説明

クリープ歪低減型鉄筋コンクリート柱部材の製造方法

【課題】プレキャストコンクリート製品1の製造において、養生過程で断面内の温度勾配を極力小さくして内部のひび割れの発生を防止し、圧縮荷重によるクリープに対する強度の高い製品を提供する。
【解決手段】コンクリート3を、予め鉄筋12を配設した型枠2内に充填し、このコンクリート3の養生のための熱媒体の温度を、水和反応に伴うコンクリート3の中心温度の変化に追随するように制御することによって、養生過程でのコンクリート内部の温度勾配を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリープ歪が小さい鉄筋コンクリート柱部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物において、柱は上階の部材や積載物などの重量により鉛直方向に生じる圧縮荷重を長期的に負担する部分である。このうち鉄筋コンクリート建物において、柱の構成材料であるコンクリートは、その圧縮荷重を支える役目を担っているが,荷重が作用すると瞬時に圧縮歪が増大し,さらにその荷重が持続すると圧縮歪が時間と共に増大するクリープ特性を持つため、コンクリート柱は、上階からの荷重を支えつつ圧縮歪(クリープ歪)を増加させていく。コンクリート柱に生じるクリープ歪は、鉛直方向に受ける圧縮荷重が大きいほど、また、圧縮荷重が加わった時期がコンクリートの材齢で早ければ早いほど大きくなる。このため、負担する圧縮荷重が大きい超高層建物の下層階の柱では、クリープ歪が大きくなることが予想される。
【0003】
コンクリート柱のクリープ歪が著しく大きくなった場合は、柱主筋に作用する圧縮応力が増加して、地震時に鉄筋の降伏やコンクリートの圧縮降伏が起こったり、同じフロアの各柱が負担する圧縮荷重の不均衡が大きくなって、梁や床板にひび割れが生じたり、壁や建具枠がゆがんで、建具と建具枠の間に隙間が生じ、防音・遮音効果と保温効果が下がったり、タイルなどの外壁仕上げ材がひび割れたり、あるいは剥離・剥落するといった問題が指摘される。
【0004】
したがって、建物の構造種別・用途・仕上げ材の種類などによって変形の許容値を設定する必要がある。しかし、クリープ歪は温度環境や湿度環境等の影響を受けやすく、ばらつきの大きい特性値であるため、現在の設計手法ではクリープ歪の正確な推定は難しく、非常に大きな安全率をみて許容値を設定しているのが現状である。
【0005】
そして、クリープ歪の増大が予想される場合には、建物の機能性と居住性を確保でき、仕上げ材などの非構造部が損傷を受けない耐久性に優れた設計・施工を行う必要があり、具体的には、柱断面を大きくするといった方法が考えられる。しかし、柱断面を大きくすると、その分、建物内の空間の自由度が減少することになってしまう。また、外壁仕上げ材などの非構造部に直接対策を施す方法は特に無く、高層建物では、クリープ歪が要因のひとつと推測されるタイルなどのひび割れや剥離、剥落等の不具合が頻繁に報告されている。
【0006】
上述のようなコンクリート柱のクリープ歪を低減するには、高強度コンクリートによるプレキャストコンクリート柱を用いることが有効である。すなわち、プレキャストコンクリート柱の場合、工場で製造され、養生により所定の強度が発現された後に現場に搬送されて建て込まれるため、圧縮荷重が加わる材齢が遅く、したがって、現場打ちのコンクリート柱に比較して、クリープ歪を小さくすることができるのである。また、プレキャストコンクリート製品の製造では、製品から早期に脱型して型枠を転用することにより、型枠の使用効率を上げるため、高温養生(又は蒸気養生)を行う場合がある。すなわち、型枠へのコンクリートの打設後、そのまま放置する自然養生の場合は、製品が脱型可能な強度を発現するまでに1週間程度かかるが、例えば摂氏65度程度の温度で蒸気養生した場合は、半日程度でこの強度にすることができる。
【0007】
なお、従来技術によるプレキャストコンクリート柱としては、下記の特許文献1に記載のものが知られており、蒸気養生の技術としては、下記の特許文献2に記載のものが知られている。
【特許文献1】特開2003−127119号公報
【特許文献2】特開2002−249386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、プレキャストコンクリート柱の製造において、型枠にコンクリートを打設した後で高温養生を行う場合は、養生温度が最高温度に達したら自然冷却させるが、特に高強度コンクリートの場合は、部材断面内に温度勾配により発生する温度応力が大きくなり、コンクリート内部にひび割れを生じる危険性が、普通強度のコンクリートに比較して非常に高くなる問題があった。
