説明

クランプ具

【課題】基部のクリップ部と対応する部分を確実に把持することができて、パネルへの取り付け作業を効率的に行うことができるクランプ具を提供する。
【解決手段】クランプ具1Aを、ケーブル等Aを着脱可能に保持する本体部2と、該本体部2の下面より下向きに形成されたクリップ部3と、本体部2の下面よりクリップ部3の側方部分に張り出された保持部4とから構成する。本体部2は、クリップ部3及び保持部4が一体に形成される基部11と、該基部11の一端部の上面側に形成された係止受け部12と、基部11の他端部から上向きに形成された帯状部14と、該帯状部14の先端部に形成され、係止受け部12に着脱可能に係止されるスナップ部15とから構成する。基部11の側辺のクリップ部3と対応する部分に、指掛け用の凹部16を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル類やチューブ類等の長尺物(以下、本明細書では、これらの長尺物を総称して「ケーブル等」という。)を所要のパネルに沿って固定するプラスチック製のクランプ具に関する。
【背景技術】
【0002】
図13に、従来知られているこの種のクランプ具の一例を示す。この図から明らかなように、本例のクランプ具100は、ケーブル等Aを着脱可能に保持する本体部110と、本体部110の下面中央部より下向きに形成された矢じり型のクリップ部120と、本体部110の下面よりクリップ部120の側方部分に張り出された保持部130とから構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
本体部110は、クリップ部120及び保持部130が一体形成された基部111と、基部111の一端部の上面側に形成された係止受け部112と、基部111の他端部から上向きに延出され、所要の部分に薄肉のヒンジ部113が形成された帯状部114と、帯状部114の先端部に形成されたスナップ部115とを有する。従って、帯状部114をヒンジ部113で折り曲げて、係止受け部112の内面に形成された係止爪116にスナップ部115の外面に形成された係止爪117を係合することによって、閉じたループが形成され、その内部空間内に挿通されたケーブル等Aを安定に保持することができる。なお、係止爪116と係止爪117との係合は、帯状部114に対してスナップ部115を弾性的に変形させることによって解除でき、これによりケーブル等Aの取り外しが可能になる。
【0004】
パネルへのクランプ具100の固定は、係止爪116と係止爪117とが係合されていない状態(図13の状態)で作業員が基部111を把持し、パネルに開設された貫通孔内にクリップ部120を押し込み、パネルの表裏面にそれぞれクリップ部120の先端部と保持板130の先端部を弾接させることによって行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−325379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図13に示した従来のクランプ具100には、パネルへの取り付け作業時に、作業員が基部111の最適位置を把持できるようにする工夫が何も施されていないので、パネルへの取り付ける時に基部111に加えた力がクリップ部120に効率よく伝わらず、パネルへの取り付け作業を効率的に行いにくいという問題がある。
【0007】
即ち、パネルに開設される貫通孔は、直径(長孔又は楕円孔の場合は、長径)がクリップ部120の最大幅wよりも小さく形成されているので、パネルにクランプ具100を固定するためには、貫通孔内にクリップ部120を押し込むことによってクリップ部120を内向きに弾性変形させ、クリップ部120の最大幅部分をパネルの裏面側まで貫通させる必要がある。従って、パネルへのクランプ具100の取り付け作業中に基部111の中央部を確実に把持できないと、貫通孔内へのクリップ部120の押し込み時に基部111に加えた力がクリップ部120に効率良く伝わらず、クリップ部120を確実に弾性変形させることができなくなって、作業効率が低下する。このような問題は、基部111が長大であるために、基部111の中央部から外れた部分を把持しやすい大型のクランプ具ほど顕著になる。作業員は1日当たり数百個〜千数百個ものクランプ具100の取り付け作業を行うので、貫通孔内へのクリップ部120の押し込み作業を容易化することは、作業員の疲労を緩和する上でも、また製品コストの削減を図る上でも重要である。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基部のクリップ部と対応する部分を確実に把持することができて、パネルへの取り付け作業を効率的に行うことができるクランプ具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するため、ケーブル等を着脱可能に保持する本体部と、該本体部の下面より下向きに形成されたクリップ部と、前記本体部の下面より前記クリップ部の側方部分に張り出された保持部とを備えたクランプ具において、前記本体部は、前記クリップ部及び前記保持部が一体に形成される基部と、該基部の一端部の上面側に形成された係止受け部と、前記基部の他端部から上向きに形成された帯状部と、該帯状部の先端部に形成され、前記係止受け部に着脱可能に係止されるスナップ部とを有し、前記基部の側辺の前記クリップ部と対応する部分に、指掛け用の凹部を形成したことを特徴とする。
