説明

クランクシャフト用部品、クランクシャフト、内燃機関及びコンプレッサ

内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用の単一ベルクランクは、単一ベルクランクメインジャーナル(5,28,39)とクランクピン(21,31,46)とを備え、クランクピン(21,31,46)は単一ベルクランクメインジャーナル(5,28,39)に対して垂直に延出し、クランクピン(21,31,46)の軸は単一ベルクランクメインジャーナル(5,28,39)の軸に対して偏り、クランクピン(21,31,46)の前端部をテーパー化し、少なくとも一つの第一位置決め半孔(10−1)をテーパー端部(9)の端面の円周上に設け、クランクの第2の位置決め半孔(10−02)と適合して位置決めピン孔を形成する。内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用のクランクは、クランクピン(21,31,46)のテーパー端部(9)と適合するテーパー孔(15,59)を設けたクランクメインジャーナル(13,52)を備え、テーパー孔(15,59)の軸はクランクメインジャーナル(13,52)の軸に対して偏り、テーパー孔(15,59)の内径面は、テーパー孔(15,59)と適合する単一ベルクランク内の第一位置決め半孔(10−1)に対応する第2の位置決め半孔(10−2)を備え、第2の位置決め半孔(10−2)と第一位置決め半孔(10−1)は、単一ベルクランクとクランクを一体に組み立てた後に完全な位置決め孔を形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年11月10日に「内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品、クランクシャフト、内燃機関及びコンプレッサ」の名称で中国特許庁に出願した中国特許出願200810226417.4号の優先権を主張するものであり、その全体を参照として包含するものである。
【0002】
本発明はエンジンまたはコンプレッサに用いるクランクシャフトに関し、特にクランク円形摺動ブロック式内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品及び、該部品で構成されたクランクシャフトに関する。本発明は更に、上記のクランクシャフトからなる内燃機関及びコンプレッサを提供する。
【背景技術】
【0003】
往復式内燃機関またはコンプレッサでは、ピストンの往復運動とクランクシャフトの回転運動の変換が必要であり、往復式内燃機関ではピストンの往復運動をクランクシャフトの回転運動に変換し、往復式コンプレッサではクランクシャフトの回転運動をピストンの往復運動に変換している。現在の公知の技術では、上記の変換には、クランク連結機構を用いる必要がある。クランク連結機構内に連結装置があることで、機関はかさばって重くなり、バランスを完全に取るのは不可能になっている。
【0004】
上述の問題を解決するため、中国特許CN85100359A号(特許文献1)は「クランク二重円形摺動ブロックを備えた往復ピストン式内燃機関」を開示し、中国特許ZL95111404.2号(特許文献2)は「クランク二重円形摺動ブロックを備えた往復ピストン式内燃機関」を保護し、中国特許ZL95111403.4号(特許文献3)は「クランク多重円形摺動ブロックを備えた往復ピストン式内燃機関」を保護している。上記の内燃機関の共通の特徴は、周知技術の内燃機関のクランク連結機構に対して、連結装置を偏心円形孔を有する円形摺動ブロックに置き換えて、徹底した改良をなしたことである。偏心円形摺動ブロックは円筒状で、円筒軸と平行で、クランクシャフトのクランクピンが通過する偏心円形孔を備える。内燃機関のピストンは、その両端のクラウン部と、クラウン部を接続するガイド部を備える。ガイド部はその上に円形孔を備え、その内径面は円形摺動ブロックの外径面と適合して、円形摺動ブロックが、円形摺動ブロックの外周と適合するピストンのガイド部の円形孔に配置されるようにしている。ピストンがシリンダ内の燃焼ガスの押圧によりシリンダ内で往復すると、偏心円形摺動ブロックがそれ自身の円の中心について回転し、更にクランクシャフトを反対方向に回転させるので、ピストンの往復運動がクランクシャフトの回転運動に変換され、クランクシャフトに接続された回転部により動力が外に向かって伝達される。上述の特許のアイデアは、コンプレッサにも適宜適用され、クランク円形摺動ブロック式コンプレッサを得ることができる。
【0005】
上述のクランク円形摺動ブロック式内燃機関またはコンプレッサにおいて、クランクシャフトは依然、必須部品である。クランクシャフトはメインジャーナルとクランクピンとからなる。メインジャーナルはベアリングによりクランクシャフトを機関本体に支持するのに用いられ、クランクピンは円形摺動ブロックの偏心円形孔を通過する。メインジャーナルの径はクランクピンの径よりも大きいので、両端のメインジャーナルは、必然的にクランクピンの左右の軸を完全に包含する。従って、円形摺動ブロックをクランクピンに対してどのように嵌合するかという問題を考慮する必要がある。
【0006】
この問題を解決する一つの方法は、円形摺動ブロックを分割構造として設計、即ち、円形摺動ブロックをそれぞれ半円の左右の2つの部分に分けることである。取り付けの際に、左右の部分を互いに対面させることでクランクピンに嵌合し、固定構造により2つの部分を一体部品とする。この方法は上記の問題を解決できるが、円形摺動ブロック自身の大きさが小さく、偏心円形孔を設ける必要もあるので、固定構造を配置するスペースが限られる。それに加えて、エンジンが稼働する際に円形摺動ブロックには非常に大きな力がかかり、固定構造が破損しがちとなる。従って、分割構造を持つこのような円形摺動ブロックは最適な解決方法ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許公開85100359号公報
【特許文献2】中国特許第ZL95111404.2号公報
【特許文献3】中国特許第ZL95111403.4号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の問題に鑑みて、本発明が解決しようとする課題は、互いに協働してクランクシャフトを形成する、内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品を提供することである。そのように組み合わせたクランクシャフトを形成することで、円形摺動ブロックのクランクピンへの設置を容易にし、製造と組み立てを簡単にし、確実に固定され、破損しにくいものとする。更に、分解し、再組み立てしても、部品間の位相関係は不変となる。本発明は更に、上記のクランクシャフトを利用した内燃機関とコンプレッサとを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明が提供する内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品は、単連メインジャーナルとクランクピンとの2つの部分からなる。クランクピンは単連メインジャーナルに対して垂直に延長し、クランクシャフトのメインジャーナルの軸に対して偏りした軸を有する。更にクランクピンは、テーパー化した前端部と、その小径端部または大径端部から始めて、テーパー端部の円錐面に設けられた少なくとも一つの位置決め半孔とを有する。第1の位置決め半孔は、クランクシャフトの第2の位置決め半孔と適合して完全な位置決めピン孔を形成する。以下、この部品を単連と称する。