【0009】
本発明は、上述のような問題に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、鉄筋コンクリート柱部材の製造において、養生過程で断面内の温度勾配の発生を極力小さくして内部のひび割れの発生を防止し、圧縮荷重によるクリープに対する強度の高い製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係るクリープ歪低減型鉄筋コンクリート柱部材の製造方法は、コンクリートを、予め鉄筋を配設した型枠内に充填し、このコンクリートの養生のための熱媒体の温度を、水和反応に伴うコンクリート中心温度の変化に追随するように制御するものである。鉄筋コンクリート柱部材の製造において、とくに高強度コンクリートを用いた場合は、水和反応に伴う発熱による温度上昇が大きいため、コンクリート断面内における温度勾配が大きくなって、温度応力によるひび割れが発生する危険があるが、本発明では、コンクリートの養生のための熱媒体の温度を、水和発熱によるコンクリート中心温度の変化に追随するように制御することによって、コンクリートの水和反応が促進されるばかりでなく、コンクリート断面内における温度勾配が小さくなって、温度応力を低減することができる。
【0011】
請求項2の発明に係るクリープ歪低減型鉄筋コンクリート柱部材の製造方法は、請求項1に記載の方法において、コンクリートにポゾランが添加されるものである。ポゾランは、フライアッシュ、珪酸白土、珪藻土、シリカフュームなどのシリカ質の微粉末であり、それ自体には水硬性はないが、セメントの水和反応で生成された水酸化カルシウムと反応して、珪酸カルシウム水和物等を生成し、コンクリートを緻密化する作用、及びセメントの水和発熱を緩和する作用を有する。
【0012】
請求項3の発明に係るクリープ歪低減型鉄筋コンクリート柱部材の製造方法は、請求項1に記載の方法において、コンクリートを型枠内に充填することによって、断面が、製造すべき鉄筋コンクリート柱部材と同等の大きさ、及び同等の材質のコンクリートサンプルを成形し、前記型枠内に予め設置した温度センサによって、前記コンクリートサンプルの断面中央部の温度履歴を調査し、熱媒体の温度制御は、前記温度履歴に基づいてなされるものである。
【0013】
請求項4の発明に係るクリープ歪低減型鉄筋コンクリート柱部材の製造方法は、請求項1に記載の方法において、熱媒体として面発熱体を用い、コンクリートの養生の際に、この面発熱体で型枠を覆って発熱させるものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明に係るクリープ歪低減型鉄筋コンクリート柱部材の製造方法によれば、高強度コンクリートを用いても、養生過程での水和熱による断面内の温度勾配が小さく抑えられるので、内部のひび割れの発生を防止し、圧縮荷重によるクリープに対する強度の高い鉄筋コンクリート柱部材を提供することができる。
【0015】
請求項2の発明に係るクリープ歪低減型鉄筋コンクリート柱部材の製造方法によれば、請求項1による効果に加え、ポゾラン反応やマイクロフィラー効果によって、コンクリート組織が緻密化されるので、圧縮荷重に対するクリープ歪を一層低減した鉄筋コンクリート柱部材を提供することができる。
【0016】
請求項3の発明に係るクリープ歪低減型鉄筋コンクリート柱部材の製造方法によれば、コンクリートの養生するための熱媒体の温度制御を高精度で行うことができる。
【0017】
請求項4の発明に係るクリープ歪低減型鉄筋コンクリート柱部材の製造方法によれば、熱媒体として面発熱体を用いることによって、現場打ちによる鉄筋コンクリート柱部材の施工に際しても、コンクリートの養生のための熱媒体の温度を、水和発熱によるコンクリート中心温度の変化に追随するように制御することができるので、内部のひび割れの発生を防止し、圧縮荷重によるクリープに対する強度の高い鉄筋コンクリート柱部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るクリープ歪低減型鉄筋コンクリート柱部材の製造方法の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、製造された鉄筋コンクリート柱部材を示す斜視図、図2は、図1の鉄筋コンクリート柱部材を製造するための型枠に鉄筋を配筋した状態を示す斜視図、図3は、本発明におけるコンクリート養生過程を示す説明図、図4は、本発明における養生温度の変化を示す線図である。
【0019】