【0010】
パネルに対するクランプ具の取り付け作業は、作業テーブル上に置かれた多数のクランプ具の中からクランプ具を1つずつ摘み上げ、摘み上げたクランプ具のスナップ部をパネルに開設された貫通孔に合致させた後、本体部の基部に下向きの力を加えて、クリップ部を貫通孔内に差し込むことにより行われる。上記構成によると、基部の側辺のクリップ部と対応する部分に指掛け用の凹部を形成したので、多数のクランプ具の中から1つのクランプ具を摘み上げたときに、基部の側辺のクリップ部と対応する部分を確実に把持することができ、そのクランプ具に形成されたスナップ部をパネルに開設された貫通孔に容易かつ確実に合致させることができる。また、基部の側辺のクリップ部と対応する部分を確実に把持できることから、基部に加えた押圧力を効率良くクリップ部に伝えることができ、クリップ部を容易かつ確実に弾性変形させることができて、パネルに対するクランプ具の取り付け作業を効率良く行うことができる。
【0011】
また本発明は、前記構成のクランプ具において、前記指掛け用の凹部を、前記基部の左右両側辺の対称位置に形成することを特徴とする。
【0012】
指掛け用の凹部は、基部の一側辺部のみに形成することもでき、この場合には、凹部に触れる指の感触から、作業員の手の中でクランプ具がどの方向に向いているかを容易に判断できるので、向きを揃えて多数のクランプ具をパネルに取り付けるという作業を行いやすくなる。これに対して、指掛け用の凹部を基部の左右両側辺の対称位置に形成すると、多数のクランプ具の中から1つのクランプ具を摘み上げたときに、作業員の手の中でクランプ具がどちらの方向に向いているかに拘わりなく、同一の感触でクランプ具を把持できるので、作業員に違和感を抱かせることがなく、パネルに対するクランプ具の取り付け作業を容易化することができる。
【0013】
また本発明は、前記構成のクランプ具において、前記クリップ部は、前記本体部の下面中央部から垂設された板状の支柱と、該支柱の側面から側方に張り出された羽根板と、前記支柱の先端から前記本体部側に張り出された係止部とからなることを特徴とする。
【0014】
羽根板は、パネルに開設された貫通孔の内面に当接して、クランプ具を安定に保持する機能を有する。このため、羽根板を設けない場合には、クランプ具の動揺を抑制するため、支柱の直径を貫通孔内に挿入可能な最大限の大きさとせざるを得ず、使用する樹脂量が増加して、製品であるクランプ具が重量化すると共に高コスト化する。これに対して、支柱を板状に形成し、該支柱の側面から羽根板を側方に張り出させる構成にすれば、使用する樹脂量の削減が図れ、クランプ具を軽量かつ低コストに製造することができる。
【0015】
また本発明は、前記構成のクランプ具において、前記羽根板の上辺を、前記支柱側においては前記本体部との距離が小さく、前記支柱から離隔するほど前記本体部との距離が大きくなるように下向きに傾斜させたことを特徴とする。
【0016】
上述のようにクランプ具は、支柱の先端部に形成されたクリップ部をパネルに開設された貫通孔内に差し込むことによってパネルに取り付けられるが、羽根板の上辺が基部の下面と平行に形成されており、羽根板の上辺と基部の下面との間にスペースがあり、かつパネルの板厚が小さい場合には、スナップ部を貫通孔内に差し込んだときに、パネルが羽根板の上辺と基部の下面との間のスペース内に入り込む虞がある。そして、パネルが該スペース内に入り込むと、羽根板の上辺が基部の下面と平行に形成されているので、羽根板の上辺がパネルの裏面に係合しやすく、パネルからのクランプ具の取り外が著しく困難になる。これに対して、羽根板の上辺を下向きに傾斜させた場合には、仮にパネルが羽根板の上辺と基部の下面との間のスペース内に入り込んだ場合にも、クランプ具を垂直に持ち上げれば、傾斜した上辺の自動調心作用によって自動的にクリップ部の中心と貫通孔の中心とを合致させることができるので、パネルからのクランプ具の取り外しを容易に行うことができる。
【0017】
また本発明は、前記構成のクランプ具において、前記帯状部の長さ方向の一部に、板厚及び板幅が他の部分よりも小さなヒンジ部を形成したことを特徴とする。
【0018】
