説明

クランプ

【課題】被固定物の外径にばらつきがあっても、それを効果的に吸収できると共に、製造作業性を向上可能なクランプを提供する。
【解決手段】このクランプ10は、基板11と、被固定物Pを複数並列させて保持する複数の受け部20とを備え、各受け部20は、保持された状態での被固定物Pの軸方向に沿って複数の支持部22を有し、軸方向に沿って配置された支持部22の少なくとも1つに、被固定物Pを抜け止め保持する保持爪26が設けられ、各支持部22の間には、複数の受け部20に亘ってそれらの並列方向に伸びる通路30が形成され、通路30に沿ってその底面31に弾性樹脂、好ましくは発泡樹脂からなる弾性支持部40が設けられ、この弾性支持部40が各受け部20に保持された被固定物Pに当接するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車等の所定箇所に配置されるパイプやチューブ等の被固定物を保持固定するためのクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車内には、燃料系や冷却系等で用いられるパイプやチューブ、電装部品で用いられるケーブルやワイヤハーネスなどの、線状、管状又は棒状をなす複数の被固定物が配置されている。
【0003】
これらの複数の被固定物がスペースに制限のある自動車内で乱雑に配置されると、他部材に干渉したり破損したりする虞れがある。そのため、クランプを用いて、被固定物の軸方向所定箇所を固定して、複数の被固定物を自動車内の所定の位置に保持させるようにしている。
【0004】
従来のこの種のクランプとして、下記特許文献1には、被固定物を所定箇所に固定するための固定部を有するクランプ本体に、上記被固定物が嵌着される1又は2以上の嵌着凹部が形成されていると共に、該嵌着凹部内面の少なくとも一部に、嵌入される上記被固定物の軸方向に沿って摩擦抵抗の大きな弾性樹脂材料からなるずれ防止層が形成され、かつこのずれ防止層が上記嵌着凹部の両側縁部を略コの字状に回り込んでクランプ本体に固定されているクランプが開示されている。
【0005】
上記特許文献1のクランプにおいて、前記クランプ本体は、ポリアセタールやポリプロピレン等の合成樹脂から形成される一方、嵌着凹部内面のずれ防止層は、ポリアミド系エラストマーやオレフィン系エラストマー等の弾性樹脂材料から形成され、両者は二色成形により成形されて、クランプ本体にずれ防止層が一体的に形成されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−79432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1のクランプにおいては、弾性樹脂材料からなるずれ防止層を、各嵌入凹部毎に、かつ、該嵌着凹部の両側縁部を略コの字状に回り込むように設けるため、製造作業性が悪くなったり、金型構造が複雑になったりする問題があった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、被固定物の外径にばらつきがあっても、それを効果的に吸収することができると共に、製造作業性を向上させることができるクランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、線状、管状又は棒状をなす被固定物を保持固定するクランプであって、基板と、該基板上に並列して設けられ、前記被固定物を複数並列させて保持する複数の受け部とを備え、前記各受け部は、一対の柱部の間に前記被固定物を受け入れるように形成された支持部を、保持された状態での前記被固定物の軸方向に沿って複数有し、軸方向に沿って配置された複数の支持部の少なくとも1つに、前記被固定物を抜け止め保持する保持爪が設けられており、前記被固定物の軸方向に配置された各支持部の間には、複数の受け部に亘ってそれらの並列方向に伸びる通路が形成されており、前記通路に沿ってその底面に弾性樹脂からなる弾性支持部が設けられ、この弾性支持部が前記各受け部に保持された前記被固定物に当接することを特徴とするクランプを提供する。
【0010】
本発明においては、前記保持爪が設けられた支持部は、隣接する受け部どうしで隣り合わないように、軸方向にずらして配置されていることが好ましい。
【0011】
本発明においては、前記弾性支持部は、発泡樹脂からなることが好ましい。
【0012】
本発明においては、前記通路の底面には、同通路に沿って突条が設けられており、この突条を覆うように前記発泡樹脂が付着されて、前記弾性支持部が形成されていることが好ましい。
