説明

クリンカアッシュ冷却用循環水処理装置およびそれを備えた石炭焚きボイラ保有設備

【目的】ボイラ燃焼灰を水冷固化させる際に冷却水に浮遊することになる微細な灰粒子を積極的に取り除き、循環水のSS濃度が高いことに原因して起こる冷却水循環系内機器等のトラブルを未然に防止できるようにすること。
【解決手段】冷却水循環トラフ5の下流部に設けられた堰15からの溢流水26を受ける冷却水回収用ボックス16を設け、このボックス16にゼオライト25を輸送用圧力空気とともに噴出する端部開口24aを下方に位置させた粉体空気輸送用パイプ24を突入させておく。循環水中の浮遊粒子28を凝集させるべく圧力空気輸送されてきた粉末ゼオライト25を冷却水回収用ボックス16の水面下に供給するよう、粉体空気輸送用パイプ24の端部開口24aが水中に位置されるとともに、パイプ24の一部が溢流水26中または流落水流動部27を通過するように吊下げ、加振される状態にしておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクリンカアッシュ冷却用循環水処理装置およびそれを備えた石炭焚きボイラ保有設備に係り、詳しくは、石炭火力発電設備等で採用される微粉炭焚きボイラのクリンカアッシュ処理設備に付帯させるに好適な冷却水循環処理装置ならびにそれが設けられているプラント設備に関するものである
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電プラント等では、高温高圧の蒸気を発生させるために微粉炭焚きボイラを使用することが多い。ボイラから出る燃焼灰はフライアッシュとクリンカアッシュとからなるが、前者は排ガスに伴われて出ていく浮遊灰で集塵機により捕捉され、後者は火炉から水溜めに落とされる塊状の灰であり、水冷、固化、水切り、破砕して粒状とされる。いずれも廃棄されるものであるが、その成分の大部分はシリカとアルミナであることから、最近ではフライアッシュセメントの原料として使用されることも多くなってきている。
【0003】
上記したクリンカアッシュの処理設備は、その一例を挙げれば図6のような構成となっている。クリンカアッシュはボイラ41の下方を取り囲むシールシュート42内の空間を通って冷却水循環トラフ43に落とされる。トラフは水を湛えるが、急冷し固化させたクリンカアッシュを運び出すための水切り傾斜部43Aも形成され、例えばドラグチェーンコンベア44を駆動して一連の搬送操作が行われるようになっている。運び揚げられたクリンカはクラッシャ45で破砕され、バケットエレベータ46などによりサイロ47に投入して貯留される。
【0004】
一方、クリンカアッシュを冷却する水は、その消費を抑制するためと環境汚染の原因ともなる浮遊物の系外排出を防止するため、閉鎖回路を循環するように配慮される。トラフに給水する管路48の注水口はクリンカアッシュ移動方向の上流側に配置され、冷却水は水切り傾斜部43Aの手前、すなわち水溜めの下流部水面近くに開口した取入口を持つ導管49から回収される。
【0005】
その回収された冷却水は自然流下によって一旦貯留タンク50に溜められ、炭種によってサルファ分に多少があることに基因して汚染される冷却水の改質を図るべく中性化処理されるなどした後に、スラリポンプ51によって汲み出される。最後に冷却器52に送られ、冷却した後トラフ43に戻される。この冷却水の循環系においては、高熱のクリンカアッシュを急冷したことなどにより発生する微細な灰が冷却水を汚濁する。回収水は水面近くの上澄みであるとはいえ、かなりの浮遊物を伴うことは避けられない。この種の微粉炭燃焼灰クリンカ処理設備でトラフ43がクリンカアッシュを水溜めに落として冷却し、水切り搬出のために凝固クリンカを移動させる搬送装置を底部に装備した水溜め容器としていることは、例えば特開平7−324725号公報にも記載され、すでによく知られたものである。
【0006】
