説明

クランプ

【課題】 物がぶつかっても簡単に外れることなく、また、取付時に節度感を得ることができるクランプを得る。
【解決手段】 防振部材22のフランジ部74の上面に突起76を設け、クリップ24がクランプ本体20に装着された状態で、長板88が突起76と突起76の間に配置されるようにすることで、クリップ24がクランプ本体20に装着された状態でクランプ本体20に物がぶつかってもクランプ本体20が容易に回転しないようにしている。また、クランプ本体20にクリップ24を圧入した後、クリップ24を90°回転させるまでの間に、クリップ24のトルクが徐々に大きくなるようにし90°回転させた時点で急激にトルクが小さくなるようにすることで、クリップ24の取付時の節度感を得ることができ、長板88が所定位置に配置されたことを客観的に判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエアコン用のパイプ等をボディパネルに取付けるために用いられるクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディパネルには、エアコン用のパイプ等を保持するクランプが固定されるようになっており、クランプを介してパイプ等が所定の位置に固定される。
【0003】
例えば、特許文献1では、一側面が開放された箱状のボックス部内に、ボックス部と同様、一側面が開放された振動吸収体を内嵌させるようにしており、ボックス部及び振動吸収体の上面にはそれぞれスリット部を形成している。
【0004】
一方、パイプを保持する保持体の首部は逆T字状となっており、開放された側面側から首部を挿入し、スリットを通じて振動吸収体の奥方へ保持体を装着して、車両からの振動がパイプに伝達されないようにしている。
【0005】
しかしながら、特許文献1は、振動吸収体の側面から保持体をスライドさせる方式のため、作業中に保持体にぶつかった場合、保持体の挿入方向と反対方向の力が加わる恐れもあり、その場合には保持体が振動吸収体から外れ易くなってしまう。また、保持体を振動吸収体に装着する時、振動吸収体の奥方へ保持体をスライドさせるだけであるため、節度感がなく、装着終了したかどうかの判断が困難である。
【特許文献1】特開平9−303621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、物がぶつかっても簡単に外れることなく、また、取付時に節度感を得ることができるクランプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、管材が保持される保持部が設けられたクランプ本体と、前記クランプ本体に形成された装着孔と、前記装着孔に装着され、装着孔と孔軸が一致する長孔が形成された防振部材と、前記長孔へ挿入される首部と、前記首部の先端から横に張出し首部が回転すると、長孔を直交して防振部材に取り付けられる長板と、前記首部と一体成形され、取付部材に係止されるクリップと、を備えたクランプであって、前記首部の断面寸法を首部の回転位置で変え、該回転位置に応じて前記長孔の孔壁との摺動抵抗を変えることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明では、クランプ本体には装着孔が形成されており、装着孔には、防振部材に形成された長孔が装着孔と孔軸を一致させた状態で装着される。一方、取付部材に係止されるクリップが一体成形された首部の先端には横に張出す長板が設けられており、首部が長孔に挿入された状態で首部を回転させると、長板が長孔を直交して防振部材に取り付けられるようになっている。
【0009】
このように、首部を回転させて防振部材を介してクランプ本体にクリップを取り付けるため、スライド移動によってクリップをクランプ本体に取り付ける場合と比較して、クランプ本体に物がぶつかったとしてもクランプ本体がクリップから外れてしまう恐れは少ない。
【0010】
また、クランプに防振部材を備えることで、取付部材からの振動は吸収され、管材には車両からの振動が伝達されないようにすることができる。
【0011】