【0010】
好適には、第1の位置決め半孔を特にテーパー方向に設ける。
【0011】
更に好適には、2つの第1の位置決め半孔を設ける。
【0012】
好適には、フライホイールまたは他の動力出力接続構成部品を取り付ける構造を、単連メインジャーナルの外端面に設ける。
【0013】
好適には、単連メインジャーナルとクランクピンの間に第1クランクアームを設け、それらを接続する。
【0014】
好適には、第1クランクアームは単連メインジャーナルと同軸で、単連メインジャーナルのものよりもわずかに大きい径を有する。加えて、単連メインジャーナルの外端面の方向に突起部を設けて環状溝を設ける。環状溝の切り込みは逃げ溝である。環状溝をオイルスリンガ(油切り)と称する。環状溝の底に油路を設け、クランクピンの内部からクランクピンの表面のオイル開口部に延長する。
【0015】
好適には、第1クランクアームの軸を、単連メインジャーナルのものと同軸とする。
【0016】
好適には、第1クランクアームの軸を単連メインジャーナルのものに対して偏心させ、クランクピンの軸から離れた方に設ける。
【0017】
好適には、クランクシャフトを単気筒エンジンに使用する際、少なくとも2つの歯を含む歯状部分をクランクピン上に設ける。歯状部分はピストン上の対応する内部歯状部分と適合する。クランクピン上に歯状部分と対称で、かつ歯状部分と180度の角度の位置に、突起部を設ける。
【0018】
好適には、クランクピンの根元部分の周囲に減摩ボスを設ける。
【0019】
好適には、クランクボルトと適合するねじ穴を、クランクピンのテーパー端部の前端面の中心に設ける。
【0020】
好適には、クランクピンのテーパー端部のテーパーは、自己係止するテーパー幅からなるものとする。
【0021】
クランクメインジャーナルからなる、内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品であって、クランクピンのテーパー端部と適合するテーパー孔をクランクメインジャーナルに設け、テーパー孔の軸をクランクメインジャーナルの軸と平行とし、クランクメインジャーナルの軸に対して偏らせる。テーパー孔の内径面には、適合する単連上の協働する第1の位置決め半孔に対応する第2の位置決め半孔を、小径端面ないし大径端面から設ける。第2の位置決め半孔は、単連がこの部品と組み合わせた後に完全な位置決めピン孔を形成する。以下、この部品をクランクと称する。
【0022】
好適には、クランクは、第2クランクアームと共にクランクピンに面する内部端面に設ける。
【0023】
好適には、クランクボルト取り付けスペースをクランク上に設け、取り付けの際は、クランクとクランクピンを互いに嵌挿した後にクランクボルトを用いて固定する。
【0024】
好適には、フライホイールを取り付ける構成または他の動力出力接続構成部品をクランクの外端面に設ける。
【0025】
好適には、いくつかの軽減孔をクランクに設ける。
【0026】
好適には、減摩ボスを、クランクピンとクランクの間の接触位置を中心としてクランクの内端面に設ける。
【0027】
本発明は、内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフトを提供する。クランクシャフトは、単連と、互いに適合するクランクとを含む。単連は前掲の技術的解決法のいずれかの単連であり、クランクは前掲の技術的解決法のいずれかのクランクである。クランクシャフトを組み立てる際、クランクはクランクのテーパー孔を使用して単連のクランクピンの前端部のテーパー端部に嵌挿し、位置決めピンを、第1の位置決め半孔と、互いに対応する第2の位置決め半孔を組み合わせることで形成される対応するピン孔に挿入し、クランクメインジャーナルの軸が単連メインジャーナルの軸と一致し、クランクピンの中心線と平行になるようにする。
【0028】
本発明は、更に内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品を提供する。該部品は、第1クランクピンと、二連メインジャーナルと、第2クランクピンからなる。第1クランクピンと第2クランクピンはそれぞれ、二連メインジャーナルの左右の端面から垂直に延長し、第1クランクピンと第2クランクピンの前端部の両方をテーパー端部とし、少なくとも一つの第1位置決め半孔を第1クランクピンと第2クランクピンの円周上に設ける。第1位置決め半孔は、クランクまたはクランク単連上の対応する第2位置決め半孔と適合して完全な位置決めピン孔を形成できる。2つのクランクピンの軸からメインジャーナルの軸への垂直距離は等しい。以下、この部品を二連と称する。
【0029】
好適には、第1クランクピンと第2クランクピンの径の両方は二連メインジャーナルの径よりも小さく、第1クランクピンの軸心と二連メインジャーナルの軸心とをつなぐ線は、第2クランクピンの軸心と二連メインジャーナルの軸心とをつなぐ線と、0から180度の角度をなす。
【0030】
本発明は更に、クランク単連メインジャーナルとクランクピンの2つの部分からなる内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品を提供する。クランクピンはクランク単連メインジャーナルに対して垂直に延長し、クランク単連メインジャーナルの軸から偏った軸を有する。クランクピンは更に、テーパー化した前端部と、テーパー端部の円周上に設けた少なくとも一つの第1位置決め半孔を有する。第1位置決め半孔は、クランクまたはクランク単連上の対応する第2位置決め半孔と適合して完全な位置決めピン孔を形成できる。クランク単連メインジャーナルのクランクピンから離れた側に面する端面にテーパー孔を設け、テーパー孔の内径面に少なくとも一つの第2位置決め半孔を設け、テーパー孔の軸からクランク単連メインジャーナルの軸への距離は、クランクピンの軸からクランクの単連メインジャーナルの軸への距離に等しくする。第2位置決め半孔は、単連ないし二連クランクシャフトのクランクピン上の対応する第1位置決め半孔と適合して完全な位置決めピン孔を形成する。以下、この部品をクランクの単連と称する。
【0031】
本発明は、少なくとも一つの前掲の技術的解決法の二連と、それと適合する一つのクランクからなる、内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフトを提供する。