冷却水はポンプ51で加圧されまた冷却器52を通過することから、浮遊物や汚濁物はポンプのインペラや軸封部を傷めたりシュラウドや冷却配管を摩耗させる。すなわち、循環水のSS(suspended solid) 濃度が例えば2,000ppmを越えるとポンプや冷却器のメンテナンス期間を短くしたり部品交換を頻繁に行って機能維持や回復に多大の手間と費用を加えなければならなくなる。このようなことから、循環水に対しては、系路内の各種機器の腐食抑止の観点からのpH調整や、摩耗防止の観点からの浮遊物捕捉が不可欠となる。
【0007】
上記した循環水の浄化操作として、例えばろ過脱水槽を設け、そのクリンカアッシュ沈降部からろ過水を抜いてクリンカアッシュでろ過床を形成させ、これによって槽内スラリーをろ過するようにしたことが、特開平9−79561号公報に開示されている。また、トラフに循環水の水位を保つためのオーバフローボックスを設け、溢流水を別途設けた水槽に導き、そこでクリンカアッシュを沈澱させ、その上澄みをポンプによってトラフに戻す例が、特開平10−332129号公報に記載されている。いずれにしても、循環水中の浮遊物は重力沈降により分離されるにとどまる。
【0008】
ちなみに、排水のpH制御をしやすくするため排水中のSS濃度を変えることが、特開平7−108278号公報に記載されている。しかし、これはSS濃度を上げることを目的としており、例えばベントナイト粉末等を混入させるといった添加処理についての開示となっている。すなわち、クリンカアッシュの処理用循環水のSS濃度を下げるということは提案されるところでない。
【特許文献1】特開平7−324725号公報
【特許文献2】特開平9−79561号公報
【特許文献3】特開平10−332129号公報
【特許文献4】特開平7−108278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記した問題に鑑みなされたもので、その目的は、燃焼灰を水冷固化させる際に冷却水に浮遊することになる微細な灰粒子を積極的に取り除き、循環水のSS濃度が高いことに原因する系内機器等のトラブルを未然に防止できるようにしておくこと、SS濃度を低下させるにふさわしい凝集剤であって、生じた凝集物を産業資源化するなどその利用の途が図られるようにすること、凝集剤の循環水への円滑な供給と凝集作用を促進すること、を実現しようとするクリンカアッシュ冷却用循環水処理装置およびそれを備えた石炭焚きボイラ保有設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、石炭焚きボイラ燃焼灰のクリンカアッシュを水溜めに落として冷却し、水切り搬出のために凝固クリンカを移動させる搬送装置を装備した冷却水循環トラフに付帯される循環水処理装置に適用される。その特徴とするところは、図1を参照して、冷却水循環トラフ5の下流部に設けられた堰15からの溢流水26を受ける冷却水回収用ボックス16が設置される。このボックス16には、ゼオライト25を輸送用圧力空気とともに噴出する端部開口24aを下方に位置させた粉体空気輸送用パイプ24が突入される。循環水中の浮遊粒子28を凝集させるべく圧力空気輸送されてきた粉末ゼオライト25を冷却水回収用ボックス16の水面下に供給するよう、粉体空気輸送用パイプ24の端部開口24aが水中に位置されるとともに、パイプ24の一部が溢流水26中または流落水流動部27を通過するように吊下げ状態におかれる。そして、マイクロフィーダ19(図2を参照)から微量切り出しされたゼオライト25の粉体空気輸送用パイプ24の内壁付着を抑制する振動をこのパイプに自然発生的に与え、循環水のSS濃度を低減させるゼオライト25の供給量の精度向上が図られるようにしたことである。
【0011】
粉体空気輸送用パイプ24は変形および復元可能なゴムホースまたは図3に示したフレキシブルチューブ30としておくとよい。
【0012】
粉体空気輸送用パイプ24の水中に位置する端部開口24aは、図4に示すように、冷却水回収用ボックス16と次処理槽31とをつなぐ導出管8内に臨まされる。その導出管は、少なくとも粉体空気輸送用パイプ24の端部開口24aの位置する部分から以降が脱気可能な処理槽31まで、噴出された圧力空気を逆流させない配置で延ばされる。
【0013】