さらに、首部の断面寸法を首部の回転位置で変え、該回転位置に応じて長孔の孔壁との摺動抵抗を変えるようにしている、例えば、首部の長板を長孔へ挿通させた後、首部を回転させるとき、徐々に長孔の孔壁との摺動抵抗が大きくなるようにし、首部が所定の位置に到達すると、急激に該摺動抵抗が小さくなるようにすることで、節度感を得ることができ、長板が所定位置に配置されたことを客観的に判断することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のクランプにおいて、前記長孔の表面には、前記首部が回転すると前記長板が乗り上げ長板が長孔と直交したときに乗り越える突起が設けられたことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明では、長孔の表面に、長板が乗り上げる突起を設け、長孔と直交したときに乗り越えるようにすることで、長板が長孔と直交した状態(クリップがクランプ本体に取り付けられた状態)で、クランプ本体に物がぶつかってもクランプ本体が容易に回転しないようにしている。
【0014】
また、クランプ本体にクリップを取り付けるとき、長孔と直交する直前に長板に突起を乗り越えさせることで、首部のトルクを上げることができるため、長板が長孔と直交した状態では、首部のトルクを相対的に小さくすることができ、節度感を得ることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のクランプにおいて、前記首部には前記長板が前記長孔と直交した状態で長孔を塞ぐフランジ部が設けられ、前記防振部材には前記フランジ部を覆う被覆部が設けられたことを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明では、首部にフランジ部を設け、長板が長孔と直交した状態で長孔を塞ぐようにしており、防振部材には、このフランジ部を覆う被覆部を設けている。
【0017】
長板が長孔と直交した状態で、長孔の、長板が重ならない部分では、長孔の一部が貫通していることとなるが、フランジ部によってこの貫通部分を塞ぐことで、水、ホコリ等が該貫通部分を通過しないようにすることができる。また、被覆部によって、フランジ部を覆うことで、フランジ部からの振動を吸収し、クランプ本体に車両からの振動が伝達されないようにすることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のクランプにおいて、前記被覆部の周壁がフランジ部の肉厚よりも長いことを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明では、被覆部の周壁をフランジ部の肉厚よりも長くすることで、クリップが取付部材に係止された状態で、取付部材には被覆部の周壁が当接することとなる。このため、フランジ部には車両からの振動が伝達されないようにすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記構成としたので、請求項1に記載の発明では、首部を回転させて防振部材を介してクランプ本体にクリップを取り付けるため、スライド移動によってクリップをクランプ本体に取り付ける場合と比較して、クランプ本体に物がぶつかったとしてもクランプ本体がクリップから外れてしまう恐れは少ない。また、クランプに防振部材を備えることで、取付部材からの振動は吸収され、管材には車両からの振動が伝達されないようにすることができる。
【0021】
さらに、首部の断面寸法を首部の回転位置で変え、該回転位置に応じて長孔の孔壁との摺動抵抗を変えるようにしている、例えば、首部の長板を長孔へ挿通させた後、首部を回転させるとき、徐々に長孔の孔壁との摺動抵抗が大きくなるようにし、首部が所定の位置に到達すると、急激に該摺動抵抗が小さくなるようにすることで、節度感を得ることができ、長板が所定位置に配置されたことを客観的に判断することができる。
【0022】
請求項2に記載の発明では、長孔の表面に、長板が乗り上げる突起を設け、長孔と直交したときに乗り越えるようにすることで、長板が長孔と直交した状態(クリップがクランプ本体に取り付けられた状態)で、クランプ本体に物がぶつかってもクランプ本体が容易に回転しないようにしている。また、クランプ本体にクリップを取り付けるとき、長孔と直交する直前に長板に突起を乗り越えさせることで、首部のトルクを上げることができるため、長板が長孔と直交した状態では、首部のトルクを相対的に小さくすることができ、節度感を得ることができる。
【0023】
請求項3に記載の発明では、長孔の、長板が重ならない部分に設けられた長孔の貫通部分をフランジ部によって塞ぐことで、水、ホコリ等が該貫通部分を通過しないようにすることができる。また、被覆部によって、フランジ部を覆うことで、フランジ部からの振動を吸収し、クランプ本体に車両からの振動が伝達されないようにすることができる。
【0024】
