説明

クルクミン分散液

【課題】クルクミン分散液の製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】0.3〜5.0%の分散剤とクルクミンγCD包接体とを含むことで、高濃度のクルクミンが安定して分散できるクルクミン分散液の提供を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクルクミン分散液に関する。特に、高濃度のクルクミンを含むクルクミン分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
クルクミンはウコンやターメリックに含まれる色素成分であり、抗酸化作用を有することから、飲食品、健康食品等に利用されている。
クルクミンは難水溶性であるため、原料のウコン等から有機溶媒によって抽出することが主であった。しかし、この方法によって得られたクルクミンは有機溶媒の除去等が必要である上に、水に溶かすことができず、利用が難しいという問題があった。
【0003】
そこで本発明者らは、ウコン等に含まれるクルクミンをαシクロデキストリン(αCD)で包接し、易水溶性のαCD−クルクミン包接体を作製することで、クルクミン水溶液の製造を可能とした(例えば、特許文献1参照)。本発明者らは、この方法によって約270μg/mlのクルクミンを含むクルクミン水溶液が得られることを見出したが、より高濃度のクルクミンの利用を可能とするために、クルクミンを水に安定して分散させた分散液の製造を検討している。
【0004】
クルクミン分散液を得るにあたり、クルクミンとシクロデキストリン、カルボキシメチルセルロース等の水に分散可能な基質等との複合体を調整する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。この複合体のアルカリ水溶液を酸性化することで、水中に保持しても沈殿をしない安定な黄色の水溶液が得られ、この水溶液を食料または飲料の着色に用いている。しかし、この方法は調整には手間がかかる上に、アルカリ性溶液に酸を加えて中和する為に、最終形態において塩が混入し、これが味覚を低下させるという問題がある。
また、難溶性成分であるクルクミンをアルコールに溶解して水に分散し、微粒化して粒化剤を加えることで可溶化する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。この方法では乳化剤の代わりにγシクロデキストリン(γCD)を用いた例も示しているが、いずれもクルクミン分散液の調製時にアルコールの使用を必要としている。
【0005】
本発明者らは、アルコール等の有機溶媒を使用せず、簡便にクルクミン分散液を製造するために、分散剤を用いることを検討している。分散剤は、セルロースとカルボキシメチルセルロース・ナトリウムとを成分に含む水分散性の組成物であり、結晶セルロースの表面を水溶性高分子で特殊コーティングさせた複合体である。懸濁安定性、乳化安定性等を有することから食品に多く利用されているが、これを用いてクルクミン分散液を得た例は知られていない(例えば、特許文献4〜8参照)。
【特許文献1】特開2006−111534号公報
【特許文献2】特許第2971109号
【特許文献3】特開2005−328839号公報
【特許文献4】特開2006−8857号公報
【特許文献5】特開2004−4119号公報
【特許文献6】特開2002−171902号公報
【特許文献7】特開2000−41627号公報
【特許文献8】特許第3693385号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はクルクミン分散液の提供を課題とする。特に、調整が簡便であり、高濃度のクルクミンを含有し、飲食品等に利用できるクルクミン分散液の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、クルクミンのγCD包接体と、分散剤と組み合わせることで、クルクミン水溶液よりも高濃度のクルクミンを含有するクルクミン分散液が調製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は次の(1)〜(4)に記載のクルクミン水溶化溶液の製造方法、当該製造方法によって得られるクルクミン分散液等に関する。
(1)0.3〜5.0%の分散剤およびクルクミンγCD包接体を含むクルクミン分散液であって、該分散剤が(微)結晶セルロース73.0%、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム5.0%、キサンタンガム2.8%、デキストリン19.0%および食用油脂0.2%からなる分散剤であるクルクミン分散液。
(2)クルクミンγCD包接体に含まれるクルクミンの含有量がクルクミンγCD包接体100重量部に対して1〜24重量部である上記(1)に記載のクルクミン分散液。
(3)クルクミンの含有量が、分散液100mLあたり0.1〜1000mgである上記(1)または(2)に記載のクルクミン分散液。
(4)上記(1)〜(3)のクルクミン分散液を含む飲食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明のクルクミン分散液は調整が簡便であり、クルクミンが安定して分散しているため食品等に有効に利用できる。また、クルクミンを高濃度に含むため、少量でも十分に活用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の「クルクミン分散液」は、クルクミンを分散して含む水溶液であればいずれのものも含まれるが、特にクルクミンγCD包接体と分散剤を含むクルクミン分散液であることが好ましい。
【0011】
本発明の「クルクミン分散液」に含まれる分散剤としては高濃度のクルクミンを安定して分散するクルクミン分散液が得られるものであればいずれのものも用いることができるが、特に(微)結晶セルロース73.0%、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム5.0%、キサンタンガム2.8%、デキストリン19.0%および食用油脂0.2%からなる分散剤(セオラス(登録商標)SC−900またはセオラス(登録商標)SC−900S:旭化成ケミカルズ株式会社)を用いることが好ましい。
【0012】
本発明の「クルクミン分散液」は、分散液を製造するために一般的に用いられている既知の方法によって製造することができるが、特に分散剤を0.3〜5.0%、好ましくは0.4〜1.0%含む溶液にクルクミンγCD包接体を分散させて製造することが好ましい。
【0013】
本発明の「クルクミン分散液」に含まれるクルクミンγCD包接体は、高濃度のクルクミンを安定して分散するクルクミン分散液が得られれば、いずれの濃度のもの含むことができるが、特にクルクミンγCD包接体100重量部に対して1〜24重量部のクルクミンを含有するクルクミンγCD包接体を用いることが好ましく、12重量部のクルクミンを含有するクルクミンγCD包接体を用いることが特に好ましい。
【0014】
本発明の「クルクミン分散液」に含まれるクルクミン含量は、分散液100mLあたり0.1〜1000mgであることが好ましく、特に1〜50mgであることが好ましい。本発明のクルクミン含量は、分散剤の種類や濃度にあわせて、クルクミン包接体の添加量を変えることで調整できる。
本発明のクルクミンのCD包接体は、参考文献に記されている既知の方法を用いて調製できる。本発明の実施例ではホモジナイザーを使用したクルクミンγCD包接体の調製方法を示したが、この方法に限られるものではない。
参考文献:「CYCLODEXTRIN TECHNOLOGY」(ISBN 90−277−2314−1)Jozsef Szejtli著 KLUWER ACADEMIC PUBLISHERS
【0015】
本発明の「クルクミン分散液」を含む飲食品としては、飲料、ドリンク剤、ゼリー飲料等が挙げられる。特にドリンク剤に含むことが好ましい。
以下、本発明の詳細を実施例等で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1〜9]
【0016】
<クルクミン分散液の製造>
1.試料
1)クルクミンHJK−3472(稲畑香料株式会社)
2)セオラスSC−900(旭化成ケミカルズ株式会社)
成分:(微)結晶セルロース73.0%、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム5.0%、キサンタンガム2.8%、デキストリン19.0%および食用油脂0.2%
3)セオラスDX−1(旭化成ケミカルズ株式会社)
成分:(微)結晶セルロース20.0%、マルトデキストリン77.5%およびカラヤガム2.5%
4)セオラスRC−591S(旭化成ケミカルズ株式会社)
成分:(微)結晶セルロース89.0%およびカルボキシメチルセルロース・ナトリウム11.0%
5)結晶セルロース(JRS PHARMA社)
6)セルロースパウダー(日本製紙ケミカル株式会社)
7)CMC−Na(和光純薬工業株式会社)
8)CAVAMAX W6 Food(株式会社シクロケム)
9)CAVAMAX W7 Pharma(株式会社シクロケム)
10)CAVAMAX W8 Food(γCD)(株式会社シクロケム)
【0017】
2.クルクミンγCD包接体の調製方法
クルクミンHJK−3472 10gを300mLビーカーへ量り取り、脱気した脱イオン水を70mL添加した。このビーカーにCAVAMAX W8 Food(γCD、75g)CDを加え、ホモジナイザー(ULTRA−TURRAX T25:IKA製)を用い、10,000〜16,000rpmにて45分間攪拌した。得られた乳化液を噴霧乾燥し、クルクミンγCD包接体粉末(クルクミン含有率:12重量部)を得た。同様にクルクミンαCD包接体およびクルクミンβCD包接体を調製した。
【0018】
3.クルクミン分散液の製造
実施例1の分散剤(セオラス(登録商標)SC−900)を1.0%含むクルクミン分散液を次のように製造した。即ち、100mLサンプルビンに分散剤として上記1.のセオラスSC−900(0.5g)を量り取り、水を加えて50gとした。この溶液をホモジナイザー(ULTRA−TURRAX T25:IKA製)を用いて攪拌(80℃、8,000rpm、10分間)した。その後、クルクミン包接体として上記2.のクルクミンγCD包接体(417mg:クルクミン12重量部含有)を加えて更に攪拌(80℃、8,000rpm、10分間)した。このサンプルビンの蓋を閉めて放冷し、クルクミン分散液を製造した。
同様に、表1に示した濃度になるように量り取った上記1.の各分散剤および各クルクミン包接体を用い、実施例2〜9、比較例1〜11のクルクミン分散液を製造した。
【0019】
【表1】