粉体空気輸送用パイプ24の上流端は、ゼオライト25を切り出す図2に示したマイクロフィーダ19の出口に連なるエジェクタ21に接続される。マイクロフィーダ19は、冷却水循環トラフ5に供給される循環水のSS濃度を検出することによって発せられる信号により、その切り出し量が制御されるようにしておく。
【0014】
ゼオライト25は、石炭の燃焼によって発生したフライアッシュを用いて人工的に製造された凝集剤としての人工ゼオライトとしておくとよい。
【0015】
上記したいずれかのクリンカアッシュ冷却用循環水処理装置を使用すれば、石炭焚きボイラ燃焼灰のクリンカアッシュ処理設備さらには石炭火力発電設備など石炭焚きボイラ保有プラントにおける一部を構成させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、冷却水循環トラフの下流部に堰を設けてトラフ上澄みを冷却水回収用ボックスに溢流させ、このボックス以降を流れる回収水の中にゼオライトを輸送用圧力空気とともに噴出させることができる構造としているので、圧力空気噴出直後の水の流れが乱され、これがゼオライトの拡散を助長して浮遊物との接触の機会を高め、凝集性を向上させる。
【0017】
ゼオライトを圧送する粉体空気輸送用パイプはその一部が溢流水中または流落水流動部を貫くように吊下げられるので、流水で叩かれることによりパイプがバタつく。圧力空気噴出の反動による端部開口近傍部の複雑な挙動が加わることもあって、粉末ゼオライトがパイプの内壁に付着しにくくなり、また付着しても簡単に剥がれる。パイプ内に残すことのない安定したゼオライトの搬送は回収水に対して所定量の供給を実現し、期待どおりの凝集効果を発揮させやすくする。
【0018】
上記から分かるように、搬送歩留りを配慮した過剰供給は、その必要性がなくなる。回収水のSS濃度が低下すれば、循環水系における管路や機器での摩耗や損傷の発生は抑えられる。粉体空気輸送用パイプの振動は自然発生的なものとして与えられるから、ゼオライト輸送系に加振器を敢えて備える必要はなく、設備の簡素化や低廉化が図られ、保守点検の負担増も回避される。
【0019】
粉体空気輸送用パイプを変形および復元可能なゴムホースやフレキシブルチューブとしておけば、その一部が加振されるだけで振動しやすくまた振動を伝達させやすくなる。したがって、ゼオライト粉末がパイプ内壁に付着することがあっても付着壁の僅かな曲げや伸縮で剥離が促され、供給は連続的となって量的な精度も高く保持される。
【0020】
粉体空気輸送用パイプの水中に位置する端部開口を、冷却水回収用ボックスと次の処理槽とをつなぐ導出管内に臨ませておけば、圧力空気が回収水に混合された状態を脱気可能槽まで持続させやすくする。気泡の挙動によって導出管内の水流が不規則に変化し、ゼオライトとの接触の機会が増やされ、また浮遊物や凝集粒子を沈降させることなく水流に乗せて円滑に送り出す。
【0021】
導出管は脱気可能な処理槽に接続され、少なくとも粉体空気輸送用パイプの端部開口の位置する部分から以降が噴出させた圧力空気の逆流をきたさない配置とされていれば、回収水の流れが常時円滑となり、変動のない水量の流通は循環水系の各種機器の安定した運転を実現し、保守点検作業の負担を軽減する。
【0022】
粉体空気輸送用パイプの上流端をゼオライトを切り出すマイクロフィーダ出口に連なるエジェクタに接続させておけば、切り出し量が微量であってもエジェクタを通過する際に発生する負圧により確実に吸い出され、それを圧力空気に乗せて運び出すことができる。ゼオライトの有効消費率は極めて高くなり、また切り出された所定量が変動することなく連続して回収水に供給され、間断なく流れるゼオライトにより凝集作用を安定してかつ集中的に行わせることができる。
【0023】
冷却水循環トラフに供給される循環水のSS濃度を検出することによって発せられる信号によりマイクロフィーダの切り出し量を制御できるようにしたので、マイクロフィーダはその都度予め決められた定量的な切り出し動作をするだけでよく、それゆえ切り出し中に微妙な変化を与える速度制御も必要でなくなる。
【0024】