【0032】
本発明は、少なくとも一つの前記二連と、一つの前記のクランクの単連と、上記のクランク単連または二連のクランクピンと適合するクランクとからなる、内燃機関またはコンプレッサに用いる別のクランクシャフトを提供する。
【0033】
本発明は、前掲の技術的解決法のいずれかのクランクシャフトを使用した内燃機関を提供する。
【0034】
本発明は、前掲技術的解決法のいずれかのクランクシャフトを使用したコンプレッサを提供する。
【発明の効果】
【0035】
従来技術と比較し、本発明が提供する単連または二連はそれぞれ、一端で開口したクランクピンを有するので、円形摺動ブロックを直接クランクピンに取り付けることができる。更に、クランクまたはクランク単連などの組み合わせを通して、完全なクランクシャフトを形成できる。そのような組み合わせで形成されるクランクシャフトは製造が容易である。更に、様々な部品間の相対的な角度関係は、組立工程において、対応して穿孔される第1と第2の位置決め半孔が組み合わされることにより形成される位置決めピン孔により容易に決定できる。様々な部品間の位相関係は、それらを分解し、再組み立てしても不変である。クランクシャフトを組み立てる前に、円形摺動ブロックを都合よくクランクピンに挿入できる。従って、そのような組み合わせで形成されるクランクシャフトにより、内燃機関またはコンプレッサを非常に容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1−1】本発明の第1の実施の形態のモジュール式クランクシャフトの単連の正面図である。
【図1−2】本発明の第1の実施の形態のモジュール式クランクシャフトの単連の右側面図である。
【図1−3】本発明の第1の実施の形態のモジュール式クランクシャフトのクランクの正面図である。
【図1−4】本発明の第1の実施の形態のモジュール式クランクシャフトのクランクの左側面図である。
【図1−5】クランクシャフトを組合せた後の、本発明の第1の実施の形態のモジュール式クランクシャフトの正面図である。
【図2−1】本発明の第2の実施の形態のモジュール式クランクシャフトの単連の正面図である。
【図2−2】本発明の第2の実施の形態のモジュール式クランクシャフトのクランクの正面図である。
【図2−3】クランクシャフトを組合せた後の、本発明の第2の実施の形態のモジュール式クランクシャフトの正面図である。
【図3−1】本発明の第3の実施の形態のモジュール式クランクシャフトの単連の正面図である。
【図3−2】本発明の第3の実施の形態のモジュール式クランクシャフトの単連の右側面図である。
【図3−3】本発明の第3の実施の形態のモジュール式クランクシャフトのクランクの正面図である。
【図3−4】本発明の第3の実施の形態のモジュール式クランクシャフトのクランクの左側面図である。
【図3−5】クランクシャフトを組合せた後の、本発明の第3の実施の形態のモジュール式クランクシャフトの正面図である。
【図4−1】本発明の第4の実施の形態のモジュール式クランクシャフトの二連の正面図である。
【図4−2】本発明の第4の実施の形態のモジュール式クランクシャフトの二連の左側面図である。
【図4−3】本発明の第4の実施の形態のモジュール式クランクシャフトの単連の正面図である。
【図4−4】本発明の第4の実施の形態のモジュール式クランクシャフトの単連の右側面図である。
【図4−5】本発明の第4の実施の形態のモジュール式クランクシャフトのクランクの正面図である。
【図4−6】本発明の第4の実施の形態のモジュール式クランクシャフトのクランクの左側面図である。
【図4−7】クランクシャフトを組合せた後の、本発明の第4の実施の形態のモジュール式クランクシャフトの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の第1の実施の形態は、小型2ストローク単気筒エンジンのモジュール式クランクシャフトを提供する。モジュール式クランクシャフトは単連と、それと組合せるクランクとを含み、それらを組み合わせて完全なクランクシャフトを形成する。図1はこのモジュール式クランクシャフトを示し、図1−1はモジュール式クランクシャフトの単連の正面図であり、図1−2は図1−1に示す単連の右側面図であり、図1−3はモジュール式クランクシャフトのクランクの正面図であり、図1−4はモジュール式クランクシャフトのクランクの左側面図であり、図1−5は組合せ後のモジュール式クランクシャフトの正面図である。
【0038】
ここで図1−1を参照すると、モジュール式クランクシャフトの単連は、互いに平行で以下の順序で接続された軸を有する3つの部分を備える。即ち、単連メインジャーナル5と、第1クランクアーム22と、クランクピン21とである。3つの部分は全て円筒形で、互いに異なる径を有する。
【0039】
単連メインジャーナル5は、単連の一端に位置している。単連メインジャーナル5は、クランクメインジャーナル13と共に、モジュール式クランクシャフトの回転軸心を提供するようにモジュール式クランクシャフトを支持している。図1−2に示すように、単連メインジャーナル5の外端面にはフライホイールまたは他の動力出力接続部品(図示せず)を取り付けるいくつかのねじ孔12がある。単連メインジャーナル5の外端面は、クランクピン21から離れた方のメインジャーナル5の端面であり、作動中、クランクシャフトの外側の端面となる。
【0040】
第1クランクアーム22は単連メインジャーナル5と同軸であり、単連メインジャーナル5より少し大きい径を有する。加えて、単連メインジャーナル5の外端面の方向の突起部に環状溝を設ける。環状溝の外部切り込みは内向きに傾斜させる。環状溝をオイルスリンガ4と称する。
【0041】
クランクピン21は、単連メインジャーナル5より小さい径を持つ円筒で、第1クランクアーム22の外端面から垂直に延長している。クランクピン21の軸は、単連メインジャーナル5と第1クランクアーム22の共通軸について一方に偏っている。クランクピン21の外周には、3つの歯を含む歯状部分7が設けられている。突起部20は、歯状部分7と180度の角をなす位置に設ける。クランクピン21の前端部は、テーパー端部9となっている。テーパー端部9の前端面の中心には、細かいねじ山を有する中央孔11を軸方向に設ける。テーパー端部9の前端面から、テーパー方向に延長した2つの第1位置決め半孔10−1を、テーパー端部9の外周面に沿って設ける。第1位置決め半孔10−1は更に、テーパー端部9の大径端から始めて、その円周面に沿ってテーパー方向に延長することもできる。第1位置決め半孔10−1は、クランクに設けられた第2の位置決め半孔と組合せて、完全な位置決めピン孔を形成する。クランクピン21のピン本体の内側に、油路6を設ける。油路6の一端は、オイルスリンガ4の底溝に開口し、その他端はクランクピン21の表面のオイル開口部8に開口している。
【0042】