図1に示されるように、この実施の形態の製造方法によって製造される鉄筋コンクリート柱部材1は、断面が正方形の、角柱状のコンクリート本体部11と、このコンクリート本体部11に埋設された鉄筋12からなり、現場へ搬送されて鉄筋コンクリート建物の柱として組み立てられるものである。
【0020】
図1に示される鉄筋コンクリート柱部材1の製造においては、まず図2に示されるように、内面形状が、前記鉄筋コンクリート柱部材1をその長手方向が水平となるように横たえた形状の、横長の箱状に組み立てられた型枠2内に、多数の主筋12aと肋筋12bからなる鉄筋12を配筋する。なお、主筋12aの一端は、型枠2の長手方向一端を貫通した状態に設けられる。また、鉄筋12と型枠2は互いに結合せず、すなわち鉄筋12が型枠2に拘束されることなく、自由に熱膨張・収縮ができるようにしておく。
【0021】
次に、上述した型枠2内に、未硬化のコンクリート(フレッシュコンクリート)3を充填する。なお、コンクリート3としては、例えば設計規準強度が120N/mm以上となる高強度コンクリートが好適に用いられるが、これは特に限定されるものではなく、要求強度に応じて、設計規準強度が120N/mm未満のもの、例えば普通強度コンクリートなども採用可能である。
【0022】
また、このコンクリート3にはポゾランが添加される。この場合、ポゾランの添加は、セメントと骨材及び水を混練する際に行うか、あるいはセメントとしてポゾランがプレミックスされたものを使用することによって行うことができる。また、ポゾランは、フライアッシュ、珪酸白土、珪藻土、シリカフュームなどのシリカ質の微粉末であり、とくに、二酸化ケイ素(SiO)を主成分とするポゾランであるシリカフュームが好適に採用される。
【0023】
型枠2内にコンクリート3を充填した後は、所定の前養生を行ってから、高温養生(例えば蒸気養生)を開始する。前養生は、混練したコンクリートを型枠に充填した後、熱蒸気などによる高温養生を開始するまでの放置期間をいい、急激な加熱によるひび割れの発生等を防止することができる。この前養生の期間は、コンクリートの材質などの条件にもよるが、通常、3時間程度とする。
【0024】
高温養生は、図3に示されるように、コンクリート3を型枠2ごと養生槽4内に収容し、この養生槽4内で、ヒータ等により温度調節が可能な水又は養生槽4への水蒸気の供給によって行われる。この場合、養生槽4内の水又は水蒸気は、請求項1に記載された熱媒体に相当するものである。そして、養生槽4内の水又は水蒸気の温度(以下、熱媒体温度という)は、コンクリート3の水和反応に伴って発生する熱によるコンクリート中心温度の変化に追随するように、温度センサによる熱媒体温度の検出値に基づいて制御装置を介して駆動が制御されるヒータ(不図示)によって制御される。
【0025】
詳しくは、図4の線図に実線で示されるように、打設されたコンクリート3の中心温度は、まずセメントの水和反応が開始されることに伴う発熱によって上昇し、やがて最高温度になってから、次第に下降するというように変化する。本発明の方法では、図4の線図に点線で示されるように、熱媒体温度を、コンクリート3の中心温度の変化に追随させる。この場合、予め、図1に示される鉄筋コンクリート柱部材1と同等の断面、及び同等の材質のコンクリートサンプル(不図示)を成形し、このコンクリートサンプルを成形する型枠内に予め設置した温度センサによって、コンクリートサンプルの断面中央部の温度履歴を調査し、これに追随させるように前記熱媒体温度を制御することができる。
【0026】
なお、温度履歴を調査する際のコンクリートサンプルの養生温度は、養生槽の雰囲気温度、あるいは水和反応およびポゾラン反応をさらに加速させたい場合は雰囲気温度よりも高温に設定する。これは、例えば常温(20℃〜30℃程度)で養生した場合と比べて、80℃といった高温で養生した場合における部材中心温度は高くなる。そして、そのときの中心温度履歴で追随養生を行った方が、より高強度化・緻密化の面では効果が期待できるからである。
【0027】
熱媒体温度の制御によって、コンクリート3の表面及び表面付近の温度も、中心温度と同様に変化することになるので、コンクリート3の表面及び表面付近のセメントの水和反応が、中心と略同一の速度で進む。とくに高強度コンクリートの場合は、打設後の水和反応による中心温度の上昇が大きいが、熱媒体温度をこれに追随させることによって、コンクリート断面内における温度勾配が小さくなるので、ひび割れの原因となる温度応力を低減することができる。
【0028】
