クランクシャフトの製造装置、クランクシャフトの製造方法、およびクランクシャフト
【課題】簡単な構成で、スラスト受け部材が設けられるジャーナル部に隣接するウエブ部のスラスト荷重に対する耐荷重能を容易に大きくし、軽量化を図ることができるクランクシャフト、および、その製造装置と方法を提供する。
【解決手段】スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部Jを保持するジャーナル部保持型30と隣接するピン部保持型31は、このジャーナル部保持型30と対向する面であって、ジャーナル部保持型30に保持されたジャーナル部Jに対してピン部Pが偏心する方向と反対側に配置されて、素材10のウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30との間で加圧することによりウエブ部Wのジャーナル部J側の端部を張り出させる突起部46が設けられている。
【解決手段】スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部Jを保持するジャーナル部保持型30と隣接するピン部保持型31は、このジャーナル部保持型30と対向する面であって、ジャーナル部保持型30に保持されたジャーナル部Jに対してピン部Pが偏心する方向と反対側に配置されて、素材10のウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30との間で加圧することによりウエブ部Wのジャーナル部J側の端部を張り出させる突起部46が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトの製造装置、クランクシャフトの製造方法、およびクランクシャフトに関し、特に、素材に偏心据え込みを行うことによって、回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とが成形されてなり、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトと、このクランクシャフトを製造するための装置、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クランクシャフトの製造に関する従来の技術として、例えば、特許文献1が知られている。特許文献1には、冷間鍛造用材料からなる丸棒を切断して所定長さのビレット材を形成し、該ビレット材を油圧ベンダで曲げ加工し、本願の図23にも示すように、各ジャーナル部となる部分j’と各ピン部となる部分p’とが軸直角方向へオフセットされたオフセット材料10’(本願では予備成形された素材(粗形材)の一例にあたる)を形成し(曲げ工程と称されているが、本願の予備成形工程の一例にあたる)、次に、本願の図24にも示すように、該オフセット材料10’を軸方向に加圧して、本願の図25にも示すように、連接壁(本発明ではウエブ部の一例にあたる)W’間のピッチが所定寸法に形成されたクランク本体100’を圧縮成形(据え込み工程と称されているが、本願の仕上成形工程の一例にあたる)することが開示されている。
【0003】
据え込み工程を行う装置は、本願の図24に示したように、オフセット材料10’のジャーナル部となる部分j’とピン部となる部分p’をそれぞれ保持する板状の保持型30’,31’と、これらを内部に摺動可能に収容して拘束するケース32’と、オフセット材料10’を軸方向に加圧する軸方向加圧手段とを備えている。オフセット材料10’のジャーナル部となる部分j’とピン部となる部分p’をそれぞれ保持する板状の保持型30’,31’は、ケース32’内で軸方向に移動するよう構成されている。そして、据え込み工程では、図24に示したようにオフセット材料10’のジャーナル部となる部分j’とピン部となる部分p’をそれぞれ保持型30’,31’に保持し、これをケース32’内に摺動可能に収容して拘束した状態で、軸方向加圧手段により軸方向に圧縮するよう加圧し、図25に示したようにオフセット材料10’の連設壁となる部分w’を潰すように所定の厚さに成形して、連接壁W’間のピッチを所定寸法に形成する。
【0004】
ところで、クランクシャフトは、そのジャーナル部から偏心するピン部の回転慣性力とバランスをとるために、カウンタウエイトを一般に有している。そして、クランクシャフトが設けられる一例として、たとえば図2に参照されるように、4気筒の内燃機関のなかには、ウエブ部W10,W23,W32,W45にカウンタウエイトを有する所謂4バランスクランクシャフトがある。また、カウンタウエイトを有するクランクシャフトのなかには、カウンタウエイトをクランクシャフトに一体で成形することなく、クランクシャフトを成形した後に別体のカウンタウエイトを取り付けるものがある。
【0005】
さらに、このようなクランクシャフトの一例として、両端に位置するジャーナル部J01,J45と、中央に位置するジャーナル部J23とが回転可能に支持され、クランクシャフトの軸方向のスラスト荷重を受けるための部材としてスラストメタルTMがジャーナル部J23の両端に設けられたものがある。スラストメタルTMは、平板リング状の部材を半割に成形したもので、ジャーナル部J23の両端にそれぞれ隣接するウエブ部W23,W32と接するよう設けられる。
【0006】
ここで、クランクシャフトは軽量であることが望ましく、且つ、ウエブ部W23,W32は、スラスト荷重に対する耐荷重能が大きいことが望ましい。また、少なくともウエブ部に別体で構成されたカウンタウエイトを設ける場合に、ウエブ部のカウンタウエイトを取り付ける部分には、取り付けるカウンタウエイトの形状と対応する形状にウエブ部を後工程で切削加工などすることが一般に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−9595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
回転可能に支持されるジャーナル部J23と隣接するウエブ部W23,W32のスラスト荷重に対する耐荷重能を大きくするための一つの手法としては、スラストメタルと接する面積(以下、スラスト面積という)を大きくすることが考えられる。そして、スラスト面積を大きくするためには、ウエブ部の端部にスラストメタルと接触面を増大させるための部材を付加することが考えられる。しかしながら、このような接触面積を増大させるための部材を付加することは、工程が増えることから手間やコストがかかるという問題や、クランクシャフトの軽量化を図ることができないという問題、さらには、別体のカウンタウエイトを取り付けるための加工量も増大するなどの問題が発生することとなる。
【0009】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、スラスト受け部材が設けられるジャーナル部に隣接するウエブ部のスラスト荷重に対する耐荷重能を容易に大きくすることができ、しかも、軽量化を図ることができ、少ない加工量で別体のカウンタウエイトを取り付けることができる構造のクランクシャフト、および、そのクランクシャフトを製造することができる装置とその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有し、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトを、素材に偏心据え込みを行うことによって製造するための装置であって、素材のジャーナル部となる部分を保持するジャーナル部保持型と、ピン部となる部分を保持するピン部保持型と、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段とを備えており、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と隣接するピン部保持型は、該ジャーナル部保持型と対向する面であって、該ジャーナル部保持型に保持されたジャーナル部に対してピン部が偏心する方向と反対側に配置されて、前記素材のウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型との間で加圧することにより前記ウエブ部の前記ジャーナル部側の端部を張り出させる突起部が設けられていることを特徴とするものである。
請求項2のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明において、さらに、ジャーナル部保持型とピン部保持型とを軸方向に摺動可能に拘束するケースを備えており、少なくとも前記ピン部保持型は、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えており、前記突起部は、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と隣接する径方向スライドに設けられていることを特徴とする。
請求項3のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1または2のいずれかに記載の発明において、前記素材を予備成形するための予備成形装置を備えており、該予備成形装置は、素材のピン部となる部分を拘束し把持するパンチと、該素材のパンチに把持されたピン部となる部分に隣接するジャーナル部となる部分を拘束し把持するダイと、パンチをダイに対して相対的に前記素材の軸直交方向に偏位させるよう駆動する軸直交方向駆動手段と、ダイをパンチに対して近付けるように前記素材の軸方向に駆動する軸方向駆動主段とを備えており、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げ成形させるものであることを特徴とする。
請求項4のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項3に記載の発明において、前記素材の、後に端部が張り出し成形されるウエブ部に隣接するのジャーナル部を把持するダイのパンチに対する軸方向長さが、他のジャーナル部を把持するダイのパンチに対する軸方向長さよりも長く設定されており、前記軸方向駆動主段は、予備成形が完了した時点で両ダイのパンチに対する軸方向の位置が同じとなるように軸方向に駆動するものであることを特徴とするものである。
請求項5のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記突起部は、前記素材のウエブ部となる部分の加圧が完了した時点で前記ジャーナル部の中心軸と同心状に成形されていることを特徴とするものである。
請求項6のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記突起部は、前記ジャーナル部に対するピン部の偏心方向と直交する方向に延びる直線部を有していることを特徴とするものである。
請求項7のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記径方向スライドは、前記突起部が設けられた面と反対側の面に、該面と対向する前記ジャーナル部保持型との間で前記ウエブ部となる部分に対して前記突起部と同じ面積で接するバランス突起部が設けられていることを特徴とするものである。
請求項8のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有し、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトを、素材に偏心据え込みを行うことによって製造するための装置であって、素材のジャーナル部となる部分を保持するジャーナル部保持型と、ピン部となる部分を保持するピン部保持型と、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段とを備えており、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型は、前記ピン部保持型との間でウエブ部となる部分を加圧することにより、ウエブ部の前記スラスト受け部材と対応する位置に、ジャーナル部とスラスト受け部材との相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部を形成するための、凹部形成部が設けられていることを特徴とするものである。
請求項9のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項8に記載の発明において、さらに、ジャーナル部保持型とピン部保持型とを軸方向に摺動可能に拘束するケースを備えており、少なくとも前記ピン部保持型は、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えていることを特徴とするものである。
請求項10のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項8または9のいずれかに記載の発明において、前記素材を予備成形するための予備成形装置を備えており、該予備成形装置は、素材のピン部となる部分を拘束し把持するパンチと、素材のパンチに把持されたピン部となる部分に隣接するジャーナル部となる部分を拘束し把持するダイと、パンチをダイに対して相対的に素材の軸直交方向に偏位させるよう駆動する軸直交方向駆動手段と、ダイをパンチに対して近付けるように素材の軸方向に駆動する軸方向駆動主段とを備えており、素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げ成形させるものであることを特徴とするものである。
また、請求項11のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有し、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトを、素材に偏心据え込みを行うことによって製造するための方法であって、素材のジャーナル部となる部分をジャーナル部保持型により保持すると共に、ピン部となる部分をピン部保持型により保持し、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する方法において、前記ピン部保持型の、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と対向する面であって、該ジャーナル部保持型に保持されたジャーナル部に対してピン部が偏心する方向と反対側に突起部を設けておき、前記素材のウエブ部となる部分のジャーナル部側の端部を前記ジャーナル部保持型と前記ピン部保持型の突起部との間で加圧して、前記ウエブ部の前記ジャーナル部側の端部を張り出させることを特徴とするものである。
請求項12のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項11に記載の発明において、前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型をケース内に摺動可能に配置して拘束し、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さでウエブ部を成形する場合に、少なくとも前記ピン部保持型を、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えた構成とし、前記径方向スライドの、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と対向する面であって、該ジャーナル部保持型に保持されたジャーナル部に対してピン部が偏心する方向と反対側に突起部を設けておき、前記素材のウエブ部となる部分のジャーナル部側の端部を前記ジャーナル部保持型と前記径方向スライドの突起部との間で加圧して、前記ウエブ部の前記ジャーナル部側の端部を張り出させることを特徴とするものである。
請求項13のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項11または12のいずれかに記載の発明において、素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、該予備成形された素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とするものである。
請求項14のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項13に記載の発明において、前記予備成形で、素材の、前記ジャーナル部側の端部を張り出させるウエブ部となる部分の軸方向長さを、端部を張り出させないウエブ部となる部分の軸方向長さと比較して長く設定し、前記ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに同じとなるまで寄せるよう軸方向に加圧することを特徴とするものである。
請求項15のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項11〜14のいずれか1項に記載の発明において、前記突起部を、前記素材のウエブ部となる部分の加圧が完了した時点で前記ジャーナル部の中心軸と同心状に成形しておくことを特徴とするものである。
請求項16のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項11〜14のいずれか1項に記載の発明において、前記突起部に、前記ジャーナル部に対するピン部の偏心方向と直交する方向に延びる直線部を成形しておき、前記素材のウエブ部となる部分のジャーナル部側の端部を前記ジャーナル部保持型と前記径方向スライドの突起部との間で加圧した際に、前記ウエブ部の前記直線部によって成形された部分にカウンタウエイトを接合することを特徴とするものである。
請求項17のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項11〜16のいずれか1項に記載の発明において、前記ピン部保持型の、前記突起部を成形した面と反対側の面に、該面と対向する前記ジャーナル部保持型との間で前記ウエブ部となる部分に対して前記突起部と同じ面積で接するバランス突起部を設けておくことを特徴とするものである。
請求項18のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有し、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトを、素材に偏心据え込みを行うことによって製造するための方法であって、素材のジャーナル部となる部分をジャーナル部保持型により保持すると共に、ピン部となる部分をピン部保持型により保持し、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さで成形する方法において、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型の前記スラスト受け部材と対応する位置に、ジャーナル部とスラスト受け部材との相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部を形成するための凹部形成部を設けておき、素材のウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型と前記ピン部保持型との間で加圧して、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部と隣接するウエブ部の前記スラスト受け部材と接する位置に、前記凹部を形成することを特徴とするものである。
請求項19のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項18に記載の発明において、前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型をケース内に摺動可能に配置して拘束し、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さでウエブ部を成形する場合に、少なくとも前記ピン部保持型を、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えた構成としておくことを特徴とするものである。
請求項20のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項18または19のいずれかに記載の発明において、前記素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、該予備成形された素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とするものである。
さらに、請求項21のクランクシャフトに係る発明は、上記目的を達成するため、素材に偏心据え込みを行うことによって、回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とが成形されてなり、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトであって、素材を偏心据え込みすることによって、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部に隣接するウエブ部の前記ジャーナル部側の端部が張り出されていることを特徴とするものである。
請求項22のクランクシャフトに係る発明は、上記目的を達成するため、請求項21に記載の発明において、少なくとも、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部に隣接するウエブ部の、張り出された前記ジャーナル部側の端部に、カウンタウエイトが接合されていることを特徴とするものである。
請求項23のクランクシャフトに係る発明は、上記目的を達成するため、素材に偏心据え込みを行うことによって、回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とが成形されてなり、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトであって、素材を偏心据え込みすることによって、前記ウエブ部のスラスト受け部材と接する部分に、ジャーナル部とスラスト受け部材との相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1のクランクシャフトの製造装置に係る発明によれば、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と隣接するピン部保持型の、該ジャーナル部保持型と対向する面であって、該ジャーナル部保持型に保持されたジャーナル部に対してピン部が偏心する方向と反対側に突起部を配置することにより、素材のウエブ部となる部分を、このピン部保持型とジャーナル部保持型との間で加圧すると、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部と隣接するウエブ部の、ジャーナル部側の端部がピン部保持型の突起部とジャーナル部保持型との間で加圧されて張り出されるため、スラスト面積を増加させるための部材を付加することなく、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部と隣接するウエブ部のスラスト面積を増加させることができ、その結果、スラスト荷重に対する耐荷重能が大きく且つ軽量化を図ることができるクランクシャフトを製造することができる。