ここで図1−3を参照すると、クランクは、クランクメインジャーナル13と第2クランクアーム18という、軸方向に直線で接続された2つの部分からなる。軸位置が、クランクメインジャーナル13の軸から偏った側に、クランクピン21のテーパー端部9のテーパーと適合するテーパー孔15を設ける。クランクピン21から離れた方向のクランクメインジャーナル13の外端面には、クランクボルト取り付けスペース14を設ける。このスペースは、平坦面(図示せず)によりテーパー孔15の小端部上に設ける。クランクボルト17を中央孔11にねじ止めすると、この平坦面を押圧して押圧力をもたらす。このスペースには内孔円形ストップ切り込み(図示せず)も設け、磁気シャフトを取り付ける時にそれを位置決めする。端面には、磁気シャフトを固定するねじ孔3も設けている。(第2位置決め半孔10−2と適合する第1位置決め半孔10−1が、テーパー端部9の小径端から始まると想定して)、テーパー孔15のテーパー方向の小径端面から、テーパー孔15の内径面に2つの第2位置決め半孔10−2を設ける。第2位置決め半孔10−2は、クランクピンのテーパー端部9の第1位置決め半孔10−1と組み合わせると、完全な円形孔(位置決めピン孔と称する)を形成する。更に、強度と剛性要件を満たせば、クランクには軽減孔2をいくつか設けることもできる。
【0043】
上述のクランクと単連を組合せると、モジュール式クランクシャフトを形成できる。まず、円形摺動ブロックをクランクピン21に嵌合するように配置し、クランクシャフトガスケットを使用して軸方向のクリアランスを調整する。次に、テーパー孔15をクランクピン21のテーパー端部9に適合させてクランクをクランクピンに挿入し、互いに対称的に係合する第1位置決め半孔10−1と第2位置決め半孔10−2が完全な円形位置決めピン孔を形成するように、回転させることにより調整する。円形位置決めピン孔は、テーパー端部9の小径端側に開口部を有する。2本の位置決めピンのビームを、開口部から位置決めピン孔に挿入して、角度関係にあるクランクと単連の位置決めする。クランクピンのテーパー端部9の第1位置決め半孔10−1が大径端から始まる場合は、組合せ後の位置決めピン孔の開口部が大径端面にあり、位置決めピンのビームをこの開口部を通して位置決めピン孔に挿入できるように、第2位置決め半孔10−2をテーパー孔15の大径端面から始める。最後に、クランクボルト17を中央孔11に螺合する。クランクシャフトとクランクは事前締め付け力により押圧される。このようにして、完全なクランク・円形摺動ブロック組立体が形成される。
【0044】
モジュール式クランクシャフトのいくつかの技術的特徴を以下に述べる。
【0045】
モジュール式クランクシャフトの組立て後、モジュール式クランクシャフトが正常に作動するように、クランクメインジャーナル13の軸が単連メインジャーナル5の軸と一致し、クランクピンの軸がメインジャーナルの軸と平行になるようにする必要がある。ここで、第1位置決め半孔10−1と第2位置決め半孔10−2の2つの組み合わせにより、クランクと単連との正確な位置決めが可能となり、位置決めピンの挿入後、上述の幾何学的関係を確保できる。更に、位置決めピンのビームが2つの位置決め半孔を接続する上記の構造は、部分的作用力を伝達する役割も果たす。本実施の形態では、第1位置決め半孔10−1と第2位置決め半孔10−2は2つの対からなる。この数字は非常に合理的である。実際に、互いに適合する第1位置決め半孔10−1と第2位置決め半孔10−2の1つだけの対でも、本質的な位置決め機能を果たすことができる。しかし、第1位置決め半孔10−1と第2位置決め半孔10−2の2つの対が互いに適合する本実施の形態と比較すると、位置決めピン孔と位置決めピン間の嵌合許容値の限界ゆえに位置決め精度は低く、作用力を伝達する効果はわずかに低くなる。
【0046】
ここで位置決め半孔の構造を、第1位置決め半孔10−1を例にとって、詳細に説明する。第1位置決め半孔10−1は単連のクランクピン21の外円錐面をテーパー方向に延長したくぼみであり、クランクピン21の軸に垂直に切ったその断面は円形の一部となる。それは半円とすることができるが、クランクのテーパー孔15の内径面上の対応する第2位置決め半孔10−2と適合して、断面が完全な円筒孔を形成する限り、半円より大きくあるいは小さくすることもできる。位置決め半孔は、単連クランクピンのテーパー端部9をクランクのテーパー孔15と嵌合させ、その間の共通部分を穿孔することで得られる。勿論、別のミリング工程もあり得る。一般に、第1位置決め半孔10−1と第2位置決め半孔10−2は円錐面に沿ったある距離だけ延長し、円錐の他の端面に到達することはない。従って、位置決め半孔は止まり穴である。
【0047】
モジュール式クランクシャフトでは、クランクピン21のテーパー面9のテーパーとテーパー孔15のテーパーは小さく、自己係止範囲内にある。従って、クランクボルト17が緩くなっても、運動中はクランクピン21とクランクが緩くなることはない。
【0048】
オイルスリンガ4は、モジュール式クランクシャフト用に特別に設計したものである。オイルミストがエンジンのシリンダーブロックに存在する。オイルスリンガが高速で回転すると、オイルが遠心力の作用によりオイルスリンガの溝に蓄積し、油路6とオイル開口部8を通って、円形摺動ブロックベアリングがクランクピン21と接触する位置まで流れ、モジュール式クランクシャフトの潤滑油となる。
【0049】
歯状部分7は、単気筒エンジンに用いられるモジュール式クランクシャフト用に特別に設計したものである。歯状部分7の目的は、活動点の問題を解消するためである。歯状部分7はピストンの内部歯状部分と、2対1のギア比で協働する。ピストンが動くと、モジュール式クランクシャフトは、2つの歯状部分の周期的な協働により、活動点を通過するように突かれる。歯状部分7に対応して突起部20が設けられている。突起部20は取り付け完了後に歯状部分7と協働して、クランクシャフトガスケットが、クランクに直面する突起部20の端面に安定して当接して、運動中のクランクシャフトガスケットの応力状態を向上する。
【0050】
本発明の第2の実施の形態は、3気筒エアコンプレッサに使用されるモジュール式クランクシャフトを提供する。モジュール式クランクシャフトは単連と、単連と組合せるクランクとからなり、その両方を一体に組み合わせて完全なクランクシャフトを形成する。図2はこのモジュール式クランクシャフトを例示したもので、図2−1はモジュール式クランクシャフトの単連の正面図、図2−2はモジュール式クランクシャフトのクランクの正面図、図2−3は組合せ後のモジュール式クランクシャフトの正面図である。
【0051】
ここで図2−1を参照すると、モジュール式クランクシャフトの単連は、互いに平行な軸を持ち、以下の順序で接続された3つの部分からなる。即ち、単連メインジャーナル28と、第1クランクアーム29と、クランクピン31である。単連の構造は実質的に上述の第1の実施の形態と同じであるが、それらの間の相違のみを以下に述べる。
【0052】
