説明

クッション体の製造方法

【課題】車両用シートに利用されるクッション体の製造方法において、振動を減衰させるダンパー機能を有したクッション体としつつ、弾性樹脂材の成形と同時に錘を所望位置に配置した状態にし、製造工程時における作業性を向上させることにある。
【解決手段】錘40に設けられた挿通穴41に柔らかい合成樹脂からなる紐部材60を挿通させる。この紐部材60の両端部を第二成形具52の引掛け部52a,52aに引っ掛ける。そうすると、錘40は、紐部材60によって成形用型55の上方からぶら下げられたものとなり、成形用型55内の所望位置に中空に浮いた状態で位置する。次いで、錘40をぶら下げた状態で、ヘッドレストステー18を支持してヘッドレストステー18の埋没部18aを成形用型55内に配置する。この状態で、成形前の弾性樹脂材30となる弾性樹脂材液35を成形用型55内に注入し、弾性樹脂材30を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッション体の製造方法に関するものであって、詳しくは、車両用シートに利用されるクッション体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に設置される車両用シートにあっては、乗員が着座するシートクッション、その乗員が着座した際の背凭れとなるシートバック、着座した際の頭凭れとなるヘッドレスト、着座した際の腕休めとなるアームレスト等を備える。これらシートクッション、シートバック、ヘッドレスト、アームレストは、一般に、感触を良くするためにポリウレタンフォームからなるクッション体が内蔵されている。
ところで、この種の車両用シートは、車体を構成する車体フレームに対して設置される。具体的には、車体フレームに対してシートクッションが設置されており、このシートクッションに対して、シートバック、ヘッドレスト、アームレスト等が設置されている。このため、これらシートクッション、シートバック、ヘッドレスト、アームレストは、車体フレームを介して、車体の振動を受けて振動する。
【0003】
そこで、この種の車両用シートにあっては、車体から受ける振動を小さくすることを目的に、下記特許文献1や下記特許文献2に記載されているような、ダンパー機能を内蔵させたものが知られている。このようなダンパー機能を内蔵させた車両用シートによれば、振動を減衰させる作用により車体から受ける振動を小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−226255号公報
【特許文献2】特開2001−161489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1にて開示される車両用シートのダンパー機構にあっては、ばね部材を介して錘をフレームに取り付けるものであるため、取り付けるにあたっての部品点数が嵩張るという問題が指摘されていた。
これに対し、上記特許文献2にて開示される車両用シートにあっては、クッション体を弾性部材として利用するため、ばね部材を削除できる点で有利である。しかしながら、錘をクッション体の間に配置することができるように、クッション体にそのスペースを設けて成形するため、クッション体の形状が複雑になるとともに、そのスペースに錘を組み付けなければならず、製造作業が煩雑であるという問題が指摘されていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、車両用シートに利用されるクッション体の製造方法において、振動を減衰させるダンパー機能を有したクッション体としつつ、弾性樹脂材の成形と同時に錘を所望位置に配置した状態にし、製造工程時における作業性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係るクッション体の製造方法は次の手段を採用する。
すなわち、本発明の第1の発明に係るクッション体の製造方法は、所望形状に成形され成形後に弾性を有する弾性樹脂材と、該弾性樹脂材内に埋没する埋没部と他の部材と連結する連結部とを具備するフレーム部材と、該フレーム部材の該埋没部と離間する位置に配置され該弾性樹脂材内に埋没する錘とを備えるクッション体の製造方法であって、所望形状に形成される前記弾性樹脂材の外形に対応した成形用型内で、前記錘を中空に浮いた状態で位置させるように、該成形用型の上方から紐部材によってぶら下げるようにして該錘を支持し、前記成形用型内で、前記フレーム部材の前記埋没部を前記錘と離間する位置に配置させるように、該フレーム部材の前記連結部を把持することによって該フレーム部材を支持し、このように前記錘および前記フレーム部材を支持した状態で、前記成形用型内に成形前の前記弾性樹脂材となる弾性樹脂材液を注入し、注入した前記弾性樹脂材液が前記弾性樹脂材に成形した後に、前記クッション体として前記成形用型から取り出すことを特徴とする。