クランプ具のヒンジ部は、特許文献1に記載の例からも分かるように、帯状部の所要部分の板厚を他よりも小さくすることによって形成される。ヒンジ部の曲げやすさは、該部の板厚を変更することによって調整可能であるが、板厚を過度に薄くすると該部の強度及び耐久性が害されるので、板厚の減少には自ずと限界がある。これに対して、板厚及び板幅の双方を小さくすることによってヒンジ部を形成すると、適度の板厚を確保することができるので、強度及び耐久性を犠牲にすることなく、曲げやすいヒンジ部とすることができる。
【0019】
また本発明は、前記構成のクランプ具において、前記係止受け部は、前記スナップ部に形成された係止爪の係合部を有する主部と、該主部の前方に所定の間隔を隔てて対向に配置された前面部と、これら主部と前面部の側辺どうしを連結する連結部とをもって枠状に形成されており、前記連結部のうち、前記主部の一側辺に形成された連結部と他の一側辺に形成された連結部との高さ位置を互いに異ならせたことを特徴とする。
【0020】
係止受け部は、帯状部に形成された係止爪を係合する部分であるので、高い剛性を有していることが要求される。このため、特許文献1に記載の例からも分かるように、平面形状が四角形の枠形に形成される場合が多い。しかし、枠形の各面を同一サイズの壁面にて構成すると、使用する樹脂量が多くなるために、製品であるクランプ具が重量化及び高コスト化する。これに対して、係止受け部を構成する連結部のうち、主部の一側辺に形成された連結部と他の一側辺に形成された連結部との高さ位置を互いに異ならせると、全体として枠形を維持できるので十分な剛性を備えることができると共に、枠形の一部を切り欠いた形状になるので、その分使用する樹脂量を削減することができて、製品であるクランプ具の軽量化と低コスト化とを図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、クランプ具を構成する基部の側辺中央部分に指掛け用の凹部を形成するので、多数のクランプ具の中から1つのクランプ具を摘み上げたとき、及び摘み上げたクランプ具のクリップ部をパネルに開設された貫通孔内に挿入するとき、基部の側辺中央部を確実に把持することができる。よって、クランプ具のクリップ部を貫通孔に容易かつ確実に合致できると共に、基部に加えた押圧力を効率良くクリップ部に伝えることができて、パネルに対するクランプ具の取付作業を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1に係るクランプ具の斜視図である。
【図2】実施例1に係るクランプ具の正面図である。
【図3】実施例1に係るクランプ具の背面図である。
【図4】実施例1に係るクランプ具の平面図である。
【図5】図4のX−X断面図である。
【図6】実施例1に係るクランプ具の支柱及び羽根板の形状を示す断面図である。
【図7】実施例1に係るクランプ具の使用状態の説明図である。
【図8】実施例2に係るクランプ具の斜視図である。
【図9】実施例2に係るクランプ具の正面図である。
【図10】実施例3に係るクランプ具の斜視図である。
【図11】実施例3に係るクランプ具の正面図である。
【図12】実施例3に係るクランプ具の効果を示す断面図である。
【図13】従来例に係るクランプ具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るクランプ具の実施形態を、実施例1,2,3に分けて説明する。なお、各実施例に記載の「ケーブル等A」は、ケーブル類やチューブ類等の長尺物の総称であり、ケーブル類には電線及び光ケーブルを含み、チューブ類には液圧チューブ及び空気圧チューブを含む。また、図には1つのクランプ具に1本のケーブル等Aを保持した状態のみを示すが、1つのクランプ具に複数本のケーブル等Aを保持することも、勿論可能である。
【実施例1】
【0024】
図1〜図7に示すように、実施例1に係るクランプ具1Aも、基本的な構成に関しては、図13に示した従来のクランプ具と同じであり、ループ状に組み立てられたときにその内部空間内にケーブル等Aを貫通して保持する本体部2と、本体部2の下面中央部より下向きに形成された矢じり型のクリップ部3と、本体部2の下面よりクリップ部3の側方部分に張り出された保持部4とから構成されている。クランプ具1Aは、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS等のプラスチック材料を用いて一体に成形される。
【0025】
本体部2は、クリップ部3及び保持部4と一体形成された基部11と、基部11の一端部の上面側に形成された係止受け部12と、基部11の他端部から上向きに延出され、所要の部分にヒンジ部13が形成された帯状部14と、帯状部14の先端部に形成されたスナップ部15とからなる。
【0026】