図2−1に示すように、減摩ボス30と称する円形ボスを、単連の第1クランクアーム29がクランクピン31の根元に接触する部分に設ける。減摩ボス30は、クランクピン31の根元の周囲に配置する。減摩ボス30は、クランクシャフトガスケットと協働して摩擦を低減するため、精密加工と熱処理を行う。従って、クランクアーム面全体を加工したり処理する必要がなく、製造コストを低減できる。図2−1に更に示すように、クランクピン31上に歯状部分は設けていない。これは、このクランクシャフトが活動点の問題なしに、多気筒機関に使用されるからである。更に単連に、オイルスリンガがない。
【0053】
単連の中央孔35の底部に、メイン油路36を軸方向に設ける。メインジャーナル28とクランクピン31の外周面につながるいくつかのオイル開口部32をメイン油路36と連通し、様々なベアリングに潤滑油を供給できるようにしている。
【0054】
単連と直面するモジュール式クランクシャフトのクランクにも、減摩ボス27を設ける。
【0055】
モジュール式クランクシャフトの組合せ方法は、第1の実施の形態と同じである。3気筒エアコンプレッサにモジュール式クランクシャフトを使用しているので、2つの円形摺動ブロックをクランクピンに取り付ける必要がある。
【0056】
本発明の第3の実施の形態は、2.0リットルの排気量を持つガソリンエンジンに使用されるモジュール式クランクシャフトを提供する。このモジュール式クランクシャフトも、単連と、この単連と組合されるクランクとを有し、その両方は一体になって完全なクランクシャフトを形成する。図3はそのようなモジュール式クランクシャフトを例示し、図3−1はモジュール式クランクシャフトの単連の正面図、図3−2は図3−1に示す単連の右側面図、図3−3はモジュール式クランクシャフトのクランクの正面図、図3−4はモジュール式クランクシャフトのクランクの左側面図、図3−5は組合せ後のモジュール式クランクシャフトの正面図である。本実施の形態は実質的に第1の実施の形態と同じであるが、それらの間の相違のみを以下に述べる。
【0057】
上記の第1、第2の実施の形態では、単連メインジャーナルの軸は、第1クランクアームの軸と一致するが、クランクピンの軸は、クランクメインジャーナルと単連メインジャーナルにより決まるクランクシャフト回転軸と同軸ではない。この構成では、モジュール式クランクシャフトが回転すると、クランクピンが遠心力を出して、メインジャーナルを支持しているベアリングの応力が周期的に変化し、寿命に影響を与える。この問題に鑑みて、本実施の形態では、クランクアームをクランクシャフトの回転軸に対して偏心構造として構成する。図3−1に示すように、モジュール式クランクシャフトの単連も、単連メインジャーナル39と、第1クランクアーム42と、クランクピン46とからなるが、第1クランクアーム42のM−M軸は単連メインジャーナル39のL−L軸(即ち、クランクシャフト回転軸)と一致せず、クランクピンのN−N軸から離れた側に位置する。理想的には、上記の3つの軸は、同一平面上にあり、互いに平行である。クランクピン46の軸と第1クランクアーム42の軸はそれぞれ、単連メインジャーナル39の軸の両側に位置している。図3−2から、第1クランクアーム42と単連メインジャーナル39間の偏心関係が分かる。
【0058】
同様に、モジュール式クランクシャフトのクランクメインジャーナルと第2クランクアームの軸も、上記の位置関係を有している。
【0059】
上記の偏心構造の利点は、モジュール式クランクシャフトが回転するときに、クランクメインジャーナルの主軸と単連メインジャーナルの主軸により共通に形成されたクランクシャフト回転軸について回転するということで、第1と第2クランクアームの回転重心と、クランクピンの回転重心が、クランクシャフト回転軸の異なる側に位置する。第1クランクアームと第2クランクアームにより生成される遠心力は、クランクピンにより生成される遠心力を相殺し、クランクシャフトメインジャーナルと単連メインジャーナルを支持するベアリングに対する応力の周期的な変動振幅を低減できる。これはエンジンの寿命の伸展に有益である。
【0060】
第3の実施の形態では、単連メインジャーナル39に環状溝を設けてオイル溝40としていることが分かる。一方で、オイル溝40をメイン油路44と連通するオイル開口部41が設けられる。この構造を通して、潤滑油をオイル溝40からメイン油路44に供給できる。それに加えて、クランクピン46の前端部の円錐部48の表面をメイン油路44と連通する傾斜オイル開口部47が円錐部48上に設けられている。クランク上には、クランクメインジャーナル52の表面とテーパー孔59の内径面とを連通するオイル開口部60が設けられている。図3−5に示すように、組み立てが完了すると、傾斜オイル開口部47はオイル開口部60と協働してオイルをクランクメインジャーナル52のベアリングに供給する。
【0061】
上記の3つの実施の形態では、全てのモジュール式クランクシャフトは単連とクランクの組み合わせで形成している。しかし、エンジンまたはコンプレッサの出力が増加すると、2つのメインジャーナルを使用してクランクシャフトを支持していると、エンジンは正常に作動しなくなる。この状況では、複数のメインジャーナルを有するモジュール式クランクシャフトが必要になる。この状況下では、単連、二連、クランクにより形成されたモジュール式クランクシャフトを使用する必要がある。本発明の第4の実施の形態はそのようなモジュール式クランクシャフトを提供する。
【0062】
図4は、600KWの出力を持つ2ストロークディーゼルエンジンに使用されるモジュール式クランクシャフトを示す。そのようなモジュール式クランクシャフトは二連、2つのクランク単連及び2つのクランクの組み合わせにより形成される四連クランクシャフトである。図4−1はモジュール式クランクシャフトの二連の正面図、図4−2はモジュール式クランクシャフトの二連の左側面図、図4−3はモジュール式クランクシャフトのクランク単連の正面図、図4−4はモジュール式クランクシャフトのクランク単連の右側面図、図4−5はモジュール式クランクシャフトのクランクの正面図、図4−5はモジュール式クランクシャフトのクランクの左側面図、図4−6はクランクシャフトの組み合わせの完了後のモジュール式クランクシャフトの概略図である。
【0063】