請求項8のクランクシャフトの製造装置に係る発明によれば、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型の、ウエブ部の前記スラスト受け部材が接することとなる部分と対応する位置に、凹部形成部を設けることにより、素材のウエブ部となる部分を、このジャーナル部保持型とピン部保持型との間で加圧すると、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部と隣接するウエブ部の、スラスト受け部材が接することとなる部分と対応する位置に、ジャーナル部とスラスト受け部材との相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部が形成される。そのため、クランクシャフトを使用する際に、そのジャーナル部とスラスト受け部材との間に潤滑剤が入り込んだ状態でジャーナル部とスラスト受け部材とが相対的に回転すると、流動する潤滑剤が凹部によってウエブ部からスラスト部材を引き離すように押圧するクサビ効果を付与することとなり、ウエブ部とスラスト部材との摩擦抵抗を減少させることができ、その結果、スラスト面積を増加させることなく、スラスト荷重に対する耐荷重能が大きく且つ軽量化を図ることができるクランクシャフトを製造することができる。
請求項11のクランクシャフトの製造方法に係る発明によれば、ピン部保持型の、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と対向する面であって、該ジャーナル部保持型に保持されたジャーナル部に対してピン部が偏心する方向と反対側に突起部を設けておき、素材のウエブ部となる部分のジャーナル部側の端部をジャーナル部保持型とピン部保持型の突起部との間で加圧して、ウエブ部のジャーナル部側の端部を張り出させることにより、スラスト面積を増加させるための部材を付加することなく、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部と隣接するウエブ部のスラスト面積が増加し、その結果、スラスト荷重に対する耐荷重能が大きく且つ軽量化を図ることができるクランクシャフトを製造することができる。
請求項18のクランクシャフトの製造方法に係る発明によれば、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型のスラスト受け部材と対応する位置に、ジャーナル部とスラスト受け部材との相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部を形成するための凹部形成部を設けておき、素材のウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型と前記ピン部保持型との間で加圧して、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部と隣接するウエブ部の前記スラスト受け部材と接する位置に前記凹部を形成することにより、クランクシャフトを使用する際に、そのジャーナル部とスラスト受け部材との間に潤滑剤が入り込んだ状態でジャーナル部とスラスト受け部材とが相対的に回転すると、流動する潤滑剤が凹部によってウエブ部からスラスト部材を引き離すように押圧するクサビ効果を付与することとなり、ウエブ部とスラスト部材との摩擦抵抗を減少させることができ、その結果、スラスト面積を増加させることなく、スラスト荷重に対する耐荷重能が大きく且つ軽量化を図ることができるクランクシャフトを製造することができる。
請求項21のクランクシャフトに係る発明によれば、素材を偏心据え込みすることによって、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部に隣接するウエブ部の前記ジャーナル部側の端部が張り出されていることにより、スラスト面積を増加させるための部材が付加されることなく、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部と隣接するウエブ部のスラスト面積が増加し、その結果、スラスト荷重に対する耐荷重能が大きく且つ軽量化を図ることができる。
請求項23のクランクシャフトに係る発明によれば、素材を偏心据え込みすることによって、ウエブ部のスラスト受け部材と接する部分に、ジャーナル部とスラスト受け部材との相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部が形成されていることにより、クランクシャフトを使用する際に、そのジャーナル部とスラスト受け部材との間に潤滑剤が入り込んだ状態でジャーナル部とスラスト受け部材とが相対的に回転すると、流動する潤滑剤が凹部によってウエブ部からスラスト部材を引き離すように押圧するクサビ効果を付与することとなり、ウエブ部とスラスト部材との摩擦抵抗を減少させることができ、その結果、スラスト面積を増加させることなく、スラスト荷重に対する耐荷重能が大きく且つ軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】粗形材の実施の一形態を説明するために示した正面図である。
【図2】クランクシャフトの実施の一形態を説明するために示した正面図である。
【図3】粗形材を成形するための予備成形装置を説明するために示した正面図である。
【図4】図3に示した予備成形装置の部分拡大図である。
【図5】本発明により素材の予備成形を開始する前の状態を説明するために示した拡大図である。
【図6】図5の状態から、一のピン部となる部分とこれに隣接するウエブ部となる部分の予備成形を完了した状態を説明するために示した拡大図である。
【図7】本発明による仕上成形装置の実施の一形態を説明するために示した、部分断面図である。
【図8】本発明による仕上成形装置の、仕上成形前の状態を説明するために示した図7の横断平面図である。
【図9】図8の状態から仕上成形を完了した状態を説明するために示した図7の横断平面図である。
【図10】仕上成形を完了した状態を説明するために図7と対応させて示した部分拡大図である。
【図11】本発明と通常の手法とを比較するために、粗形材を軸方向に加圧することによって仕上成形された、ジャーナル部側の端部が張り出すようにスラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部に隣接するウエブ部の形状を説明するために示したクランクシャフトの断面図である。
【図12】本発明の径方向スライドに設けられる突起部と、これにより成形されるウエブ部の形状の、別の実施の形態を説明するために示した仕上成形装置の横断面図である。
【図13】本発明による仕上成形装置のさらに別の実施の形態に至る過程を説明するために、径方向スライドに突起部を設ける仮定上の位置を示した、仕上げ成形前の状態の部分縦断拡大断面図である。
【図14】図13の状態から仕上成形を完了した状態を示した部分縦断拡大断面図である。
【図15】図13および図14に示した仮定を経て、本発明による突起部の位置が設定された径方向スライドを有する仕上成形装置のさらに別の実施の形態を説明するために、仕上げ成形前の状態の部分縦断拡大断面図である。
【図16】図15の状態から仕上成形を完了した状態を示した部分縦断拡大断面図である。
【図17】本発明による仕上成形装置のさらに別の実施の形態を説明するために示した部分縦断拡大断面図である。
【図18】本発明により凹部形成部が設けられた図17に示した径方向スライドの平面図である。
【図19】クランクシャフトのジャーナル部のスラストメタルに対する相対的な回転方向の説明図である。
【図20】図17および図18に示した径方向スライドを有する仕上成形装置により凹部が形成され、ジャーナル部を中心として回転するクランクシャフトの、ウエブ部とスラストメタルとの間で流動する潤滑剤が凹部によってクサビ効果を発生させる状態を示した説明図である。
【図21】本発明により凹部形成部が設けられた径方向スライドの変形例を示した平面図である。
【図22】本発明により凹部形成部が設けられた径方向スライドのさらなる変形例を示した平面図である。
【図23】従来の技術により曲げ工程で曲げ加工されたオフセット材料を説明するために示した部分拡大図である。
【図24】従来の技術において、オフセット材料を軸方向に加圧して圧縮成形する据え込み工程を説明するために示した断面図である。
【図25】従来の技術により、連接壁間のピッチが所定寸法に形成されたクランク本体を説明するために示した部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
最初に、本発明のクランクシャフトの製造装置の実施の一形態を図に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態においては、直列4気筒の内燃機関に使用されるクランクシャフトを製造する場合により説明するが、本発明はこの実施の形態に限定されることはなく、直列4気筒以外の他の形態の内燃機関、さらには、内燃機関以外の装置などに用いられるクランクシャフトと、その製造装置および製造方法にも適用することができる。
【0014】
本発明のクランクシャフトの製造装置は、概略、回転中心軸となるジャーナル部Jと、このジャーナル部Jから偏心するピン部Pと、ジャーナル部Jとピン部Pとの間に延びるウエブ部Wとを有し、ジャーナル部Jの少なくとも一つにスラスト受け部材TMが取り付けられるクランクシャフト100を、素材1または10に偏心据え込みを行うことによって製造するためのものであって、素材1または10のジャーナル部となる部分jを保持するジャーナル部保持型30と、ピン部となる部分pを保持するピン部保持型31と、素材1または10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段33とを備えており、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部Jを保持するジャーナル部保持型30と隣接するピン部保持型31は、このジャーナル部保持型30と対向する面であって、このジャーナル部保持型30に保持されたジャーナル部Jに対してピン部Pが偏心する方向と反対側に配置されて、素材1または10のウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30との間で加圧することによりウエブ部Wのジャーナル部J側の端部を張り出させる突起部46が設けられている。
そして、この実施の形態におけるクランクシャフトの製造装置は、さらに、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31とを軸方向に摺動可能に拘束するケース32を備えており、少なくともピン部保持型31は、ケース32の内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライド41と、この軸方向スライド41に保持されてケース32の径方向に移動可能に摺動する径方向スライド42とを備えており、突起部46は、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部Jを保持するジャーナル部保持型30と隣接する径方向スライド42に設けられている。
さらに、この実施の形態におけるクランクシャフトの製造装置は、素材1を予備成形するための予備成形装置2を備えており、予備成形装置2は、図3および図4に示すように、素材1のピン部となる部分pを拘束し把持するパンチ20と、素材1のパンチ20に把持されたピン部となる部分pに隣接するジャーナル部となる部分jを拘束し把持するダイ21,21と、パンチ20をダイ21に対して相対的に素材の軸直交方向に偏位させるよう駆動する軸直交方向駆動手段(後述する)と、ダイ21をパンチ20に対して近付けるように素材1の軸方向に駆動する軸方向駆動主段26とを備えており、素材のピン部となる部分pをジャーナル部となる部分jに対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分wを所定の厚さでピン部となる部分pとジャーナル部となる部分jとに対して曲げ成形させるよう構成されている。なお、この実施の形態では、このように予備成形された素材を粗形材10と称することとする。
【0015】
図1は、断面円形の棒状または線状(これらを総じて棒状という)の金属製素材1を曲げ加工することにより予備成形された粗形材10の一形態を示したものであり、図2は、図1に示した粗形材10をその軸方向に加圧することにより仕上成形されて製造されたクランクシャフト100の一形態を示したものである。図3は、素材1を曲げ加工して図1に示した粗形材10を成形するための予備成形装置2を示したものであり、図4は、図3に示した予備成形装置2の詳細を説明するために示した部分拡大図である。図2に示した実施の形態におけるクランクシャフト100は、ジャーナル部J01、J23,J45が軸受により回転可能に支持され、また、この実施の形態においては、中央に位置するジャーナル部J23には、スラスト受け部材としてスラストメタルTMが設けられる。しかしながら、本発明は、この実施の形態に限定されることはなく、中央に位置するジャーナル部J23以外の他のジャーナル部Jにスラスト受け部材を設ける場合などにも適用することができる。また、クランクシャフト100のウエブ部W10,W23,W32、W45に、別体のカウンタウエイトCWがそれぞれ取り付けられる。本発明のクランクシャフトの製造装置における各部材の形状を容易に特定するために、図において構成部材の端面など断面でない部分にもハッチングを描いている場合があることに注意されたい。以下の記載と図において、同一符号は同様の部分または相当する部分に付すものとする。また、以下の記載と図面において、クランクシャフト100の各部分について説明する場合にはジャーナル部J、ピン部P、ウエブ部Wと、それぞれ大文字で示すこととし、また、その粗形材10と素材1の各部分について説明する場合には、ジャーナル部となる部分j、ピン部となる部分p、ウエブ部となる部分wと、それぞれ対応させた小文字で示すこととする。さらに、以下の記載において、素材1、粗形材10、およびクランクシャフト100の各部分について、特定の部分を説明する場合には、それぞれのアルファベット符号の後に続けて番号を付すこととし、各部分にそれぞれ共通の事項を説明する場合には、アルファベット符号のみを付すこととする。
【0016】
予備成形装置2のパンチ20は、素材1を軸直交方向に加圧する本体20aと、この本体20aの下方に設けられて素材1のピン部となる部分pを把持するパンチ押え20bとを有している。パンチ押え20bは、本体20aに対して開閉しまたは着脱可能に取外すことができる。素材1は、本体20aに対してパンチ押え20bを開いた状態または取外した状態で配置され、その後本体20aに対してパンチ押え20bを閉じまたは取り付けてクランプなどによってその状態を保持することにより、そのピン部となる部分pが拘束された状態で把持される。パンチ20は、上盤23に取り付けられる。上盤23は、軸直交方向駆動手段として例えば素材1の軸直交方向に伸長退縮駆動するプレスのラムに接続されている。本体20aは、上盤23を下降させることによって把持した素材1のピン部となる部分pを軸直交方向(矢印Rで示した方向)に加圧し、このピン部となる部分pをジャーナル部となる部分jに対して偏心させると共に、ウエブ部となる部分wをピン部となる部分pとジャーナル部となる部分jに対して曲げ加工する。
【0017】
ダイ21は、パンチ20と同様に、素材1のジャーナル部となる部分jを支持する本体21aと、この本体21aの上方に設けられて素材1のジャーナル部jとなる部分を把持するダイ押え21bとを有しており、ダイ押え21bは、本体21aに対して開閉または着脱可能に取外すことができる。素材1は、本体21aに対してダイ押え21bを開いた状態または取外した状態で配置され、その後本体21aに対してダイ押え21bを閉じまたは取り付けてクランプなどによってその状態を保持することにより、そのジャーナル部となる部分jが拘束された状態で把持される。そして、ダイ21は、素材1の軸方向に移動可能に設けられている。
【0018】
軸方向駆動手段26は、図3に示した実施の形態の場合、上盤23の下降によって素材1のジャーナル部となる部分を拘束したダイ21,21を互いに寄せるように移動するカム機構により構成されている(以下、カム機構に符号26を付する)。カム機構26は、上盤23に設けられた駆動カム26aと、ダイ21に接続された従動カム26bによって構成されている。なお、図3に示した実施の形態におけるカム機構26は、一対のダイ21,21をそれぞれ軸方向(矢印Aで示した方向)に移動させる両カム機構26のカム面の角度を、後述するように任意に設定され、上盤23の下降によって両ダイ21,21を寄せるように軸方向に移動させる長さを任意に設定することができる。駆動カム26aと従動カム26bは、パンチ20とダイ21によって把持された素材1と干渉することがないように、素材1の側部(図3においては、紙面に対して手前と奥)に位置し、両カム26a、26bのカム面が対向するように配設される。駆動カム26aは、軸方向に対して移動することがないように設けられており、従動カム26bは、軸方向に移動可能に設けられてダイ21と連結されている。上盤23の下降に伴って駆動カム26aが押し下げられると、従動カム26bによって一対のダイ21,21が互いに寄るように軸方向に所定の長さを移動する。なお、軸方向駆動手段26は、カム機構に限定されることはなく、軸方向(矢印Aの方向)に伸長・退縮する油圧シリンダなど、他のアクチュエータにより構成することもできる。そして、この場合には、両ダイ21、21のパンチ20に対する移動量を異ならせるように制御することにより、ウエブ部となる部分w、wの材料の量に差が生じるように粗形材10を成形することができる。
【0019】
このように構成された予備成形装置2を用いて予備成形を行い粗形材10を成形するに際して、最初に、断面円形の棒状または線状(本発明の素材は棒状に線状も含まれる)の金属製材料からなる素材1のピン部となる部分pをパンチ20で把持し、ジャーナル部となる部分jをそれぞれダイ21,21で把持する。そして、パンチ20を素材1の軸直交方向Rに移動させて加圧するとともに、ダイ21,21をパンチ20にそれぞれ寄せるように軸方向Aに移動させて加圧する。素材1のピン部となる部分pは、ジャーナル部となる部分jから偏位し、これに伴って、ダイ21,21を互いに寄せるよう移動させることによってピン部となる部分pとジャーナル部となる部分jに対して間に位置するウエブ部となる部分wを所定の角度に曲げ加工する。なお、このとき、パンチ20が素材1の軸直交方向Rに移動することによる加圧と、ダイ21,21が互いに寄るように軸方向Aに移動することにより、ウエブ部となる部分wをパンチ20の本体20aとダイ21の本体21aの間で加圧して所定量まで潰すように成形することが望ましい。
【0020】
この予備成形は、製造するクランクシャフト100のピン部Pの数に応じて繰り返し行われる。図1に示した粗形材10を予備成形する場合には、ピン部となる部分p2、p3と、p1、p4とがジャーナル部からそれぞれ同じ方向に偏心するよう曲げ加工されるため、同じ方向に偏心するピン部となる部分p2とこれに隣接するウエブ部となる部分w21、w23との予備成形と、ピン部となる部分p3とこれに隣接するウエブ部となる部分w32、w34との予備成形とを順次行い(順序はどちらが先でもよい)、その後、この素材1(半粗形材10でもある)を軸回りに180度回転させて、同じ方向に偏心するピン部となる部分p1とこれに隣接するウエブ部となる部分w10、w12との予備成形と、ピン部となる部分p4とこれに隣接するウエブ部となる部分w43、w45との予備成形とを順次行う(順序はどちらが先でもよい)。なお、同じ方向に偏心するピン部となる部分p2、p3および隣接するウエブ部となる部分w21、w23、および、w32、w34の予備成形と、ピン部となる部分p1、p4および隣接するウエブ部となる部分w10、w12、および、w43、w45の予備成形との順序も、どちらが先でもよい。このように素材1を予備成形して粗形材10とすることにより、後の仕上成形工程で偏心据込を比較的小さな加圧力で無理なく行ってクランクシャフトを精度よく製造することができる。
【0021】
さらに、この実施の形態における予備成形では、図5に示すように、素材1の、後にスラストメタルTMが設けられるジャーナル部となる部分j23に隣接するウエブ部となる部分w23と、w32との軸方向長さL1が、他のウエブ部となる部分wの軸方向長さL2よりも長く設定されており、図6に示すように、予備成形後の粗形材10のウエブ部となる部分w23と、w32との軸方向長さLと他のウエブ部となる部分wの軸方向長さLとが同じとなるように設定されている。すなわち、後にスラストメタルTMが設けられるジャーナル部となる部分j23を保持するダイ21が、これに隣接するピン部となる部分p2またはp3を保持するパンチ20に対して近付くように軸方向に移動する長さ(移動量)は、他方のジャーナル部となる部分j12またはj34を保持するダイ21がピン部となる部分p2またはp3を保持するパンチ20に対して近付くように軸方向に移動する長さよりも大きくなるように設定されている。このように、素材1の各部の設定する長さを、後にスラストメタルTMが設けられるジャーナル部となる部分j23とこれに隣接するウエブ部となる部分w23、w32との軸方向長さL1が、他のウエブ部となる部分w21、w34の軸方向長さL2よりも長くする(両ダイ21,21の移動量が異なるように設定する)ことにより、後に行われる仕上成形で張り出されるように成形されることとなる粗形材10のウエブ部となる部分w23、w32の材料を他のウエブ部となる部分w21、w34と比較して多くすることができる。このような移動量の差を生じさせることができるようにするために、予備成形装置2の軸方向駆動手段は、カム機構26のカム面26a、26bの互いの角度を異ならせるなどにより構成することができる。また、本発明はカム機構に限定されることはなく、シリンダなどによってダイ21,21をそれぞれ軸方向に所定量移動させるように構成することもできる。
【0022】
次に、本発明における仕上成形装置3の実施の一形態を図7〜図10に基づいて説明する。この実施の形態における仕上成形装置3は、予備成形された粗形材10を軸方向に加圧してウエブ部Wを所定の厚さで成形すると共に、ウエブ部W間を所定のピッチで成形し、且つ、ジャーナル部Jに対してピン部Pを所定量偏心させるように成形するものであり、図7に示すように、概略、予備成形された粗形材10のジャーナル部となる部分jを保持するジャーナル部保持型30と、ピン部となる部分pを保持するピン部保持型31と、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31とを軸方向に摺動可能に拘束するケース32と、粗形材10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さ、所定のピッチに成形する軸方向加圧手段33とを備えている。
【0023】
そして、この実施の形態における仕上成形装置3は、少なくともピン部保持型31が、ケース32の内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライド41と、この軸方向スライド41に保持されてケース32の径方向に移動可能に摺動する径方向スライド42とを備えており、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部J23を保持するジャーナル部保持型30と隣接する径方向スライド42には、このジャーナル部保持型30と対向する面であって、このジャーナル部保持型30に保持されたジャーナル部J23に対してピン部P2およびP3が偏心する方向と反対側の位置に突起部46が設けられている。この突起部46は、その上面(ジャーナル部保持型30と対向する面)46aとジャーナル部保持型30との間で、仕上成形時に粗形材10の、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部となる部分j23と隣接するウエブ部となる部分w23、w32を加圧して、ウエブ部W23,W32のジャーナル部側の端部を張り出させるよう構成されている。
