所定間隔をもって離れる状態を意図する。
【0013】
本実施形態1.のギヤポンプとしては、例えば、上記第1吸入口(14a)は、その開口端縁(e1)が駆動ギヤ(2)及び第1従動ギヤ(3)の外接点を通る接線(t1)上又は接線の近傍に位置するように配設され、上記第2吸入口(19b)は、その開口端縁(e2)が駆動ギヤ(2)及び第2従動ギヤ(4)の外接点を通る接線(t2)上又は接線の近傍に位置するように配設されている形態(例えば、図2及び図6等参照)を挙げることができる。
【0014】
なお、上記「開口端縁」とは、吸入口において、駆動ギヤ及び従動ギヤの外接点を通る接線と略直交する方向の駆動ギヤ側寄りの開口へりを意図する。また、上記「近傍」としては、例えば、接線と開口端縁との間隔が5mm(特に3mm)以内となる状態を挙げることができる。
【0015】
本実施形態1.のギヤポンプとしては、例えば、上記ケース(5)は、第1吸入口(14a)及び第2吐出口(15a)が形成され且つ駆動ギヤ(2)、第1従動ギヤ(3)及び第2従動ギヤ(4)のそれぞれの一方の側面を覆う第1カバー(10)と、第1吐出口(19a)及び第2吸入口(19b)が形成され且つ駆動ギヤ、第1従動ギヤ及び第2従動ギヤのそれぞれの他方の側面を覆う第2カバー(11)と、第1カバー及び第2カバーの間に挟持され且つ駆動ギヤ、第1従動ギヤ及び第2従動ギヤのそれぞれの歯先(外周)を覆うケーシング(12)と、を備える形態(例えば、図1等参照)を挙げることができる。
【0016】
本実施形態1.のギヤポンプとしては、例えば、上記第1吸入口(14a)は、第1従動ギヤ(3)の一方の側面(3a)に開口し、上記第1吐出口(19a)は、第1従動ギヤ(3)の他方の側面(3b)に開口し、上記第2吸入口(19b)は、第2従動ギヤ(4)の一方の側面に開口(4b)し、上記第2吐出口(15a)は、第2従動ギヤ(4)の他方の側面(4a)に開口していることができる(例えば、図1等参照)。これにより、第1及び第2吸入口から各ポンプ部に吸入される流体は、従動ギヤの外周側を圧送されるとき従動ギヤの軸方向の一端側から他端側に向かって流れるため、ギヤ室内での流体の圧力損失を抑制でき、流体の吐出圧力及び吐出量を更に高めることができる。
【0017】
本実施形態1.のギヤポンプとしては、例えば、上記第1吐出口(19a)は、その開口中心(c3)が駆動ギヤ(2)及び第1従動ギヤ(3)の外接点を通る接線(t1)上又は接線の近傍に位置するように配設され、上記第2吐出口(15a)は、その開口中心(c2)が駆動ギヤ(2)及び第2従動ギヤ(4)の外接点を通る接線(t2)上又は接線の近傍に位置するように配設されている形態(例えば、図6等参照)を挙げることができる。これにより、駆動ギヤ及び各従動ギヤの噛み合いによる絞り出し力が流体に良好に作用してより高い吐出圧力及び吐出量を確保できる。
【実施例】
【0018】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
【0019】
(1)ギヤポンプの構成
本実施例に係るギヤポンプ1は、図1〜図3に示すように、回転可能な駆動ギヤ2と、この駆動ギヤ2と噛み合う第1従動ギヤ3及び第2従動ギヤ4と、をケース5内に備えている。これら駆動ギヤ2及び各従動ギヤ3、4のそれぞれは、外径及び歯幅等の形状が同じとされている。そして、駆動ギヤ2及び第1従動ギヤ3により第1ポンプ部7が構成され、駆動ギヤ2及び第2従動ギヤ4により第2ポンプ部8が構成されている。
【0020】
上記ケース5は、略円盤状のバックカバー10(本発明に係る「第1カバー」として例示する。)と、略円柱状のフロントカバー11(本発明に係る「第2カバー」として例示する。)と、これら両カバー10、11の間に挟持される略円盤状のケーシング12と、を備えている。このバックカバー10の表面は、駆動ギヤ2及び各従動ギヤ3、4のそれぞれの一方の側面を覆っている。また、フロントカバー11の表面は、駆動ギヤ2及び各従動ギヤ3、4のそれぞれの他方の側面を覆っている。さらに、ケーシング12には、駆動ギヤ2及び各従動ギヤ3、4のそれぞれの歯先を覆う貫通孔12aが形成されている。よって、バックカバー10及びフロントカバー11の各表面とケーシング12の貫通孔12aによって、駆動ギヤ2、第1従動ギヤ3及び第2従動ギヤ4を収容するギヤ室S(図1参照)が構成されている。なお、上記バックカバー10、フロントカバー11及びケーシング12は、適当な固定手段(例えば、ボルト止め等)により一体化されている。