【0013】
本発明においては、前記通路の底面には、同通路に沿って溝が形成されており、この溝に前記発泡樹脂が入り込むように充填されて、前記弾性支持部が形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明においては、前記通路の底面には、同通路に沿って設けられた突条と、この突条の少なくとも一側に設けられた溝とが形成されており、前記発泡樹脂は、前記突条を覆うと共に、前記溝に入り込んで、前記弾性支持部が形成されていることが好ましい。
【0015】
本発明においては、前記受け部の支持部のうち、少なくとも1つの支持部の底部には、前記被固定物の底部に弾性的に当接して支持する弾性片が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、受け部に被固定物を挿入すると、該受け部の支持部に被固定物が支持され、保持爪によって抜け止め保持される。このとき、軸方向に配列された支持部どうしの間に設けられる通路には、弾性樹脂からなる弾性支持部が設けられ、この弾性支持部が被固定物に当接して保持爪との間で弾性保持するので、被固定物がガタ付きなく保持されると共に、被固定物の寸法誤差や種類の違いによって外径にばらつきがあっても、該外径のばらつきが弾性樹脂からなる弾性支持部によって効果的に吸収され、汎用性を高めることができる。
【0017】
また、弾性支持部は、被固定物の軸方向に交差して通路に沿って伸びているので、被固定物に軸方向に沿った力が作用しても、弾性支持部の摩擦力によって被固定物の軸方向へのずれを効果的に阻止できる。また、弾性支持部は、通路に沿って長く伸びており、広い面積で通路の底面に固着されているので、被固定物の軸方向に大きな力が作用しても、剥がれにくくすることができる。
【0018】
更に、弾性支持部は、弾性樹脂を通路に沿って付着形成することにより、並列する複数の受け部に対して一度に形成することができるので、クランプの製造作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のクランプの第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】同クランプの正面図である。
【図3】同クランプの平面図である。
【図4】同クランプを示しており、(a)は図3のD−D矢示線における断面図、(b)は図3のE−E矢示線における断面図である。
【図5】同クランプを用いて、被固定物が保持された状態の断面図である。
【図6】本発明のクランプの第2実施形態を示す要部断面図である。
【図7】本発明のクランプの第3実施形態を示す要部断面図である。
【図8】本発明のクランプの第4実施形態を示す要部断面図である。
【図9】本発明のクランプの第5実施形態を示しており、(a)はその一形状を示す要部説明図、(b)は他の形状を示す要部説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜5を参照して、本発明のクランプの第1実施形態について説明する。
【0021】
図1に示すように、このクランプ10は、自動車の燃料系や冷却系等で用いられるパイプやチューブ、或いは、電装部品等で用いられるケーブルやワイヤハーネスなどの、線状、管状又は棒状をなす被固定物P(図5参照)を保持固定するもので、基板11と、該基板11上に並列して設けられ、前記被固定物Pを複数並列させて保持する複数の受け部20とを備えている。
【0022】
この実施形態における基板11は所定方向に長く伸びており、同基板11の表面側(上面側)であって、その長手方向途中には、車体パネル等の被取付部材1(図5参照)にクランプ10を取付けるための、筒状のクランプ取付用柱部13が突設されている。このクランプ取付用柱部13内には、基板11を貫通してボルト挿通孔13aが形成されており(図3,5参照)、このボルト挿通孔13aの内周には、被取付部材1に一体的に突設されたスタッドボルト3(図5参照)に係合するボルト係合爪13bが複数設けられている。また、基板11の裏面側の長手方向両端には、前記被取付部材1の表面に弾性的に当接して、クランプ10のガタ付きを抑える羽根状片15,15がそれぞれ設けられている。
【0023】