【0024】
ケース32は、円筒を軸方向に沿って半割りした一対の部材32A,32Bにより構成されている。ケース32は、相対的に互いの部材32A,32Bが開閉可能に、且つ、成形時に不用意に開くことがないように所定の力で型締されるよう支持されている。なお、図7および図10においては、ケース32の一方の部材32Aまたは32Bの端面が示されているが、その形状を特定しやすいようにハッチングを施されていることに注意されたい。
【0025】
ジャーナル部保持型30は、成形するクランクシャフト100のジャーナル部Jの軸方向長さと同じ厚さを有する板状に成形されたもので、その外周形状がケース32の内部の断面形状と相似形で、ケース32の内部で軸方向に摺動できるようケース32の内面よりも僅かに小さく成形されている。そして、ジャーナル部保持型30は、所定の位置に粗形材10のジャーナル部となる部分jを保持する孔35が形成されており、この孔35の中心を通りジャーナル部Jに対するピン部Pの偏心方向に延びる仮想線上に形成される分割線で半割りされた一対の部材30A,30Bにより構成されている。なお、図7および図10においては、ジャーナル部保持型30の一方の部材30Aまたは30Bの端面が示されているが、ケース32と同様に、その形状を特定しやすいようにハッチングを施されていることに注意されたい。
【0026】
ピン部保持型31の軸方向スライド41は、少なくとも成形するクランクシャフト100のピン部Pの軸方向長さとこのピン部Pの両端を支持する両ウエブ部W,Wを成形する厚さとを加えた厚さ以下の厚さを有する板状に成形されたもので、その外周形状がケース32の内部の断面形状と相似形で、ケース32の内部で軸方向に摺動できるようケース32の内面よりも僅かに小さく成形されている。そして、ピン部保持型31の軸方向スライド41は、成形するクランクシャフト100のウエブ部Wの形状や大きさ(幅と長さ)などに応じて径方向に延在する開口43が厚さ方向に貫通するよう形成されており、この開口43の長手方向に沿って中央で半割された一対の部材41A,41Bにより構成されている。さらに、開口43の長手方向側壁には、径方向スライド42の側縁を摺動可能に受けるための溝44がそれぞれ形成されている。
【0027】
一方、ピン部保持型31の径方向スライド42は、成形するクランクシャフト100のピン部Pの軸方向長さと同じ厚さを有し、且つ、軸方向スライド41の溝44に支持されて移動方向と直交する方向に拘束され得る幅と、溝44内で粗形材のピン部となる部分pからクランクシャフトのピン部Pとなるまでの偏心長さまで移動し得る長さとを有する板状に成形されている。そして、径方向スライド42は、所定の位置に粗形材10のピン部となる部分pを保持する孔36が形成されており、この孔36の中心を通りジャーナル部Jに対するピン部Pの偏心方向に延びる仮想線上に形成される分割線で半割りされた一対の部材42A,42Bにより構成されている。なお、図7および図10においては、ピン部保持型31の軸方向スライド41および径方向スライド42の一方の部材41A,42Aまたは41B,42Bの端面が示されているが、ケース32およびジャーナル部保持型30と同様に、その形状を特定しやすいようにハッチングを施されていることに注意されたい。
【0028】
本発明による突起部46は、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部となる部分j23を保持するジャーナル部保持型30と隣接する径方向スライド42の、ジャーナル部保持型30と対向する面であって、このジャーナル部保持型30に保持されたジャーナル部となる部分j23に対してピン部となる部p2,p3が偏心する方向と反対側に配置されている。この突起部46は、粗形材10を仕上成形するときに、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部J23と隣接するウエブ部W23,W32のジャーナル部J側の端部を張り出し成形させ得るように、その上面46aが径方向スライド42と対向するジャーナル部保持型30と所定の間隔を形成するような高さを有しており、径方向スライド42の表面に一体成形されている。そして、この実施の形態における突起部46は、図9に示すように、粗形材10のウエブ部となる部分wの加圧が完了した時点(すなわち、ウエブ部Wの仕上成形が完了した時点)における径方向スライド42の位置で、上面46aがジャーナル部Jの中心軸の延長線と同心状となるように、この中心軸の延長線を中心とする円弧状に成形されている。このように突起部46を同心状に成形することにより、ウエブ部Wの端部を適切に張り出させてスラスト面積を増大させることができる。図10に示すように、突起部46の内側壁面46b(ジャーナル部Jの中心軸の延長線に近い側の壁面)は、ウエブ部Wの端部が張り出すように材料を円滑に流動させるため、径方向スライド42の表面に対して傾斜するよう形成されている。また、突起部46の内側壁面46bは、仕上成形が完了した時点で、径方向スライド42の表面とウエブ部Wとの間に隙間Sを生じるような位置、および傾斜角度に設定されている。このように突起部46がウエブ部Wとの間に隙間Sを生じるように成形することにより、ウエブ部Wの全体を所定の厚さに成形しつつ端部を張り出させるときの抵抗が増大するのを低減することができる。
なお、本発明は、この実施の形態に限定されることはなく、ジャーナル部保持型30も、ピン部保持型31と同様に、ケース32の内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、この軸方向スライドに保持されてケース32の径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えた構成とすることもでき、また、ピン部保持型31も、ジャーナル部保持型30と同様に、半割された一対の板状の部材により構成して、各部材の上述した位置に突起部46をそれぞれ設けることも含まれる。
【0029】
次に、本発明のクランクシャフトの製造方法の実施の一形態を、上述したように構成された製造装置を用いる場合により、その製造装置の作動と共に説明する。
本発明のクランクシャフトの製造方法は、概略、回転中心軸となるジャーナル部Jと、ジャーナル部から偏心するピン部Pと、ジャーナル部Jとピン部Pとの間に延びるウエブ部Wとを有し、ジャーナル部Jの少なくとも一つにスラスト受け部材TMが取り付けられるクランクシャフト100を、素材1または10に偏心据え込みを行うことによって製造するためのものであって、素材1または10のジャーナル部となる部分jをジャーナル部保持型30により保持すると共に、ピン部となる部分pをピン部保持型31により保持し、素材1または10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形する方法において、ピン部保持型31の、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部Jを保持するジャーナル部保持型30と対向する面であって、ジャーナル部保持型30に保持されたジャーナル部Jに対してピン部Pが偏心する方向と反対側に突起部46を設けておき、素材1または10のウエブ部となる部分wのジャーナル部J側の端部をジャーナル部保持型30とピン部保持型31の突起部46との間で加圧して、ウエブ部Wのジャーナル部J側の端部を張り出させるものである。
そして、この実施の形態においては、素材1または10を保持したジャーナル部保持型30とピン部保持型31をケース32内に摺動可能に配置して拘束し、素材1または10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さでウエブ部Wを成形する場合に、少なくともピン部保持型31を、ケース32の内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライド41と、軸方向スライド41に保持されてケース32の径方向に移動可能に摺動する径方向スライド42とを備えた構成とし、径方向スライド42の、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部Jを保持するジャーナル部保持型30と対向する面であって、ジャーナル部保持型30に保持されたジャーナル部Jに対してピン部Pが偏心する方向と反対側に突起部46を設けておき、素材1のウエブ部となる部分wのジャーナル部J側の端部をジャーナル部保持型30と径方向スライド42の突起部46との間で加圧して、ウエブ部Wのジャーナル部J側の端部を張り出させるものである。
さらに、この実施の形態においては、素材1のピン部となる部分pを軸直交方向に加圧するとともに、ピン部となる部分pとこれに隣接するジャーナル部となる部分jとの軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、素材1のピン部となる部分pをジャーナル部となる部分jに対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分wを所定の厚さでピン部となる部分pとジャーナル部となる部分jとに対して曲げる予備成形を施し、予備成形された素材10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形するものである。
【0030】
さらに、この実施の形態においては、素材1を曲げ加工して粗形材10を予備成形するときに、素材1の、突起部46に加圧されるウエブ部となる部分w23、w32の長さを、突起部46に加圧されない他のウエブ部となる部分wの長さと比較して長く設定し、素材1のピン部となる部分p2、p3を軸直交方向(径方向R)に加圧するとともに、ピン部となる部分p2、p3とこれに隣接する両ジャーナル部となる部分j12とj23、j23とj34との軸方向の位置を互いに同じとなるまで寄せるよう軸方向Aに加圧するものである。
【0031】
素材1を予備成形してなる粗形材10の、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部となる部分j23と隣接するウエブ部となる部分w23、w32は、他のウエブ部となる部分wと比較して材料が多くなっていることは上述したとおりである(図6を参照)。また、仕上成形装置3のピン部保持型31の径方向スライド42の、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部となる部分j23を保持するジャーナル部保持型30と対向する面であって、このジャーナル部保持型30に保持されたジャーナル部となる部分j23に対してピン部となる部分p2、p3が偏心している方向と反対側に、突起部46が予めを設けられていることは上述したとおりである(図10を参照)。この実施の形態においては、各ジャーナル部Jに対して同じ方向に偏心するピン部P2、P3に隣接するウエブ部W21,W23、および、W32,W34を仕上成形する工程と、ピン部P1、P4に隣接するウエブ部W10,W12、および、W34,W45を仕上成形する工程とが行われる。図7に示すように、ウエブ部W21,W23、および、W32,W34を仕上成形する工程で使用される仕上成形装置3の、端部に位置することとなるジャーナル部となる部分j12とj34を保持するジャーナル部保持型30は、少なくとも粗形材10の端部以上に軸方向に延びる被加圧部30aを有している。
【0032】
仕上成形を行うに際して、最初に、ジャーナル部保持型30の孔35に粗形材10のジャーナル部となる部分j12、j23、j34をそれぞれ保持すると共に、それぞれ軸方向スライド41に摺動可能に支持された径方向スライド42の孔36にピン部となる部分p2、p3をそれぞれ保持し、この状態で、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31とをケース32内に収容する。そして、図7に示すように、ケース32の一方の端部を受け部材37に当接して他方の端部に押圧部材38を挿入し、軸方向加圧手段33により押圧部材38を介して粗形材10を軸方向に加圧する。これにより粗形材10のウエブ部となる部分w12とw23、w32とw34は、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の径方向スライド42との間でそれぞれ挟まれて潰されるようにして所定の厚さに成形され、ウエブ部W12とW23,W32とW34が互いに所定のピッチで成形されることとなる。そして、各ウエブ部W12とW23,W32とW34が成形に伴って伸長することにより、ピン部保持型31の径方向スライド42が軸方向スライド41に対して摺動し、ピン部P2、P3がジャーナル部J12とJ23、J23とJ34から所定量偏心することとなる。
【0033】
本発明では、スラストメタルTMが設けられるジャーナル部J23と隣接するウエブ部W23,W32をジャーナル部保持型30とピン部保持型31の径方向スライド42との間で潰すよう加圧し成形するときに、かかるウエブ部W23,W32のジャーナル部J23側端部が突起部46の上面46aによって他の部分よりもさらに潰れるよう加圧され、その結果、図11の(a)に示すように、かかるウエブ部W23,W32の端部が、突起部46により加圧しない場合(図11の(b))と比較して張り出すように成形されている(矢印H)。そのため、図11に鎖線で示したスラストメタルTMと接触する面積、すなわちスラスト面積が増加し、スラスト荷重に対する耐荷重能を大きくすることができる。そして、本発明では、スラスト面積を増加させるために他の部材を付加することなく、逆にウエブ部W23,W32の厚さを部分的に薄く成形するため、クランクシャフト100の軽量化を図ることができる。なお、本発明は、この実施の形態に限定されることはなく、たとえば上述したような予備成形装置2を使用することなく、他の装置を使用して棒状の素材1を予備成形する場合も含まれ、さらには、棒状の素材1を予備成形することなく、直接仕上成形装置3により成形する場合も含まれる。また、本発明は、複数のピン部Pに隣接するウエブ部Wをまとめて同時に仕上成形する場合に限定されることなく、単独のピン部Pに隣接するウエブ部Wをそれぞれ仕上成形する場合も含まれる。
【0034】
次に、本発明のクランクシャフトの製造装置の別の実施の形態について、図12に基づいて説明する。なお、この実施の形態においては、上述した実施の形態と同じまたは相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
【0035】
上述した実施の形態の突起部46は、仕上成形が完了した時点における径方向スライド46の位置で、その上面46aがジャーナル部J23の中心軸の延長線と同心状となるように、この中心軸の延長線を中心とする円弧状に成形されているのに対して、この実施の形態の突起部46は、その上面46aがジャーナル部J23に対するピン部の偏心方向(ウエブ部Wの伸長した方向ということもできる)と直交する方向に延びる直線部を有している。その結果、突起部46は、その中央部分がジャーナル部J23の中心軸の延長線に最も近く、端部に向かって漸次延長線から遠くなっている。そして、直線部の端部には、ジャーナル部J23の中心軸の延長線に向って湾曲するよう形成されている。突起部46の内側壁面46bは、仕上成形が完了した時点で、径方向スライド42の表面とウエブ部W23、W32との間にそれぞれ隙間Sを生じるような位置、および傾斜角度で形成されていることは、上述した実施の形態と同様である。
【0036】
このように構成された突起部46を有する径方向スライド42を備えてなる仕上成形装置3では、粗形材10を軸方向に加圧して、粗形材10のウエブ部wとなる部分を、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の径方向スライド42との間で潰して所定の厚さに成形すると共に、ピン部Pをジャーナル部Jから所定量偏心させるときに、スラストメタルTMが設けられるジャーナル部J23と隣接するウエブ部W23,W32のジャーナル部J側端部が突起部46によって他の部分よりもさらに潰れるよう加圧されて、張り出すように成形される。このウエブ部W23,W32の張り出すように成形された端部には、後の工程で切削加工などを行って整形した後に、カウンタウエイトCW(図2を参照)が取り付けられる。ここで、この実施の形態では突起部46の表面46aが直線部を有しているため、図12に鎖線で示すように、そのウエブ部W23,W32の端部は、単に張り出すよう成形されるだけでなく、突起部46の直線部を有する表面46aと対応する形状に成形されることとなる。そのため、後の工程で整形する加工量が少なくて済み、容易に且つ確実にカウンタウエイトCWを取り付けることができる。
【0037】
次に、本発明の仕上げ成形装置のさらに別の実施の形態を、図13〜図16に基づいて説明する。なお、この実施の形態においては、上述した実施の形態と同じまたは相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
上述した実施の形態では、径方向スライド42の、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部となる部分j23を保持するジャーナル部保持型30と対向する面のみに突起部46を設けていたのに対し、この実施の形態においては、径方向スライド42の両面に突起部46,47を設けている。これにより、径方向スライド42は、その両面に設けられた突起部46,47によってウエブ部となる部分w23とw21、または、w32とw34を加圧することとなり、各突起部46,47が加圧することにより径方向スライド42が受ける反力を相殺し平衡させることができ、したがって、径方向スライド42の変形や、軸方向スライド41に対して摺動する際の摩擦抵抗、あるいは摩擦による摩耗を低減することができる。
【0038】
ここで、粗形材10のウエブ部となる部分wにおいて、上述したようにスラストメタルTMが設けられるジャーナル部J23と隣接するウエブ部となる部分w23、w32の材料を増加させた場合に、図13に示すように、径方向スライド42に対して同様の位置に突起部46,47を設けるものと仮定すると、図14に示すように、ウエブ部となる部分w23、w32の端部を張り出すように加圧する突起部46と、反対側の面に設けられて材料が増加されていないウエブ部となる部分w21、w34の端部を加圧する突起部47とでは、ウエブ部となる部分w23またはw32とw21またはw34とに接触する面積が異なることとなり、その結果、径方向スライド42が受ける反力を相殺し平衡させることができなくなる。そこで、図15、図16に示すように、ウエブ部となる部分w23、w32の端部を張り出すように加圧する突起部46と同じ面積で材料が増加されていないウエブ部となる部分w21、w34と接触して径方向スライド42が突起部46,47により受ける反力を平衡させ相殺されるようにバランスをとることができる位置に、径方向スライド42の反対側の面にバランス突起部47を設けることとした。このバランス突起部47は、上述した径方向スライド42の一方の面のみに設けられる突起部46と同様に、ジャーナル部J23の中心軸の延長線に近い側の壁面46bが、仕上成形が完了した時点で、径方向スライド42の表面とウエブ部Wとの間に隙間Sを生じるような位置、および傾斜角度で形成されている。
【0039】
このように構成された仕上成形装置3を用いて粗形材10を仕上げ成形するに際しては、図15に示すように、ジャーナル部保持型30の孔35に粗形材10のジャーナル部となる部分J12,j23,j34をそれぞれ保持すると共に、それぞれ軸方向スライド41に摺動可能に支持された径方向スライド42の孔36にピン部となる部分p2、p3をそれぞれ保持し、この状態で、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31とをケース32内に収容する。このとき、粗形材10のウエブ部となる部分w21、w23,w32、w34がこの時点ではまだ潰されるように加圧されておらず、したがって、ウエブ部となる部分w21とw23、または、w32とw34が径方向に延伸されていない(ピン部となる部分p2、p3がジャーナル部となる部分j12とj23、または、j23とj34から所定量偏心していない)ことから、径方向スライド42は、軸方向スライド41に対して後退した状態(図15に示した右方に位置している状態)となっている。そして、図7に参照されるように、ケース32の一方の端部を受け部材37に当接して他方の端部に押圧部材38を挿入し、軸方向加圧手段33により押圧部材38を介して粗形材10をその軸方向に加圧する。これにより粗形材10のウエブ部となる部分w21とw23、w32とw34は、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の径方向スライド42との間に挟まれて潰されるようにして所定の厚さに成形され、ウエブ部W21とW23、W32とW34が所定のピッチで成形されることとなる。そして、ウエブ部W21とW23、W32とW34が仕上成形に伴って延伸されることにより、ピン部保持型31の径方向スライド42が軸方向スライド41に対して図16に示すように左方に前進するよう摺動し、ピン部P2,P3がジャーナル部J12,J23、J34から所定量偏心することとなる。
【0040】
この実施の形態では、径方向スライド42の両面に突起部46,47を設けることにより、仕上成形時に受ける反力を平衡させ相殺させるようにバランスをとることができるため、径方向スライド42の変形や、軸方向スライド41に対して摺動する際の摩擦抵抗、あるいは摩擦による摩耗を低減することができる。そして、スラストメタルTMが設けられるジャーナル部J23に隣接することとなるウエブ部となる部分w23、w32の材料が増加するように予備成形されている場合であっても、このスラストメタルTMが設けられるジャーナル部J23に隣接することとなり材料が増加されたウエブ部となる部分w23、w32の端部と、その他のウエブ部となる部分w21、w34の端部に対して、両突起部46,47をそれぞれ同じ面積で接触させるように配置することにより、確実に安定して仕上成形時に受ける反力を平衡させ相殺させるようにバランスをとることができる。なお、粗形材10の各ウエブ部となる部分w21、w23、w32、w34の材料が同じ量となるように成形されている場合には、径方向スライド42に対して両突起部46,47を同様の位置に設けても、両突起部46,47がそれぞれ同じ面積でウエブ部となる部分w21とw23、および、w32とw34に接触することとなる。そのため、本発明には、径方向スライド42に対して両突起部46,47を同様の位置に設けることも含まれる。
【0041】
次に、本発明のクランクシャフトの製造装置の別の実施の形態を、図17〜図22に基づいて説明する。なお、この実施の形態においては、上述した実施の形態と同じまたは相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
【0042】
この実施の形態における仕上成形装置3は、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部J23を保持するジャーナル部保持型30が凹部形成部39を備えている。この凹部形成部39は、径方向スライド42との間でウエブ部となる部分w23、w32を加圧することにより、ウエブ部W23、W32のスラスト受け部材TMと対応する位置に凹部50を形成するためのもので、凹部50は、ジャーナル部J23とスラスト受け部材TMとの相対的な回転方向(図19の矢印を参照)に対する上流側に配置され軸方向に延びるよう形成された壁部50aと、この壁部50aからジャーナル部とスラスト受け部材TMとの相対的な回転方向に対する下流に向かって漸次浅くなる勾配を有する傾斜部50bとを備えている。