ここで、モジュール式クランクシャフトの二連101の正面図である図4−1を参照する。二連101は第1クランクピン64、二連メインジャーナル70と第2クランクピン72からなる。専用クランクアームはなく、二連メインジャーナル70がクランクアームの機能を行う。クランクアームがないこの構成は上記の第1から第3の実施の形態の状況に実際に適用でき、第1クランクピン64と第2クランクピン72をそれぞれ、メインジャーナル70の左右の端面から垂直に延長させる。第1クランクピン64と第2クランクピン72の両径は、二連メインジャーナル70の径よりも小さい。更に、図4−2に示すように、第1クランクピン64と第2クランクピン72の軸心はそれぞれ、90度の角度を形成するメインジャーナル70の2つの径上に位置している。それに加えて、それらの軸心とメインジャーナル70の軸心の間のそれぞれの距離は互いに等しく、第1クランクピン64と第2クランクピン72の外縁は、二連メインジャーナル70の円周内にある。実際には、第1クランクピン64と第2クランクピン72及びメインジャーナル70間の幾何学的関係は、必要に応じて本実施の形態のものと違っていてもよい。例えば、2つの軸心からメインジャーナル70の軸に対して接続している線分は、その間で0から180度の範囲で変化させることができる。テーパー端部61を第1クランクピン64の前端部に設け、テーパー端部76を第2クランクピン72の前端部に設ける。第1減摩ボス67を、第1クランクピン64の根元が二連メインジャーナル70の端面と連結する位置に設ける。第2減摩ボス71は、第2クランクピン72の根元が二連メインジャーナル70の端面と連結する位置に設ける。第1減摩ボス67と第2減摩ボス71の構成と機能は、第2と第3の実施の形態と同様である。環状溝をメインジャーナル70の外周面の軸方向中心位置に設け、オイル溝69とする。オイル溝69は第1クランクピン64の第1メイン油路66及び第2クランクピン72の第2メイン油路74と連通し、二連メインジャーナルのベアリングに潤滑油を供給する。第1メイン油路66と第2メイン油路74はそれぞれ、第1クランクピン64と第2クランクピン72の軸に沿って設けられて、エンジンの様々な円形摺動ブロックの取り付け位置につながる第1クランクピンオイル開口部65と第2クランクピンオイル開口部73とそれぞれ連通する。それに加えて、第1から第3の実施の形態のように、二つの位置決め半孔62,75をそれぞれ、2つのクランクピンのテーパー端部の外周面に設ける。第1の位置決め半孔は、クランクないしクランク単連に設けられた第2の位置決め半孔と組合せて、完全な位置決めピン孔を形成する。クランクボルトと協働する中心孔63,77を設ける。
【0064】
図4−3は、モジュール式クランクシャフトのクランク単連の概略図を示す。このクランク単連と上記の第1から第3の実施の形態のものとの違いは、組み合わせた時にこのクランク単連のクランク単連メインジャーナル86の端面を、二連のクランクピンのテーパー端部と適合させる必要があるという点である。即ち、クランク単連メインジャーナル86はクランクとしての働きもする。このため、テーパー孔88をクランク単連メインジャーナル86の端面に設ける。第2位置決め半孔89はテーパー孔88の内径面に設けられる。ボルト取り付けスペース87などの他の対応する構造も設ける。第2位置決め半穴孔89は二連のクランクピンの第1の位置決め半孔62又は75に対応して、完全な位置決めピン孔を形成する。テーパー孔88は二連のクランクピンの前端部のテーパー端部に対応する。この構成によりクランク単連は二連のクランクピンと適合する。図4−4はクランク単連の右側面図であり、テーパー孔88とクランクピン82の位置関係を示す。テーパー孔88とクランクピン82は、クランク単連メインジャーナル86の軸の両側に位置していて180度の角度を形成している。テーパー孔88とクランクピン82の軸とメインジャーナルの軸の間の距離は等しい。このクランク単連の他の構造は、上記の第1から第3の実施の形態のものと同じである。クランクアームは設けていないが、ここではその詳細な説明を省く。
【0065】
図4−5はこのモジュール式クランクシャフトのクランクの構造を示す。このクランクは、組み合わせた際にクランク単連のクランクピンと適合する。このクランクは専用クランクアームを設けていない。他の部分は、クランク単連のクランクピンのテーパーと協働するテーパー孔94と、クランク単連のクランクピンの対応する第1の位置決め半孔と適合する2つの第2位置決め半孔95と、クランクボルト取り付けスペース90とを含め、本発明の第1の実施の形態で設けられたクランクのものと同じである。図4−6もクランクの外端面に、いくつかのねじ穴96を設けて動力出力軸を接続することを示している。
【0066】
ここで図4−7を参照すると、一体に組み合わせた後のモジュール式クランクシャフトの様々な部分を示している。二連101は、モジュール式クランクシャフトの中間位置に接続されている。二連101の第1クランクピン100は第1クランク単連98のクランク単連メインジャーナルと協働し、二連101の第2クランクピン102は第2クランク単連103のクランク単連メインジャーナルと協働する。第1クランク単連98のクランクピンは第1クランク97と適合し、第2クランク単連103のクランクピンは第2クランク104と適合する。
【0067】
上記の協働関係で、二連101の2つのクランクピンの間の角度関係は、二連101自身の設計により決定される。クランクピンとクランク単連間の角度関係は、二連101とクランク単連メインジャーナルの2つのクランクピン間の、対応する第1位置決め半孔と第2位置決め半孔の組み合わせにより形成される完全な位置決めピン孔に位置決めピンを挿入することで決定される。同様に、第1クランク単連98のクランクピンと第1クランク97では、対応する第1位置決め半孔と第2位置決め半孔の組み合わせにより形成される完全な位置決めピン孔に位置決めピンを挿入することで位置決めされ、第2クランク単連103のクランクピンと第2クランク104の間でも位置決めが上記のようになされる。それらの部品を一体に組み合わせた後、それらの部品を固定するクランクボルトが更に必要となる。最終的に形成されたモジュール式クランクシャフトの様々なメインジャーナルの軸は、同一直線上にある。様々なクランクピンは間隙を介して互いに一定の角度を形成し、即ちいくつかの連があるように見える。最終的なモジュール式クランクシャフトは4連クランクシャフトである。それぞれのクランクピンは、円形摺動ブロックを備えている。
【0068】
上記の第4の実施の形態は、二連と、クランク単連と、クランクの柔軟な組み合わせにより形成されるモジュール式クランクシャフトの一例を提供している。その主要な特徴は、二連のクランクピンのテーパー面と適合するテーパー孔ならびに対応する位置決めピン孔がクランク単連のメインジャーナル上に設けて、クランク単連が同時にクランクとしての役割をするということにある。実際には、二連、クランク単連、単連及びクランクの組み合わせ態様は非常に柔軟性がある。上記の実施の形態による教示によれば、上記部品の様々な組み合わせができ、様々なモジュール式クランクシャフトを達成できる。
【0069】