【0021】
上記バックカバー10の表面には、図4に示すように、第1ポンプ部7に流体(例えば、オイル等)を吸入するための溝状の吸入通路14と、第2ポンプ部8から流体を吐出するための溝状の吐出通路15と、が形成されている。これら吸入通路14及び吐出通路15のそれぞれは、平面略棒状に形成されている。また、吸入通路14の一端側には、バックカバー10の厚さ方向に延びて表面に開口する吸入ポート16が連絡されている(図1参照)。また、吸入通路14の他端側は第1吸入口14aとされている。また、上記吐出通路15の一端側には、バックカバー10の厚さ方向に延びて表面に開口する吐出ポート17が連絡されている(図1参照)。また、この吐出通路15の他端側は第2吐出口15aとされている。
【0022】
上記第1吸入口14aは、図6に示すように、その開口中心c1が駆動ギヤ2及び第1従動ギヤ3の外接点を通る接線t1から第1従動ギヤ3側に離間し、且つ、その開口端縁e1が接線t1上に位置するように配設されている。この第1吸入口14aは、駆動ギヤ2の側面に開口せず且つ第1従動ギヤ3の側面に開口している。また、上記第2吐出口15aは、その開口中心c2が駆動ギヤ2及び第2従動ギヤ4の外接点を通る接線t2上に位置するように配設されている。この第2吐出口15aは、駆動ギヤ2の側面及び第2従動ギヤ4の側面に開口している。
【0023】
上記フロントカバー11の表面には、図5に示すように、第1ポンプ部7から吐出される流体を第2ポンプ部8に吸入するための溝状の連絡通路19が形成されている。この連絡通路19は、平面略U字状に形成されている。また、連絡通路19は、その一端側が第1吐出口19aとされ、その他端側が第2吸入口19bとされている。
【0024】
上記第1吐出口19aは、図6に示すように、その開口中心c3が接線t1上に位置するように配設されている。この第1吐出口19aは、駆動ギヤ2の側面及び第1従動ギヤ3の側面に開口している。また、上記第2吸入口19bは、その開口中心c4が接線t2から第2従動ギヤ4側に離間し、且つ、その開口端縁e2が接線t2上に位置するように配設されている。この第2吸入口19bは、駆動ギヤ2の側面に開口せず且つ第2従動ギヤ4の側面に開口している。
【0025】
なお、図1に示すように、上記バックカバー10及びフロントカバー11の間には、第1及び第2従動ギヤ3、4を回転自在に支持する支持軸20が挟持されている。これら各支持軸20には、その軸方向に沿って焼付き防止用のスリット20aが形成されている。また、上記駆動ギヤ2には、バックカバー10及びフロントカバー11に回転自在に支持される主軸21が一体に形成されている。この主軸21の一端側は、図示しない駆動モータの駆動軸に連結されている。さらに、上記フロントカバー11の表面には、周知のメカニカルシール22を内蔵するミールケース23が取り付けられている。
【0026】
(2)ギヤポンプの作用
次に、上記構成のギヤポンプ1の作用について説明する。図6に示すように、ギヤポンプ1を駆動して駆動ギヤ2及び各従動ギヤ3、4を所定方向に回転させると、外部の流体は、吸入ポート16及び吸入通路14を介して第1吸入口14aから第1ポンプ部7に吸入される。その吸入された流体は、第1従動ギヤ3の外周側を圧送され第1吐出口19aから昇圧されて吐出される。その吐出された流体は、連絡通路19を介して第2吸入口19bから第2ポンプ部8に吸入される。その吸入された流体は、第2従動ギヤ4の外周側を圧送され第2吐出口15aから昇圧されて吐出される。その吐出された流体は、吐出通路15及び吐出ポート17を介して外部に吐出される。なお、上記各従動ギヤ3、4の外周側を圧送される流体は、各従動ギヤ3、4の軸方向の一端側から他端側に向かって流れる。