【0043】
この実施の形態におけるジャーナル部保持型30は、粗形材10のジャーナル部J23を拘束する孔35の周囲に、凹部形成部として凸部39を有している。ここで、内燃機関の軸受に軸支されたクランクシャフトのジャーナル部J23が図19に矢印で示すように軸回りに回転することによって、ウエブ部W23、W32とスラストメタルTMとの間に存在するオイルなどの潤滑剤Lは、ウエブ部W23、W32に対して相対的に図20に矢印Fで示されているように流れることとなる。ジャーナル部保持型30の凸部39は、潤滑剤Lがウエブ部に対して相対的に流れる方向の上流側(図20の左方側)がウエブ部の表面に対してほぼ直角に形成された所定の深さを有する壁部50aと、この壁面から潤滑剤が相対的に流れる方向の下流側((図20の右方側))に向かって漸次浅くなるよう勾配を有する傾斜面50bとを有する凹部50をウエブ部W23、W32に形成し得るように成形されている。図18に示した実施の形態における凸部39は、ジャーナル部J23に設けられるスラストメタルTMと対応する部分のみに、扇形で、2箇所設けられている。しかしながら、本発明の凹部形成部39は、図18に示した実施の形態に限定されることはなく、たとえば、図21に示すように孔35からスラストメタルTMの径を超えてジャーナル部保持型30の外周縁に延びるように扇形に形成したり、また、図22に示すように孔35からジャーナル部保持型30の外周縁まで同じ幅で形成し、さらには、凸部を1箇所または3箇所以上に形成するなど、ウエブ部W23、W32の少なくともスラスト受け部材TMと対応する位置に、ジャーナル部J23とスラスト受け部材TMとの相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部50を形成するものであれば、本発明に含まれる。
【0044】
次に、本発明のクランクシャフトの製造方法のさらに別の実施の形態を、図17〜図22に示したようにに構成されたジャーナル部保持型30を備えた仕上成形装置3を用いる場合によって、その作動と共に詳細に説明する。なお、この実施の形態においては、上述した実施の形態と同じまたは相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
【0045】
本発明のクランクシャフトの製造方法は、概略、回転中心軸となるジャーナル部Jと、このジャーナル部Jから偏心するピン部Pと、ジャーナル部Jとピン部Pとの間に延びるウエブ部Wとを有し、ジャーナル部Jの少なくとも一つ(J23)にスラスト受け部材TMが取り付けられるクランクシャフト100を製造するための方法であって、予備成形された粗形材10のジャーナル部となる部分jをジャーナル部保持型30により保持すると共に、ピン部となる部分pをピン部保持型31により保持し、粗形材10を保持したジャーナル部保持型30とピン部保持型31をケース32内に摺動可能に配置して拘束し、粗形材10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さ、所定のピッチで成形する方法において、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部J23を保持するジャーナル部保持型30の、ウエブ部W23,W32のスラスト受け部材TMと対応する位置に、ジャーナル部J23とスラスト受け部材TMとの相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する傾斜面50bを備えた凹部50を形成するための凹部形成部39を設けておき、粗形材10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分w23、w32のスラスト受け部材TMと対応する位置を凹部形成部39によって押圧して、ウエブ部W23,W32のスラスト受け部材TMと接する部分に、ジャーナル部J23とスラスト受け部材TMとの相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する傾斜面50bを備えた凹部50を形成するものである。
【0046】
この実施の形態における粗形材10は、上述した実施の形態のようにウエブ部W23,W32の端部を張り出させるように成形しないため、かかるウエブ部となる部分w23、w32の材料を増加させる必要はなく、他のウエブ部となる部分w21、w34と同じに設定されている。一方、仕上成形装置3のジャーナル部保持型30には、少なくともその孔35の周囲に、凸部39が予め形成されている。
【0047】
仕上成形を行うに際して、最初に、ジャーナル部保持型30の孔35に粗形材10のジャーナル部となる部分j12、j23、j34をそれぞれ保持すると共に、それぞれ軸方向スライド41に摺動可能に支持された径方向スライド42の孔36にピン部となる部分p2、p3をそれぞれ保持し、この状態で、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31とをケース32内に収容する。そして、図7に参照されるように、ケース32の一方の端部を受け部材37に当接して他方の端部に押圧部材38を挿入し、軸方向加圧手段33により押圧部材38を介して粗形材10を軸方向に加圧する。これにより粗形材10のウエブ部となる部分w12とw23、w32とw34は、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の径方向スライド42との間でそれぞれ挟まれて潰されるようにして所定の厚さに成形され、ウエブ部W12とW23,W32とW34が互いに所定のピッチで成形されることとなる。このとき、図17に示すように、スラストメタルTMが設けられるジャーナル部J23に隣接するウエブ部W23,W32は、そのスラストメタルTMと対応する位置に、ジャーナル部保持型30に設けられた凸部39によって凹部50が部分的に形成されることとなる。凹部50は、ジャーナル部J23とスラスト受け部材TMとの相対的な回転方向の上流側(図20の左方側)に、ウエブ部の表面に対してほぼ直角に形成された所定の深さを有する壁部50aと、この壁面50aから潤滑剤が相対的に流れる方向の下流側((図20の右方側))に向かって漸次浅くなるよう勾配を有する傾斜面50bとが形成されている。その後、クランクシャフト100は、ジャーナル部J23の両端部にスラストメタルTMがウエブ部W23,W32と接するように設けられ、また、所定のウエブ部Wにカウンタウエイトが取り付けられて、製造が完了する。
【0048】
このようにして凹部50が形成されたクランクシャフト100は、例えば内燃機関の軸受にジャーナル部J01,J23,J45が軸支され、内燃機関のオイルパン内には、オイルなどの潤滑剤Lが充填される。そして、内燃機関を運転すると、クランクシャフト100が各ジャーナル部Jを中心として軸回りに回転し、クランクシャフトのジャーナル部J23が図19に矢印で示すように軸回りに回転することによって、ウエブ部W23、W32とスラストメタルTMとの間に存在するオイルなどの潤滑剤Lは、ウエブ部W23、W32に対して相対的に図20に矢印Fで示されているように流れることとなる。すなわち、潤滑剤Lは、ウエブ部W23,W32の表面から凹部50に対して、その壁部50aに落ち込むように流れ込み、その後、傾斜面50bの勾配に沿って再びウエブ部W23,W32の表面まで上昇(図20の場合)するよう流動することとなる。この潤滑剤Lの流動により、スラストメタルTMは、ウエブ部W23,W32の表面から離れるようにクサビ効果を発生させることとなる。そのため、ウエブ部W23,W32とスラストメタルTMとの摩擦が軽減されて両者の摩耗を防ぐことができ、しかも、上述したようにウエブ部W23,W32のスラスト面積を増加させることなく、スラスト荷重に対する耐荷重能が大きく且つ軽量化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、上記に限定されることはなく、単気筒あるいは4気筒以外の複数の気筒の内燃機関、さらには、直列以外の複数の気筒数を有する内燃機関、または、内燃機関以外の他の機関に使用されるクランクシャフトを製造する場合にも適用することができる。また、本発明は、上記のジャーナル部にスラスト受け部材を設ける場合に限定されることはなく、上記以外の他のジャーナル部にスラスト受け部材を設ける場合にも適用することができる。予備成形と仕上成形は、必要に応じて所定温度の熱間または冷間で行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
10:粗形材、 100:クランクシャフト、 30:ジャーナル部保持型、 31:ピン部保持型、 32:ケース、 33:軸方向加圧手段、 39:凸部(凹部形成部)、 41:軸方向スライド、 42:径方向スライド、 46:突起部、 47バランス突起部、 50:凹部、 P:ピン部、 J:ジャーナル部、 W:ウエブ部、 p:ピン部となる部分、 j:ジャーナル部となる部分、 w:ウエブ部となる部分、J23:スラストメタルが設けられるジャーナル部、 j23:スラストメタルが設けられるジャーナル部となる部分、 W23,W32:スラストメタルが設けられるジャーナル部と隣接するウエブ部、 w23,w32:スラストメタルが設けられるジャーナル部と隣接するウエブ部となる部分、 TM:スラストメタル(スラスト受け部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトの製造装置、クランクシャフトの製造方法、およびクランクシャフトに関し、特に、素材に偏心据え込みを行うことによって、回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とが成形されてなり、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトと、このクランクシャフトを製造するための装置、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クランクシャフトの製造に関する従来の技術として、例えば、特許文献1が知られている。特許文献1には、冷間鍛造用材料からなる丸棒を切断して所定長さのビレット材を形成し、該ビレット材を油圧ベンダで曲げ加工し、本願の図23にも示すように、各ジャーナル部となる部分j’と各ピン部となる部分p’とが軸直角方向へオフセットされたオフセット材料10’(本願では予備成形された素材(粗形材)の一例にあたる)を形成し(曲げ工程と称されているが、本願の予備成形工程の一例にあたる)、次に、本願の図24にも示すように、該オフセット材料10’を軸方向に加圧して、本願の図25にも示すように、連接壁(本発明ではウエブ部の一例にあたる)W’間のピッチが所定寸法に形成されたクランク本体100’を圧縮成形(据え込み工程と称されているが、本願の仕上成形工程の一例にあたる)することが開示されている。
【0003】
据え込み工程を行う装置は、本願の図24に示したように、オフセット材料10’のジャーナル部となる部分j’とピン部となる部分p’をそれぞれ保持する板状の保持型30’,31’と、これらを内部に摺動可能に収容して拘束するケース32’と、オフセット材料10’を軸方向に加圧する軸方向加圧手段とを備えている。オフセット材料10’のジャーナル部となる部分j’とピン部となる部分p’をそれぞれ保持する板状の保持型30’,31’は、ケース32’内で軸方向に移動するよう構成されている。そして、据え込み工程では、図24に示したようにオフセット材料10’のジャーナル部となる部分j’とピン部となる部分p’をそれぞれ保持型30’,31’に保持し、これをケース32’内に摺動可能に収容して拘束した状態で、軸方向加圧手段により軸方向に圧縮するよう加圧し、図25に示したようにオフセット材料10’の連設壁となる部分w’を潰すように所定の厚さに成形して、連接壁W’間のピッチを所定寸法に形成する。
【0004】
ところで、クランクシャフトは、そのジャーナル部から偏心するピン部の回転慣性力とバランスをとるために、カウンタウエイトを一般に有している。そして、クランクシャフトが設けられる一例として、たとえば図2に参照されるように、4気筒の内燃機関のなかには、ウエブ部W10,W23,W32,W45にカウンタウエイトを有する所謂4バランスクランクシャフトがある。また、カウンタウエイトを有するクランクシャフトのなかには、カウンタウエイトをクランクシャフトに一体で成形することなく、クランクシャフトを成形した後に別体のカウンタウエイトを取り付けるものがある。
【0005】
さらに、このようなクランクシャフトの一例として、両端に位置するジャーナル部J01,J45と、中央に位置するジャーナル部J23とが回転可能に支持され、クランクシャフトの軸方向のスラスト荷重を受けるための部材としてスラストメタルTMがジャーナル部J23の両端に設けられたものがある。スラストメタルTMは、平板リング状の部材を半割に成形したもので、ジャーナル部J23の両端にそれぞれ隣接するウエブ部W23,W32と接するよう設けられる。
【0006】
ここで、クランクシャフトは軽量であることが望ましく、且つ、ウエブ部W23,W32は、スラスト荷重に対する耐荷重能が大きいことが望ましい。また、少なくともウエブ部に別体で構成されたカウンタウエイトを設ける場合に、ウエブ部のカウンタウエイトを取り付ける部分には、取り付けるカウンタウエイトの形状と対応する形状にウエブ部を後工程で切削加工などすることが一般に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−9595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
回転可能に支持されるジャーナル部J23と隣接するウエブ部W23,W32のスラスト荷重に対する耐荷重能を大きくするための一つの手法としては、スラストメタルと接する面積(以下、スラスト面積という)を大きくすることが考えられる。そして、スラスト面積を大きくするためには、ウエブ部の端部にスラストメタルと接触面を増大させるための部材を付加することが考えられる。しかしながら、このような接触面積を増大させるための部材を付加することは、工程が増えることから手間やコストがかかるという問題や、クランクシャフトの軽量化を図ることができないという問題、さらには、別体のカウンタウエイトを取り付けるための加工量も増大するなどの問題が発生することとなる。
【0009】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、スラスト受け部材が設けられるジャーナル部に隣接するウエブ部のスラスト荷重に対する耐荷重能を容易に大きくすることができ、しかも、軽量化を図ることができ、少ない加工量で別体のカウンタウエイトを取り付けることができる構造のクランクシャフト、および、そのクランクシャフトを製造することができる装置とその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有し、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトを、素材に偏心据え込みを行うことによって製造するための装置であって、素材のジャーナル部となる部分を保持するジャーナル部保持型と、ピン部となる部分を保持するピン部保持型と、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段とを備えており、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と隣接するピン部保持型は、該ジャーナル部保持型と対向する面であって、該ジャーナル部保持型に保持されたジャーナル部に対してピン部が偏心する方向と反対側に配置されて、前記素材のウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型との間で加圧することにより前記ウエブ部の前記ジャーナル部側の端部を張り出させる突起部が設けられていることを特徴とするものである。
請求項2のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明において、さらに、ジャーナル部保持型とピン部保持型とを軸方向に摺動可能に拘束するケースを備えており、少なくとも前記ピン部保持型は、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えており、前記突起部は、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と隣接する径方向スライドに設けられていることを特徴とする。
請求項3のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1または2のいずれかに記載の発明において、前記素材を予備成形するための予備成形装置を備えており、該予備成形装置は、素材のピン部となる部分を拘束し把持するパンチと、該素材のパンチに把持されたピン部となる部分に隣接するジャーナル部となる部分を拘束し把持するダイと、パンチをダイに対して相対的に前記素材の軸直交方向に偏位させるよう駆動する軸直交方向駆動手段と、ダイをパンチに対して近付けるように前記素材の軸方向に駆動する軸方向駆動主段とを備えており、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げ成形させるものであることを特徴とする。
請求項4のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項3に記載の発明において、前記素材の、後に端部が張り出し成形されるウエブ部に隣接するのジャーナル部を把持するダイのパンチに対する軸方向長さが、他のジャーナル部を把持するダイのパンチに対する軸方向長さよりも長く設定されており、前記軸方向駆動主段は、予備成形が完了した時点で両ダイのパンチに対する軸方向の位置が同じとなるように軸方向に駆動するものであることを特徴とするものである。
請求項5のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記突起部は、前記素材のウエブ部となる部分の加圧が完了した時点で前記ジャーナル部の中心軸と同心状に成形されていることを特徴とするものである。
請求項6のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記突起部は、前記ジャーナル部に対するピン部の偏心方向と直交する方向に延びる直線部を有していることを特徴とするものである。
請求項7のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記径方向スライドは、前記突起部が設けられた面と反対側の面に、該面と対向する前記ジャーナル部保持型との間で前記ウエブ部となる部分に対して前記突起部と同じ面積で接するバランス突起部が設けられていることを特徴とするものである。
請求項8のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有し、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトを、素材に偏心据え込みを行うことによって製造するための装置であって、素材のジャーナル部となる部分を保持するジャーナル部保持型と、ピン部となる部分を保持するピン部保持型と、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段とを備えており、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型は、前記ピン部保持型との間でウエブ部となる部分を加圧することにより、ウエブ部の前記スラスト受け部材と対応する位置に、ジャーナル部とスラスト受け部材との相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部を形成するための、凹部形成部が設けられていることを特徴とするものである。
請求項9のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項8に記載の発明において、さらに、ジャーナル部保持型とピン部保持型とを軸方向に摺動可能に拘束するケースを備えており、少なくとも前記ピン部保持型は、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えていることを特徴とするものである。
請求項10のクランクシャフトの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項8または9のいずれかに記載の発明において、前記素材を予備成形するための予備成形装置を備えており、該予備成形装置は、素材のピン部となる部分を拘束し把持するパンチと、素材のパンチに把持されたピン部となる部分に隣接するジャーナル部となる部分を拘束し把持するダイと、パンチをダイに対して相対的に素材の軸直交方向に偏位させるよう駆動する軸直交方向駆動手段と、ダイをパンチに対して近付けるように素材の軸方向に駆動する軸方向駆動主段とを備えており、素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げ成形させるものであることを特徴とするものである。
また、請求項11のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有し、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトを、素材に偏心据え込みを行うことによって製造するための方法であって、素材のジャーナル部となる部分をジャーナル部保持型により保持すると共に、ピン部となる部分をピン部保持型により保持し、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する方法において、前記ピン部保持型の、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と対向する面であって、該ジャーナル部保持型に保持されたジャーナル部に対してピン部が偏心する方向と反対側に突起部を設けておき、前記素材のウエブ部となる部分のジャーナル部側の端部を前記ジャーナル部保持型と前記ピン部保持型の突起部との間で加圧して、前記ウエブ部の前記ジャーナル部側の端部を張り出させることを特徴とするものである。
請求項12のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項11に記載の発明において、前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型をケース内に摺動可能に配置して拘束し、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さでウエブ部を成形する場合に、少なくとも前記ピン部保持型を、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えた構成とし、前記径方向スライドの、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と対向する面であって、該ジャーナル部保持型に保持されたジャーナル部に対してピン部が偏心する方向と反対側に突起部を設けておき、前記素材のウエブ部となる部分のジャーナル部側の端部を前記ジャーナル部保持型と前記径方向スライドの突起部との間で加圧して、前記ウエブ部の前記ジャーナル部側の端部を張り出させることを特徴とするものである。