上述の実施の形態のいずれにおいても、クランクピンとクランク間、あるいは二連のクランクピンと対応するクランク単連メインジャーナル間の角嵌合関係は全て、互いに適合する位置決め半孔の位置決めピンを接続することで確保される。従って、同部品により、組み合わせ過程において、設計要件に合致するクランクシャフトを都合よく形成できる。互いに対応する位置決め半孔は、技術的に穿孔を適合することで得られる。上述の実施の形態では、それぞれのクランクとクランクピンは、互いに適合して2つの位置決めピン孔を形成する2対の位置決め半孔を備えている。位置決めピン孔のこの数は、最適設計の組み合わせである。実際には、2対以上の位置決め半孔を必要に応じて設けて2本以上の位置決めピン孔を形成できるが、これも十分な位置決め効果をもたらす。1対の位置決め半孔だけを使って1本の位置決めピン孔を形成しても、位置決め機能を果たすことができる。しかし、この場合、位置決め精度が幾分低くなり、需要の低い応用品だけに適用される。
【0070】
加えて、上記の位置決め半孔をクランクピンのテーパー端部のテーパー方向あるいはクランクのテーパー孔のテーパー方向と平行に設けることが好ましい。この構成により処理が容易になる。しかし、第1位置決め半孔と対応する第2位置決め半孔が完全な位置決めピン孔を形成でき、位置決めピンを適切に挿入して、クランク、クランクピンなどの相対的位置関係の位置決めができるならば、クランクとクランクピンの軸と平行あるいは他の方向に設けることができる。互いに適合する2つの位置決め半孔はそれぞれ、必ずしも位置決めピン孔のちょうど半分とする必要はない。
【0071】
上記の様々なモジュール式クランクシャフトを内燃機関またはコンプレッサに適用すると、モジュール式クランクシャフトを使用した内燃機関またはコンプレッサを得ることができる。
【0072】
上記は本発明の実施の形態を述べただけのものであり、当業者は本発明の原理を逸脱しない範囲で様々な変更や変形をすることは明らかであろう。従って、それらも本発明の保護の範囲内に入るものとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単連と称する、内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品であって、
単連メインジャーナルと、クランクピンとの2つの部分を備え、
前記クランクピンは、前記単連メインジャーナルに対して垂直に延長し、
前記クランクピンの軸は、前記単連メインジャーナルの軸に関して偏り、
更に前記クランクピンは、テーパー化した前端部と、その小径端部または大径端部から始めて、テーパー端部の円錐面に設けた少なくとも一つの第1の位置決め半孔を有し、前記第1の位置決め半孔をクランク上の第2の位置決め半孔と適合して完全な位置決めピン孔を形成する、内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項2】
前記第1の位置決め半孔をテーパー方向に沿って設けた、請求項1記載の内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項3】
前記第1の位置決め半孔が2つある、請求項1記載の内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項4】
フライホイールまたは他の動力出力接続構成部品を取り付ける構造を、前記単連メインジャーナルの外端面に設けた、請求項1記載の内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項5】
前記単連メインジャーナルと前記クランクピンの間に第1クランクアームを設けて、それらを接続した、請求項1記載の内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項6】
前記第1クランクアームは前記単連メインジャーナルと同軸で、前記単連メインジャーナルよりもわずかに大きい径を有し、前記単連メインジャーナルの外端面の方向に設けた突起部にオイルスリンガと称する環状溝を設け、前記環状溝の切り込みは逃げ溝であり、前記環状溝の底に、前記クランクピンの内部からクランクピンの表面のオイル開口部に延長した油路を設けた、請求項5記載の内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項7】
前記第1クランクアームの軸を、前記単連メインジャーナルの軸と一致させた、請求項5記載の内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項8】
前記第1クランクアームの軸を前記単連メインジャーナルのものに対して偏心させ、前記クランクピンの軸から離れた位置に設けた、請求項5記載の内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項9】
前記クランクシャフトを単気筒エンジンに使用する際、少なくとも2つの歯を含む歯状部分を前記クランクピン上に設け、前記歯状部分はピストン上の対応する内部歯状部分と適合し、前記クランクピン上に前記歯状部分と対称で、かつ歯状部分と180度の角度の位置に突起部を設けた、請求項1記載の内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項10】
前記クランクピンの根元部分の周囲に減摩ボスを設けた、請求項1記載の内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項11】
クランクボルトと適合するねじ穴を、前記クランクピンのテーパー端部の前端面の中心に設けた、請求項1記載の内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項12】
前記クランクピンのテーパー端部のテーパーは、自己係止するテーパー幅からなる、請求項1記載の内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項13】
クランクと称する、内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品であって、
クランクメインジャーナルを備え、
クランクピンのテーパー端部と適合するテーパー孔を前記クランクメインジャーナルに設け、
前記テーパー孔の軸は前記クランクメインジャーナルの軸と平行で、前記クランクメインジャーナルの軸に対して偏り、
単連上の協働する第1の位置決め半孔に対応して適合する第2の位置決め半孔を、小径端面ないし大径端面から始めて、前記テーパー孔の内径面に設け、
前記第2の位置決め半孔により、前記単連を前記部品と組み合せた後に完全な位置決めピン孔を形成する、内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項14】
前記クランクを、第2クランクアームと共にクランクピンに面する内部端面に設けた、請求項13記載の内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項15】
クランクボルト取り付けスペースをクランク上に設け、取り付けの際は、前記クランクと前記クランクピンを互いに嵌挿した後にクランクボルトを用いて固定する、請求項13記載の内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項16】