請求項4に記載の発明では、被覆部の周壁をフランジ部の肉厚よりも長くすることで、クリップが取付部材に係止された状態で、取付部材には被覆部の周壁が当接することとなる。このため、フランジ部には車両からの振動が伝達されないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態に係るクランプについて説明する。
【0026】
図1〜図3に示すように、このクランプ10は、フューエル用、エアコン用等として使用される管材としてのパイプ12、14、16を保持した状態で、自動車のボディパネル18に固定される。
【0027】
以下、クランプ10について説明する。
【0028】
図2に示すように、クランプ10は、パイプ12などを保持可能なクランプ本体20と、クランプ本体20に装着されるゴム製の防振部材22と、クランプ本体20と係合しボディパネル18に係止されるクリップ24と、で構成されている。
【0029】
まず、クランプ本体20について説明する。
【0030】
図1及び図2に示すように、クランプ本体20はパイプ12、14、16がそれぞれ保持可能な保持部26、28、30を備えている。保持部26は保持部28よりも若干大きくなっており、パイプ14よりも若干大径のパイプ12が保持される。また、保持部30は保持部26よりもさらに大きくなって、パイプ12よりも大径のパイプ16が保持可能となっている。
【0031】
保持部26、28には、パイプ12、14の外径に合わせて円弧状の保持台32、34がそれぞれ設けられている。保持台32の両側には、それぞれ支持壁36、38が立設しており、支持壁36、38の先端部からは、保持台32の中心部に向って折れ曲がった弾性変形可能なガイド片40、42が延出している。
【0032】
ガイド片40とガイド片42の離間距離は、パイプ12の直径よりも小さくなっている。このため、パイプ12がガイド片40とガイド片42の間を通過するとき、ガイド片40、42が撓んでパイプ12が通過可能となる。
【0033】
また、ガイド片40、42の先端面と保持台32の最大離間距離は、パイプ12の直径と略同一となっている。このため、パイプ12が保持台32に保持されると、ガイド片40、42は復元し、ガイド片40、42の先端面がパイプ12の表面に当接可能となる。この状態で、パイプ12は保持部26に確実に保持されることとなる。
【0034】
一方、保持台34の両側には、支持壁38、44が立設しており、支持壁44の先端部からは、保持台34の中心部に向って折れ曲がった弾性変形可能なガイド片46が延出している。
【0035】
ここで、保持部28側において、保持部26と共有する支持壁38にはガイド片が設けられていない。支持壁38の両側からガイド片を延出させると、その分、クランプ本体20が長くなってしまうからである。このため、他の支持壁36、44は、図2において垂直方向に沿って形成しているが、支持壁38はガイド片の役割も兼ね備えるべく、支持壁36、44に対して若干傾斜させている。
【0036】
また、支持壁38とガイド片46の離間距離は、パイプ14の直径よりも小さくなっており、パイプ14が支持壁38とガイド片46の間を通過するとき、支持壁38とガイド片46が撓んでパイプ14が通過可能となる。
【0037】
また、ガイド片46の先端面と保持台34の最大離間距離は、パイプ14の直径と略同一となっており、パイプ14が保持台34に保持されると、ガイド片46は復元し、ガイド片46の先端面がパイプ14の表面に当接して、パイプ14は保持部28に確実に保持されることとなる。
【0038】
保持部28の隣には、保持部30が設けられている。この保持部30はパイプ16の外径に合わせて円弧状の保持台48が設けられており、保持台48の両端側には、互いに離間する方向へ向かって折れ曲がる折曲げ片50が設けられている。
【0039】
この折曲げ片50の折れ曲がった箇所(以下、折曲部50Aという)の離間距離は、パイプ16の外径寸法よりも狭くなっており、折曲部50A間を押広げてパイプ16を挿入する。折曲部50Aの裏面側には、折曲げ片50の裏面と保持部30の外面とを繋ぐステイ50Bが設けられており、折曲げ片50を強化している。
【0040】
また、折曲部50Aと保持台48の最大離間距離は、パイプ16の直径と略同一となっており、パイプ16が保持台48に保持されると、保持台48は復元し、折曲部50Aがパイプ16の表面に当接して、パイプ16は保持部30に確実に保持されることとなる。
【0041】
ところで、保持台32、34の外面側からは、補強リブ52、54がそれぞれ垂下しており、保持台32、34の中心部よりも互いに離間する位置に配置されている。また、保持台32、34の外面側には、保持台32、34との間に隙間を設けて、円板状の装着部56が設けられており、装着部56の中央部には、クランプ本体20の長手方向に沿って延びる装着孔58が貫通している。