ゼオライトとしてフライアッシュから人工的に製造したものを使用しておけば、凝集物の成分もフライアッシュに酷似したものとなり、他の人工ゼオライトや天然ゼオライトを凝集剤とした場合に混入することになる異質物はなく、したがって、その凝集物を同一事業所で発生するバグフィルタ捕捉フライアッシュや冷却固化粉砕クリンカアッシュに混ぜても、フライアッシュセメントの原料としての一定品質が確保され、別途廃棄処分する必要もなくなる。
【0025】
以上述べたいずれのクリンカアッシュ冷却用循環水処理装置によるも、これを採用したクリンカアッシュ処理設備や石炭火力発電設備を形成すれば、その循環水のSS濃度調整作用は高く発揮され、多大の手間と費用を要する石炭焚きボイラ保有プラント設備の保守点検を軽減し、その自動化にもおおいに寄与するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明に係るクリンカアッシュ冷却用循環水処理装置およびそれを備えた石炭焚きボイラ保有設備を、その実施の形態を表した図面に基づいて詳細に説明する。図2は石炭火力発電所における石炭焚きボイラ燃焼灰のクリンカアッシュ処理設備1であって、それに適用されたクリンカアッシュ冷却用循環水処理装置2の全体系統を示す。なお、クリンカアッシュ処理設備は、水溜め部3と水切り傾斜部4とを持つ冷却水循環トラフ5、その底部を移動してクリンカアッシュを搬送し水切りするドラグチェーン方式などの水中コンベア6を備える。このような構成は、背景技術の項で述べたものと実質的に何ら変わるものでない。
【0027】
その冷却水循環トラフ5に供給される冷却水は循環方式が採られており、クローズドループで水質改善と冷却処理が施されるようになっている。そのために以下の構成をとるクリンカアッシュ冷却用循環水処理装置2が付帯される。その循環系は冷却水循環トラフ5からクリンカ冷却後の冷却水7を回収する導出管8と放熱させた冷却水をトラフ5に戻す導入管9からなる管路系をなし、その途中に中間槽10、沈澱槽11、冷却水送出用のスラリポンプ12、循環水冷却器13、SS濃度検出器14が設置される。
【0028】
導出管8は、クリンカアッシュを冷却した後トラフ5から溢れた冷却水、すなわち水溜め部3の下流部における上澄みを処理槽10,11まで流すもので、トラフ5における冷却水の水位を保つための堰15を越えた流れを受ける冷却水回収用ボックス16に接続されている。導入管9はSS濃度調整後の冷却水7をトラフ5に戻すためのもので、トラフにおけるクリンカアッシュの移動方向上流側に注水口を臨ませている。上記した中間槽10は例えばpH調整用であり、沈澱槽11は回収水中の浮遊物を沈降させ、底部から沈澱した凝集物17を取り出せるようになっており、また上澄みの排出口18も持つ。なお、中間槽10の水位は冷却水回収用ボックスのそれより低くなるよう、また沈澱槽11のそれは中間槽の水位より低くなるように配置されるが、いずれも脱気可能な槽構造すなわち水面上は大気開放とされ、仮に配列が逆になってもいずれか上流側に位置する槽で回収水からの圧力空気の放散を可能にしている。
【0029】
SS濃度検出器14は沈澱槽11から汲み出されて冷却器13を通過した冷却水の流れをブランチさせた箇所に設けられ、トラフ5に返される冷却水のSS濃度を計測する。これは、例えば吸光度測定法や散乱光測定法等によって水中に浮遊する物質の濃度を検出するものである。このような各種装置が介在された循環水系に加えて、本装置には凝集剤としての粉末ゼオライトを循環水に供給するためのゼオライト輸送系も設けられる。その主要構成は粉末ゼオライトを微量切り出すマイクロフィーダ19と、切り出し物を空気輸送する圧力空気流通管路20である。
【0030】
マイクロフィーダ19は回転式の粉体微量供給機としておけばよく、内蔵ロータの回転持続時間によって切り出し量が決まる比較的単純な駆動制御方式のもので十分である。これによって切り出されたゼオライトを気流搬送するために、マイクロフィーダ19の直下にエジェクタ21が取りつけられ、これに圧力空気を流してスロートとディフューザを通過する間に発生する負圧によってゼオライトを吸引させるようにしている。なお、マイクロフィーダの上方には投入ホッパ22や貯蔵ホッパ23が設けられ、それぞれには必要に応じてブリジブレーカとしての圧力空気が供給されるようになっている。