フライホイールを取り付ける構成または他の動力出力接続構成部品を前記クランクの外端面に設けた、請求項13記載の内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項17】
いくつかの軽減孔を前記クランクに設けた、請求項13記載の内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項18】
減摩ボスを、前記クランクピンと前記クランクの間の接触位置を中心として前記クランクの内端面に設けた、請求項13記載の内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項19】
単連と、互いに適合したクランクとからなる内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフトであって、前記単連は前掲請求項1〜12のいずれかの単連であり、クランクは前掲請求項13〜18のいずれかのクランクであり、クランクシャフトを組み立てる際、クランクはクランクのテーパー孔を使用して単連のクランクピンの前端部のテーパー端部に嵌挿し、位置決めピンを、第1の位置決め半孔と、互いに対応する第2の位置決め半孔を組み合わせることで形成される対応するピン孔に挿入し、クランクメインジャーナルの軸が単連メインジャーナルの軸と一致し、クランクピンの中心線と平行になるようにした、内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト。
【請求項20】
二連と称する、内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品であって、
第1クランクピンと、二連メインジャーナルと、第2クランクピンとを備え、
前記第1クランクピンと第2クランクピンがそれぞれ、前記二連メインジャーナルの左右の端面から垂直に延長し、
前記第1クランクピンと第2クランクピンの前端部の両方をテーパー端部とし、
少なくとも一つの第1位置決め半孔を前記第1クランクピンと第2クランクピンの円周上にそれぞれ設け、
前記第1位置決め半孔はクランクまたはクランク単連上の対応する第2位置決め半孔と適合して完全な位置決めピン孔を形成し、
2つの前記クランクピンの軸からメインジャーナルの軸への垂直距離が等しい、内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項21】
前記第1クランクピンと第2クランクピンの径の両方が前記二連メインジャーナルの径よりも小さく、前記第1クランクピンの軸心と前記二連メインジャーナルの軸心とをつなぐ線と、前記第2クランクピンの軸心と前記二連メインジャーナルの軸心とをつなぐ線との間に0から180度の角度がある、請求項20記載の内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項22】
クランク単連と称する、内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品であって、
クランク単連メインジャーナルと、クランクピンとの2つの部分を備え、
前記クランクピンは前記クランク単連メインジャーナルに対して垂直に延長し、前記クランク単連メインジャーナルの軸から偏った軸を有し、
前記クランクピンは更にテーパー化した前端部と、テーパー端部の円周上に設けた少なくとも一つの第1位置決め半孔を有し、
第1位置決め半孔はクランクまたはクランク単連上の対応する第2位置決め半孔と適合して完全な位置決めピン孔を形成し、
前記クランクピンから離れた側に面する前記クランク単連メインジャーナルの端面にテーパー孔を設け、
テーパー孔の内径面に少なくとも一つの第2位置決め半孔を設け、
テーパー孔の軸からクランク単連メインジャーナルの軸への距離は、クランクピンの軸からクランク単連メインジャーナルの軸への距離に等しく、
第2位置決め半孔は単連または二連クランクシャフトのクランクピン上の対応する第1位置決め半孔と適合して完全な位置決めピン孔を形成することを特徴とする、内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト用部品。
【請求項23】
少なくとも請求項20または21の二連と、それと適合するクランクからなることを特徴とする、内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト。
【請求項24】
請求項20または21の少なくとも一つの二連と、請求項22の一つのクランク単連と、クランク単連または二連のクランクピンと適合するクランクとからなる、内燃機関またはコンプレッサに用いるクランクシャフト。
【請求項25】
請求項19,23または24のいずれかのクランクシャフトを使用した内燃機関。
【請求項26】
請求項19,23または24のいずれかのクランクシャフトを使用したコンプレッサ。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図1−3】
image rotate

【図1−4】
image rotate

【図1−5】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図2−3】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate

【図3−3】
image rotate

【図3−4】
image rotate

【図3−5】
image rotate

【図4−1】
image rotate

【図4−2】
image rotate

【図4−3】
image rotate

【図4−4】
image rotate

【図4−5】
image rotate

【図4−6】
image rotate

【図4−7】
image rotate


【公表番号】特表2012−508351(P2012−508351A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534988(P2011−534988)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【国際出願番号】PCT/CN2009/073259
【国際公開番号】WO2010/051708
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(511095702)北京中清能発動機技術有限公司 (1)
【氏名又は名称原語表記】Beijing Sinocep Engine Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】JingXueYing Building, ChengFuBeiHeYan 5, Haidian District, Beijing 100084, CHINA
【Fターム(参考)】