【0027】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例のギヤポンプ1によると、第1吸入口14aは、その開口中心c1が駆動ギヤ2及び第1従動ギヤ3の外接点を通る接線t1から第1従動ギヤ3側に離間するように配設されており、第2吸入口19bは、その開口中心c4が駆動ギヤ2及び第2従動ギヤ4の外接点を通る接線t2から第2従動ギヤ4側に離間するように配設されているので、第1及び第2吸入口14a、19bから各ポンプ部7、8に吸入される流体が駆動ギヤ2側へ漏れてしまうことが抑制される。その結果、流体の吐出圧力及び吐出量を十分に高めることができる。
【0028】
また、本実施例では、上記第1吸入口14aは、その開口端縁e1が駆動ギヤ2及び第1従動ギヤ3の外接点を通る接線t1上に位置するように配設され、上記第2吸入口19bは、その開口端縁e2が駆動ギヤ2及び第2従動ギヤ4の外接点を通る接線t2上に位置するように配設されているので、第1吸入口14aの全部が駆動ギヤ2に開口せず第1従動ギヤ3に開口し、第2吸入口19bの全部が駆動ギヤ2に開口せず第2従動ギヤ4に開口する。よって、第1及び第2吸入口14a、19bから各ポンプ部7、8に吸入される流体の駆動ギヤ2側への漏れを更に効果的に抑制することができる。
【0029】
また、本実施例では、上記ケース5は、バックカバー10と、フロントカバー11と、ケーシング12と、を備えるので、各吸入口14a、19b及び吐出口15a、19aの加工性に優れるとともに、部品点数を低減することができる。
【0030】
また、本実施例では、上記第1吸入口14aは、第1従動ギヤ3の一方の側面3aに開口し、上記第1吐出口19aは、第1従動ギヤ3の他方の側面3bに開口し、上記第2吸入口19bは、第2従動ギヤ4の一方の側面4bに開口し、上記第2吐出口15aは、第2従動ギヤ4の他方の側面4aに開口しているので、第1及び第2吸入口14a、19bから各ポンプ部7、8に吸入される流体は、従動ギヤ3、4の外周側を圧送されるとき従動ギヤ3、4の軸方向の一端側から他端側に向かって流れる。その結果、ギヤ室S内での流体の圧力損失を抑制でき、流体の吐出圧力及び吐出量を更に高めることができる。
【0031】
さらに、本実施例では、上記第1吐出口19aは、その開口中心c3が駆動ギヤ2及び第1従動ギヤ3の外接点を通る接線t1上に位置するように配設され、上記第2吐出口15aは、その開口中心c2が駆動ギヤ2及び第2従動ギヤ4の外接点を通る接線t2上に位置するように配設されているので、駆動ギヤ2及び各従動ギヤ3、4の噛み合いによる絞り出し力が流体に良好に作用して高い吐出圧力を確保できる。
【0032】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例では、駆動ギヤ2に開口せず各従動ギヤ3、4に開口する吸入口14a、19bを例示したが、これに限定されず、例えば、駆動ギヤ2及び各従動ギヤ3、4の両者に開口する吸入口としてもよい。
【0033】
また、上記実施例では、従動ギヤ3、4の側面に開口する吸入口14a、19bを例示したが、これに限定されず、例えば、従動ギヤ3、4の歯先に開口する吸入口としてもよい。この場合、例えば、ケーシング12の貫通孔12aに吸入口を形成すれば対応できる。
【0034】
また、上記実施例では、バックカバー10に第1吸入口14a及び第2吐出口15aを形成し、フロントカバー11に第1吐出口19a及び第2吸入口19bを形成するようにしたが、これに限定されず、例えば、バックカバー10に第1吐出口19a及び第2吸入口19bを形成し、フロントカバー11に第1吸入口14a及び第2吐出口15aを形成するようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施例では、外径及び歯幅等の形状が同じである駆動ギヤ2、第1従動ギヤ3及び第2従動ギヤ4を例示したが、これに限定されず、例えば、外径及び歯幅等の形状が異なる駆動ギヤ、第1従動ギヤ及び第2従動ギヤを採用してもよい。