【0008】
このクッション体の製造方法によれば、錘を成形用型の上方から紐部材によってぶら下げるようにして支持し、フレーム部材をフレーム部材の連結部を把持することによって支持し、この状態で成形用型内に成形前の弾性樹脂材となる弾性樹脂材液を注入し、弾性樹脂材に成形した後にクッション体として成形用型から取り出すので、弾性樹脂材の成形時において、錘を成形用型内で中空に浮いた状態で位置させ、かつフレーム部材の埋没部を錘と離間する位置に配置させることができる。
これによって、弾性樹脂材を成形するにあたって、この錘を弾性樹脂材内部の所望位置に埋没させつつ、フレーム部材の埋没部を弾性樹脂材内部で錘と離間する位置に埋没させて、弾性樹脂材を成形することができる。したがって、フレーム部材と錘との間には弾性を有した弾性樹脂材を介在させることができ、フレーム部材が車体の振動を受けて振動してしまう場合であっても、錘と弾性樹脂材とによりダイナミックダンパーとして機能させることができ、この振動を減衰させることができる。
【0009】
また、このクッション体の製造方法によれば、弾性樹脂材の成形時において、錘を成形用型内で中空に浮いた状態で位置させ、フレーム部材の埋没部を錘と離間する位置に配置させ、この状態で弾性樹脂材を成形するので、錘とフレーム部材とを弾性樹脂材内部の所望位置に埋没させつつ、弾性樹脂材を一体的に成形をすることができる。
これによって、従前においては錘とフレーム部材とを所望位置に配置するために、錘を配置するためのスペースが形成されるように弾性樹脂材を成形し、その成形後形成されたスペースに錘を後から挿入していたが、弾性樹脂材の成形と同時に錘を所望位置に配置した状態とするので、このような錘を後から挿入する工程を要さずに弾性樹脂材を成形することができ、もって製造工程時における作業性を向上させることができる。
【0010】
第2の発明に係るクッション体の製造方法は、前記第1の発明に係るクッション体の製造方法において、前記錘には、前記紐部材を挿通させるための挿通穴が設けられ、前記紐部材は、前記錘の前記挿通穴に挿通させることにより該錘をぶら下げ可能な状態に構成し、且つ注入した前記弾性樹脂材液が前記弾性樹脂材に成形した後に取り外されることを特徴とする。
このクッション体の製造方法によれば、錘には、紐部材を挿通させるための挿通穴が設けられ、紐部材は、錘の挿通穴に挿通させることにより錘をぶら下げ可能な状態に構成し、且つ注入した弾性樹脂材液が弾性樹脂材に成形した後に取り外されるので、クッション体形成後に不要な紐部材を容易に取り外すことができる。
これによって、不要な部材が取り除かれたクッション体とすることができ、振動を減衰させるダンパー機能を効果的に発揮することができる。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明に係るクッション体の製造方法によれば、振動を減衰させるダンパー機能を有したクッション体としつつ、弾性樹脂材の成形と同時に錘を所望位置に配置した状態にし、製造工程時における作業性を向上させることができる。
第2の発明に係るクッション体の製造方法によれば、不要な部材が取り除かれたクッション体とすることができ、振動を減衰させるダンパー機能を効果的に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】自動車等の車両に設置される車両用シートの概略構成を示す斜視図である。
【図2】ヘッドレストを構成するクッション体の斜視図である。
【図3】弾性樹脂材の外形に対応した成形用型を具備する成形道具の斜視図である。
【図4】クッション体製造時の第1工程を示す成形道具の斜視図である。
【図5】クッション体製造時の第2工程を示す成形道具の断面図である。
【図6】クッション体製造時の第3工程を示す成形道具の断面図である。
【図7】製造されたクッション体をひっくり返した第4工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、例えば自動車等の車両に設置される車両用シート10の概略構成を示す斜視図である。
図1に示すように、車両用シート10は、乗員が着座するシートクッション11、その乗員が着座した際の背凭れとなるシートバック12、着座した際の頭凭れとなるヘッドレスト13、着座した際の腕休めとなるアームレスト14を備える。
この車両用シート10を構成するシートクッション11、シートバック12、ヘッドレスト13、アームレスト14のそれぞれには、他の部材と連結させるためのフレーム部材が内蔵されている。すなわち、シートクッション11にあってはフレーム部材としてのシートクッションフレーム16が内蔵されており、シートバック12にあってはフレーム部材としてのシートバックフレーム17が内蔵されており、ヘッドレスト13にあってはフレーム部材としてのヘッドレストステー18が内蔵されており、アームレスト14にあってはフレーム部材としてのアームレストフレーム19が内蔵されている。