【0031】
回収された冷却水7にゼオライトを供給する粉体空気輸送用パイプ24の先端部分は、先に述べた冷却水回収用ボックス16に突入するよう設置される。このボックスは溢流水を受けるためのもので、冷却水循環トラフ5の下流部の水切り傾斜部4に近いところの側壁部に設けられる。図1においては冷却水回収用ボックス16がトラフ5の側部に一体的に取りつけられているが、堰15からのオーバフローを受けることができる容器でかつ導出管8を接続することができるものであれば、トラフ5から少し離れた独立のボックスとしても差し支えない。
【0032】
この冷却水回収用ボックス16に挿入されている粉体空気輸送用パイプ24は、ゼオライトを輸送用圧力空気とともに噴出する端部開口24aを下方とすべく、吊り下げ状態で設置される。すなわち、回収水中の浮遊粒子を凝集させるべく圧力空気輸送されてきた粉末ゼオライト25を冷却水回収用ボックス16の水面下に供給するよう端部開口24aが水中に位置されるとともに、パイプ24の一部が溢流水26の中または流落水流動部27を上下方向に通過するよう配置される。その吊り下げ位置は何処でもよいというものではなく、少し後で触れるが、粉体空気輸送用パイプ24が水流の勢いや攪乱流れによる非定常的な力を受けて自然発生的に適度に振動できる位置とされる。
【0033】
粉体空気輸送用パイプは例えば20mm径のゴムホースとされ、曲げや伸縮変形および復元可能なものであると、振動を発生したとき内壁に付着するゼオライトの剥離を促し、定量供給精度の向上が図られる。すなわち、ゼオライトは一定量で流されることになり、回収水中の細かい浮遊物28の凝集効果が高まる。供給量が変化したなら凝集未作用のままゼオライトが流出したり、浮遊物の凝集化が進まないまま冷却水を循環させてしまったりするのを防止しておく意図である。なお、図1の例では粉体空気輸送用パイプ24は冷却水回収用ボックス16の側面に固定したサポート金具29により、その部分が垂直となるように保持されているが、その保持位置・固縛強さや保持領域の大小は振動発生度との兼ね合いで適宜定めればよい。なお、ゴムホースに限らず、図3に示したごとくのフレキシブルチューブ30といったようなものにしてもよい。
【0034】
ところで、粉体空気輸送用パイプ24を振動させるだけでなく、ゼオライトが気流搬送されることに鑑み、その圧力空気の放出のための扱いも見落とせない。すなわち、ゼオライトとともに噴出した圧力空気が循環水の流れに逆行するように挙動したのでは、冷却水の流れの円滑を欠いたり、冷却水回収用ボックス16から溢れさせたりする。そこで、図1から分かるように、粉体空気輸送用パイプ24の水中に位置する端部開口24aは、冷却水回収用ボックス16と次の処理槽とをつなぐ導出管8内に臨んだ格好とされる。もちろん、導出管8が下り傾斜していると圧力空気は逆流することになるから、圧力空気を水流に伴わせて移動させるためには、少なくとも図4中の各図に示したごとくの配慮が必要となる。
【0035】
例えば図4の(a)のように導出管8は水平に保たれ、しかしその端部開口24aは冷却水回収用ボックス16の水面より下方となるように、導出管8には冷却水回収用ボックス16の底部に接続できるエルボ部8aが形成される。導出管8が接続される処理槽31は上で述べた中間槽であれ沈澱槽であれ脱気可能な槽すなわち水面上が大気開放された槽としておけば、導出管8を通過した圧力空気が槽内流入口31aで弾けるごとく冷却水7から分離する。いずれにしても、処理槽に至るまで、気泡の挙動によって導出管内の水流が不規則に変化し、ゼオライトによる凝集の機会が増やされ、また浮遊物や凝集粒子を沈降させることなく水流に乗せて送ることができる。
【0036】
ところで、凝集剤として使用されるゼオライトは、フライアッシュから人工的に製造された凝集剤としておく。すなわち、石炭灰には石炭に含まれていた無機質成分が燃焼後に酸化物として残るが、これをアルカリで処理すればゼオライトとして結晶化することができる。この種のゼオライトをさらに加工して調湿材として使用することの例が、特開2005−60175に提案されているほどである。
【0037】