請求項13のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項11または12のいずれかに記載の発明において、素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、該予備成形された素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とするものである。
請求項14のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項13に記載の発明において、前記予備成形で、素材の、前記ジャーナル部側の端部を張り出させるウエブ部となる部分の軸方向長さを、端部を張り出させないウエブ部となる部分の軸方向長さと比較して長く設定し、前記ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに同じとなるまで寄せるよう軸方向に加圧することを特徴とするものである。
請求項15のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項11〜14のいずれか1項に記載の発明において、前記突起部を、前記素材のウエブ部となる部分の加圧が完了した時点で前記ジャーナル部の中心軸と同心状に成形しておくことを特徴とするものである。
請求項16のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項11〜14のいずれか1項に記載の発明において、前記突起部に、前記ジャーナル部に対するピン部の偏心方向と直交する方向に延びる直線部を成形しておき、前記素材のウエブ部となる部分のジャーナル部側の端部を前記ジャーナル部保持型と前記径方向スライドの突起部との間で加圧した際に、前記ウエブ部の前記直線部によって成形された部分にカウンタウエイトを接合することを特徴とするものである。
請求項17のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項11〜16のいずれか1項に記載の発明において、前記ピン部保持型の、前記突起部を成形した面と反対側の面に、該面と対向する前記ジャーナル部保持型との間で前記ウエブ部となる部分に対して前記突起部と同じ面積で接するバランス突起部を設けておくことを特徴とするものである。
請求項18のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有し、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトを、素材に偏心据え込みを行うことによって製造するための方法であって、素材のジャーナル部となる部分をジャーナル部保持型により保持すると共に、ピン部となる部分をピン部保持型により保持し、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さで成形する方法において、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型の前記スラスト受け部材と対応する位置に、ジャーナル部とスラスト受け部材との相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部を形成するための凹部形成部を設けておき、素材のウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型と前記ピン部保持型との間で加圧して、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部と隣接するウエブ部の前記スラスト受け部材と接する位置に、前記凹部を形成することを特徴とするものである。
請求項19のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項18に記載の発明において、前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型をケース内に摺動可能に配置して拘束し、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さでウエブ部を成形する場合に、少なくとも前記ピン部保持型を、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えた構成としておくことを特徴とするものである。
請求項20のクランクシャフトの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項18または19のいずれかに記載の発明において、前記素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、該予備成形された素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とするものである。
さらに、請求項21のクランクシャフトに係る発明は、上記目的を達成するため、素材に偏心据え込みを行うことによって、回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とが成形されてなり、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトであって、素材を偏心据え込みすることによって、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部に隣接するウエブ部の前記ジャーナル部側の端部が張り出されていることを特徴とするものである。
請求項22のクランクシャフトに係る発明は、上記目的を達成するため、請求項21に記載の発明において、少なくとも、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部に隣接するウエブ部の、張り出された前記ジャーナル部側の端部に、カウンタウエイトが接合されていることを特徴とするものである。
請求項23のクランクシャフトに係る発明は、上記目的を達成するため、素材に偏心据え込みを行うことによって、回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とが成形されてなり、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトであって、素材を偏心据え込みすることによって、前記ウエブ部のスラスト受け部材と接する部分に、ジャーナル部とスラスト受け部材との相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1のクランクシャフトの製造装置に係る発明によれば、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と隣接するピン部保持型の、該ジャーナル部保持型と対向する面であって、該ジャーナル部保持型に保持されたジャーナル部に対してピン部が偏心する方向と反対側に突起部を配置することにより、素材のウエブ部となる部分を、このピン部保持型とジャーナル部保持型との間で加圧すると、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部と隣接するウエブ部の、ジャーナル部側の端部がピン部保持型の突起部とジャーナル部保持型との間で加圧されて張り出されるため、スラスト面積を増加させるための部材を付加することなく、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部と隣接するウエブ部のスラスト面積を増加させることができ、その結果、スラスト荷重に対する耐荷重能が大きく且つ軽量化を図ることができるクランクシャフトを製造することができる。
請求項8のクランクシャフトの製造装置に係る発明によれば、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型の、ウエブ部の前記スラスト受け部材が接することとなる部分と対応する位置に、凹部形成部を設けることにより、素材のウエブ部となる部分を、このジャーナル部保持型とピン部保持型との間で加圧すると、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部と隣接するウエブ部の、スラスト受け部材が接することとなる部分と対応する位置に、ジャーナル部とスラスト受け部材との相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部が形成される。そのため、クランクシャフトを使用する際に、そのジャーナル部とスラスト受け部材との間に潤滑剤が入り込んだ状態でジャーナル部とスラスト受け部材とが相対的に回転すると、流動する潤滑剤が凹部によってウエブ部からスラスト部材を引き離すように押圧するクサビ効果を付与することとなり、ウエブ部とスラスト部材との摩擦抵抗を減少させることができ、その結果、スラスト面積を増加させることなく、スラスト荷重に対する耐荷重能が大きく且つ軽量化を図ることができるクランクシャフトを製造することができる。
請求項11のクランクシャフトの製造方法に係る発明によれば、ピン部保持型の、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と対向する面であって、該ジャーナル部保持型に保持されたジャーナル部に対してピン部が偏心する方向と反対側に突起部を設けておき、素材のウエブ部となる部分のジャーナル部側の端部をジャーナル部保持型とピン部保持型の突起部との間で加圧して、ウエブ部のジャーナル部側の端部を張り出させることにより、スラスト面積を増加させるための部材を付加することなく、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部と隣接するウエブ部のスラスト面積が増加し、その結果、スラスト荷重に対する耐荷重能が大きく且つ軽量化を図ることができるクランクシャフトを製造することができる。
請求項18のクランクシャフトの製造方法に係る発明によれば、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型のスラスト受け部材と対応する位置に、ジャーナル部とスラスト受け部材との相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部を形成するための凹部形成部を設けておき、素材のウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型と前記ピン部保持型との間で加圧して、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部と隣接するウエブ部の前記スラスト受け部材と接する位置に前記凹部を形成することにより、クランクシャフトを使用する際に、そのジャーナル部とスラスト受け部材との間に潤滑剤が入り込んだ状態でジャーナル部とスラスト受け部材とが相対的に回転すると、流動する潤滑剤が凹部によってウエブ部からスラスト部材を引き離すように押圧するクサビ効果を付与することとなり、ウエブ部とスラスト部材との摩擦抵抗を減少させることができ、その結果、スラスト面積を増加させることなく、スラスト荷重に対する耐荷重能が大きく且つ軽量化を図ることができるクランクシャフトを製造することができる。
請求項21のクランクシャフトに係る発明によれば、素材を偏心据え込みすることによって、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部に隣接するウエブ部の前記ジャーナル部側の端部が張り出されていることにより、スラスト面積を増加させるための部材が付加されることなく、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部と隣接するウエブ部のスラスト面積が増加し、その結果、スラスト荷重に対する耐荷重能が大きく且つ軽量化を図ることができる。
請求項23のクランクシャフトに係る発明によれば、素材を偏心据え込みすることによって、ウエブ部のスラスト受け部材と接する部分に、ジャーナル部とスラスト受け部材との相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部が形成されていることにより、クランクシャフトを使用する際に、そのジャーナル部とスラスト受け部材との間に潤滑剤が入り込んだ状態でジャーナル部とスラスト受け部材とが相対的に回転すると、流動する潤滑剤が凹部によってウエブ部からスラスト部材を引き離すように押圧するクサビ効果を付与することとなり、ウエブ部とスラスト部材との摩擦抵抗を減少させることができ、その結果、スラスト面積を増加させることなく、スラスト荷重に対する耐荷重能が大きく且つ軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】粗形材の実施の一形態を説明するために示した正面図である。
【図2】クランクシャフトの実施の一形態を説明するために示した正面図である。
【図3】粗形材を成形するための予備成形装置を説明するために示した正面図である。
【図4】図3に示した予備成形装置の部分拡大図である。
【図5】本発明により素材の予備成形を開始する前の状態を説明するために示した拡大図である。
【図6】図5の状態から、一のピン部となる部分とこれに隣接するウエブ部となる部分の予備成形を完了した状態を説明するために示した拡大図である。
【図7】本発明による仕上成形装置の実施の一形態を説明するために示した、部分断面図である。
【図8】本発明による仕上成形装置の、仕上成形前の状態を説明するために示した図7の横断平面図である。
【図9】図8の状態から仕上成形を完了した状態を説明するために示した図7の横断平面図である。
【図10】仕上成形を完了した状態を説明するために図7と対応させて示した部分拡大図である。
【図11】本発明と通常の手法とを比較するために、粗形材を軸方向に加圧することによって仕上成形された、ジャーナル部側の端部が張り出すようにスラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部に隣接するウエブ部の形状を説明するために示したクランクシャフトの断面図である。
【図12】本発明の径方向スライドに設けられる突起部と、これにより成形されるウエブ部の形状の、別の実施の形態を説明するために示した仕上成形装置の横断面図である。
【図13】本発明による仕上成形装置のさらに別の実施の形態に至る過程を説明するために、径方向スライドに突起部を設ける仮定上の位置を示した、仕上げ成形前の状態の部分縦断拡大断面図である。
【図14】図13の状態から仕上成形を完了した状態を示した部分縦断拡大断面図である。
【図15】図13および図14に示した仮定を経て、本発明による突起部の位置が設定された径方向スライドを有する仕上成形装置のさらに別の実施の形態を説明するために、仕上げ成形前の状態の部分縦断拡大断面図である。
【図16】図15の状態から仕上成形を完了した状態を示した部分縦断拡大断面図である。
【図17】本発明による仕上成形装置のさらに別の実施の形態を説明するために示した部分縦断拡大断面図である。
【図18】本発明により凹部形成部が設けられた図17に示した径方向スライドの平面図である。
【図19】クランクシャフトのジャーナル部のスラストメタルに対する相対的な回転方向の説明図である。
【図20】図17および図18に示した径方向スライドを有する仕上成形装置により凹部が形成され、ジャーナル部を中心として回転するクランクシャフトの、ウエブ部とスラストメタルとの間で流動する潤滑剤が凹部によってクサビ効果を発生させる状態を示した説明図である。
【図21】本発明により凹部形成部が設けられた径方向スライドの変形例を示した平面図である。
【図22】本発明により凹部形成部が設けられた径方向スライドのさらなる変形例を示した平面図である。
【図23】従来の技術により曲げ工程で曲げ加工されたオフセット材料を説明するために示した部分拡大図である。
【図24】従来の技術において、オフセット材料を軸方向に加圧して圧縮成形する据え込み工程を説明するために示した断面図である。
【図25】従来の技術により、連接壁間のピッチが所定寸法に形成されたクランク本体を説明するために示した部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
最初に、本発明のクランクシャフトの製造装置の実施の一形態を図に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態においては、直列4気筒の内燃機関に使用されるクランクシャフトを製造する場合により説明するが、本発明はこの実施の形態に限定されることはなく、直列4気筒以外の他の形態の内燃機関、さらには、内燃機関以外の装置などに用いられるクランクシャフトと、その製造装置および製造方法にも適用することができる。
【0014】
本発明のクランクシャフトの製造装置は、概略、回転中心軸となるジャーナル部Jと、このジャーナル部Jから偏心するピン部Pと、ジャーナル部Jとピン部Pとの間に延びるウエブ部Wとを有し、ジャーナル部Jの少なくとも一つにスラスト受け部材TMが取り付けられるクランクシャフト100を、素材1または10に偏心据え込みを行うことによって製造するためのものであって、素材1または10のジャーナル部となる部分jを保持するジャーナル部保持型30と、ピン部となる部分pを保持するピン部保持型31と、素材1または10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段33とを備えており、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部Jを保持するジャーナル部保持型30と隣接するピン部保持型31は、このジャーナル部保持型30と対向する面であって、このジャーナル部保持型30に保持されたジャーナル部Jに対してピン部Pが偏心する方向と反対側に配置されて、素材1または10のウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30との間で加圧することによりウエブ部Wのジャーナル部J側の端部を張り出させる突起部46が設けられている。
そして、この実施の形態におけるクランクシャフトの製造装置は、さらに、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31とを軸方向に摺動可能に拘束するケース32を備えており、少なくともピン部保持型31は、ケース32の内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライド41と、この軸方向スライド41に保持されてケース32の径方向に移動可能に摺動する径方向スライド42とを備えており、突起部46は、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部Jを保持するジャーナル部保持型30と隣接する径方向スライド42に設けられている。
さらに、この実施の形態におけるクランクシャフトの製造装置は、素材1を予備成形するための予備成形装置2を備えており、予備成形装置2は、図3および図4に示すように、素材1のピン部となる部分pを拘束し把持するパンチ20と、素材1のパンチ20に把持されたピン部となる部分pに隣接するジャーナル部となる部分jを拘束し把持するダイ21,21と、パンチ20をダイ21に対して相対的に素材の軸直交方向に偏位させるよう駆動する軸直交方向駆動手段(後述する)と、ダイ21をパンチ20に対して近付けるように素材1の軸方向に駆動する軸方向駆動主段26とを備えており、素材のピン部となる部分pをジャーナル部となる部分jに対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分wを所定の厚さでピン部となる部分pとジャーナル部となる部分jとに対して曲げ成形させるよう構成されている。なお、この実施の形態では、このように予備成形された素材を粗形材10と称することとする。
【0015】
図1は、断面円形の棒状または線状(これらを総じて棒状という)の金属製素材1を曲げ加工することにより予備成形された粗形材10の一形態を示したものであり、図2は、図1に示した粗形材10をその軸方向に加圧することにより仕上成形されて製造されたクランクシャフト100の一形態を示したものである。図3は、素材1を曲げ加工して図1に示した粗形材10を成形するための予備成形装置2を示したものであり、図4は、図3に示した予備成形装置2の詳細を説明するために示した部分拡大図である。図2に示した実施の形態におけるクランクシャフト100は、ジャーナル部J01、J23,J45が軸受により回転可能に支持され、また、この実施の形態においては、中央に位置するジャーナル部J23には、スラスト受け部材としてスラストメタルTMが設けられる。しかしながら、本発明は、この実施の形態に限定されることはなく、中央に位置するジャーナル部J23以外の他のジャーナル部Jにスラスト受け部材を設ける場合などにも適用することができる。また、クランクシャフト100のウエブ部W10,W23,W32、W45に、別体のカウンタウエイトCWがそれぞれ取り付けられる。本発明のクランクシャフトの製造装置における各部材の形状を容易に特定するために、図において構成部材の端面など断面でない部分にもハッチングを描いている場合があることに注意されたい。以下の記載と図において、同一符号は同様の部分または相当する部分に付すものとする。また、以下の記載と図面において、クランクシャフト100の各部分について説明する場合にはジャーナル部J、ピン部P、ウエブ部Wと、それぞれ大文字で示すこととし、また、その粗形材10と素材1の各部分について説明する場合には、ジャーナル部となる部分j、ピン部となる部分p、ウエブ部となる部分wと、それぞれ対応させた小文字で示すこととする。さらに、以下の記載において、素材1、粗形材10、およびクランクシャフト100の各部分について、特定の部分を説明する場合には、それぞれのアルファベット符号の後に続けて番号を付すこととし、各部分にそれぞれ共通の事項を説明する場合には、アルファベット符号のみを付すこととする。
【0016】
予備成形装置2のパンチ20は、素材1を軸直交方向に加圧する本体20aと、この本体20aの下方に設けられて素材1のピン部となる部分pを把持するパンチ押え20bとを有している。パンチ押え20bは、本体20aに対して開閉しまたは着脱可能に取外すことができる。素材1は、本体20aに対してパンチ押え20bを開いた状態または取外した状態で配置され、その後本体20aに対してパンチ押え20bを閉じまたは取り付けてクランプなどによってその状態を保持することにより、そのピン部となる部分pが拘束された状態で把持される。パンチ20は、上盤23に取り付けられる。上盤23は、軸直交方向駆動手段として例えば素材1の軸直交方向に伸長退縮駆動するプレスのラムに接続されている。本体20aは、上盤23を下降させることによって把持した素材1のピン部となる部分pを軸直交方向(矢印Rで示した方向)に加圧し、このピン部となる部分pをジャーナル部となる部分jに対して偏心させると共に、ウエブ部となる部分wをピン部となる部分pとジャーナル部となる部分jに対して曲げ加工する。
【0017】
ダイ21は、パンチ20と同様に、素材1のジャーナル部となる部分jを支持する本体21aと、この本体21aの上方に設けられて素材1のジャーナル部jとなる部分を把持するダイ押え21bとを有しており、ダイ押え21bは、本体21aに対して開閉または着脱可能に取外すことができる。素材1は、本体21aに対してダイ押え21bを開いた状態または取外した状態で配置され、その後本体21aに対してダイ押え21bを閉じまたは取り付けてクランプなどによってその状態を保持することにより、そのジャーナル部となる部分jが拘束された状態で把持される。そして、ダイ21は、素材1の軸方向に移動可能に設けられている。
【0018】