【0042】
この装着部56が補強リブ52、54の先端部と連結している。補強リブ52には、支持壁36から補強リブ52と平行に延出し補強リブ52の先端部と連結する略L字状のL字リブ60が連結しており、L字リブ60と保持台32と補強リブ52とで囲まれた領域には、保持台32の奥行き方向の中央部に補強板(図示省略)が設けられており、クランプ本体20を補強している。
【0043】
また、保持部28と保持部30は、支持壁44に対して直交する方向へ延出する補強リブ55によって互いに間隔を設けた状態で連結されている。保持台48の外面側には、保持台48から垂下した後、補強リブ54の先端部と連結するクランク状のクランクリブ64が設けられている。
【0044】
このクランクリブ64と保持台48と補強リブ54、55とで囲まれた領域には、保持台48の奥行き方向の中央部に補強板66が設けられており、クランプ本体20を補強している。
【0045】
次に、装着部56に装着可能な防振部材22について説明する。
【0046】
図2に示すように、防振部材22は装着部56の外径寸法と略同一の外径寸法を有する円板部(被覆部)68を備えており、円板部68の外縁部からは、環状のスカート部(被覆部)70が垂下している。
【0047】
円板部68の中央部には、中央部に長孔部71が設けられた長孔ボス72が形成されており、装着部56の装着孔58に内嵌可能となっている。この長孔ボス72の先端部には、長孔ボス72の外形形状に合わせてフランジ部74が形成されており、フランジ部74の上面には、長孔ボス72の長手方向に沿って二つの突起76が対面する周壁にそれぞれ突設されている(後述する)。
【0048】
また、フランジ部74と円板部68との離間距離は、装着部56の肉厚と略同一となっており、フランジ部74を装着部56の装着孔58内へ押し込み、長孔ボス72を装着部56の装着孔58内へ嵌入すると、フランジ部74が装着部56の表面に当接し、防振部材22が装着部56に装着される。
【0049】
次に、装着部56に装着可能なクリップ24について説明する。
【0050】
図2に示すように、クリップ24は四角状の係止部78を備えており、対面する壁面には、外側へ向かって突出する爪部80が設けられている。この爪部80の回りには切込み部82が形成されており、爪部80が内側へ向かって撓み可能となっている。
【0051】
係止部78の一端側には、円板状のフランジ部84が形成されている。このフランジ部84の裏面には、爪部80が突出する方向へ沿ってリブ84Aが形成されており、フランジ部84を強化し、フランジ部84の変形を防止している。
【0052】
また、フランジ部84は、スカート部70の内径寸法と略同一の外径寸法を有しており、フランジ部84の肉厚はスカート部70の長さよりも薄肉となっている。このため、フランジ部84は防振部材22の円板部68とスカート部70に覆われた状態で収容可能となる。
【0053】
また、フランジ部84の上面中央部からは略楕円形状の首部86が立設しており、長孔ボス72内を挿通可能としている。この首部86の先端部には、防振部材22の長孔ボス72の内径寸法よりも外径寸法が僅かに大きい長板88が設けられており、長孔ボス72内を圧入可能となっている。
【0054】
また、フランジ部84と長板88の離間距離は、円板部68の肉厚と長孔ボス72の長さとフランジ部74の肉厚を合わせた長さと略等しくなっている。このため、フランジ部84が円板部68に当接した状態で、長板88はフランジ部74から露出し、フランジ部74に対して向きを変えることが可能となる。
【0055】
ここで、フランジ部74の上面に設けられた突起76同士の間隔は、長板88の幅寸法と略同一となっており、フランジ部74の長手方向に対して、長板88の長手方向を直交させた状態で、突起76と突起76の間に長板88が配置されることとなる。
【0056】
一方、首部86の外径寸法は、図5(A)〜(C)に示すように、首部86の断面位置によって変えており、長板88の長手方向に直交する方向の首部86の外径寸法D1は、図5(A)に示すように、長孔ボス72の長孔部71の孔壁の幅寸法Wよりも若干小さくなるようにしている。
【0057】
また、長板88の長手方向に対して40°で交差する方向の首部86の外径寸法D2は、図5(B)に示すように、長孔部71の孔壁の幅寸法Wよりも若干大きくなるようにしており、長板88の長手方向に沿う首部86の外径寸法D3は、図5(C)に示すように、長孔部71の孔壁の幅寸法Wと略同一となるようにしている。
【0058】