【0020】
4.結果
各クルクミン分散液の状態を確認し、評価の結果を○、△および×で表わし、表1に示した。
<評価内容>
○…溶液が均一であり、沈殿や浮遊物を生じない。
△…溶液が均一でなく、沈殿や不均一な粒子が認められる。
×…分散剤自体が均一に分散せずに沈殿となって認められる。
その結果、実施例1〜9に示すように、0.3〜5.0%の分散剤(セオラス(登録商標)SC−900)およびクルクミンγCD包接体をクルクミン包接体として含むクルクミン分散液は評価が○であり、分散性が高いことが確認された。一方、それ以外の分散剤やクルクミン包接体を含むクルクミン分散液(比較例1〜11)は、いずれの評価も△または×であり、分散性が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のクルクミン分散液を用いることにより、高濃度のクルクミンを安定して含む飲食品を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.3〜5.0%の分散剤およびクルクミンγシクロデキストリン包接体を含むクルクミン分散液であって、該分散剤が(微)結晶セルロース73.0%、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム5.0%、キサンタンガム2.8%、デキストリン19.0%および食用油脂0.2%からなる分散剤であるクルクミン分散液。
【請求項2】
クルクミンγシクロデキストリン包接体に含まれるクルクミンの含有量がクルクミンγシクロデキストリン包接体100重量部に対して1〜24重量部である請求項1に記載のクルクミン分散液。
【請求項3】
クルクミンの含有量が、分散液100mLあたり0.1〜1000mgである請求項1または2に記載のクルクミン分散液。
【請求項4】
請求項1〜3のクルクミン分散液を含む飲食品。

【公開番号】特開2009−195198(P2009−195198A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42028(P2008−42028)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(503065302)株式会社シクロケム (22)
【Fターム(参考)】