軸方向駆動手段26は、図3に示した実施の形態の場合、上盤23の下降によって素材1のジャーナル部となる部分を拘束したダイ21,21を互いに寄せるように移動するカム機構により構成されている(以下、カム機構に符号26を付する)。カム機構26は、上盤23に設けられた駆動カム26aと、ダイ21に接続された従動カム26bによって構成されている。なお、図3に示した実施の形態におけるカム機構26は、一対のダイ21,21をそれぞれ軸方向(矢印Aで示した方向)に移動させる両カム機構26のカム面の角度を、後述するように任意に設定され、上盤23の下降によって両ダイ21,21を寄せるように軸方向に移動させる長さを任意に設定することができる。駆動カム26aと従動カム26bは、パンチ20とダイ21によって把持された素材1と干渉することがないように、素材1の側部(図3においては、紙面に対して手前と奥)に位置し、両カム26a、26bのカム面が対向するように配設される。駆動カム26aは、軸方向に対して移動することがないように設けられており、従動カム26bは、軸方向に移動可能に設けられてダイ21と連結されている。上盤23の下降に伴って駆動カム26aが押し下げられると、従動カム26bによって一対のダイ21,21が互いに寄るように軸方向に所定の長さを移動する。なお、軸方向駆動手段26は、カム機構に限定されることはなく、軸方向(矢印Aの方向)に伸長・退縮する油圧シリンダなど、他のアクチュエータにより構成することもできる。そして、この場合には、両ダイ21、21のパンチ20に対する移動量を異ならせるように制御することにより、ウエブ部となる部分w、wの材料の量に差が生じるように粗形材10を成形することができる。
【0019】
このように構成された予備成形装置2を用いて予備成形を行い粗形材10を成形するに際して、最初に、断面円形の棒状または線状(本発明の素材は棒状に線状も含まれる)の金属製材料からなる素材1のピン部となる部分pをパンチ20で把持し、ジャーナル部となる部分jをそれぞれダイ21,21で把持する。そして、パンチ20を素材1の軸直交方向Rに移動させて加圧するとともに、ダイ21,21をパンチ20にそれぞれ寄せるように軸方向Aに移動させて加圧する。素材1のピン部となる部分pは、ジャーナル部となる部分jから偏位し、これに伴って、ダイ21,21を互いに寄せるよう移動させることによってピン部となる部分pとジャーナル部となる部分jに対して間に位置するウエブ部となる部分wを所定の角度に曲げ加工する。なお、このとき、パンチ20が素材1の軸直交方向Rに移動することによる加圧と、ダイ21,21が互いに寄るように軸方向Aに移動することにより、ウエブ部となる部分wをパンチ20の本体20aとダイ21の本体21aの間で加圧して所定量まで潰すように成形することが望ましい。
【0020】
この予備成形は、製造するクランクシャフト100のピン部Pの数に応じて繰り返し行われる。図1に示した粗形材10を予備成形する場合には、ピン部となる部分p2、p3と、p1、p4とがジャーナル部からそれぞれ同じ方向に偏心するよう曲げ加工されるため、同じ方向に偏心するピン部となる部分p2とこれに隣接するウエブ部となる部分w21、w23との予備成形と、ピン部となる部分p3とこれに隣接するウエブ部となる部分w32、w34との予備成形とを順次行い(順序はどちらが先でもよい)、その後、この素材1(半粗形材10でもある)を軸回りに180度回転させて、同じ方向に偏心するピン部となる部分p1とこれに隣接するウエブ部となる部分w10、w12との予備成形と、ピン部となる部分p4とこれに隣接するウエブ部となる部分w43、w45との予備成形とを順次行う(順序はどちらが先でもよい)。なお、同じ方向に偏心するピン部となる部分p2、p3および隣接するウエブ部となる部分w21、w23、および、w32、w34の予備成形と、ピン部となる部分p1、p4および隣接するウエブ部となる部分w10、w12、および、w43、w45の予備成形との順序も、どちらが先でもよい。このように素材1を予備成形して粗形材10とすることにより、後の仕上成形工程で偏心据込を比較的小さな加圧力で無理なく行ってクランクシャフトを精度よく製造することができる。
【0021】
さらに、この実施の形態における予備成形では、図5に示すように、素材1の、後にスラストメタルTMが設けられるジャーナル部となる部分j23に隣接するウエブ部となる部分w23と、w32との軸方向長さL1が、他のウエブ部となる部分wの軸方向長さL2よりも長く設定されており、図6に示すように、予備成形後の粗形材10のウエブ部となる部分w23と、w32との軸方向長さLと他のウエブ部となる部分wの軸方向長さLとが同じとなるように設定されている。すなわち、後にスラストメタルTMが設けられるジャーナル部となる部分j23を保持するダイ21が、これに隣接するピン部となる部分p2またはp3を保持するパンチ20に対して近付くように軸方向に移動する長さ(移動量)は、他方のジャーナル部となる部分j12またはj34を保持するダイ21がピン部となる部分p2またはp3を保持するパンチ20に対して近付くように軸方向に移動する長さよりも大きくなるように設定されている。このように、素材1の各部の設定する長さを、後にスラストメタルTMが設けられるジャーナル部となる部分j23とこれに隣接するウエブ部となる部分w23、w32との軸方向長さL1が、他のウエブ部となる部分w21、w34の軸方向長さL2よりも長くする(両ダイ21,21の移動量が異なるように設定する)ことにより、後に行われる仕上成形で張り出されるように成形されることとなる粗形材10のウエブ部となる部分w23、w32の材料を他のウエブ部となる部分w21、w34と比較して多くすることができる。このような移動量の差を生じさせることができるようにするために、予備成形装置2の軸方向駆動手段は、カム機構26のカム面26a、26bの互いの角度を異ならせるなどにより構成することができる。また、本発明はカム機構に限定されることはなく、シリンダなどによってダイ21,21をそれぞれ軸方向に所定量移動させるように構成することもできる。
【0022】
次に、本発明における仕上成形装置3の実施の一形態を図7〜図10に基づいて説明する。この実施の形態における仕上成形装置3は、予備成形された粗形材10を軸方向に加圧してウエブ部Wを所定の厚さで成形すると共に、ウエブ部W間を所定のピッチで成形し、且つ、ジャーナル部Jに対してピン部Pを所定量偏心させるように成形するものであり、図7に示すように、概略、予備成形された粗形材10のジャーナル部となる部分jを保持するジャーナル部保持型30と、ピン部となる部分pを保持するピン部保持型31と、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31とを軸方向に摺動可能に拘束するケース32と、粗形材10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さ、所定のピッチに成形する軸方向加圧手段33とを備えている。
【0023】
そして、この実施の形態における仕上成形装置3は、少なくともピン部保持型31が、ケース32の内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライド41と、この軸方向スライド41に保持されてケース32の径方向に移動可能に摺動する径方向スライド42とを備えており、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部J23を保持するジャーナル部保持型30と隣接する径方向スライド42には、このジャーナル部保持型30と対向する面であって、このジャーナル部保持型30に保持されたジャーナル部J23に対してピン部P2およびP3が偏心する方向と反対側の位置に突起部46が設けられている。この突起部46は、その上面(ジャーナル部保持型30と対向する面)46aとジャーナル部保持型30との間で、仕上成形時に粗形材10の、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部となる部分j23と隣接するウエブ部となる部分w23、w32を加圧して、ウエブ部W23,W32のジャーナル部側の端部を張り出させるよう構成されている。
【0024】
ケース32は、円筒を軸方向に沿って半割りした一対の部材32A,32Bにより構成されている。ケース32は、相対的に互いの部材32A,32Bが開閉可能に、且つ、成形時に不用意に開くことがないように所定の力で型締されるよう支持されている。なお、図7および図10においては、ケース32の一方の部材32Aまたは32Bの端面が示されているが、その形状を特定しやすいようにハッチングを施されていることに注意されたい。
【0025】
ジャーナル部保持型30は、成形するクランクシャフト100のジャーナル部Jの軸方向長さと同じ厚さを有する板状に成形されたもので、その外周形状がケース32の内部の断面形状と相似形で、ケース32の内部で軸方向に摺動できるようケース32の内面よりも僅かに小さく成形されている。そして、ジャーナル部保持型30は、所定の位置に粗形材10のジャーナル部となる部分jを保持する孔35が形成されており、この孔35の中心を通りジャーナル部Jに対するピン部Pの偏心方向に延びる仮想線上に形成される分割線で半割りされた一対の部材30A,30Bにより構成されている。なお、図7および図10においては、ジャーナル部保持型30の一方の部材30Aまたは30Bの端面が示されているが、ケース32と同様に、その形状を特定しやすいようにハッチングを施されていることに注意されたい。
【0026】
ピン部保持型31の軸方向スライド41は、少なくとも成形するクランクシャフト100のピン部Pの軸方向長さとこのピン部Pの両端を支持する両ウエブ部W,Wを成形する厚さとを加えた厚さ以下の厚さを有する板状に成形されたもので、その外周形状がケース32の内部の断面形状と相似形で、ケース32の内部で軸方向に摺動できるようケース32の内面よりも僅かに小さく成形されている。そして、ピン部保持型31の軸方向スライド41は、成形するクランクシャフト100のウエブ部Wの形状や大きさ(幅と長さ)などに応じて径方向に延在する開口43が厚さ方向に貫通するよう形成されており、この開口43の長手方向に沿って中央で半割された一対の部材41A,41Bにより構成されている。さらに、開口43の長手方向側壁には、径方向スライド42の側縁を摺動可能に受けるための溝44がそれぞれ形成されている。
【0027】
一方、ピン部保持型31の径方向スライド42は、成形するクランクシャフト100のピン部Pの軸方向長さと同じ厚さを有し、且つ、軸方向スライド41の溝44に支持されて移動方向と直交する方向に拘束され得る幅と、溝44内で粗形材のピン部となる部分pからクランクシャフトのピン部Pとなるまでの偏心長さまで移動し得る長さとを有する板状に成形されている。そして、径方向スライド42は、所定の位置に粗形材10のピン部となる部分pを保持する孔36が形成されており、この孔36の中心を通りジャーナル部Jに対するピン部Pの偏心方向に延びる仮想線上に形成される分割線で半割りされた一対の部材42A,42Bにより構成されている。なお、図7および図10においては、ピン部保持型31の軸方向スライド41および径方向スライド42の一方の部材41A,42Aまたは41B,42Bの端面が示されているが、ケース32およびジャーナル部保持型30と同様に、その形状を特定しやすいようにハッチングを施されていることに注意されたい。
【0028】
本発明による突起部46は、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部となる部分j23を保持するジャーナル部保持型30と隣接する径方向スライド42の、ジャーナル部保持型30と対向する面であって、このジャーナル部保持型30に保持されたジャーナル部となる部分j23に対してピン部となる部p2,p3が偏心する方向と反対側に配置されている。この突起部46は、粗形材10を仕上成形するときに、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部J23と隣接するウエブ部W23,W32のジャーナル部J側の端部を張り出し成形させ得るように、その上面46aが径方向スライド42と対向するジャーナル部保持型30と所定の間隔を形成するような高さを有しており、径方向スライド42の表面に一体成形されている。そして、この実施の形態における突起部46は、図9に示すように、粗形材10のウエブ部となる部分wの加圧が完了した時点(すなわち、ウエブ部Wの仕上成形が完了した時点)における径方向スライド42の位置で、上面46aがジャーナル部Jの中心軸の延長線と同心状となるように、この中心軸の延長線を中心とする円弧状に成形されている。このように突起部46を同心状に成形することにより、ウエブ部Wの端部を適切に張り出させてスラスト面積を増大させることができる。図10に示すように、突起部46の内側壁面46b(ジャーナル部Jの中心軸の延長線に近い側の壁面)は、ウエブ部Wの端部が張り出すように材料を円滑に流動させるため、径方向スライド42の表面に対して傾斜するよう形成されている。また、突起部46の内側壁面46bは、仕上成形が完了した時点で、径方向スライド42の表面とウエブ部Wとの間に隙間Sを生じるような位置、および傾斜角度に設定されている。このように突起部46がウエブ部Wとの間に隙間Sを生じるように成形することにより、ウエブ部Wの全体を所定の厚さに成形しつつ端部を張り出させるときの抵抗が増大するのを低減することができる。
なお、本発明は、この実施の形態に限定されることはなく、ジャーナル部保持型30も、ピン部保持型31と同様に、ケース32の内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、この軸方向スライドに保持されてケース32の径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えた構成とすることもでき、また、ピン部保持型31も、ジャーナル部保持型30と同様に、半割された一対の板状の部材により構成して、各部材の上述した位置に突起部46をそれぞれ設けることも含まれる。
【0029】
次に、本発明のクランクシャフトの製造方法の実施の一形態を、上述したように構成された製造装置を用いる場合により、その製造装置の作動と共に説明する。
本発明のクランクシャフトの製造方法は、概略、回転中心軸となるジャーナル部Jと、ジャーナル部から偏心するピン部Pと、ジャーナル部Jとピン部Pとの間に延びるウエブ部Wとを有し、ジャーナル部Jの少なくとも一つにスラスト受け部材TMが取り付けられるクランクシャフト100を、素材1または10に偏心据え込みを行うことによって製造するためのものであって、素材1または10のジャーナル部となる部分jをジャーナル部保持型30により保持すると共に、ピン部となる部分pをピン部保持型31により保持し、素材1または10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形する方法において、ピン部保持型31の、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部Jを保持するジャーナル部保持型30と対向する面であって、ジャーナル部保持型30に保持されたジャーナル部Jに対してピン部Pが偏心する方向と反対側に突起部46を設けておき、素材1または10のウエブ部となる部分wのジャーナル部J側の端部をジャーナル部保持型30とピン部保持型31の突起部46との間で加圧して、ウエブ部Wのジャーナル部J側の端部を張り出させるものである。
そして、この実施の形態においては、素材1または10を保持したジャーナル部保持型30とピン部保持型31をケース32内に摺動可能に配置して拘束し、素材1または10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さでウエブ部Wを成形する場合に、少なくともピン部保持型31を、ケース32の内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライド41と、軸方向スライド41に保持されてケース32の径方向に移動可能に摺動する径方向スライド42とを備えた構成とし、径方向スライド42の、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部Jを保持するジャーナル部保持型30と対向する面であって、ジャーナル部保持型30に保持されたジャーナル部Jに対してピン部Pが偏心する方向と反対側に突起部46を設けておき、素材1のウエブ部となる部分wのジャーナル部J側の端部をジャーナル部保持型30と径方向スライド42の突起部46との間で加圧して、ウエブ部Wのジャーナル部J側の端部を張り出させるものである。
さらに、この実施の形態においては、素材1のピン部となる部分pを軸直交方向に加圧するとともに、ピン部となる部分pとこれに隣接するジャーナル部となる部分jとの軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、素材1のピン部となる部分pをジャーナル部となる部分jに対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分wを所定の厚さでピン部となる部分pとジャーナル部となる部分jとに対して曲げる予備成形を施し、予備成形された素材10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さに成形するものである。
【0030】
さらに、この実施の形態においては、素材1を曲げ加工して粗形材10を予備成形するときに、素材1の、突起部46に加圧されるウエブ部となる部分w23、w32の長さを、突起部46に加圧されない他のウエブ部となる部分wの長さと比較して長く設定し、素材1のピン部となる部分p2、p3を軸直交方向(径方向R)に加圧するとともに、ピン部となる部分p2、p3とこれに隣接する両ジャーナル部となる部分j12とj23、j23とj34との軸方向の位置を互いに同じとなるまで寄せるよう軸方向Aに加圧するものである。
【0031】
素材1を予備成形してなる粗形材10の、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部となる部分j23と隣接するウエブ部となる部分w23、w32は、他のウエブ部となる部分wと比較して材料が多くなっていることは上述したとおりである(図6を参照)。また、仕上成形装置3のピン部保持型31の径方向スライド42の、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部となる部分j23を保持するジャーナル部保持型30と対向する面であって、このジャーナル部保持型30に保持されたジャーナル部となる部分j23に対してピン部となる部分p2、p3が偏心している方向と反対側に、突起部46が予めを設けられていることは上述したとおりである(図10を参照)。この実施の形態においては、各ジャーナル部Jに対して同じ方向に偏心するピン部P2、P3に隣接するウエブ部W21,W23、および、W32,W34を仕上成形する工程と、ピン部P1、P4に隣接するウエブ部W10,W12、および、W34,W45を仕上成形する工程とが行われる。図7に示すように、ウエブ部W21,W23、および、W32,W34を仕上成形する工程で使用される仕上成形装置3の、端部に位置することとなるジャーナル部となる部分j12とj34を保持するジャーナル部保持型30は、少なくとも粗形材10の端部以上に軸方向に延びる被加圧部30aを有している。
【0032】
仕上成形を行うに際して、最初に、ジャーナル部保持型30の孔35に粗形材10のジャーナル部となる部分j12、j23、j34をそれぞれ保持すると共に、それぞれ軸方向スライド41に摺動可能に支持された径方向スライド42の孔36にピン部となる部分p2、p3をそれぞれ保持し、この状態で、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31とをケース32内に収容する。そして、図7に示すように、ケース32の一方の端部を受け部材37に当接して他方の端部に押圧部材38を挿入し、軸方向加圧手段33により押圧部材38を介して粗形材10を軸方向に加圧する。これにより粗形材10のウエブ部となる部分w12とw23、w32とw34は、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の径方向スライド42との間でそれぞれ挟まれて潰されるようにして所定の厚さに成形され、ウエブ部W12とW23,W32とW34が互いに所定のピッチで成形されることとなる。そして、各ウエブ部W12とW23,W32とW34が成形に伴って伸長することにより、ピン部保持型31の径方向スライド42が軸方向スライド41に対して摺動し、ピン部P2、P3がジャーナル部J12とJ23、J23とJ34から所定量偏心することとなる。
【0033】
本発明では、スラストメタルTMが設けられるジャーナル部J23と隣接するウエブ部W23,W32をジャーナル部保持型30とピン部保持型31の径方向スライド42との間で潰すよう加圧し成形するときに、かかるウエブ部W23,W32のジャーナル部J23側端部が突起部46の上面46aによって他の部分よりもさらに潰れるよう加圧され、その結果、図11の(a)に示すように、かかるウエブ部W23,W32の端部が、突起部46により加圧しない場合(図11の(b))と比較して張り出すように成形されている(矢印H)。そのため、図11に鎖線で示したスラストメタルTMと接触する面積、すなわちスラスト面積が増加し、スラスト荷重に対する耐荷重能を大きくすることができる。そして、本発明では、スラスト面積を増加させるために他の部材を付加することなく、逆にウエブ部W23,W32の厚さを部分的に薄く成形するため、クランクシャフト100の軽量化を図ることができる。なお、本発明は、この実施の形態に限定されることはなく、たとえば上述したような予備成形装置2を使用することなく、他の装置を使用して棒状の素材1を予備成形する場合も含まれ、さらには、棒状の素材1を予備成形することなく、直接仕上成形装置3により成形する場合も含まれる。また、本発明は、複数のピン部Pに隣接するウエブ部Wをまとめて同時に仕上成形する場合に限定されることなく、単独のピン部Pに隣接するウエブ部Wをそれぞれ仕上成形する場合も含まれる。
【0034】
次に、本発明のクランクシャフトの製造装置の別の実施の形態について、図12に基づいて説明する。なお、この実施の形態においては、上述した実施の形態と同じまたは相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
【0035】
上述した実施の形態の突起部46は、仕上成形が完了した時点における径方向スライド46の位置で、その上面46aがジャーナル部J23の中心軸の延長線と同心状となるように、この中心軸の延長線を中心とする円弧状に成形されているのに対して、この実施の形態の突起部46は、その上面46aがジャーナル部J23に対するピン部の偏心方向(ウエブ部Wの伸長した方向ということもできる)と直交する方向に延びる直線部を有している。その結果、突起部46は、その中央部分がジャーナル部J23の中心軸の延長線に最も近く、端部に向かって漸次延長線から遠くなっている。そして、直線部の端部には、ジャーナル部J23の中心軸の延長線に向って湾曲するよう形成されている。突起部46の内側壁面46bは、仕上成形が完了した時点で、径方向スライド42の表面とウエブ部W23、W32との間にそれぞれ隙間Sを生じるような位置、および傾斜角度で形成されていることは、上述した実施の形態と同様である。
【0036】