次に、本発明の実施の形態に係るクランプの作用について説明する。
【0059】
図4(A)に示すように、まず、クランプ本体20の装着部56に防振部材22を装着させる。このとき、装着部56の装着孔58の形状に合わせて防振部材22のフランジ部74を位置決めし、フランジ部74を装着孔58内へ圧入し、長孔ボス72を装着孔58内へ挿入させる。
【0060】
そして、図4(B)に示すように、フランジ部74が装着部56の上面へ露出した状態で、長孔ボス72は装着孔58と孔軸を一致させた状態で装着孔58内に配置されると共に、装着孔58の周縁部はフランジ部74と円板部68とで挟持され、防振部材22がクランプ本体20に装着される(図3参照)。
【0061】
次に、図4(C)に示すように、フランジ部74の形状に合わせてクリップ24の長板88を位置決めし、長孔ボス72内へ圧入する。長板88が長孔ボス72を通過した後、首部86が長孔ボス72内を通過することとなるが、この状態では、図5(C)に示すように、首部86の外径寸法D3は、長孔ボス72の長孔部71の孔壁の幅寸法Wと略同一である。
【0062】
そして、クリップ24のフランジ部84が、防振部材22の円板部68に当接した状態で、長板88は、長板88の下面がフランジ部74の上面と略面一の状態で露出する。この状態では、フランジ部84はスカート部70内に収容されることとなり、後述するボディパネル18にはスカート部70の端部が当接することとなる。
【0063】
そして、この状態から、クリップ24を回転させる。ここで、フランジ部74の上面には突起76が突設しているため、クリップ24を回転させると、長板88が突起76に当接することとなる。このため、長板88が突起76を乗り越えるとき、クリップ24のトルクは徐々に大きくなる。
【0064】
一方、図5(B)に示すように、長板88の長手方向に対して40°で交差する方向の首部86の外径寸法D2は、長孔ボス72の長孔部71の孔壁の幅寸法Wよりも若干大きくしているため、図4(C)の状態からクリップ24を回転させるとき、首部86と長孔ボス72との干渉によってもクリップ24のトルク(摺動抵抗)は増大することとなる。
【0065】
そして、クリップ24を図4(C)の状態から約90°回転させると、図4(D)に示すように、長板88は突起76と突起76の間に配置されることとなる。一方、図5(A)に示すように、長板88の長手方向に直交する方向の首部86の外径寸法D1は、長孔ボス72の長孔部71の孔壁の幅寸法Wよりも若干小さくなるようにしており、この状態でクリップ24のトルク(摺動抵抗)は最小となる。
【0066】
このため、クランプ本体20にクリップ24を圧入した後、クリップ24を90°回転させるまでの間に、クリップ24のトルクは徐々に大きくなり、90°回転させた時点で急激にトルクが小さくなる。これにより、クリップ24の取付時の節度感を得ることができ、長板88が所定位置に配置されたことを客観的に判断することができる。
【0067】
また、フランジ部74の上面に突起76を設け、クリップ24が所定の位置に到達した状態(クリップ24がクランプ本体20に装着された状態であり、ここではクランプ本体20にクリップ24を圧入した後、クリップ24を90°回転させた位置)で、長板88が突起76と突起76の間に配置されるようにすることで、この状態でクランプ本体20に物がぶつかったとしてもクランプ本体20が容易に回転しないようにしている。
【0068】
以上のようにして、クランプ本体20に防振部材22及びクリップ24が装着された状態で、図3に示すように、クリップ24をボディパネル18に装着する。
【0069】
ここで、ボディパネル18にはクリップ24の係止部78が挿通可能な矩形状の取付孔18A(図2参照)が形成されており、該取付孔18A内に係止部78を挿入する。この際、爪部80が係止部78の内側へ向かって弾性変形し、取付孔18Aを通過した後、復元して爪部80が取付孔18Aの周縁部に係止され、クリップ24がボディパネル18に装着される。
【0070】
このとき、クリップ24の爪部80との間で、ボディパネル18の取付孔18Aの周縁部を挟持可能なフランジ部84は、防振部材22の円板部68に当接すると共に、ボディパネル18の取付孔18Aの周縁部には、防振部材22のスカート部70が当接するため、クリップ24のフランジ部84には車両からの振動が伝達されない。
【0071】
このように、クランプ本体20は、該防振部材22を介してボディパネル18に固定されるため、防振部材22によって振動は吸収され、クランプ10をボディパネル18に固定させた状態で、パイプ12、14、16(図1参照)には車両からの振動が伝達されないようにすることができる。