【0036】
また、上記実施例では、駆動ギヤ2、第1従動ギヤ3及び第2従動ギヤ4が直線上に並ぶ形態を例示したが、これに限定されず、例えば、駆動ギヤ及び第1従動ギヤの軸間線分と駆動ギヤ及び第2従動ギヤの軸間線分が交差するように配置してもよい。
【0037】
また、上記実施例では、2つの従動ギヤ3、4を備える形態を例示したが、これに限定されず、例えば、3つ以上の従動ギヤを備えるようにしてもよい。
【0038】
さらに、上記実施例では、駆動ギヤ2、第1従動ギヤ3及び第2従動ギヤ4として平歯車を例示したが、これに限定されず、はすば歯車、やまば歯車等を採用してもよい。
【0039】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0040】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
流体を圧送するギヤポンプに関する技術として広く利用される。特に、比較的低粘度の流体であっても、高い吐出圧力及び吐出量を確保できるギヤポンプとして好適に利用される。
【符号の説明】
【0042】
1;ギヤポンプ、2;駆動ギヤ、3;第1従動ギヤ、4;第2従動ギヤ、5;ケース、7;第1ポンプ部、8;第2ポンプ部、10;バックカバー、11;フロントカバー、12;ケーシング、14a;第1吸入口、19a;第1吐出口、19b;第2吸入口、15a;第2吐出口、t1,t2;接線、c1,c4;開口中心、e1,e2;開口端縁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な駆動ギヤと、該駆動ギヤと噛み合う第1従動ギヤ及び第2従動ギヤと、をケース内に備え、該駆動ギヤ及び該第1従動ギヤにより第1ポンプ部が構成され、該駆動ギヤ及び該第2従動ギヤにより第2ポンプ部が構成されるギヤポンプであって、
前記ケースには、前記第1ポンプ部に流体を吸入する第1吸入口と、該第1ポンプ部から流体を吐出する第1吐出口と、該第1吐出口に連なり前記第2ポンプ部に流体を吸入する第2吸入口と、該第2ポンプ部から流体を吐出する第2吐出口と、が形成されており、
前記第1吸入口は、その開口中心(c1)が前記駆動ギヤ及び前記第1従動ギヤの外接点を通る接線(t1)から該第1従動ギヤ側に離間するように配設されており、
前記第2吸入口は、その開口中心(c4)が前記駆動ギヤ及び前記第2従動ギヤの外接点を通る接線(t2)から該第2従動ギヤ側に離間するように配設されていることを特徴とするギヤポンプ。
【請求項2】
前記第1吸入口は、その開口端縁(e1)が前記駆動ギヤ及び前記第1従動ギヤの外接点を通る接線(t1)上又は該接線の近傍に位置するように配設され、前記第2吸入口は、その開口端縁(e2)が前記駆動ギヤ及び前記第2従動ギヤの外接点を通る接線(t2)上又は該接線の近傍に位置するように配設されている請求項1記載のギヤポンプ。
【請求項3】
前記ケースは、前記第1吸入口及び前記第2吐出口が形成され且つ前記駆動ギヤ、前記第1従動ギヤ及び前記第2従動ギヤのそれぞれの一方の側面を覆う第1カバーと、前記第1吐出口及び前記第2吸入口が形成され且つ前記駆動ギヤ、前記第1従動ギヤ及び前記第2従動ギヤのそれぞれの他方の側面を覆う第2カバーと、該第1カバー及び該第2カバーの間に挟持され且つ前記駆動ギヤ、前記第1従動ギヤ及び前記第2従動ギヤのそれぞれの歯先を覆うケーシングと、を備える請求項1又は2に記載のギヤポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−44321(P2013−44321A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185247(P2011−185247)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(593128998)上田鉄工株式会社 (2)
【Fターム(参考)】