ここで、シートクッション11のシートクッションフレーム16は、車体を構成する車体フレーム(不図示)に設置されており、シートクッションフレーム16にはシートバックフレーム17とアームレストフレーム19とが連結されており、シートバックフレーム17にはヘッドレストステー18が相対移動可能に連結されている。
なお、この車体フレームにはエンジンが設置されているので、このエンジンの振動により振動する車体フレームの振動を受け、これらシートクッション11、シートバック12、ヘッドレスト13、アームレスト14のそれぞれも振動している。
【0014】
次に、本発明に係るクッション体の実施の形態を説明するにあたり、上記したヘッドレスト13を構成するクッション体20を取り上げて説明する。
図2は、ヘッドレスト13を構成するクッション体20の斜視図である。なお、紙面手前側が着座者の頭部当接側面であり、ヘッドレスト13を構成するに際しては適宜の表皮にて被覆される。
図2に示すように、ヘッドレスト13を構成するクッション体20は、概略、所望形状に成形される弾性樹脂材30と、弾性樹脂材30内に一部埋没し且つ他の部材としてのシートバックフレーム17(図1参照)と連結するヘッドレストステー18と、ヘッドレストステー18と離間する位置に配置され弾性樹脂材30内に埋没する錘40とを備える。
弾性樹脂材30は、発泡剤を入れてつくる樹脂発泡体であり、成形後に弾性を有するポリウレタンフォームが選択されている。この弾性樹脂材30は、クッション体20の形状に沿った所望形状に形成されるものである。具体的には、クッション体20の形状は、ヘッドレスト13の構成を鑑み形成される形状であり、着座者が頭を凭れさせた際に適宜のクッション力が得られる形状が選択されている。
なお、この弾性樹脂材30は、後に説明する成形用型55にて成形されるものであって、成形後に弾性を有する樹脂であれば適宜の樹脂を用いることができる。具体的には、この弾性樹脂材30としては、発泡剤を入れてつくる樹脂発泡体や、適宜のエラストマーを選択することができる。また、樹脂発泡体としては、例えば、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォームに代表される適宜に発泡剤を入れて成形される合成樹脂が挙げられる。また、この弾性樹脂材30には、難燃剤や腐食抑制剤が混入されるものであってもよい。ただ、この例においては、軽量かつ加工のし易さの利点から、弾性樹脂材30として、樹脂発泡体であるポリウレタンフォームが選択されている。
【0015】
ヘッドレストステー18は、図1および図2に示すように、金属パイプが折曲加工されることにより、中間部を梁状に形成された略コ字状に形成されている。このヘッドレストステー18は、弾性樹脂材30内に埋没する埋没部18aと、他の部材としてのシートバックフレーム17(図1参照)と連結する連結部18bとを具備して構成される。
ヘッドレストステー18の埋没部18aは、図2に示すように、略コ字状のヘッドレストステー18のうち、梁状中間部を含めてなる上記弾性樹脂材30に埋没する範囲で設定されている。また、ヘッドレストステー18の連結部18bは、略コ字状のヘッドレストステー18のうち上記した埋没部18a以外の範囲であり、両端部を含めてなる上記弾性樹脂材30から外部に露出する範囲で設定されている。ヘッドレストステー18の連結部18bは、シートバックフレーム17のステーホルダ17aに嵌入される。
錘40は、図2に示すように、上記したヘッドレストステー18から伝達される振動、弾性樹脂材30の弾性力等を鑑みて、大きさ重さが設定されるものであり、上記したヘッドレストステー18と同様、弾性樹脂材30内に浸漬した状態で配置されている。なお、この錘40は、ピンポン玉のような大きさ形状を選択しており、適宜の重さの金属球にて形成されている。この錘40は、弾性樹脂材30内に埋没するものである。この錘40は、この弾性樹脂材30内において、ヘッドレストステー18の埋没部18aと離間する位置に配置される。なお、この錘40は、後にも説明する(図4、図5、図6等参照)が、挿通穴41が設けられており、柔らかい合成樹脂からなる紐部材60が挿通される。また、この錘40の弾性樹脂材30に対して埋没する位置は、図2に示すように、弾性樹脂材30にのうち、着座者の頭部当接側面とは反対側の裏面に近接する位置となっている。つまり、錘40は、弾性樹脂材30に対して埋没させるにあたって、着座者の頭部当接側面と離間する位置に配置されることとなって、ヘッドレスト13に着座者が頭部を当接させた際であっても、錘40のゴツゴツした不快な感触を感じることがない。