そして、前記基板11の表面側には、長手方向に沿って所定間隔を設けて複数の柱部21が立設されている。なお、基板11の長手方向両端部に斜めに対向して配置された柱部21,21は、他の柱部21よりも低く形成されている。これら複数の柱部21と前記クランプ取付用柱部13とにより基板11の上方空間が区分けされて、基板11の長手方向に沿って複数の受け部20が並列して設けられている。そして、複数の被固定物Pが、その軸方向が基板11の長手方向に直交するように、複数の受け部20により並列されて保持されるようになっている。
【0024】
各受け部20は、隣り合う一対の柱部21どうしの間、及び、前記クランプ取付用柱部(本発明における「柱部」をなす)13とそれに隣接する柱部21との間に、被固定物Pを受け入れるように形成された支持部22を、保持された状態での前記被固定物Pの軸方向に沿って複数有している。この実施形態では、基板11の長手方向に沿った両側辺に、円弧状の支持凹部24を設けた支持部22,22がそれぞれ配置されており、これら一対の支持部22,22が各列の受け部20を構成している。
【0025】
また、各受け部20の一方の辺に設けられた支持部22どうしと、他方の辺に設けられた支持部22どうしとは、それぞれが受け部20の並列方向に沿って並んで配置されており、それらの間に複数の受け部20に亘る通路30が形成されている(図1,3,4,5参照)。なお、この実施形態では、通路30の途中にクランプ取付用柱部13があるため、通路30が途中で分断されて2つに分かれている。
【0026】
また、この実施形態では、隣接する支持部22は、受け部20の並列方向に沿って並んで配置されているので、通路30が、基板11の長手方向に沿って直線状に伸びているが、これに限定されるものではない。例えば、軸方向に配置された支持部22どうしの間隔(ここでは軸方向に隣り合う一対の支持部22,22どうしの間隔)が、並列して配置された各受け部20どうしで異なっていても、通路30が、軸方向に配置される支持部22の間を通って、複数の受け部20に亘って連通するように形成されていればよい。
【0027】
更に、各受け部20の軸方向に沿って配置された支持部22の少なくとも1つには、被固定物Pを抜け止め保持する保持爪26が設けられている。この実施形態では、軸方向一方の支持部22の柱部21の上端から、前記支持凹部24に向けて斜め下方に保持爪26が延出していて、この部分で被固定物Pを抜け止め保持するようになっている。なお、軸方向他方の支持部22には保持爪26が設けられておらず、単に支持凹部24によって被固定物Pを受け止め支持するものとなっている。
【0028】
また、この実施形態においては、前記クランプ取付用柱部13の左右両側に位置する受け部20を除く、各受け部20の一方の支持部22に保持爪26,26がそれぞれ設けられており、かつ、保持爪26が設けられた支持部22は、隣接する他の受け部20の保持爪26が設けられた支持部22に隣り合わないように軸方向にずらして配置されている。なお、クランプ取付用柱部13の両側の受け部20,20においては、クランプ取付用柱部13の両側面から突出した保持凸部13c,13cと、それに隣接する保持爪26とにより、被固定物Pが抜け止め保持されるようになっている。また、各支持凹部24の底部には切欠き溝25が形成されており、それにより支持凹部24の側部に設けられた柱部21を撓みやすくさせて、受け部20内に被固定物Pを挿入しやすくなっている。
【0029】
一方、前記通路30は、支持部22,22の間であって基板11の幅方向中央部の表面側に、複数の受け部20の並列方向に沿って被固定物Pの軸方向に交差するように長く伸びる形状となっている。より具体的には、この通路30は、受け部20の並列方向に沿って伸びる平坦な底面31と、この底面31の長手方向両側縁に沿って同底面31に直交して伸びる両内側面32,32とからなり(図1及び図4(b)参照)、一定幅の凹溝状をなして、途中でクランプ取付用柱部13によって分断されるが、基板11の長手方向端部に至るまで連続的に伸びており、その結果、同基板11の長手方向両端部が開口した形態となっている。なお、凹溝状の通路30の底面31は、前記支持部22の支持凹部24の支持面よりも下方となるように形成されている(図2,4参照)。また、この実施形態における通路30は、一定幅の凹溝状をなしているが、内側面32を傾斜面にしたり、底面31を円弧状面にしたりしてもよく、複数の受け部20に亘ってそれらの並列方向に伸びるものであればよい。
【0030】