このように構成された突起部46を有する径方向スライド42を備えてなる仕上成形装置3では、粗形材10を軸方向に加圧して、粗形材10のウエブ部wとなる部分を、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の径方向スライド42との間で潰して所定の厚さに成形すると共に、ピン部Pをジャーナル部Jから所定量偏心させるときに、スラストメタルTMが設けられるジャーナル部J23と隣接するウエブ部W23,W32のジャーナル部J側端部が突起部46によって他の部分よりもさらに潰れるよう加圧されて、張り出すように成形される。このウエブ部W23,W32の張り出すように成形された端部には、後の工程で切削加工などを行って整形した後に、カウンタウエイトCW(図2を参照)が取り付けられる。ここで、この実施の形態では突起部46の表面46aが直線部を有しているため、図12に鎖線で示すように、そのウエブ部W23,W32の端部は、単に張り出すよう成形されるだけでなく、突起部46の直線部を有する表面46aと対応する形状に成形されることとなる。そのため、後の工程で整形する加工量が少なくて済み、容易に且つ確実にカウンタウエイトCWを取り付けることができる。
【0037】
次に、本発明の仕上げ成形装置のさらに別の実施の形態を、図13〜図16に基づいて説明する。なお、この実施の形態においては、上述した実施の形態と同じまたは相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
上述した実施の形態では、径方向スライド42の、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部となる部分j23を保持するジャーナル部保持型30と対向する面のみに突起部46を設けていたのに対し、この実施の形態においては、径方向スライド42の両面に突起部46,47を設けている。これにより、径方向スライド42は、その両面に設けられた突起部46,47によってウエブ部となる部分w23とw21、または、w32とw34を加圧することとなり、各突起部46,47が加圧することにより径方向スライド42が受ける反力を相殺し平衡させることができ、したがって、径方向スライド42の変形や、軸方向スライド41に対して摺動する際の摩擦抵抗、あるいは摩擦による摩耗を低減することができる。
【0038】
ここで、粗形材10のウエブ部となる部分wにおいて、上述したようにスラストメタルTMが設けられるジャーナル部J23と隣接するウエブ部となる部分w23、w32の材料を増加させた場合に、図13に示すように、径方向スライド42に対して同様の位置に突起部46,47を設けるものと仮定すると、図14に示すように、ウエブ部となる部分w23、w32の端部を張り出すように加圧する突起部46と、反対側の面に設けられて材料が増加されていないウエブ部となる部分w21、w34の端部を加圧する突起部47とでは、ウエブ部となる部分w23またはw32とw21またはw34とに接触する面積が異なることとなり、その結果、径方向スライド42が受ける反力を相殺し平衡させることができなくなる。そこで、図15、図16に示すように、ウエブ部となる部分w23、w32の端部を張り出すように加圧する突起部46と同じ面積で材料が増加されていないウエブ部となる部分w21、w34と接触して径方向スライド42が突起部46,47により受ける反力を平衡させ相殺されるようにバランスをとることができる位置に、径方向スライド42の反対側の面にバランス突起部47を設けることとした。このバランス突起部47は、上述した径方向スライド42の一方の面のみに設けられる突起部46と同様に、ジャーナル部J23の中心軸の延長線に近い側の壁面46bが、仕上成形が完了した時点で、径方向スライド42の表面とウエブ部Wとの間に隙間Sを生じるような位置、および傾斜角度で形成されている。
【0039】
このように構成された仕上成形装置3を用いて粗形材10を仕上げ成形するに際しては、図15に示すように、ジャーナル部保持型30の孔35に粗形材10のジャーナル部となる部分J12,j23,j34をそれぞれ保持すると共に、それぞれ軸方向スライド41に摺動可能に支持された径方向スライド42の孔36にピン部となる部分p2、p3をそれぞれ保持し、この状態で、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31とをケース32内に収容する。このとき、粗形材10のウエブ部となる部分w21、w23,w32、w34がこの時点ではまだ潰されるように加圧されておらず、したがって、ウエブ部となる部分w21とw23、または、w32とw34が径方向に延伸されていない(ピン部となる部分p2、p3がジャーナル部となる部分j12とj23、または、j23とj34から所定量偏心していない)ことから、径方向スライド42は、軸方向スライド41に対して後退した状態(図15に示した右方に位置している状態)となっている。そして、図7に参照されるように、ケース32の一方の端部を受け部材37に当接して他方の端部に押圧部材38を挿入し、軸方向加圧手段33により押圧部材38を介して粗形材10をその軸方向に加圧する。これにより粗形材10のウエブ部となる部分w21とw23、w32とw34は、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の径方向スライド42との間に挟まれて潰されるようにして所定の厚さに成形され、ウエブ部W21とW23、W32とW34が所定のピッチで成形されることとなる。そして、ウエブ部W21とW23、W32とW34が仕上成形に伴って延伸されることにより、ピン部保持型31の径方向スライド42が軸方向スライド41に対して図16に示すように左方に前進するよう摺動し、ピン部P2,P3がジャーナル部J12,J23、J34から所定量偏心することとなる。
【0040】
この実施の形態では、径方向スライド42の両面に突起部46,47を設けることにより、仕上成形時に受ける反力を平衡させ相殺させるようにバランスをとることができるため、径方向スライド42の変形や、軸方向スライド41に対して摺動する際の摩擦抵抗、あるいは摩擦による摩耗を低減することができる。そして、スラストメタルTMが設けられるジャーナル部J23に隣接することとなるウエブ部となる部分w23、w32の材料が増加するように予備成形されている場合であっても、このスラストメタルTMが設けられるジャーナル部J23に隣接することとなり材料が増加されたウエブ部となる部分w23、w32の端部と、その他のウエブ部となる部分w21、w34の端部に対して、両突起部46,47をそれぞれ同じ面積で接触させるように配置することにより、確実に安定して仕上成形時に受ける反力を平衡させ相殺させるようにバランスをとることができる。なお、粗形材10の各ウエブ部となる部分w21、w23、w32、w34の材料が同じ量となるように成形されている場合には、径方向スライド42に対して両突起部46,47を同様の位置に設けても、両突起部46,47がそれぞれ同じ面積でウエブ部となる部分w21とw23、および、w32とw34に接触することとなる。そのため、本発明には、径方向スライド42に対して両突起部46,47を同様の位置に設けることも含まれる。
【0041】
次に、本発明のクランクシャフトの製造装置の別の実施の形態を、図17〜図22に基づいて説明する。なお、この実施の形態においては、上述した実施の形態と同じまたは相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
【0042】
この実施の形態における仕上成形装置3は、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部J23を保持するジャーナル部保持型30が凹部形成部39を備えている。この凹部形成部39は、径方向スライド42との間でウエブ部となる部分w23、w32を加圧することにより、ウエブ部W23、W32のスラスト受け部材TMと対応する位置に凹部50を形成するためのもので、凹部50は、ジャーナル部J23とスラスト受け部材TMとの相対的な回転方向(図19の矢印を参照)に対する上流側に配置され軸方向に延びるよう形成された壁部50aと、この壁部50aからジャーナル部とスラスト受け部材TMとの相対的な回転方向に対する下流に向かって漸次浅くなる勾配を有する傾斜部50bとを備えている。
【0043】
この実施の形態におけるジャーナル部保持型30は、粗形材10のジャーナル部J23を拘束する孔35の周囲に、凹部形成部として凸部39を有している。ここで、内燃機関の軸受に軸支されたクランクシャフトのジャーナル部J23が図19に矢印で示すように軸回りに回転することによって、ウエブ部W23、W32とスラストメタルTMとの間に存在するオイルなどの潤滑剤Lは、ウエブ部W23、W32に対して相対的に図20に矢印Fで示されているように流れることとなる。ジャーナル部保持型30の凸部39は、潤滑剤Lがウエブ部に対して相対的に流れる方向の上流側(図20の左方側)がウエブ部の表面に対してほぼ直角に形成された所定の深さを有する壁部50aと、この壁面から潤滑剤が相対的に流れる方向の下流側((図20の右方側))に向かって漸次浅くなるよう勾配を有する傾斜面50bとを有する凹部50をウエブ部W23、W32に形成し得るように成形されている。図18に示した実施の形態における凸部39は、ジャーナル部J23に設けられるスラストメタルTMと対応する部分のみに、扇形で、2箇所設けられている。しかしながら、本発明の凹部形成部39は、図18に示した実施の形態に限定されることはなく、たとえば、図21に示すように孔35からスラストメタルTMの径を超えてジャーナル部保持型30の外周縁に延びるように扇形に形成したり、また、図22に示すように孔35からジャーナル部保持型30の外周縁まで同じ幅で形成し、さらには、凸部を1箇所または3箇所以上に形成するなど、ウエブ部W23、W32の少なくともスラスト受け部材TMと対応する位置に、ジャーナル部J23とスラスト受け部材TMとの相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部50を形成するものであれば、本発明に含まれる。
【0044】
次に、本発明のクランクシャフトの製造方法のさらに別の実施の形態を、図17〜図22に示したようにに構成されたジャーナル部保持型30を備えた仕上成形装置3を用いる場合によって、その作動と共に詳細に説明する。なお、この実施の形態においては、上述した実施の形態と同じまたは相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
【0045】
本発明のクランクシャフトの製造方法は、概略、回転中心軸となるジャーナル部Jと、このジャーナル部Jから偏心するピン部Pと、ジャーナル部Jとピン部Pとの間に延びるウエブ部Wとを有し、ジャーナル部Jの少なくとも一つ(J23)にスラスト受け部材TMが取り付けられるクランクシャフト100を製造するための方法であって、予備成形された粗形材10のジャーナル部となる部分jをジャーナル部保持型30により保持すると共に、ピン部となる部分pをピン部保持型31により保持し、粗形材10を保持したジャーナル部保持型30とピン部保持型31をケース32内に摺動可能に配置して拘束し、粗形材10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分wをジャーナル部保持型30とピン部保持型31との間で潰して所定の厚さ、所定のピッチで成形する方法において、スラスト受け部材TMが取り付けられるジャーナル部J23を保持するジャーナル部保持型30の、ウエブ部W23,W32のスラスト受け部材TMと対応する位置に、ジャーナル部J23とスラスト受け部材TMとの相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する傾斜面50bを備えた凹部50を形成するための凹部形成部39を設けておき、粗形材10を軸方向に加圧してウエブ部となる部分w23、w32のスラスト受け部材TMと対応する位置を凹部形成部39によって押圧して、ウエブ部W23,W32のスラスト受け部材TMと接する部分に、ジャーナル部J23とスラスト受け部材TMとの相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する傾斜面50bを備えた凹部50を形成するものである。
【0046】
この実施の形態における粗形材10は、上述した実施の形態のようにウエブ部W23,W32の端部を張り出させるように成形しないため、かかるウエブ部となる部分w23、w32の材料を増加させる必要はなく、他のウエブ部となる部分w21、w34と同じに設定されている。一方、仕上成形装置3のジャーナル部保持型30には、少なくともその孔35の周囲に、凸部39が予め形成されている。
【0047】
仕上成形を行うに際して、最初に、ジャーナル部保持型30の孔35に粗形材10のジャーナル部となる部分j12、j23、j34をそれぞれ保持すると共に、それぞれ軸方向スライド41に摺動可能に支持された径方向スライド42の孔36にピン部となる部分p2、p3をそれぞれ保持し、この状態で、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31とをケース32内に収容する。そして、図7に参照されるように、ケース32の一方の端部を受け部材37に当接して他方の端部に押圧部材38を挿入し、軸方向加圧手段33により押圧部材38を介して粗形材10を軸方向に加圧する。これにより粗形材10のウエブ部となる部分w12とw23、w32とw34は、ジャーナル部保持型30とピン部保持型31の径方向スライド42との間でそれぞれ挟まれて潰されるようにして所定の厚さに成形され、ウエブ部W12とW23,W32とW34が互いに所定のピッチで成形されることとなる。このとき、図17に示すように、スラストメタルTMが設けられるジャーナル部J23に隣接するウエブ部W23,W32は、そのスラストメタルTMと対応する位置に、ジャーナル部保持型30に設けられた凸部39によって凹部50が部分的に形成されることとなる。凹部50は、ジャーナル部J23とスラスト受け部材TMとの相対的な回転方向の上流側(図20の左方側)に、ウエブ部の表面に対してほぼ直角に形成された所定の深さを有する壁部50aと、この壁面50aから潤滑剤が相対的に流れる方向の下流側((図20の右方側))に向かって漸次浅くなるよう勾配を有する傾斜面50bとが形成されている。その後、クランクシャフト100は、ジャーナル部J23の両端部にスラストメタルTMがウエブ部W23,W32と接するように設けられ、また、所定のウエブ部Wにカウンタウエイトが取り付けられて、製造が完了する。
【0048】
このようにして凹部50が形成されたクランクシャフト100は、例えば内燃機関の軸受にジャーナル部J01,J23,J45が軸支され、内燃機関のオイルパン内には、オイルなどの潤滑剤Lが充填される。そして、内燃機関を運転すると、クランクシャフト100が各ジャーナル部Jを中心として軸回りに回転し、クランクシャフトのジャーナル部J23が図19に矢印で示すように軸回りに回転することによって、ウエブ部W23、W32とスラストメタルTMとの間に存在するオイルなどの潤滑剤Lは、ウエブ部W23、W32に対して相対的に図20に矢印Fで示されているように流れることとなる。すなわち、潤滑剤Lは、ウエブ部W23,W32の表面から凹部50に対して、その壁部50aに落ち込むように流れ込み、その後、傾斜面50bの勾配に沿って再びウエブ部W23,W32の表面まで上昇(図20の場合)するよう流動することとなる。この潤滑剤Lの流動により、スラストメタルTMは、ウエブ部W23,W32の表面から離れるようにクサビ効果を発生させることとなる。そのため、ウエブ部W23,W32とスラストメタルTMとの摩擦が軽減されて両者の摩耗を防ぐことができ、しかも、上述したようにウエブ部W23,W32のスラスト面積を増加させることなく、スラスト荷重に対する耐荷重能が大きく且つ軽量化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、上記に限定されることはなく、単気筒あるいは4気筒以外の複数の気筒の内燃機関、さらには、直列以外の複数の気筒数を有する内燃機関、または、内燃機関以外の他の機関に使用されるクランクシャフトを製造する場合にも適用することができる。また、本発明は、上記のジャーナル部にスラスト受け部材を設ける場合に限定されることはなく、上記以外の他のジャーナル部にスラスト受け部材を設ける場合にも適用することができる。予備成形と仕上成形は、必要に応じて所定温度の熱間または冷間で行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
10:粗形材、 100:クランクシャフト、 30:ジャーナル部保持型、 31:ピン部保持型、 32:ケース、 33:軸方向加圧手段、 39:凸部(凹部形成部)、 41:軸方向スライド、 42:径方向スライド、 46:突起部、 47バランス突起部、 50:凹部、 P:ピン部、 J:ジャーナル部、 W:ウエブ部、 p:ピン部となる部分、 j:ジャーナル部となる部分、 w:ウエブ部となる部分、J23:スラストメタルが設けられるジャーナル部、 j23:スラストメタルが設けられるジャーナル部となる部分、 W23,W32:スラストメタルが設けられるジャーナル部と隣接するウエブ部、 w23,w32:スラストメタルが設けられるジャーナル部と隣接するウエブ部となる部分、 TM:スラストメタル(スラスト受け部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有し、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトを、素材に偏心据え込みを行うことによって製造するための装置であって、
素材のジャーナル部となる部分を保持するジャーナル部保持型と、ピン部となる部分を保持するピン部保持型と、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段とを備えており、
前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と隣接するピン部保持型は、該ジャーナル部保持型と対向する面であって、該ジャーナル部保持型に保持されたジャーナル部に対してピン部が偏心する方向と反対側に配置されて、前記素材のウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型との間で加圧することにより前記ウエブ部の前記ジャーナル部側の端部を張り出させる突起部が設けられていることを特徴とするクランクシャフトの製造装置。
【請求項2】
さらに、ジャーナル部保持型とピン部保持型とを軸方向に摺動可能に拘束するケースを備えており、
少なくとも前記ピン部保持型は、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えており、
前記突起部は、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と隣接する径方向スライドに設けられていることを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項3】
前記素材を予備成形するための予備成形装置を備えており、
該予備成形装置は、素材のピン部となる部分を拘束し把持するパンチと、該素材のパンチに把持されたピン部となる部分に隣接するジャーナル部となる部分を拘束し把持するダイと、パンチをダイに対して相対的に前記素材の軸直交方向に偏位させるよう駆動する軸直交方向駆動手段と、ダイをパンチに対して近付けるように前記素材の軸方向に駆動する軸方向駆動主段とを備えており、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げ成形させるものであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項4】
前記素材の、後に端部が張り出し成形されるウエブ部に隣接するのジャーナル部を把持するダイのパンチに対する軸方向長さが、他のジャーナル部を把持するダイのパンチに対する軸方向長さよりも長く設定されており、
前記軸方向駆動主段は、予備成形が完了した時点で両ダイのパンチに対する軸方向の位置が同じとなるように軸方向に駆動するものであることを特徴とする請求項3に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項5】
前記突起部は、前記素材のウエブ部となる部分の加圧が完了した時点で前記ジャーナル部の中心軸と同心状に成形されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項6】
前記突起部は、前記ジャーナル部に対するピン部の偏心方向と直交する方向に延びる直線部を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項7】
前記径方向スライドは、前記突起部が設けられた面と反対側の面に、該面と対向する前記ジャーナル部保持型との間で前記ウエブ部となる部分に対して前記突起部と同じ面積で接するバランス突起部が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項8】
回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有し、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトを、素材に偏心据え込みを行うことによって製造するための装置であって、
素材のジャーナル部となる部分を保持するジャーナル部保持型と、ピン部となる部分を保持するピン部保持型と、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段とを備えており、
前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型は、前記ピン部保持型との間でウエブ部となる部分を加圧することにより、ウエブ部の前記スラスト受け部材と対応する位置に、ジャーナル部とスラスト受け部材との相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部を形成するための、凹部形成部が設けられていることを特徴とするクランクシャフトの製造装置。
【請求項9】
さらに、ジャーナル部保持型とピン部保持型とを軸方向に摺動可能に拘束するケースを備えており、
少なくとも前記ピン部保持型は、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えていることを特徴とする請求項8に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項10】
前記素材を予備成形するための予備成形装置を備えており、
該予備成形装置は、素材のピン部となる部分を拘束し把持するパンチと、素材のパンチに把持されたピン部となる部分に隣接するジャーナル部となる部分を拘束し把持するダイと、パンチをダイに対して相対的に素材の軸直交方向に偏位させるよう駆動する軸直交方向駆動手段と、ダイをパンチに対して近付けるように素材の軸方向に駆動する軸方向駆動主段とを備えており、素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げ成形させるものであることを特徴とする請求項8または9のいずれかに記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項11】
回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有し、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトを、素材に偏心据え込みを行うことによって製造するための方法であって、
素材のジャーナル部となる部分をジャーナル部保持型により保持すると共に、ピン部となる部分をピン部保持型により保持し、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する方法において、