【0016】
ところで、上記したように構成されるクッション体20を製造するにあたっては、次のような工程を含むクッション体20の製造方法を用いる。
図3は、弾性樹脂材30の外形に対応した成形用型55を具備する成形道具50の斜視図である。また、図4〜図6は、クッション体20を製造するにあたっての工程図であり、図4は第1工程を示す成形道具50の斜視図、図5は第2工程を示す成形道具50の断面図、図6は第3工程を示す成形道具50の断面図である。
まず、上記した弾性樹脂材30の外形に対応した、図3に示すような成形用型55を具備する成形道具50を用意する。この成形道具50は、二つに割られたように構成される第一成形具51と第二成形具52とを備えて構成される。第一成形具51は、第二成形具52の対面側に第一成形用型55aが設けられている。また、第二成形具52は、第一成形具51の対面側に第二成形用型55bが設けられている。これら第一成形具51と第二成形具52とを合体させることにより、これら第一成形用型55aと第二成形用型55bとが合体することとなり、成形用型55を構成する。
また、第二成形具52には、錘40を成形用型55の上方からぶら下げるための紐部材60を引っ掛ける引掛け部52a,52aが設けられている。この引掛け部52a,52aは、第二成形具52のうち、第二成形用型55bの上方に配設されるものであって適宜の突出形状を有する。また、この第二成形具52には、ヘッドレストステー18の連結部18bを外部に露出させた状態で、ヘッドレストステー18の埋没部18aを成形用型55内に配置させるためのヘッドレストステー配置用凹部52bが設けられている。
【0017】
クッション体20は、上記したように構成された成形道具50を用いて、次のように形成される。図4に示すように、クッション体20を製造するにあたっての第1工程では、まず、上記した錘40に設けられた挿通穴41に柔らかい合成樹脂からなる紐部材60を挿通させる。次いで、この紐部材60の両端部61,61を上記した第二成形具52の引掛け部52a,52aに引っ掛ける。そうすると、錘40は、紐部材60によって成形用型55の上方からぶら下げられたものとなり、成形用型55内の所望位置に中空に浮いた状態で位置することとなる。具体的には、上記したように、中空に浮いた状態でぶら下げられて支持される錘40は、弾性樹脂材30のうち、所望位置となる着座者の頭部当接側面とは反対側の裏面に近接する位置に配置されることとなる。なお、紐部材60の両端部61,61は、第二成形具52の引掛け部52a,52aに引掛け易いものとするために輪状に形成されている。
次いで、この錘40をぶら下げた状態で、上記したヘッドレストステー18を支持してヘッドレストステー18の埋没部18aを成形用型55内に配置する。すなわち、適宜の不図示の把持装置にてヘッドレストステー18の連結部18bを把持することによって、ヘッドレストステー18の連結部18bは成形用型55から外部に露出した状態とし、ヘッドレストステー18の埋没部18aは成形用型55内において錘40と離間する位置に配置される状態とする。
このように錘40およびヘッドレストステー18を支持した状態で、第一成形具51と第二成形具52とを合体させ、これにより第一成形用型55aと第二成形用型55bとを合体させて成形用型55を形成し、成形前の弾性樹脂材30となる弾性樹脂材液35を注入可能な状態とする。
【0018】
上記したように錘40およびヘッドレストステー18を支持し成形用型55を形成した後には、図5に示すように、クッション体20を製造するにあたっての第2工程に移る。この第2工程では、成形前の弾性樹脂材30となる弾性樹脂材液35を、この成形用型55内に注入する。具体的には、成形用型55内に樹脂材充填ホースHの吐出口を挿入し、この樹脂材充填ホースHの吐出口から弾性樹脂材液35を吐出する。なお、この弾性樹脂材液35としては、上記したように、例えば成形前のポリウレタンフォームのような樹脂発泡体の、発泡剤が入れられた状態の合成樹脂材液である。
このように樹脂材充填ホースHの吐出口から弾性樹脂材液35を吐出していくと、図6に示すような第3工程となる。なお、この成形用型55内に配置される錘40およびヘッドレストステー18の埋没部18aは、成形用型55内に充填される弾性樹脂材液35にて浸漬された状態となっている。図6に示すように、弾性樹脂材液35を吐出し成形用型55内に充填した後には、成形用型55を適宜加熱する。そうすると、弾性樹脂材液35は、発泡した状態で硬化して成形して弾性樹脂材30となる。このように成形した弾性樹脂材30は、弾性を有することとなり、成形用型55内に配置されていた錘40およびヘッドレストステー18の埋没部18aは、互いに上記したような所望位置で弾性樹脂材30内に埋没した状態となる。これによって、成形後に弾性を有した弾性樹脂材30は、錘40およびヘッドレストステー18を、弾性を有しながら支持することとなる。