基部11には、図1及び図4に示すように、左右両側辺のクリップ部3と対応する部分に、内向きに湾曲する指掛け用の凹部16が対称形に形成される。これにより、作業員がクランプ具1Aをパネルに取り付ける際、基部11の側辺のクリップ部3と対応する部分を確実に把持することができるので、クリップ部3をパネルに開設された貫通孔に合致させること、及びクリップ部3を貫通孔内に差し込むことが容易になり、パネルに対するクランプ具1Aの取り付け作業を効率的に行うことができる。また、該凹部16を基部11の側辺の対称位置に形成したので、作業員がクランプ具1Aを摘み上げたときに、作業員の手の中でクランプ具1Aがどちらの方向に向いているかに拘わりなく、同一の感触でクランプ具1Aを把持することができる。よって、作業員に違和感を抱かせることがなく、パネルに対するクランプ具1Aの取り付け作業を容易化することができる。
【0027】
係止受け部12は、図1〜図5に示すように、主部21と、該主部21の前方に所定の間隔を隔てて対向に配置された前面部22と、これら主部21と前面部22の側辺どうしを連結する連結部23,24とをもって平面形状が枠形に形成されており、主部21の内面には、スナップ部15を係合するための係合段部25が形成されている。このように、本例の係止受け部12は、平面形状が枠形に形成されているので、十分な剛性を有し、スナップ部15を安定に係合することができる。また、主部21と前面部22の側辺どうしを連結する2つの連結部23,24のうち、一方の連結部23は主部21と前面部22の上部を連結し、他方の連結部24は主部21と前面部22の上部を連結している。かかる構成によると、係止受け部12を一部が切り欠かれた枠形とすることができるので、完全な枠形に形成する場合に比べて使用する樹脂量を削減することができ、製品であるクランプ具の軽量化と低コスト化とを図ることができる。
【0028】
帯状部14は、凹部16の形成部分を除く基部11の横幅よりも横幅が小さい帯状に形成されており、係止受け部12の上部と対向する部分には、他の部分よりも板厚及び板幅が小さいヒンジ部13が形成されている。従って、帯状部14はヒンジ部13から係止受け部12側に折り曲げることができ、その先端部に形成されたスナップ部15を係止受け部12に係合させることができる。このように、ヒンジ部13の板厚及び板幅を、帯状部14を構成する他の部分の板厚及び板幅よりも小さくすると、板厚のみを小さくした場合よりも、板厚をある程度大きく保ったまま同じ曲げやすさを得ることができるので、ヒンジ部13の強度及び耐久性を高めることができる。
【0029】
スナップ部15は、図2及び図3に示すように、V字形に形成されており、外辺15aの外面には、係止受け部12に形成された係合段部25に係合される係止爪26が形成されている。外辺15aは、帯状部14に連接された内辺15bに対して弾性変形することができるので、枠形に形成された係止受け部12内にスナップ部15を押し込むことにより、係止爪26が係合段部25を乗り越えて、係合段部25に係合される。係合段部25と係止爪26の係合を解除する場合は、外辺15aの先端部を内辺15bの方向に弾性変形させた状態で、その先端部を上方に引き上げることによって行うことができる。
【0030】
クリップ部3は、基部11の下面から垂設された板状の支柱31と、支柱31の側面から側方に張り出された羽根板32と、支柱31の先端から本体部2側に張り出された係止部33とから構成される。
【0031】
支柱31の横幅は、図4に示すように、基部11の凹部16が形成された部分の幅よりもやや大きくなっている。また、支柱31の板厚は、所要の剛性を有する適宜の大きさに設定される。このように、支柱31を板状に形成すると、丸棒状に形成する場合に比べて使用する樹脂量を削減できるので、クランプ具材1の軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0032】
羽根板32は、基部11の下面との間に所要の間隔を隔てた部分に形成されており、該羽根板32の上辺は、基部11の下面と平行になっている。羽根板32の上辺と基部11の下面とは連結板32aをもって連結されており、これら羽根板32の上辺と基部11の下面との間のスペース内にパネルが入り込まないようになっている。なお、羽根板32は、図6(a)に示すように、支柱31の幅方向の中央位置に相背向に形成することもできるし、図6(b)に示すように、支柱31の各側辺部に相背向に形成することもできる。
【0033】
係止部33の外形は、支柱31の側面と対応する部分が切り取られた略円錐形になっており、その末端の内面には、基部11側に突出する係合突起34が形成されている。係合突起34の形成位置は、羽根板32の先端部と合致している。
【0034】
保持部4は、基部11の下面から羽根板32及び係止部33の側方部分にハの字形に延設されており、その先端部は、係止部33の末端部よりも上方に配置されている。保持部4の先端部と係止部33の末端部との間隔dは、保持部4の先端部と係止部33の末端部との間にパネルを挟み込んだとき、クランプ具1Aを安定に保持可能な弾性力をパネルに付与可能な大きさに設定される。
【0035】