そして、前記通路30に沿って、その底面31に発泡ポリウレタン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン等の発泡樹脂が付着形成されて、通路30の底面31に、各受け部20に保持された被固定物Pに当接する弾性支持部40が設けられるようになっている。この弾性支持部40は、通路30に沿って設けられていることにより、複数の受け部20の並列方向に沿って被固定物Pの軸方向に交差するように長く伸びた形状となっている。更に、図2、図4(a)、図5に示すように、この弾性支持部40は、各支持部22に設けられた支持凹部24の支持面よりも、上方に位置するように形成されており、被固定物Pが受け部20内に挿入されて、各支持部22の支持凹部24内に入り込むと、弾性支持部40が圧縮されて被固定物Pを弾性的に支持するようになっている。
【0031】
なお、弾性支持部40は、発泡樹脂を付着して形成する代わりに、前記通路の形状に適合するように予め成形された弾性樹脂材料を、接着、嵌着等の方法で固着して形成することもできる。
【0032】
また、上記弾性支持部40以外のクランプ10の各構成部分は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート等の合成樹脂により一体的に成形されている。
【0033】
次に本発明のクランプ10の使用方法及び作用効果について説明する。
【0034】
まず、クランプ10の製造工程について説明する。すなわち、図示しない型枠及び射出成型機により、基板11と複数の受け部20とを備える部分を一体成形して、その部分を前記型枠から取出し、その後、凹溝状に伸びる通路30に沿って、発泡ポリウレタン等の発泡樹脂を、図示しない成形機のノズル等から線状に押出して付着させていく。
【0035】
このとき、前記通路30は、各受け部20の並列方向に沿って、被固定物Pの軸方向に分割配置された各支持部22,22の間に、複数の受け部20に亘って伸びるように形成されている。そのため、発泡樹脂を通路30に沿って途切れることなく連続的に充填可能となり、通路30の底面31に付着させることができ、並列する複数の受け部20に対して一度に弾性支持部40を形成することができるので、クランプ10の製造作業性を向上させることができる。
【0036】
なお、発泡樹脂の代わりに、上記通路30に適合する形状に予め成形された弾性樹脂材料を、前記通路に沿って接着、嵌着などの手段で装着することにより、弾性支持部40を設けることもできる。その場合にも、複数の受部20に亘って一度に弾性支持部40を設けることができるので、製造作業性を向上させることができる。
【0037】
そして、このようなクランプ10の、各受け部20の上方開口から被固定物Pを挿入していくと、各受け部20の軸方向一方の支持部22に設けた保持爪26を撓ませつつ、受け部20内に被固定物Pが挿入されていく。その後、被固定物Pが保持爪26の先端を通過すると、撓み変形した保持爪26が弾性復帰すると共に、支持部22,22の各支持凹部24内に被固定物Pが入り込んでいく。すると、被固定物Pが前記弾性支持部40に当接して、同弾性支持部40が圧縮されて、被固定物Pの底部周面が弾性的に支持されると共に、支持凹部24内周に被固定物Pが当接して、被固定物Pの側部周面が保持され、更に、弾性復帰した保持爪26の先端が被固定物Pの上部周面に係合して、被固定物Pが抜け止め保持される。また、各受け部20の、保持爪26が設けられていない支持部22においては、被固定物Pの側部が支持凹部24により保持される。
【0038】
なお、クランプ10のクランプ取付用柱部13の両側の受け部20,20では、クランプ取付用柱部13の側面から突出した保持凸部13cと保持爪26とが、被固定物Pの上部周面に係合して抜け止め保持すると共に、それ以外の受け部20では、左右一対の保持爪26,26が、被固定物Pの上部周面に係合して抜け止め保持するようになっている。
【0039】
このように、このクランプ10においては、軸方向に配列された支持部22,22どうしの間の通路30に、発泡樹脂からなる弾性支持部40が設けられ、この弾性支持部40が被固定物Pに弾性的に当接して、被固定物Pを抜け止め保持する保持爪26との間で、被固定物Pを弾性保持するようになっているので、被固定物Pがガタ付きなく保持されると共に、被固定物Pの寸法誤差や種類の違いによって外径にばらつきがあっても、該外径のばらつきが発泡樹脂からなる弾性支持部40によって効果的に吸収され、汎用性を高めることができる。なお、被固定物Pがガタ付きなく保持されることによって、被固定物Pの位置ずれや振動等により生じる打音を防止することができる。