その提案とは分野が些か異なるが、フライアッシュから人工的に製造されたゼオライトをクリンカアッシュ冷却用循環水処理に使用することは、おおいに意義あることである。すなわち、石炭焚きボイラから排出されるボトムアッシュとフライアッシュは言うまでもなく石炭に含まれていた珪素分やアルミ分が酸化してシリカやアルミナとなっており、これが灰の80%もしくはそれ以上を占めている関係で、フライアッシュセメントの好適な原料となる。その場合に、クリンカアッシュ冷却用循環水系で捕捉された凝集物17(図2を参照)の組成がそれに近ければ混入させても原料としての品質は変わらず、しかも他の人工ゼオライトや天然ゼオライトを使用したなら混入するであろう異質物の存在もないから、同一事業所で発生するバグフィルタ捕捉フライアッシュや水冷固化粉砕クリンカアッシュに混ぜても、産業用原料としての一定品質は保たれることになる。凝集物を別途廃棄処理する必要もなくなるわけで、極めて都合のよいことが分かる。
【0038】
以上述べた構成の主たるところは上記の説明から分かるように、まず、冷却水循環系とゼオライト輸送系からなる。前者においては、冷却水循環トラフの下流部側壁に堰15(図1を参照)が設けられ、そこからの溢流水26を受けられるように冷却水回収用ボックス16を設置し、このボックスの例えば底部に導出管8を接続してそこを通る流れを中間槽等の処理槽に導くことができるようにしておく。その際、回収水に噴出させた圧力空気を導出管8内で逆流させることなく回収水に伴われて流すことができる配置とするとともに(図4を参照)、脱気可能な処理槽31に接続しておくと回収水の流れが常時円滑となり、変動のない水量の流通は循環水系の各種機器の安定した運転を促し、保守点検作業の負担を軽減する。
【0039】
一方、導出管8に人口ゼオライト25を圧気搬送して噴出させるための輸送系を形成させ、マイクロフィーダ19(図2を参照)での定量切り出しを可能にするとともに所定量の運び出しを行うべく吸引用エジェクタ21を設け、それに粉体空気輸送用パイプ24を接続する。その端部開口24a(図1を参照)は回収水が流れる導出管8内にゼオライトを供給することができる位置とされ、併せてパイプが堰15を越える溢流水26やその流落水の流動部27を貫くように配置し、パイプを加振できるようにしておく。
【0040】
ゼオライトは圧力空気によりパイプ輸送されるが、それは例えば1日に2度の各1時間程度である。圧力空気として事業所内で随時使用可能な各種作業用エア(工場エア)を充てることで可能となり、したがって、この装置のために特に圧力源を準備しておく必要のないことが多い。ゼオライト非送給時も流しておくことに問題はなく、送給時間帯の前後でパイプをボックスからいちいち抜き差しする必要もない。パイプを抜き取らず圧力空気を流し放しにしておけば、導出管8内での浮遊物の沈降や内壁付着を防止しておくことができる。それだけでなく、端部開口24aからの冷却水侵入も阻止され、次のゼオライトが供給されたとき侵入水による付着や膠着によるパイプの閉塞を起こさないようにしておくことができる。工場エアを分岐して圧力空気の一部を回せば、投入ホッパ22等の内部でのゼオライト流動性保持のための攪拌や乾燥に供することもできる。
【0041】
ゼオライトによる凝集作用に着目して述べれば、圧力空気噴出直後の回収水の流れが乱され、これがゼオライトの拡散を助長する。導出管8内の浮遊物との接触の機会が高められ、凝集性の向上が図られる。なお、ゼオライトの供給は回収水のみを対象とするので、その消費量も抑えられる。ゼオライトを圧送する粉体空気輸送用パイプ24は流水中に吊下げられた格好とされるので、ゴムホースやフレキシブルチューブであると水勢でその一部が加振されるだけで振動しまた振動を伝達しやすく、おおいにバタついたり付着壁の曲げや伸縮で剥離が促され、供給量のバラツキを可及的に少なくすることができる。圧力空気噴出による反動は端部開口近傍部の動きをさらに複雑なものにする。それゆえ、ゼオライトがパイプ内壁に付着せず、また付着しても簡単に剥離させることができる。
【0042】