実施例1に係るクランプ具1Aは、上述のように構成されているので、図7に示すように、基部11に形成された指掛け用の凹部16を把持してクリップ部3をパネルPに開設された貫通孔H内に押し込むと、貫通孔Hの直径は、羽根板32の一端から他端までの距離よりも僅かに大きく形成されているので、一部が切り取られた略円錐形を有する係止部33の末端側が、その押し込み力によって内向きに弾性変形し、貫通孔H内を通過する。そして、係止部33の末端部がパネルPの裏面側に達した段階で、係止部33が自己の弾性力によって原状に復帰し、係止部33の末端内面に形成された係合突起が貫通孔Hのエッジ部に係合される。このとき、羽根板32の先端が貫通孔Hの内面に対向されると共に、保持部4の先端部がパネルPの表面に弾接される。これによって、クランプ具1はパネルPに安定に保持される。
【0036】
しかる後に、基部11と係止受け部12と帯状部14とで囲まれた部分にケーブル等Aを挿通し、帯状部14をヒンジ部13から折り曲げて、帯状部14の先端部に形成されたスナップ部15を枠形に形成された係止受け部12内に押し込むと、係止受け部12に形成された係合段部25に、スナップ部15に形成された係止爪26が係合されて、閉じたループが形成され、図7に示すように、その内部空間内に挿通されたケーブル等Aを安定に保持することができる。なお、本体部2をケーブル等Aに取り付けた後に、クリップ部3をパネルPに取り付けることも勿論可能である。
【0037】
以上説明したように、実施例1に係るクランプ具1Aは、基部11の左右両側辺のクリップ部3と対応する部分に指掛け用の凹部16を対称に形成したので、クランプ具を摘み上げたときに、基部11の側辺のクリップ部3と対応する部分を確実に把持することができる。このため、クランプ具1をパネルPに取り付ける際、クリップ部3をパネルPに開設された貫通孔Hに容易かつ確実に合致させることができる。また、基部11の側辺のクリップ部3と対応する部分を確実に把持できることから、基部11に加えた押圧力を効率良くクリップ部3に伝えることができ、クリップ部3の係止部33を容易かつ確実に弾性変形させることができるので、これらのことからパネルPに対するクランプ具1Aの取り付け作業を効率良く行うことができる。
【実施例2】
【0038】
次に、実施例2に係るクランプ具1Bを、図8及び図9を用いて説明する。
【0039】
本例のクランプ具1Bは、図8及び図9に示すように、係止受け部12を、主部21と、該主部21の前方に所定の間隔を隔てて対向に配置された前面部22と、これら主部21と前面部22の一側辺どうしを連結する連結部23a,23bと、主部21と前面部22の他の一側辺どうしを連結する連結部24とをもって、枠形に形成したことを特徴とする。連結部23a,23bは主部21及び前面部22の上端部と下端部とに形成され、連結部24は主部21及び前面部22の高さ方向の中間部に形成される。したがって、クランプ具1Bを正面側から見たとき、図9に示すように、連結部23aと連結部24との間、及び連結部23bと連結部24との間には、隙間41が形成される。その他の部分については、実施例1に係るクランプ具1Aと同じであるので、対応する部分に同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
実施例2に係るクランプ具1Bは、係止受け部12を構成する主部21と前面部22とを、連結部23a,23bと連結する連結部24とをもって連結し、連結部23aと連結部24との間、及び連結部23bと連結部24との間に隙間41を形成したので、係止受け部12を形成するための樹脂量をより削減することができ、製品であるクランプ具のより一層の軽量化と低コスト化を図ることができる。
【実施例3】
【0041】
次に、実施例3に係るクランプ具1Cを、図10〜図12を用いて説明する。
【0042】
実施例3に係るクランプ具1Cは、図11に及び図12に示すように、羽根板32の上辺を、支柱31側においては基部11の下面との距離が小さく、支柱31から離隔するにしたがって基部11の下面との距離が大きくなるように下向きに傾斜させたことを特徴とする。その他の部分については、実施例1,2に係るクランプ具1A,1Bと等価であるので、対応する部分に同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
本例のクランプ具1Cは、羽根板32の上辺を下向きに傾斜させたので、パネルPの裏面側のエッジ部が羽根板32の先端部を超えて、羽根板32の上辺側に入り込んだ場合にも、パネルPの裏面側のエッジ部に上辺の一部が当接されるため、クランプ具1Cを垂直に持ち上げれば、傾斜した上辺の自動調心作用によって自動的にクリップ部3の中心と貫通孔Hの中心とを合致させることができるので、パネルPからクランプ具1Cを容易に取り外すことができる。
【0044】