【0040】
また、弾性支持部40は、被固定物Pの軸方向に交差して通路30に沿って伸びているので、被固定物Pに軸方向に沿った力が作用しても、弾性支持部40の摩擦力によって被固定物Pの軸方向へのずれを効果的に阻止できる。
【0041】
更に、弾性支持部40は、通路30に沿って長く伸びており、広い面積で通路30の底面31に固着されているので、被固定物Pの軸方向に大きな力が作用しても、剥がれにくくすることができる。
【0042】
また、この実施形態においては、保持爪26が設けられた支持部22は、隣接する受け部20どうしで隣り合わないように軸方向にずらして配置されている。そのため、被固定物Pを挿入する際、保持爪26が設けられた支持部22が撓んでも、隣接する受け部20どうしで撓みが規制されて、干渉してしまうことを防止でき、受け部20の並列方向の間隔を狭くしても被固定物Pの挿入が可能となり、クランプ10をコンパクト化すると共に、被固定物Pの配列間隔を狭くすることができる。
【0043】
上記のように被固定物Pを保持した後、図5に示すように、車体パネル等の被取付部材1に突設されたスタッドボルト3を、クランプ10のクランプ取付用柱部13のボルト挿通孔13aに差し込むと、スタッドボルト3外周のネジ溝にボルト係合爪13bが係合すると共に、クランプ10の羽根状片15,15が被取付部材1の表面に弾性的に当接して、被取付部材1にクランプ10をガタ付きなく取付けることができる。なお、予めクランプ10を被取付部材1に固定しておき、これに被固定物Pを挿入して保持させることもできる。
【0044】
図6には、本発明のクランプの第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0045】
この実施形態のクランプ10Aは、通路30の底面31の幅方向(被固定物Pの軸方向と同じ方向)中央部に、同通路30に沿って伸びる突条35が設けられている。そして、この突条35を覆うように、通路30の底面31に発泡樹脂が付着されて、図6に示す弾性支持部40が形成されるようになっている。この実施形態の突条35は、通路30の底面31から所定高さで設けられた、断面円弧状の細長いすじ状をなしているが、これに限定されず、断面角形状の突条等であってもよい。
【0046】
そして、この実施形態においては、通路30に沿った突条35を覆うように通路30内に発泡樹脂が充填されて、弾性支持部40が形成されるので、突条35の体積分だけ発泡樹脂の充填量を低減することができると共に、突条35の高さ分だけ弾性支持部40が嵩上げされて、弾性支持部40の高さを高くすることができ、更に、突条表面に発泡樹脂が接触することにより、発泡樹脂の接触面積を増大させて、弾性支持部40を通路30の底面31から剥がれにくくすることができる。
【0047】
図7には、本発明のクランプの第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0048】
この実施形態のクランプ10Bは、通路30の底面31の幅方向中央部に、同通路30に沿って伸びる溝36が設けられている。そして、通路30内に発泡樹脂を充填する際に、前記溝36にも発泡樹脂が入り込むように充填されて、図7に示す弾性支持部40が形成されるようになっている。この実施形態の溝36は、通路30の底面31側の上方開口が狭く閉じていて、それよりも下方部分が幅広に拡開したいわゆるアリ溝状をなしているが、これに限定されるものではない。
【0049】
この実施形態においては、上述のように、通路30に沿って形成された溝36に発泡樹脂が入り込んで、弾性支持部40が形成されるようになっているので、発泡樹脂の接触面積を増大させて、弾性支持部40を通路30の底面31から剥がれにくくすることができる。
【0050】
図8には、本発明のクランプの第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0051】
この実施形態のクランプ10Cは、通路30の底面31の幅方向中央部に同通路30に沿って伸びる突条35が設けられていると共に、通路30の底面31であって、前記突条35の両側に、通路30に沿って伸びる一対の溝36,36が設けられている。そして、前記発泡樹脂は、通路30の突条35を覆うと共に、一対の溝36,36にそれぞれ入り込んで、図8に示す弾性支持部40が形成されるようになっている。突条35は第2実施形態のクランプ10Aと同様に断面円弧状をなし、溝36は第3実施形態のクランプ10Bと同様にアリ溝状をなしているが、これらの態様に限定されるものではない。