パイプ内に残すことのない安定したゼオライトの搬送は回収水に対して所定量の供給を実現し、理論的経験則的に得られる予測どおりの凝集効果を発揮させることができる。流出のばらつきによる歩留りを配慮した過剰な供給を行う必要もない。回収水のSS濃度が例えば1,000ppmより低下すれば、循環水系における管路や機器での摩耗や損傷の発生は抑えられる。粉体空気輸送用パイプの振動は自然発生的なものであるからゼオライト輸送系に加振器を備える必要もなく、保守点検の負担増も回避される以上に循環水系でのメンテナンス作業の軽減が図られ、
【0043】
粉体空気輸送用パイプの上流端はゼオライトを切り出すマイクロフィーダ19の出口に連なるエジェクタ21に接続されるから、切り出し量が微量であってもエジェクタを通過する際に発生する負圧により確実に吸い出される。それを圧力空気に乗せて運び出せばゼオライトの消費効率は極めて高くなり、また切り出された所定量は変動することなく連続して回収水に供給される。間断なく流れるゼオライトにより、凝集作用は安定的に発生しかつ集中する。冷却水循環トラフに供給される循環水のSS濃度が例えば1,000ppmを越えたと検出されると、それを受けた信号がマイクロフィーダを稼働させる。この場合、切り出し量を変化させるべくロータリバルブの回転速度をきめ細かく制御するという必要はなく、その都度予め決められた定量切り出しとしておけばよい。
【0044】
SS濃度検出器が1,000ppmを下回ったことを検出するまでゼオライトの供給は続けられるが、切り出し量に多少のバラツキがあっても、それが直ちに凝集作用に敏感に影響するものでない。マイクロフィーダの稼働をオンオフ制御で済ましておけば、コントローラ32も簡易なものでよくなる。マイクロフィーダはかなりの待機時間をおいて運転されることになるが、吸湿性の高いゼオライトの切り出しを滑らかにするためのヒータ33A,33Bによる加熱やその稼働率も低く抑えておくことができる。
【0045】
ところで、図4の(b)の例では導出管8を登り傾斜させているが、冷却水回収用ボックス16の水面16aと処理槽31の槽内流入口31aの落差は同じに描かれている。それゆえ、冷却水を無動力で処理槽に向かって流すことに何の問題もなく、圧力空気も導出管8から(a)の場合と同様に放出することができる。この場合、粉体空気輸送用パイプ24の首下が長くなる関係で振動はより受けやすくなり、ゼオライトの供給面では都合のよいことが多い。その反面、粉体空気輸送用パイプ24が導出管8内で流されることによる内壁との擦れも多くなるが、いずれにしてもサポート金具29から少し上の部分等で交換できる構造にしておけば都合のよいことが多い。粉体空気輸送用パイプ24は冷却水の流れで押し込まれようとするが、端部開口24aには圧力空気の噴出反力が働くので想像するほどに内壁接触が激しくなるというものでもない。
【0046】
図4の(c)は、導出管8を冷却水回収用ボックス16の側面16bに接続した例である。この場合も、粉体空気輸送用パイプの端部開口24aは導出管8に差し込まれるが、ゼオライトと圧力空気が導出管8内に入るような位置であれば、(d)のように導出管の入口に臨ませるだけでも差し支えない。圧力空気の逆流がなければ、特に問題となることはない。ちなみに、図5に示すように、粉体空気輸送用パイプ24を冷却水回収用ボックス16に浸漬させるだけとするなら、冷却水回収用ボックス16に取り外し自在なフード34を設け、圧力空気の浮上による冷却水の飛散を防止し、圧力空気は矢印35などいずれかの方向へ放出できるようにしておけばよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るクリンカアッシュ冷却用循環水処理装置における冷却水回収用ボックス近傍の拡大斜視図。
【図2】クリンカアッシュ冷却用循環水処理装置の全体系統図。
【図3】粉体空気輸送用パイプをフレキシブルチューブとした例の斜視図。
【図4】粉体空気輸送用パイプの導出管挿入形態の幾つかの模式図。
【図5】粉体空気輸送用パイプの端部開口を冷却水回収用ボックス内に臨ませた例の斜視図。
【図6】クリンカアッシュ冷却用循環水処理機能を持たない従来の石炭焚きボイラ燃焼灰のクリンカアッシュ処理設備の一例の構成図。