即ち、パネルPの板厚が小さい場合においては、保持部4の下面がパネルPの表面に密着するまでクランプ具1Cを押し込むと、図12に示すように、パネルPの裏面側のエッジ部が羽根板32の先端部を超えて、羽根板32の上辺側に入り込むことがある。この場合において、実施例1及び実施例2に係るクランプ具1A,1Bのように、羽根部32の上辺が基部11の下面と平行に形成されていると、支柱31と貫通孔Hとの寸法差が大きいため、クランプ具の動揺が過大になって、実用に供することが困難になる。また、クランプ具をパネルPから取り外そうとしても、羽根板32の上辺がパネルPの裏面に係合しやすいために、容易には取り外すことができない。これに対して、羽根板32の上辺を下向きに傾斜させると、仮にパネルPが羽根板32の上辺と基部11の下面との間のスペース内に入り込んだ場合にも、貫通孔Hの裏面側のエッジ部が羽根板32の上辺と対向するので、クランプ具1Cの動揺を小さなものにすることができる。また、クランプ具1Cを垂直に持ち上げれば、傾斜した上辺の自動調心作用によって自動的にクリップ部3の中心と貫通孔Hの中心とを合致させることができるので、パネルPからのクランプ具1Cの取り外しを容易に行うことができる。
【0045】
なお、本発明の要旨は、クランプ具の基部に指掛け用の凹部16を形成したことにあるのであって、他の部分については、必要に応じて適宜設計することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、ケーブル類やチューブ類の配線又は配管に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1A,1B,1C クランプ具
2 本体部
3 クリップ部
4 保持部
11 基部
12 係止受け部
13 ヒンジ部
14 帯状部
15 スナップ部
15a 外辺
15b 内辺
21 主部
22 前面部
23,23a,23b,24 連結部
25 係合段部
26 係止爪
31 支柱
32 羽根板
33 係止部
34 係合突起
41 隙間
A ケーブル等
P パネル
H 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル等を着脱可能に保持する本体部と、該本体部の下面より下向きに形成されたクリップ部と、前記本体部の下面より前記クリップ部の側方部分に張り出された保持部とを備えたクランプ具において、
前記本体部は、前記クリップ部及び前記保持部が一体に形成される基部と、該基部の一端部の上面側に形成された係止受け部と、前記基部の他端部から上向きに形成された帯状部と、該帯状部の先端部に形成され、前記係止受け部に着脱可能に係止されるスナップ部とを有し、前記基部の側辺の前記クリップ部と対応する部分に、指掛け用の凹部を形成したことを特徴とするクランプ具。
【請求項2】
前記指掛け用の凹部を、前記基部の左右両側辺の対称位置に形成することを特徴とする請求項1に記載のクランプ具。
【請求項3】
前記クリップ部は、前記本体部の下面中央部から垂設された板状の支柱と、該支柱の側面から側方に張り出された羽根板と、前記支柱の先端から前記本体部側に張り出された係止部とからなることを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載のクランプ具。
【請求項4】
前記羽根板の上辺を、前記支柱側においては前記本体部との距離が小さく、前記支柱から離隔するほど前記本体部との距離が大きくなるように下向きに傾斜させたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のクランプ具。
【請求項5】
前記帯状部の長さ方向の一部に、板厚及び板幅が他の部分よりも小さなヒンジ部を形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のクランプ具。
【請求項6】
前記係止受け部は、前記スナップ部に形成された係止爪の係合部を有する主部と、該主部の前方に所定の間隔を隔てて対向に配置された前面部と、これら主部と前面部の側辺どうしを連結する連結部とをもって枠状に形成されており、前記連結部のうち、前記主部の一側辺に形成された連結部と他の一側辺に形成された連結部との高さ位置を互いに異ならせたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のクランプ具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−197830(P2012−197830A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61185(P2011−61185)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000226507)株式会社ニックス (96)
【Fターム(参考)】