このように弾性樹脂材30が成形した後においては、クッション体20として形成されたこととなり、クッション体20として成形用型55から取り出すこととなる。
【0019】
ところで、上記したクッション体20の製造方法には、次のような後処理が含められるものでもあってよい。図7は、製造されたクッション体20をひっくり返した第4工程を示す斜視図である。図7(a)は紐部材60を取り外す前を示す斜視図であり、図7(b)は紐部材60を取り外した後を示す斜視図である。
すなわち、上記したクッション体20の製造方法では、錘40を成形用型55の上方からぶら下げて支持するために紐部材60を用いていたので、図7(a)に示すように、製造されたクッション体20には紐部材60が付着したままとなっていた。この第4工程は、この付着している紐部材60をクッション体20から取り外す工程である。
第4工程では、図7(a)に示すように、まず、輪状に形成された紐部材60の両端部61,61のうち、一方の端部61を切断する。そして、切断されていない他方の端部61を引っ張る。そうすると、図7(b)に示すように、紐部材60は柔らかい合成樹脂で形成されているので、この弾性樹脂材30の内部に錘40を残したまま、紐部材60のみを引き抜くことができる。なお、符号Cは、切断用ハサミを示す。
【0020】
以上説明したヘッドレスト13を構成するクッション体20の製造方法によれば、次のような作用効果を奏することができる。
すなわち、このクッション体20の製造方法によれば、錘40を成形用型55の上方から紐部材60によってぶら下げるようにして支持し、ヘッドレストステー18をヘッドレストステー18の連結部18bを把持することによって支持し、この状態で成形用型55内に成形前の弾性樹脂材30となる弾性樹脂材液35を注入し、弾性樹脂材30に成形した後にクッション体20として成形用型55から取り出すので、弾性樹脂材30の成形時において、錘40を成形用型55内で中空に浮いた状態で位置させ、かつヘッドレストステー18の埋没部18aを錘40と離間する位置に配置させることができる。
これによって、弾性樹脂材30を成形するにあたって、この錘40を弾性樹脂材30内部の所望位置に埋没させつつ、ヘッドレストステー18の埋没部18aを弾性樹脂材30内部で錘40と離間する位置に埋没させて、弾性樹脂材30を成形することができる。したがって、ヘッドレストステー18と錘40との間には弾性を有した弾性樹脂材30を介在させることができ、ヘッドレストステー18が車体の振動を受けて振動してしまう場合であっても、錘40と弾性樹脂材30とによりダイナミックダンパーとして機能させることができ、この振動を減衰させることができる。
【0021】
また、このクッション体20の製造方法によれば、弾性樹脂材30の成形時において、錘40を成形用型55内で中空に浮いた状態で位置させ、ヘッドレストステー18の埋没部18aを錘40と離間する位置に配置させ、この状態で弾性樹脂材30を成形するので、錘40とヘッドレストステー18とを弾性樹脂材30内部の所望位置に埋没させつつ、弾性樹脂材30を一体的に成形することができる。
これによって、従前においては錘40とヘッドレストステー18とを所望位置に配置するために、錘を配置するためのスペースが形成されるように弾性樹脂材を成形し、その成形後形成されたスペースに錘を後から挿入していたが、弾性樹脂材30の成形と同時に錘40を所望位置に配置した状態とするので、このような錘40を後から挿入する工程を要さずに弾性樹脂材30を成形することができ、もって製造工程時における作業性を向上させることができる。
つまり、クッション体20の製造方法によれば、振動を減衰させるダンパー機能を有したクッション体20としつつ、弾性樹脂材30の成形と同時に錘40を所望位置に配置した状態にし、製造工程時における作業性を向上させることができる。
また、このクッション体20の製造方法によれば、錘40には、紐部材60を挿通させるための挿通穴41が設けられ、紐部材60は、錘40の挿通穴41に挿通させることにより錘40をぶら下げ可能な状態に構成し、且つ注入した弾性樹脂材液35が弾性樹脂材30に成形した後に取り外されるので、クッション体20形成後に不要な紐部材60を容易に取り外すことができる。これによって、不要な部材が取り除かれたクッション体20とすることができ、振動を減衰させるダンパー機能を効果的に発揮することができる。
【0022】
なお、本発明に係るクッション体の製造方法にあっては、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜に変更することができる。