【符号の説明】
【0048】
1…クリンカアッシュ処理設備、2…クリンカアッシュ冷却用循環水処理装置、3…水溜め部、4…水切り傾斜部、5…冷却水循環トラフ、7…冷却水、8…導出管、14…SS濃度検出器、15…堰、16…冷却水回収用ボックス、17…凝集物、19…マイクロフィーダ、20…圧力空気流通管路、21…エジェクタ、24…粉体空気輸送用パイプ、24a…端部開口、25…粉末ゼオライト、26…溢流水、27…流落水流動部、28…浮遊物、30…フレキシブルチューブ、31…処理槽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭焚きボイラ燃焼灰のクリンカアッシュを水溜めに落として冷却し、水切り搬出のために凝固クリンカを移動させる搬送装置を装備した冷却水循環トラフに付帯される循環水処理装置において、
上記冷却水循環トラフの下流部に設けられた堰からの溢流水を受ける冷却水回収用ボックスが設置され、
該冷却水回収用ボックスには、ゼオライトを輸送用圧力空気とともに噴出する端部開口を下方に位置させた粉体空気輸送用パイプが突入され、
循環水中の浮遊粒子を凝集させるべく圧力空気輸送されてきた粉末ゼオライトを前記冷却水回収用ボックスの水面下に供給するよう粉体空気輸送用パイプの端部開口が水中に位置されるとともに、パイプの一部が溢流水中または流落水流動部を通過するように吊下げ状態におかれ、
マイクロフィーダから微量切り出しされたゼオライトの粉体空気輸送用パイプ内壁付着を抑制する振動をこのパイプに自然発生的に与え、循環水のSS濃度を低減させるゼオライトの供給量の精度向上が図られるようにしたことを特徴とするクリンカアッシュ冷却用循環水処理装置。
【請求項2】
前記粉体空気輸送用パイプは変形および復元可能なゴムホースまたはフレキシブルチューブであることを特徴とする請求項1に記載されたクリンカアッシュ冷却用循環水処理装置。
【請求項3】
前記粉体空気輸送用パイプの水中に位置する端部開口は、前記冷却水回収用ボックスと次処理槽とをつなぐ導出管内に臨んでいることを特徴とする請求項1に記載されたクリンカアッシュ冷却用循環水処理装置。
【請求項4】
前記導出管は、少なくとも粉体空気輸送用パイプの端部開口の位置する部分から以降が脱気可能な処理槽まで、噴出された圧力空気を逆流させない配置で延ばされていることを特徴とする請求項1に記載されたクリンカアッシュ冷却用循環水処理装置。
【請求項5】
前記粉体空気輸送用パイプの上流端は、ゼオライトを切り出すマイクロフィーダ出口に連なるエジェクタに接続されていることを特徴とする請求項1に記載されたクリンカアッシュ冷却用循環水処理装置。
【請求項6】
前記マイクロフィーダは、冷却水循環トラフに供給される循環水のSS濃度を検出することによって発せられる信号により、その切り出し量が制御されるようになっていることを特徴とする請求項5に記載されたクリンカアッシュ冷却用循環水処理装置。
【請求項7】
前記ゼオライトは、石炭の燃焼によって発生したフライアッシュを用いて人工的に製造された凝集剤としての人工ゼオライトであることを特徴とする請求項1に記載されたクリンカアッシュ冷却用循環水処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7に記載されたクリンカアッシュ冷却用循環水処理装置を備えた 石炭焚きボイラ燃焼灰のクリンカアッシュ処理設備。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7に記載されたクリンカアッシュ冷却用循環水処理装置を備えた 石炭火力発電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−100155(P2008−100155A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284262(P2006−284262)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(591078262)株式会社トーヨーコーポレーション (1)
【Fターム(参考)】