また、熱媒体温度の制御によって、水和反応による水酸化カルシウムの生成が促進されるため、添加されたポゾランとの反応も促進される。とくに、ポゾランとして二酸化ケイ素(SiO)を主成分とするシリカフュームを使用した場合、シリカフュームはセメント粒子に比較して粒径が著しく小さいため、セメント粒子の間に充填されて高緻密化され(マイクロフィラー効果)、これによってもコンクリートの強度が高まる。
【0029】
コンクリート3の中心温度、言い換えれば、これに追随する熱媒体温度が所定の温度まで下降したら、養生槽4内での養生を終了し、コンクリート3の中心温度が常温になるまで室内に放置して、自然冷却する。
【0030】
このようにして製造された図1の鉄筋コンクリート柱部材1は、脱型され、現場へ搬送されて鉄筋コンクリート建物の柱として組み立てられるが、組み立てにより上階からの圧縮荷重が作用する以前に、所定の強度が発現されており、しかも上述のように、高強度コンクリートを使用しても温度応力によるひび割れの発生が防止されていることや、ポゾラン反応による高緻密化がなされているので、長期圧縮荷重に対するクリープ歪を有効に低減することができる。
【0031】
上述した実施の形態では、鉄筋コンクリート柱部材1をプレキャストコンクリート製品として工場で製造する場合について説明したが、本発明に係るクリープ歪低減型鉄筋コンクリート柱部材の製造方法は、鉄筋コンクリート柱部材1を現場打ちで施工する場合についても実施することができる。図5は、このような現場打ちに適用した実施の形態を示す説明図である。
【0032】
すなわち、図5に示される実施の形態では、まず、水平断面が略正方形をなす縦置きの角筒状に組み立てられた型枠2内に、多数の主筋12aと肋筋(不図示)からなる鉄筋12を配筋する。このとき、主筋12aの上端は、型枠2の上端から突出した状態に設けられ、また、鉄筋12と型枠2は互いに結合せず、すなわち鉄筋12が型枠2に拘束されることなく、自由に熱膨張・収縮ができるようにしておく。なお、図5における参照符号5は、鉄筋コンクリート柱部材を既設コンクリート構造物への打ち継ぎによって製造(施工)する場合は既設コンクリート面であり、現場敷地内に仮設されたヤードで打設するサイトPCの場合はヤード地面である。
【0033】
次に、型枠2内に、未硬化のコンクリート(フレッシュコンクリート)3を充填する。コンクリート3は、先に説明した形態と同様、好適にはポゾランが添加され、設計規準強度が120N/mm以上となる高強度コンクリートが用いられ、あるいは要求強度に応じて、設計規準強度が120N/mm未満のもの、例えば普通強度コンクリートなども採用可能である。
【0034】
型枠2内にコンクリート3を充填した後は、型枠2の外周を高温養生のための熱媒体としての面発熱体6で覆う。面発熱体6には、電気毛布のように、内部に電線を均一に分布させた布又は布団状の部材、あるいは保温性に優れた発泡ウレタンや発泡スチロールなどの板体の内面に電線を均一に分布させて貼り付けたものなどが、好適に採用される。そして、所定の前養生期間が経過したら、前記面発熱体6を通電して発熱させることにより、高温養生を開始する。
【0035】
この場合の高温養生は、面発熱体6への電流値を制御することによって、この面発熱体6の温度を、先に説明した図4の線図に示されるように、コンクリート3の水和反応に伴って発生する熱によるコンクリート中心温度の変化に追随させることによって行う。そしてこの場合の温度制御も、例えば施工すべき鉄筋コンクリート柱部材と同等の断面及び同等の材質のコンクリートサンプルを成形してその断面中央部の温度履歴を温度センサで調査し、この温度履歴に基づいて前記電流値を制御すれば良い。また、先に説明したように、水和反応およびポゾラン反応をさらに加速させたい場合は、温度履歴を調査する際のコンクリートサンプルの養生温度は、養生槽の雰囲気温度あるいは雰囲気温度よりも高温に設定する。
【0036】
したがって、このような現場施工においても、養生過程でのコンクリート断面内における温度勾配を小さくして、ひび割れの原因となる温度応力を低減することができる。
【0037】
図6は、本発明による効果を検証する試験を実施するために用いた温度追随養生装置の概略構成を示す説明図で、参照符号101は、製造すべき鉄筋コンクリート柱部材と同等の断面積(1000mm×1000mm)のコンクリートサンプルである。このコンクリートサンプル101は、実際の鉄筋コンクリート柱部材よりも短い(1000mm)ので、両端には、放熱冷却を抑制するための断熱材102を設けてある。
【0038】