上記した実施の形態においては、クッション体20を製造するにあたっての第1工程で、錘40に設けられた挿通穴41に柔らかい合成樹脂からなる紐部材60を挿通させ、この紐部材60の両端部61,61を上記した第二成形具52の引掛け部52a,52aに引っ掛け、錘40を紐部材60によって成形用型55の上方からぶら下げた、成形用型55内の所望位置に中空に浮いた状態で位置させたものとしていた。しかしながら、本発明に係る『錘を中空に浮いた状態で位置させる』方法としては、『成形用型の上方から紐部材によってぶら下げるようにして錘を支持する』ように構成されればよく、錘40に挿通穴41を設けることなく、錘に紐部材を接着させる構成を採用するものであってもよい。
また、上記した実施の形態においては、第4工程(後処理工程)にて紐部材60を取り外す製造方法を例示した。しかしながら、本発明に係るクッション体の製造方法にあっては、紐部材を取り外すことは必ずしも必要な工程ではなく、紐部材を残したままの状態にするものであってもよい。
また、上記した実施の形態においては、錘40の弾性樹脂材30に対して埋没する位置は、図2に示すように、弾性樹脂材30にのうち、着座者の頭部当接側面とは反対側の裏面に近接する位置が選択されていた。しかしながら、本発明に係る錘の弾性樹脂材に対して埋没する位置は、フレーム部材と離間した位置で適宜の位置を選択することが可能であり、フレーム部材に対して左右上下何れかで離間する位置を選択することが可能である。
また、上記した実施の形態におけるクッション体20にあっては、ヘッドレスト13を構成するものについて説明するものであった。しかしながら、本発明に係るクッション体は、これに限定されることなく、上記した車両用シートの構成各部に利用することができ、例えば、上記した車両用シート10を構成するシートクッション11、シートバック12、アームレスト14のいずれにおいても利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
10 車両用シート
11 シートクッション
12 シートバック
13 ヘッドレスト
14 アームレスト
16 シートクッションフレーム
17 シートバックフレーム
17a ステーホルダ
18 ヘッドレストステー
18a ヘッドレストステーの埋没部
18b ヘッドレストステーの連結部
19 アームレストフレーム
20 クッション体
30 弾性樹脂材
35 弾性樹脂材液
40 錘
41 挿通穴
50 成形道具
51 第一成形具
52 第二成形具
52a 引掛け部
52b ヘッドレストステー配置用凹部
55 成形用型
55a 第一成形用型
55b 第二成形用型
60
61 紐部材の端部
C 切断用ハサミ
H 樹脂材充填ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望形状に成形され成形後に弾性を有する弾性樹脂材と、該弾性樹脂材内に埋没する埋没部と他の部材と連結する連結部とを具備するフレーム部材と、該フレーム部材の該埋没部と離間する位置に配置され該弾性樹脂材内に埋没する錘とを備えるクッション体の製造方法であって、
所望形状に形成される前記弾性樹脂材の外形に対応した成形用型内で、前記錘を中空に浮いた状態で位置させるように、該成形用型の上方から紐部材によってぶら下げるようにして該錘を支持し、
前記成形用型内で、前記フレーム部材の前記埋没部を前記錘と離間する位置に配置させるように、該フレーム部材の前記連結部を把持することによって該フレーム部材を支持し、
このように前記錘および前記フレーム部材を支持した状態で、前記成形用型内に成形前の前記弾性樹脂材となる弾性樹脂材液を注入し、
注入した前記弾性樹脂材液が前記弾性樹脂材に成形した後に、前記クッション体として前記成形用型から取り出すことを特徴とするクッション体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のクッション体の製造方法において、
前記錘には、前記紐部材を挿通させるための挿通穴が設けられ、
前記紐部材は、前記錘の前記挿通穴に挿通させることにより該錘をぶら下げ可能な状態に構成し、且つ注入した前記弾性樹脂材液が前記弾性樹脂材に成形した後に取り外されることを特徴とするクッション体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−201848(P2010−201848A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51804(P2009−51804)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】