【0052】
そして、この実施形態においては、突条35により、発泡樹脂の充填量を低減できると共に、弾性支持部40の高さを高くすることができ、更に突条35及び溝36の両者により、発泡樹脂の接触面積を著しく増大させて、弾性支持部40を通路30の底面31から剥がれにくくすることができる。
【0053】
図9には、本発明のクランプの第5実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。この実施形態に係るクランプは、複数の受け部20の支持部22のうち、少なくとも1つの支持部22の底部には、被固定物Pの底部に弾性的に当接して支持する弾性片が形成されている。
【0054】
図9(a)に示すクランプ10Dの所定支持部22の底部には、通路30の一方の内側面32から、上方の保持爪26に向けて円弧状に湾曲するように延出して、撓み可能とされた片持ち梁状の弾性片37が形成されている。
【0055】
一方、図9(b)に示すクランプ10Eの所定支持部22の底部には、中央部が円弧状をなすと共に、その両端が通路30の底面31及び内側面にそれぞれ連結された、撓み可能な枠状の弾性片38,38が形成されている。
【0056】
なお、各クランプ10D,10Eに設けられた弾性支持部40は、片持ち梁状をなした弾性片37の底部、及び、枠状をなした弾性片38の底部よりも、上方に位置するように形成されている。
【0057】
そして、この実施形態においては、受け部20に保持された被固定物Pの底部が、発泡樹脂からなる弾性支持部40で支持されると共に、各弾性片37,38によっても支持されるので、被固定物Pを安定して保持することができる。
【符号の説明】
【0058】
10,10A,10B,10C,10D,10E クランプ
11 基板
20 受け部
22 支持部
26 保持爪
30 通路
31 底面
35 突条
36 溝
37,38 弾性片
40 弾性支持部
P 被固定物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状、管状又は棒状をなす被固定物を保持固定するクランプであって、
基板と、該基板上に並列して設けられ、前記被固定物を複数並列させて保持する複数の受け部とを備え、
前記各受け部は、一対の柱部の間に前記被固定物を受け入れるように形成された支持部を、保持された状態での前記被固定物の軸方向に沿って複数有し、軸方向に沿って配置された複数の支持部の少なくとも1つに、前記被固定物を抜け止め保持する保持爪が設けられており、
前記被固定物の軸方向に配置された各支持部の間には、複数の受け部に亘ってそれらの並列方向に伸びる通路が形成されており、
前記通路に沿ってその底面に弾性樹脂からなる弾性支持部が設けられ、この弾性支持部が前記各受け部に保持された前記被固定物に当接することを特徴とするクランプ。
【請求項2】
前記保持爪が設けられた支持部は、隣接する受け部どうしで隣り合わないように、軸方向にずらして配置されている請求項1記載のクランプ。
【請求項3】
前記弾性支持部は、発泡樹脂からなる請求項1又は2記載のクランプ。
【請求項4】
前記通路の底面には、同通路に沿って突条が設けられており、この突条を覆うように前記発泡樹脂が付着されて、前記弾性支持部が形成されている請求項3記載のクランプ。
【請求項5】
前記通路の底面には、同通路に沿って溝が形成されており、この溝に前記発泡樹脂が入り込むように充填されて、前記弾性支持部が形成されている請求項3記載のクランプ。
【請求項6】
前記通路の底面には、同通路に沿って設けられた突条と、この突条の少なくとも一側に設けられた溝とが形成されており、前記発泡樹脂は、前記突条を覆うと共に、前記溝に入り込んで、前記弾性支持部が形成されている請求項3記載のクランプ。
【請求項7】
前記受け部の支持部のうち、少なくとも1つの支持部の底部には、前記被固定物の底部に弾性的に当接して支持する弾性片が形成されている請求項1〜6のいずれか1つに記載のクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−94745(P2011−94745A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250742(P2009−250742)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】