温度追随養生装置200は、コンクリートサンプル101を成形する不図示の型枠内の中央に予め配置し、コンクリートサンプル101の中央部に埋設状態となる熱電対201と、水202をはった水中養生槽203と、水202の温度を検出する熱電対204と、水202を加熱するヒータ205と、熱電対204で検出される水202の温度が、熱電対201で検出されるコンクリートサンプル101の中心温度の変化に追随するように、ヒータ205の駆動を制御する温度調節ユニット206とを備える。
【0039】
水中養生槽203には、コンクリートサンプル101の打設と同時に同一のコンクリート材料で有底円筒状の型枠により成形したφ100mm×H200mmの円柱供試体103を水中に沈設する。この円柱供試体103には熱電対207が埋設されており、熱電対201で検出されるコンクリートサンプル101の中心温度及び熱電対207で検出される円柱供試体103の中心温度は、データロガー208で記録されるようにしてある。
【0040】
すなわち、この試験では、円柱供試体103を水中養生槽203内に設置し、水中養生槽203の水温を、実際に施工すべきプレキャストコンクリート柱を模擬した1000mm角のコンクリートサンプル101の中心温度と同じ温度履歴となるように追随させることにより、円柱供試体103は実際に施工すべき鉄筋コンクリート柱部材と同様の温度履歴を受けた状態となる。
【0041】
このような温度履歴によって養生された円柱供試体103に、長期間に亘り定荷重を載荷し、載荷後からの圧縮クリープ歪の変化を測定した。図7及び図8はその測定結果を示すものである。また、比較例として、温度追随養生装置200による上述の温度履歴を与えない場合の測定結果も併せて示す。
【0042】
上記測定結果から明らかなように、コンクリートの材齢28日の圧縮強度で100N/mm級と150N/mm級の2水準共に、本発明による追随養生した円柱供試体は、それをしない比較例に比べ、圧縮クリープ歪が約30%小さくなることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】製造すべき鉄筋コンクリート柱部材を示す斜視図である。
【図2】発明において、図1の鉄筋コンクリート柱部材を製造するための型枠に鉄筋を配筋した状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係るクリープ歪低減型鉄筋コンクリート柱部材の製造方法におけるコンクリート養生過程を示す説明図である。
【図4】本発明に係るクリープ歪低減型鉄筋コンクリート柱部材の製造方法における養生温度の変化を示す線図である。
【図5】本発明に係るクリープ歪低減型鉄筋コンクリート柱部材の製造方法を、現場打ちによる鉄筋コンクリート柱部材の施工に適用した実施の形態を示す説明図である。
【図6】本発明による効果を検証する圧縮クリープ試験を実施するために用いた温度追随養生装置の概略構成を示す説明図である。
【図7】圧縮クリープ歪測定結果を示す線図である。
【図8】圧縮クリープ歪測定結果を示す線図である。
【符号の説明】
【0044】
1 鉄筋コンクリート柱部材
11 コンクリート本体部
12 鉄筋
2 型枠
3 コンクリート
4 養生槽
6 面発熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを、予め鉄筋を配設した型枠内に充填し、このコンクリートの養生のための熱媒体の温度を、水和反応に伴うコンクリート中心温度の変化に追随するように制御することを特徴とするクリープ歪低減型鉄筋コンクリート柱部材の製造方法。
【請求項2】
コンクリートにはポゾランが添加されたことを特徴とする請求項1に記載のクリープ歪低減型鉄筋コンクリート柱部材の製造方法。
【請求項3】
コンクリートを型枠内に充填することによって、断面が、製造すべき鉄筋コンクリート柱部材と同等の大きさ、及び同等の材質のコンクリートサンプルを成形し、前記型枠内に予め設置した温度センサによって、前記コンクリートサンプルの断面中央部の温度履歴を調査し、熱媒体の温度制御は、前記温度履歴に基づいてなされることを特徴とする請求項1に記載のクリープ歪低減型鉄筋コンクリート柱部材の製造方法。
【請求項4】
熱媒体として面発熱体を用い、コンクリートの養生の際に、この面発熱体で型枠を覆って発熱させることを特徴とする請求項1に記載のクリープ歪低減型鉄筋コンクリート柱部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−254254(P2008−254254A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96999(P2007−96999)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】