【0072】
また、クリップ24がクランプ本体20に装着された状態では、長孔部71の、長板88が重ならない部分では長孔部71の一部が貫通していることとなるが、クリップ24のフランジ部84によってこの貫通部分を塞ぐことができるため、水、ホコリ等が該貫通部分を通過しないようにすることができる。
【0073】
ここで、便宜上クランプ本体20を図中上側に配置しクリップ24を図中下側に配置したが、クランプ本体20とクリップ24の位置が上下逆であっても良く、また、クランプ10を横倒させた状態で使用しても良い。
【0074】
また、本形態はあくまでも一実施例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0075】
例えば、本形態では、クリップ24の係止部78の形状を四角状としたが、該係止部78の形状はボディパネル18の取付孔18Aの形状によっても異なるため、これに限るものではない。
【0076】
具体的には、図6に示すように、係止部90を円筒状としても良い。さらに、図7に示すように、スタッドタイプの係止部92であっても良い。この場合、図8に示すように、弾性変形可能な係止片94の先端部に係止部92の内側へ向かって爪部94Aを突出させ、図示しないスタッドボルトに係止可能としても良い。
【0077】
また、クランプ本体20の保持部26、28、30は、パイプ12、14、16をそれぞれ確実に保持することができれば良いため、保持部26、28、30の形状もこれに限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態に係るクランプを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るクランプを示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るクランプを示す断面図である。
【図4】(A)〜(D)は、本発明の実施の形態に係るクランプの取付方法を示す斜視図である。
【図5】(A)〜(C)は、本発明の実施の形態に係るクランプの要部を説明する断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るクランプの変形例を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るクランプの他の変形例を示す斜視図である。
【図8】図7の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0079】
10 クランプ
20 クランプ本体
22 防振部材
24 クリップ
58 装着孔
68 円板部(被覆部)
70 スカート部(被覆部)
76 突起
84 フランジ部
86 首部
88 長板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管材が保持される保持部が設けられたクランプ本体と、
前記クランプ本体に形成された装着孔と、
前記装着孔に装着され、装着孔と孔軸が一致する長孔が形成された防振部材と、
前記長孔へ挿入される首部と、
前記首部の先端から横に張出し首部が回転すると、長孔を直交して防振部材に取り付けられる長板と、
前記首部と一体成形され、取付部材に係止されるクリップと、
を備えたクランプであって、
前記首部の断面寸法を首部の回転位置で変え、該回転位置に応じて前記長孔の孔壁との摺動抵抗を変えることを特徴とするクランプ。
【請求項2】
前記長孔の表面には、前記首部が回転すると前記長板が乗り上げ長板が長孔と直交したときに乗り越える突起が設けられたことを特徴とする請求項1に記載のクランプ。
【請求項3】
前記首部には前記長板が前記長孔と直交した状態で長孔を塞ぐフランジ部が設けられ、前記防振部材には前記フランジ部を覆う被覆部が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載のクランプ。
【請求項4】
前記被覆部の周壁がフランジ部の肉厚よりも長いことを特徴とする請求項3に記載のクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−226394(P2006−226394A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40461(P2005−40461)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】