前記ピン部保持型の、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と対向する面であって、該ジャーナル部保持型に保持されたジャーナル部に対してピン部が偏心する方向と反対側に突起部を設けておき、
前記素材のウエブ部となる部分のジャーナル部側の端部を前記ジャーナル部保持型と前記ピン部保持型の突起部との間で加圧して、前記ウエブ部の前記ジャーナル部側の端部を張り出させることを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
【請求項12】
前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型をケース内に摺動可能に配置して拘束し、
前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さでウエブ部を成形する場合に、
少なくとも前記ピン部保持型を、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えた構成とし、前記径方向スライドの、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と対向する面であって、該ジャーナル部保持型に保持されたジャーナル部に対してピン部が偏心する方向と反対側に突起部を設けておき、
前記素材のウエブ部となる部分のジャーナル部側の端部を前記ジャーナル部保持型と前記径方向スライドの突起部との間で加圧して、前記ウエブ部の前記ジャーナル部側の端部を張り出させることを特徴とする請求項11に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項13】
素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、
該予備成形された素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とする請求項11または12のいずれかに記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項14】
前記予備成形で、素材の、前記ジャーナル部側の端部を張り出させるウエブ部となる部分の軸方向長さを、端部を張り出させないウエブ部となる部分の軸方向長さと比較して長く設定し、
前記ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに同じとなるまで寄せるよう軸方向に加圧することを特徴とする請求項13に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項15】
前記突起部を、前記素材のウエブ部となる部分の加圧が完了した時点で前記ジャーナル部の中心軸と同心状に成形しておくことを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項16】
前記突起部に、前記ジャーナル部に対するピン部の偏心方向と直交する方向に延びる直線部を成形しておき、
前記素材のウエブ部となる部分のジャーナル部側の端部を前記ジャーナル部保持型と前記径方向スライドの突起部との間で加圧した際に、前記ウエブ部の前記直線部によって成形された部分にカウンタウエイトを接合することを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項17】
前記ピン部保持型の、前記突起部を成形した面と反対側の面に、該面と対向する前記ジャーナル部保持型との間で前記ウエブ部となる部分に対して前記突起部と同じ面積で接するバランス突起部を設けておくことを特徴とする請求項11〜16のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項18】
回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有し、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトを、素材に偏心据え込みを行うことによって製造するための方法であって、
素材のジャーナル部となる部分をジャーナル部保持型により保持すると共に、ピン部となる部分をピン部保持型により保持し、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さで成形する方法において、
前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型の前記スラスト受け部材と対応する位置に、ジャーナル部とスラスト受け部材との相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部を形成するための凹部形成部を設けておき、
素材のウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型と前記ピン部保持型との間で加圧して、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部と隣接するウエブ部の前記スラスト受け部材と接する位置に、前記凹部を形成することを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
【請求項19】
前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型をケース内に摺動可能に配置して拘束し、
前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さでウエブ部を成形する場合に、
少なくとも前記ピン部保持型を、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えた構成としておくことを特徴とする請求項18に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項20】
前記素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、
該予備成形された素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とする請求項18または19のいずれかに記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項21】
素材に偏心据え込みを行うことによって、回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とが成形されてなり、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトであって、
素材を偏心据え込みすることによって、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部に隣接するウエブ部の前記ジャーナル部側の端部が張り出されていることを特徴とするクランクシャフト。
【請求項22】
少なくとも、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部に隣接するウエブ部の、張り出された前記ジャーナル部側の端部に、カウンタウエイトが接合されていることを特徴とする請求項21に記載のクランクシャフト。
【請求項23】
素材に偏心据え込みを行うことによって、回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とが成形されてなり、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトであって、
素材を偏心据え込みすることによって、前記ウエブ部のスラスト受け部材と接する部分に、ジャーナル部とスラスト受け部材との相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部が形成されていることを特徴とするクランクシャフト。
【請求項1】
回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有し、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトを、素材に偏心据え込みを行うことによって製造するための装置であって、
素材のジャーナル部となる部分を保持するジャーナル部保持型と、ピン部となる部分を保持するピン部保持型と、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段とを備えており、
前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と隣接するピン部保持型は、該ジャーナル部保持型と対向する面であって、該ジャーナル部保持型に保持されたジャーナル部に対してピン部が偏心する方向と反対側に配置されて、前記素材のウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型との間で加圧することにより前記ウエブ部の前記ジャーナル部側の端部を張り出させる突起部が設けられていることを特徴とするクランクシャフトの製造装置。
【請求項2】
さらに、ジャーナル部保持型とピン部保持型とを軸方向に摺動可能に拘束するケースを備えており、
少なくとも前記ピン部保持型は、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えており、
前記突起部は、スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と隣接する径方向スライドに設けられていることを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項3】
前記素材を予備成形するための予備成形装置を備えており、
該予備成形装置は、素材のピン部となる部分を拘束し把持するパンチと、該素材のパンチに把持されたピン部となる部分に隣接するジャーナル部となる部分を拘束し把持するダイと、パンチをダイに対して相対的に前記素材の軸直交方向に偏位させるよう駆動する軸直交方向駆動手段と、ダイをパンチに対して近付けるように前記素材の軸方向に駆動する軸方向駆動主段とを備えており、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げ成形させるものであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項4】
前記素材の、後に端部が張り出し成形されるウエブ部に隣接するのジャーナル部を把持するダイのパンチに対する軸方向長さが、他のジャーナル部を把持するダイのパンチに対する軸方向長さよりも長く設定されており、
前記軸方向駆動主段は、予備成形が完了した時点で両ダイのパンチに対する軸方向の位置が同じとなるように軸方向に駆動するものであることを特徴とする請求項3に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項5】
前記突起部は、前記素材のウエブ部となる部分の加圧が完了した時点で前記ジャーナル部の中心軸と同心状に成形されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項6】
前記突起部は、前記ジャーナル部に対するピン部の偏心方向と直交する方向に延びる直線部を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項7】
前記径方向スライドは、前記突起部が設けられた面と反対側の面に、該面と対向する前記ジャーナル部保持型との間で前記ウエブ部となる部分に対して前記突起部と同じ面積で接するバランス突起部が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項8】
回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有し、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトを、素材に偏心据え込みを行うことによって製造するための装置であって、
素材のジャーナル部となる部分を保持するジャーナル部保持型と、ピン部となる部分を保持するピン部保持型と、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する軸方向加圧手段とを備えており、
前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型は、前記ピン部保持型との間でウエブ部となる部分を加圧することにより、ウエブ部の前記スラスト受け部材と対応する位置に、ジャーナル部とスラスト受け部材との相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部を形成するための、凹部形成部が設けられていることを特徴とするクランクシャフトの製造装置。
【請求項9】
さらに、ジャーナル部保持型とピン部保持型とを軸方向に摺動可能に拘束するケースを備えており、
少なくとも前記ピン部保持型は、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えていることを特徴とする請求項8に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項10】
前記素材を予備成形するための予備成形装置を備えており、
該予備成形装置は、素材のピン部となる部分を拘束し把持するパンチと、素材のパンチに把持されたピン部となる部分に隣接するジャーナル部となる部分を拘束し把持するダイと、パンチをダイに対して相対的に素材の軸直交方向に偏位させるよう駆動する軸直交方向駆動手段と、ダイをパンチに対して近付けるように素材の軸方向に駆動する軸方向駆動主段とを備えており、素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げ成形させるものであることを特徴とする請求項8または9のいずれかに記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項11】
回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有し、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトを、素材に偏心据え込みを行うことによって製造するための方法であって、
素材のジャーナル部となる部分をジャーナル部保持型により保持すると共に、ピン部となる部分をピン部保持型により保持し、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形する方法において、
前記ピン部保持型の、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と対向する面であって、該ジャーナル部保持型に保持されたジャーナル部に対してピン部が偏心する方向と反対側に突起部を設けておき、
前記素材のウエブ部となる部分のジャーナル部側の端部を前記ジャーナル部保持型と前記ピン部保持型の突起部との間で加圧して、前記ウエブ部の前記ジャーナル部側の端部を張り出させることを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
【請求項12】
前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型をケース内に摺動可能に配置して拘束し、
前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さでウエブ部を成形する場合に、
少なくとも前記ピン部保持型を、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えた構成とし、前記径方向スライドの、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型と対向する面であって、該ジャーナル部保持型に保持されたジャーナル部に対してピン部が偏心する方向と反対側に突起部を設けておき、
前記素材のウエブ部となる部分のジャーナル部側の端部を前記ジャーナル部保持型と前記径方向スライドの突起部との間で加圧して、前記ウエブ部の前記ジャーナル部側の端部を張り出させることを特徴とする請求項11に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項13】
素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、前記素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、
該予備成形された素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とする請求項11または12のいずれかに記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項14】
前記予備成形で、素材の、前記ジャーナル部側の端部を張り出させるウエブ部となる部分の軸方向長さを、端部を張り出させないウエブ部となる部分の軸方向長さと比較して長く設定し、
前記ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに同じとなるまで寄せるよう軸方向に加圧することを特徴とする請求項13に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項15】
前記突起部を、前記素材のウエブ部となる部分の加圧が完了した時点で前記ジャーナル部の中心軸と同心状に成形しておくことを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項16】
前記突起部に、前記ジャーナル部に対するピン部の偏心方向と直交する方向に延びる直線部を成形しておき、
前記素材のウエブ部となる部分のジャーナル部側の端部を前記ジャーナル部保持型と前記径方向スライドの突起部との間で加圧した際に、前記ウエブ部の前記直線部によって成形された部分にカウンタウエイトを接合することを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項17】
前記ピン部保持型の、前記突起部を成形した面と反対側の面に、該面と対向する前記ジャーナル部保持型との間で前記ウエブ部となる部分に対して前記突起部と同じ面積で接するバランス突起部を設けておくことを特徴とする請求項11〜16のいずれか1項に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項18】
回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とを有し、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトを、素材に偏心据え込みを行うことによって製造するための方法であって、
素材のジャーナル部となる部分をジャーナル部保持型により保持すると共に、ピン部となる部分をピン部保持型により保持し、前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さで成形する方法において、
前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部を保持するジャーナル部保持型の前記スラスト受け部材と対応する位置に、ジャーナル部とスラスト受け部材との相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部を形成するための凹部形成部を設けておき、
素材のウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型と前記ピン部保持型との間で加圧して、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部と隣接するウエブ部の前記スラスト受け部材と接する位置に、前記凹部を形成することを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
【請求項19】
前記素材を保持したジャーナル部保持型とピン部保持型をケース内に摺動可能に配置して拘束し、
前記素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さでウエブ部を成形する場合に、
少なくとも前記ピン部保持型を、前記ケースの内周面に対して軸方向に移動可能に摺動する軸方向スライドと、該軸方向スライドに保持されてケースの径方向に移動可能に摺動する径方向スライドとを備えた構成としておくことを特徴とする請求項18に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項20】
前記素材のピン部となる部分を軸直交方向に加圧するとともに、該ピン部となる部分とこれに隣接するジャーナル部となる部分との軸方向の位置を互いに寄せるよう軸方向に加圧して、素材のピン部となる部分をジャーナル部となる部分に対して所定量偏位させるとともに、ウエブ部となる部分を所定の厚さでピン部となる部分とジャーナル部となる部分とに対して曲げる予備成形を施し、
該予備成形された素材を軸方向に加圧してウエブ部となる部分を前記ジャーナル部保持型とピン部保持型との間で潰して所定の厚さに成形することを特徴とする請求項18または19のいずれかに記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項21】
素材に偏心据え込みを行うことによって、回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とが成形されてなり、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトであって、
素材を偏心据え込みすることによって、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部に隣接するウエブ部の前記ジャーナル部側の端部が張り出されていることを特徴とするクランクシャフト。
【請求項22】
少なくとも、前記スラスト受け部材が取り付けられるジャーナル部に隣接するウエブ部の、張り出された前記ジャーナル部側の端部に、カウンタウエイトが接合されていることを特徴とする請求項21に記載のクランクシャフト。
【請求項23】
素材に偏心据え込みを行うことによって、回転中心軸となるジャーナル部と、該ジャーナル部から偏心するピン部と、前記ジャーナル部とピン部との間に延びるウエブ部とが成形されてなり、前記ジャーナル部の少なくとも一つにスラスト受け部材が取り付けられるクランクシャフトであって、
素材を偏心据え込みすることによって、前記ウエブ部のスラスト受け部材と接する部分に、ジャーナル部とスラスト受け部材との相対的な回転方向に向かって漸次浅くなる勾配を有する凹部が形成されていることを特徴とするクランクシャフト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−161819(P2012−161819A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25099(P2011−25099)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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